JP3134882B2 - ランタンクロマイト系複合酸化物と用途 - Google Patents

ランタンクロマイト系複合酸化物と用途

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なランタンクロマイ
ト系複合酸化物とその高温導電性材料及び高温型燃料電
池セパレータとしての用途に係る。この新規なランタン
クロマイト系複合酸化物は高導電性かつ緻密であり、高
温型燃料電池、MHD発電その他の高温導電性材料に利
用することができる。
【0002】
【従来の技術】ランタンクロマイト(LaCrO3 )は
高温において導電性をもち、かつ耐酸化性、耐還元性に
優れるために、高温の腐食性雰囲気で使用する導体材料
として極めて有望視されている酸化物系セラミックスで
ある。ランタンクロマイトにマグネシウム、カルシウ
ム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属
を微量不純物元素として添加することにより、ドーパン
トとして作用し導電率を向上させることができる。ラン
タンクロマイトはペロブスカイト構造(ABO3 〔式
中、A,Bは金属元素、Oは酸素である。〕)をなして
いる。添加したカルシウム、ストロンチウム、バリウム
はランタンクロマイト格子中ランタン位置に置換固溶し
ており、一方マグネシウムはクロム位置に置換固溶して
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記、微量元素添加ラ
ンタンクロマイトは導電率の点では十分な性能を有して
いるが、常圧大気中では緻密な焼結が得られにくく空隙
が生じるためにガスを十分に遮断できないという欠点が
ある。したがって、例えば固体電解質燃料電池のセパレ
ータ材料としてランタンクロマイトを用いようとした場
合、燃料ガスと空気を完全に分離することが不可能であ
り、この目的に用いることができなかった。
【0004】ランタンクロマイトにおいて容易に緻密な
焼結体が得られないのは、第一に焼成温度において酸化
クロムの蒸気圧が高く、ランタンクロマイトの分解によ
って生じた酸化クロム蒸気が焼結体粒界における気孔の
移動を阻害するため、焼結体中に微細な空隙として残留
するためであり(工業材料1987年11月号別冊、18ペー
ジ)、第二にイオンの体積拡散がきわめて遅く原料粉末
の界面が移動しにくいためである。
【0005】そこで、本発明はこの点を解決し緻密な焼
結体を常圧大気中で容易に得られるようにするととも
に、導電率においても従来よりも向上せしめることを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、先に、ランタンクロマイトのランタ
ンの1部をアルカリ土類金属で置換し、クロムの1部を
コバルトで置換した新規なランタンクロマイト系複合酸
化物を開示した(特開平1−196785号)。そして、上記
において、コバルトに代えて2以上の特定金属元素でク
ロムの1部を置換した場合にも同様の効果が奏せられる
ことを見い出し、本発明に到達した。
【0007】こうして、本発明は、上記目的を達成する
ために一般式La1-x x Cr1-yy 3 (式中、
はSrであり、MはNi,CoおよびZnであり、0<
x≦0.5、0<y≦0.5である。)で表わされかつ
ペロブスカイト構造を持つことを特徴とする新規なラン
タンクロマイト系複合酸化物を提供する。
【0008】同様にして、本発明は、一般式(La1-x
x a (Cr1-y y b 3 〔式中、AはSrであ
り、MはNi,CoおよびZnであり、0<x≦0.
5、0<y≦0.5であり、そして0.95≦b/a<
1又は1<b/a≦1.05である。〕で表わされ主と
してペロブスカイト構造からなることを特徴とするラン
タクロマイト系複合酸化物を提供する。
【0009】さらに、本発明によれば、上記のランタン
クロマイト系複合酸化物を用いた高温導電性材料及び高
温型燃料電池のセパレータを提供する。一般式La1-x
x Cr1-y y 3 で表わされるペロブスカイト構造
を持つランタンクロマイト系複合酸化物は、最も理想的
には、ペロブスカイト型(ABO3 )構造のAサイトに
La、BサイトにCrが配置したランタンクロマイトの
基本構造において、Laの一部がSrで置換され、かつ
さらにCrの一部がNi,CoおよびZnで置換された
構造をなしている。
【0010】また、一般式(La1-x x a (Cr
1-y y b 3 で表わされる主としてペロブスカイト
構造からなるランタンクロマイト系複合酸化物は上記の
ペロブスカイト構造(b/a=1の場合)からBサイト
とAサイトの比b/aが僅かにずれた分だけ、ペロブス
カイト構造以外の構造が含まれていると考えられる。L
aの一部をSrで置換することによって導電性が向上す
る。ただし、マグネシウムはAサイトのLaではなくB
サイトのCrと置換するので、本発明では用いない。
の置換量は、モル比で0.5まで、好ましくは0.0
5〜0.3である。これらのSrによる置換がこの範囲
内で多いほど導電性は高くなるが、この範囲を越えて増
加するともはやLaと置換しきれなくなり、ペロブスカ
イト構造以外の複合酸化物(例えばCaCrO4 ,Sr
CrO4 など)を生じ、その特性を著しく低下させる。
【0011】金属Mはランタンクロマイト格子のBサイ
トのクロムの一部と置換して酸化クロムの蒸気圧を下
げ、その蒸発を抑制するために緻密な焼結体を得ること
を可能にする異種金属である。このような金属として
は、第一には異種金属の添加によりクロムのイオン価数
を変化させる結果、蒸気圧を下げるもの、第二には焼結
で緻密化するのに重要な体積拡散又は粒界拡散を促進さ
せるものが好ましい。本発明においてこの条件を満たす
金属はNi,CoおよびZnからなる。
【0012】また、金属Mの添加も焼結体の導電率を向
上させる効果があり、Mを添加しない場合の2倍以上の
導電率が得られる。Mの置換量の合計はモル比で0<y
≦0.5、好ましくは0.05≦y≦0.3である。M
の添加量が多くなると、ランタンクロマイト格子中への
固溶が困難になる。Ni,Co,ZnはそれぞれLaN
iO3 ,LaCoO3 ZnOが生成するようになる。
LaNiO3 LaCoO 3 などは電子導電性のほかに
酸素イオン導電性を有し、また、還元性雰囲気下で不安
定なのでランタンクロマイトとしての特性を劣化させ
る。またZnOなどは酸化雰囲気下で電子導電性が低
く、電気導電材料としては不向きである。従って、Mの
添加量はこれらの酸化物が生成しない量か、生成しても
その量ができるだけ少ないことが望ましい。
【0013】一般式(La1-x x a (Cr
1-y y b 3 においてb/aは必ずしも1である必
要はなく、その前後でも同様な効果を奏することができ
るが、b/aを1から若干ずらした場合にはセラミック
スの強度を向上する効果を奏する。本発明の材料は特に
Feの添加により焼結性に優れ、緻密な焼結体を得るこ
とができるが、焼結体は多結晶より構成されており、一
般的に焼結性の向上は結晶粒径の拡大を促し、結晶粒径
が大きくなるにつれてセラミックス強度が低下する。こ
れはアルミナや安定化ジルコニアにおいてもよく知られ
た現象である。そこで、b/aの比を1から若干ずらす
ことによって、多結晶中にペロブスカイト構造以外の構
造を入れることで、粒径を抑制し、これによってセラミ
ックス強度の向上を図ることができる。但し、b/aが
1からあまり大きくずれてしまうと、ペロブスカイト構
造以外のランタン酸化物やクロム酸化物などが増加し、
これらは粒子界面にあって電気導電性を低下させるので
好ましくない。そこで、b/aは0.95〜1.05の
範囲内とする。
【0014】本発明の新規なランタンクロマイト系複合
酸化物の製造手法自体は慣用法に従うことができる。す
なわち、ランタン源、ストロンチウム源、クロム源、M
源を所定比に混合した粉末混合物を所定の温度、一般的
には、1000〜1600℃、好ましくは1000〜1
200℃で仮焼して得ることができる。仮焼時間は一般
に1〜数十時間、好ましくは1〜10時間である。仮焼
雰囲気は大気中等の酸素含有雰囲気中で行なう。仮焼時
の圧力は大気圧でよい。
【0015】仮焼粉末の成形、焼成も慣用法に従うこと
ができるが、焼成温度は一般に1300℃以上で、好ま
しくは1500℃〜1600℃、焼成時間は焼成体の形
状に依存するが一般に1〜10時間、好ましくは1〜2
時間、焼成雰囲気は酸素含有雰囲気である。本発明のラ
ンタンクロマイト系複合酸化物は常圧焼結でも緻密な焼
結体が得られることを特徴としているが、加圧下で焼結
することを排斥するわけではない。
【0016】こうして得られる微量元素添加ランタンク
ロマイト焼結体は、常圧大気中における焼成によっても
95%以上の相対密度を得ることができ、かつ導電率も
従来組成のものと比較して2倍以上の値を得ることがで
きる。しかも、この焼結体は耐酸化性、耐還元性に優れ
ているので、高温下で耐食性と導電性の両方が要求され
る高温導電性材料として有用である。とくに、導電性を
有しかつ耐食性と緻密性を有する点で、固体電解質型燃
料電池のセパレータ材料として有用である。
【0017】図1にプラナー型固体電解質燃料電池の構
造の例を示す。同図中、1は固体電解質(例、Y安定化
ジルコニア)のシートで上面にカソード(例、La0.9
Sr 0.1 MnO3 )2、下面にアノード(例、NiO/
ZrO2 サーメット)3が形成されている。4がセパレ
ータで本発明の新規なランタンクロマイト系複合酸化物
で作る。5は4と同じくランタンクロマイト系複合酸化
物で作るが、外部出力端子として使われる。図1に見ら
れる通り、セパレータ4はそれに形成された溝によって
空気6及び燃料(例、水素)7の流路を構成しかつ空気
6と燃料7を分離するセパレータであると共に、隣接す
る単位セルのアノード3とカソード2とを電気的に接続
する役割をも担うものである。外部出力端子5は集積さ
れた単位セルの両端部において空気6と燃料7の流路を
形成すると共にアノード3又はカソード2との電気的接
続を行なう部材でもあり、これも本発明のランタンクロ
マイト系複合酸化物で構成する。また、図1は2つの単
位セルを集積した燃料電池を示したが、3つ以上の単位
セルを集積することも可能で、その場合には各単位セル
間にセパレータ4を挿入する。
【0018】
【実施例】実施例1(b/a=1)酸化ランタン26.
065g、炭酸ストロンチウム5.905g、酸化第二
クロム12.919g、四三酸化コバルト0.803
g、酸化第二ニッケル0.827g、酸化亜鉛0.81
4gを秤量し、メノウ乳鉢を用いて湿式混合した。この
組成はLa0.8 Sr0.2 Cr0.85CO0.05Ni0.05Zn
0.053 に相当する。この混合粉末を1200℃にて1
時間仮焼した。昇温速度は20℃/minである。こう
して得られたランタンクロマイト粉末をX線回折法によ
り分析した結果、第二相の存在は確認できず、コバル
ト、ニッケル及び亜鉛はペロブスカイト構造をもったラ
ンタンクロマイト格子中に固溶していることがわかっ
た。この粉末を300Kgf/cm2の荷重でフローテ
ィング成形し、1600℃にて2時間本焼成した(昇温
速度は5℃/min)。こうして得られた焼結体につい
て、密度ならびに導電率を測定した。その結果、密度に
して6.3g/cm3 、空気中1000℃における導電
率にして40S/cmを得た。また、この焼結体を走査
型電子顕微鏡ならびにEDX分光分析によって元素の分
布を観察したが、偏析等は見られず添加したコバルト、
ニッケル及び亜鉛は均一にクロムと置換していることが
わかった。
【0019】比較のために、以上のものと同製法にて作
成したLa0.8 Sr0.2 CrO3 組成の焼結体(比較
例)においては密度5.0g/cm3 (相対密度76
%)、1000℃における導電率にして18S/cmで
あった。このように、ランタンクロマイト中のクロムの
一部を他の複数の遷移金属元素で置換することによって
密度、導電率ともに向上することがわかる。実施例2 (b/a=0.97)酸化ランタン26.06
5g、炭酸ストロンチウム5.905g、酸化第二クロ
ム12.531g、四三酸化コバルト0.779g、酸
化第二ニッケル0.802gおよび酸化亜鉛0.790
gを秤量し、メノウ乳鉢を用いて湿式混合した。この組
成はLa0.8 Sr0.2 Cr0.825 Co0.048 Ni0.048
Zn0.048 3 に相当する。この混合粉末を実施例1と
同様にして焼成した。
【0020】得られた焼成生成物(粉末)はX線回折法
により分析すると、殆んどペロブスカイト構造であっ
た。この粉末を用いて実施例1と同様にして焼結体を調
製し、密度、導電率、曲げ強度、平均粒径を測定した。
結果を表1に示す。実施例3 (b/a=1.02)酸化ランタン26.06
5g、炭酸ストロンチウム5.905g、酸化第二クロ
ム13.177g、四三酸化コバルト0.819g、酸
化第二ニッケル0.843gおよび酸化亜鉛0.830
gを秤量し、メノウ乳鉢を用いて湿式混合した。この組
成はLa0.8 Sr0.2 Cr0.867 Co0.051 Ni0.051
Zn0.051 3 に相当する。この混合粉末を実施例1と
同様にして焼成した。
【0021】得られた焼成生成物(粉末)はX線回折法
により分析すると、殆んどペロブスカイト構造であっ
た。この粉末を用いて実施例1と同様にして焼結体を調
製し、密度、導電率、曲げ強度、平均粒径を測定した。
結果を表1に示す。
【0022】
【表1】 表1の結果より、Sr,Co,Ni及びZnの添加によ
り焼結体の密度(焼結性)、導電率ともに向上している
こと、またAサイト、Bサイトの組成比b/aを1から
若干ずらすことにより機械的強度が向上し、かつ密度、
導電率は損なわれていないことが見られる。
【0023】
【発明の効果】本発明により提供される新規ランタンク
ロマイト系複合酸化物は、常圧大気中で容易に緻密化
し、かつ導電率も優れているので、高温で使用する安定
な導体材料を提供することができ、とくに高温型燃料電
池のセパレータとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】平板型固体電解質型燃料電池の模式図である。
【符号の説明】
1…固体電解質 2…カソード 3…アノード 4…接合体 5…外部出力端子 6…空気 7…燃料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 利彦 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社 総合研究所内 (72)発明者 櫻田 智 埼玉県入間郡大井町西鶴ヶ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社 総合研究所内 (56)参考文献 特開 平2−279524(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 C04B 35/00 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式La1-x x Cr1-y y
    3 (式中、AはSrであり、MはNi,CoおよびZn
    であり、0<x≦0.5、0<y≦0.5である。)で
    表わされかつペロブスカイト構造を持つことを特徴とす
    るランタンクロマイト系複合化合物。
  2. 【請求項2】 一般式(La1-x x a (Cr1-y
    y b 3 〔式中、AはSrであり、MはNi,Coお
    よびZnであり、0<x≦0.5、0<y≦0.5であ
    り、そして0.95≦b/a<1又は1<b/a≦1.
    05である。〕で表わされ主としてペロブスカイト構造
    からなることを特徴とするランタンクロマイト系複合酸
    化物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のランタンクロマイ
    ト系複合酸化物からなる高温導電性材料。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載のランタンクロマイ
    ト系複合酸化物からなるセパレータを有する高温型燃料
    電池セパレータ。
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