JP3298059B2 - ステータ - Google Patents

ステータ

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JP3298059B2
JP3298059B2 JP06524795A JP6524795A JP3298059B2 JP 3298059 B2 JP3298059 B2 JP 3298059B2 JP 06524795 A JP06524795 A JP 06524795A JP 6524795 A JP6524795 A JP 6524795A JP 3298059 B2 JP3298059 B2 JP 3298059B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用オートマティ
ック・トランスミッションのトルクコンバータに用いら
れるステータに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、軽量化および低コスト化の観点か
ら自動車部品を可能な範囲で樹脂化する要求が高まって
いるが、トルクコンバータに用いられるステータについ
ては、要求される寸法精度が厳しいために、樹脂単体で
の対応が困難である。そこで、これまで、特公昭63−
18050号公報、実開平3−20754号公報または
実開平4−27247号公報等に提示されたように、樹
脂製のステータにワンウェイクラッチのアウターレース
をインサート成形により一体的に保持させ、このアウタ
ーレースにより樹脂を補強する対策が採られている。
【0003】しかしながら、このような従来の対策のみ
では、成形時または雰囲気温度の高温時に生じる樹脂の
収縮現象によって樹脂製ステータのプレート部に残留歪
が発生することがあり、これを原因として、プレート部
の内周縁に設けられた潤滑油導入用の切欠部に存在する
ウエルド部にヘア状のクラックが発生する問題がある。
尚、切欠部にウエルド部が存在するのは、この切欠部
に、成形過程におけるディスクゲートが位置するためで
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑
み、ワンウェイクラッチのアウターレースをインサート
成形により一体的に保持した樹脂製のステータについ
て、切欠部に存在するウエルド部にクラックが発生しに
くいようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の請求項1によるステータは、内周筒部の
方向一端に径方向内方へ向けて環状のプレート部を一体
成形し、前記プレート部の内周縁に所要数の切欠部を設
け、前記内周筒部の内周側にワンウェイクラッチのアウ
ターレースをインサート成形により一体的に保持した樹
脂製のステータにおいて、径方向内方を開放されるとと
もに残る三方を一対の側面部と奥面部とにより形成され
た前記切欠部における前記奥面部と各側面部との間に丸
みを付けるべく設けられた隅アール部のアールの半径R
と、前記切欠部の円周方向幅aとの関係を、R/a
=0.22〜0.30とすることにした。
【0006】また本発明の請求項2のステータは、内周
筒部の軸方向一端に径方向内方へ向けて環状のプレート
部を一体成形し、前記プレート部の内周縁に所要数の切
欠部を設け、前記内周筒部の内周側にワンウェイクラッ
チのアウターレースをインサート成形により一体的に保
持した樹脂製のステータにおいて、前記切欠部の幅方向
中央における前記プレート部の内側半径Lと、前記ア
ウターレースの外側半径Lとの関係を、L/L
0.75〜1.0とすることにした。
【0007】また本発明の請求項3のステータは、請求
項1または2のステータにおいて、プレート部の外側端
面に切欠部に通じる溝部を設け、前記溝部の側壁に設け
たアール部のアールの半径Rと、前記隅アール部のア
ールの半径Rとの関係を、R/R<1.0とする
ことにした。
【0008】
【作用】本願発明者らは、この度、樹脂製ステータのク
ラック発生部である切欠部のウエルド部における残留歪
を、FEM解析(FEMによる熱応力解析プログラムを
用いた計算)によって求められることを実験により検証
した。そして本発明は、この解析結果に基づいて、クラ
ックの発生防止に最適な形状ないし寸法比率を割り出し
たものである。
【0009】
【実施例】つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説
明する。
【0010】図1および図2に示すように、当該実施例
に係るステータは、フェノール樹脂を成形材料として、
内周筒部1、ブレード部2および外周筒部3を一体成形
するとともに、内周筒部1の軸方向一端近傍(図2にお
いて左端近傍)に径方向内方へ向けて環状のプレート部
4を一体成形したもので、プレート部4の内周縁に潤滑
油導入用の切欠部5が四等配で設けられ、プレート部4
の外側端面(図2において左端面)4aに各切欠部5に
通じる溝部6が同じく四等配で放射状に設けられてい
る。溝部6は切欠部5へ向けて潤滑油を案内するもの
で、成形過程におけるディスクゲート(図示せず)が同
じく四等配で配置されることにより、この各溝部6の平
面内にウェルド部(図示せず)が存在している。また内
周筒部1の内周側にワンウェイクラッチのアウターレー
ス7が、プレート部4の内側端面4bに接するようにし
て、インサート成形により一体的に保持されている。
【0011】以上の基本構成を備えた樹脂製のステータ
において、この度、本発明をなすに当たって注目したの
は、以下の寸法諸元である。
【0012】 切欠部5の奥隅に設けられた隅アール
部8のアールの半径R1 図2に示したように、切欠部5は、プレート部4をその
外側端面4aから内側端面4bまで至るよう、軸方向に
貫通して設けられており、また図3に拡大して示すよう
に、径方向内方を開放され、残る三方を、互いに平行な
左右一対の側面部5aと円弧状の奥面部5bとにより形
成されており、この奥面部5bの左右両端に位置して、
この奥面部5bと各側面部5aとの間の角に丸み(アー
ル)を付けるべく、所定の半径R1 を備えた一対の隅ア
ール部8が対称的に設けられている。この各隅アール部
8のアールの半径寸法である。 切欠部5の円周方向幅a 図3に示したように、切欠部5の開口幅である。 切欠部5の幅方向中央におけるプレート部4の内側
半径L2 図4に拡大して示すように、切欠部5の幅方向中央にお
けるプレート部4の内径寸法の二分の一である。幅方向
中央と特に特定したのは、幅方向両端部にはそれぞれ上
記した隅アール部8が設けられているために、寸法が違
うからである。すなわち、上記した奥面部5bにおける
プレート部4の内側半径ということになる。
【0013】 アウターレース7の外側半径L1 アウターレース7の外径寸法の二分の一である。またア
ウターレース7が内周筒部1の内周側に抱持されるもの
であるために、図4に示したように、内周筒部1の内側
半径、または内周筒部1の内径寸法の二分の一と言うこ
ともできる。 溝部6の側壁に設けられたアール部9のアールの半
径R2 図3に示したように、溝部6の円周方向幅は、切欠部5
の円周方向幅aと同じとされている。またこの溝部6
は、径方向内方を開放され、残る三方を、互いに平行な
左右一対の側壁6aと円弧状の奥壁6bとにより形成さ
れており、図5に更に拡大して示すように、この一対の
側壁6aに、各側壁6aと底壁6cとの間の角に丸み
(アール)を付けるべく、所定の半径R2 を備えたアー
ル部9が対称的に設けられている。この各アール部9の
アールの半径寸法である。
【0014】切欠部5の外周側、すなわち溝部6の平面
内に存在するウエルド部にクラックが発生しにくいよう
にするには、樹脂の収縮の影響を最も受け易いこれらの
切欠部5および溝部6において、応力が局部的に集中し
ないようにするのが肝要である。したがって上記したF
EM解析により、応力を低減することができる最適の形
状ないし寸法比率を求めたところ、以下のような結果を
得ることができた。
【0015】図7ないし図9は、FEM解析における各
形状因子の影響によるウエルド部および隅アール部8の
残留歪の変化を示している。図7ないし図9において、
縦軸は、ウエルド部および隅アール部8それぞれについ
て、下記の表1に示す材料の破断歪に対する残留歪の割
合、すなわち安全率を示している。また横軸には、各形
状因子の変化を示している。
【表1】
【0016】以上の解析結果(図7ないし図9)から、
以下のような最適な応力低減形状ないし寸法比率を知得
することができた。
【0017】 隅アール部8のアールの半径Rと切
欠部5の円周方向幅aとの関係(図7)ウエルド部およ
び隅アール部8の安全率のバランスを保つ必要性から、
応力集中部を分散し、更に、隅アール部8の応力集中係
数を低減させる方向であるR/a=0.22〜0.3
0が最適である。 切欠部5の幅方向中央におけるプ
レート部4の内側半径Lとアウターレース7の外側半
径Lとの関係(図8)切欠部5の先端が開口方向に変
形することから、アウターレース7の外径面に近づくほ
ど円周方向の引張応力の影響を受けにくい。したがって
アウターレース7の肉厚を考慮し、L/L0.7
〜1.0が最適である。 アール部9のアールの半
径Rと隅アール部8のアールの半径Rとの関係(図
9)ウエルド部および隅アール部8の安全率のバランス
を保つ必要性から、互いの応力集中部が一致しないR
/R<1.0が好適である。
【0018】また本願発明者らは、併せて、ヒートショ
ック試験を行なったので、その結果を下記の表2に示し
ておく。この結果から、上記ないしで設定した寸法
比率に実際の効果があることを確認することができた
(モデルDおよびE参照)。
【表2】
【0019】
【発明の効果】本発明は,以下の効果を奏する。
【0020】すなわち、各請求項に共通して、FEM解
析結果に基づいてクラックの発生防止に最適な形状ない
し寸法比率を割り出したもので、ウエルド部および隅ア
ール部に発生する応力を低減させて両者のバランスを取
ったことにより、ウエルド部にクラックが発生するのを
有効に防止することができる。尚、本発明において、プ
レート部の内周縁に設けられる切欠部の数は特に限定さ
れず、この数を増やせば、数量分だけ発生応力を分散さ
せることができ、クラック発生防止効果を更に高めるこ
とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るステータの正面図
【図2】図1におけるA−O−A線断面図
【図3】図2におけるB方向拡大矢視図
【図4】図3におけるC−C線断面図
【図5】図3におけるD−D線拡大断面図
【図6】同ステータの要部斜視図
【図7】FEM解析結果を示すグラフ図
【図8】FEM解析結果を示すグラフ図
【図9】FEM解析結果を示すグラフ図
【符号の説明】
1 内周筒部 2 ブレード部 3 外周筒部 4 プレート部 4a 外側端面 4b 内側端面 5 切欠部 5a 側面部 5b 奥面部 6 溝部 6a 側壁 6b 奥壁 6c 底壁 7 アウターレース 8 隅アール部 9 アール部

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周筒部(1)の軸方向一端に径方向内
    方へ向けて環状のプレート部(4)を一体成形し、前記
    プレート部(4)の内周縁に所要数の切欠部(5)を設
    け、前記内周筒部(1)の内周側にワンウェイクラッチ
    のアウターレース(7)をインサート成形により一体的
    に保持した樹脂製のステータにおいて、径方向内方を開
    放されるとともに残る三方を一対の側面部(5a)と奥
    面部(5b)とにより形成された前記切欠部(5)にお
    ける前記奥面部(5b)と各側面部(5a)との間に丸
    みを付けるべく設けられた隅アール部(8)のアールの
    半径Rと、前記切欠部(5)の円周方向幅aとの関係
    を、 R/a=0.22〜0.30としたことを特徴とする
    ステータ。
  2. 【請求項2】 内周筒部(1)の軸方向一端に径方向内
    方へ向けて環状のプレート部(4)を一体成形し、前記
    プレート部(4)の内周縁に所要数の切欠部(5)を設
    け、前記内周筒部(1)の内周側にワンウェイクラッチ
    のアウターレース(7)をインサート成形により一体的
    に保持した樹脂製のステータにおいて、前記切欠部
    (5)の幅方向中央における前記プレート部(4)の内
    側半径Lと、前記アウターレース(7)の外側半径L
    との関係を、 L/L0.75〜1.0としたことを特徴とする
    ステータ。
  3. 【請求項3】 請求項1または2のステータにおいて、
    プレート部(4)の外側端面(4a)に切欠部(5)に
    通じる溝部(6)を設け、前記溝部(6)の側壁に設け
    たアール部(9)のアールの半径Rと、前記隅アール
    部(8)のアールの半径Rとの関係を、 R/R<1.0としたことを特徴とするステータ。
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