JP3305991B2 - 熱電半導体材料、その製造方法およびこれを用いた熱電モジュールおよび熱間鍛造方法 - Google Patents

熱電半導体材料、その製造方法およびこれを用いた熱電モジュールおよび熱間鍛造方法

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JP3305991B2 JP25062497A JP25062497A JP3305991B2 JP 3305991 B2 JP3305991 B2 JP 3305991B2 JP 25062497 A JP25062497 A JP 25062497A JP 25062497 A JP25062497 A JP 25062497A JP 3305991 B2 JP3305991 B2 JP 3305991B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電半導体材料、
その製造方法およびこれを用いた熱電モジュールさらに
は熱間鍛造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ペル
チェ効果、あるいはエッチングスハウゼン効果を利用し
た電子冷却素子、あるいはゼ―ベック効果を利用した熱
電発電素子は、構造が簡単で、かつ取扱いが容易で安定
な特性を維持できることから、広範囲にわたる利用が注
目されている。特に電子冷却素子としては、局所冷却お
よび室温付近の精密な温度制御が可能であることから、
オプトエレクトロニクス、半導体レーザなどの恒温化な
どに向けて広く研究が進められている。
【0003】この電子冷却および熱電発電に用いる熱電
モジュールは、図12に示すようにp型半導体5とn型
半導体6とを金属電極7を介して接合してpn素子対を
形成し、このpn素子対を複数個直列に配列し、接合部
を流れる電流の方向によって一方の端部が発熱せしめら
れると共に他方の端部が冷却せしめられるように構成さ
れている。この熱電素子の材料には、その利用温度域
で、物質固有の定数であるゼーベック係数αと比抵抗ρ
と熱伝導率Kによって表わされる性能指数Z(=α2
ρK)が大きな材料が用いられる。熱電半導体材料の多
くはその結晶構造に起因した熱電性能の異方性をもつ、
すなわち性能指数Zが結晶方位により異なる。そのた
め、単結晶材料では熱電性能の大きな結晶方位に通電し
使用する。一般に異方性結晶は劈開性をもち材料強度が
脆弱であるため、実用材としては単結晶は使用せず、ブ
リッジマン法などで一方向凝固させ熱電性能の大きな結
晶方位に配向させた多結晶が使用される。しかしなが
ら、多結晶材料も単結晶程ではないが材料強度が脆弱で
あり、素子加工時に素子の割れやかけが生じ易いという
問題がある。これら結晶材料に対し、粉末焼結材料は劈
開性がなく材料強度が飛躍的に向上するが、結晶方位の
配向がランダムあるいは結晶配向性をもつものの緩やか
な分布をもつために、熱電性能が結晶材料に比べ劣って
しまうという問題があった。このように十分な強度と性
能をもち合わせた熱電半導体材料は従来存在しなかっ
た。すなわち、電子冷却素子として一般に用いられる結
晶材は、テルル化ビスマス(Bi2Te3)、テルル化ア
ンチモン(Sb2Te3)およびセレン化ビスマス(Bi
2Se3)の混晶系であるが、これら結晶は著しい劈開性
を有しており、インゴットから熱電素子を得るためのス
ライシング、ダイシング工程等を経ると、割れや欠けの
為に歩留りが極めて低くなるという問題があった。
【0004】そこで、機械的強度の向上のために粉末焼
結素子を形成する試みがなされている。このように結晶
としてではなく、粉末焼結体として用いると劈開性の問
題はなくなるが、先に述べたように配向性が低いために
その性能が劣る。すなわち、性能指数Zが小さいという
問題があった。 本発明は、前記実情に鑑みてなされた
もので、十分な強度と性能を具備し、製造歩留りの高い
熱電半導体材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段(および作用効果)】そこ
で、本発明の第1では、所望の組成をもつように材料粉
末を混合し、加熱溶融せしめる加熱工程と、菱面体構造
(六方晶構造)を有する熱電半導体材料の固溶インゴッ
トを形成する凝固工程と、前記固溶体インゴットを粉砕
し固溶体粉末を形成する粉砕工程と、前記固溶体粉末の
粒径を均一化する整粒工程と、粒径の均一となった前記
固溶体粉末を加圧焼結せしめる焼結工程と、この粉末焼
結体を熱間で塑性変形させ、展延することで、粉末焼結
組織の結晶粒が性能指数の優れた結晶方位に配向せしめ
る熱間すえこみ鍛造工程とを含むことを特徴とする。
【0006】望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工程
は、熱間で前記粉末焼結体を一軸方向のみ展延させるす
えこみ鍛造工程であることを特徴とする。
【0007】また望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工
程は、前記焼結工程における加圧方向と一致する方向に
加圧しつつ展延する工程であることを特徴とする。
【0008】更に望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工
程の後さらに、熱処理を行う熱処理工程を含むことを特
徴とする。
【0009】本発明の第2では、所望の組成のビスマ
ス、アンチモン、テルル、セレンを主成分とする混合物
を加熱溶融せしめ、Bi2Te3系熱電半導体材料の固溶
体インゴットを形成するインゴット形成工程と、前記固
溶体インゴットを粉砕し固溶体粉末を形成する粉砕工程
と、前記固溶体粉末の粒径を均一化する整粒工程と、粒
径の均一となった前記固溶体粉末を加圧焼結せしめる焼
結工程と、この粉末焼結体を熱間で塑性変形させ、展延
することで、粉末焼結組織の結晶粒が性能指数の優れた
結晶方位に配向せしめる熱間すえこみ鍛造工程とを含む
ことを特徴とする。
【0010】望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工程
は、熱間で前記粉末焼結体を一軸方向のみ展延させるす
えこみ鍛造工程であることを特徴とする。
【0011】望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工程
は、前記焼結工程における加圧方向と一致する方向に加
圧しつつ展延する工程であることを特徴とする。
【0012】また望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工
程の後さらに、熱処理を行う熱処理工程を含むことを特
徴とする。
【0013】さらに望ましくは、前記整粒工程後、前記
焼結工程に先立ち、前記固溶体粉末を水素雰囲気中で熱
処理する水素還元工程を含むことを特徴とする。
【0014】本発明の第3では、所望の組成のビスマ
ス、アンチモンを主成分とする混合物を、加熱溶融せし
め、BiSb系熱電半導体材料の固溶体インゴットを形
成するインゴット形成工程と、前記固溶体インゴットを
粉砕し固溶体粉末を形成する粉砕工程と、前記固溶体粉
末の粒径を均一化する整粒工程と、粒径の均一となった
前記固溶体粉末を加圧焼結せしめる焼結工程と、この粉
末焼結体を塑性変形させ、展延することで、粉末焼結組
織の結晶粒が性能指数の優れた結晶方位に配向せしめる
熱間すえこみ鍛造工程とを含むことを特徴とする。
【0015】望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工程
は、熱間で前記粉末焼結体を一軸方向のみ展延させるす
えこみ鍛造工程であることを特徴とする。
【0016】望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工程
は、前記焼結工程における加圧方向と一致する方向に加
圧しつつ展延する工程であることを特徴とする。
【0017】また望ましくは、前記熱間すえこみ鍛造工
程の後さらに、熱処理を行う熱処理工程を含むことを特
徴とする。
【0018】本発明の第4では、BiSb系熱電半導体
材料の粉末焼結材を熱間ですえこみ鍛造し、塑性変形さ
せることで、粉末焼結組織の結晶粒が性能指数の優れた
結晶方位に配向するように形成した熱電半導体材料を提
供することを特徴とする。
【0019】本発明の第5では、Bi2Te3系熱電半導
体材料の粉末焼結材を熱間ですえこみ鍛造し、塑性変形
させることで、粉末焼結組織の結晶粒のc軸が配向する
ように形成した熱電半導体材料を提供することを特徴と
する。
【0020】本発明の第6では、BiSb系熱電半導体
材料の粉末焼結材を一軸方向のみ展延しうる状態にして
熱間すえこみ鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼結
組織の結晶粒が性能指数の優れた結晶方位に配向するよ
うに形成した熱電半導体材料を提供することを特徴とす
る。
【0021】本発明の第7では、Bi2Te3系熱電半導
体材料の粉末焼結材を一軸方向のみ展延しうる状態にし
て熱間すえこみ鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼
結組織の結晶粒のc軸が配向するように形成した熱電半
導体材料を提供することを特徴とする。
【0022】本発明の第8では、菱面体構造(六方晶構
造)を有するp型およびn型の熱電半導体材料の粉末焼
結材をそれぞれ熱間すえこみ鍛造し、塑性変形させるこ
とで、粉末焼結組織の結晶粒の劈開面が揃うように配向
したp型およびn型の熱電半導体材料と、前記p型およ
びn型の熱電半導体材料の上面および下面に互いに相対
向するように固着せしめられた各々1対の電極とを具備
し、電流が前記劈開面に沿って流れるように構成した熱
電モジュールを提供することを特徴とする。
【0023】本発明の第9では、p型およびn型のBi
2Te3系熱電半導体材料の粉末焼結材をそれぞれ熱間す
えこみ鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼結組織の
結晶粒のc軸が配向したp型およびn型の熱電半導体材
料と、前記p型およびn型の熱電半導体材料の上面およ
び下面に互いに相対向するように固着せしめられた各々
1対の電極とを具備し、電流が前記c軸に垂直な方向に
沿って流れるように構成した熱電モジュールを提供する
ことを特徴とする。
【0024】本発明の第10では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体を、粒成長温度以下で熱間すえこ
み鍛造する工程であることを特徴とする。
【0025】本発明の第11では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体を、350°C以上550°C以
下で熱間すえこみ鍛造する工程であることを特徴とす
る。
【0026】本発明の第12では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体の密度比が最終的に97%以上に
なるように熱間すえこみ鍛造する工程であることを特徴
とする。
【0027】本発明の第13では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、密度比が97%以上の粉末焼結体を、熱間す
えこみ鍛造することにより、最終的に、当該密度比以上
にする工程であることを特徴とする。
【0028】本発明の第14では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体を、500kg/cm2 以下の荷
重圧力で、熱間すえこみ鍛造する工程であることを特徴
とする。
【0029】本発明の第15では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体を、70kg/cm2以上350k
g/cm2以下の初期荷重圧力で、熱間すえこみ鍛造する
工程であることを特徴とする。
【0030】本発明の第16では、上記熱間すえこみ鍛
造工程は、粉末焼結体を、自由方向に展延した後、当該
自由方向を規制した状態で更に加圧する工程であること
を特徴とする。
【0031】本発明の第17では、上記熱間すえこみ鍛
造工程の後、さらに、粉末焼結体を、熱間で型入れ鍛造
する熱間型鍛造工程を行うようにしたことを特徴とす
る。
【0032】本発明の第18では、上記熱間すえこみ鍛
造工程を複数回繰り返し行うようにしたことを特徴とす
る。
【0033】本発明の第19では、BiSb系熱電半導
体材料の粉末焼結材を、熱間ですえこみ鍛造し、塑性変
形させることで、密度比を97%以上にしたことを特徴
とする。
【0034】本発明の第20では、Bi2Te3系熱電半
導体材料の粉末焼結材を、熱間ですえこみ鍛造し、塑性
変形させることで、密度比を97%以上にしたことを特
徴とする。
【0035】本発明の方法では、熱電半導体材料の単結
晶が元来もつ熱電性能の異方性に着目し、強度はあるが
結晶粒の配向性が劣る粉末焼結インゴットを熱間すえこ
み鍛造で塑性変形させることで結晶配向を改善する。こ
れにより、強度を維持しつつ性能の良好な熱電半導体材
料を得ることができる。熱間鍛造の塑性変形に伴い圧縮
方向にインゴットは縮み、一方圧縮面方向にインゴット
は展伸する。この変形によりインゴット内の結晶粒は偏
平に塑性変形を起こしつつ、劈開面が圧縮方向に垂直と
なるように配向する。この結果、十分な強度と性能をも
つ熱電半導体材料を得ることができる。またBi2Te3
系熱電半導体材料では、c軸が圧縮方向に配向する。
【0036】従って、機械的強度が高くかつ配向性に優
れ信頼性の高い熱電モジュールを得ることが可能とな
る。
【0037】また本発明では、単結晶ではなく、粉末焼
結体を熱間すえこみ鍛造することによって形成されるた
め、組成比を比較的自由に選択でき、性能指数Zの高い
ものを得ることができる。
【0038】また、単結晶あるいは多結晶のインゴット
をそのまま用いた場合に比べ、割れ等による製造歩留り
の低下も大幅に低減される。なお、ここでBi2Te3
熱電半導体材料とは、Bi2ーxSbxTe3ーy-zSeyz
(0≦x≦2、0≦y+z≦3)であらわされるものを
いい、結晶中に不純物を含むものも含まれるものとす
る。同様に、BiSb系半導体とは、Bi1-xSbx(0
<x<1)であらわされるものをいい、結晶中にドーパ
ントとしての不純物を含むものも含まれるものとする。
【0039】また、本発明の範囲は、ホットプレス(加
圧焼結)によって得られた粉末焼結体を、熱間すえこみ
鍛造する範囲に限定されるわけではない。
【0040】固溶体粉末を加圧した加圧体を熱間すえこ
み鍛造してもよく、固溶体粉末を、加圧した後、焼結さ
せた焼結体を熱間すえこみ鍛造してもよい。さらには、
材料を溶融し、凝固させたものを所望の固溶体ブロック
として切り出し、これを直接、熱間すえこみ鍛造しても
よい。
【0041】また、本発明の範囲は、熱電半導体材料を
熱間鍛造で得る場合に限定されるわけではない。
【0042】本発明の熱間鍛造の適用対象材料として
は、六方晶構造、層状構造、またはタングステンブロン
ズ構造からなる磁性材料、誘電体材料、超伝導体材料が
含まれ、たとえばビスマス層状構造強誘電体、ビスマス
層状構造高温超伝導体などが挙げられる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について、
図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0044】本発明の方法では、粉末焼結による焼結イ
ンゴットを図1(a)および(b)に概念図を示すような熱間
すえこみ鍛造により、図2に示すように結晶粒が層状に
配向するように処理したことを特徴とする。図2は自由
鍛造後、図3は自由鍛造前の状態を示す顕微鏡写真であ
る。
【0045】これら図1、図2に示す写真は、熱間すえ
こみ鍛造後の材料と熱間すえこみ鍛造前の材料を、それ
ぞれエポキシ樹脂中に埋め込み、それぞれの材料表面が
鏡面になるまで研磨した後に酸性溶液でエッチングした
組織写真であり、写真の上下方向が、鍛造時、焼結時の
加圧方向となっている。
【0046】図3の鍛造前の状態では、波立つような形
状で組織が観察される。この波状粒は、粉末焼結材を形
成する際の粉体の粒に起因する結晶粒である。
【0047】図2の鍛造後の状態では、図3でみえてい
た波状の結晶粒が鍛造をすることにより細長く展延され
て結晶粒が加圧方向に垂直に層状に配向していることが
わかる。
【0048】なお、写真中の円形の穴は、エッチングの
ときに生じたものであり、組織そのものを示すものでは
ない。
【0049】図4は、n型のBi2Te3熱電半導体材料
の製造工程を示すフローチャートである。
【0050】すなわち、図4に示すように、ビスマスB
i、テルルTe、セレンSeの元素単体を、化学量論比
Bi2Te2.7Se0.30となるように秤量し、さらにキャ
リア濃度を調整する化合物を適量に添加したものを、溶
解、混合、凝固させ、溶性材料を作成した。この溶性材
料をスタンプミル、ボ―ルミル等で粉砕した後、150
メッシュおよび400メッシュの篩にかけ400メッシ
ュの篩上に残ったものを選び、粒径34〜106μm程
度の粉末に揃える。ここで整粒後、真空排気下所定容量
のガラスアンプル内に所定容量の粉末を供給し、水素を
注入して0.9気圧に封止したのち、350℃の加熱炉
内で10時間の熱処理を行うことにより、水素還元を行
った。そして、この粉末をホットプレス装置にて、アル
ゴン雰囲気中で、焼結温度500℃、 加圧力750k
g/cm2で粉末焼結をおこなった。焼結インゴットの
大きさは、断面積が32mm×32mm、厚さは20m
mであった。このインゴットのゼーベック係数は負であ
り、この材料はn型を有する。そしてこれを熱間すえこ
み鍛造により鍛造する。
【0051】鍛造工程は、図5に示すように、このイン
ゴットを超硬合金製のすえこみ装置に設置し、アルゴン
雰囲気中で、450℃にて 150kg/cm2で上部か
ら加圧焼結時の加圧方向と同一方向に加圧することによ
ってなされる。この結果、焼結インゴットは圧縮され
る。ここで 図5(a)は上面図、 図5(b)は断面図であ
る。このすえこみ装置は、ベース1とベース1に直交し
て起立せしめられた円筒状のスリーブ2とこのスリーブ
2に挿通せしめられるように形成されたパンチ3とを具
備し、上述したインゴット4をベース1上に載置し、パ
ンチ3で押圧するように構成されている。そしてこの装
置は超硬製であり450℃程度に図示しない加熱装置に
よって加熱されるように構成されている。この装置によ
ればインゴット4は上方および下方の2方向からのみに
加圧され、他の方向は自由状態になっており、c軸方向
が揃うように鍛造される。図6は鍛造時間とインゴット
厚さとの関係を測定した結果を示す図である。加圧時間
12時間の加圧によりインゴットの厚みは、約1/2の
約8mmになり、底面積は約2倍の48.5mm角にな
った。図7はこのインゴットの4半部分の単結晶に対す
る密度比の分布である。熱電性能は密度が低下すると減
少し強度も弱くなるので使用できる部分は97%以上の
密度比の部分となる。
【0052】この熱間鍛造インゴットと鍛造前のインゴ
ット中心部の熱電性能は表1に示すようになった。この
n型材料の場合、熱間鍛造による結晶欠陥のためにキャ
リアが減少し、比抵抗、ゼーベック定数が増大するが、
0.9気圧のアルゴンガスと共にガラスアンプル中に封
入して400℃48時間熱処理することで鍛造(フォー
ジ)のための格子欠陥はなくなり、キャリア濃度は出発
インゴットと同じになった。これはゼーベック定数が同
じことで理解できる。
【0053】 さらに圧縮比を変えて熱間鍛造を行い、熱処理後の材料
の性能を比較した。この結果を表2に示す。
【0054】 表2から明らかなように、圧縮比が増加すると塑性変形
量が大きくなり、配向が改善され、熱電性能も改善され
る。加圧力を増すことにより、図8に示すように圧縮速
度(厚さ減少量)は増大し、加工時間は短縮されるが、
周辺部に加工時のひび割れができて密度の高い部分が減
少し使用できる個所が減少する。従って加圧力は、ひび
割れのできない程度とするのが望ましい。この加圧力は
インゴットとベースおよびパンチとの接した部分の摩擦
力にも依存する。展延をスムーズにするために、カーボ
ン粉末、BN粉末等を鍛造前にパンチの底面およびベー
スの上面に塗布した。このことによりひびを生じること
なく変形させ易くなる。
【0055】このように本発明の方法によれば、鍛造時
のひびなどによる密度低下がなく歩留まりが高く、極め
て配向性の良好な熱電半導体材料を得ることが可能とな
る。なお、この熱間鍛造工程は、アルゴン雰囲気中でお
こなったが、これに限定されることなく真空中でもよい
し、また他の不活性ガス雰囲気中でもよい。
【0056】次に本発明の第2の実施例として、一軸方
向のみ自由展延させるすえこみ鍛造方法について説明す
る。この方法では、鍛造工程を、図9に示すように、こ
のインゴットを超硬合金製のすえこみ装置に設置し、4
50℃にて100〜 500kg/cm2で5時間、加圧
焼結時の加圧方向と同一方向に加圧することによってな
される。この結果、焼結インゴットは圧縮される。ここ
で図9(a)はすえこみ鍛造前、図9(b)はすえこみ鍛造後
の状態を示す。このすえこみ装置は、ベース11とベー
ス11に直交して起立せしめられ、内部に直方体状の空
洞Hを有する円柱状のスリーブ12とこのスリーブ12
の空洞Hに挿通せしめられるように形成されたパンチ1
3とを具備し、インゴット14をベース11上に載置
し、パンチ13で押圧するように構成されている。そし
てこの装置は超硬製であり450℃程度に図示しない加
熱装置によって加熱されるように構成されている。ここ
でインゴットは厚さ30mm、幅40mm、展延される
方向の長さが18mmであった。この装置によればイン
ゴット14は上方および下方およびスリーブ内の空洞の
幅方向から規制され、残る2方向についてはスリーブの
壁に接触するまではこれらの方向は自由状態になってお
り、劈開面が揃うように鍛造される。この工程で印加す
る圧力と経過時間に対するインゴット厚さを測定した結
果を図10に示す。この図から明らかなように、加圧時
間5時間の加圧によりインゴットの厚さは、約7mmに
なり、長さ方向はスリーブの壁にあたるまで加圧したた
めに、型の長手方向の長さと同じ80mmであった。そ
してこのインゴットの9割程度が密度比98%以上であ
った。図11は、このインゴットの半分の単結晶に対す
る密度比の分布である。熱電性能は密度比が減少すると
低下し材料強度も弱くなる。この例では、使用できる部
分は97%以上の密度比の部分であるため、ほとんどす
べてが使用可能であることになる。
【0057】この熱間鍛造後、熱処理したインゴットと
鍛造前のインゴット中心部の熱電性能は表3に示すよう
になった。このn型材料の場合、熱間鍛造による結晶欠
陥のためにキャリアが減少し、比抵抗、ゼーベック定数
が増大するが前記第1の実施例と同様にアルゴンガス雰
囲気中で熱処理することで鍛造(フォージ)のための格
子欠陥はなくなり、キャリア濃度は出発インゴットと同
じになる。これはゼーベック定数が同じことで理解でき
る。
【0058】 次に本発明の第3の実施例として、p型素子を形成する
方法について説明する。ビスマスBi、テルルTe、ア
ンチモンSbの元素単体を、化学量論比Bi0.4Sb1.6
Te3となるように秤量し、 さらにキャリア濃度を調整
するTeを適量に添加したものを、溶解、混合、凝固さ
せ、溶性材料を作成した。この溶性材料をスタンプミ
ル、ボ―ルミル等で粉砕した後、150メッシュおよび
400メッシュの篩にかけ400メッシュの篩上に残っ
たものを選び、粒径34〜106μm程度の粉末に揃え
る。p型材料の場合は微粒子および粉末酸化の影響が小
さいため水素還元工程は行わなかった。そしてこの粉末
をホットプレス装置にて焼結温度500℃、 加圧力7
50kg/cm2で粉末焼結をおこなった。焼結インゴ
ットの大きさは、高さ30mm、幅40mm、長さ18
mmに切断し、実施例2で用いたのと同じすえこみ装置
に設置し、これを熱間すえこみ鍛造により鍛造する。
【0059】鍛造工程は、このインゴットを、図9に示
したのと同様、超硬合金製のすえこみ装置に設置し、5
00℃にて100〜 500kg/cm2で5時間、加圧
焼結時の加圧方向と同一方向に加圧することによって、
焼結インゴットは圧縮される。この熱間鍛造インゴット
と鍛造前のインゴット中心部の熱電性能は表4に示すよ
うになった。このp型材料の場合はn型ほど熱間鍛造に
よるキャリアの減少がみられなかったため、熱処理はし
ない。熱処理を行った場合は、キャリア濃度は出発イン
ゴットよりも小さくなる。
【0060】 さらにまた同様にしてBi2Te2.85Se0.15とBi0.5
Sb1.5Te3についても、熱間鍛造インゴットと鍛造前
のインゴット中心部の熱電性能を測定しその結果をそれ
ぞれ表5および表6に示す。
【0061】 次に、このようにして前記第2の実施例の方法で形成さ
れたn型である Bi2Te2.7Se0.3のインゴットのう
ち密度97%以上、8割のインゴットを使用して、展延
方向に垂直にスライスし、厚み1.33mmのウェハを
形成する。このウェハの表面および裏面に電極金属層を
形成した。そして、ダイシングを行い、0.64mm角
のチップを形成した。この中から無作為に抽出したもの
をn型素子とした(表3参照)。さらに前記第3の実施
例の方法で形成されたp型であるBi0.4Sb1.6Te3
インゴットを同じ大きさのチップに加工し、これをp型
素子とした(表4参照)。そしてこのn型素子およびp
型素子からなるpn素子対を18対実装し、図12に示
すような熱電モジュールを形成した。そしてこの熱電モ
ジュールを16個形成して、最大温度差を計測した。こ
の最大温度差の平均値を算出し、これと放熱面温度との
関係を図13に曲線aで示す。また比較のために同じ材
料で形成し熱間すえこみ鍛造を行うことなくホットプレ
ス後、ダイシングを行うようにし、他の工程はまったく
同様にして熱電モジュールを形成した結果を曲線bに示
す。放熱面温度が0℃〜80℃の領域で、熱間すえこみ
鍛造によって処理して形成した熱電モジュールの最大温
度差はホットプレスで形成したモジュールの最大温度差
を大幅に上回っており、表3、表4中の熱間すえこみ鍛
造による熱電性能の向上をうらづけている。ここで最大
温度差を与える電流値は両モジュール共に 1.5から
1.6Aであった。また最大温度差の標準偏差は0.4か
ら0.5℃ であった。さらにまた例えば放熱面温度が2
7℃のとき、熱間すえこみ鍛造によって処理して形成し
た熱電モジュールの最大温度差は75℃以上と極めて優
れた結果を記録している。
【0062】ここで、上述したごとく形成された熱電モ
ジュールの強度について検討を加える。
【0063】熱電モジュールが破壊する場合は、せん断
応力が当該熱電モジュールにかかり、p型、n型素子が
折れる場合が多い。
【0064】そこで、図17に示すように、供試材料と
して、熱電モジュールの製造過程で得られる片側のセラ
ミック板15にp型素子5、n型素子6を半田接合した
ものを使用して、これらp型素子、n型素子のせん断強
度を計測した。
【0065】すなわち、同図17(a)の側面図、同図
17(b)の一部斜視図に示すように、プッシュプルゲ
ージ16にて、p型素子5、n型素子6の根元にかけら
れた太さ0.15mmのワイヤ17を、10mm/mi
nの速度で引き上げたときのせん断強度を計測するもの
である。
【0066】次表10は、熱間すえこみ鍛造が行われた
鍛造インゴットに基づき生成されたp型素子、n型素子
のせん断強度計測結果を示している。
【0067】また、次表11は、同じ材料でホットプレ
ス後熱間すえこみ鍛造を行っていない焼結インゴットに
基づき生成されたp型素子、n型素子のせん断強度計測
結果を示している。
【0068】また、次表12は、同じ材料でホットプレ
スの代わりに、ストックバーガー法にて一方向凝固溶性
材料を生成し、この溶性材料に基づき生成されたp型素
子、n型素子のせん断強度計測結果を示している。
【0069】 これら表を比較すると、n型素子6については、溶製材
料の素子に較べて、熱間鍛造材料の素子とホットプレス
材料の素子のせん断強度はともに大きくなっており(1
176に対して2185、1914)、熱間鍛造材料の
素子はホットプレス材料の素子よりもさらに強度が大き
くなっている(1914に対して2185)のがわか
る。また、せん断強度の標準偏差についても溶性材料の
素子、ホットプレス材料の素子、熱間鍛造材料の素子の
順で減少しているのがわかる(347に対して224、
224に対して158)。
【0070】一方、p型素子5については、僅かの差な
がらせん断強度の大きさは、溶性材料の素子、ホットプ
レス材料の素子、熱間鍛造材料の素子の順で大きくなっ
ている(1413に対して1430、1430に対して
1472)。せん断強度の標準偏差についても溶性材料
の素子、ホットプレス材料の素子、熱間鍛造材料の素子
の順で減少している(429に対して132、132に
対して112)。
【0071】ここで、せん断強度の標準偏差が大きくな
る程、せん断強度の平均値以下でも破壊が起こる可能性
が高い、せん断強度の平均値以下での破壊確率が高いと
いうことを意味する。
【0072】よって、熱間鍛造材料にて生成された素子
は、他の材料の素子に較べてせん断強度が高いのみなら
ず、せん断強度の平均値以下での破壊確率が低く、信頼
性が高いと結論づけられる。
【0073】このため熱電モジュールに熱間鍛造材料を
用いることによって、モジュール組立時の破損を少なく
し、耐久性を高くでき、信頼性を向上させることができ
る。
【0074】また同様にして、Bi2Te2.85Se0.15
とBi0.5Sb1.5Te3についても、(表5および表6
参照)同様にしてそれぞれn型素子およびp型素子を形
成し、熱電モジュールを作成した。この熱電モジュール
の最大温度差の平均値を算出し、これと放熱面温度との
関係を図14に曲線aで示す。また比較のために同じ材
料で形成し熱間すえこみ鍛造を行うことなくホットプレ
ス後、ダイシングを行うようにし、他の工程はまったく
同様にして熱電モジュールを形成した結果を曲線bに示
す。放熱面温度が0℃〜80℃の領域で、熱間すえこみ
鍛造によって処理して形成した熱電モジュールの最大温
度差はホットプレスで形成したモジュールの最大温度差
を上回っている。最大温度差を与える電流値は両モジュ
ール共に1.3から1.4Aであった。
【0075】図13および図14の比較から、材料によ
り多少の変化はあるが、何れも、本発明は有効であるこ
とがわかる。
【0076】さて、本発明者らは、さらに、実験を行っ
た結果、つぎの各パラメータの性能に及ぼす影響が明ら
かになった。概略説明すれば、つぎのようになる。
【0077】(1)密度比 焼結インゴットの密度比が低いと熱伝導度が低下する
が、熱電性能は電気抵抗が増大するため低下する。ま
た、材料の強度も低下する。
【0078】結局、熱電性能を向上させることができ、
材料の強度も損なわない密度比の範囲というものが、存
在し、焼結インゴットを熱間鍛造によってその密度が最
終的に97%以上になればよいということが明らかにな
った。もしくは、密度比が97%以上の焼結インゴット
を、熱間鍛造することにより、最終的に、当該密度比以
上にすればよいことが明らかになった。
【0079】ここで、密度比とは、圧粉密度と、圧粉体
と同一組成の物質(粉砕する前の単結晶)の真密度(理
想密度)との比のことである。
【0080】(2)塑性加工温度 熱間鍛造加工、温間鍛造加工では、塑性加工の進行に伴
い結晶歪みの他に結晶の回復が同時に進行する。熱電半
導体の熱間塑性加工では、この結晶歪みと回復、さらに
は焼結材料の粉末粒界、結晶粒界の流れが生じていると
考えられるが、この詳細は未だ不明である。
【0081】ただし、ホットホージ比が大きい程、偏光
顕微鏡でみた組織が均一であり、塑性加工による結晶歪
みと回復が配向改善に大きく寄与していることが明らか
である。ここで、温度が高くなると結晶歪みと回復は促
進されるが、再結晶温度以上では結晶粒が配向とは関係
なく粒成長してしまい、配向度が低くなってしまい、材
料強度も低下してしまう。温度が高くなると、インゴッ
トの変形速度も速くなる。つまり、温度が高いと、組織
が流動的になってしまい、配向が揃う前に塑性変形して
しまい、それ以上配向がすすまないということになる。
【0082】逆に、温度が低すぎると、塑性変形自体が
遅くなり、実用的な加工に適さないという問題がある。
【0083】結局、焼結インゴットを塑性加工するのに
最適な温度範囲というものが存在し、結晶子が増大し配
向がなくなってしまう粒成長温度以下であることが必要
であることが明らかになった。
【0084】具体的には、550°C以下であって、塑
性変形を実用的な速度で行うことができる350°C以
上の範囲であればよいことが明らかになった。
【0085】なお、ホットプレスの温度範囲と塑性加工
の温度範囲とは同じであるのが望ましいと考えられる。
【0086】(3)塑性加工荷重 焼結インゴットに加わる荷重が大きいほど、変形速度は
速くなる。しかし、荷重が大きいほど、摩擦抵抗が増
え、インゴットが座屈してしまう。また、荷重を弱めて
変形速度を遅くした場合には、粒界での流れのみ生じる
ためか、顕著な配向改善が認められなかった。変形速度
は、焼結インゴットに最初に与える初期荷重圧力によっ
て定まる。また、この初期荷重圧力は、焼結インゴット
の降伏応力以上の力である必要がある。
【0087】結局、適正な初期荷重圧力の範囲というも
のが存在し、その範囲は、70kg/cm2以上350k
g/cm2以下の範囲であることが明らかになった。
【0088】(4)鍛造のプロセス 本発明は、基本的には、すえこみ鍛造工程を前提として
いるが、このすえこみ鍛造の工程に適宜、型鍛造的なプ
ロセスを加えることで、上記(1)の密度比を向上させ
ることができることが明らかになった。
【0089】すなわち、焼結インゴットを、すえこみ鍛
造により、自由方向に展延した後に、当該自由方向を治
具などで規制した状態で更に加圧することで、一度低下
した密度比を回復させたり、密度比を向上させることが
できることが明らかになった。
【0090】また、焼結インゴットを、熱間すえこみ鍛
造した後に、熱間型鍛造工程を行うことでも、同様に、
一度低下した密度比を回復させたり、密度比を向上させ
ることができることが明らかになった。
【0091】(5)鍛造の回数 また、鍛造工程の回数を増やし圧縮比を順次増大させて
いくことで、配向が改善され、熱電性能を向上させるこ
とができることが、明らかになった。
【0092】以上の(1)〜(5)について、以下具体
的な実施例を挙げて説明する。
【0093】・第4の実施例 まず、上記(1)の密度比が97%以上になることによ
る性能向上の具体例について説明する。
【0094】本実施例では、前述した第2の実施例と同
じ組成のBi2Te2.7Se0.30 のn型熱電半導体を、
平均粒径20μmで粉砕し、これを焼結温度500°
C、加圧力750kg/cm2 でホットプレスして粉末
焼結させた。平均粒径(20μm)は第2の実施例より
も小さいものを使用した。
【0095】その後は、第2の実施例と同様に、図9に
示す一軸方向のみ自由展延させるすえこみ装置によっ
て、400°Cにて図15に示す荷重圧力を加える熱間
鍛造を行った。すなわち、荷重圧力としては、初期荷重
を100kg/cm2 とし、最終的に450kg/cm2
まで増加させた。
【0096】その後、この鍛造後の鍛造インゴットを、
400°Cで、48時間だけアルゴン還元ガラス封入管
中でアニーリングを行った。
【0097】次表7は、第2の実施例と本第4の実施例
との比較結果である。表7中、ホットプレス1とあるの
は第2の実施例でホットプレスのみを行い、ホットホー
ジ(熱間鍛造)の工程は省略した場合であり、ホットホ
ージ1とあるのは、第2の実施例でホットホージの工程
を行った場合を示している。また、ホットプレス2とあ
るのは第4の実施例でホットプレスのみを行い、ホット
ホージ(熱間鍛造)の工程は省略した場合であり、ホッ
トホージ2とあるのは、第4の実施例でホットホージの
工程を行った場合を示している。
【0098】 なお、ここで、抵抗の異方性比とあるのは、抵抗の方向
性を示す値であり、この値が大きいほど、結晶の配向の
改善効果が顕著であるということを示す。
【0099】また、性能指数Zの評価基準としては、
2.45をしきい値とした。性能指数Zが、2.45以
上である場合には、熱電性能が向上していると判断し
た。
【0100】同表から明らかなように、本第4の実施例
では、比較的細かな粉末(平均粒径20μm)を使用し
たため、熱間鍛造が行われる焼結インゴットの密度比は
低く(96.8%)、結晶の配向度を示す抵抗の異方性
比も低い(1.01)ことがわかる。
【0101】また、この焼結インゴットを一軸方向に鍛
造すると、第2の実施例に比べて、鍛造温度が低い割
(第2の実施例の450°Cに対して400°C)に、
加工速度が速いということがわかる(図10、図15参
照)。
【0102】また、第4の実施例でホットホージされた
後の鍛造インゴットの密度比は、鍛造前の焼結インゴッ
トと同じ密度(96.8%)であるが、性能指数は向上
(2.45)していることがわかる。これは、鍛造によ
り結晶配向が改善したことによると考えられる。抵抗の
異方性比が増大(2.42)しているのはこのためであ
る。
【0103】ただし、第2の実施例でホットホージされ
た後の鍛造インゴットに比べると、密度比が低いため
に、性能指数が低い(第2の実施例の2.81に対して
2.45)ことがわかる。
【0104】このように第4の実施例において、抵抗の
異方性比は向上しているにもかかわらずに、性能指数は
第2の実施例に比べると低下しているのは、つぎのよう
に説明される。
【0105】すなわち、性能指数Zは、抵抗の異方性比
と、密度比の両ファクタにより定まるが、密度比の寄与
率の方が、抵抗の異方性比の寄与率よりも大きい。
【0106】したがって、密度比が97%よりも小さい
本第4の実施例のものでは、抵抗の異方性比が向上した
割には、性能指数Zとしては、評価基準となる2.45
をはるかに越えた値にまで上昇していかないことにな
る。
【0107】以上のことから、熱間鍛造される前の焼結
インゴットの密度比を97%以上の値にしておくこと
が、熱電性能を向上させるために望ましいという結論が
得られた。そして、ホットホージされることによって最
終的に得られる鍛造インゴットの密度比としては97%
以上であることが望ましいという結論が得られた。そし
て、密度比97%以上の焼結インゴットをホットホージ
することによって最終的に、この鍛造前の焼結インゴッ
トの密度比以上にすることが望ましいという結論が得ら
れた。
【0108】・第5の実施例 つぎに、上記(5)の鍛造工程の回数を増やすことによ
る性能向上の具体例について説明する。
【0109】本実施例では、前述した第2の実施例と同
じ組成のBi2Te2.7Se0.30 のn型熱電半導体材料
を、第2の実施例と同一の製法で焼結させた。このとき
得られた焼結インゴット14は、図16に示すように、
高さ(厚さ)が60mm、幅が40mm、展延される方
向の長さが40mmのものであった。
【0110】こうした焼結インゴット14を、1回、2
回、3回と熱間鍛造することにより、圧縮比の大きい鍛
造加工材料を順次生成していく。すなわち、第1回目の
鍛造により、圧縮比は1/2になり、第2回目の鍛造に
より、圧縮比は1/8になり、第3回目の鍛造により、
圧縮比は1/16になる。
【0111】その後、この最終鍛造後の鍛造インゴット
を、アルゴン置換雰囲気中400°Cで、24時間の熱
処理を施した。
【0112】鍛造インゴット中で密度比が97%以上に
なる部分の熱電性能と抵抗異方性の平均値を下記表8に
示す。
【0113】 同表8に示す鍛造回数が1回(圧縮比1/5)のデータ
は、第2の実施例で得られた鍛造インゴット中の密度比
97%以上の部分の平均値を使用している。
【0114】同表に示すように、圧縮比が増加すると塑
性変形量が大きくなり、より配向が改善され熱電性能が
向上(性能指数2.19から2.52へ、2.52から
2.55へ)しているのがわかる。
【0115】また、圧縮比の増大により若干のキャリア
濃度の変化が起きている。これはゼーベック定数が圧縮
比に応じて変化しているのをみれば理解することができ
る。
【0116】抵抗の異方性比が、複数回鍛造を行った鍛
造インゴットについて大きい(1回目の鍛造インゴット
の2.19に対して2.52、2.55)のにもかかわ
らずに性能指数がそれ程増加していない(1回目の鍛造
インゴットの2.56に対して2.61、2.62)の
は、出発材料である焼結インゴットの組成が熱電性能を
最大に引き出せる最適キャリア濃度で形成されているの
に対して、複数回鍛造がなされた鍛造インゴットはこの
最適なキャリア濃度からずれた組成になったためである
と考えられる。
【0117】ただし、これは、出発材料の焼結インゴッ
トのキャリアを圧縮比に適した濃度に変更することによ
って解決することができる。
【0118】・第6の実施例 つぎに第5の実施例と同様に鍛造の回数による性能改善
の具体例を、p型材料について行った場合について説明
する。本実施例では、前述した第3の実施例と同じ組成
のBi0.4Sb1.6Te3 のp型熱電半導体材料を、第3
の実施例と同一の製法で焼結させた。このとき得られた
焼結インゴット14は、図16に示すように、高さ(厚
さ)が60mm、幅が40mm、展延される方向の長さ
が40mmのものであった。
【0119】こうした焼結インゴット14を、1回、2
回、3回と熱間鍛造することにより、圧縮比の大きい鍛
造加工材料を順次生成していく。すなわち、第1回目の
鍛造により、圧縮比は1/2になり、第2回目の鍛造に
より、圧縮比は1/8になり、第3回目の鍛造により、
圧縮比は1/16になる。
【0120】その後、この最終鍛造後の鍛造インゴット
を、アルゴン置換雰囲気中400°Cで、24時間の熱
処理を施した。
【0121】鍛造インゴット中で密度比が97%以上に
なる部分の熱電性能と抵抗異方性の平均値を下記表9に
示す。
【0122】 同表9に示す鍛造回数が1回(圧縮比1/5)のデータ
は、第3の実施例で得られた鍛造インゴット中の密度比
97%以上の部分の平均値を使用している。
【0123】同表に示すように、圧縮比が増加すると塑
性変形が大きくなり、より配向が改善され熱電性能が向
上(性能指数3.2から3.22へ、3.22から3.
35へ)しているのがわかる。
【0124】・第7の実施例 つぎに、ホットプレスの焼結温度が性能に与える影響に
ついて検討を加える。
【0125】本実施例では、前述した第2の実施例と同
じ組成のBi2Te2.7Se0.30 のn型熱電半導体を、
平均粒径40μmで粉砕し、これを加圧力750kg/
cm2でホットプレスして粉末焼結させた。ホットプレ
スは400°C、450°C、500°C、550°C
の4条件の焼結温度で行った。
【0126】その後は、第2の実施例と同様に、図9に
示す一軸方向のみ自由展延させるすえこみ装置によっ
て、450°Cにて荷重圧力100kg/cm2 〜45
0kg/cm2 で加圧した。
【0127】その後、この鍛造後の鍛造インゴットを、
400°Cで、24時間だけアルゴン還元ガラス封入管
中でアニーリングを行った。
【0128】この結果得られた鍛造インゴットの中心部
分(表中「ホージ品」)とホットプレス後の焼結インゴ
ット(表中「プレス品」)の各物性値を、各焼結温度4
00°C、450°C、500°C、550°Cごと
に、次表13、14、15、16に示す。
【0129】 これら表から明らかなように、熱間すえこみ鍛造が行わ
れた鍛造インゴットは、鍛造工程の出発材料である焼結
インゴットの生成条件(焼結温度条件)にかかわらず
に、99%以上の密度比になっており、材料強度、熱電
性能が向上しているのがわかる。さらに、ホットプレス
後に密度比98%程度になっている出発材料の焼結イン
ゴット(焼結温度400°C、450°Cの場合)は、
熱間すえこみ鍛造が行われることにより密度比が高くな
っているのがわかる(焼結温度400°Cの場合は、9
8.4%から99.6%に向上、焼結温度450°Cの
場合は、98.5%から99.9%に向上)。
【0130】結晶の配向(抵抗の異方性比)に関して
も、鍛造工程の出発材料である焼結インゴットの作成条
件(焼結温度条件)にかかわらずに、熱間すえこみ鍛造
が行われることにより、改善、向上しているのがわか
る。
【0131】ホットプレス温度が高い場合には、ホット
プレス時に再結晶により組織が変化し、抵抗の異方性比
が低下してしまう(焼結温度550°Cの場合の焼結イ
ンゴットの抵抗の異方性比は1.34)。このため、こ
のような抵抗の異方性比が低下した焼結インゴットを用
いて熱間鍛造を行った場合には配向は改善されるものの
(1.34から2.25に向上)、鍛造開始時の配向自
体が低い(焼結インゴットの抵抗の異方性比が低い)た
めに性能指数としては低くなってしまう(2.43で評
価基準2.45以下)。たとえば、焼結温度550°C
の鍛造インゴットの性能指数は2.43(焼結インゴッ
トの抵抗の異方性比は1.34)であり、焼結温度50
0°Cの鍛造インゴットの性能指数2.65(焼結イン
ゴットの抵抗の異方性比は1.83)に較べて低くなっ
ている。 ・第8の実施例 つぎに、上記(4)で述べたように、すえこみ鍛造のプ
ロセスに型鍛造的なプロセスを加えることで、密度比を
向上させ、熱電性能を向上させることができる具体例に
ついて説明する。
【0132】本実施例では、前述した第1の実施例と同
じ組成のBi2Te2.7Se0.30 のn型熱電半導体材料
を、第1の実施例、第2の実施例と同一の製法(焼結温
度500°C、加圧力750kg/cm2 )で焼結させ
た。こうして得られた粉末焼結体から、第2の実施例と
同様に、高さ(厚さ)が30mm、幅が40mm、展延
される方向の長さが18mmの焼結インゴットを2個切
り出して、それぞれについて鍛造工程を異ならせて、第
2の実施例と同じく、図9に示す一軸方向のみ自由展延
させるすえこみ装置を用い、450°Cにて熱間鍛造し
た。
【0133】図18は、2つの焼結インゴットのうち一
方の焼結インゴットを、展延の途中で、すえこみ装置に
追加した治具(壁)によって展延方向を規制し、さらに
熱間での加圧を継続させた場合のインゴット高さ変化
(実線)、荷重圧力変化(破線)を示している。つま
り、すえこみ鍛造の後半でインゴットの展延端が治具の
壁に拘束された時点(鍛造開始後315分程度経過時
点)から、さらに荷重圧力を450kg/cm2 まで上
昇させ約5時間加圧を継続させるようにし、鍛造工程の
後半を、型鍛造にて行うようにしたものである。
【0134】同図に示すように、鍛造工程の後半では、
展延が行われないために、インゴットの高さに変化はみ
られないのがわかる。
【0135】一方、図19は、2つの焼結インゴットの
うち他方の焼結インゴットについて同様に展延を行い、
展延端が上記治具に当接される前に、展延を中止(鍛造
を中止)させた場合のインゴット高さ変化、荷重圧力変
化を示している。なお、図18、図19ともに、初期荷
重圧力は250kg/cm2 とした。
【0136】図18に示す鍛造工程で得られた鍛造イン
ゴットを観察すると、長時間、鍛造型を用いて加圧され
たために、端部が方形に成形され、表面も滑らかであっ
た。これに対して図19に示す途中で鍛造を中止した工
程により得られた鍛造インゴットは、端部が円弧状にな
っており、表面に細かなひびが多数みられた。
【0137】これら異なる鍛造工程で得られた2つの鍛
造インゴット14からそれぞれ図20に示す測定ピース
を切り出して、各測定ピースについて、抵抗率、密度
比、抵抗率の異方性比、ゼーベック定数、パワーファク
タといった物性値を計測した。その結果を下記表17、
18に示す。なお、パワーファクタとは、ゼーベック定
数を2乗したものを抵抗率で割った値であり、この値が
大きいほど熱電性能はよいといえる。評価基準としては
比較例であるホットプレス品(鍛造前)のn型のパワー
ファクタ3.2以上のものが、「熱電性能が良い」とし
た。
【0138】測定ピース(鍛造インゴット14)の高さ
方向、幅方向についての物性値のばらつきは殆どみられ
なかったが、展延方向Dについて各物性値の分布にばら
つきがみられた。幅方向で平均をとり、展延方向Dの各
位置ごとに物性値を示したものが、表17、表18であ
る。
【0139】表17は、図20に示す鍛造インゴット1
4の中心部Cから展延方向Dの各距離ごとに、図18に
示す鍛造工程で得られた鍛造インゴットの物性値を示し
たものである。
【0140】表18は、同じく鍛造インゴット14の中
心部Cから展延方向Dの各距離ごとに、図19に示す鍛
造工程で得られた鍛造インゴットの物性値を示したもの
である。
【0141】 これら表に示すように、後半が型鍛造でなされた表17
の鍛造インゴットは、インゴット各部の密度比が98%
以上あり、これだけをみると材料強度、熱電性能が向上
しているのがわかる。
【0142】しかし、抵抗の異方性比は、インゴット中
心から端部にいくほど低下しており、結晶子の配向が徐
々に揃わなくなっていくことがわかる。また、抵抗の異
方性比と同様にゼーベック定数についても、インゴット
中心から端部にいくほど絶対値が減少しており、抵抗率
については、端部にいくほど増加しているのがわかる。
【0143】このようにゼーベック定数が端部にいくほ
ど減少しているのは、端部にいくほど鍛造による格子欠
陥が増えていくためであると考えられる。また、端部に
いくほど抵抗率が増加しているのは、端部にいくほど結
晶粒の配向性が悪化していくためであると考えられる。
【0144】また、インゴット中心から端部にいくほど
パワーファクタが低下しており、このことからも端部に
いくほど結晶の配向性が悪化し、熱電性能が低下してい
くことがうかがえる。しかしながら、インゴット中心か
ら26mmの距離までは、パワーファクタとしては評価
基準とした3.2を越え3.6以上の値を維持してお
り、熱電材料として使用できる範囲が広範であることが
わかる。
【0145】これに対して、型鍛造される前に、鍛造を
中止させることによって得られた表18の鍛造インゴッ
トでは、表17のものに較べて密度比が低いのがわか
る。なお、インゴット中心から22mmを越えた距離で
の密度比は低すぎるので(密度比97%未満)、表18
では22mmを越えた距離でのデータは省略している。
【0146】インゴット中心部(たとえばインゴット中
心からの距離2mmの部位)では、抵抗の異方性比、ゼ
ーベック定数ともに、ほぼ表17の値と同じであるにも
かかわらず、抵抗率が大きくなっているのは(0.94
8に対して0.993)、密度比が表17に較べて低下
しているため(98.8に対して97.7)であると考
えられる。パワーファクタが表17に較べて低下してい
るのも(3.99に対して3.82)、同様に密度比の
低下の影響によるものと考えられる。インゴット中心か
ら10mmの距離までしか、パワーファクタの値3.6
以上を維持することができず、表17に較べて熱電材料
として使用できる範囲が狭いことがわかる。
【0147】こうした比較結果から、配向の他に密度比
が熱電性能に大きく影響を及ぼすことが理解される。
【0148】また、表18に示す密度比を、展延の途中
までの密度比、表17に示す密度比を、展延の途中から
更に型鍛造した場合の密度比と考えれば、展延の途中で
密度比が低下したとしても、これを更に型鍛造すること
により密度比を向上、回復させることができるのがわか
る。
【0149】こうした密度比の回復は、組成の異なるp
型材料についても同様に確認された。
【0150】また、上述した説明では、インゴットを一
軸方向に自由展延させた後、この一軸方向の展延を拘束
する場合を想定しているが、第1の実施例のように二軸
方向に自由展延させた後に、これら両方向の展延を同時
に拘束するようにしてもよい。
【0151】図30、図31は、こうした両方向の展延
を拘束するすえこみ装置の構成を示している。図30は
焼結インゴット14が、拘束されていない自由展延状態
を示す図であり、図31は焼結インゴット14が、図面
の上下左右の両二軸方向で展延が拘束されている状態を
示す図である。図30、31の(a)図はすえこみ装置
の上面図、図30、31の(b)はすえこみ装置の側面
図である。
【0152】すなわち、すえこみ装置は、これら図3
0、図31に示すように、焼結インゴット14が載置さ
れるダイス20と、この焼結インゴット14を上方から
圧縮するパンチ18と、矢印に示すごとく駆動されるこ
とにより焼結インゴット14の各側面にそれぞれ接触
し、自由展延を阻止する4つの側壁19とから構成され
ている。
【0153】鍛造工程の前半では、図30に示す自由展
延状態で熱間鍛造が行われ、鍛造工程の後半では、図3
1に示すように4つの側壁19が駆動され、これら4つ
の側壁19によって焼結インゴット14の二軸方向の自
由展延が阻止された状態で熱間鍛造が継続される(パン
チ18を下降させた状態を維持する)。
【0154】このように鍛造工程の後半で二軸方向の自
由展延を阻止した場合でも、上述した鍛造工程の後半で
一軸方向の自由展延を阻止した実施例と同様に、鍛造イ
ンゴットの密度比を97%以上にもっていくことがで
き、熱電性能を向上させることができる。
【0155】さて、上述した実施例では、鍛造工程の後
半を型鍛造で行うようにしているが、すえこみ鍛造工程
を行った後に、型鍛造工程を行うような実施も可能であ
る。
【0156】図30、図31に示すすえこみ装置を用い
てこれを行う場合について以下説明する。
【0157】すなわち、最初のすえこみ鍛造工程では、
図30に示すように自由展延状態で熱間すえこみ鍛造が
行われる。そして、一旦パンチ18を上昇させ、焼結イ
ンゴット14を非圧縮状態にする。つぎの型鍛造工程で
は、図31に示すように4つの側壁19が駆動され、こ
れら4つの側壁19によって焼結インゴット14の二軸
方向の自由展延が阻止された状態で、パンチ18が再び
下降される。こうして焼結インゴット14が上下方向に
圧縮され、熱間型鍛造が行われる。
【0158】なお、熱間すえこみ鍛造工程、熱間型鍛造
工程を複数回繰り返し行うようにしてもよい。
【0159】このようにすえこみ鍛造工程に続いて型鍛
造工程を行った場合でも、上述した鍛造工程の後半で自
由展延を阻止する実施例と同様に、鍛造インゴットの密
度比を97%以上にもっていくことができ、熱電性能を
向上させることができる。
【0160】・第9の実施例 つぎに、上記(2)で述べた熱電性能を向上させること
ができる塑性加工温度の範囲、上記(3)で述べた熱電
性能を向上させることができる塑性加工荷重の範囲につ
いて具体例に挙げて説明する。
【0161】下記表19は、温度、初期荷重圧力を変え
た各条件1〜7で熱間鍛造を行った場合のインゴット変
形速度を示している。ホットプレスの工程は、第2の実
施例と同様であり、ホットホージの工程では第2の実施
例と同様に、高さ(厚さ)が30mm、幅が40mm、
展延される方向の長さが18mmの焼結インゴットを切
り出して、図9に示す一軸方向のみ自由展延させるすえ
こみ装置を用い、下記表19に示す各条件下で熱間鍛造
した。
【0162】 ここで、条件1は、上記第2の実施例と同じ条件で熱間
鍛造工程を行った場合のデータである。鍛造工程中の荷
重圧力変化、インゴット高さ変化は図10に示したとお
りである。
【0163】また、下記表20は、各条件1〜7毎に鍛
造の出発材料となる焼結インゴットの物性値を示したも
のである。
【0164】 図21は、条件3の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図22は、条件4の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図23は、条件5の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図24は、条件6の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図25は、条件7の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示している。
【0165】上記表19から明らかなように温度が高く
なるほど、インゴット変形速度が速くなり、また初期荷
重圧力が同じであると、インゴットの変形速度はほぼ同
じになるが、鍛造の出発材料の焼結インゴットの形状に
よっては座屈が生じているのが、図21〜図25からわ
かる。
【0166】特にインゴットの変形速度が大きい条件の
場合には、大きな座屈がみられた。
【0167】たとえば、インゴット変形速度が大きい条
件3、条件7の場合には、図21、図25から明らかな
ように、大きな座屈が生じているのがわかる。
【0168】座屈は、インゴットの上下面の摩擦力のた
めに上下面付近が剛体域となり、拘束されていない面付
近が変形域となるため、その領域の境界で変形速度の不
連続が生じ、インゴットが樽状になり、ついにはインゴ
ットがこの境界でせん断されることによって生ずる。そ
の後の加圧あるいは第8の実施例で述べた自由鍛造後の
成形加圧(型鍛造)により、せん断によるヒビなどは回
復するが、せん断は座屈を生じさせないためにも事前に
防止する必要がある。
【0169】座屈は、鍛造の出発材料である焼結インゴ
ットとして、加圧面積に対してインゴット高さが低いも
のを使用することで事前に避けることができる。ただ
し、ホージ比を大きくとりたい場合には、こうした形状
の焼結インゴットを使用するのは不利に作用することに
なる。
【0170】下記表21〜表27は、上記各条件1〜条
件7で鍛造した後の鍛造インゴットの物性値を示したも
のである。
【0171】 すなわち、各条件1〜7で鍛造後、400°Cで24時
間熱処理を行うことで得られた各鍛造インゴット14か
ら図20に示す測定ピースをそれぞれ切り出して、各測
定ピースについて、抵抗率、密度比、抵抗率の異方性
比、ゼーベック定数、パワーファクタといった物性値を
計測した。その結果が上記表21〜27に示されてい
る。
【0172】測定ピース(鍛造インゴット14)の高さ
方向、幅方向についての物性値のばらつきは殆どみられ
なかったが、展延方向Dについて各物性値の分布にばら
つきがみられた。表21〜27では、幅方向で平均をと
り、展延方向Dの各距離ごとに物性値を示している。
【0173】表20の鍛造の出発材料である焼結インゴ
ットの抵抗の異方性比と、表21〜27に示す鍛造後の
鍛造インゴットの抵抗の異方性比の値とを比較してわか
るように、各条件1〜7ともに、鍛造インゴット中心部
については、抵抗の異方性比が鍛造前よりも大きくなっ
ており、鍛造により結晶粒の配向が改善されていること
がわかる。例えば、条件2の場合、インゴット中心から
2mmの部位で1.70から2.38に抵抗の異方性比
が大きくなっている。
【0174】また、各条件1〜7ともに鍛造することに
よってパワーファクタが増加しており、結晶粒の配向の
改善により熱電性能が向上しているものと類推される。
例えば、条件2の場合、インゴット中心から2mmの部
位で3.22から3.63にパワーファクタが大きくな
っている。
【0175】この点、条件3、条件7の場合には、鍛造
インゴットの中心部の一部でしか配向の改善がみられな
いのが、表20と表23の比較結果、表20と表27の
比較結果から明らかである。たとえば、条件3のパワー
ファクタが、鍛造後に、鍛造前の値(3.53)よりも
大きくなっているのは、鍛造インゴット中心から6mm
の部分(3.79)だけである。
【0176】このことは、上述したようにホットホージ
工程中に大きな座屈が生じ(図21、図25参照)、イ
ンゴットが破断、分離し、この分離の際に、分離部分が
回転し、その部分の結晶の配向が変わったためであると
考えられる。
【0177】ただし、このような座屈が生じやすい鍛造
条件であっても、上述したように座屈の生じにくい形状
の焼結インゴットを使用することで、座屈を回避でき配
向を改善することは可能である。座屈の影響を受けにく
いインゴットの中心の配向は、元々よいからである。
【0178】鍛造温度に関しては、温度が高いほど塑性
変形がすすみやすいが、結晶粒が成長し配向がなくなる
粒成長の温度以下である必要がある。具体的には、この
第9の実施例および第1〜第8の実施例の結果から55
0°C以下であることが望ましい。
【0179】逆に、鍛造温度が低い場合には、塑性変形
が遅くなり、実用的ではなくなるが、ホットプレスの焼
結が可能な温度であればホージは可能である。具体的に
は、この第9の実施例および第1〜第8の実施例の結果
から350°C以上であることが望ましい。
【0180】鍛造時の荷重圧力に関しては、初期荷重圧
力として、焼結インゴットの降伏応力以上の力である必
要がある。しかも、インゴット変形速度を、座屈が生じ
るインゴット変形速度以下にすることができる荷重圧力
でなくてはならない。具体的には、この第9の実施例お
よび第1〜第8の実施例の結果から70kg/cm2以上
350kg/cm2以下の範囲であることが望ましい。
【0181】また、図21〜図25に示すように、本実
施例では、鍛造中のインゴットの形状(高さ)変化に応
じて荷重圧力を変化させることで、座屈を最小限に抑え
るようにしている。本第9の実施例および第1〜第8の
実施例の結果から、座屈等を避けるためには、鍛造中5
00kg/cm2 を越えた初期荷重圧力で焼結インゴッ
トを加圧してはならないことがわかった。
【0182】つぎに、p型材料について同様に鍛造条件
を変えて行った実施例について説明する。
【0183】すなわち、第3の実施例と同じ組成のBi
0.4Sb1.6Te3 のp型熱電半導体材料を、第3の実施
例と同一の製法で焼結させた。そして、第3の実施例と
同様に、高さ(厚さ)が30mm、幅が40mm、展延
される方向の長さが18mmの焼結インゴットを切り出
して、図9に示す一軸方向のみ自由展延させるすえこみ
装置を用い、下記表28に示す各条件8〜12下で熱間
鍛造した。
【0184】下記表28は、温度、初期荷重圧力を変え
た各条件8〜12で熱間鍛造を行った場合のインゴット
変形速度を示している。
【0185】 ここで、条件8は、上記第3の実施例と同じ条件で熱間
鍛造工程を行った場合のデータである。
【0186】また、下記表29は、各条件8〜12毎に
鍛造の出発材料となる焼結インゴットの物性値を示した
ものである。
【0187】 図26は、条件9の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図27は、条件10の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図28は、条件11の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示しており、
図29は、条件12の場合の鍛造工程中の荷重圧力変化
(破線)、インゴット高さ変化(実線)を示している。
【0188】特にインゴットの変形速度が大きい条件の
場合には、大きな座屈がみられた。
【0189】たとえば、インゴット変形速度が大きい条
件10の場合には、図27から明らかなように、大きな
座屈が生じているのがわかる。
【0190】下記表30〜表34は、上記各条件8〜条
件12で鍛造した後の鍛造インゴットの物性値を示した
ものである。
【0191】 すなわち、各条件8〜12で鍛造後、得られた各鍛造イ
ンゴット14から図20に示す測定ピースをそれぞれ切
り出して、各測定ピースについて、抵抗率、密度比、抵
抗率の異方性比、ゼーベック定数、パワーファクタとい
った物性値を計測した。その結果が上記表30〜34に
示されている。
【0192】測定ピース(鍛造インゴット14)の高さ
方向、幅方向についての物性値のばらつきは殆どみられ
なかったが、展延方向Dについて各物性値の分布にばら
つきがみられた。表30〜34では、幅方向で平均をと
り、展延方向Dの各距離ごとに物性値を示している。
【0193】表29の鍛造の出発材料である焼結インゴ
ットの抵抗の異方性比と、表30〜34に示す鍛造後の
鍛造インゴットの抵抗の異方性比の値とを比較してわか
るように、各条件8〜12ともに、鍛造インゴット中心
部については、抵抗の異方性比が鍛造前よりも大きくな
っており、鍛造により結晶子の配向が改善されているこ
とがわかる。
【0194】また、n型材料に比較して、p型材料の場
合には、配向の改善がみられる範囲が鍛造インゴットの
端部へと拡がっており、n型材料ほど座屈の影響は少な
く、配向がより改善されているのがわかる。
【0195】なお、上述した第4〜第9の実施例では、
主に、Bi2Te3系熱電半導体材料を例にとり説明した
が、BiSb系熱電半導体材料について実施した場合に
も同様の結果が得られる。
【0196】なお、上述した第1〜第9の実施例では,
Bi2Te3系熱電半導体およびBiSb系熱電半導体に
ついて説明したが、他の菱面体を有する熱電半導体材料
にも適用可能である。
【0197】なお、本実施例では、主として、ホットプ
レス(加圧焼結)によって得られた粉末焼結体を、熱間
すえこみ鍛造する場合を想定して説明したが、本発明と
してはこれに限定されるわけではない。
【0198】固溶体粉末を加圧した加圧体を熱間すえこ
み鍛造してもよく、固溶体粉末を、加圧した後、焼結さ
せた焼結体を熱間すえこみ鍛造してもよい。さらには、
比較例で示したように、材料を溶融し、凝固させたもの
(溶製材)を所望の固溶体ブロックとして切り出し、こ
れを直接、熱間すえこみ鍛造してもよい。
【0199】また、本実施例では、熱電半導体材料を熱
間鍛造で得る場合を想定して説明したが、本実施例で説
明した熱間鍛造方法は、あらゆる材料に適用可能であ
る。
【0200】本発明の熱間鍛造の適用対象材料として
は、六方晶構造、層状構造、またはタングステンブロン
ズ構造からなる磁性材料、誘電体材料、超伝導体材料が
含まれ、たとえばビスマス層状構造強誘電体、ビスマス
層状構造高温超伝導体などが挙げられる。
【0201】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の方法
によれば配向性が高く製造歩留まりの高い熱電半導体材
料を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電半導体の製造方法における熱間す
えこみ鍛造を示す概念図
【図2】本発明による熱間すえこみ鍛造後の熱電半導体
材料の顕微鏡写真
【図3】本発明による熱間すえこみ鍛造前の熱電半導体
材料の顕微鏡写真
【図4】本発明の熱電半導体の製造方法のフローチャー
トを示す図
【図5】本発明の第1の実施例の方法で用いられるすえ
こみ装置を示す図
【図6】本発明の熱間すえこみ鍛造における鍛造時間と
インゴット厚さとの関係を測定した結果を示す図
【図7】このインゴットの4半部分の単結晶に対する密
度比の分布を示す図
【図8】本発明の熱間すえこみ鍛造における加圧力とイ
ンゴットの厚さ減少量との関係を示す図
【図9】本発明の第2の実施例の方法で用いられるすえ
こみ装置を示す図
【図10】本発明実施例の方法における圧力と時間およ
びインゴット厚さの関係を示す図
【図11】このインゴットの4半部分の単結晶に対する
密度比の分布を示す図
【図12】熱電モジュールを示す図
【図13】本発明の方法で形成した熱電素子材料を用い
て形成した熱電モジュールの放熱面温度と最大温度差と
の関係を示す図
【図14】本発明の方法で形成した熱電素子材料を用い
て形成した熱電モジュールの放熱面温度と最大温度差と
の関係を示す図
【図15】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図16】本発明の実施例の鍛造工程を繰り返し行う様
子を示す図
【図17】本発明の実施例で作成された熱電モジュール
の強度を計測する様子を説明する図
【図18】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図19】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図20】鍛造インゴットの物性値を計測する測定ピー
スを示す図
【図21】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図22】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図23】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図24】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図25】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図26】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図27】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図28】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図29】本発明の実施例の方法における圧力およびイ
ンゴット高さの時間変化を示す図
【図30】本発明の実施例のすえこみ装置を説明する図
【図31】本発明の実施例のすえこみ装置を説明する図
【符号の説明】
1 ベース 2 スリーブ 3 パンチ H 空洞 5 p型素子 6 n型素子 7 接合電極 11 ベース 12 スリーブ 13 パンチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梶原 健 神奈川県平塚市万田1200 株式会社 小 松製作所 研究所内 (56)参考文献 特開 平3−16281(JP,A) 特開 昭63−138789(JP,A) 特開 平3−41780(JP,A) 特開 平4−10674(JP,A) 特開 平1−106478(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 35/34 B22F 3/24 C22C 1/04 H01L 35/16 H01L 35/32

Claims (30)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所望の組成をもつように材料粉末を混合
    し、加熱溶融せしめる加熱工程と、 菱面体構造(六方晶構造)を有する熱電半導体材料の固
    溶インゴットを形成する凝固工程と、 前記固溶体インゴットを粉砕し固溶体粉末を形成する粉
    砕工程と、 前記固溶体粉末の粒径を均一化する整粒工程と、 粒径の均一となった前記固溶体粉末を加圧焼結せしめる
    焼結工程と、 この粉末焼結体を熱間で塑性変形させ、展延すること
    で、粉末焼結組織の結晶粒を性能指数の優れた結晶方位
    に配向せしめ、前記粉末焼結体の密度比が最終的に97
    %以上になるように熱間すえこみ鍛造する熱間すえこみ
    鍛造工程とを含むことを特徴とする熱電半導体材料の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、熱間で前
    記粉末焼結体を一軸方向のみ展延させるすえこみ鍛造工
    程であることを特徴とする請求項1記載の熱電半導体材
    料の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記焼結
    工程における加圧方向と一致する方向に加圧しつつ展延
    する工程であることを特徴とする請求項1または2のい
    ずれかに記載の熱電半導体材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記熱間すえこみ鍛造工程の後さらに、
    熱処理を行う熱処理工程を含むことを特徴とする請求項
    1記載の熱電半導体材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記加熱工程と、前記凝固工程によっ
    て、 所望の組成のビスマス、アンチモン、テルル、セレンを
    主成分とする混合物を加熱溶融せしめ、Bi2Te3系
    熱電半導体材料の固溶体インゴットを形成するようにし
    たことを特徴とする請求項1記載の熱電半導体材料の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 前記整粒工程後、前記焼結工程に先立
    ち、前記固溶体粉末を水素雰囲気中で熱処理する水素還
    元工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の熱電半
    導体材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記加熱工程と、前記凝固工程によっ
    て、 所望の組成のビスマス、アンチモンを主成分とする混合
    物を、加熱溶融せしめ、BiSb系熱電半導体材料の固
    溶体インゴットを形成するようにしたことを特徴とする
    請求項1記載の熱電半導体材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 BiSb系熱電半導体材料を加圧焼結し
    た粉末焼結材を、密度比が最終的に97%以上になるよ
    うに熱間ですえこみ鍛造し、塑性変形させることで、粉
    末焼結組織の結晶粒が性能指数の優れた結晶方位に配向
    するように形成したことを特徴とする熱電半導体材料。
  9. 【請求項9】 Bi2Te3系熱電半導体材料を加圧焼
    結した粉末焼結材を、密度比が最終的に97%以上にな
    るように熱間ですえこみ鍛造し、塑性変形させること
    で、粉末焼結組織の結晶粒のc軸が配向するように形成
    したことを特徴とする熱電半導体材料。
  10. 【請求項10】 BiSb系熱電半導体材料を加圧焼結
    した粉末焼結材を一軸方向のみ展延しうる状態にして、
    密度比が最終的に97%以上になるように熱間すえこみ
    鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼結組織の結晶粒
    が性能指数の優れた結晶方位に配向するように形成した
    ことを特徴とする熱電半導体材料。
  11. 【請求項11】 Bi2Te3系熱電半導体材料を加圧
    焼結した粉末焼結材を一軸方向のみ展延しうる状態にし
    て、密度比が最終的に97%以上になるように熱間すえ
    こみ鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼結組織の結
    晶粒のc軸が配向するように形成したことを特徴とする
    熱電半導体材料。
  12. 【請求項12】 菱面体構造(六方晶構造)を有するp
    型およびn型の熱電半導体材料を加圧焼結した粉末焼結
    材をそれぞれ、密度比が最終的に97%以上になるよう
    に熱間すえこみ鍛造し、塑性変形させることで、粉末焼
    結組織の結晶粒の劈開面が揃うように配向したp型およ
    びn型の熱電半導体材料と、 前記p型およびn型の熱電半導体材料の上面および下面
    に互いに相対向するように固着せしめられた各々1対の
    電極とを具備し、電流が前記劈開面に沿って流れるよう
    に構成したことを特徴とする熱電モジュール。
  13. 【請求項13】 p型およびn型のBi2Te3系熱電
    半導体材料を加圧焼結した粉末焼結材をそれぞれ、密度
    比が最終的に97%以上になるように熱間すえこみ鍛造
    し、塑性変形させることで、粉末焼結組織の結晶粒のc
    軸が配向したp型およびn型の熱電半導体材料と、 前記p型およびn型の熱電半導体材料の上面および下面
    に互いに相対向するように固着せしめられた各々1対の
    電極とを具備し、電流が前記c軸に垂直な方向に沿って
    流れるように構成したことを特徴とする熱電モジュー
    ル。
  14. 【請求項14】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記粉
    末焼結体を、粒成長温度以下で熱間すえこみ鍛造する工
    程である請求項1または5または7記載の熱電半導体材
    料の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記粉
    末焼結体を、350°C以上550°C以下で熱間すえ
    こみ鍛造する工程である請求項1または5または7記載
    の熱電半導体材料の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、密度比
    が97%以上の前記粉末焼結体を、熱間すえこみ鍛造す
    ることにより、最終的に、当該密度比以上にする工程で
    ある請求項1または5または7記載の熱電半導体材料の
    製造方法。
  17. 【請求項17】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記粉
    末焼結体を、500kg/cm2 以下の荷重圧力で、
    熱間すえこみ鍛造する工程である請求項1または5また
    は7または15記載の熱電半導体材料の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記粉
    末焼結体を、70kg/cm2以上350kg/cm2以
    下の初期荷重圧力で、熱間すえこみ鍛造する工程である
    請求項1または5または7または15記載の熱電半導体
    材料の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、前記粉
    末焼結体を、自由方向に展延した後、当該自由方向を規
    制した状態で更に加圧する工程である請求項1または5
    または7記載の熱電半導体材料の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記熱間すえこみ鍛造工程の後、さら
    に、前記粉末焼結体を、熱間で型入れ鍛造する熱間型鍛
    造工程を行うようにした請求項1または5または7記載
    の熱電半導体材料の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記熱間すえこみ鍛造工程を複数回繰
    り返し行うようにした請求項1または2または5または
    7記載の熱電半導体材料の製造方法。
  22. 【請求項22】 BiSb系熱電半導体材料を加圧焼結
    した粉末焼結材を、熱間ですえこみ鍛造し、塑性変形さ
    せることで、密度比を97%以上にしたことを特徴とす
    る熱電半導体材料。
  23. 【請求項23】 Bi2Te3系熱電半導体材料を加圧
    焼結した粉末焼結材を、熱間ですえこみ鍛造し、塑性変
    形させることで、密度比を97%以上にしたことを特徴
    とする熱電半導体材料。
  24. 【請求項24】 所望の組成をもつように材料粉末を混
    合し、加熱溶融せしめる加熱工程と、 菱面体構造(六方晶構造)を有する熱電半導体材料の固
    溶インゴットを形成する凝固工程と、 前記固溶体インゴットを粉砕し固溶体粉末を形成する粉
    砕工程と、 前記固溶体粉末の粒径を均一化する整粒工程と、 粒径の均一となった前記固溶体粉末を加圧する加圧工程
    と、 この粉末加圧体を熱間で焼結すると同時に塑性変形さ
    せ、展延することで、粉末焼結組織の結晶粒を性能指数
    の優れた結晶方位に配向させつつ焼結し、密度比を最終
    的に97%以上にする熱間すえこみ鍛造工程とを含むこ
    とを特徴とする熱電半導体材料の製造方法。
  25. 【請求項25】 所望の組成をもつように材料粉末を混
    合し、加熱溶融せしめる加熱工程と、 菱面体構造(六方晶構造)を有する熱電半導体材料の固
    溶インゴットを形成する凝固工程と、 前記固溶体インゴットを所望の大きさの固溶体ブロック
    に切り出す切出し工程と、 この固溶体ブロックを熱間で塑性変形させ、展延するこ
    とで、結晶粒を性能指数の優れた結晶方位に配向させ、
    密度比を最終的に97%以上にする熱間すえこみ鍛造工
    程とを含むことを特徴とする熱電半導体材料の製造方
    法。
  26. 【請求項26】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、粒成長
    温度以下で熱間すえこみ鍛造する工程である請求項24
    または25記載の熱電半導体材料の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、350
    °C以上550°C以下で熱間すえこみ鍛造する工程で
    ある請求項24または25記載の熱電半導体材料の製造
    方法。
  28. 【請求項28】 前記熱間すえこみ鍛造工程は、500
    kg/cm2 以下の荷重圧力で、熱間すえこみ鍛造す
    る工程である請求項24または25または27記載の熱
    電半導体材料の製造方法。
  29. 【請求項29】 所望の組成をもつ材料を熱間で自由方
    向に展延する工程と、前記自由方向に展延した後、当該
    自由方向を規制した状態で更に加圧する工程とによっ
    て、前記材料を熱間で塑性変形させ、展延することで、
    前記材料の組織の結晶粒を配向させ、かつ密度比を最終
    的に97%以上にすることを特徴とする熱間鍛造方法。
  30. 【請求項30】 所望の組成をもつ材料を熱間で自由方
    向に展延する工程と、前記展延された材料を、熱間で型
    入れ鍛造する熱間型鍛造工程とによって、前記材料を熱
    間で塑性変形させ、展延することで、前記材料の組織の
    結晶粒を配向させ、かつ密度比を最終的に97%以上に
    することを特徴とする熱間鍛造方法。
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