JP3311872B2 - 導電性セラミックス - Google Patents

導電性セラミックス

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体電解質型燃料電池
セルのセパレータ、ガスディフーザー、およびインター
コネクタなどの集電材料あるいはセラミック発熱素子と
して好適なMCrO3 (M:周期律表第3a族元素)系
導電性セラミックスに関するものである。
【0002】
【従来技術】MCrO3 (M:周期律表第3a族元素)
で表される化合物は、高温において化学的安定性に優
れ、また電子伝導性が大きいことから固体電解質型燃料
電池セルのセパレータ、ガスディフューザ、およびイン
ターコネクタなどの集電材料あるいはセラミック発熱素
子への応用が検討されている。
【0003】固体電解質型燃料電池セルにおいては、図
1に示すようにY2 3 安定化ZrO2 の電解質1の一
面に多孔性のLaをCa、Srで置換したLaMnO3
を空気極2として形成し、他方の面にNi−ZrO
2 (Y2 3 含有)からなる燃料極3を形成して単セル
が構成されている。この単セルは上述の例えばMg、C
aなどをドープしたLaCrO3 系のセパレータ4で挟
みこまれている。
【0004】一方、高温作動のセラミックの発熱素子に
おいては、絶縁性セラミックスであるアルミナの表面に
白金などの抵抗体を形成したり、内部にタングステン等
の抵抗体を内蔵したものが使用されている。この種の発
熱素子においては、作動温度が700℃と高いことが利
点であるが、抵抗に掛かる電圧が不均一なためその結果
発熱温度が不均一となることに加えて、発熱面積が小さ
いなどの欠点がある。
【0005】この問題を克服するため特願平5−103
117号記載のようにLaCrO3 系の自己発熱型のセ
ラミック発熱素子も検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】MCrO3 (M:周
期律表第3a族元素)系材料は、上述のように固体電解
質型燃料電池セルの集電材料や各種セラミック発熱素子
として好適な材料であるが、材料強度が低いため加工の
際の製造歩留まりが悪いという問題があった。また、上
述のようにセパレータ材料は集電性を目的とする他に、
空気(酸素)と燃料ガス(例えば水素)とを分離する目
的がある。しかしながら、従来のMCrO3系材料は燃
料ガス中で結晶構造が変化して材料が膨張した際に、燃
料極側の面に引っ張り応力が発生し、これにより集電部
材が運転時に破壊するといった問題があった。
【0007】また、発熱素子として使用した場合では、
このMCrO3 自体を発熱体として使用するため、その
取扱いによっては容易に破損するなどの問題があった。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上述の
問題点を解決し、高い強度を有するMCrO3 系材料を
得るための方法について検討した結果、周期律表第3a
族元素と、Crと、Ca、Sr、Mgなどのアルカリ土
類元素を含むペロブスカイト複合酸化物を主結晶相と
し、その主結晶相以外にCa、Sr、Mgなどのアルカ
リ土類元素や、YあるいはYb、Ndなどの希土類元素
の酸化物からなる第2結晶相を分散させることにより上
記目的が達成されることを見いだし本発明に至った。
【0009】即ち、本発明の導電性セラミックスは、金
属元素として、Y、La、Ybのうちの少なくとも1種
と、Crと、Ca、Ba、SrおよびMgの群から選ば
れる少なくとも1種のアルカリ土類元素を含有するペロ
ブスカイト複合酸化物を主結晶相とし、CaO、Sr
O、BaO、MgOおよびそれらの固溶体、Y23およ
び希土類元素酸化物のうち少なくとも1種からなる第2
結晶相を体積比で0.1〜40%の割合で含有すること
を特徴とするものである。
【0010】以下、本発明を詳述する。本発明における
導電性セラミックスは、MCrO3(M:周期律表第3
a族元素)系固溶体を主結晶相とするもので、式中、M
としては具体的にはLa、Y、Yb、Sc、Sm、D
y、Nd、Pr、Ce、Gd、Erが挙げられるが、こ
れらのうち少なくともLa、Y、Ybの群から選ばれる
少なくとも1種を含む。また、このMCrO3からなる
主結晶相において、Mの一部をCa、BaおよびSrの
うちの少なくとも1種により、またはCrの一部をMg
により置換されてなる。これらアルカリ土類元素による
置換は、セラミックスの導電性を高める上で必要であ
り、全金属元素量に対して0.1〜30原子%の割合で
含有される。この比率が0.1原子%より少ないと、電
気伝導度が小さくなり、比率が30原子%を越えると水
素/水蒸気雰囲気で材料分解が起こったり、あるいは材
料表面の腐食が著しいため好ましくない。特に望ましく
は1〜20原子%がよい。
【0011】また、この導電性セラミックスは、上記主
結晶相以外に、CaO、SrO、BaO、MgOおよび
それらの固溶体、Y23、Yb23、Nd23、Dy2
3、Sc23、Sm23などの希土類元素酸化物のう
ちの少なくとも1種からなる第2結晶相を体積比率で
0.1〜40%の割合で含有する。なお、第2結晶相の
体積比率が0.1%より小さいと第2結晶相の分散によ
る強度の向上が見られない。また、この比率が40%を
越えると、同様に分散による強度の向上が見られず、電
気伝導度も小さくなる。第2結晶相の存在量としては特
に5〜20体積%の範囲が優れる。
【0012】また、導電性セラミックスの強度はセラミ
ックスを構成している結晶粒子径により変化する場合が
ある。平均結晶粒子径としては、前記主結晶相が0.5
〜20μm、第2結晶相が0.005〜10μmである
ことが強度向上効果があり、特に第2結晶相の平均粒径
は0.1〜3μmの範囲がよい。
【0013】本発明の導電性セラミックスによれば、主
結晶相を構成するCrの一部をMn、Ni、Fe、Co
でCrに対して30原子%以下の比率で置換することも
可能である。また、1700℃の低温度で焼結する場合
は、特願平6−27804号に記載のように、主結晶相
成分としてY2 3 や希土類元素酸化物を過剰に添加す
るとよい。
【0014】また、セラミックス中の金属不純物量に関
しては、高温度における耐クリープ性を向上させる観点
からAl、Si量は金属換算で全金属元素量に対してそ
れぞれ2原子%以下が好ましい。これはAl、Si量が
それぞれ2原子%を越えると粒界でガラス相を形成し
て、高温度における耐クリープ性が悪くなる傾向にある
ためである。好ましい範囲はそれぞれ0.5原子%以下
がよい。
【0015】次に本発明の導電性セラミックスを製造す
る方法について述べると、まず、原料粉末として、周期
律表第3a族元素酸化物、Cr2 3 、CaO、Mg
O、SrO等あるいは熱処理により酸化物を形成する水
酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩を用いて所定の比率で
調合した後、1000〜1600℃で1〜5時間仮焼し
た後、ボールミル等の周知の方法により粉砕を行い0.
1〜10μmの主結晶相を構成するためのペロブスカイ
ト複合酸化物粉末を作製する。第2結晶相を形成するM
gO、CaOなどのアルカリ土類元素酸化物や、Y2
3 、Yb2 3 等の酸化物はペロブスカイト複合酸化物
を形成するための仮焼前にあらかじめ添加してもよい
し、仮焼により得たペロブスカイト複合酸化物粉末に対
して添加してもよい。
【0016】上述の処理を行った粉末を所望の成形方
法、例えば金型プレス、押出成形、冷間静水圧プレス、
ドクターブレード法により成形した後、これを1300
〜2200℃の酸化性雰囲気中または還元雰囲気中で1
〜10時間焼成することにより得られる。
【0017】なお、焼成温度はその用途により適宜調整
され、例えば燃料電池セルの集電部材として用いる場合
には、開気孔率を1%以下、特に0.5%以下に小さく
する必要があるため1400〜1700℃の焼成温度が
最適である。また、製品の寸法精度を高めるためには、
仮焼後の混合粉末をさらに1000〜1600℃で1〜
10時間仮焼し粉砕した後、成形し焼成した方がよい。
【0018】次に、本発明の導電性セラミックスを燃料
電池の集電部材として用いる場合について説明する。図
1に示した平板型燃料電池セルにおいて、3〜15モル
%のY2 3 あるいはYb2 3 を含有した安定化Zr
2 または5〜30モル%のY2 3 、Yb2 3 、G
2 3 を含有したCeO2 からなる固体電解質1の片
面にLaを10〜20原子%のSr、Caで置換した多
孔性のLaMnO3 または特願平5−66935号など
の材料からなる空気極2を、他方の面には燃料極3とし
て多孔性のNi−ZrO2 (Y2 3 含有) サーメット
を形成する。これを単セルとしてセル間を接続するイン
ターコネクタと呼ばれる集電部材4が、空気極と隣接す
るセルの燃料極とを電気的に接続する。本発明の導電性
セラミックスをこの集電部材4として用いる。かかるセ
ルにおいては、空気極2には空気あるいは酸素ガス、燃
料極に水素、COおよびCO2 ガス等が供給される。こ
のため、集電部材4の一方の面が酸化性ガス、他方の面
が還元性ガスと接触し、これらを完全に隔離する必要性
から、高電気伝導性の他、高緻密質が要求され、そのた
め開気孔率としては1%以下、特に0.5%以下が好ま
しい。また、円筒型燃料電池セルにおいては、本発明の
導電性セラミックスは、円筒状燃料電池セルのインター
コネクタとしても使用することができる。
【0019】次に、本発明の導電性セラミックスを円筒
状の発熱素子として用いた場合について説明する。図2
に示す発熱素子は、円筒状焼結体からなる抵抗体5と両
端に形成した電極6、7により構成される。本発明の導
電性セラミックスは抵抗体5として使用される。この発
熱素子は電極6、7に50V以下の電圧を印加すること
により400〜1200℃の温度で作動させることが可
能である。発熱素子としては図2の円筒状の他、平板形
状をはじめ円筒スパイラル、ハニカム構造などの任意に
作製することができる。発熱素子においては、必ずしも
緻密質であることは要求されないが、素子の高温強度や
耐クリープ性の観点からは開気孔率としては20%以
下、特に10%以下であることが好ましい。
【0020】
【作用】MCrO3 (M:周期律表第3a族元素)の重
要な特性は酸化雰囲気から還元雰囲気において電気伝導
性を有することである。例えば、LaCrO3 におい
て、LaをCaで置換すると下記化1に従い、ホールが
生成し、これが電気伝導に寄与する。LaをSrやCa
で置換したり、CrをMgで置換した場合も同様であ
る。LaCrO3 の電気伝導度は下記化1で示すように
Caの置換比率により制御されるため、使用雰囲気に影
響されず安定した製品性能を有することが大きな特徴で
ある。
【0021】
【化1】
【0022】また、LaCrO3 等はその融点が220
0℃以上あるため化学的安定性に優れており、空気など
の酸化雰囲気から水素などの還元雰囲気中まで広い範囲
での使用も可能である。
【0023】しかしながら、LaCrO3 をはじめMC
rO3 は材料としての強度が低く、燃料電池のセパレー
タまたは発熱素子として用いた場合、製造中の加工時の
破損や熱衝撃による破損等の問題がある。本発明ではM
CrO3 の低強度の問題に対してペロブスカイト複合酸
化物の主結晶相以外に第2結晶相を分散することにより
強化を図ったものである。
【0024】セラミックスの場合、一般的にはウイスカ
ーや長繊維を分散させて強化することが知られている
が、このような複合セラミックスは高価なため実用的で
ない。
【0025】この為、本発明では従来の簡単な粉末作製
工程に応用可能な粒子分散強化について検討した。粒子
分散強化においては、マトリックスと分散粒子界面の結
合が緩やかでなければならない。そのような分散粒子の
種類と量について検討した結果、MgO、CaO、Y2
3 、Yb2 3 などの酸化物を分散させることにより
強度が向上することを見出だしたのである。
【0026】このように強度が向上する理由は定かでは
ないが、上述の第2結晶粒子を分散させることにより外
力を付加した際に粒子回りに応力集中が生じ破壊時のク
ラックの伝播経路に影響を与えているか、または伝播す
るクラック先端近傍に微細なクラックが形成され、その
領域の弾性率が低下しこれがクラック先端付近の応力場
の強さを小さくすることにより強度が向上すると推測さ
れる。
【0027】
【実施例】
実施例1 市販の純度99.9%の周期律表第3a族元素酸化物、
SrCO3 、BaCO3 、CaCO3 、MgCO3 およ
びCr2 3 を用い、これらを表1、2、3に示す主結
晶相組成になるように調合し、ジルコニアボールを用い
たボールミルにて12時間混合した後、1500℃で5
時間仮焼して固相反応を行わせペロブスカイト複合酸化
物粉末を作製した。そして、この仮焼粉末に対して第2
結晶相成分として表1、2のアルカリ土類元素の炭酸塩
または周期律表第3a族元素酸化物を加え、さらに12
時間混合粉砕した平均粒子径が約1〜4μmの粉末混合
体を作製した。この粉末を用い一片が4×4×40mm
の四角柱に成形し、大気中1600℃の温度で3時間焼
成した。
【0028】得られた焼結体に対して、アルキメデス法
により試料の開気孔率の測定を行い焼結性を判断した。
また、この試料を用いて電圧端子間距離を20mmとし
て、直流4端子法により1000℃、大気中の電気伝導
度を、さらにJISR1601に基づく4点曲げ強度を
測定した。その結果をまとめて表1、2、3に示した。
また、本実験では、比較のために2000℃、Ar中で
焼成したLaMg0.1CrO3 、La0.8 Ca0.2 Cr
3 、La0.8 Sr0.2 CrO3 についても同様に開気
孔率、電気伝導度、4点曲げ強度を測定した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】表1、2、3の結果から明らかなように、
第2結晶相を含まないか、あるいはその体積比率が0.
1%より小さいNo.1、2、16、17、24、29、
30、44、45、52および第2結晶相の体積比率が
40%を越えるNo.10、13、22、38、41、5
0では強度向上が見られない。また、体積比率が40%
を越えると焼結性が低下すると同時に電気伝導度も低下
した。
【0033】これに対して、本発明の導電性セラミック
スは、いずれも開気孔率が1%以下、電気伝導度が10
00℃で15s/cm以上、曲げ強度11kg/mm2
以上が達成された。また、本発明品に対してAl、Si
量をICP発光分光分析により測定した結果、いずれも
0.2原子%以下であった。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の導電性セ
ラミックスは、従来の材料に比較して同等の電気特性を
有しつつ高強度であるため製造時の加工歩留まりを向上
させることができるとともに、燃料電池セルのインター
コネクタあるいはセパレータ等に使用した場合において
も発電特性の安定した燃料電池セルを提供できる。ま
た、セラミック発熱素子として用いた場合にも、熱衝撃
に強い安定した高温作動の自己発熱型素子として利用で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平板型燃料電池セルの構造を説明するための図
である。
【図2】発熱素子の構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電解質 2 空気極 3 燃料極 4 セパレータ 5 抵抗体 6、7 電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−291728(JP,A) 特開 平7−237967(JP,A) 特開 平7−326468(JP,A) 特開 平8−12421(JP,A) 特開 平7−249414(JP,A) 特開 平8−91929(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07B 35/42 - 35/50 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素として、Y、La、Ybのうちの
    少なくとも1種と、Crと、Ca、Ba、SrおよびM
    gの群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類元素
    を含有するペロブスカイト複合酸化物を主結晶相とし、
    CaO、SrO、BaO、MgOおよびそれらの固溶
    体、Y23および希土類元素酸化物のうち少なくとも1
    種からなる第2結晶相を体積比で0.1〜40%の割合
    で含有することを特徴とする導電性セラミックス。
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