JP4084729B2 - 樹脂製シールリング - Google Patents
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Description
オイルシールリングは、鋳鉄製シールリングやフッ素樹脂シールリングが従来用いられたが、耐摩耗性、オイルシール性の向上およびコスト低減のため、射出成形法により相互に対向する合い口を有する合成樹脂製シールリング、例えばポリエーテルエーテルケトン(以下PEEKと称する)樹脂製シールリングが多用されるようになっている。
シールリングの合い口は、ストレートカット形状、ステップ形状、複合ステップ形状等あるが、オイルリークを少なくできる合い口として複合ステップ形状が知られ、その合い口形状として、各合い口の先端面とシールリング本体の外径面との境界に面取り部を設けた構成等が知られている(特許文献1参照)。
また、複合ステップ形状を有する合い口において、リップ部の長さが、シールリング矩形断面における短辺の長さの 50〜200%であることを特徴とするシールリングが知られている(特許文献2参照)。
樹脂製シールリングの合い口は、相互に対向する合い口1および1´より形成され、該合い口にそれぞれリップ3、3'、ポケット4、4'が相補的に嵌合しするように形成され、突き合わせ面2、2'で衝合する。合い口の嵌合時には、樹脂製シールリングの内径面はほぼ真円形となる。また、この樹脂製シールリングは、図5に斜視図を示す、テーパー治具7を用いて相手軸8に組み付けられる。
樹脂製シールリング9の組み付けは、テーパー治具7の小径側から樹脂製シールリング9を挿入し、テーパー治具7を相手軸8に嵌挿し、その後に樹脂製シールリング9を相手軸8のシールリング溝8aに落とし込む方法でなされる。
また、上記面取りは、曲率半径0.7mm以上のR形状であることを特徴とする。
シールリング9は、相手軸に組み付けるとき、図5に示すように、テーパー治具7を用いて相手軸8のシールリング溝8aに落とし込んで固定される。そのときシールリングは、内径が押し広げられた後、落とし込まれる。そのため、内径が押し広げられたとき、合い口部1、1'の内径側がテーパー治具7に引っかかる。シールリング溝8aへの落とし込み時の衝撃により、合い口側端部であるリップ3、3'付近の3a部分に傷がついたり、欠けたりする不具合が生じやすいことが分かった(図4(b)参照)。この現象は高弾性のPEEK樹脂組成物を材料とする樹脂製シールリングで顕著であった。このため、樹脂製シールリングを押し広げるとき、シールリングの内径面と接する仮想内接円の直径を小さくできる突き合せ面の内径側角部構造、特にR形状とすることにより、落とし込み時の衝撃を緩和できることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
樹脂製シールリングの合い口は、相互に対向する合い口1および1´より形成される。合い口1は、樹脂製シールリングの矩形断面における側面二辺を結んでリング内径面側1aとリング外径面側1bとに二分割するとき、リング内径面側1aの矩形断面の先端部分に突き合わせ面2が形成される。また、リング外径面側の矩形断面部分1bには、この部分をさらに径方向に二分割する一方の矩形断面部分に突き合わせ面2から突出したリップ3と、他方の矩形断面部分を削除して突き合わせ面2から後退したポケット4とが形成される。なお、リップ3およびポケット4の内外周面は樹脂製シールリングの所定の曲率をもつように形成される。また、他方の合い口1´は、突き合わせ面2、リップ3およびポケット4と、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ面2´、ポケット4´およびリップ3´とを有している。
合い口1における矩形断面は所定の幅(w)および厚さ(t)を有しており、幅(w)および厚さ(t)の長さは、シールリングの種類や径によって変化する。例えば、幅(w)と厚さ(t)の長さが同じ場合、幅(w)が厚さ(t)よりも長い場合、あるいはその逆の場合がある。
合い口の嵌合時には、合い口1のリップ3が合い口1´のポケット4´に嵌合し、樹脂製シールリングはほぼ真円形となる(図1(c))。
内径側角部構造5および5’の形状としては、R形状が最も望ましいが一般的な面取りである直線の面取りであっても同様の効果が得られる。また、その他に、図3(a)に示すような、内径面および突き合わせ面の二辺に対して非対称な面取りであってもよく、図3(b)に示すような、なだらかな曲面状とすることもできる。
図3(a)において、内径面9a、および突き合わせ面2または2´の二辺に対して非対称な面取りでは、突き合わせ面2および2´の内径側角部を半径方向(h)に0.5mm以上、内径方向の角度(θ)が60°〜70°となる面取り形状とする。内径方向の面取り角度(θ)が70°より大きい場合、面取りにより形成される合口間の隙間が大きくなりすぎてシール機能が低下する。内径方向の面取り角度(θ)が60°より小さい場合は、溝への落とし込み時の衝撃を十分に緩和することができない。ただし面取り角度(θ)が60°より小さくても内径側角部の面取りが半径方向に0.7mm以上施してあれば溝への落とし込み時の衝撃を十分に緩和することができる。
成形上がりのシールリングの合い口部内径側角部に、C0.7mmの面取り(実施例1)、R0.7mmの面取り(実施例2)、面取り角70°で半径方向に0.5mmの面取り(実施例3)、面取り角60°で半径方向に0.5mmの面取り(実施例4)を加工した。
得られたシールリングを図5に示すテーパー治具7を用いて相手軸のシールリング溝に組み付け、そのときの目視によるシールリングの傷および欠けの有無を調査した(n=30)。また、比較例として、合い口部内径側角部に、C0.5mmの面取り(比較例1)、R0.5mmの面取り(比較例2)を加工して実施例と同一の調査を行なった。
調査の結果、各実施例のシールリングの場合、リップ付近に傷および欠けが全く認められなかったが、比較例1には2本に傷および欠けがが認められ、比較例2は1本の傷が認められた。
2 突き合わせ面
3 リップ
4 ポケット
5 内径側角部構造
6 仮想内接円
7 テーパー治具
8 相手軸
9 樹脂製シールリング
Claims (3)
- 相互に対向する合い口を有する矩形断面の射出成形で形成された樹脂製シールリングであって、
一方の合い口は、前記樹脂製シールリング内径面側に突き合わせ面と、外径面側に前記突き合わせ面から突出したリップおよび後退したポケットとを有し、
他方の合い口は、前記突き合わせ面、前記リップおよびポケットと、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ面、ポケットおよびリップとを有し、
該樹脂製シールリングを押し広げるとき、前記一方の合い口および前記他方の合い口は、シールリングの内径面と接する仮想内接円の直径を小さくできる前記突き合せ面の内径側角部構造をそれぞれ有し、該それぞれの内径側角部構造が少なくとも半径方向に0.7mm以上の面取りであることを特徴とする樹脂製シールリング。 - 前記面取りは、曲率半径0.7mm以上のR形状であることを特徴とする請求項1記載の樹脂製シールリング。
- 相互に対向する合い口を有する矩形断面の射出成形で形成された樹脂製シールリングであって、
一方の合い口は、前記樹脂製シールリング内径面側に突き合わせ面と、外径面側に前記突き合わせ面から突出したリップおよび後退したポケットとを有し、
他方の合い口は、前記突き合わせ面、前記リップおよびポケットと、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ面、ポケットおよびリップとを有し、
該樹脂製シールリングを押し広げるとき、前記一方の合い口および前記他方の合い口は、シールリングの内径面と接する仮想内接円の直径を小さくできる前記突き合せ面の内径側角部構造をそれぞれ有し、該それぞれの内径側角部構造が少なくとも半径方向に0.5mm以上、および内径方向に60°〜70°の角度を有する面取りであることを特徴とする樹脂製シールリング。
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