JP3298365B2 - 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼

Info

Publication number
JP3298365B2
JP3298365B2 JP14639195A JP14639195A JP3298365B2 JP 3298365 B2 JP3298365 B2 JP 3298365B2 JP 14639195 A JP14639195 A JP 14639195A JP 14639195 A JP14639195 A JP 14639195A JP 3298365 B2 JP3298365 B2 JP 3298365B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
stainless steel
phase
steel
austenitic stainless
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP14639195A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08337851A (ja
Inventor
稔 諏訪
秀途 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
JFE Engineering Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Engineering Corp filed Critical JFE Engineering Corp
Priority to JP14639195A priority Critical patent/JP3298365B2/ja
Publication of JPH08337851A publication Critical patent/JPH08337851A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3298365B2 publication Critical patent/JP3298365B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加圧流動床燃焼型発電
用ボイラにおける非耐圧・非冷却部材として用い、耐繰
返し酸化性、組織安定性が要求される溶接構造高温機器
部材用の耐熱オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年高温プラント技術の進歩に伴い、新
形式の複合発電プラント、すなわちPFBC(Pres
surised Fluidized Bed Com
bustion、即ち、加圧流動床燃焼)発電システム
が提案され、試験プラントの運転も行われている。この
新形式プラントにおいては、従来形式のボイラと異なり
蒸気管以外にも高温に曝される非冷却部材の範囲が大幅
に拡大され、最高900℃程度で使用可能な非冷却部材
用の耐熱鋼も新たに求められている。
【0003】従来、高温部材用としては高温強度を主眼
とした鋼種開発がさかんに行われ、18Cr−8Ni系
ステンレス鋼がチューブ材として多用されている。その
主流はJIS SUS304H(18Cr−10Ni−
C)であり、更に、これにTiを加えたJIS SUS
321Hなどがあり、基本的には長期の安定性があると
されている18−8系で対応が可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般にPFB
Cにおける非冷却部等の部位は、使用温度が高く、圧力
容器中に格納される非耐圧部材として設計されている場
合でも使用できる鋼種がほとんど見あたらない。
【0005】このような用途に対して18−8系を適用
しようとする場合には、特開昭53−63210号公報
などに開示されているように、耐高圧酸化性を改善する
元素であるAl、Siを含有させたCr−Ni系ステン
レス鋼を適用することも考えられる。しかし、こうした
鋼種は、一定の構造強度が必要なプラント内構造部材と
しては、耐繰返し高温酸化性、長時間相安定性の維持、
溶接性という3点において配慮が十分とはいえない。
【0006】また、特開平6−271992号公報には
耐繰返し酸化性が考慮された高Al含有鋼が開示されて
いる。しかし、ここに開示されている鋼は耐繰返し酸化
性は考慮されているものの、長時間相安定性の維持、溶
接性という2点において配慮が十分とはいえない。
【0007】ここで、繰返し酸化性とは、発電プラント
のスタート・ストップによる熱サイクルを材料が繰返し
受けた場合、800〜900℃における高温酸化による
鋼材の減肉が促進される現象をいう。Al、Siを含有
させた従来のCr−Niステンレス鋼には、耐繰返し酸
化性に劣るという問題がある。また、現在かかる目的の
ために用いられようとしているJIS SUS310S
に代表される高価な25Cr−20Ni系のオーステナ
イト系ステンレス耐熱鋼は、800〜900℃における
200〜700時間の使用で容易にシグマ相を析出し、
定期点検時にハンマリングしただけでひび割れを生じる
ことが危惧されている。また、溶接時の高温割れ感受性
が高いことも問題である。
【0008】したがって、現在の高温用技術において
は、このような耐高温酸化性、長時間相安定性、溶接性
という3点を同時に満足する合金設計指針の確立が強く
望まれている。
【0009】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、800℃〜900℃での耐繰返し酸化性と長
時間の組織安定性、及び溶接性に優れた耐熱鋼を提供す
ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは、実際のプラ
ント運転における材料寿命が、特に高温酸化で決定され
る場合には、耐繰返し酸化性を考慮することが必須との
考え方に基づき、経済性に優れる18Cr−8Ni系ス
テンレス鋼を出発点として種々の合金を試作し、性能評
価を繰返した結果、単純酸化時とは異なり、表面スケー
ル層の元素組成が耐繰返し酸化性にとって重要であると
の知見を得た。すなわち、安価な耐酸化性向上元素とし
てはしばしば用いられるSiはむしろ有害であり、一方
Alを一定量以上含有させることが有効であることが分
かった。
【0011】すなわち、表面スケール層の状態を詳細に
調査した結果、このスケールはCr、Al、Si等の酸
化物であり、これらの元素がすべて同時に含有されてい
る場合は、環境側がCrが、材料側、即ち母材側がAl
もしくはSiが富化した酸化物となっていることが判明
した。したがって、耐繰返し酸化性に及ぼすこれらの元
素の効果の相違はスケールの組成がもたらすもので、特
にスケールと母相との熱膨張との差によるものと推定さ
れる。例えば、SiO2 の室温から1000℃までの平
均膨張率は0.5×10-6-1と低いが、Al23
平均膨張率は8×10-6-1であり、通常のステンレス
鋼の値20×10-6-1に比較的近い。そのため、温度
変化時に母相と界面での熱応力に差が生じても、Al2
3 被膜がはく離、脱落しにくいため内質保護性が維持
されるというメカニズムが考えられる。さらに、スケー
ル自体の保護性は、Cr単独の酸化物の場合に比べ、A
lが一定量以上加わったCrとAlの複合酸化物の場合
の方が効果が大きいことが分かった。すなわち、母材に
Alが2.0%以上含有された場合に形成されるスケー
ルの保護性が、Cr単独よりなるスケールの保護性に比
べ、大幅に向上することを実験的に新たに見いだした。
【0012】一方、800℃〜900℃で長時間加熱を
受けた場合の相安定性について、主としてシグマ相等の
脆い第二の析出を抑制する手段を種々検討した。一般に
オーステナイト系ステンレス鋼の圧延時のデルタフェラ
イト抑制、あるいはデルタフェライト量については、例
えばde Longが1960年にMetal Pro
gressにおいて提唱したような、Cr当量、Ni当
量の概念が用い得ることを見出した。ただし、Alを含
有しない系においては、シグマ相析出量の予測等には上
記式をそのまま用いることはできなかった。すなわち、
Alを含有しないCr−Ni系ステンレス鋼において
は、図1に示す状態図上においては、シグマ相の析出領
域はデルタフェライトの析出領域よりも広い、言い替え
れば、シグマ相の析出を抑制するためにはデルタフェラ
イトの析出を抑制するよりも多量に高価なNiを添加し
なければならないことが実験的に明らかになった。
【0013】また、Si添加系について実験を行ったと
ころ、図1の状態図上のシグマ相の析出領域は、Si無
添加のCr−Ni系ステンレス鋼に比べ拡大することが
明らかになった。ところが、Alを約2%以上含有する
系においては、Alのシグマ相生成能がデルタフェライ
ト生成能に比べて小さいことから、図1の状態図上では
シグマ相析出領域はAl無添加系に比べ縮小し、デルタ
フェライト析出領域とほぼ等しくなることを新たに見い
出した。
【0014】すなわち、下記(1)式が成り立つ成分範
囲において、圧延時のデルタフェライト析出と800℃
〜900℃で長時間加熱を受けた場合のシグマ相の析出
の両方を抑制できることを見出した。
【0015】 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5 Mn+Ni+30C+30N)<9 …(1) なお、圧延時のデルタフェライトの析出抑制により、圧
延時の耳割れを防止でき、歩留り向上にもつながる。
【0016】次に、溶接性については、高温割れ感受性
を抑制する手段を種々検討した。一般にオーステナイト
系ステンレス鋼の高温割れ感受性は、凝固時に数%のデ
ルタフェライトを存在させることにより低下させること
ができる。しかし、耐酸化性を高めるために、Cr量を
増加させるとシグマ相析出を抑制するために、オーステ
ナイト相の安定性をデルタフェライトに対して過剰に高
めなければならず、凝固時に完全にオーステナイト凝固
となってしまい、高温割れ感受性を高めてしまう。ま
た、Si量を増加させた場合は、さらにシグマ相析出抑
制のためにNi当量を増加させなければならず、高温割
れ感受性を高めてしまう。
【0017】ところが、Alは、デルタフェライト生成
能に対してシグマ相生成能が低いため、シグマ相析出抑
制のためにデルタフェライトに対するオーステナイト相
の安定性を過剰に高める必要がない。具体的には、Al
を約2%以上含有する場合、シグマ相の析出を十分抑制
できるだけNi当量を高めオーステナイト相を安定化し
ても、溶接部の凝固時においてはデルタフェライトが存
在し、溶接部の高温割れ感受性を極めて低く抑制できる
ことが判明した。
【0018】本発明はこのような知見に基づいてなされ
たものであって、第1に、重量%で、C:0.12%以
下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:
0.04%以下、S:0.03%以下、Cr:15%〜
22%、Ni:10%〜25%、Al:2.0%〜3.
5%、N:0.02%以下、Ca:0.001%〜0.
010%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から
なり、かつ以下の(1)式を満たすことを特徴とする8
00〜900℃における耐繰返し酸化性、組織安定性お
よび溶接性に優れた加圧流動床燃焼発電プラントの非耐
圧、非冷却部材用オーステナイト系ステンレス鋼を提供
するものである。
【0019】 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5Mn+Ni+30C+30N)< 9 (1) 第2に、重量%で、C:0.12%以下、Si:1.0
%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、
S:0.03%以下、Cr:15%〜22%、Ni:1
0%〜25%、Al:2.0%〜3.5%、N:0.0
2%以下、Ca:0.001%〜0.010%、Mg:
0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純
からなり、かつ以下の(1)式を満たすことを特徴と
する800〜900℃における耐繰返し酸化性、組織安
定性および溶接性に優れた加圧流動床燃焼発電プラント
の非耐圧、非冷却部材用オーステナイト系ステンレス鋼
を提供するものである。 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5Mn+Ni+30C+30N)< 9 (1)
【0020】
【作用】以下、本発明に係るステンレス鋼において各成
分を含有させた理由およびその範囲を限定した理由を述
べる。 C: Cは本発明鋼の母相の高温強さを与え、相安定性
に有効な元素であるが、0.12%を超えて含有する
と、結晶粒内を縦断する形で粗大な炭化物が析出するの
で、その含有量を0.12%以下とした。
【0021】Si: Siは脱酸に有効な元素であるた
め1.0%以下を含んでもよいが、1.0%を超えて含
有すると、表面の酸化被膜の母相側がSiリッチとなり
耐繰返し酸化特性に有害となるので、またシグマ相の生
成能が大きく相安定性を維持するのが困難となるため、
さらに溶接時の高温割れ感受性を高めるため、その含有
量を1.0%以下とした。
【0022】Mn: Mnは相安定性に有効な元素であ
るため2.0%以下であればよいが、2.0%を超えて
含有すると耐繰返し高温酸化性に有害となるので、含有
量を2.0%以下とした。
【0023】P: Pは粒界偏析して圧延時の延性を害
する元素であって、その含有量は少ないほど良い。そこ
で、圧延時における延性の低下による割れを防止するた
め、その含有量を0.04%以下とした。
【0024】S: SもP同様に、粒界偏析して圧延時
の延性を害する元素である。その含有量は少ないほど良
い。そこで、圧延時における延性の低下による割れを防
止するため、その含有量を0.03%以下とした。
【0025】Cr: Crは高温での耐酸化性を与える
基本元素として重要である。その含有量は15%未満の
場合は、耐高温酸化性に有効なAlを含有しても800
℃〜900℃において耐繰返し高温酸化性の大幅な向上
を得ることができない。一方、22%を超えて含有する
とオーステナイト相の安定性を維持するために、高価な
Niを多量に必要とし経済性を損なうようになり、しか
も耐高温酸化性向上に対する寄与が小さくなる。したが
って、Cr含有量を15〜22%とした。
【0026】Ni: Niは、安定なオーステナイト組
織を得るために必須な元素である。その含有量は、他の
含有元素、特にCrとAlとの関係から10%以上を必
要とする。一方、Niの含有量が25%を超えると、オ
ーステナイト安定化の効果が小さくなり、Ni量を増加
してもCr等の耐高温酸化性を向上する元素を大きく増
やすことができなくなる。また、Ni量を過剰に多くす
ると、フェライト相に対するオーステナト相の安定性が
過剰に高くなり、溶接時の高温割れ感受性を高めてしま
う。これらのため、Ni含有量を10〜25%以下とし
た。
【0027】Al: Alは単独では、酸化環境中でA
23 という非常に緻密な酸化物被膜を形成し、Cr
酸化物存在下ではその中に複合酸化物として含まれて、
酸化物の緻密性を高める。かかる場合の表面保護性は非
常に高いばかりでなく、繰返し熱応力に対してもはく離
を起こしにくく、優れた耐繰返し高温酸化性を与える元
素である。しかし、この耐繰返し高温酸化性の向上はA
l量が2.0%未満の場合は、ある程度の効果があるも
のの、有効な効果はみとめられない。これに対して、A
l量が2.0%以上になると、耐繰返し高温酸化性は大
幅に向上する。しかし、Alを3.5%を超えて含有す
ると相安定性を維持するのが困難となる。このためAl
の含有量を2.0〜3.5%とした。
【0028】N: NはCと同様に、本発明鋼の母相の
高温強さを与え、相安定性に有効な元素であるため、
0.02%以下を含んでもよいが、0.02%を超えて
含有すると窒化物を形成し、靭性に有害であることか
ら、含有量は0.02%以下とした。
【0029】Ca: Caは微量添加することにより熱
間加工性を改善する元素として有効であるが、0.00
1%未満ではその効果が十分でなく、0.010%を超
えると清浄性を損ない熱間加工性を低下するため、Ca
含有量を0.001〜0.010%以下とした。
【0030】Mg: Mgは微量添加することにより熱
間加工性を改善する元素として有効であるが、0.05
%を超えると熱間加工性を低下するため、その含有量を
0.05%以下とした。また、Caと同様の効果を有す
るため、無添加の場合も含むことにした。
【0031】Y、La、Ce: 希土類元素であるY、
La、CeはAl23 酸化被膜中に溶け込んで、その
高温酸化に対する一般的耐性を高めるので、これらのう
ち一種以上を含有してもよい。これらが含有で0.07
%を超えて含有すると熱間加工性を害するので、これら
含有量を合計量で0.07%以下とした。
【0032】次に、αの限定理由について説明する。耐
シグマ脆性、熱間加工性、溶接性に影響を及ぼすオース
テナイト相とシグマ相またはフェライト相との相対的な
安定性を決定する主な因子は、Cr当量とNi当量の関
係である。これらはそれぞれ以下のような式で示され
る。
【0033】Cr当量=1.5Si+Cr+3Al Ni当量=0.5Mn+Ni+30C+30N 本発明者らはこれらCr当量およびNi当量を用いた下
記の(1)式が成り立つときに、800℃〜900℃で
の長時間使用後も脆いシグマ相の析出がほとんど無いこ
と、すなわち、長時間使用しても良好な靭性が保たれる
ことを見出した。また、同時に(1)式が成り立つと
き、圧延後のフェライト相の存在がなくオーステナイト
単相組織であり、鋼板端部の割れもほとんど無いことを
見出した。鋼板端部の割れは歩留りを低下させるため経
済的に好ましくない。したがって、以下の(1)式を満
足することを要件とした。
【0034】 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5 Mn+Ni+30C+30N)<9 …(1) なお、溶接性の観点からは、フェライト相に対するオー
ステナイト相の安定性を過剰に高めると、高温割れ感受
性を高めてしまうことになるため、(1)式の左辺の値
はできるだけ大きくなるような成分系とすることが好ま
しい。
【0035】なお、上記のように規定される本発明のオ
ーステナイト系ステンレス鋼は、溶鋼に所定の成分を所
定量、単体または母合金の形で含有させることにより製
造される。
【0036】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。表1
と表2に本実施例で用いた鋼の化学成分を示す。表1の
No.1からNo.14は上記第1発明の組成範囲を満
足する発明鋼であり、またNo.15からNo.21は
上記第2発明の成分範囲を満足する発明鋼である。一
方、表2のNo.22からNo.43は比較鋼である。
両表中には、(1)式で定義されるαの値も併せて示し
た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】これらの鋼に対して、900℃での繰返し
酸化試験を行った結果を表3と表4に示す。繰返し酸化
試験は、20mm×30mm×5mmの腐食試験片を用
い、ムライト管を内管とする環状炉で加熱した。湿度調
整システムにより露点を30℃に加湿・調整した空気中
で96時間均熱後、側壁を水冷した冷却室に移動させて
200℃まで冷却し、これを1サイクルとして20サイ
クルの繰返し加熱を行った。昇温速度、降温速度の実測
値は、それぞれ約130℃/min、150℃/min
であった。耐繰返し酸化性は、試験終了後の試験片をナ
イロンブラシで徐塵した後、重量測定し、試験前の重量
に対する酸化減量で評価した。この試験の繰返し数(n
数)は各鋼種で3とし、これらの平均値で評価した。個
々の試験片間のばらつきはおおむね10〜50%以内で
あった。
【0040】これらの表からわかるように、No.1か
らNo.21の発明鋼は、比較鋼No.22として実験
した汎用の18Cr−8Ni系ステンレス鋼(SUS3
04H)に比べ1/10以下の腐食減量であり、良好な
繰り返し耐繰り返し酸化性を示した。これは、一定量以
上のAlとCr量を含有することにより、酸化被膜の緻
密性が増し、かつ酸化被膜が安定になり、内部保護性が
向上するためと考えられる。
【0041】これに対し、比較鋼No.22、No.3
1、No.32はAl量の不足により、また比較鋼N
o.30はCr量の不足により、十分な耐高温酸化性が
得られていない。比較鋼No.28はMnを多量に含む
ことにより、耐高温酸化性が低下しており、結果として
大きな腐食減量を示している。
【0042】比較鋼のNo.24およびNo.25にお
いては、Siの含有量が高めであって、酸化試験の初期
に比較的小さい腐食減量を示すものの、2〜3サイクル
目から酸化被膜のはく離が生じはじめ、長期的には大き
な腐食減量を示すようになるのが特徴である。
【0043】次に、高温での使用時に問題となる特性と
して、組織安定性が重要であるので、組織安定性を把握
するために、850℃において400時間時効し、JI
S4号シャルピー衝撃試験片による0℃におけるシャル
ピー衝撃試験の吸収エネルギーを測定した。その値を表
3および表4に併記する。
【0044】発明鋼は0℃における吸収エネルギーが3
0J以上と良好で炭窒化物、σ相等の金属間化合物等の
生成に起因するような靭性低下は認められなかった。こ
れに対して、比較鋼No.23はCr量が過剰のため、
比較鋼No.24とNo.25はSi量が過剰ため、比
較鋼No.33とNo.34はAl量が過剰のため、シ
グマ相が析出し靭性の低下が認められた。また、比較鋼
No.29はNi量が不足のため、シグマ相が析出し靭
性の低下が認められた。比較鋼No.38およびNo.
39はαの値が9以上となっているため、長時間の熱処
理によりシグマ相が析出し靭性の劣化が認められた。
【0045】比較鋼No.27は炭化物の過剰な析出に
より、また比較鋼No.35は窒化物の過剰な析出によ
り、靭性の低下が認められた。次に、圧延時の熱間加工
性について評価した。ここでは圧延後の板材の耳割れの
有無によって加工性評価を行った。その結果も表3と表
4に示す。本発明鋼では1200℃加熱し、仕上温度を
900℃とした圧延工程において、耳割れは発生せず、
良好な圧延効果が得られた。
【0046】一方、Ca量が適量でない比較鋼No.3
6とNo.37、Mg量が適量でない比較鋼No.40
においては、板端面に耳割れを生じた。また、Y、L
a、Ceの合計量が適量でない比較鋼No.41とN
o.42とNo.43においても板端面に耳割れを生じ
た。(1)式のαの値が9以上の比較鋼No.38とN
o.39も板端面に耳割れを生じた。
【0047】最後に、構造部材として使用する場合に問
題となる重要な特性である溶接時の高温割れ感受性を評
価した。この溶接時の高温割れ感受性はバレストレイン
試験により評価した。試験は、ノンフィラーTIGで入
熱18kJ/cmの溶接を模擬しながら、試験片に1.
0%の曲げ歪を与え、冷却後に合計割れ長さを測定する
ことにより行った。
【0048】その結果、本発明鋼では試験後に割れの発
生は認められなかった。これに対して、比較鋼No.2
4およびNo.25はSi量が過剰のため、比較鋼N
o.26はNi量が過剰のため、いずれもフェライト相
が不安定でオーステナイト相が過剰に安定になってお
り、溶接後に割れの発生が認められた。
【0049】以上の実施例および比較例から明らかなよ
うに、本発明の成分設定によれば、高温での耐繰返し酸
化性能の向上を図ることができ、また高温使用時の組織
安定性に優れるため靭性の劣化がなく、かつ圧延製造時
の熱間加工性も優れ、しかも溶接時の高温割れ感受性が
高くないため溶接性に優れた、耐熱性ステンレス鋼を得
ることができることが確認された。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、800℃〜900℃と
いう非耐圧・非冷却部などの新形式発電プラントに特徴
的な使用条件に耐え得る加圧流動床燃焼発電プラント非
耐圧・非冷却部材用の耐熱性オーステナイト系ステンレ
ス鋼を得ることができる。しかも従来の汎用性ステンレ
ス鋼である18Cr−8Ni系ステンレス鋼より大幅に
優れた耐繰返し酸化性を有するため、プラントの短周期
の立ち上げ、シャットダウンの繰返しによく耐え、長期
の使用に対して良好な組織安定性を示し信頼性が高く、
溶接構造用としては高温割れ感受性が低く作業性の良好
な部材の製造に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al無添加の従来のCr−Ni系ステンレス鋼
と、本発明のAl含有Cr−Ni系ステンレス鋼の、C
r当量Ni当量2元系状態図上のシグマ相析出領域の相
違を示した図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−47816(JP,A) 特開 昭49−102511(JP,A) 特開 昭62−164854(JP,A) 特開 昭60−211054(JP,A) 特開 平6−271993(JP,A) 特開 平8−337850(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.12%以下、Si:
    1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以
    下、S:0.03%以下、Cr:15%〜22%、N
    i:10%〜25%、Al:2.0%〜3.5%、N:
    0.02%以下、Ca:0.001%〜0.010%を
    含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、かつ
    以下の(1)式を満たすことを特徴とする800〜90
    0℃における耐繰返し酸化性、組織安定性および溶接性
    に優れた加圧流動床燃焼発電プラントの非耐圧、非冷却
    部材用オーステナイト系ステンレス鋼。 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5Mn+Ni+30C+30N)< 9 (1)
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.12%以下、Si:
    1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.04%以
    下、S:0.03%以下、Cr:15%〜22%、N
    i:10%〜25%、Al:2.0%〜3.5%、N:
    0.02%以下、Ca:0.001%〜0.010%、
    Mg:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可
    避不純物からなり、かつ以下の(1)式を満たすことを
    特徴とする800〜900℃における耐繰返し酸化性、
    組織安定性および溶接性に優れた加圧流動床燃焼発電プ
    ラントの非耐圧、非冷却部材用オーステナイト系ステン
    レス鋼。 α=(1.5Si+Cr+3Al)−(0.5Mn+Ni+30C+30N)< 9 (1)
JP14639195A 1995-06-13 1995-06-13 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼 Expired - Fee Related JP3298365B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14639195A JP3298365B2 (ja) 1995-06-13 1995-06-13 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14639195A JP3298365B2 (ja) 1995-06-13 1995-06-13 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08337851A JPH08337851A (ja) 1996-12-24
JP3298365B2 true JP3298365B2 (ja) 2002-07-02

Family

ID=15406645

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP14639195A Expired - Fee Related JP3298365B2 (ja) 1995-06-13 1995-06-13 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3298365B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7260767B2 (ja) * 2019-04-02 2023-04-19 日本製鉄株式会社 溶接継手、及び、その溶接継手の製造に用いられる溶接材料
CN114836671A (zh) * 2022-05-05 2022-08-02 兰州理工大学 一种高铝310s不锈钢及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08337851A (ja) 1996-12-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPS648695B2 (ja)
JP3375817B2 (ja) 高クロムフェライト鋼用溶接ワイヤ
JP5012243B2 (ja) 高温強度、耐熱性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼
JP2002241900A (ja) 耐硫酸腐食性と加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼
JP2022046521A (ja) フェライト合金
JP2009197307A (ja) 高温強度、耐水蒸気酸化性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼
US4140526A (en) Ferritic stainless steel having improved weldability and oxidation resistance
JP3298365B2 (ja) 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼
JPH09324246A (ja) 耐高温腐食性に優れた熱交換器用オーステナイト系ステンレス鋼
JPH08337850A (ja) 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼
JPH04173939A (ja) 高温強度および靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP3149687B2 (ja) 耐繰返し酸化特性に優れたステンレス鋼
US20200181745A1 (en) Ferritic alloy
JP4523696B2 (ja) 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼用tig溶接材料
JPH07204885A (ja) 耐溶接高温割れ性に優れたフェライト鋼溶接材料
JP3591486B2 (ja) 高Crフェライト系耐熱鋼
JP5796398B2 (ja) 熱疲労特性と高温疲労特性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP3004784B2 (ja) 高温用高靱性フェライト系ステンレス鋼
JPH09324245A (ja) 溶接構造用耐熱オーステナイト系ステンレス鋼
JPS5924172B2 (ja) 耐熱バイメタル
JPH09241810A (ja) 溶接構造高温機器用オーステナイト系ステンレス鋼
JPH04224657A (ja) 高温強度と溶接熱影響部の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JP4245720B2 (ja) 高温酸化特性を改善した高Mnオーステナイト系ステンレス鋼材
JPH02213449A (ja) ごみ焼却廃熱ボイラ管用高耐食鋼
JPS6214626B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees