JP3359583B2 - 強化白金材料及びその製造方法 - Google Patents

強化白金材料及びその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス工業等に使
用される白金の製造方法に係り、特に、高温で使用され
るガラス溶解装置に用いられる高温クリープ特性に優れ
てかつ伸びのある材料及びその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】酸化物による分散強化白金または白金合
金については、ジョンソンマッセイ社等から特許出願さ
れている(特公昭 54-3803)。また、酸化物分散強化白
金または白金合金およびその製造方法については、本発
明らも特許出願している(特開平6-336631、特開平8-13
4511)。
【0003】これらの材料は、高温におけるクリープに
強いため長時間の応力下で用いる場合には、その製品の
寿命を長くするのに有益である。
【0004】しかし、その一方でこれらの材料は、応力
には強いがほとんど変形しない。したがって、セラミッ
クに沿ってPtを張り付けるような変形が必要な部分には
不適切であった。変形に耐えられず破壊してしまってい
た。また、これらの酸化物による分散強化白金または白
金合金は、高温での粒成長が抑えられている。
【0005】上記特開平6-336631では、伸びのある強化
白金が挙げられているが、この材料の伸びは約5%であ
り、PtRh合金等の合金材料の伸び30〜40%に比べ圧倒的
に小さい。
【0006】ガラス溶解装置に用いられる白金で、特
に、変形に強いことが必要な部分には、PtRh等の白金合
金が用いられることが多い。しかし、光学ガラスを製造
するための装置では、その合金成分によってガラスが着
色されてしまうことが知られているため使用できない。
従来技術では、高温クリープ特性に優れ、変形に強い材
料はできなかったため、変形の大きい部分のあるガラス
溶解装置の寿命は短かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、白金をRhと
の合金とすることなく、従ってガラスを着色させること
なく高温クリープ特性に優れ結晶粒が細かく汚染に強
く、変形に強い材料及びその製造方法を提供しようとす
るものである。
【0008】
【発明を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明の強化白金材料は、Zr,Sm,Eu,YまたはHfの
いずれかの酸化物粒子で凝集によりその直径が1μm〜10
μmである酸化物粒子0.05wt%〜2wt%を白金中に分散し
た材料で、1000℃以上の高温クリープ破断伸びが10%〜
50%であることを特徴とするものである。また、その製
造方法としては、アトマイズ法により作製したZr,Sm,
Eu,YまたはHfのいずれかを含む白金合金粉末を1400℃
〜1750℃の高温で1時間〜100時間酸化及び焼結を行
い、その後塑性加工することを特徴とするものである。
【0009】ここで酸化物の量を0.05wt%〜2wt%とし
たのは、0.05wt%未満では酸化物分散強化の効果があま
り得られないためであり、2wt%を超えると残留分散粒
子による分散強化が大きくなりすぎて伸びがなくなるか
らである。焼結温度を1400℃〜1750℃としたのは、1400
℃未満では本発明の特性を得るには不十分であり、1750
℃以上では温度調節を誤ると、材料そのものを溶融させ
てしまう危険があるからである。
【0010】同様に酸化及び焼結の時間を1時間〜 100
時間としたのは、1時間未満では本発明の特性を得るに
は不十分であり、 100時間を超えて行っても、実質的な
特性の向上が得られず、単に時間を浪費するだけで意味
が無いからである。用いる白金合金粉末としては、径が
0.01mm〜 0.2mmのものが好ましい。0.01mm未満では粉体
が細かすぎて分散強化が強くききすぎ、 0.2mmを超える
と粉体が大きすぎて焼成が困難となるからである。
【0011】一般に酸化物分散強化材料では、分散粒子
が細かく分布密度が密な方が、分散粒子が大きく分布密
度が疎なものより高温でのクリープ強度は強い。そし
て、Ptの酸化物分散強化材の場合、そのクリープ強度を
強くするような分散粒子の直径は、約10〜100nm であ
る。そして、これらの分散粒子が、転位の移動を妨げ、
材料の変形を遅らせることにより高いクリープ強度を実
現させている。
【0012】本発明の強化白金材料では、1400℃以上の
高温での酸化及び焼結により、粉末表面において酸化物
分散粒子の凝集が起こる。その粉末表面において分散酸
化物粒子の直径が約1μm 〜10μm となる。このように
分散酸化物粒子を凝集させて大きくすることによって、
分散酸化物粒子が転位の移動を妨げるが、粒子が小さく
密なものに比べて転位の移動への抵抗は小さくなる。そ
のため本発明の強化白金材料は、通常の粒子が小さく密
な酸化物分散強化材よりは強度が劣るものの、酸化物分
散粒子による変形抵抗が小さいため、Zr, Sm, Eu, Y ま
たはHfなどの酸化物が0.05wt%〜2wt%分散した酸化物
分散強化白金材料でありながら、1000℃以上の高温クリ
ープ破断伸びが10%〜50%という大きな値を示すもので
ある。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に実施例を示す。実施例並び
に従来例は、クリープ破断時間並びに破断伸びを記載し
ている。またこの値は、破断時間が100 時間近傍の値が
多い。これは、他の白金等での評価が、対数で見た場合
102 時間付近で多く行われているからである。例えば、
特告昭52-12125、特開平6-336631, 特開平8-143915, 特
開平9-11366,特開平10-195561 等がそれにあたる。
【0014】〈実施例1〉PtとSmを溶融鋳造し、PtSm
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2
mmの粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.
2 気圧)、温度1600℃にて24時間加熱しPtSm合金中のSm
を酸化させた後、1250℃にて熱間鍛造、次いで冷間圧延
し、Smの酸化物の分散した白金で板厚1mmの試験片を採
取した。なお本品は、酸化のための熱処理温度が1600℃
と高いため、その熱処理により自己焼結する。このた
め、そのまま次の熱間鍛造の工程に回す事が出来る。上
記の試験片について行ったクリープ試験結果を表1に示
す。
【表1】
【0015】〈実施例2〉PtとSmを溶融鋳造し、PtSm
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01mm〜
0.1mmの粉末を作製した。この粉末 8Kgを大気中(酸素
分圧0.2 気圧)、温度1600℃にて48時間加熱しPtSm合金
中のSmを酸化させた後、1400℃にて熱間鍛造を行った。
その後厚さ14.35 mmまで一方向に圧延した後、圧延方向
を90゜変え更に2.23mmまで圧延した。この状態で1250
℃、30分の歪み取り焼鈍を行い、2 度目と同じ方向に圧
延し0.8mmの試験片を採取した。なお本品は、酸化のた
めの熱処理温度が1600℃と高いため、その熱処理により
自己焼結する。このため、そのまま次の熱間鍛造の工程
に回す事が出来る。上記試験片を温度1400℃にて、クリ
ープ試験を行った結果を表2に示す。
【表2】
【0016】〈実施例3〉PtとZrを溶融鋳造し、PtZr
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2
mmの粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.
2 気圧)、温度1600℃にて24時間加熱しPtZr合金中のZr
を酸化させた後、1250℃にて熱間鍛造、次いで冷間圧延
し、Zrの酸化物の分散した白金で板厚1mmの試験片を採
取した。なお本品は、酸化のための熱処理温度が1600℃
と高いため、その熱処理により自己焼結する。このた
め、そのまま次の熱間鍛造の工程に回す事が出来る。上
記の試験片をについて行ったクリープ試験結果を表3に
示す。
【表3】
【0017】〈実施例4〉PtとEuを溶融鋳造し、PtEu
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2
mmの粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.
2 気圧)、温度1600℃にて24時間加熱しPtEu合金中のEu
を酸化させた後、1250℃にて熱間鍛造、次いで冷間圧延
し、Euの酸化物の分散した白金で板厚1mmの試験片を採
取した。なお本品は、酸化のための熱処理温度が1600℃
と高いため、その熱処理により自己焼結する。このた
め、そのまま次の熱間鍛造の工程に回す事が出来る。上
記の試験片をについて行ったクリープ試験結果を表4に
示す。
【表4】
【0018】〈実施例5〉PtとY を溶融鋳造し、PtY0.3
wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアトマイ
ズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2mmの
粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.2 気
圧)、温度1600℃にて24時間加熱しPtY 合金中のY を酸
化させた後、1250℃にて熱間鍛造、次いで冷間圧延し、
Y の酸化物の分散した白金で板厚1mmの試験片を採取し
た。なお本品は、酸化のための熱処理温度が1600℃と高
いため、その熱処理により自己焼結する。このため、そ
のまま次の熱間鍛造の工程に回す事が出来る。上記の試
験片をについて行ったクリープ試験結果を表5に示す。
【表5】
【0019】〈実施例6〉PtとHfを溶融鋳造し、PtHf
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2
mmの粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.
2 気圧)、温度1600℃、24時間にてPtHf合金中のHfを酸
化させた後、1250℃にて熱間鍛造、次いで冷間圧延し、
Hfの酸化物の分散した白金で板厚1mmの試験片を採取し
た。なお本品は、酸化のための熱処理温度が1600℃と高
いため、その熱処理により自己焼結する。このため、そ
のまま次の熱間鍛造の工程に回す事が出来る。上記の試
験片をについて行ったクリープ試験結果を表6に示す。
【表6】
【0020】〈従来例1〉PtとSmを溶融鋳造し、PtSm
0.3wt%の合金体を得た。これをアークガンによりアト
マイズ法にて溶融噴霧して水中急冷し、粒径0.01〜 0.2
mmの粉末を作製した。その後粉末を大気中(酸素分圧0.
2 気圧)、温度1250℃にて24時間加熱しPtSm合金中のSm
を酸化させた後、粉体をプレスで荷重60〜90kgw/mm2
て圧縮し、1250℃にて1時間焼結熱処理し、更に再度前
記圧縮、焼結熱処理を繰り返し、その後1250℃にて熱間
鍛造、次いで冷間圧延し、Smの酸化物の分散した白金で
板厚1mmの試験片を採取した。上記の試験片を温度1400
℃にてクリープ試験を行った結果を表7に示す。
【表7】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 美和 神奈川県伊勢原市鈴川26番地 田中貴金 属工業株式会社伊勢原工場内 (56)参考文献 特開 平8−134511(JP,A) 特開 平6−336631(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 1/05,1/10,5/04 B22F 3/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zr,Sm,Eu,YまたはHfのうちいずれか
    酸化物粒子で凝集によりその直径が1μm〜10μmで
    ある酸化物粒子0.05wt%〜2wt%が白金中に分散してお
    り、かつ1000℃以上の高温クリープ破断伸びが10%〜50
    %であることを特徴とする強化白金材料。
  2. 【請求項2】 Zr, Sm, Eu, Y またはHfのうちいずれか
    を0.05wt%〜2wt%含む白金合金をアトマイズ法により
    粉末として、1400℃〜1750℃の高温で1時間から100 時
    間酸化及び焼結を行い、その後塑性加工をすることを特
    徴とする強化白金材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記白金合金粉末の粒径が0.01mm〜 0.2
    mmであることを特徴とする請求項2に記載の強化白金材
    料の製造方法。
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