JP2836852B2 - 固体電解質型燃料電池セパレータ - Google Patents

固体電解質型燃料電池セパレータ

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喜幸 染谷
利彦 吉田
功 向沢
浩之 岩崎
淳 角田
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はランタンクロマイト系複合酸化物を用いた固
体電解質型燃料電池セパレータに係る。
〔従来の技術〕
ランタンクロマイト(LaCrO3)は高温において導電性
をもち、かつ耐酸化性、耐還元性に優れるために、高温
の腐食性雰囲気で使用する導体材料として極めて有望視
されている酸化物系セラミックスである。
ランタンクロマイトにマグネシウム、カルシウム、ス
トロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属を微量
不純物元素として添加することにより、導電率を向上さ
せることができる。ランタンクロマイトはペロブスカイ
ト構造(ABO3〔式中、A,Bは金属元素、Oは酸素であ
る。)〕をなしている。添加したカルシウム、ストロン
チウム、バリウムはランタンクロマイト格子中ランタン
位置に置換固溶しており、一方マグネシウムはクロム位
置に置換固溶している。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記、微量元素添加ランタンクロマイトは導電率の点
では十分な性能を有しているが、常圧大気中では緻密な
焼結が得られにくく空隙が生じるためにガスを十分に遮
断できないという欠点がある。したがって、例えば固体
電解質燃料電池のセパレータ材料としてランタンクロマ
イトを用いようとした場合、燃料ガスと空気を完全に分
離することが不可能であり、この目的に用いることがで
きなかった。
ランタンクロマイトにおいて容易に緻密な焼結体が得
られないのは、第一に焼成温度において酸化クロムの蒸
気圧が高く、ランタンクロマイトの分解によって生じた
酸化クロムが蒸発して泡となって焼結体中に残留するた
めであり、第二にイオンの拡散がきわめて遅く原料粉末
の界面が移動しにくいためである。
そこで、本発明はこの点を解決し緻密な焼結体を常圧
大気中で容易に得られるようにするとともに、導電率に
おいても従来よりも向上せしめて固体電解質型燃料電池
のセパレータとして用いることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上記目的を達成するために、一般式La1-xM
xCr1-yCoyO3(式中、Mはマグネシウムを除くアルカリ
土類金属であり、0<x≦0.5であり、0<y≦0.5であ
る。)で表わされ、ペロブスカイト構造を持ち、かつ10
00℃空気中で電気伝導度が20Ω-1cm-1以上であり、更に
密度が理論密度の90%以上であるランタンクロマイト系
複合酸化物からなる固体電解質型燃料電池を提供する。
この新規なランタンクロマイト系複合酸化物は、上記
一般式で表わされるペロブスカイト型構造を有し、最も
理想的には、ペロブスカイト型(ABO3)構造のAサイト
にLa、BサイトにCrが配置したランタンクロマイトの基
本構造において、Laの一部がアルカリ土類金属で置換さ
れ、かつさらにCrの一部がCoで置換された構造をなして
いると考えられる。
Laの一部をアルカリ土類金属で置換することによって
導電性が向上する。ただし、マグネシウムはAサイトの
LaではなくBサイトのCrと置換するので、本発明では用
いない。アルカリ土類金属の置換量は、モル比で0.5ま
で、好ましくは0.2〜0.5である。これらのアルカリ土類
金属による置換がこの範囲内で多いほど導電性は高くな
るが、この範囲を越えて増加するともはやLaと置換しき
れなくなり、ペロブスカイト構造以外の複合酸化物(例
えばCaCrO4、SrCrO4など)を生じ、その特性を著しく低
下させる。
コバルトはランタンクロマイト格子のBサイトのクロ
ムの一部と置換して酸化クロムの蒸気圧を下げ、その蒸
発を抑制するために緻密な焼結体を得ることが可能にな
る。また、コバルトの添加も焼結体の導電率を向上させ
る効果があり、コバルトを添加しない場合の2倍以上の
導電率が得られる。コバルトの置換量はモル比で0<y
<1、より好ましくは0<y≦0.5である。コバルトの
添加量が多くなると、ランタンクロマイト格子中への固
溶が困難になり、ランタンコバルタイト(LaCoO3)が生
成するようになる。このランタンコバルタイトは電子導
電性のほかに酸素イオン導電性を有し、また、還元性雰
囲気下で不安定なのでランタンクロマイトとしての特性
を劣化させる。従って、コバルトの添加量はランタンコ
バルタイトが生成しない量か、生成してもその量ができ
るだけ少ないことが望ましい。
本発明の新規なランタンクロマイト系複合酸化物の製
造手法自体は慣用法に従うことができる。すなわち、ラ
ンタン源、アルカリ土類金属源、クロム源、コバルト源
を所定比に混合した粉末混合物を所定の温度、一般的に
は、1000〜1600℃、好ましくは1000〜1200℃で仮焼して
得ることができる。仮焼時間は一般に1〜数十時間、好
ましくは1〜10時間である。仮焼雰囲気は大気中等の酸
素含有雰囲気中で行う。仮焼時の圧力は大気圧でよい。
仮焼粉末の成形、焼成も慣用法に従うことができる
が、焼成温度は一般に1300℃以上で、好ましくは1500℃
〜1600℃、焼成時間は焼成体の形状に依存するが一般に
1〜10時間、好ましくは1〜2時間、焼成雰囲気は酸素
含有雰囲気である。本発明のランタンクロマイト系複合
酸化物は常圧焼結でも緻密な焼結体が得られることを特
徴としているが、加圧下で焼結することを排斥するわけ
ではない。
こうして得られる微量元素添加ランタンクロマイト焼
結体は、常圧大気中における焼成によっても90%以上、
特に99%以上の相対密度を得ることができ、かつ導電率
も従来組成のものと比較してそれより高く(20S/cm以
上)かつ2倍以上の値をも得ることができる。
しかも、この焼結体は耐酸化性、耐還元性に優れてい
るので、高温下で耐食性と導電性の両方が要求される高
温導電性材料として有用である。とくに、導電性を有し
かつ耐食性と緻密性を有する点で、固体電解質型燃料電
池のセパレータ材料として有用である。
第1図にプラナー型固体電解質燃料電池の構造の例を
示す。同図中、1は固体電解質(例、Caの安定化ジルコ
ニア)のシートで上面にカソード(例、La0.9Sr0.1Mn
O3)2、下面にアノード(例、NiO/ZrO2サーメット)3
が形成されている。4がセパレータで本発明の新規なラ
ンタンクロマイト系複合酸化物で作る。5は4と同じく
ランタンクロマイト系複合酸化物で作るが、外部出力端
子として使われる。第1図に見られる通り、セパレータ
4はそれに形成された溝によって空気6及び燃料(例、
水素)7の流路を構成しかつ空気6と燃料7を分離する
セパレータであると共に、隣接する単位セルのアノード
3とカソード2とを電気的に接続する役割をも担うもの
である。外部出力端子25は集積された単位セルの両端部
において空気6と燃料7の流路を形成すると共にアノー
ド3又はカソード2との電気的接続を行なう部材でもあ
り、これも本発明の耐熱部品で構成する。また、第1図
は2つの単位セルを集積した燃料電池を示したが、3つ
以上の単位セルを集積することも可能で、その場合には
各単位セル間にセパレータ4を挿入する。
〔実施例〕
例1 酸化ランタン11.057g、炭酸ストロンチウム2.505g、
酸化第二クロム5.803g、酸化第一コバルト0.636gを秤量
し、メノウ乳鉢を用いて湿式混合した。この組成はLa
0.8Sr0.2Cr0.9Co0.1O3に相当する。この混合粉末を1200
℃にて1時間仮焼した。昇温速度は20℃/minである。こ
うして得られたランタンクロマイト粉末をX線回折法に
より分析した結果、第二相の存在は確認できず、コバル
トはペロブスカイト構造をもったランタンクロマイト格
子中に固溶していることがわかった。
この粉末を300kgf/cm2の荷重でフローティング成形
し、1600℃にて2時間本焼成した(昇温温度は5℃/mi
n)。
こうして得られた焼結体について、密度ならびに導電
率を測定した。
その結果、密度にして6.5g/cm3(相対密度99%以
上)、1000℃における導電率にして49S/cmを得た。
また、この焼結体を走査型電子顕微鏡ならびにEDX分
光分析によって元素の分布を観察したが、偏析等は見ら
れず添加したコバルトは均一にクロムと置換しているこ
とがわかった。
比較のために、以上のものと同製法にて作製したLa
0.8Sr0.2CrO3組成の焼結体においては密度5.0g/cm3(相
対密度76%)、1000℃における導電率にして18S/cmであ
った。
このように、コバルトを添加することによって密度、
導電率ともにかなり向上していることがわかる。
例2〜6 例1とほぼ同様の手法により、但し原料粉末秤量後、
ボールミルにて48h以上湿式混合し、乾燥してから1200
℃、2時間の仮焼(昇温速度20℃/min)を行なって、下
記組成の焼結体を作製した。その導電率及び密度を測定
した結果と共に下記表に示す。
表中の相対密度は、ランタンクロマイトの理論密度を
6.5g/cm3としている。
この表から、Sr置換基の増加とともに導電率が向上
し、密度が低下すること、そしてCo置換量の増加ととも
に導電率が向上していることが認められる。
これらの焼結体のX線チャートを第2〜6図に示す。
〔発明の効果〕
本発明により提供されるランタンクロマイト系複合酸
化物は、常圧大気中で容易に緻密化し、かつ導電率も優
れているので、高温で使用する安定な導体材料であり、
固体電解質型燃料電池のセパレータとして有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図はプラナー型固体電解質型燃料電池の模式図であ
り、第2〜6図はそれぞれ例2〜6の焼結体のX線チャ
ートである。 1……固体電解質、2……カソード、3……アノード、
4……接合体、5……外部出力端子、6……空気、7…
…燃料。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 利彦 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 向沢 功 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 岩崎 浩之 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (72)発明者 角田 淳 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭51−150692(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式La1-xMxCr1-yCoyO3(式中、Mはマ
    グネシウムを除くアルカリ土類金属であり、0<x≦0.
    5であり、0<y≦0.5である。)で表わされ、ペロブス
    カイト構造を持ち、かつ1000℃空気中で電気伝導度が20
    S/cm以上であり、更に密度が理論密度の90%以上である
    ランタンクロマイト系複合酸化物からなる固体電解質型
    燃料電池セパレータ。
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