JP4523696B2 - 高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼用tig溶接材料 - Google Patents

高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼用tig溶接材料 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温におけるクリープ強度と時効後靱性と耐高温腐食性と溶接性に優れたオーステナイト系耐熱鋼用TIG溶接材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電効率の向上の目的で火力発電用ボイラの稼働条件は高温、高圧化の方向にある。これに伴い、ボイラに使用される材料に対してもより優れた高温強度が要求されるようになり、従来のSUS347、SUS316、SUS310といったオーステナイト系のステンレス鋼の適用やさらに高温強度を高めたオーステナイト系耐熱鋼の開発が進められている。しかし、溶接構造物である火力発電用ボイラを考えた場合、溶接部も母材と同様に優れた高温強度が要求され、高温での使用に耐えうる溶接材料の開発が望まれる。また、ボイラの稼働中の温度変化などによる衝撃力に耐えるように母材や溶接部には時効後の靱性も要求される。ところが、一方では、圧延、熱処理を加え優れた特性と得る母材とは異なり、オーステナイト系の溶接金属は凝固のままで使用する。そのため、溶接材料には母材と異なった成分設計が必要である。さらに、溶接材料には優れた溶接性も兼ね備える必要がある。特に、本発明が関わるオーステナイト系の溶接金属は溶接直後に発生する高温割れの危険性があり、耐高温割れ性の確保は溶接材料開発には不可欠である。
【0003】
高温強度の優れた溶接材料として例えば、特開昭59−66994号公報に記載されるようなNi基耐熱合金に微量のBを添加して高温強度を向上させた溶接材料や特開昭61−25472号公報に記載されるような特定%のC、Ti、Zr、Cr、Mo等を含み、残部がNiからなるNi基耐熱材料のTIG溶接材料が発明されているが、何れもNi基の溶接材料でボイラ用耐熱合金を対象としているものではない。さらに、Ni基の溶接材料は例えば、特開昭59−66994号公報の様に、高価なNiを約30%から50%含み経済的にも問題がある。
【0004】
また、特開平5−50287号公報や特開平5−50288号公報には、高速増殖炉等のように比較的温度条件が低い600度未満の高温環境下で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼用の溶接材料が公開されている。しかしながらこれらの発明は、例えば特開平5−50287号公報の実施例にあるように使用環境温度が550度近傍と比較的温度が低い高速増殖炉等ではクリープ強度強度は維持できるものの、火力発電ボイラ等の使用温度域である600度以上の高温域でのクリープ強度を満足することはできないものである。さらに、破断延性を重視するためPを意図的に添加するなど目的も異なる。さらに、以上の背景から、火力発電ボイラの分野を適用分野とした、高温強度の優れた経済的な溶接材料の発明が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に鑑み、オーステナイト系耐熱鋼を溶接する上で必要な、600℃以上の高温におけるクリープ強度と時効後靱性と溶接性の優れたTIG用溶接材料を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであり、その要旨は下記のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.01%〜0.07%、
Si:0.1%〜1.0%、
Mn:0.5%〜1.5%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
Cr:14.0%〜21.0%、
Ni:10.0%〜20.0%、
Mo:0.5以下、
W:1.5%〜4.0%、
Nb:0.1%〜0.6%、
V:0.3%〜0.8%、
Al:0.04%以下、
N:0.07%〜0.25%
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、さらに下記(1)式で得られるCr当量および(2)式で得られるNi当量の比(Ni当量)/(Cr当量)が0.70〜1.30であることを特徴とする、高温におけるクリープ強度と時効後靱性と溶接性の優れたオーステナイト系耐熱鋼用TIG溶接材料。
Figure 0004523696
【0007】
(2) 質量%で、
C:0.01%〜0.07%、
Si:0.1%〜1.0%、
Mn:0.5%〜1.5%、
P:0.01%以下、
S:0.005%以下、
Cr:14.0%〜21.0%、
Ni:10.0%〜20.0%、
Mo:0.5%未満、
W:1.5%〜4.0%、
Cu: 0.1%〜2.0%、
Nb:0.1%〜0.6%、
V:0.3%〜0.8%、
Al:0.04%以下、
N:0.07%〜0.25%
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、さらに下記(3)式で得られるCr当量および(4)式で得られるNi当量の比(Ni当量)/(Cr当量)が0.70〜1.30であることを特徴とする、高温におけるクリープ強度と時効後靱性と溶接性の優れたオーステナイト系耐熱鋼用TIG溶接材料。
Figure 0004523696
【0008】
【発明の実施の形態】
一般に構造物を作成後の溶接金属部は、母材のような圧延やその後の熱処理を行えず、凝固ままで使用されるため、溶接金属の高温強度等の特性を向上させるためには、溶接材料中の添加元素及びその範囲の適正化が重要になる。
【0009】
本発明のオーステナイト系溶接材料の技術思想としては、先ず、C、N、CuおよびWによる固溶強化、さらにNb、Vの適量添加による炭窒化物の微細析出を利用し、高温強度の向上を図り、高温クリープ強度を確保した。
また、溶接材料では、上記の高温強度の他に溶接性が重要になる。特にオーステナイト系の溶接材料の場合、高温割れが課題となる。これには、PおよびSの低減を行い溶接金属の高純化を図り、耐高温割れ性を確保する。
【0010】
さらに、本発明者らの実験等による詳細な検討の結果、溶接後の高温割れを防ぐために溶接後に溶融した溶接金属が凝固する際に微量のδフェライト相を晶出させ、且つ、凝固後から室温までに100%オーステナイト相に変態するように、溶接金属の化学成分組成を調整することにより、高温割れ及び時効後の靱性の低下を防げることが判明した。 また、この場合の溶接金属組織の制御は、溶接材料中に含有するオーステナイト安定化元素とフェライト安定化元素の割合で行うことが可能であり、具体的には、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載の(1)式または(3)式で定義されるCr当量および、(2)式または(4)式で定義されるNi当量の比である(Ni当量)/(Cr当量)が0.7〜1.30の範囲を満足するように成分調整することで行えることがわかった。すなわち、(Ni当量)/(Cr当量)を上記範囲に規定することにより、溶接金属の凝固時に微量のδフェライトが晶出でき、かつ凝固から室温までの冷却までに100%オーステナイト相に変態しδフェライトを残留させないようにできる。よって、高温割れを防止することができるとともに、高温時における溶接金属部の時効にともなう靱性の低下を防止することができる。
【0011】
さらに、本発明者らは、Moが高温での保持中に脆い金属間化合物として析出し、時効後の靱性に悪影響を及ぼすことを見いだし、Moの添加量の上限を規定することにより、さらなる時効後の靱性の確保が可能となることがわかった。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであるが、以下の本発明について詳細に説明する。以下に本発明における成分及びその含有範囲の限定理由を詳細に説明する。
【0012】
Cは析出強化および固溶強化に対して重要な元素である。そのため、それらの効果を得るために0.01%以上含有する必要がある。しかし、過剰の添加は析出物の粗大化を招き、高温で時効後の靱性低下や、クリープ強度の低下につながり、耐高温割れ性も低下させる。また、過剰のC添加はCr炭化物を形成しする。その結果、Cr欠乏層が粒界に形成され、耐粒界腐食性を低下させる。これらを防止するため、 C量の上限を0.07%とする。
【0013】
Siは脱酸剤として必要な元素であり、また、溶融した溶接金属の流動性を向上させ、作業性を確保するためにも必要である。また、耐水蒸気酸化特性も向上させる。これらの効果を得るためにSiを0.1%以上含有させる必要がある。しかし、過剰の添加は溶接金属の靱性の低下を招き有害であるため上限は1.0%とした。
【0014】
Mnは脱酸剤として必要な元素であり、さらに耐高温割れ性に対して有害なSを固定する元素としても重要な元素である。しかし、過剰添加は、耐酸化性に対して悪影響を及ぼすため、その適正範囲を0.5〜1.5%とした。
【0015】
Pは母材ではクリープ強度およびクリープ破断延性を向上させるため添加する場合がある。しかし、本発明では、Pは凝固時に結晶粒界に偏析し高温割れを招くため、溶接材料に対しては最も有害な元素であり、可能な限り低減する目的でその含有量を0.01%以下とした。
Sも本発明では、Pと同様に凝固時に結晶粒界に偏析し高温割れを招き、耐高温割れ性に悪影響を及ぼすため、その含有量を0.005%以下とした。
【0016】
Crは、高温クリープ強度、耐高温酸化性を向上させるために、耐熱鋼の溶接材料にとっては必須の元素である。この効果を得るために14.0%以上含有する必要がある。しかし、過剰に添加するとδフェライトが多量に生成するため、これを抑制するためにその含有量の上限を21.0%とした。
【0017】
Niは、オーステナイト生成元素として高温強度の優れたオーステナイト系耐熱鋼溶接材料には必須の元素である。特に、本発明ではσ相の析出を抑制するためにNiを10.0%以上含有させる。一方、過剰の添加はコスト的にも望ましくなく、また、オーステナイトが安定化しすぎ溶接性が損なわれるため、これらを考慮して、その含有量の上限を20.0%とする。
【0018】
Moは、高温での保持中に脆い金属間化合物を形成し靱性を低下させ、また耐食性も劣化させる。これらのMo悪影響を排除し、耐食性を向上させるためには、その含有量をできるだけ低下させることが好ましく、本発明では、Moの含有量の上限を0.5%とした。
【0019】
Wは、固溶強化元素であり、特に本発明では、固溶強化元素のMoの含有量を上記のように抑制したため、さらに重要となり、また、適量添加することにより炭化物あるいは金属間化合物の析出・成長を遅くさせ安定したクリープ強度を得ることができる。従ってこれらの効果を得るために本発明では、1.5%以上を含有させる。しかし、過剰添加は、Crと同様δフェライトの多量の生成によって、高温での時効後の靱性低下を招くため、その含有量の上限を4.0%とする。
【0020】
Nは、NbおよびVの炭窒化物を形成するのに必要な元素で、0.07%以上含有する必要があり、これにより、微細なNb、Vの炭窒化物を形成する。また、析出に寄与しないNは固溶強化として有効に働くが、0.25%より多量に添加してもクリープ強度の向上は飽和し、逆に短時間強度の増加に伴い靱性の低下が生じるため、含有量の上限を0.25%とする。
【0021】
NbおよびVは、炭窒化物を形成し、析出強化によりクリープ強度を向上させる。この効果は、単独添加でも得られるが、複合添加することによりその効果は飛躍的に向上できる。しかし、炭窒化物の過剰に析出し析出物の粗大化を招き、高温で時効後の靱性やクリープ強度の低下につながるため、上述のようにC量の適正化および後述のN量の適正化とともにNbおよびVの含有量の上限を規定する必要がある。これらの理由により、本発明では、Nb:0.1〜0.6質量%、V:0.3〜0.8質量%と規定する。
【0022】
Alは脱酸材として使用されるが、本発明ではSiおよびMnにより脱酸を行うため、意図的には添加しない。逆に、過剰なAlは靱性低下を招くため、本発明では、上限を0.04%とした。
【0023】
本発明では、上記の特性を維持しつつ更に高温クリープ強度を向上させるために、上記成分とともに、Cuを以下のように添加することができる。すなわち、Cuはオーステナイト安定化元素であり、さらに、高温強度、特にクリープ破断強度を向上させる元素として有効である。この効果を得るためには、0.1質量%以上添加する必要がある。しかし、2.0%を超えて添加すると延性の低下を招き、さらにオーステナイトが安定化し過ぎ高温割れの発生の危険性がある。そのため上限を2.0%とした。
【0024】
次に、本発明で下記の(1)式または(3)式で示されるCr当量および、下記の(2)式または(4)式で示されるNi当量の比である(Ni当量)/(Cr当量)の範囲を0.70〜1.30に規定する根拠を示す。
【0025】
図1には、(Ni当量)/(Cr当量)の値と高温割れ感受性の指標であるバレストレイン割れ試験における割れ発生個数の関係を示す。高温割れは、この割れ発生個数が多いほど発生しやすい。この図から(Ni当量)/(Cr当量)の値が1.30を境に割れ個数が急激に増加していることが判る。本発明者らの調査の結果、1.30以上で高温割れが防止できなかった理由は、溶接後に溶接金属が凝固する際にδフェライトが晶出しなかったためであることがわかった。
【0026】
次に、図2には、(Ni当量)/(Cr当量)の値と600℃および700℃の10000時間後の溶接金属の20℃における吸収エネルギーの関係を示す。この図より、(Ni当量)/(Cr当量)値が0.70未満は600℃および700℃の10000時間時効後の靱性の低下が著しいことがわかる。これは、(Ni当量)/(Cr当量)の値が0.70未満になると、溶接後の凝固の際にδフェライトの析出量が過度に多くなり、凝固後から室温までに100%オーステナイト相に変態できずにδフェライトが残留する。その結果、時効後にδフェライトが脆いσ相に変化し、靱性が低下するためと考えられる。
【0027】
以上から、本発明では、溶接後の溶接金属が凝固する際に微量のδフェライトを晶出させて高温割れを防止し、且つ凝固後から室温までの冷却までに100%オーステナイト相に変態させてδフェライトを残留させないことにより600℃以上で時効後の靱性低下を抑制するために、(Ni当量)/(Cr当量)の値を0.70〜1.30の範囲に限定する。
【0028】
【実施例】
表1〜表4に本発明の実施例および比較例の溶接材料の化学組成を示す。溶接材料No.1〜18が本発明例であり、溶接材料No.19〜37が比較例である。これらの溶接材料を用いて溶接後の溶接金属のクリープ破断強度および時効後の靱性を測定した。溶接に用いた母材は、各溶接材料と同成分の溶解材を圧延して得られた厚さ20mmの鋼板を用い、溶接金属の化学組成が母材の影響を受けないようにした。図3に溶接時の開先形状を示す。
【0029】
【表1】
Figure 0004523696
【0030】
【表2】
Figure 0004523696
【0031】
【表3】
Figure 0004523696
【0032】
【表4】
Figure 0004523696
【0033】
表5〜表6に、溶接金属の性能の評価結果を示す。溶接金属の性能評価は、試験温度が700℃で付加応力が200MPaと160MPaの試験条件でのクリープ破断時間、溶接ままの溶接金属の20℃における吸収エネルギー、600C℃と700℃の温度で10000時間時効した後の溶接金属の20℃における吸収エネルギー、溶接金属断面観察による欠陥発生状況の観察および、使用環境を模擬した石炭灰腐食試験により求めた耐食性で評価した。また、図4には、本発明および比較例で得られた溶接金属のクリープ破断強度を示した。
【0034】
【表5】
Figure 0004523696
【0035】
【表6】
Figure 0004523696
【0036】
本発明例である溶接材料No.1〜No.18はそれぞれ化学成分組成及びNi当量/Cr当量の比の値が本発明の範囲である。そのため、添加元素による強化機構が有効に働き、図4に示すように本発明例の溶接金属は、優れたクリープ破断強度を示している。
【0037】
また、溶接後の凝固時にδフェライト量を適正に制御しているため、高温割れも無く健全な溶接部が得られている。さらに、室温までの冷却後、溶接金属は完全オーステナイト組織になり、Moの低減の効果も有効に働き、溶接金属の靱性は溶接まま、および時効後共に良好である。さらに、溶接金属の耐食性も良好である。
【0038】
一方、比較例は溶接材料No.19はC量が本発明範囲より高いため、その溶接金属のクリープ破断強度が低い。溶接材料No.20は強化元素は本発明の範囲内であり、溶接金属のクリープ破断強度は良好であるが、P量およびS量が本発明範囲より高いため高温割れが発生している。
【0039】
溶接材料No.21、22はCrの含有量が本発明範囲外で、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲からはずれている例である。No.21はCrの含有量が本発明範囲より少なく、そのためNi当量/Cr当量が本発明範囲より高くなっており溶接金属中に高温割れが発生している。また、 No.22は、Ni当量/Cr当量が本発明範囲より低く、その溶接金属のクリープ破断強度および溶接性は良好であるが、冷却後もδフェライトが溶接金属中に残留しているため、時効後の溶接金属の靱性が低下している。また、このため、溶接ままの溶接金属の靱性も、本発明の溶接材料による溶接金属と比較して低い値を示す。またNo.22はSi含有量が本発明範囲より低く、そのため溶接作業性が悪い。さらに、No.22はMnの添加量も、本発明の範囲を超えており、耐食性も低下している。
【0040】
溶接材料No.23およびNo.24はNi含有量が本発明範囲外の例である。No.23はNi含有量が本発明範囲より低く、Ni当量/Cr当量が本発明範囲より低く、そのため、その溶接金属の時効後の靱性が低下している。No.24は、 Ni含有量が本発明範囲より高く、Ni当量/Cr当量が本発明範囲より高く、そのため、高温割れが発生し、溶接性が低下している。またNo.24はMnの添加量が本発明範囲より低いため、脱酸が十分でなく、その溶接金属は完全オーステナイト組織にもかかわらず靱性が低い。また、Siが本発明の範囲を超えておりその結果、溶接金属は十分な靱性得られていない。
【0041】
No.25およびNo.26は、合金元素の添加量は本発明の範囲内であるが、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲をはずれている例である。 No.25は、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲より高く、溶接性が低下し、 No26は、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲より低く、溶接金属は時効後の靱性が低下している。
【0042】
No.27およびNo.28は、W含有量が本発明の範囲を外れている例である。No.27はW含有量が本発明の範囲より少ないため、その溶接金属のクリープ破断強度が低い。一方、No.28はW含有量が本発明の範囲より多いため、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲より低くなり、その溶接金属の時効後の靱性が低下している。
【0043】
No.29は、Moの含有量が本発明の範囲より多い。そのため、その溶接金属は時効後の靱性が低下し、また耐食性も低下している。
No.30およびNo.31は、Nbの添加量が本発明の範囲を外れている例である。そのため、その溶接金属のクリープ破断強度が低い。
No.32およびNo.33は、Vの添加量が本発明の範囲を外れている。そのため、Nbの場合と同様にその溶接金属のクリープ破断強度が低い。
No.34はAlの含有量が本発明の範囲より高い。そのため、 Ni当量/Cr当量は本発明の範囲内であるが、その溶接金属の靱性は溶接まま、時効後ともに低い。
【0044】
No.35は、Cuの含有量が本発明の範囲を越えている。そのため、Ni当量/Cr当量が本発明の範囲より高くなり、高温割れが発生している。しかも、Cu含有量が本発明の範囲より多く溶接金属のクリープ破断強度の向上の効果は飽和し、さらに、クリープ破断延性が低下している。
No.36およびNo.38はNの含有量が本発明の範囲を外れている。No.36はNの含有量が少ないため、その溶接金属のクリープ破断強度が低い。一方、No.37は、Nの含有量が多いため、その溶接金属の靱性は、溶接まま、時効後共に低い。
【0045】
図4に示した上記の比較例のクリープ破断強度において、本発明と同等のクリープ破断強度を有するものある。しかしながら、これらの比較例は、上記のとおり、本発明例の溶接材料と比較してクリープ破断強度以外の特性が劣るものである。
【0046】
【発明の効果】
以上に述べたごとく、本発明による溶接材料は、溶接性を確保しつつ、600℃以上の高温度におけるクリープ強度の優れた溶接金属を得ることができる。本溶接材料を用いて、オーステナイト系耐熱鋼を溶接することにより高温高圧下で使用する火力発電ボイラを建造する場合において、高温強度が優れ且つ信頼性の高い溶接部を得ることができ、産業上きわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(Ni当量/Cr当量)の値とバレストレイン割れ試験における割れ発生個数の関係を示すグラフ
【図2】本発明の(Ni当量/Cr当量)の値と600℃および700℃の5000時間後の溶接金属の20℃における吸収エネルギーの関係を示すグラフ
【図3】実施例の溶接試験における被溶接材の開先形状を示す図
【図4】本発明例および比較例による溶接金属のクリープ破断強度のグラフ

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.01%〜0.07%、
    Si:0.1%〜1.0%、
    Mn:0.5%〜1.5%、
    P:0.01%以下、
    S:0.005%以下、
    Cr:14.0%〜21.0%、
    Ni:10.0%〜20.0%、
    Mo:0.5以下、
    W:1.5%〜4.0%、
    Nb:0.1%〜0.6%、
    V:0.3%〜0.8%、
    Al:0.04%以下、
    N:0.07%〜0.25%
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、さらに下記(1)式で得られるCr当量および(2)式で得られるNi当量の比(Ni当量)/(Cr当量)が0.70〜1.30であることを特徴とする、高温におけるクリープ強度と時効後靱性と溶接性の優れたオーステナイト系耐熱鋼用TIG溶接材料。
    Figure 0004523696
  2. 質量%で、
    C:0.01%〜0.07%、
    Si:0.1%〜1.0%、
    Mn:0.5%〜1.5%、
    P:0.01%以下、
    S:0.005%以下、
    Cr:14.0%〜21.0%、
    Ni:10.0%〜20.0%、
    Mo:0.5%未満、
    W:1.5%〜4.0%、
    Cu: 0.1%〜2.0%、
    Nb:0.1%〜0.6%、
    V:0.3%〜0.8%、
    Al:0.04%以下、
    N:0.07%〜0.25%
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、さらに下記(3)式で得られるCr当量および(4)式で得られるNi当量の比(Ni当量)/(Cr当量)が0.70〜1.30であることを特徴とする、高温におけるクリープ強度と時効後靱性と溶接性の優れたオーステナイト系耐熱鋼用TIG溶接材料。
    Figure 0004523696
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