JP2006257026A - 高純度の4,4’−ビスフェノールfと汎用純度のビスフェノールfの併産方法 - Google Patents

高純度の4,4’−ビスフェノールfと汎用純度のビスフェノールfの併産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高純度の4,4'-ビスフェノールFと、汎用純度のビスフェノールFを安価に併産する方法を提供する。
【解決手段】 酸触媒を用いてフェノール/ホルムアルデヒド比が6〜15の範囲で反応させて得られるビスフェノールFの反応液を冷却後、油水分離して得られる有機層から、水およびフェノールの少なくとも一部を除去してフェノール/有機反応生成物の重量比を5/1〜0.8/1の範囲となるように濃縮した反応液を50℃以上にし、反応液に対し50〜150wt%の芳香族炭化水素溶媒を加え、4,4'-ビスフェノールFを部分的に析出させて固液分離して固相から高純度の4,4'-ビスフェノールFを回収すると共に、液相から汎用純度のビスフェノールFを回収することからなる純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、酸触媒を用いてフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるビスフェノールFから高純度の4,4'-ビスフェノールFと、汎用純度のビスフェノールFを安価に併産する製造方法に関する。
フェノールとホルムアルデヒドを縮合させてビスフェノールFを得る反応においては、主生成物であるビスフェノールFのほか、三核体を主とする副生成物が生成する。このうち、ビスフェノールFについては2,2'-体、2,4'-体および4,4'-体の3種類の異性体混合物として得られるのが一般的である。なお、ビスフェノールFは、ビス(ヒドロキシフェニル)メタンとも称せられる。
汎用に用いられるビスフェノールFは、純度が90%前後のものが市販されており、塗料用途向けのエポキシ樹脂の原料等として用いられている。また、ビスフェノールF純度が98%以上である高純度品は、電子材料向け樹脂原料等に用いられており、その中でも4,4'-ビスフェノールFを単離した高純度品は耐熱性に優れることから、高機能材料として興味がもたれている。
高純度ビスフェノールFの製法としては、汎用純度のビスフェノールFを蒸留・晶析等により精製して得る方法が一般的で、ステップ数が多く低収率であるため、高純度ビスフェノールFは高価である。さらに、ビスフェノールFの各異性体単独の高純度品は、より精密で煩雑な操作の精製を必要とするため、更に高価となり、そのことが工業用途としての展開を阻んでいる。
特開平06-009468号広報 特開平10-036304号公報 特公平3-72049号公報 特開平09-067287号公報 特開平03-109342号公報 特開平06-340565号公報
これらを解決するために、例えば、特許文献1では、フェノール化合物とカルボニル化合物と反応させ、ビスフェノールを含む生成物混合物を形成し、生成物混合物からビスフェノールを分離し、その母液を反応混合物に循環することにより、高純度のビスフェノールを製造する方法が、特許文献2では、フェノールとカルボニル化合物を縮合させた4,4'-ジオキシジフェニルアルカンとフェノールの包接化合物に有機溶剤を加え、加温溶解し、冷却晶析によって、4,4'-ジオキシジフェニルアルカンとフェノールの包接化合物を結晶の形で得る方法が提案されている。
しかしながらこれらの方法をビスフェノールFの製造へ適用した場合、高純度のビスフェノールFが得られないばかりでなく、4,4'-体以外の異性体が多く生成し反応液の粘度が非常に高くなり攪拌等の操作が困難となり実用的ではない。また、これらの技術は、高純度4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFとを併産することを教えるものではない。
特許文献3では、高濃度リン酸水溶液を用いて、フェノール/ホルムアルデヒドのモル比3〜20、反応温度40〜50℃で反応を行い、純度90%のビスフェノールFを製造する方法が提案されている。この方法によると、反応混合物中のビスフェノールFの純度は高いものの、ビスフェノールF中の異性体比は4,4'-体/2,4'-体/2,2'-体=55/37/8であり、4,4'-体の純度が低く高純度の4,4'-ビスフェノールFを得るには十分ではない。
これを改良する方法として、特許文献4において、リン酸系触媒の水溶液を用い、水の使用割合がリン酸系触媒1モルに対し3〜10モルとなる範囲であることを特徴とするビスフェノールFの製造方法が提案されている。この方法においては、フェノール/ホルムアルデヒド比が6の場合にビスフェノールF純度91.2%のものを得ているが、高純度4,4'-ビスフェノールFの製造については何ら言及していない。
また、これらの技術は、高純度4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFとを併産することについても教えるものではない。
更に高純度のビスフェノールFを得る試みとして、特許文献5には、フェノールとホルムアルデヒド源とを、アルコール溶媒中、塩基性条件下で、クラウンエーテルを加え反応させてパラヒドロキシベンジルアルコールを生成させ、ついで反応液を酸性化し、更にフェノールを反応させることにより、特許文献6においては、ホルムアルデヒドとフェノールとを酸性触媒と尿素樹脂との存在下に反応させることにより、高純度の4,4'-ビスフェノールFを得る方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、高価な触媒を必要としたり、多段の反応ステップが必要で工業的製法としては十分満足するものではなく、また、得られたビスフェノールF混合物中の4,4'-体の純度も70%〜81.1%で、高純度4,4'-ビスフェノールFを得るためにはなお精製を必要とする。更にこれらの技術は、高純度4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFとを併産することについても教えるものではない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高純度の4,4'-ビスフェノールFと、汎用純度のビスフェノールFを安価に併産する方法を提供することにある。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、酸触媒を用いてフェノール/ホルムアルデヒド比を特定範囲の比率で反応させて得られるビスフェノールFの反応液を冷却後、油水分離して得られる有機層から、水および/またはフェノールの少なくとも一部を除去してフェノール/有機反応生成物の重量比を調整し、この濃縮反応液に対し特定範囲の比率の芳香族炭化水素溶媒を50℃以上の温度で加え、攪拌しながら室温まで冷却し、4,4'-ビスフェノールFを部分的に析出させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、酸触媒を用いてフェノール/ホルムアルデヒド比が6〜15の範囲で反応させて得られるビスフェノールFの反応液を冷却後、油水分離して得られる有機層から、水および/またはフェノールの少なくとも一部を除去してフェノール/有機反応生成物の重量比を5/1〜0.8/1の範囲となるように濃縮した反応液に、反応液に対し50〜150wt%の芳香族炭化水素溶媒を50℃以上の温度で加え、攪拌、冷却し、4,4'-ビスフェノールFを部分的に析出させて母液と分離して高純度の4,4'-ビスフェノールFを回収すると共に、母液から汎用純度のビスフェノールFを回収することを特徴とする純度の異なるビスフェノールFの製造方法である。
請求項2以下に係る本発明は次のとおりである。なお、請求項1を、1)と略記し、以下同様とする。
2)酸触媒としてリン酸水溶液を使用し、液-液不均一系反応によって合成することを特徴とする1)に記載の製造方法。
3)部分的に析出させた4,4'-ビスフェノールFが、ビスフェノールF純度98%以上で、ビスフェノールF中の4,4'-体割合が95%以上である1)または2)に記載の製造方法。
4)4,4'-ビスフェノールFの析出物を分離した後の液において、有機反応生成物中のビスフェノールFの割合が85〜95%にあり、ビスフェノールFの4,4'-体に対する2,4'-体の比が1.1〜4.0、かつ2,2'-体の割合がビスフェノールF全体の5〜25%の範囲にある1)〜3)に記載の製造方法。
5)得られる高純度4,4'-ビスフェノールFと、汎用純度ビスフェノールFの重量比が1:2〜1:20の範囲にある1)〜4)に記載の製造方法。
本発明において用いられる酸触媒は、鉱酸水溶液が好適に使用できるが、鉱酸水溶液の中でもリン酸水溶液の使用が最も好ましい酸触媒として挙げられる。これは、リン酸水溶液を使用した系は、液-液不均一系を形成した際、触媒の強度と濃度が適当な範囲にあるため、良好な反応成績を得やすく生産性を向上させやすいことが公知である。また、油水分離後、反応液中のリン酸を酸性下にて部分中和することで触媒の失活が可能であり、中性よりアルカリ性側領域で起こるビスフェノールFの変色防止が容易である点からも好適である。
また、本発明において、ビスフェノールFの合成工程を有機相と水相の液-液不均一系にて行う場合、水相における表面積の比を大きくすることによって、合成工程の反応成績を向上させ、同一純度のビスフェノールFを得るためのフェノールとホルムアルデヒドの仕込み比を小さくできることにより、一バッチあたりの析出工程に供するビスフェノールFの量が多くなり生産性を向上させることが可能である。
本発明で使用するホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド源となるものは何を用いてもよく、例としてパラホルムアルデヒド、ホルマリン水溶液等が挙げられる。また、これらのホルムアルデヒド源については、当初から反応器内に必要量を全量仕込んでも、少量ずつを反応系に逐次添加してもよいが、反応における副生成物抑制の観点から、逐次添加が望ましい。
本発明で使用するフェノールは新鮮なフェノールであっても、回収されたフェノールであってもよい。
フェノールとホルムアルデヒドの使用量は、フェノールが過剰となるように使用する。好ましくはホルムアルデヒド1モルに対し、フェノール6〜15モルの範囲である。
反応温度については、縮合反応が進行する温度であれば特に制限はないが、高純度の4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFを併産するために、反応工程においてビスフェノールF以外の副生物の生成を少なくしておくことが好ましい。
酸触媒を用いてフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られる反応液は、水および/またはフェノールの少なくとも一部を除去し濃縮する。有利には、油水分離した後の中和脱塩処理した油相或いは中和処理後油水分離した油相について、主に水を留出させて、酸触媒を析出させて分離する。
この分離、濃縮操作では、反応液中の有機反応生成物(反応で生成するビスフェノールFと副生成物の合計をいう)とフェノールの比率を適切な範囲にすることは、析出物を適量析出させるのに必要なことである。具体的には、芳香族炭化水素溶媒を添加する前の濃縮反応液において、フェノール/有機反応生成物の比が、5/1〜0.8/1の範囲にあることである。5/1よりフェノールが多い場合、芳香族炭化水素溶媒添加後に4,4'-ビスフェノールFの析出が困難になり、0.8/1よりフェノールが少ないと析出操作前に液を高温に保温する必要があるため、供用温度以下に沸点を持つ芳香族炭化水素溶媒の種類が制限される上、4,4'-ビスフェノールF析出時に他の異性体の割合が大きくなりいずれも好ましくない。有機反応生成物とフェノールの比率を適量の範囲にする操作としては、ビスフェノールFの合成反応でフェノールとホルムアルデヒドの比を調整することが好ましく、また油水分離や濃縮操作により部分的に水および/またはフェノールを除去することにより調整することがより好ましい。
濃縮された反応液から4,4'-ビスフェノールFを析出させる目的で用いる芳香族炭化水素溶媒については、芳香族炭化水素であれば種類に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられるが、沸点と安価に入手される点からトルエン、エチルベンゼン、キシレンなどが好適である。また、使用する芳香族炭化水素溶媒は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上のなかから混合して用いてもよい。
芳香族炭化水素溶媒の量は、濃縮反応液に対して、50〜150重量%、好ましくは50〜120重量%添加するのがよい。50重量%未満であると4,4'-ビスフェノールF析出が起こりにくくなる、あるいは、フェノール分の少ない濃縮反応液では固化が起こりやすくなるため、析出操作後の固液分離が困難になり好ましくない。また、150重量%を超えると、析出物分離後の液から分離するべき芳香族炭化水素溶媒の量が多くなり、蒸留にて分離する際は共沸などにより本来は回収して再度反応原料に供するフェノールがロスされてしまうため好ましくない。
芳香族炭化水素溶媒を添加混合して行う析出操作において、芳香族炭化水素溶媒を添加する際の温度は50℃以上、好ましくは50〜90℃としておく。添加中もこの温度を保持することが好ましい。その後、適量の析出物が出るような温度まで冷却することが好ましく、冷却温度は適量の析出物が出るような温度であればその温度範囲を問わないが、50℃未満の常温領域まで冷却、操作することは、装置の温度制御の容易性が確保される点で好ましい。析出操作は静置あるいは撹拌のいずれでも析出が可能であるが、撹拌によるせん断をかけることは、4,4'-ビスフェノールFの析出を促進し、析出操作を短時間で行える効果があり好ましい。また、必要に応じて結晶の核となる種結晶を加え、析出操作を行ってもよい。
析出後はろ過などの方法によって、析出した固相と液相を分離することができる。析出物は洗浄に適した液にて十分洗浄することにより、残存している液相成分やフェノール分が分離され、残留フェノール分が低減されるほか、析出物のビスフェノールF純度や、ビスフェノールF中における4,4'-体の割合が増加する。析出物の洗浄に用いる溶媒は、例として、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、水などが挙げられる。また、これらは一種または二種類以上を用いることができる。
一方、固相を分離した液相については、蒸留等の方法により液相から芳香族溶媒やフェノール等を分離し、汎用に用いられる純度のビスフェノールFを得ることができる。
本発明において、部分析出された4,4'-ビスフェノールFは、その用途に適するような純度および組成であることが必要である。純度や組成は、芳香族炭化水素溶媒の量や析出操作の温度、あるいは反応液におけるフェノールと反応生成物の比率によって異なるが、洗浄後の最終製品の形において、ビスフェノールFの純度として98%以上、好ましくは98.5%以上、さらに好ましくは99%以上になるよう操作するのがよい。ビスフェノールF純度が98%未満であると、主な電子材料用途に対して、含有される不純物が物性に悪影響を与えるため好ましくない。また、組成については、ビスフェノールF混合物中における4,4'-体の割合が95%以上になるよう操作するのがよい。95%未満であると、高純度4,4'-ビスフェノールFの特徴である耐熱性に悪影響を与えるため好ましくない。
析出物を分離した後の液より汎用純度のビスフェノールFを得られるが、その用途に適するような純度および組成であることが必要である。純度の適したビスフェノールFを得るためには、析出物を分離した後の液において、有機反応生成物中のビスフェノールFの割合が85%〜95%、好ましくは87〜95%になるよう操作するのがよい。85%未満であると、主な汎用用途のエポキシ用途に対して、エポキシ化後の粘性や色相などに悪影響を与え、95%を超えると汎用純度品としては純度が高すぎ、液状樹脂用途として適さないため好ましくない。
また、組成については、析出物を分離した後の液中のビスフェノールFにおいて、4,4'-体に対する2,4'-体の比が1.1〜4.0の範囲になるように操作を行うのがよい。4,4'-体に対する2,4'-体の比が1.1未満であるとエポキシ化後の結晶性が高いため液体樹脂用途に適さず、4以上であるとエポキシ化後の樹脂の耐熱性に悪影響を与え好ましくない。
以上に加え、ビスフェノールFにおける2,2'-体の比率が5〜25%、好ましくは6〜24%の範囲にあることがよい。固液分離後のろ液より得られる汎用ビスフェノールFにおいて、2,2'-体比率が5%未満であるとエポキシ化後の硬化性に悪影響を与え、25%を越えるとエポキシ化の際にビスフェノールF型の形をとらない不純物が多くなり、樹脂物性に悪影響を与えるためいずれも好ましくない。
本発明によって得られる汎用純度のビスフェノールFを適した純度や組成にコントロールするためには、析出操作条件のみならず、析出操作の原料となるビスフェノールF反応液の濃縮液における有機反応生成物中のビスフェノールF割合やビスフェノールFの異性体比率が重要な因子となるが、有機反応生成物中のビスフェノールF割合については85〜96%、好ましくは86〜95%の間にあるものを析出操作に用いるのがよい。85%未満であると、得られる汎用純度のビスフェノールFの純度が低いため、エポキシ化後の粘性や色相などに悪影響を与え、96%を超えると、得られる汎用純度品の純度が高すぎ、液状樹脂用途として適さないため好ましくない。
また、組成については、濃縮反応液における、4,4'-体に対する2,4'-体の比が0.5〜2.0の範囲になるようなものを用いるのがよい。4,4'-体に対する2,4'-体の比が0.5未満であると、析出する4'4-ビスフェノールFの量が多くなることによって固液分離やその後の洗浄工程に容易性を欠く場合があり、2.5以上であると析出する量が少なくなりいずれも生産上の点で好ましくない。以上に加え、濃縮反応液中のビスフェノールFにおいて、2,2'-体の比率が5〜25%、好ましくは6〜24%の範囲にあることが好ましい。固液分離後の液相より得られる汎用ビスフェノールFにおいて、2,2'-体比率が5%未満であるとエポキシ化後の硬化性に悪影響を与え、25%を越えるとエポキシ化の際にビスフェノールF型の形をとらない不純物が多くなり、樹脂物性に悪影響を与えるためいずれも好ましくない。
本発明においては高純度4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFが得られるが、効率の良い併産を行うためには、得られる高純度4,4'-ビスフェノールFと汎用純度のビスフェノールFの重量比が1:2〜1:20、好ましくは1:2〜1:15の範囲になるよう操作するのがよい。1:2より多く高純度4,4'-ビスフェノールFが得られると、析出する4'4-ビスフェノールF中に、2,4'-ビスフェノールFなど他の異性体が多く含まれるようになり、1:20より少なく高純度4,4'-ビスフェノールFが得られる状態は、得られる4,4'-ビスフェノールFの量が少ないため、併産のメリットが薄くコスト的に不利になりいずれも好ましくない。
この方法によって、高純度の4,4'-ビスフェノールFを安価に供給し、かつ、反応で生成したビスフェノールFを殆どすべて有効に活用することが可能である。
以下、本発明について、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。実施例において、ビスフェノールFの純度および異性体比率は、高速液体クロマトグラフィーを使用し、内部標準法により分析を行った。
実施例1
(a):フェノール200g(2.13mol)と55重量%リン酸水溶液200g(1.12mol)を500cc三口フラスコに添加し、液-液不均一系の液を撹拌しながら溶液の温度を70℃に昇温した。70℃の温度を保持した状態で36%ホルマリン水溶液25.32g(0.30mol)を2時間50分かけて滴下し、滴下終了後、更に70℃で1時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、有機相と水相を油水分離し、有機相215.0gを得た。この有機相に1N-NaOH水溶液13.8g(NaOH量0.0138mol)を加え、部分中和により残留するリン酸を失活させて反応液A228.8gを得た。このときの反応液AのpHは約4.8であった。
この反応液Aからエバポレーターを用いて60〜70℃にて主に水を除去して濃縮し、リン酸塩を析出させ、析出したリン酸塩を熱時濾過して分離した反応液B186.2gを得た。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の内部標準法を用いて分析した結果から算出される反応液A、反応液Bの組成を表1に示した。
なお、副生成物は反応で副生するメチレン鎖で三量化されたフェノール化合物を示し、生成量は、4,4'-BPFとHPLC感度が同等として換算し算出した。他の表に記載された副生成物についても同じである。
Figure 2006257026
(b):反応液Bを撹拌しながら60℃まで昇温し、60℃を維持したままトルエン162.0gを添加した。添加後攪拌しながら室温(約25℃)まで空冷し、室温にて更に3時間撹拌した。撹拌終了後、析出した固体を濾取し、水20gで3回洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥して、固体A11.73g(BPF換算で0.0586mol)を得た。洗浄に用いた液は濾液に加え反応液C398gを得た。
反応液Cは、減圧蒸留によりトルエン、水及び未反応フェノールを留去し、更に140℃・0.2Torrの減圧乾燥条件下にて残留フェノール分を留去して固体B43.3gを得た。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の内部標準法を用いて分析した結果から算出される固体A、固体Bの組成を表2に示した。
Figure 2006257026
表2の結果から、固体Aは高純度の4,4'- BPFであり、電子材料用途のフェノキシ樹脂原料等として、固体Bは比較的高純度のBPF異性体混合物であり、汎用用途のエポキシ原料等として好適に利用できるものであった。
実施例2
実施例1の(b)で添加するトルエンの量を112.1gとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。得られた固体A、Bの組成を表3に示した。
Figure 2006257026
表3の結果から、固体Aは高純度の4,4'- BPFであり、電子材料用途のフェノキシ樹脂原料等として、固体Bは比較的高純度のBPF異性体混合物であり、汎用用途のエポキシ原料等として好適に利用できるものであった。
実施例3
実施例1の(a)で滴下した36%ホルマリン水溶液の量を17.73g(0.21mol)、滴下時間を2時間とし、反応液Bの回収量が97.5gとなるように反応液Aをより濃縮し、また(b)でトルエンを添加する反応液Bの温度を80℃とし、添加するトルエンの量を84.8gとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。得られた反応液A、Bの組成を表4に、得られた固体A、Bの組成を表5に示した。
Figure 2006257026
Figure 2006257026
表5の結果から、固体Aは高純度の4,4'- BPFであり、電子材料用途のフェノキシ樹脂原料等として、固体Bは比較的高純度のBPF異性体混合物であり、汎用用途のエポキシ原料等として好適に利用できるものであった。
実施例4
実施例1の(a)で滴下した36%ホルマリン水溶液の量を17.73g(0.21mol)、滴下時間を2時間とし、反応液Bの回収量が78.0gとなるように反応液Aをより濃縮し、また(b)でトルエンを添加する反応液Bの温度を90℃とし、添加するトルエンの量を67.9gとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。得られた反応液A、Bの組成を表6に、得られた固体A、Bの組成を表7に示した。
Figure 2006257026
Figure 2006257026
表7の結果から、固体Aは高純度の4,4'- BPFであり、電子材料用途のフェノキシ樹脂原料等として、固体Bは比較的高純度のBPF異性体混合物であり、汎用用途のエポキシ原料等として好適に利用できるものであった。
比較例1
実施例1の(b)で添加するトルエンの量を43.8gとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。この場合、固体Aは析出しなかった。
比較例2
実施例1の(a)で反応液Bの回収量が77.5gとなるように反応液Aをより濃縮し、また(b)でトルエンを添加する反応液Bの温度を100℃とし、添加するトルエンの量を77.7gとした以外は、実施例1と同様の操作を実施した。得られた反応液Bの組成を表8に、得られた固体A、Bの組成を表9に示した。
Figure 2006257026
Figure 2006257026
表9の結果から、固体Aは多量の2,4'- BPFを含有しており、固体BはBPF純度が低いものであった。
比較例3
実施例1の(a)で滴下した36%ホルマリン水溶液の量を8.86g(0.10mol)、滴下時間を1時間とした以外は実施例1と同様の操作を実施した。この場合、固体Aは析出しなかった。得られた反応液A、Bの組成を表10に示した。
Figure 2006257026
比較例4
実施例1の(a)のBPF合成において、1000cc三口フラスコを用い、リン酸水溶液には85wt%リン酸水溶液200g(1.73mol)を用い、反応温度を45℃とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。
反応液中には4,4'-BPFの包摂化合物を主成分にすると思われる固体が析出した。系はスラリー状で粘度が著しく高くなり、内容物の取り出しが困難で、また反応液の油水分離は不可能であった。このスラリーにトルエンを215g添加し、攪拌しながら温度を70℃まで昇温したところ、析出していた固体が溶解し、油水両相に分離した。これを攪拌しながら室温(約25℃)まで空冷し、室温にてさらに3時間攪拌したが、固体の析出は見られなかった。
以上のことから、本発明におけるBPF合成系においては、包摂化合物に芳香族炭化水素を投入後、昇温して析出物を溶かし、その後液を冷却するのみでは結晶が析出しないことが判明した。

Claims (5)

  1. 酸触媒を用いてフェノール/ホルムアルデヒド比が6〜15の範囲で反応させて得られるビスフェノールFの反応液を冷却後、油水分離して得られる有機層から、水および/またはフェノールの少なくとも一部を除去してフェノール/有機反応生成物の重量比を5/1〜0.8/1の範囲となるように濃縮した反応液を50℃以上にし、反応液に対し50〜150wt%の芳香族炭化水素溶媒を加え、4,4'-ビスフェノールFを部分的に析出させて固液分離して固相から高純度の4,4'-ビスフェノールFを回収すると共に、液相から汎用純度のビスフェノールFを回収することを特徴とする純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
  2. 酸触媒としてリン酸水溶液を使用し、液-液不均一系反応によってビスフェノールFを合成することを特徴とする請求項1記載の純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
  3. 部分的に析出させた4,4'-ビスフェノールFが、ビスフェノールF純度98%以上で、ビスフェノールF中の4,4'-体割合が95%以上である請求項1または2に記載の純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
  4. 4,4'-ビスフェノールFの析出物を分離した後の液において、有機反応生成物中のビスフェノールFの割合が85〜95%にあり、ビスフェノールFの4,4'-体に対する2,4'-体の比が1.1〜4.0、かつ2,2'-体の割合がビスフェノールF全体の5〜25%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
  5. 得られる高純度4,4'-ビスフェノールFと、汎用純度ビスフェノールFの重量比が1:2〜1:20の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の純度の異なるビスフェノールFの製造方法。
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