JP3370446B2 - 導電性セラミックスの製造方法 - Google Patents

導電性セラミックスの製造方法

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  • Fuel Cell (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体電解質型燃料電池
セルのセパレータ、ガスディフューザー、およびインタ
ーコネクタなどの集電材料あるいはセラミック発熱素子
として好適なMCrO3 (M:周期律表第3a族元素)
系導電性セラミックスを製造するための方法に関する。
【0002】
【従来技術】MCrO3 (M:周期律表第3a族元素)
で表される化合物は、高温において化学的安定性に優
れ、また電子伝導性が大きいことから固体電解質型燃料
電池セルのセパレータ、ガスディフューザ、およびイン
ターコネクタなどの集電材料あるいはセラミック発熱素
子への応用が検討されている。
【0003】固体電解質型燃料電池セルにおいては、図
1に示すようにY2 3 安定化ZrO2 の電解質1の一
面に多孔性のLaをCa、Srで置換したLaMnO3
を空気極2として形成し、他方の面にNi−ZrO
2 (Y2 3 含有)からなる燃料極3を形成して単セル
が構成されている。この単セルは上述の例えばMg、C
aなどをドープしたLaCrO3 系のセパレータ4で挟
みこまれている。
【0004】一方、高温作動のセラミックの発熱素子に
おいては、絶縁性セラミックスであるアルミナの表面に
白金などの抵抗体を形成したり、内部にタングステン等
の抵抗体を内蔵したものが使用されている。この種の発
熱素子においては、作動温度が700℃と高いことが利
点であるが、抵抗に掛かる電圧が不均一なためその結果
発熱温度が不均一となることに加えて、発熱面積が小さ
いなどの欠点がある。
【0005】この問題を克服するため特願平5−103
117号記載のようにLaCrO3 系の自己発熱型のセ
ラミック発熱素子も検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】MCrO3 (M=周
期律表第3a族元素)系材料は、上述のように固体電解
質型燃料電池セルの集電材料や各種セラミック発熱素子
として好適な材料であるが、MCrO3 系材料は陽イオ
ンの拡散速度が遅いことに加えて、焼結過程において材
料中からCr成分が揮発して、粒子の接触部(ネック
部)にCr2 3 として凝縮堆積して焼結を阻害する。
このため、大気中では2000℃以上の高温で焼結させ
るか、あるいは還元性雰囲気でこのCr成分の蒸発凝縮
を抑制しながら焼結させる必要がある。Crの蒸発凝縮
を抑制し得る雰囲気で焼結する場合においても1800
℃以上の高温での焼成が必要である。
【0007】このような高温での材料の作製は、経済的
な観点から燃料電池セルの量産やセラミック発熱素子へ
の応用を著しく困難にさせるとともに、製品コストを高
める大きな要因になっている。または、特開平2−11
1632号に記載されるようにLa1+x+y Cax CrO
3 のようにCaを過剰に添加して低温度で焼成する方法
もあるが、この材料は1000℃付近で使用すると相分
離を起こし、特性が劣化する場合がある。このため、こ
の材料は使用条件により必ずしも安定な材料とは言えな
いという問題があった。
【0008】また、一方LaCrO3 系材料を低温で作
製する方法として、電気化学的気相合成(EVD)法が
知られている。しかしながら、この方法は1400℃と
比較的低温でLaCrO3 系材料が作製できるものの、
LaCrO3 の成長速度が遅いため量産性に欠ける欠点
がある。これに加えて、この方法では出発原料として極
めて高価な金属塩化物を使用する必要があるため経済的
にも問題があった。
【0009】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上述の
問題点を解決するためMCrO3 (M=第3a族元素)
系材料を低温での焼成するための方法について検討を重
ねた結果、周期律表第3a族元素と、Crと、Ca、S
r、Ba、Mgなどのアルカリ土類元素を含むペロブス
カイト型複合酸化物粉末を一旦作製した後、これを成形
し焼成するにあたり、複合酸化物粉末においてその粉末
表面のCr量を内部よりも減じた粉末を用いるとCrの
蒸発が抑制される結果、焼結性が向上することを見いだ
し、本発明に至った。
【0010】即ち、本発明の導電性セラミックスの製造
方法は、金属元素として少なくとも周期律表第3a族元
素と、Crと、Ca、Ba、SrおよびMgの群から選
ばれる少なくとも1種のアルカリ土類元素を含有するペ
ロブスカイト複合酸化物粉末を含む成形体を酸化性雰囲
気中で1300〜1700℃の温度で焼成する導電性セ
ラミックスを製造する方法であって、前記ペロブスカイ
ト複合酸化物粉末の表面におけるCr量が粉末内部より
も少ないことを特徴とするものであって、特に前記ペロ
ブスカイト型複合酸化物粉末中のCrがMn、Fe、N
i、Coから選ばれる少なくとも1種により粉末表面の
み置換されてなることを特徴とするものである。
【0011】以下、本発明を詳述する。本発明において
製造される導電性セラミックスは、MCrO3 (M:周
期律表第3a族元素)系固溶体を主結晶相とするもの
で、式中、Mとしては具体的にはLa、Y、Yb、S
c、Sm、Dy、Nd、Pr、Ce、GdおよびErの
群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、こ
のMCrO3 からなる主結晶相において、Mの一部をC
a、BaおよびSrのうちの少なくとも1種により、ま
たはCrの一部をMgにより置換されてなる。これらア
ルカリ土類元素による置換は、セラミックスの導電性を
高める上で必要であり、全金属元素量に対して0.1〜
30原子%の割合で含有される。この比率が0.1原子
%より少ないと、電気伝導度が小さくなり、比率が30
原子%を越えると水素/水蒸気雰囲気で材料分解が起こ
ったり、あるいは材料表面の腐食が著しいため好ましく
ない。特に望ましくは1〜20原子%がよい。
【0012】また、この導電性セラミックスによれば、
主結晶相を構成するCrの一部をMn、Ni、Fe、C
oでCrに対して30原子%以下の比率で置換すること
も可能である。
【0013】上記MCrO3 系導電性セラミックスを製
造するには、通常、個々の金属元素の酸化物粉末を所定
の比率で混合したものを仮焼してMCrO3 系固溶体粉
末を作製した後、これを所望の形状に成形し焼成するも
のである。
【0014】本発明の導電性セラミックスの製造方法に
おける最も大きな特徴は、成形に付されるMCrO3
固溶体粉末として、その表面におけるCr量が内部より
少ない粉末を用いる点にある。この粉末表面のCr量は
全体組成中におけるCr量を意味するものである。粉末
におけるCr量の少ない領域は、通常使用される粉末、
例えば1〜20μmの大きさの粒径の粉末では表面より
50〜5000nmの深さであれば十分である。
【0015】このような特殊なMCrO3 系粉末は、例
えば、MCrO3 粉末の表面に対してCrと置換し得る
Ni、Co,Fe、Mn等を粉末表面より拡散させ内部
よりも表面においてCrへの置換量を増やすことにより
形成される。
【0016】表面のCrをMnで置換する場合を例にと
り具体的な製造方法を説明すると、まず、出発原料とし
て周期律表第3a族元素酸化物、Cr2 3 、CaO、
MgO、SrO等あるいは熱処理により酸化物を形成す
る水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩を用いて所定の比
率で調合した後、1000〜1600℃で1〜5時間仮
焼した後、ボールミル等の周知の方法により粉砕を行い
0.1〜10μmのペロブスカイト複合酸化物粉末を作
製する。
【0017】その後、この複合酸化物粉末に対して以下
の(1)〜(4)のような処理を施す。 (1)MCrO3 粉末をMnなどの置換金属酸化物、例
えばMn2 3 と混合して1000〜1500℃で熱処
理してMnとCrとを置換させる。 (2)Mnの酢酸水溶液にMCrO3 粉末を浸漬し、M
nをLaCrO3 表面に付着させた後、500〜150
0℃で熱処理して粉末表面でCrの一部をMnで置換す
る。 (3)MCrO3 粉末とMn酸化物とを非接触状態で容
器内に入れ、1000〜1500℃で熱処理してMnを
蒸発させ粉末表面のCrと置換させる。 (4)MCrO3 粉末を1000〜1700℃の温度で
減圧下で加熱処理して表面のCrを強制的に蒸発させ
る。
【0018】上記(1)〜(4)の処理によりCr2
3 が析出する場合があるが、この析出したCr2
3 は、酢酸またはpH8程度のアルカリ水溶液で溶解さ
せた後、水洗すれば容易に除去することができる。
【0019】そして、上記のような処理により表面にお
けるCr量を低減したMCrO3 系複合酸化物を用いて
所望の成形手段、例えば、金型プレス,冷間静水圧プレ
ス,押出成形、ドクターブレード法等により任意の形状
に成形後、大気などの酸化性雰囲気中で焼成するが、本
発明によれば、上記特殊な複合酸化物粉末を用いたこと
により1300〜1700℃の低温度で1〜10時間程
度行うことにより気孔率5%以下の高密度の焼結体を作
製することができる。
【0020】なお、焼成温度はその用途により適宜調整
され、例えば燃料電池セルの集電部材として用いる場合
には、開気孔率を1%以下、特に0.5%以下に小さく
する必要があるため1400〜1700℃の焼成温度が
最適である。
【0021】以上のようにして得られる導電性セラミッ
クスは、金属元素として少なくとも周期律表第3a族元
素と、Crと、Ca、Ba、SrおよびMgの群から選
ばれる少なくとも1種のアルカリ土類元素を含有するペ
ロブスカイト複合酸化物を主結晶相とするものである。
また、上述したように、複合酸化物粉末表面のCrの一
部をNi、Fe、Co、Mnで置換したことにより主結
晶相中には、これら置換元素も含まれることになる。こ
のNi、Fe、Co、Mnによる総置換量としてはCr
に対して30原子%以下に制御することが望ましい。そ
れは、その置換量が30原子%を越えると水素などの還
元雰囲気でセラミックスが分解しやすくなるためであ
る。
【0022】また、本発明の導電性セラミックスによれ
ば、上記主結晶相以外に、Ca、Ba、Sr、Mg、Y
および希土類元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物
からなる第2結晶相を含んでいてもよい。この第2結晶
相は体積比率で0.1〜40%の割合で含有するのがよ
い。この第2結晶相は、例えばCaO、SrO、Ba
O、MgOおよび(Ca,Mg)O、(Sr,Mg)O
などの固溶体や、Y2 3 、Yb2 3 、Nd2 3
Dy2 3 、Sc2 3 、Sm2 3 やそれらの固溶体
からなっている。また、焼結体の平均結晶粒子径として
は、前記主結晶相が0.5〜20μm、第2結晶相が
0.005〜10μmであることが望ましい。特に第2
結晶相の平均粒径は0.1〜3μmの範囲が高強度の点
でよい。
【0023】さらに、セラミックス中の金属不純物量に
関しては、高温度における耐クリープ性を向上させる観
点からAl、Si量は金属換算で全金属元素量に対して
それぞれ2原子%以下が好ましい。これはAl、Si量
がそれぞれ2原子%を越えると粒界でガラス相を形成し
て、高温度における耐クリープ性が悪くなる傾向にある
ためである。好ましい範囲はそれぞれ0.5原子%以下
がよい。
【0024】この第2結晶相の成分は、ペロブスカイト
型複合酸化物を仮焼により合成する前に、所定量添加し
てもよいが、望ましくは、複合酸化物粉末のCr量を減
じる処理を行った後にこれを混合して、前述したような
方法により成形、焼成することにより、さらに焼結性を
高めることができる。
【0025】次に、本発明の導電性セラミックスを燃料
電池の集電部材として用いる場合について説明する。図
1に示した平板型燃料電池セルにおいて、3〜15モル
%のY2 3 あるいはYb2 3 を含有した安定化Zr
2 または5〜30モル%のY2 3 、Yb2 3 、G
2 3 を含有したCeO2 からなる固体電解質1の片
面にLaを10〜20原子%のSr、Caで置換した多
孔性のLaMnO3 または特願平5−66935号など
の材料からなる空気極2を、他方の面には燃料極3とし
て多孔性のNi−ZrO2 (Y2 3 含有) サーメット
を形成する。これを単セルとしてセル間を接続するイン
ターコネクタと呼ばれる集電部材4が、空気極と隣接す
るセルの燃料極とを電気的に接続する。本発明の導電性
セラミックスをこの集電部材4として用いる。かかるセ
ルにおいては、空気極2には空気あるいは酸素ガス、燃
料極に水素、COおよびCO2 ガス等が供給される。こ
のため、集電部材4の一方の面が酸化性ガス、他方の面
が還元性ガスと接触し、これらを完全に隔離する必要性
から、高電気伝導性の他、高緻密質が要求され、そのた
め開気孔率としては1%以下、特に0.5%以下が好ま
しい。また、円筒型燃料電池セルにおいては、本発明の
導電性セラミックスは、円筒状燃料電池セルのインター
コネクタとしても使用することができる。
【0026】次に、本発明の導電性セラミックスを円筒
状の発熱素子として用いた場合について説明する。図2
に示す発熱素子は、円筒状焼結体からなる抵抗体5と両
端に形成した電極6、7により構成される。本発明の導
電性セラミックスは抵抗体5として使用される。この発
熱素子は電極6、7に50V以下の電圧を印加すること
により400〜1200℃の温度で作動させることが可
能である。発熱素子としては図2の円筒状の他、平板形
状をはじめ円筒スパイラル、ハニカム構造などの任意に
作製することができる。発熱素子においては、必ずしも
緻密質であることは要求されないが、素子の高温強度や
耐クリープ性の観点からは開気孔率としては20%以
下、特に10%以下であることが好ましい。
【0027】
【作用】MCrO3 (M:周期律表第3a族元素)の重
要な特性は酸化雰囲気から還元雰囲気において電気伝導
性を有することである。例えば、LaCrO3 におい
て、LaをCaで置換すると下記化1に従い、ホールが
生成し、これが電気伝導に寄与する。LaをSrやCa
で置換したり、CrをMgで置換した場合も同様であ
る。LaCrO3 の電気伝導度は下記化1で示すように
Caの置換比率により制御されるため、使用雰囲気に影
響されず安定した製品性能を有することが大きな特徴で
ある。
【0028】
【化1】
【0029】また、LaCrO3 等はその融点が220
0℃以上あるため化学的安定性に優れており、空気など
の酸化雰囲気から水素などの還元雰囲気中まで広い範囲
での使用も可能である。
【0030】しかしながら、従来のLaCrO3 系材料
は極めて高温でしか焼結できなかった。その理由は高温
でLaCrO3 中からCr成分が優先的に蒸発しやす
く、これが焼結の際粉末粒子の接触部、いわゆるネック
部にCr2 3 として堆積し、陽イオンの拡散を阻害し
焼結性を悪くする、いわゆる蒸発凝縮機構で進行するた
めであると考えられる。また、La以外の第3a族元素
とCrの酸化物も同様にCrの蒸発に起因して焼結性が
悪い。
【0031】本発明によれば、焼成前のMCrO3 系粉
末の表面付近のCr量を減少させることにより、Crの
蒸発とCr2 3 のネック部への凝縮を抑制し、その結
果、MCrO3 系材料の焼結性が著しく促進させること
ができる。また、MCrO3系粉末の表面付近のCr量
を減少させる方法として、MCrO3 原料粉末において
Crイオンとイオンサイズの近いMn、Ni、Fe、C
oによりCrの一部を置換させることにより容易に作製
することができる。この方法によれば、粉末の表面で元
素が濃縮された不均一な状態となるが、十分な温度と時
間で焼成すれば濃縮した元素は粒子内部に拡散して均一
固溶し、電気特性や機械的特性などに悪影響を及ぼすこ
ともない。
【0032】
【実施例】
実施例1 市販の純度99.9%の周期律表第3a族元素酸化物、
SrCO3 、CaCO3 、MgCO3 およびCr2 3
を用い、これらを表1に示す組成になるように調合し、
ジルコニアボールを用いたボールミルにて12時間混合
した後、1400℃で5時間仮焼して固相反応を行わせ
ペロブスカイト複合酸化物粉末を作製した。この後、こ
れを4×4×40mmの四角柱に成形した後、1500
℃で3時間焼成した。
【0033】得られた焼結体に対して、アルキメデス法
により開気孔率の測定を行い焼結性を判断した。またこ
の試料を用いて電圧端子間距離を20mmとして直流4
端子法により1000℃、大気中の電気伝導度を測定し
た。さらに、1000℃で5%の水蒸気を含む水素雰囲
気中に24時間保持した後、表面の分解の有無を観察
し、結果を表1に示した。
【0034】一方、上記のようにして作製したペロブス
カイト型複合酸化物粉末をNi、CoまたはMnの酢酸
溶液(1%濃度)に1時間浸漬して乾燥した後、100
0〜1500℃で2〜10時間大気中で熱処理して粉末
表面のCrをNi、CoまたはMnで置換した。この
後、これを約30℃に保持したpH8のアルカリ水溶液
中に10時間浸漬した後、水洗を2回行った。なお、処
理を行った粉末に対してオージェ分析を行ったところ、
粉末の表面から約500Åの深さにおいてNi、Co、
Mnが存在しCr量が内部よりも少なくなっていること
を確認した。
【0035】得られた粉末を上記と全く同様にして成形
した後、1400℃で5時間焼結させた。そして、この
焼結体に対しても上記と同様な方法により開気孔率、電
気伝導度および水素安定性を調べ、表1に示した。
【0036】また、比較のために市販の純度99.8%
のLa0.9 Sr0.1 CrO3 とLaMg0.1 Cr0.9
3 について2000℃で1時間Ar中で焼成した焼結体
に対しても上記の同様な評価を行い、その結果を表1に
示した。
【0037】
【表1】
【0038】実施例2 市販の純度99.9%の周期律表第3a族元素酸化物、
SrCO3 、CaCO3 、MgCO3 およびCr2 3
を用い、これらを表2に示す組成になるように調合し、
ジルコニアボールを用いたボールミルにて12時間混合
した後、1400℃で5時間仮焼して固相反応を行わせ
ペロブスカイト複合酸化物粉末を作製した。そして、こ
のペロブスカイト複合酸化物粉末にMn2 3 、CoO
およびNiO粉末のいずれかを0.5重量%添加し10
00〜1400℃の3〜5時間熱処理した後、約pH8
のアルカリ水溶液に5時間浸漬して析出したCr2 3
を溶解し、水洗した。なお、処理を行った粉末に対して
オージェ分析を行ったところ、粉末の表面から約400
Åの深さにおいてNi、Co、Mnが存在しCr量が内
部よりも少なくなっていることを確認した。
【0039】そして、その処理された粉末に対して、一
部は粉末に第2結晶相成分として表2のアルカリ土類元
素の炭酸塩または周期律表第3a族元素酸化物を加え、
他はそのままの粉末を12時間粉砕、または粉砕混合し
平均粒子径が約1〜3μmの粉末混合体を作製した。こ
の粉末を用い一片が4×4×40mmの四角柱に成形
し、大気中1400℃の温度で3時間焼成した。
【0040】得られた焼結体に対して、実施例1と同様
な方法により開気孔率、電気伝導度、水素安定性を調べ
その結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】表1および表2の結果から明らかなよう
に、焼成前の複合酸化物粉末に対して粉末表面のCrに
対して置換処理を行った本発明品は、置換処理を行わな
かったものに比較して焼結性が明らかに向上した。また
電気伝導度や、水素安定性については本発明品は200
0℃で焼成した比較品とほぼ同等であり、処理による特
性への影響がないことが確認された。
【0043】また、表2からも明らかなように、ペロブ
スカイト型主結晶相以外にさらに第2結晶相を含むこと
により、開気孔率がさらに小さくなり、その焼結性はさ
らに向上することがわかった。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の導電性セ
ラミックスは、従来の材料に比較して同等の電気伝導度
や水素安定性などを有しつつ低温で緻密な焼結体を作製
することができる。これにより、燃料電池セルの集電部
材や発熱素子としての製造をより容易にするとともにそ
の製造コストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平板型燃料電池セルの構造を説明するための図
である。
【図2】発熱素子の構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1 電解質 2 空気極 3 燃料極 4 セパレータ 5 抵抗体 6、7 電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 C04B 35/00 - 35/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素として少なくとも周期律表第3a
    族元素と、Crと、Ca、Ba、SrおよびMgの群か
    ら選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類元素を含有す
    るペロブスカイト複合酸化物粉末を含む成形体を酸化性
    雰囲気中で1300〜1700℃の温度で焼成する導電
    性セラミックスを製造する方法であって、前記ペロブス
    カイト複合酸化物粉末の表面におけるCr量が粉末内部
    よりも少ないことを特徴とする導電性セラミックスの製
    造方法。
  2. 【請求項2】前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末中の
    CrがMn、Fe、Ni、Coから選ばれる少なくとも
    1種により粉末表面のみ置換されてなる請求項1記載の
    導電性セラミックスの製造方法。
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