JP3343014B2 - 酸化物単結晶の製造方法 - Google Patents
酸化物単結晶の製造方法Info
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Description
造方法に係り、特に、圧電材料や誘電体材料として好適
に使用される酸化物単結晶の製造方法に関する。
1/3 Nb2/3 )O3 (PMN)およびPb(In1/2 N
b1/2 )O3 などのリラクサと総称される複合ペロブス
カイト化合物を主成分とし、これにチタン酸鉛、および
シルコン酸鉛などが添加された材料は、積層セラミック
コンデンサの誘電体材料(USP4,818,736)
や圧電アクチュエータ用材料として広く用いられてい
る。また、これらの単結晶材料も、光学応用(USP
3,453,561)や医用圧電単結晶(USP5,4
02,791)として応用されている。
や圧電特性、誘電特性などに優れていることから、今後
の応用が期待されている。特に、医療機器や非破壊検査
機の分野において、超音波圧電振動材料としてこれらの
単結晶材料を用いると、解像度や感度の著しい向上が予
測される。これらの装置では、対象物の内部状態を画像
化するために、送信・受信の振動子として超音波プロー
ブが用いられている。このような超音波プローブが採用
された超音波画像装置としては、例えば、人体内部を検
査するための医用診断装置、および金属溶接内部の探傷
を目的とする検査装置などが挙げられる。
酸鉛(PZT)と呼ばれる圧電セラミック材料を超音波
プローブに用いてきたが、このPZTの特性は過去20
年間でほとんど改善されておらず、新材料の探索が行な
われて来た。そこで、最近、Pb[(B1 ,B2 )1-x
Tix ]O3 で表わされる2成分系からなる圧電単結晶
が、新材料の候補として着目されつつある。ここで、B
1 はZn,Mg,Ni,Sc,InおよびYbから選択
される少なくとも一つであり、B2 はNbまたはTaの
少なくとも1種類から選択され、チタン酸鉛が0〜55
モル%の範囲にある圧電単結晶材料である。このペロブ
スカイト化合物は、鉛の10モル%以下が、Ba,S
r,CaおよびLaから選択された少なくとも一つで置
換されることもある。
る単結晶を用いると、高感度信号が得られる低周波でも
振動子が薄くなり、振動子をアレイ状に切断する際に
は、ダイシングマシンのブレードの切り込み深さが浅く
なって、薄いブレード厚でも垂直に切り込むことができ
る。このため、製造歩留りが向上し、かつ、サイドロー
ブの低減された超音波プローブを提供できる。さらに、
前述のペロブスカイト化合物は、従来のPZT系圧電セ
ラミックと同等以上の比誘電率を有していることから、
送受信回路とのマッチングが良好となり、ケーブルや装
置浮遊容量分による損失が低減された高感度な信号が得
られるようになった。
音波プローブでは、従来のPZT系圧電セラミックを用
いた超音波プローブと比較して、5dB以上も大きい高
感度な信号が得られる。そのため、Bモード像の場合に
は、身体的変化による小さな病変や空隙を深部まで明瞭
に見ることのできる高分解能の画像が得られる。また、
CFM像などを得ることができるドプラモードの場合に
は、直径が数μm程度の微小な血球からの反射エコーも
大きい信号が得られるようになった。
数駆動の超音波プローブを製造すると、薄い単結晶を用
いることができ、薄いブレードでも短冊状振動子を寸法
精度良く切断することができる。その結果、加工精度上
の歩留りが向上し、感度の低下やサイドローブレベルの
増加を抑制することが可能となった。
{(B1 ,B2 )1-x Tix }O3 等の固溶系単結晶
は、その内部に異物やクラック、あるいは傷が存在しや
すく、超音波プローブ用の振動子として作製する際に
は、これらの欠陥領域を避けなければならない。超音波
診断装置用の心臓プローブ用振動子に要求される標準的
なサイズは、15mm×15mm×0.4mmであるも
のの、結晶内部の異物等の領域を避けて切り出すため
に、この形状の振動子の作製歩留まりが極めて悪いのが
現状である。
後、直流電圧を印加して分極処理を施した際には、振動
子に割れが発生するという問題があった。この振動子の
割れは、はなはだしい場合は50%にも及ぶため、振動
子の量産に著しい支障をきたしていた。
解決すべく、Pb{(B1 ,B2 )1-x Tix }O3 で
表わされる単結晶を作製した時に、単結晶の内部にクラ
ックや異物が取り込まれにくく、さらに分極後において
も、振動子に割れの発生しない酸化物単結晶の製造方法
を提供することにある。
した結果、Pb{(B1 ,B2 )1-x Tix }O3 で表
わされる単結晶内部の異物やクラック等は、その製造方
法に起因して生じることを見出だした。従来、これらの
単結晶は、酸化鉛を主成分とするフラックスを用いて、
フラックス法やキロポーラス法、ブリッジマン法、およ
びフローテイングゾーン法等により高温度で製造されて
いた。このため、得られた単結晶の内部にクラックやフ
ラックスおよびパイロクロア構造の異物が生じやすくな
り、大型で良好な単結晶を得ることが困難となってい
た。
造することが、内部にクラック等を有しない均一な単結
晶を得るための有効な方法であると考え、本発明を成す
に至った。
表わされ、焼結密度が理論密度の99%以上の複合ペロ
ブスカイト化合物から構成され、少なくとも1つの面が
平滑であるセラミック焼結体の平滑面と、このセラミッ
クス焼結体の格子定数の±10%以内の格子定数を有
し、少なくとも1つの面が平滑である種単結晶の平滑面
とを接触させる工程と、前記平滑面同士を接触させたセ
ラミックス焼結体および種単結晶を、密閉容器内で鉛雰
囲気中、1000〜1450℃の温度で加熱する工程と
を具備する酸化物単結晶の製造方法を提供する。
あり、B1 はZn,Mg,Ni,Sc,YbおよびIn
から選択された少なくとも1種類であり、B2 はNbま
たはTaである。) 以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
れるセラミックス焼結体は、上述の一般式(1)で表わ
される複合ペロブスカイト化合物である。このペロブス
カイト化合物の焼結密度が理論密度の99%未満の場合
には、均一な単結晶を得ることができず、得られた結晶
の表面に電極を形成して分極処理を施した際に、割れが
発生しやすくなる。
えると、得られた結晶が分極により極めて割れやすくな
り、得られた単結晶の絶縁抵抗が低下して分極が困難と
なる。なお、B1 およびB2 が前述の元素以外の場合に
は、PZTセラミックスよりも優れた圧電特性を示す単
結晶材料を得ることが困難となってしまう。
表した際のAサイトとBサイトの比(A/B)が1.0
0以上1.10以下であることが好ましい。なお、Aお
よびBは、それぞれPbおよび{(B1 ,B2 )1-x T
ix }を表わす。(A/B)が1.00未満では、単結
晶の成長速度が著しく遅いために実用的でなく、一方、
(A/B)が1.10を越えると、余分のAサイト成分
である酸化鉛が、単結晶の内部に含有されやすくなる。
また、これらの過剰の酸化鉛は、密封容器内部に置かれ
た酸化鉛供給源であるジルコン酸鉛などの材料から供給
することができる。
一部をBa,Sr,Ca,Laのいずれか一つで置換す
ることもでき、この場合には、単結晶の成長速度が極め
て遅くなるのを避けるために、置換される割合は、鉛の
10モル%以下とすることが好ましい。
金属であるMn,Co,Fe,Sb,W,CuおよびH
f等;ランタニド元素;またはアルカリ金属を少量含ん
でも良い。なお、大きな圧電定数を維持するために、こ
れらの含有量は最大でも1mol%以下であることが好
ましい。
元素との比は、通常、化学量論比で決まる値±0.02
程度であるが、この比を±0.2程度の割合でずらすこ
とも可能である。
2 、Al2 O3 、B2 O3 、PtO、MgO、Fe2 O
3 、およびBi2 O3 等の添加物が含有されていてもよ
い。この場合、SiO2 、Al2 O3 、B2 O3 および
PtOの含有量は、0.5モル%以下であることが好ま
しく、その他の添加物の含有量は、1モル%以下である
ことが好ましい。不純物の含有量がこの範囲を越える
と、ペロブスカイトの結晶以外に、誘電率が小さいパイ
ロクロアの結晶が発生しやすくなり、結晶に欠陥が多く
なるためである。
に5モル%以下のZrO2 を含んでも良い。ZnO2 の
割合が5モル%を越えると、単結晶の成長速度が極端に
低下し、さらに結晶内部における組成のバラツキが多く
なるためである。
焼結体は、熱間静水圧プレス(HIP)またはホットプ
レスにて作製することができる。かかる方法を用いるこ
とによって、理論密度の99%以上の焼結密度を有する
焼結体が容易に得られる。
結体の大きさは、所望の単結晶の用途に応じて適宜選択
することができる。例えば、医療用超音波プローブ用に
は15×15〜17×0.5mm3 程度とすることがで
きる。このセラミックス焼結体の平滑面は、平滑度±
1.0μm程度であることが好ましく、鏡面研磨されて
いることが最も好ましい。
通常3.88〜4.15オングストローム程度である。
本発明の製造方法に用いられる種単結晶は、前述のセラ
ミックス焼結体の格子定数との差が±10%以内の格子
定数を有していれば特に限定されず、任意の単結晶を用
いることができる。また、単結晶上に形成された金属
は、その下地単結晶の方位に従い配向する性質があり、
これらの金属を中間に形成してもよい。通常、Pt等が
前記金属として用いられる。格子定数の差が10%を越
える種単結晶を用いると、得られた単結晶を分極した際
に割れが発生しやすくなる。また、この場合には、10
mm以上のサイズの単結晶を製造することが困難とな
る。なお、セラミックス焼結体の格子定数と種単結晶の
格子定数との差は、小さいことが好ましく、成分の相互
拡散を抑えるためには、格子定数が同一であることが最
も好ましい。
の方法に用いられる種単結晶は、セラミックス焼結体と
は全く異なる材料(例えばMgOやSrTiO3 )とす
ることもできる。しかしながら、種単結晶の組成をセラ
ミックス焼結体の組成と同一にすると、20mm角以上
の単結晶を作製した後、冷却する際に割れが発生しにく
くなるので好ましい。
焼結体の大きさに応じて適宜選択することができるが、
セラミックス焼結体と同等の大きさとすることが好まし
い。この種単結晶の厚さは、少なくとも0.3mm以上
であれば十分であり、少なくとも1つの平滑面は、平滑
度±1.0μm程度であることが好ましく、鏡面研磨さ
れていることが最も好ましい。
に当たっては、まず、図1(a)に示すように、所定の
種単結晶1とセラミックス焼結体2とを用意する。これ
らの材料は、いずれも上述の条件を満たすものであり、
少なくとも1つの面が平滑である。次に、図1(b)に
示すように種単結晶1の平滑面と、セラミックス焼結体
2の平滑面とを接触させて、重し4をセラミックス焼結
体2上に載置し、鉛雰囲気の密閉容器5内で、1000
〜1450℃の温度で加熱する。ここで用いられる密閉
容器5として、白金、パラジウム、ロジウムおよび銀の
少なくとも1種の金属からなる容器、あるいは緻密な磁
器質のさやが好ましい。これ以外の材質では、得られた
単結晶が割れやすくなるためである。また、重し4は、
試料の形状や作製方法等に応じて適宜選択することがで
き、例えば、長時間繰り返し使用する場合には、白金板
を用いることが好ましい。
結晶化の速度が極めて遅く、一方、1450℃を越える
と、大型で均一な結晶の作製が極めて困難になる。接触
されたセラミックス焼結体と種単結晶とを加熱する時間
は、その試料形状等によって適宜選択することができる
が、例えば、厚みが10mm以下の場合には、好ましく
は10〜500時間であり、より好ましくは100〜2
00時間、前述の温度で加熱することによって、図1
(c)に示すような単結晶6が完成する。
は、特定のセラミックス焼結体と種単結晶とを、密閉容
器内で鉛雰囲気中で接触させて加熱することによって、
セラミックス焼結体を単結晶化するので、クラックや異
物が単結晶の内部に取り込まれることを抑制することが
できる。さらに、分極後においても振動子に割れの発生
しない酸化物単結晶が得られる。
て、三角形状や円筒状、あるいは細い柱状などの任意の
形状の単結晶部材を製造することができる。その結果、
PZT系圧電セラミックに比べて高感度で、かつ高い信
頼性を有する任意の形状の超音波プローブを安定して提
供することが可能となった。
溶体単結晶は、種結晶の方位に応じて任意の方位の単結
晶に作製することができる。例えば、得られた単結晶を
[001]軸(またはc軸)に対して垂直に切り出した
後、(001)面に電極を形成し、分極処理を施した場
合には、優れた電気機械結合係数を有する振動子が得ら
れる。また、得られた単結晶を[111]軸に対して垂
直に切り出した後、(111)面に電極を形成し、分極
処理を施した場合には、大きな誘電率を有する単結晶が
得られる。
を短冊状振動子に加工した場合には、厚さ方向([00
1]軸)の音速は2000〜3500m/s、半共振周
波数と厚みとの積である周波数定数は1350〜150
0Hz・m、PZT系圧電セラミックの周波数定数は2
000〜3000Hz・mとなり、25〜50%程度遅
くなる。また、電気機械結合係数k33も72〜85%と
優れてばらつきも少なく、最大で直径100mm程度と
いう大型、かつ高性能の振動子が得られる。
結晶を、[111]軸に対して並行に切り出した後、
(111)面に電極を形成した場合には、2000〜8
000程度の高い誘電率を有する振動子が得られる。
b2/3 )0.68Ti0.32}O3 からなる固溶系単結晶(以
下PMNT 68/32と略す)を作製した。
詳細に説明する。種単結晶は、80モル%酸化鉛(Pb
O)と20%酸化ボロン(B2 O3 )とを融剤として用
いたフラックス法で作製した。出発原料として、化学的
に高純度なPbO、MgO、Nb2 O5 、およびTiO
2 の粉末を使用し、これらを上述の式で示した組成とな
るように調合し、さらにフラックスとして等モル量のP
bO−B2 O3 フラックスを加えた。この粉末を乾式混
合機械で十分に混合した後、ゴム製の容器に収容して2
トン/cm2 の圧力でラバープレスを行なった。得られ
た塊600gを、50mmφの250cc白金容器内に
収容し、900℃まで4時間で昇温することによって溶
解した。
とフラックスとを含有するラバープレス後の塊を、さら
に400g白金容器内に加え、白金で蓋をして電気炉の
中心に固定した。1200℃まで12時間で昇温した
後、1℃/時間の徐冷速度で800℃まで徐冷した後、
室温まで放冷した。冷却の間、白金るつぼの下部の一端
に選択的に酸素を吹き付けて冷却することによって、核
発生が1ヶ所で起こるようにした。
煮沸して単結晶を取り出し、得られた単結晶を観察し
た。その結果、得られた単結晶は矢じり状の形状であ
り、大きさは約20mm角であった。
なって結晶構造を調べたところ、完全なペロブスカイト
構造であることが確認された。また、この粉末の組成を
ICPにより分析したところ、xは約0.32であっ
た。なお、この単結晶の格子定数は、4.018オング
ストロームであった。
軸の方位を出してこの軸に垂直にカッターで1mm厚に
切断し、得られた試料を鏡面研磨した。次いで、この試
料を12mm角に切断して矩形板振動子を10枚作製
し、種結晶とした。
細に説明する。セラミックス焼結体は、通常の固相反応
法を用いて以下のようにして製造した。まず、出発原料
として化学的に高純度なPbO、MgO、Nb2 O5 お
よびTiO2 の粉末を用いて、Pb{(Mg1/3 Nb
2/3 )0.68Ti0.32}O3 の組成となるように調合し
た。この混合粉末に純水を加え、ジルコニアボールを用
いてナイロン製のポットミルで20時間、混合・粉砕し
乾燥させ、その後、アルミナさや内で800℃で仮焼し
た。
の酸化鉛を添加し、再び純水を加えて上述のポットミル
で粉砕した後、乾燥して粉体を得た。この粉体にバイン
ダーとしてのPVA5%水溶液を5wt%を加えて乳鉢
で混合し、48#の篩を通過させて造粒を行なった。得
られた粒子を、金型内で50MPaの圧力を加えて40
mmφ×15mmの柱状に仮成型した。
MPsで静水圧プレスを用いて成型し、500℃で4時
間、電気オーブン内で加熱することによって脱脂を行な
った。脱脂後の成型体を2重の高密度のマグネシアさや
に収容して、1200℃で3時間焼成し、さらに、10
00℃で5時間、酸素中20MPaの圧力でホットプレ
スを行なって焼結体を得た。
理論密度の99.5%であり、結晶構造は完全な単一相
のペロブスカイト構造であった。なお、この焼結体の格
子定数は、4.019オングストロームであった。この
ホットプレス焼結体から12mm×12mm×5mmの
矩形板を切り出して片面を鏡面研磨し、これをセラミッ
ク焼結体サンプルとした。
焼結体の格子定数と、種単結晶の格子定数との差は、
0.03%である。かかる種単結晶と、セラミックス焼
結体サンプルとを用いて、以下のようにして酸化物単結
晶を製造した。
レス焼結体の鏡面とを張り合わせて白金ルツボ内に入
れ、さらにその上部に重しとして数枚の同一材料のホッ
トプレス焼結体を載置した。白金ルツボを密封した後、
これらをさらにマグネシア製のルツボに入れ、電気炉内
で1280℃、170時間の熱処理を行なった。冷却
後、これらを取り出して破断面を観察したところ、粒界
は見られず、単結晶化していることが確認された。
ら、12mm×12mm×0.4mmの角板を切り出
し、ラウエx線法により単結晶化していることを確認し
た。同様の寸法の角板を10枚切り出して、スパッタ法
を用いてそれぞれの両面にNi−Au電極を形成した。
さらに、180℃のシリコンオイル中で1.5kV/m
mの電界を印加して分極処理を施し、そのまま室温まで
冷却した。その結果、分極後の振動子の割れは、10枚
中に1枚も見られなかった。
を用いて150μm幅に切断し、矩形状の電気機械結合
係数k33´を測定した結果、k33´は83%であり、そ
のバラツキは2%以内と極めて小さかった。
化物単結晶は、超音波プローブの振動子として特に有効
である。超音波プローブの一例を図2に示す。図2に示
す超音波プローブ15においては、本発明の方法によっ
て製造された単結晶材料7の上下の面には、電極9およ
び10が形成されている。8はバッキング材料、11は
音響マッチング層、12は音響レンズ、13はアース電
極、14はフレキシブルプリント板である。
に圧電特性が揃っており、高い信頼性を有する。 (実施例2)本実施例においては、Pb{(Sc1/2 N
b1/2 )0.29(Mg1/3 Nb2/3 )0.34Ti0.37}O3
からなる固溶系単結晶(以下PSMNT 29/34/
37と略す。)を製造した。
詳細に説明する。種単結晶は、75モル%酸化鉛PbO
と25%酸化ボロンとを融剤として用いたフラックス法
で作製した。出発原料として、化学的に高純度(99.
9%以上)なPbO、Sc2 O3 、MgO、Nb2 O5
およびTiO2 の粉末を使用し、上述の式で示した組成
となるように調合し、さらにフラックスとして2倍のモ
ル量のPbO−B2 O3 フラックスを加えた。この粉末
を乾式混合機械で十分に混合した後、ゴム製の容器に収
容して2トン/cm2 の圧力でラバープレスを行なっ
た。得られた塊600gを、50mmφの250cc白
金容器内に収容し、900℃まで4時間で昇温すること
によって溶解した。
とフラックスとを含有するラバープレス後の塊を、さら
に400g白金容器内に加え、白金で蓋をして電気炉の
中心に固定した。1250℃まで12時間で昇温した
後、1℃/時間の徐冷速度で800℃まで徐冷した後、
室温まで放冷した。冷却の間、白金るつぼの下部の一点
に選択的に酸素を吹き付けて冷却することによって、核
発生が1ヶ所で起こるようにした。
煮沸して単結晶を取り出し、得られた単結晶を観察し
た。その結果、得られた単結晶は矢じり状の形状であ
り、大きさは約20mm角であった。
なって結晶構造を調べたところ、完全なペロブスカイト
構造であることが確認された。また、この粉末の化学分
析をICPにより行い、組成値がほぼ仕込み値どおりの
組成になっているのを確認した。なお、この単結晶の格
子定数は、4.025オングストロームであった。
軸の方位を出してこの軸に垂直にカッターで1mm厚に
切断し、得られた試料を鏡面研磨した。次いで、この試
料から12mm角の矩形板振動子を10枚製作して、こ
れを種結晶とした。
細に説明する。セラミックス焼結体は、通常の固相反応
法を用いて以下のようにして製造した。まず、出発原料
として化学的に高純度なPbO、Sc2 O3 ,MgO、
Nb2O5 、およびTiO2 の粉末を用いて、PSMN
T 29/34/37およびPSMNT 58/00/
42の2種類の組成となるように調合した。この混合粉
末に純水を加え、ジルコニアボールを用いてナイロン製
のポットミルで20時間、混合・粉砕し乾燥させ、その
後、この粉末をアルミナさや内で800℃で仮焼した。
鉛を添加し、再び純水を加えて上記のポットミルで粉砕
した後、乾燥して粉体を得た。この粉体にバインダーと
してのPVA5%水溶液を5wt%加えて乳鉢で混合
し、48#の篩を通過させて造粒を行なった。得られた
粒子を、金型内で50MPaの圧力を加えて40mmφ
×15mmに仮成型した。
MPsで静水圧プレスを用いて成型し、500℃で4時
間、電気オーブン内で加熱することによって脱脂を行な
った。脱脂後の成型体を2重の高密度のマグネシアさや
に収容して、1250℃で3時間焼成し、さらに、11
00℃で5時間、酸素中20MPaの圧力でホットプレ
スを行なって焼結体を得た。
理論密度の99.7%であり、結晶構造は完全なペロブ
スカイト構造であった。なお、この焼結体の格子定数
は、PSMNT 29/34/37が4.025オング
ストロームであり、PSMNT58/00/42は4.
030オングストロームであった。このホットプレス焼
結体から12mm×12mm×5mmの矩形板を切り出
して片面を鏡面研磨し、これをセラミック焼結体サンプ
ルとした。
焼結体の格子定数と、種単結晶の格子定数との差は、P
SMNT 29/34/37ではほとんどなく、PSM
NT58/00/42では0.15%である。かかる種
単結晶と、セラミックス焼結体サンプルとを用いて、以
下のようにして酸化物単結晶を製造した。
レス焼結体の鏡面とを張り合わせて白金ルツボ内に入
れ、さらにその上部に重しとして数枚のホットプレス焼
結体を載置した。白金ルツボを密封した後、これらをさ
らにマグネシア製のルツボに入れ、電気炉内で1280
℃、170時間の熱処理を行なった。冷却後、これらを
とりだして破断面を観察したところ、粒界は見られず、
単結晶化していることが確認された。
ら、12mm×12mm×0.4mmの角板を切り出
し、ラウエx線法により単結晶化していることを確認し
た。同様の寸法の角板を10枚切り出して、スパッタ法
を用いてそれぞれの両面にNi−Au電極を形成した。
さらに、220℃のシリコンオイル中で2kV/mmの
電界を印加して分極処理を施し、そのまま室温まで冷却
した。その結果、分極後の振動子の割れは、10枚中に
1枚も見られなかった。
を用いて150μm幅に切断し、電気機械結合係数k33
´を測定した結果、k33´は80%であり、そのバラツ
キは2%以内と極めて小さかった。
{(Zn1/3 Nb2/3 )0.30(Mg1/3 Nb2/3 )0.23
(Sc1/2 Ta1/2 )0.18Ti0.29}O3 からなる固溶
系単結晶(以下PZMNSTT 30/23/18/2
9と略す)を作製した。
に詳細に説明する。種単結晶は、90モル%酸化鉛Pb
Oと10%酸化ボロンとを融剤として用いたフラックス
法で作製した。出発原料としては、化学的に高純度なP
bO、Sc2 O3 ,MgO、Nb2 O5 、Ta2 O5 お
よびTiO2 の粉末を使用し、これらを上述の式で示し
た組成となるように調合し、さらにフラックスとして2
倍のモル量のPbO−B2 O3 フラックスをこの混合粉
末に加えた。得られた粉末を、前述と同様にしてラバー
プレスを行なった後、溶解した。
中心に固定した。1250℃まで12時間で昇温した
後、1℃/時間の徐冷速度で800℃まで徐冷し、さら
に室温まで放冷した。冷却の間、白金るつぼの下部の一
点に選択的に酸素を吹き付けて冷却し、核発生が1ヶ所
で起こるようにした。
煮沸して単結晶を取り出し、得られた単結晶を観察し
た。その結果、得られた単結晶は矢じり状の形状であ
り、大きさは約20mm角であった。
なって、結晶構造を調べたところ、完全なペロブスカイ
ト構造であることが確認された。また、この粉末の組成
をICPにより分析したところ、ほぼ仕込み値どおりの
組成値であった。なお、この単結晶の格子定数は、4.
034オングストロームであった。
軸の方位を出して、この軸に垂直にカッターで1mm厚
に切断して得られた試料を鏡面研磨した。次いで、この
試料を12mm角に切断して矩形板振動子を10枚作製
し、これを種結晶とした。
化学的に高純度なPbO、Sc2 O3 ,MgO、Nb2
O5 、Ta2 O5 およびTiO2 の粉末を使用し、Pb
{(Zn1/3 Nb2/3 )0.30(Mg1/3 Nb2/3 )0.23
(Sc1/2 Ta1/2 )0.18Ti0.29}O3 の組成となる
ように調合した。この混合粉末に純水を加え、ジルコニ
アボールを用いてナイロン製のポットミルで20時間、
混合・粉砕し乾燥させ、その後、アルミナさや内で80
0℃で仮焼した。
の酸化鉛を添加し、再び純水を加えて上述のポットミル
で粉砕した後、乾燥して粉体を得た。この粉体にバイン
ダーとしてのPVA5%水溶液を5wt%を加えて乳鉢
で混合し、48#の篩を通過させて造粒を行なった。得
られた粒子を、金型内で50MPaの圧力を加えて40
mmφ×15mmに仮成型した。
MPsで静水圧プレスを用いて成型し、500℃で4時
間、電気オーブン内で加熱することによって脱脂を行な
った。脱脂後の成型体を2重の高密度のマグネシアさや
に収容して、1300℃で4時間焼成し、さらに、11
50℃で5時間、酸素中でホットプレスを行なって焼結
体を得た。
理論密度の99.2%であり、結晶構造は、単一層のペ
ロブスカイト構造であった、なお、この焼結体の格子定
数は、4.034オングストロームであった。このホッ
トプレス焼結体から12mm×12mm×5mmの矩形
板を切り出して片面を鏡面研磨し、これをセラミックス
焼結体サンプルとした。
晶板のSrTiO3 を用意した。この格子定数は、3.
903オングストロームである。これを基板としてその
上部に前述の30PZN−23PMN−18PST−2
9PTを載置した。
焼結体の格子定数と、種単結晶の格子定数との差は、
3.3%である。かかる種単結晶と、セラミックス焼結
体サンプルとを用いて、以下のようにして酸化物単結晶
を製造した。
レス焼結体の鏡面とを張り合わせて白金ルツボ内に入
れ、さらにその上部に重しとして数枚のホットプレス焼
結体を載置した。白金ルツボを密封した後、これらをさ
らにマグネシア製のルツボに入れ、電気炉内で1280
℃、170時間の熱処理を行なった。冷却後、これらを
取り出して破断面を観察したところ、粒界は見られず、
単結晶化していることが確認された。
ら、12mm×12mm×0.4mmの角板を切り出
し、ラウエx線法により単結晶化していることを確認し
た。同様の寸法の角板を10枚切り出して、スパッタ法
を用いてそれぞれの両面にNi−Au電極を形成した。
さらに、220℃のシリコンオイル中で2kV/mmの
電界を印加して分極処理を施し、そのまま室温まで冷却
した。その結果、分極後の振動子の割れは、10枚中に
1枚も見られなかった。
を用いて150μm幅に切断し、矩形状の電気機械結合
係数k33´を測定した結果、k33´は81%であり、そ
のバラツキは2.5%以内と極めて小さかった。
系のセラミックス焼結体と種単結晶とを用いて本発明の
方法により単結晶を製造し、実施例3においてはペロブ
スカイト構造のSrTiO3 を種結晶としたが、本発明
はこれに限定されるものではない。
トロームのMgO単結晶を用い、セラミックス材料とし
て、格子定数4.041オングストロームのPb(Mg
1/3Nb2/3 )O3 を用いて、前述と同様にして密閉容
器内で熱処理を行なったところ、同様に単結晶化が確認
された。
9オングストローム)を用いて、前述と同様の方法にて
PMN(4.04オングストローム)やPSN(4.0
8オングストローム)を作製した場合には、加熱後に得
られた酸化物は多結晶であり、さらにクラックが生じ
た。なお、この場合には、種単結晶の格子定数とセラミ
ックス焼結体の格子定数との差は、それぞれ13.6%
および11.1%である。すなわち、格子定数の差が1
0%を越える種単結晶とセラミックス焼結体とを用いた
場合には、単結晶の酸化物を得ることができないばかり
か、クラックが発生することがわかる。
ることによって、大型でもクラックや異物の発生が少な
く、しかも、分極後には安定した特性を示す単結晶が得
られることがわかった。
/32)、(PSMNT 29/34/37)および
(PZMNSTT 30/23/18/29)を例に挙
げて本発明の製造方法を説明したが、本発明は、これに
限定されるものではない。その他の同様な圧電単結晶材
料であるPb{(Sc1/2 Nb1/2 )0.58Ti0.42}O
3 やPb{(Sc1/2 Ta1/2 )0.55Ti0.37}O3 や
Pb{(Yb1/2 Nb1/2 )0.50}O3 ,Pb{(In
1/2 Nb1/2 )0.63Ti0.37}O3 などを含んだ場合も
同様な結果が得られる。
クラックや異物の発生が少なく、分極後でも安定した特
性を示す大型な単結晶が製造可能な方法が得られる。本
発明の方法によって製造された単結晶は、超音波プロー
ブの振動子として特に有効であるが、これ以外にも、非
破壊検査機器、コンデンサ材料あるいは光学材料等、単
結晶材料が使用される全ての用途に効果を発揮すること
が期待される。
図。
プローブの短冊状振動子の構成を示す斜視図。
器,4…重し 5…密閉容器,6…完成した単結晶,7…単結晶材料,
8…バッキング材料 9…電極,10…電極,11…音響マッチング層,12
…音響レンズ 13…アース電極,14…フレキシブルプリント板,1
5…超音波プローブ。
Claims (3)
- 【請求項1】 下記一般式(1)で表わされ、焼結密度
が理論密度の99%以上の複合ペロブスカイト化合物か
ら構成され、少なくとも1つの面が平滑であるセラミッ
ク焼結体の平滑面と、このセラミックス焼結体の格子定
数の±10%以内の格子定数を有し、少なくとも1つの
面が平滑である種単結晶の平滑面とを接触させる工程
と、 前記平滑面同士を接触させたセラミックス焼結体および
種単結晶を、密閉容器内で鉛雰囲気中、1000〜14
50℃の温度で加熱する工程とを具備する酸化物単結晶
の製造方法。 Pb{(B1 ,B2 )1-x Tix }O3 一般式(1) (上記一般式(1)中、xは0以上0.55以下の値で
あり、B1 はZn,Mg,Ni,Sc,YbおよびIn
から選択された少なくとも1種類であり、B2 はNbま
たはTaである。) - 【請求項2】 上記複合ペロブスカイト化合物をABO
3 と表わした際、AサイトとBサイトとの比(A/B)
が1.00以上1.10以下である請求項1記載の酸化
物単結晶の製造方法。(AはPbであり、Bは{(B
1 ,B2 )1-x Tix }である。) - 【請求項3】 上記種単結晶の組成系が、前記ペロブス
カイト化合物の組成系と同一である請求項1記載の酸化
物単結晶の製造方法。
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