JP2009068510A - 等速自在継手 - Google Patents

Abstract

【課題】 外輪の強度を確保したまま、ブーツのシール性を向上させ、かつ、ブーツの端部の軸方向での位置決めを容易に行うことができる等速自在継手を低コストで提供する。
【解決手段】 ブーツ１１における大径端部１２と小径端部１３の内周面（３１、４７
）に先端が尖状で断面三角形状の突状部（２８、４１）を設け、さらに、大径端部１２と小径端部１３の内周面（３１、４７）で、突状部（２８、４１）から軸方向両側に互いに等しい距離だけ離れた部位にシール部（３０、４５）を環状に１つずつ配置する。また、突状部（２８、４１）とシール部（３０、４５）は、大径端部１２と小径端部１３の外周面に形成するバンド嵌合溝（３３、４６）に嵌合したブーツバンド（１５、１６）の軸方向幅の範囲内に設ける。なお、シール部（３０、４５）の径方向長さは突状部（２８、４１）の径方向長さよりも短くする。
【選択図】 図１

Description

本発明は、自動車の駆動軸や各種産業機械に用いられ、回転トルクを伝達する等速自在継手に関するものである。

等速自在継手は固定型等速自在継手と摺動型等速自在継手とに大別される。固定型等速自在継手は角度変位のみを許容し、主に自動車のドライブシャフトのホイール側などに使用されている。一方、摺動型等速自在継手は角度変位および軸方向変位（プランジング）を許容し、主に自動車のドライブシャフトのディファレンシャルギヤ側に使用される。

このような等速自在継手は、継手内部に封入した潤滑成分の外部への漏洩および外部からの異物の侵入を防止するためにブーツを備えている。

このようなブーツを備えた等速自在継手として、固定型等速自在継手の一つであるツェッパ型等速自在継手を図２０に例示する。

この等速自在継手２０１は、外輪２０２、内輪２０３、ボール２０４、ケージ２０５を主要部とし、外輪２０２の内側には、内輪２０３、ボール２０４、ケージ２０５で構成される内部部品２０６が収容配置されている。

外輪２０２は一端に開口部を有し、内球面に複数の曲線状のトラック溝２０７が形成されている。内輪２０３は外球面に複数の曲線状のトラック溝２０８が形成され、その中心孔２１９にはシャフト２０９がスプライン嵌合されてサークリップ２１０で抜け止めされている。外輪２０２のトラック溝２０７と内輪２０３のトラック溝２０８との間には複数のボール２０４が介在され、このボール２０４は、外輪２０２と内輪２０３との間に配置されたケージ２０５のポケット２１７で保持されている。

さて、外輪２０２の開口部はブーツ２１１で覆われている。このブーツ２１１は、大径端部２１２と、小径端部２１３と、大径端部２１２と小径端部２１３を連結する蛇腹部２１４とを有する。大径端部２１２は外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０に取り付けられ、小径端部２１３はシャフト２０９の外周面２２１に取り付けられ、それぞれの取付部分はブーツバンド（２１５、２１６）を加締めて固定されている。

さて、外輪２０２の開口端部２１８とブーツ２１１の大径端部２１２との取付部分、或は、シャフト２０９と小径端部２１３との取付部分の構造には種々のものが知られている。この例を図２１および図２２に示す。なお、便宜上、図２０に示す図面と同じ部位、機能を有する部位については同じ符号を付して説明する。

図２１はブーツ２１１の大径端部２１２と外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０との取付部分の構造の一例を示したものである。外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０には嵌合溝２２５が形成され、大径端部２１２の内周面２２４には突状部２２６が環状に設けられている。この突状部２２６を嵌合溝２２５に嵌合し、さらに大径端部２１２の外周面からブーツバンド２１５を加締めることにより、大径端部２１２は外輪２０２の開口端部２１８に取付固定されている。

この構造により、ブーツ２１１の大径端部２１２のシール性が確保されている。また、突状部２２６が嵌合溝２２５に嵌合されることで大径端部２１２を外輪２０２の開口端部２１８に取り付ける際の軸方向における位置決めが可能となっている。この大径端部２１２と外輪２０２の開口端部２１８との取付部分の構造は、図２０に示したブーツ２１１の小径端部２１３とシャフト２０９との取付部分の構造にも適用されている。

外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０において、嵌合溝２２５よりも外輪開口部側の部位はテーパ面２２７とされ、このテーパ面２２７と嵌合溝２２５とで鋭角部２２３が形成されている。この鋭角部２２３は大径端部２１２の内周面２２４に食い込んで大径端部２１２のシール性を向上させ、かつ、大径端部２１２が外輪２０２の開口端部２１８から外れるのを防止している（特許文献１参照）。

図２２は、図２１と同様、外輪２０２の開口端部２１８とブーツ２１１の大径端部２１２との取付部分の構造を例示したものである。図２２（Ｂ）に示すように、外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０には嵌合溝２４１が形成されており、また、外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０において、嵌合溝２４１よりも外輪開口部側は環状の突出部２３９とされている。図２２（Ａ）に示すように、ブーツ２１１の大径端部２１２は、その内周面２２４にテーパ部２３７、突起２４０、窪み２３８、肩当て部２３６を有する。ここで、外輪２０２の開口端部２１８にブーツ２１１の大径端部２１２が装着された際、図２２（Ｃ）に示すように、窪み２３８には外輪２０２の開口端部２１８の突出部２３９が嵌合されて大径端部２１２が外輪２０２の開口端部２１８から外れるのが防止され、突起２４０は外輪２０２の開口端部２１８の嵌合溝２４１に密着されて大径端部２１２にシール性を付与し、肩当て部２３６は外輪２０２の開口端部２１８を当接させることで大径端部２１２の軸方向における位置決めを容易にしている。なお、この従来技術においても、図２２（Ｃ）に示すように、大径端部２１２の外周面からブーツバンド２１５を加締めることで、大径端部２１２が外輪２０２の開口端部２１８に取付固定されている。
特開２００１−２０８２１５号公報 特開２００６−２２６４５３号公報

さて、特許文献１に記載の等速自在継手は、高温環境下など使用条件が非常に過酷であったり、ブーツバンド２１５の仕様によっては、ブーツ２１１の大径端部２１２への鋭角部２２８の食い込み具合が小さくなって、シール性が不十分となることがある。なお、この点はブーツ２１１の小径端部２１３においても同様である。

特許文献２に記載の等速自在継手は、外輪２０２の開口端部２１８の外周面２２０の加工工数が増し、マテリアルロス（材料を削った際に生じる材料のロス）も発生する問題があった。また、外輪２０２の開口端部２１８において、嵌合溝２４１が形成された部位は薄肉になることにより、外輪２０２の開口端部２１８の強度が低下することが懸念される場合がある。

本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、外輪の強度を確保したまま、ブーツのシール性を向上させ、かつ、ブーツの端部の軸方向での位置決めを容易に行うことができる等速自在継手を低コストで提供することを目的とする。

上記の課題を解決するための本発明の等速自在継手は、開口部を有する外側継手部材と、前記外側継手部材の内部に収容され、その外側継手部材とトルク伝達可能に連結された内側継手部材とを備えた等速自在継手であって、内側継手部材から延びる軸部材の外周面にブーツの一方の端部を取り付けると共に、前記外側継手部材の開口端部の外周面にブーツの他方の端部を取り付け、前記ブーツの端部の内周面に形成された突状部が、前記外側継手部材の開口端部或は軸部材の外周面に形成された嵌合溝に嵌合され、前記ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位に突起状のシール部を環状に設けたことを特徴とする。

この場合、ブーツの端部の突状部が外側継手部材の開口端部の外周面に形成された嵌合溝或は軸部材の外周面に形成された嵌合溝に嵌合すると、ブーツの端部の内周面に環状に設けたシール部が、外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位に密着する。この結果、ブーツの端部のシール性は、ブーツの端部の内周面において、突状部の両側であり、外側継手部材の開口端部の外周面と密着する密着部とシール部が担うことになるため、ブーツの端部におけるシール性を向上させることができる。

上記の発明において、前記ブーツの端部の外周面には固定部品を取り付け、前記シール部は固定部品の軸方向幅の範囲内に設けるのが望ましい。

この場合、ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位に設けるシール部は、固定部品の軸方向幅の軸方向範囲内に配置されるため、シール部は固定部品からの径方向の力（以下締付力とする）を直接受けて外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位に強く密着する。そのため、ブーツの端部のシール性を大幅に向上させることができる。

前記シール部の先端はＲ状など任意の形状で良いが、特に尖状とするのが好ましい。

このようにシール部の先端を尖状とすると、ブーツの端部を外側継手部材の開口端部或は軸部材に取り付ける際、シール部により外側継手部材の開口端部或は軸部材に対するブーツの端部の締代を確保できると共に、取付後は、シール部が外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位に高い面圧で強く密着するため、ブーツの端部のシール性を向上させることができる。

前記シール部は前記ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位の複数箇所に設けるのが好ましい。

ブーツの端部の内周面に設けるシール部は、既に述べたように外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位に密着してブーツの端部のシール性を向上させるが、この効果は、本発明のように、シール部をブーツの端部の内周面で突状部を除く部位の複数箇所に設けることで顕著になる。

上記の発明のように、ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位の複数箇所にシール部を設ける場合、シール部はブーツの端部の内周面で前記突状部の軸方向両側の部位に設けるのが望ましい。

このようにシール部を設けることで、ブーツの端部を外側継手部材の開口端部あるいは軸部材にバランスよく固定することができる。この効果は、ブーツの端部の外周面に固定部品を取り付ける場合に顕著になる。これは、固定部品からの締付力が、ブーツの端部の内周面に一箇所に偏ることなく設けたシール部でバランスよく分散され、この締付力を外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位が受けるため、外側継手部材の開口端部或は軸部材とシール部とが強く密着するためである。

前記シール部は、その径方向長さを前記突状部の径方向長さよりも短くするのが望ましい。

この場合、ブーツの端部を外側継手部材の開口端部或は軸部材に取り付ける際、シール部の径方向長さを突状部の径方向長さよりも短くすることから、外側継手部材の開口端部の外周面に形成した嵌合溝或は軸部材の外周面に形成した嵌合溝にブーツの端部に設けた突状部を嵌合させてブーツの端部の軸方向における位置決めを行った後に、外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位にシール部を密着させることができる。この結果、ブーツの端部を外側継手部材の開口端部或は軸部材に取り付ける際の作業性を向上させることができる。

外側継手部材の開口端部の外周面に形成する嵌合溝或は軸部材の外周面に形成する嵌合溝の径方向長さは前記突状部の径方向長さ以上とするのが望ましい。

この場合、ブーツの端部に設ける突状部を嵌合溝に嵌合させる際、突状部全体を嵌合溝に嵌合させることができるため、外側継手部材の開口端部或は軸部材でのブーツの端部の軸方向における位置決めを確実に行うことができる。また、ブーツの端部に設ける突状部を嵌合溝に嵌合させた後も、突状部全体が嵌合溝に嵌合された状態となるため、外側継手部材の開口端部或は軸部材でのブーツの端部における軸方向のズレを効率よく防止でき、ブーツの端部にシール性も付与することもできる。この効果は、ブーツの端部の外周面に固定部品を取り付ける場合に顕著になる。これは、ブーツの端部に設けた突状部を外側継手部材の開口端部の嵌合溝あるいは軸部材の嵌合溝に嵌合させた後、ブーツの端部の外周面に固定部品を取り付けた際、固定部品の締付力でブーツの突状部と嵌合溝との密着性が過大に強くなることで、この反力の影響で固定部品の締付力が小さくなるという事態を回避することができるためである。さらにこの場合、シール部が受ける固定部品の締付力も小さくなることがないため、外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合溝を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位とシール部とを強固に密着させることができる。

突状部の形状は嵌合溝の形状と合致させるのが好ましい。

ここで「合致させる」とは、突状部を嵌合溝に嵌合した際に、嵌合溝との間に隙間が生じない形状、換言すれば、嵌合溝の大きさと外形が共に同じである形状にすることを意味する。本発明のようにブーツの端部に設ける突状部の形状を外側継手部材の開口端部の外周面或は軸部材の外周面に形成する嵌合溝の形状と合致させることで、突状部が嵌合溝に嵌合しやすくなり、外側継手部材の開口端部或は軸部材にブーツの端部を取り付ける際の軸方向での位置決めがより確実となる。また、本発明の場合、突状部が嵌合溝に隙間なく嵌合するため、ブーツの端部のシール性の向上にも寄与する。

外側継手部材の開口端部を非円筒状とする場合、その外側継手部材の開口端部の外周面に取り付けるブーツの端部の内周面は前記外側継手部材の開口端部の外形に沿った形状とし、外側継手部材の開口端部の外周面とそれに取り付けるブーツの端部の内周面とを互いに隙間なく密着させるのが望ましい。

外側継手部材の開口端部が非円筒状の場合、本発明のように、外側継手部材の開口端部の外形に沿った形状にブーツの端部の内周面を形成し、これを外側継手部材の開口端部に密着させると、ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位に設けたシール部を外側継手部材の開口端部の外周面に周方向全長に亘って密着させることができる。これにより、外側継手部材の開口端部が非円筒状の場合でも、ブーツのシール性を向上させることができる。

なお、突状部とシール部は、ブーツの端部と一体成形により設けることができ、或は、ブーツの端部と別体で設けることもできる。ここで、突状部とシール部をブーツの端部と一体成形で設ける場合、突状部やシール部として別部品を使用する必要がないため、部品点数を削減してブーツの端部の加工費用を削減することが可能となる。

ブーツの外側継手部材に取り付けられる端部は、その内周面の前記突状部を除く部位に内径方向に突出する肩部を設け、その肩部に前記外側継手部材の開口端部を当接させるのが好ましい。

この場合、ブーツの一方の端部を外側継手部材の開口端部に取り付ける際、ブーツの端部の軸方向における位置決めは、そのブーツの端部の内周面に設けた突状部を外側継手部材の開口端部の外周面に形成した嵌合溝に嵌合させることで行うことができると共に、外側継手部材の開口端部をブーツの肩部に当接させることでも可能となる。このため、ブーツの一方の端部を外側継手部材の開口端部に取り付ける際の作業性を大幅に向上させることができる。さらに、ブーツの外側継手部材に取り付けられる端部の内周面に設ける肩部は、ブーツの端部を外側継手部材の開口端部に取り付けた後に、ブーツが外側継手部材の反開口部側へずれるのを防止することができる。

上記の本発明において、ブーツの外側継手部材に取り付けられる端部の内周面に設ける肩部は、ブーツの端部と一体成形により設けることでき、或は、ブーツの端部と別体で設けることもできる。ここで、肩部をブーツの端部と一体成形で設ける場合、肩部として別部品を使用する必要がないため、部品点数を削減してブーツの端部の加工費用を削減することが可能となる。

本発明の等速自在継手では、ブーツの端部のうち少なくとも一方の内周面で突状部を除く部位に突起状のシール部を環状に設け、このシール部を外側継手部材の開口端部の外周面で嵌合部を除く部位或は軸部材の外周面で嵌合溝を除く部位に密着させるため、ブーツのシール性を向上させることができる。これに起因して外側継手部材の開口端部或は軸部材の外周面に形成され、かつ、ブーツの端部の内周面に設ける突状部を嵌合する嵌合溝は、ブーツの端部のシール性を向上させるために複雑な形状に加工する必要がなくなる。そのため、外側継手部材の開口端部や軸部材の加工工数を減らして加工作業の作業性を向上させることができる。この結果、外側継手部材の開口端部の外周面や軸部材の外周面に嵌合溝を形成する際の加工費用や加工時に部材を削ることで生じるマテリアルロスも削減することができる。また、外側継手部材の開口端部の加工時におけるマテリアルロスを減らすことで、外側継手部材の強度を確保することができる。

以下に本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。

図１〜図７に本発明の第１の実施形態を示す。

図７は本発明を固定型等速自在継手の一つであるツェッパ型等速自在継手を示す。この等速自在継手１は、外側継手部材である外輪２、内側継手部材である内輪３、ボール４、ケージ５を主要部とし、外輪２の内側には、内輪３、ボール４、ケージ５で構成される内部部品６が収容配置されている。

外輪２は一端に開口部を有し、内球面に複数の曲線状のトラック溝７が形成されている。内輪３は外球面に複数の曲線状のトラック溝８が形成され、その中心孔４８にはシャフト９がスプライン嵌合されてサークリップ１０で抜け止めされている。外輪２のトラック溝７と内輪３のトラック溝８との間には複数のボール４が介在され、このボール４は、外輪２と内輪３との間に配置されたケージ５のポケット１７で保持されている。

外輪２の開口部は熱可塑性ポリエステル系エラストマーを素材とするブーツ１１で覆われている。このブーツ１１は、大径端部１２と、小径端部１３と、大径端部１２と小径端部１３を連結する蛇腹状の中間部１４とを有する。大径端部１２は外輪２の開口端部１８の外周面２０に取り付けられ、小径端部１３はシャフト９の外周面３５に取り付けられ、それぞれの取付部分は、大径端部１２の外周面に形成したバンド嵌合溝３３および小径端部１３の外周面に形成したバンド嵌合溝４６にそれぞれ固定部品であるブーツバンド（１５、１６）を装着することで締付固定されている。前記したそれぞれの取付部分について以下に説明する。

まず、ブーツ１１の大径端部１２と外輪２の開口端部１８の取付部分について、図１〜図３および図７を用いて説明する。

図２に図７に示した外輪２の開口端部１８の拡大図を示す。外輪２の開口端部１８の外周面２０には嵌合溝２１を形成する。この嵌合溝２１はテーパ部２２、底部２３、曲率半径Ｒの曲面部２４が外輪反開口部側から順に連続した断面形状とする。嵌合溝２１をこのような形状とすることで、外輪２の開口端部１８の外周面２０における加工工数を減らして加工作業性を向上させることができる。この結果、外輪２の開口端部１８の外周面２０に嵌合溝２１を形成する加工費用や加工時に部品を削ることで生じるマテリアルロスも削減することができる。さらに、外輪２の開口端部１８において、嵌合溝２１を形成することにより肉厚が薄くなる軸方向範囲を小さくできるため、外輪２の強度を低下させることもない。

テーパ部２２と、このテーパ部２２の大径側部位で連続している外輪２の外周面２０とのなす角度（図中θ４）は２５°〜３０°とする。２５°未満では軸方向の位置決め性が低下し、３０°を超えると加工作業性が低下する。また、曲面部２４の曲率半径Ｒは１ｍｍ以上とする。曲率半径Ｒが１ｍｍより小さいと、曲面部２４が小さくなりすぎるため、旋削バイトの寿命が低下する。

曲面部２４の大径側部位における接線（図中α）と曲面部２４の大径側部位から連続する外輪２の外周面２０とのなす角度（図中θ１）は直角とする。この場合、図３に示すように、外輪２の開口端部１８にブーツ１１の大径端部１２を取り付けた際、曲面部２４の大径側部位における接線α（図２参照）と曲面部２４の大径部側部位から連続する外輪２の外周面２０とが直角に交わった部分（図中に符号４９で示す）はブーツ１１の大径端部１２の内周面３１に食い込むため、大径端部１２が外輪２の開口端部１８から外れるのを防止することができる。曲面部２４の大径側部位から連続する外輪２の外周面２０を、外輪２の開口端部１８に向かって縮径する方向に傾斜させることで、曲面部２４の大径側部位における接線αと曲面部２４の大径側部位から連続する外輪２の外周面２０とのなす角度θ１（図２参照）を鋭角とする場合、この鋭角部が大径端部の内周面に深く食い込むため、前述した効果が顕著になる。なお、前記傾斜角は０°〜５°とするのが望ましく、５°を超えると外輪２の強度が低下する場合がある。

外輪２の開口端部１８の最端部に外輪開口部側に向けて縮径するテーパ部３２を形成する。このテーパ部３２により、外輪２の開口端部１８をブーツ１１の大径端部１２の内側に圧入する際、テーパ部３２が案内機能を果たして圧入作業が容易になる。そのため、大径端部１２を外輪２に取り付ける際の作業性を向上させることができる。

このテーパ部３２の傾斜角度（図中θ２）は２５°〜６０°とする。傾斜角度が２０°より小さいとテーパ部３２の軸方向長さが長くなって外輪２の開口端部１８で肉厚が薄くなる部分が増すため、外輪２の強度を低下させてしまうことに繋がる。一方、傾斜角度θ２が６０°より大きいと、テーパ部３２は、径方向への分力が小さくなるため、外輪２の開口端部１８を大径端部１２の内側に圧入する際に案内機能を果たさない。

図１（Ａ）に図７におけるブーツ１１の大径端部１２の拡大図を示す。なお、図１（Ｂ）に図１（Ａ）に示すブーツ１１の大径端部１２を図中白抜き矢印側から見た矢視図を示した。

ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１では、最端部にブーツ中央側（図面左側）に向けて縮径するテーパ部２９を周方向全長に亘って形成し、このテーパ部２９よりもブーツ中央側に、２つの環状のシール部３０、環状の突状部２８、環状の肩部１９を設ける。

突状部２８は、外形が図２に示した外輪２の開口端部１８の嵌合溝２１と同じであり、ブーツ中央側に向けて縮径するテーパ部２５と平坦部２６とブーツ中央側に向けて拡径する曲面部２７とがブーツ中央側に向けて順に連続した断面形状とする。この突状部２８は図３に示すように外輪２の開口端部１８に大径端部１２を取り付ける際、外輪２の開口端部１８の外周面２０に形成した嵌合溝２１に嵌合することで、大径端部１２の軸方向での位置決めをすることができる。このため、大径端部１２を外輪２の開口端部１８に取り付ける際の作業性を向上させることができ、かつ、大径端部１２にシール性を付与することもできる。また、大径端部１２の突状部２８を外輪２の開口端部１８に形成した嵌合溝２１に嵌合した後も、大径端部１２の軸方向のズレを防止することができる。

この突状部２８において、根元部の軸方向長さ（図中Ｌ２）は、図２に示した外輪２の開口端部１８の外周面２０に形成した嵌合溝２１の外径側の軸方向長さ（図中Ｌ１）と等しくする。Ｌ１＜Ｌ２であれば、突状部２８を嵌合溝２１に嵌合させることができず、Ｌ１＞Ｌ２であれば、突状部２８を嵌合溝２１に嵌合することはできるものの、嵌合後は突状部２８と嵌合溝２１との間に軸方向での隙間が生じるため、突状部２８は大径端部１２の軸方向のズレを確実に防止することができない。

また、図２に示した外輪２の開口端部１８の外周面２０に形成した嵌合溝２１の径方向長さ（図中Ｄ１）は図１（Ａ）に示したブーツ１１の大径端部１２の内周面３１に設けた突状部２８の径方向長さ（図中Ｈ１）以上とする。この場合、ブーツ１１の大径端部１２に設ける突状部２８を嵌合溝２１に嵌合させる際、突状部２８全体を嵌合溝２１に嵌合させることができるため、外輪２の開口端部１８での大径端部１２の軸方向における位置決めを確実に行うことができる。また、大径端部１２に設ける突状部２８を嵌合溝２１に嵌合させた後も、突状部２８全体が嵌合溝２１に嵌合された状態となるため、外輪２の開口端部１８での大径端部１２における軸方向のズレを防止でき、かつ、大径端部１２にシール性を付与することもできる。

この効果は、本実施形態のように、大径端部１２の外周面に形成したバンド嵌合溝３３に固定部品であるブーツバンド１５を嵌合する場合に顕著になる（図３参照）。これは、大径端部１２に設けた突状部２８を外輪２の開口端部１８の嵌合溝２１に嵌合させた後、大径端部１２の外周面に形成したバンド嵌合溝３３にブーツバンド１５を取り付けた際、ブーツバンド１５の締付力で大径端部１２の突状部２８と外輪２の嵌合溝２１との密着性が過大に強くなることで、この反力の影響でブーツバンド１５の締付力が小さくなるという問題を解消することができるためである。さらにこの場合、大径端部１２のシール性に関与する後で詳述するシール部３０が受けるブーツバンド１５の締付力も小さくなることがないため、外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位とシール部３０とを強固に密着させることができる。

２つのシール部３０は、断面三角形状とし、突状部２８から軸方向に等距離だけ離れた位置に１つずつ設ける。

このシール部３０は、図３に示すように、外輪２の開口端部１８の外周面２０に密着させることでブーツ１１の大径端部１２のシール性を向上させることができるが、この効果は、本実施形態のように、ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１で突状部２８を除く部位の複数箇所にシール部３０を設けることで顕著になる。また、本実施形態の場合、２つのシール部３０は、突状部２８の両側に設けるため、大径端部１２を外輪２の開口端部１８にバランスよく固定することができる。さらに、本実施形態の場合、大径端部１２の外周面に形成したバンド嵌合溝３３にブーツバンド１５を嵌合するため、ブーツバンド１５からの締付力が大径端部１２の内周面３１に設けた２つのシール部３０でバランスよく分散されて外輪２の開口端部１８に加わる。このため、２つのシール部３０を突状部２８の軸方向片側に設ける場合或は大径端部１２の外周面にブーツバンド１５を装着しない場合よりも、大径端部１２を外輪２の開口端部１８にバランスよく固定でき、この固定状態もシール部３０が外輪２の開口端部１８に強く密着するため、より強固にすることができる。なお、シール部３０が外輪２の開口端部１８に強く密着することで、大径端部１２のシール性を向上させることができる。

シール部３０の径方向長さ（図中Ｈ２）は突状部２８の径方向長さ（図中Ｈ１）よりも短くする。このように、シール部３０の径方向長さを突状部２８の径方向長さよりも短くすると、ブーツ１１の大径端部１２を外輪２の開口端部１８の外周面２０に取り付ける際、外輪２の開口端部１８の嵌合溝２１に大径端部１２の突状部２８を嵌合させて大径端部１２の軸方向における位置決めを行った後に、シール部３０を外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位に密着させることができる。この結果、ブーツ１１の大径端部１２を外輪２の開口端部１８に取り付ける際の作業性を向上させることができると共に、大径端部１２のシール性も向上させることができる。

シール部３０の径方向長さＨ２は０．３ｍｍ〜１．０ｍｍとする。シール部３０の径方向長さＨ２が０．３ｍｍ未満であると、シール部３０が小さすぎるため、図３に示すようにシール部３０を外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位に密着させた際、この密着性が十分でなく、大径端部１２に十分なシール性を付与させることができない。一方、シール部３０の径方向長さＨ２が１．０ｍｍを超える場合においては、シール部３０が大きすぎるため、大径端部１２を外輪２の開口端部１８に取り付ける際の装着性が悪化する。

シール部３０の根元部の軸方向長さ（図中Ｌ３）は０．５ｍｍ〜１．５ｍｍとする。シール部３０の根元部の長さＬ３が０．５ｍｍ未満であると、シール部３０の剛性（変形しにくさ）が低くなって、図３に示すような状態で外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位に十分に密着させることができず、大径端部１２に十分なシール性を付与することができない。一方、シール部３０の根元部の軸方向長さＬ３が１．５ｍｍを超える場合は、シール部３０の軸方向長さが長すぎて、このシール部３０を大径端部１２の内周面３１で突状部２８を除く部位に設けるのが困難となる。また、シール部３０を外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位に密着させる際に、シール部３０に加える径方向の力（ブーツバンド１５の締付力など）を受ける面積が大きくなってシール部３０の面圧が小さくなるため、シール部３０を十分な力で密着させることができず、大径端部１２に十分なシール性を付与することができない。

シール部３０は先端を尖状とする。このようにシール部３０の先端を尖状とすると、外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位にシール部３０を密着させる際、このシール部３０で外輪２の開口端部１８に対する大径端部１２の締代を確保できると共に、シール部３０は外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位に高い面圧で強く密着するため、大径端部１２のシール性を向上させることができる。また、シール部３０の先端を尖状とすると、大径端部１２の内側に外輪２の開口端部１８を圧入する際、外輪２の開口端部１８と大径端部１２のシール部３０との接触面積が小さいため、圧入作業が容易となる。

テーパ部２９は図２に示した外輪２の開口端部１８をブーツ１１の大径端部１２の内側に圧入する際の案内機能を果たし、圧入を容易にする。

このテーパ部２９の傾斜角度（図中θ３）は２０°〜６０°とする。傾斜角度θ３が２０°より小さいとテーパ部２９の軸方向長さが長くなるため、コンパクトさを阻害し、大径端部１２に不要な材料を増やす要因となる。一方、傾斜角度が６０°より大きいと、径方向への分力が少なくなるため、前記した外輪２の開口端部１８を案内する機能を十分に果たさなくなる。

図３に示すように、外輪２の開口端部１８は、大径端部１２の内側に圧入して、その大径端部１２の内周面３１に設けた肩部１９に当接させることで、外輪２の開口端部１８での大径端部１２の位置決めが更に容易となる。この結果、大径端部１２を外輪２の開口端部１８に取り付ける際の作業性を向上させることができる。さらに、肩部１９により、外輪２の開口端部１８に大径端部１２を取り付けた後も、外輪２の開口端部１８で大径端部１２が外輪反開口部側へ軸方向にずれるのを防止することもできる。

なお、ブーツ１１は熱可塑性ポリエステル系エラストマーを素材とするが、この場合、タイプＤ（ＪＩＳ番号：Ｋ６２５３）デュロメータ硬さが３５〜５０（数値が高いほど硬い）で示されるものを使用する。タイプＤデュロメータ硬さが３５よりも小さいと、ブーツ１１の耐熱性、回転膨張性（継手が回転した際のブーツの膨張しにくさを意味する）が低下する問題があり、タイプＤデュロメータ硬さが５０よりも大きいと、ブーツ１１は疲労性（使用による亀裂の生じにくさ）や摩耗性（他部品との接触摩擦に対する耐久性）が低下する問題が生じ、いずれの場合もブーツ１１はその機能を果たさなくなる。なお、タイプとは硬さ試験計の種類を意味する。

次に、ブーツ１１の小径端部１３と軸部材であるシャフト９の取付部分について、図４〜図６および図７を用いて説明する。

図４に示すように、シャフト９の外周面３５には嵌合溝３６を周方向全周に亘って形成する。この嵌合溝３６は、その外形を図２に示す外輪２の開口端部１８の嵌合溝２１の外形と同じにしており、シャフト中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部３７と底部３８とシャフト中央側に向けて拡径する曲率半径Ｒの曲面部３９とがシャフト中央側に向けて順に連続した断面形状とする。なお、この嵌合溝３６の外形は図２に示した外輪２の開口端部１８に形成する嵌合溝２１の外形と同じであるため、その作用および効果を含む詳細な説明を省略する。

また、図５に示すよう、ブーツ１１の小径端部１３の内周面４７において、最端部にブーツ中央側（図面左側）に向けて縮径するテーパ部４０を周方向全長に亘って形成し、このテーパ部４０のブーツ中央側に、２つの環状のシール部４５、環状の突状部４１を設ける。

テーパ４０は、小径端部１３の内側にこの小径端部１３の最端部側からシャフト９を圧入する際の案内機能を果たす。これにより、等速自在継手１の組付け性（組立て時の作業のしやすさを意味する）を向上させることができる。

突状部４１は、ブーツ反中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部４２と平坦部４３とブーツ反中央側に向けて拡径する曲面部４４とがブーツ中央側から順に連続した断面形状とする。なお、この突状部４１の外形は図１（Ａ）に示したブーツ１１の大径端部１２の内周面３１に設ける突状部２８の外形と同じであり、作用および効果についても同じであるため、その詳細な説明を省略する。

２つのシール部４５は、突状部４１から軸方向に等距離だけ離れた位置に１つずつ設ける。このシール部４５の形状は図１（Ａ）に示した大径端部１２の内周面３１に設けたシール部３０と同じ形状であり、作用および効果も同じであるため、その詳細な説明を省略する。なお、このシール部４５と既に説明した突状部４１の作用及び効果は、図６に示すように、小径端部１３の外周面に形成したバンド嵌合溝４６に固定部品としてのブーツバンド１６を嵌合させることにより顕著になる。この原理については、図３に示すように、大径端部１２のバンド嵌合溝３３にブーツバンド１５を嵌合する場合と同じであるため、その詳細な説明を省略する。

小径端部１３の最端部に形成するテーパ部４０の傾斜角度（図中θ５）は２０°〜６０°とする。傾斜角度θ５が２０°より小さいとテーパ部４０の軸方向長さが長くなるため、小径端部１３で肉厚が薄くなる部分が多くなり、また、コンパクトさを阻害して、小径端部１３に不要な材料を増やす要因となる。一方、傾斜角度が６０°より大きいと、径方向への分力が少なくなるため、小径端部１３の内側にその小径端部１３の最端部側からシャフト９を圧入する際の案内機能を十分に果たさなくなる。

本実施形態では、ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１では、固定部品であるブーツバンド１５の軸方向幅の範囲内に突状部２８とシール部３０を設け（図３参照）、ブーツ１１の小径端部１３の内周面４７では、ブーツバンド１６の軸方向幅の範囲内に突状部４１とシール部４５を設ける（図６参照）。

この場合、突状部（２８、４１）は、ブーツバンド（１５、１６）の締付力を直接受ける部位に配置することになる。そのため、突状部（２８、４１）を外輪２の開口端部１８の外周面２０に形成した嵌合溝２１およびシャフト９の外周面３５に形成した嵌合溝３６にそれぞれ嵌合した後では、ブーツバンド（１５、１６）の締付力で突状部（２８、４１）が嵌合溝（２１、３６）から外れるのを防止できる。この結果、大径端部１２および小径端部１３の軸方向のズレを確実に防止することができる。また、シール部（３０、４５）も、ブーツバンド（１５、１６）の締付力を直接受ける部位に配置することになるため、外輪２の開口端部１８の外周面２０で嵌合溝２１を除く部位およびシャフト９の外周面３５で嵌合溝３６を除く部位にそれぞれ強固に密着する。このため、大径端部１２および小径端部１３のシール性を向上させることができる。以上の点から、本実施形態では、ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１において、固定部品であるブーツバンド１５の軸方向幅の範囲内に突状部２８とシール部３０を設けず、ブーツ１１の小径端部１３の内周面４７において、ブーツバンド１６の軸方向幅の範囲内に突状部４１とシール部４５を設けない場合よりもブーツ１１の密封性を向上させることができ、かつ、ブーツ１１が外輪２とシャフト９に装着後に軸方向にずれるのを確実に防止することもできる。

また、本実施形態では、外輪２の開口端部１８の嵌合溝２１およびシャフト９の嵌合溝３６の形状を簡素にできるため、外輪２の開口端部１８の外周面２０及びシャフト９の外周面３５の加工性を向上させることができる。

なお、図１（Ａ）に示したブーツ１１の大径端部１２の内周面３１に設ける突状部２８とシール部３０および図５に示したブーツ１１の小径端部１３の内周面４７に設ける突状部４１とシール部４５はブーツの大径端部１２および小径端部１３との一体成形により設ける。この場合、突状部やシール部として別部品を使用する必要がないため、部品点数を削減してブーツ１１の端部（大径端部１２、小径端部１３）の加工費用を削減することが可能となる。

そして、ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１に設ける肩部１９も、大径端部１２との一体成形により設ける。この場合、肩部１９として別部品を使用する必要がないため、部品点数を削減して大径端部１２の加工費用を削減することが可能となる。

さて、外輪２の開口端部１８の外周面２０およびシャフト９の外周面３５に形成する嵌合溝（２１、３６）、ブーツ１１における大径端部１２の内周面３１および小径端部１３の内周面４７に設ける突状部（２８、４１）、シール部（３０、４５）の形状は任意に変更が可能である。この実施形態について以下に説明する。

図８〜１３に本発明の第２の実施形態を示す。なお、本実施形態では、図１〜図７に示す第１の実施形態と同じ部位および機能を有する部品については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。

まず、ブーツ１１の大径端部１２と外輪２の開口端部１８との取付部分について、図８〜図１０を用いて説明する。

図８は外輪２の開口端部１８を示しており、その外周面２０に嵌合溝２１が形成されている。この嵌合溝２１は外輪開口部側に向けて縮径するテーパ部５３と外輪開口部側に向けて拡径する曲面部５４とが外輪反開口部側から順に連続した断面形状とする。

図９はブーツ１１の大径端部１２を示しており、その内周面３１に突状部２８を設け、この突状部２８はブーツ中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部５１とブーツ中央側に向けて拡径する曲面部５２がブーツ中央側に向けて順に連続した断面形状とする。さらに、大径端部１２の内周面３１には、突状部２８よりもブーツ中央側に断面が逆台形上の２つのシール部３０を設ける。なお、図１０に図８に示す外輪２の開口端部１８に図９に示す大径端部１２を取り付けた状態の断面図を示した。

次に、ブーツ１１の小径端部１３とシャフト９との取付部分について、図１１〜図１３を用いて説明する。

図１１にシャフト９の正面図を示す。このシャフト９の外周面３５に嵌合溝３６が形成されている。この嵌合溝３６はシャフト中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部６０とシャフト中央側に向けて拡径する曲面部６１とがシャフト中央側に向けて順に連続した形状を成す。

図１２にブーツ１１の小径端部１３を示す。この小径端部１３の内周面４７には突状部４１を設け、この突状部４１は、ブーツ反中央側に向けて縮径するテーパ部６２とブーツ反中央側に向けて拡径する曲面部６３とがブーツ中央側（図中左側）から順に連続した断面形状をなす。さらに、小径端部１３の内周面４７には、突状部４１よりもブーツ中央側に断面が逆台形状の２つのシール部４５を設ける。なお、図１３に図１１に示すシャフト９に図１２に示す小径端部１３を取り付けた状態の断面図を示した。

さて、本実施形態では、ブーツ１１の大径端部１２に設ける突状部２８の形状と外輪２の開口端部１８の外周面２０に形成する嵌合溝２１の形状とを合致させ、小径端部１３に設ける突状部４１の形状とシャフト９の外周面３５に形成する嵌合溝３６の形状とを合致させる。ここで「合致させる」とは、突状部（２８、４１）を嵌合溝（２１、３６）に嵌合した際に、嵌合溝（２１、３６）との間に隙間が生じない形状、換言すれば、嵌合溝（２１、３６）の大きさおよび外形が同じである形状にすることを意味する。この場合、突状部（２８、４１）が嵌合溝（２１、３６）に嵌合しやすくなり、外輪２の開口端部１８或はシャフト９にブーツ１１の端部（大径端部１２、小径端部１３）を取り付ける際の軸方向での位置決めが容易となる。また、図１０および図１３に示したように、突状部（２８、４１）が嵌合溝（２１、３６）に隙間なく嵌合するため、ブーツの端部（大径端部１２、小径端部１３）のシール性も向上させることができる。

なお、外輪２の開口端部１８の外周面２０或はシャフト９の外周面３５に形成する嵌合溝（２１、３６）の形状についての上述した点以外の詳細、そして、ブーツ１１の大径端部１２の内周面３１或は小径端部１３の内周面４７に設ける突状部（２８、４１）とシール部（３０、４５）の形状、そして、これらの作用や効果についての詳細は図１〜図７に示す第１の実施形態で既に述べているため、その説明を省略する。

図１４に本発明の第３の実施形態として、本発明を摺動型等速自在継手の一つであるトリポード型等速自在継手に適用した実施形態を示す。

この等速自在継手９１は、外側継手部材である外輪９２、内側継手部材であるトリポード部材９３、ローラ９５で主要部が構成される。外輪９２の内周面には軸方向に延びる３本の直線状トラック溝９７が形成されている。トリポード部材９３は径方向に突設された三本の脚軸９４を有する。この脚軸９４にローラ９５が回転自在に支持され、このローラ９５が外輪９２のトラック溝９７に転動自在に挿入されてトラック溝９７に沿って案内される。前記した３本の脚軸９４を有するトリポード部材９３、ローラ９５で外輪９２の内部に収容される内部部品９６が構成されている。トリポード部材９３の中心孔１２４には軸部材であるシャフト９９がスプライン嵌合され、このシャフト９９から外輪９２の開口端に亙って熱可塑性ポリエステル系エラストマーを素材とする蛇腹状のブーツ１００が取り付けられている。このブーツ１００は大径端部１０１と、小径端部１０２と、大径端部１０１と小径端部１０２とを連結する蛇腹状の中間部１０３とから成り、大径端部１０１は外輪９２の開口端部９８の外周面１０７に取り付けられ、小径端部１０２はシャフト９９の外周面１０９に取り付けられ、それぞれの取付部分は、大径端部１０１の外周面に形成したバンド嵌合溝１１６および小径端部１０２の外周面に形成したバンド嵌合溝１１７にそれぞれ固定部品であるブーツバンド（１０５、１０６）を嵌合して締付固定される。前記したそれぞれの取付部分について以下に説明する。

図１５は図１４に示した外輪９２の断面図を示している。図１５（Ａ）は図１４の外輪９２のＸ−Ｘ断面図であるが、この図に示すように、外輪９２は非円筒状であり、外径の小さい部分と大きい部分とが交互に連続した形状を成す。この外輪９２における開口端部９８の外径が大きい部分の断面図を図１５（Ｂ）に示した。

この図１５（Ｂ）に示すように、外輪９２の外径が大きい部分の外周面１０７には、嵌合溝１１１が形成されている。この嵌合溝１１１はテーパ部１１２と底部１１３と曲面部１１４が外輪反開口部側から順に連続した断面形状をなす。この形状の嵌合溝１１１についての作用および効果を含む詳細は、第１の実施形態を説明する図２で既に述べているため、その説明を省略する。

図１６は図１４に示したブーツ１００の大径端部１０１を示している。図１６（Ａ）に示すように、大径端部１０１の内周面１０８において、最端部にブーツ中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部１１８が形成され、このテーパ部１０８よりもブーツ中央側に２つのシール部１２３、突状部１１９、肩部１０４を設ける。

突状部１１９は、ブーツ中央側に向けて縮径するテーパ部１２０と、平坦部１２１と、ブーツ中央側に向けて拡径する曲面部１２２がブーツ中央側に向けて順に連続した断面形状とする。この突状部１１９は、大径端部１０１との一体成形により設け、図１５（Ｂ）に示す外輪９２の開口端部９８の外周面１０７に形成した嵌合溝１１１に嵌合することで、外輪９２の開口端部９８での大径端部１０１の軸方向における位置決めを行うことができると共に、大径端部１０１にシール性を付与させることができる。

２つのシール部１２３は、先端が尖状の断面三角形状とし、大径端部１０１との一体成形により、突状部１１９から軸方向に等距離だけ離れた位置に環状に１つずつ設ける。

このシール部１２３は、図１５（Ｂ）に示す外輪９２の開口端部９８の外周面１０７で嵌合溝１１１を除く部位に密着させることでブーツ１００の大径端部１０１のシール性を向上させることができる。この効果は、本実施形態のようにシール部１２３を複数とし、かつ、これらのシール部１２３を突状部１１９の両側に設ける場合に顕著になる。この理由については、第１の実施形態を説明する図３で既に述べているため、その詳細な説明を省略する。さらに、本実施形態では、大径端部１０１の外周面に形成したバンド嵌合溝１１６に固定部品としてのブーツバンド１０５を嵌合して締付固定するため、大径端部１０１を外輪９２の開口端部９８に強固に、かつ、安定して固定することができる。この理由についても第１の実施形態を説明する図３で述べているため、その詳細な説明を省略する。

さて、本実施形態では、大径端部１０１の内周面１０８は、図１６（Ａ）を白抜き矢印側から見た矢視図である図１６（Ｂ）に示すように、図１５（Ａ）に示した外輪９２の開口端部９８の外形に沿った形状に形成するため、大径端部１０１は、肉厚の厚い部分と薄い部分が交互に形成された形状をなす。図１６（Ａ）で既に説明した大径端部１０１の内周面１０８に設ける突状部１１９を図１５（Ｂ）に示した外輪９２の開口端部９８の外周面１０７に形成した嵌合溝１１１に嵌合することにより、図１９に示すように、大径端部１０１の内周面１０８を外輪９２の開口端部９８の外周面１０７に周方向全長に亘って密着させて、大径端部１０１にシール性を付与することができる。さらに言えば、この効果は、本実施形態のように大径端部１０１の外周面のバンド嵌合溝１１６にブーツバンド１０５を嵌合して締付固定する場合に顕著になる（図１４参照）。これは、本実施形態の場合、大径端部１０１と外輪９２の開口端部９８との間には周方向に亘って隙間がないことから、ブーツバンド１０５の締付力で大径端部１０１の内周面１０８と外輪９２の開口端部９８の外周面１０７とを周方向に亘って強固に密着させることができるためである。

また、図１６（Ａ）および図１６（Ｂ）に示すように、ブーツ１００の大径端部１０１の内周面１０８に設ける突状部１１９とシール部１２３において、突状部１１９は大径端部１０１の肉厚の薄い部分の内周面１０８にのみ周方向に形成し、シール部１２３は大径端部１０１の内周面１０８の周方向全周に亘って設ける。これは、突状部１１９は大径端部１０１を外輪９２の開口端部９８に取り付ける際の位置決め機能を果たし、この機能は、突状部１１９が大径端部１０１の内周面１０８の周方向全周に亘って設けない場合であっても発揮させることができるためであり、また、シール部１２３は、大径端部１０１の内周面１０８の周方向全周に亘って設けなければ、大径端部１０１に十分なシール性を付与することができないためである。

肩部１０４は２つのシール部１２３のうちでブーツ中央側のシール部１２３よりもブーツ中央側に、大径端部１０１との一体成形により設ける。この肩部１０４に外輪９２の開口端部９８を当接させることで、外輪９２の開口端部９８に大径端部１０１を取り付ける際、大径端部１０１の軸方向での位置決めを更に確実にできる。また、外輪９２の開口端部９８に大径端部１０１を取り付けた後も、大径端部１０１が外輪反開口部側へ軸方向にずれるのを防止することができる。

なお、図１６（Ａ）に示したテーパ部１１８、突状部１１９、シール部１２３の形状、作用、効果についての詳細は、第１の実施形態を説明する図１および図２で既に説明しているため、ここで改めて説明することを省略する。

次に、シャフト９９とブーツ１００の小径端部１０２との取付部分（図１４参照）について図１７および図１８を用いて説明する。

図１７にシャフト９９の正面図を示す。このシャフト９９の外周面１０９に嵌合溝１２５を形成する。この嵌合溝１２５は、シャフト中央側（図面右側）に向けて縮径するテーパ部１２６と底部１２７とシャフト中央側に向けて拡径する曲面部１２８とがシャフト中央側に向けて順に連続した形状とする。この形状の嵌合溝１２５についての作用および効果を含む詳細は、第１の実施形態を説明する図２で既に説明しているため、その説明を省略する。

また、図１８に示すように、ブーツ１００の小径端部１０２の内周面１１０において、最端部にブーツ中央側（図面左側）に向けて縮径するテーパ部１２９を環状に形成し、このテーパ部１２９のブーツ中央側に、２つの環状のシール部１３４、環状の突状部１３０を設ける。

突状部１３０は、ブーツ中央側に向けて拡径するテーパ部１３１と平坦部１３２とブーツ中央側に向けて縮径する曲面部１３３とがブーツ中央側から順に連続した断面形状とし、小径端部１０２との一体成形により設ける。

２つの環状のシール部１３４は、小径端部１０２との一体成形により、突状部１３０から軸方向に等距離だけ離れた位置に１つずつ設け、それぞれ先端が尖状である断面三角形状とする。このシール部１３４と突状部１３０の作用及び効果は、本実施形態のように、小径端部１０２の外周面に形成したバンド嵌合溝１１７に固定部品としてのブーツバンド１０６を嵌合させることにより顕著になる。この原理については、第１の実施形態を説明する図３に示すように、大径端部１２のバンド嵌合溝３３にブーツバンド１５を嵌合する場合と同じであり、既に説明しているため、その詳細な説明を省略する。なお、突状部１３０およびシール部１３４の形状とこれに関する作用および効果、および、テーパ部１２９についての詳細は、第１の実施形態を説明する図１および図５で既に説明しているため、その詳細な説明を省略する。

なお、本実施形態においても、図１〜図１３に示した第１および第２の実施形態と同様、ブーツ１００の大径端部１０１の内周面１０８では、固定部品であるブーツバンド１０５の軸方向幅の範囲内に突状部１１９とシール部１２３を設け、ブーツ１００の小径端部１０２の内周面１１０では、ブーツバンド１０６の軸方向幅の範囲内に突状部１３０とシール部１３４を設ける。この場合の作用および効果については、第１の実施形態を説明する図３および図６で説明しているため、その詳細な説明を省略する。

さて、これまでに挙げた実施形態では、ブーツは熱可塑性ポリエステル系エラストマーを素材として成形したが、これに限られることはなく、クロロプレンゴムやビニルメチルシリコーンゴムを素材とすることもできる。

クロロプレンゴムを素材とする場合、タイプＡ（ＪＩＳ番号：Ｋ６２５３）デュロメータ硬さが５０〜７０のものを使用することができる。タイプＡデュロメータ硬さが５０よりも小さいと、柔らかすぎてブーツの回転膨張性、凹み性、強度が低下し、タイプＡデュロメータ硬さが７０よりも大きいと、硬すぎて疲労性などが低下するため、いずれの場合においてもブーツがその機能を果たさなくなる。

ビニルメチルシリコーンゴムを素材とする場合、タイプＡ（ＪＩＳ番号：Ｋ６２５３）デュロメータ硬さが５５〜７０のものを使用することができる。タイプＡデュロメータ硬さが５５よりも小さいと、柔らかすぎてブーツの回転膨張性、凹み性、強度が低下し、タイプＡデュロメータ硬さが７０よりも大きいと、硬すぎて疲労性などが低下するため、何れの場合においてもブーツがその機能を果たさなくなる。

また、これまでに挙げた実施形態では、ブーツの大径端部の内周面に設ける肩部を環状に設けたが、円周方向に断続的に設けても、肩部の作用および効果を得ることができる。

なお、ここで挙げた実施形態はあくまで例示であり、特許請求の範囲に記載の意味および内容の範囲内で任意に変更が可能である。

（Ａ）は図７に示したブーツの大径端部の拡大図である。（Ｂ）は（Ａ）を白抜き矢印方向に見た矢視図である 図７に示す外輪の開口端部の拡大図である 図７に示した外輪の開口端部とブーツの大径端部の取付部分の拡大図である。 図７に示すシャフトの正面図である。 図７に示すブーツの小径端部の拡大図である。 図７に示すシャフトとブーツの小径端部の取付部分の拡大図である。 本発明の第１の実施形態である等速自在継手を示す断面図である。 本発明の第２の実施形態であり、外輪の開口端部を示す断面図である。 本発明の第２の実施形態であり、ブーツの大径端部を示す断面図である。 図８に示す外輪の開口端部に図９に示すブーツの大径端部を取り付けた際の状態を示す断面図である。 本発明の第２の実施形態であり、シャフトの正面図である。 本発明の第２の実施形態であり、ブーツの小径端部を示す断面図である。 図１１に示すシャフトに図１２に示すブーツの小径端部を取り付けた際の状態を示す断面図である。 本発明の第３の実施形態である等速自在継手を示す断面図である。 （Ａ）図１４に示す外輪のＸ−Ｘ断面図である。（Ｂ）は図１４に示す外輪の開口端部の拡大図である。 （Ａ）は図１４に示したブーツの大径端部の拡大図である。（Ｂ）は（Ａ）を白抜き矢印方向に見た矢視図である。 図１４に示したシャフトの正面図である。 図１４に示したブーツの小径端部の拡大図である。 図１４に示した外輪２の開口端部とブーツの大径端部の取付部分の横断面図である。 等速自在継手の一例を示す断面図である。 図２０において、外輪の開口端部とブーツの大径端部の取付部分における従来例を示す断面図である。 外輪の開口端部とブーツの大径端部の取付部分における図１９とは異なる従来例を示す断面図であり、（Ａ）はブーツの大径端部の断面図である。（Ｂ）は外輪の開口端部の断面図である。（Ｃ）は（Ａ）に示すブーツの大径端部を（Ｂ）に示す外輪の開口端部に取り付けた際の状態を示す断面図である。

符号の説明

１ 固定型等速自在継手（ＢＪ）
２、９２ 外側継手部材（外輪）
９、９９ シャフト（軸部材）
１１、１００ 蛇腹状ブーツ
１２、１０１ 大径端部
１３、１０２ 小径端部
１５、１６、１０５、１０６ ブーツバンド
１８、９８ 開口端部（外輪）
１９、１０４ 肩部（大径端部）
２０、１０７ 外周面（外輪）
２１、１１１ 嵌合溝（外輪）
２８、１１９ 突状部（大径端部）
３０、１２３ シール部（大径端部）
３１、１０８ 内周面（大径端部）
３３、１１６ バンド嵌合溝（大径端部）
３６、１２５ 嵌合溝（シャフト）
４１、１３０ 突状部（小径端部）
４５、１３４ シール部（小径端部）
４６、１１７ バンド嵌合溝（小径端部）
４７、１１０ 内周面（小径端部）
９１ トリポード型等速自在継手（ＴＪ）

Claims (14)

1. 開口部を有する外側継手部材と、前記外側継手部材の内部に収容され、その外側継手部材とトルク伝達可能に連結された内側継手部材とを備えた等速自在継手であって、
   内側継手部材から延びる軸部材の外周面にブーツの一方の端部を取り付けると共に、前記外側継手部材の開口端部の外周面にブーツの他方の端部を取り付け、前記ブーツの端部の内周面に形成された突状部が、前記外側継手部材の開口端部或は軸部材の外周面に形成された嵌合溝に嵌合され、前記ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位に突起状のシール部を環状に設けたことを特徴とする等速自在継手。
2. 前記シール部は、前記ブーツの端部の外周面に取り付けられる固定部品の軸方向幅の範囲内に設けたことを特徴とする請求項１に記載の等速自在継手。
3. 前記シール部の先端を尖状としたことを特徴とする請求項１又は２に記載の等速自在継手。
4. 前記シール部は前記ブーツの端部の内周面で突状部を除く部位の複数箇所に設けたことを特徴とする請求項１〜３のいずれか一項に記載の等速自在継手。
5. 前記シール部は前記ブーツの端部の内周面で前記突状部の軸方向両側の部位に設けたことを特徴とする請求項４に記載の等速自在継手。
6. 前記シール部の径方向長さを前記突状部の径方向長さよりも短くしたことを特徴とする請求項１〜５のいずれか一項に記載の等速自在継手。
7. 前記嵌合溝の径方向長さを前記突状部の径方向長さ以上としたことを特徴とする請求項１〜６のいずれか一項に記載の等速自在継手。
8. 前記突状部の形状を前記嵌合溝の形状と合致させたことを特徴とする請求項１〜７のいずれか一項に記載の等速自在継手。
9. 前記外側継手部材の開口端部を非円筒状とし、その外側継手部材の開口端部の外周面に取り付けられるブーツの端部の内周面は前記外側継手部材の開口端部の外形に沿った形状とし、前記外側継手部材の開口端部の外周面とそれに取り付けられるブーツの端部の内周面とが互いに隙間なく密着されていることを特徴とする請求項１〜８のいずれか一項に記載の等速自在継手。
10. 前記突状部と前記シール部を前記ブーツの端部と一体成形により設けたことを特徴とする請求項１〜９のいずれか一項に記載の等速自在継手。
11. 前記突状部と前記シール部を前記ブーツの端部と別体で設けたことを特徴とする請求項１〜９のいずれか一項に記載の等速自在継手。
12. 前記ブーツの前記外側継手部材に取り付けられる端部は、その内周面の前記突状部を除く部位に内径方向に突出する肩部を有し、その肩部に前記外側継手部材の開口端部が当接されていることを特徴とする請求項１〜１１のいずれか一項に記載の等速自在継手。
13. 前記肩部を前記ブーツの端部と一体成形により設けたことを特徴とする請求項１２に記載の等速自在継手
14. 前記肩部を前記ブーツの端部と別体で設けたことを特徴とする請求項１２に記載の等速自在継手。

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