JP3292182B2 - 低周波ノイズ除去方法及びcmosセンサ回路 - Google Patents

低周波ノイズ除去方法及びcmosセンサ回路

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JP3292182B2 JP27439299A JP27439299A JP3292182B2 JP 3292182 B2 JP3292182 B2 JP 3292182B2 JP 27439299 A JP27439299 A JP 27439299A JP 27439299 A JP27439299 A JP 27439299A JP 3292182 B2 JP3292182 B2 JP 3292182B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、物理量などに応じ
た検出対象信号の信号量を測定するセンサ回路のための
低周波ノイズ除去方法及び上記信号量を測定するための
測定手段をCMOS素子を利用して構成したCMOSセ
ンサ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】圧力や加速度などの物理量を検出するた
めのセンサ回路にあっては、従来より、センサ用トラン
スジューサからの検出対象信号を処理するための回路の
構成要素として、内部ノイズが比較的低いという特性が
あるバイポーラトランジスタを利用することが行われて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなセンサ回
路においては、これを構成するバイポーラトランジスタ
自体の内部ノイズが検出対象信号に対して十分に低いた
め、検出対象信号に重畳するノイズによる影響が特に問
題になることはなかった。これに対して、近年では、低
コスト化と共に、センサ回路のマイクロ化やセンサ機能
のスマート化(例えば自己診断機能や自己補正機能など
のような知能化、デジタル信号対応処理機能など)が要
求されている。このような要求には、バイポーラトラン
ジスタを使用する回路構成では対応困難であるため、集
積度を高めることができるCMOS素子を利用したCM
OSセンサ回路として構成することが必要になってく
る。
【0004】このような場合、一般的には、検出対象信
号を処理するための測定回路部の前段に、CMOS増幅
回路(アナログアンプ)のようなインターフェースを設
けると共に、その測定回路部などもCMOS素子により
形成することになるが、CMOS増幅回路などを構成す
るMOSトランジスタにあっては、1/fノイズが非常
に大きいため、内部ノイズ(低周波ノイズ)が大きくな
るという一般的特性がある。このため、上記CMOS増
幅回路のオフセットノイズが大きくなるという事情があ
るが、このオフセットノイズは、10Hz程度以下の低
周波ノイズであって検出対象信号の周波数帯域と重なる
ため、これをフィルタ回路(ローパスフィルタ)によっ
て除去できなくなる。
【0005】つまり、上記のようにCMOSセンサ回路
として構成する場合には、その信号処理系統中に、揺ら
ぎを伴う低周波のオフセットノイズが存在することが避
けられないのに対して、一般的な検出対象信号も低周波
の信号であるため、そのオフセットノイズが検出対象信
号の最低レベルよりも大きい場合には、最終的に得られ
る検出出力にノイズによる影響が大きく現れるようにな
り、この結果、必要な検出精度を得ることが困難になる
という大きな問題点が出てくる。加えて、信号増幅回路
内に存在するオフセット電圧などの経時変化も一種の低
周波ノイズ(超低周波ノイズ)であるため、同様に大き
な問題である。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、内部ノイズが大きな素子を利用した
回路構成とする場合に、当該内部ノイズのレベルが検出
対象信号の最低レベルよりも大きい状態であっても、低
周波ノイズの除去を効果的に行い得る低周波ノイズ除去
方法を提供することにあり、また、CMOS素子を利用
した回路構成でありながら低周波ノイズによる悪影響を
除去できて検出精度の向上を実現できるなどの効果を奏
するCMOSセンサ回路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明のような低周波ノイズ除去方法を
採用できる。この方法は、検出対象信号の信号量をAD
変換するAD変換手段を備えたセンサ回路における低周
波ノイズを除去するために、その検出対象信号より大き
な値の意図的オフセット値を予め設定しておき、その意
図的オフセット値の大きさをAD変換手段によりAD変
換した意図的オフセットデータと、前記検出対象信号に
意図的オフセット値を加算した状態の信号の大きさを前
記AD変換手段によりAD変換した信号測定データとの
比を取り、その比の有効桁の情報をノイズ低減された補
正済み信号データとして用いることによってセンサ出力
の低周波ノイズを低減させるものである。このように意
図的オフセットデータと信号測定データとの比を取るこ
とで、検出対象信号に含まれる低周波ノイズの影響を相
対的に小さくできる。つまり、当該低周波ノイズの影響
を意図的オフセット値の大きさにより低減できるもので
あり、しかも、意図的オフセットデータと信号測定デー
タとの比の有効桁が確保されるから、検出対象信号のA
D変換情報を残すことができて検出精度を確保できるも
のである。
【0008】請求項2記載の発明によれば、ノイズ周波
数fの1/f或いは(1/f)n (nは1以上の実数)
に比例する低周波ノイズを効果的に除去できるようにな
り、1/fノイズが非常に大きくなる回路要素(例えば
CMOS増幅回路)を使用する場合に好適するようにな
る。
【0009】前記目的を達成するために請求項3記載の
発明のような低周波ノイズ除去方法を採用できる。この
方法によれば、検出対象信号の信号量を測定する測定手
段を備えたセンサ回路における低周波ノイズの除去のた
めに、まず、上記検出対象信号よりも大きな値の意図的
オフセット値を予め設定しておく。そして、測定手段に
よって、例えば、上記意図的オフセット値の大きさを測
定して意図的オフセット測定値を求めた後に、同じく上
記測定手段によって、検出対象信号に上記意図的オフセ
ット値を加算した状態の信号の大きさを測定して信号測
定値を求める。尚、これらの測定動作の順序は逆でも良
い。この後に、それら意図的オフセット測定値及び信号
測定値との比(例えば、信号測定値/意図的オフセット
測定値)を取り、その比をセンサ出力のノイズ低減デー
タとして利用する。
【0010】従って、仮に、検出対象信号に低周波ノイ
ズが重畳した場合であっても、上記意図的オフセット測
定値及び信号測定値のそれぞれに対し同じ低周波ノイズ
が混入することになり、しかも、その意図的オフセット
値は検出対象信号のレベルより大きい値に設定されてい
るから、前記ノイズ低減データ(意図的オフセット値を
測定した意図的オフセット測定値と、検出対象信号に上
記意図的オフセット値を加算した状態の信号の大きさを
測定した信号測定値との比)に占める低周波ノイズ成分
の影響が相対的に小さくなる。この結果、内部ノイズが
大きい素子を利用した回路構成とした場合において、当
該内部ノイズのレベルが検出対象信号の最低レベルより
も大きい値となったとしても、低周波ノイズの除去を効
果的に行い得るようになる。つまり、意図的オフセット
値が大きな値になるほど、センサ出力のノイズ低減デー
タに占める低周波ノイズ成分の影響を低減できるもので
あり、これにより、センサ回路の検出精度の低下を未然
に防止できることになる。
【0011】請求項4記載の発明のように、前記意図的
オフセット測定値を得るための測定動作と、前記信号測
定値を得るための測定動作とを連続して行った場合(測
定動作順は問わない)には、低周波ノイズの大きさが周
期的に時間変化する状況下であっても、上記意図的オフ
セット測定値及び信号測定値中にほぼ等しい大きさの低
周波ノイズが混入することになる。この結果、意図的オ
フセット測定値及び信号測定値との比である前記ノイズ
低減データが低周波ノイズの揺らぎに起因して変動して
しまうことがなくなり、そのノイズ低減データに基づい
て低周波ノイズを効果的に除去可能になる。
【0012】請求項5記載の発明のように、前記意図的
オフセット測定値を得るための測定動作タイミングと、
前記信号測定値を得るための測定動作タイミングとの間
隔を、除去対象とするノイズの周期に対して十分に短い
間隔となるように設定した場合には、除去対象の低周波
ノイズの大きさが周期的に時間変化する状況下であって
も、上記意図的オフセット測定値及び信号測定値中にほ
とんど同じ大きさの低周波ノイズが混入することにな
る。この結果、意図的オフセット測定値及び信号測定値
との比である前記ノイズ低減データが低周波ノイズの揺
らぎに起因して変動することを抑制できるようになり、
そのノイズ低減データに基づいて低周波ノイズを効果的
に除去できるようになる。
【0013】この場合、請求項6記載の発明のように、
意図的オフセット測定値を得るための測定動作タイミン
グと、信号測定値を得るための測定動作タイミングとの
間隔を、除去対象とするノイズの周期の1/10以下の
間隔となるように設定した場合には、意図的オフセット
測定値及び信号測定値中に混入する低周波ノイズの大き
さを所定レベル以下に確実に抑制できるようになる。こ
の結果、意図的オフセット測定値及び信号測定値との比
である前記ノイズ低減データが低周波ノイズの揺らぎに
起因して変動する可能性が低くなくなり、そのノイズ低
減データに基づいて低周波ノイズを確実に除去できるよ
うになる。
【0014】請求項7記載の発明のように、複数回ずつ
の測定動作により得た複数サンプルずつの意図的オフセ
ット測定値及び信号測定値の各平均値をそれぞれ演算す
ると共に、それら意図的オフセット測定値の平均値及び
信号測定値の平均値の比を前記ノイズ低減データとして
利用する構成とした場合には、複数サンプルずつの意図
的オフセット測定値及び信号測定値を平均化することに
伴う積分効果によって、高周波ノイズの低減をも同時に
図り得るようになる。
【0015】この場合、請求項8記載の発明のように、
複数サンプルの意図的オフセット測定値を得るための複
数回の測定動作と、複数サンプルの信号測定値を得るた
めの複数回の測定動作とを、この順または逆の順で連続
的に行う構成とした場合には、測定対象を切り換える動
作を1回行うだけ済んで、その切り換え動作が複雑にな
る恐れがなくなる。
【0016】請求項9記載の発明のように、意図的オフ
セット測定値を得るための測定動作と、信号測定値を得
るための測定動作とを、この順または逆の順で連続的に
行うサイクルを複数回反復し、このようにして得た複数
サンプルずつの意図的オフセット測定値及び信号測定値
の各平均値をそれぞれ演算すると共に、それら意図的オ
フセット測定値の平均値及び信号測定値の平均値の比を
前記ノイズ低減データとして利用する構成とした場合に
も、複数サンプルずつの意図的オフセット測定値及び信
号測定値を平均化することに伴う積分効果によって、高
周波ノイズの低減をも同時に図り得るようになる。特
に、この場合には、意図的オフセット測定値を得るため
の測定動作と信号測定値を得るための測定動作とを1単
位とした測定が行われる結果、それら意図的オフセット
測定値及び信号測定値中に混入する低周波ノイズの大き
さの一致度が高くなるから、低周波ノイズの除去効果が
低くなる恐れがなくなる。
【0017】請求項10記載の発明のように、前記意図
的オフセット値の大きさを、前記検出対象信号の信号量
の2倍を越える値に設定した場合には、最終的に得られ
る前記ノイズ低減データに占める低周波ノイズ成分の影
響を実用レベル以下に抑制することが可能になる。
【0018】請求項11記載の発明のように、前記意図
的オフセット値の大きさを、前記検出対象信号の信号量
の最大値の10倍以上に設定した場合には、最終的に得
られる前記ノイズ低減データに占める低周波ノイズ成分
の影響を十分に抑制できるようになる。
【0019】請求項12記載の発明のように、前記意図
的オフセット値の大きさを、除去対象とするノイズの大
きさと同等以上の値に設定した場合にも、最終的に得ら
れる前記ノイズ低減データに占める低周波ノイズ成分の
影響を実用レベル以下に抑制することが可能になる。
【0020】請求項13記載の発明のように、前記意図
的オフセット値を、前記検出対象信号のための入力回路
とは独立した状態で設けられた信号生成手段により生成
する構成とした場合には、意図的オフセット値の測定動
作を、検出対象信号のための入力回路の状態を変化させ
ずに行うことが可能となるから、ノイズ除去のための動
作の安定度を保ちながらノイズ除去効果を高め得るよう
になる。
【0021】請求項14記載の発明のように、測定手段
により複数種類の検出対象信号の信号量をそれぞれ測定
する構成とされる場合に、意図的オフセット測定値を得
るための測定動作タイミングと、複数種類の検出対象信
号にそれぞれ対応した信号測定値を得るための複数の測
定動作タイミングとの各間の平均所要時間が最短となる
ような順序で各測定動作を行う構成とした場合には、そ
れぞれの測定結果に混入する低周波ノイズの大きさが互
いに等しくなる方向に作用するから、最終的に得られる
ノイズ低減データに基づいたノイズ除去効果を高め得
る。
【0022】請求項15記載の発明のように、測定手段
により複数種類の検出対象信号の信号量をそれぞれ測定
する構成とされる場合に、意図的オフセット測定値を得
るための測定動作タイミングと、上記複数種類の検出対
象信号のうちセンサ精度に最も大きな影響をもたらす信
号の測定動作タイミングとの間隔が最短となるような順
序で各測定動作を行う構成としたときには、センサ精度
に重要な影響をもたらす特定の検出対象信号を含む信号
測定値に混入する低周波ノイズの大きさと、意図的オフ
セット測定値に混入する低周波ノイズの大きさが互いに
等しくなる方向に作用するから、上記特定の検出対象信
号に対するノイズ除去効果を高め得るようになり、総じ
てセンサ回路の検出精度を向上させ得るようになる。
【0023】前記目的を達成するために請求項16記載
の発明のような低周波ノイズ除去方法を採用できる。こ
の方法は、検出対象信号及び比較対象値をそれぞれAD
変換してデジタル値とした検出データ及び比較対象デー
タに対し、それぞれ検出データより大きなデジタル値の
意図的オフセットデータを加算することにより、信号測
定値及び意図的オフセット測定値を算出し、これら意図
的オフセット測定値と上記信号測定値との比を取り、そ
の比を補正結果とすることによりノイズを低減させるも
のである。このように意図的オフセット測定値と信号測
定値との比を取ることで、検出対象信号に含まれる低周
波ノイズの影響を意図的オフセット値の大きさにより低
減することができる。この場合、信号測定値及び意図的
オフセット測定値をそれぞれ生成するためのAD変換に
必要なビット数は、検出対象信号の最大値をカバーでき
るものであれば良い。従って、AD変換手段のビット数
を必要最小限とすることができ、AD変換時間の短縮、
AD変換手段の小型化、AD変換に必要な分解能限界の
緩和などが可能になる。
【0024】請求項17記載の発明では、比較対象値の
AD変換値である比較対象データを、検出対象信号が概
ね零であるときのAD変換値とほぼ等しい値となるよう
に設定することにより、特に検出対象信号が零付近のと
きにノイズ除去効果を高めることができる。
【0025】請求項18記載の発明では、比較対象値の
AD変換値である比較対象データが、前記検出対象信号
がその最大値の概ね50%であるときのAD変換値とほ
ぼ等しい値となるように設定されることにより、特に検
出対象信号が最小値或いは最大値付近にあるときにおけ
るノイズ除去効果の劣化を最小限に抑えることができ
る。
【0026】請求項19記載の発明では、検出データと
比較対象データとには、それぞれ測定誤差となり得る大
きさのノイズデータが含まれているものであり、このノ
イズデータの影響を意図的オフセット値の大きさにより
低減できることになる。尚、意図的オフセット値は検出
データより大きいことが望ましい。
【0027】請求項20記載の発明では、ノイズデータ
のAD変換前の低周波ノイズは、AD変換前の検出対象
信号及び比較対象値にそれぞれ含まれているものであ
り、その大きさがAD変換の分解能と同等以上であれ
ば、そのノイズの影響を意図的オフセット値の大きさに
より低減することが可能になる。特に、本発明は、請求
項21に記載したようにノイズの大きさ及びAD変換の
分解能がμVオーダーである場合や、請求項22に記載
したようにノイズが10Hz以下の周波数fの1/f或
いは(1/f)n (nは1以上の実数)に比例する低周
波ノイズである場合に有効となる。
【0028】請求項23記載の発明では、除去対象の低
周波ノイズは、AD変換前の検出対象信号及び比較対象
値が増幅回路により増幅される際に、当該検出対象信号
及び比較対象値にそれぞれ付加されるものであり、この
ような低周波ノイズの除去は従来では困難とされていた
が、これをも意図的オフセット値の大きさにより効果的
に除去できることになる。
【0029】前記目的を達成するために、請求項24記
載の発明のようなCMOSセンサ回路を採用できる。こ
のCMOSセンサ回路によれば、信号生成手段(8f)
が、検出対象信号の信号量より大きな値の意図的オフセ
ット信号を発生するようになり、データ演算回路(1
4)は、上記意図的オフセット値の大きさを測定手段
(9)によって測定した意図的オフセット測定値と、前
記検出対象信号に意図的オフセット値を加算した状態の
信号の大きさを上記測定手段(9)によって測定した信
号測定値との比(例えば、信号測定値/意図的オフセッ
ト測定値)を取り、その比をセンサ出力のノイズ低減デ
ータとして利用することによってノイズの低減を図るよ
うになる。
【0030】従って、仮に、検出対象信号に低周波ノイ
ズが重畳した場合であっても、上記意図的オフセット測
定値及び信号測定値のそれぞれに対し同じ低周波ノイズ
が混入することになり、しかも、その意図的オフセット
値は検出対象信号より大きい値に設定されているから、
前記ノイズ低減データに占める低周波ノイズ成分の影響
が相対的に小さくなる。この結果、内部ノイズが大きい
CMOS素子により構成したことに伴って、当該内部ノ
イズのレベルが検出対象信号の最低レベルより大きくな
ることがあっても、低周波ノイズの除去を効果的に行い
得るようになる。つまり、意図的オフセット値が大きな
値になるほど、センサ出力のノイズ低減データに占める
低周波ノイズ成分の影響を低減できるものであり、これ
により、CMOSセンサ回路の検出精度の低下を未然に
防止できることになる。
【0031】請求項25記載の発明のように、前記測定
手段(9)を、意図的オフセット測定値を得るための測
定動作と信号測定値を得るための測定動作とを連続して
行う構成とした場合(測定動作順は問わない)には、低
周波ノイズの大きさが周期的に時間変化する状況下であ
っても、上記意図的オフセット測定値及び信号測定値中
にほぼ等しい大きさの低周波ノイズが混入することにな
る。この結果、意図的オフセット測定値及び信号測定値
との比である前記ノイズ低減データが低周波ノイズの揺
らぎに起因して変動することがなくなって、そのノイズ
低減データに基づいて低周波ノイズを効果的に除去でき
るようになるから、CMOSセンサ回路の検出精度の低
下を確実に防止できるようになる。
【0032】請求項26記載の発明のように、前記測定
手段(9)を、意図的オフセット測定値を得るための測
定動作と信号測定値を得るための測定動作とを、除去対
象とするノイズの周期に対して十分に短い間隔で実行す
る構成とした場合には、除去対象の低周波ノイズの大き
さが周期的に時間変化する状況下であっても、上記意図
的オフセット測定値及び信号測定値中にほとんど同じ大
きさの低周波ノイズが混入することになる。この結果、
意図的オフセット測定値及び信号測定値との比である前
記ノイズ低減データが低周波ノイズの揺らぎに起因して
変動することを抑制できるようになり、CMOSセンサ
回路の検出精度の低下を効果的に防止できるようにな
る。
【0033】この場合、請求項27記載の発明のよう
に、前記測定手段(9)を、意図的オフセット測定値を
得るための測定動作と信号測定値を得るための測定動作
とを、除去対象とするノイズの周期の1/10以下の間
隔で実行する構成とした場合には、意図的オフセット測
定値及び信号測定値中に混入する低周波ノイズの大きさ
を所定レベル以下に確実に抑制できるようになる。この
結果、意図的オフセット測定値及び信号測定値との比で
ある前記ノイズ低減データが低周波ノイズの揺らぎに起
因して変動する可能性が低くなり、CMOSセンサ回路
の検出精度の低下を確実に防止できるようになる。
【0034】請求項28記載の発明のように、前記測定
手段(9)を、意図的オフセット測定値を得るための測
定動作を複数回行うと共に、信号測定値を得るための測
定動作を複数回行う構成とした上で、前記データ演算回
路(14)を、上記複数サンプルずつの意図的オフセッ
ト測定値及び信号測定値の各平均値をそれぞれ演算する
と共に、それら意図的オフセット測定値の平均値及び信
号測定値の平均値の比を前記ノイズ低減データとして利
用する構成とした場合には、複数サンプルずつの意図的
オフセット測定値及び信号測定値を平均化することに伴
う積分効果によって、高周波ノイズの低減をも同時に図
り得るようになる。
【0035】この場合、請求項29記載の発明のよう
に、前記測定手段(9)が、複数サンプルの意図的オフ
セット測定値を得るための複数回の測定動作と複数サン
プルの信号測定値を得るための複数回の測定動作とを、
この順または逆の順で連続的に行う構成とされた場合に
は、当該測定手段(9)において必要となる測定対象の
切り換え動作を1回行うだけ済んで、その切り換え動作
が複雑になる恐れがなくなる。
【0036】請求項30記載の発明のように、前記測定
手段(9)を、意図的オフセット測定値を得るための測
定動作と信号測定値を得るための測定動作とを、この順
または逆の順で連続的に行うサイクルを複数回反復する
構成とすると共に、前記データ演算回路(14)を、こ
のように得た複数サンプルずつの意図的オフセット測定
値及び信号測定値の各平均値をそれぞれ演算すると共
に、それら意図的オフセット測定値の平均値及び信号測
定値の平均値の比を前記ノイズ低減データとして利用す
る構成とした場合にも、複数サンプルずつの意図的オフ
セット測定値及び信号測定値を平均化することに伴う積
分効果によって、高周波ノイズの低減をも同時に図り得
るようになる。特に、この場合には、意図的オフセット
測定値を得るための測定動作と信号測定値を得るための
測定動作とを1単位とした測定が行われる結果、それら
意図的オフセット測定値及び信号測定値中に混入する低
周波ノイズの大きさの一致度が高くなるから、低周波ノ
イズの除去効果が低くなるのに起因してCMOSセンサ
回路の検出精度が低下する恐れがなくなる。
【0037】請求項31記載の発明のように、前記信号
生成手段(8f)を、検出対象信号の信号量の2倍を越
える値に設定された意図的オフセット値を発生する構成
とした場合には、最終的に得られる前記ノイズ低減デー
タに占める低周波ノイズ成分の影響を実用レベル以下に
抑制可能となって、CMOSセンサ回路の検出精度を実
用レベルまで高める得るようになる。
【0038】請求項32記載の発明のように、前記信号
生成手段(8f)を、検出対象信号の信号量の最大値の
10倍以上に設定された意図的オフセット値を発生する
構成とした場合には、最終的に得られる前記ノイズ低減
データに占める低周波ノイズ成分の影響を十分に抑制で
きるようになって、CMOSセンサ回路の検出精度を十
分に高め得るようになる。
【0039】請求項33記載の発明のように、前記信号
生成手段(8f)を、除去対象とするノイズの大きさと
同等以上の値に設定された意図的オフセット値を発生す
る構成とした場合にも、最終的に得られる前記ノイズ低
減データに占める低周波ノイズ成分の影響を実用レベル
以下に抑制することが可能になって、CMOSセンサ回
路の検出精度を実用レベルまで高める得るようになる。
【0040】請求項34記載の発明のように、検出対象
信号を前記測定手段(9)の測定動作に適した状態に変
換する入力回路(8)を備えた上で、前記信号生成手段
(8f)を、上記入力回路(8)とは独立した状態で設
ける構成とした場合には、上記測定手段(9)による意
図的オフセット値の測定動作を、上記入力回路(8)の
状態を変化させずに行うことが可能となるから、ノイズ
除去のための動作の安定度を保ちながらノイズ除去効果
を高め得るようになって、CMOSセンサ回路の検出精
度を向上させ得るようになる。
【0041】請求項35記載の発明のように、前記測定
手段(9)が複数種類の検出対象信号の信号量をそれぞ
れ測定する構成とされる場合に、意図的オフセット測定
値を得るための測定動作タイミングと、複数種類の検出
対象信号にそれぞれ対応した信号測定値を得るための複
数の測定動作タイミングとの各間の平均所要時間が最短
となるような順序で各測定動作を行う構成とした場合に
は、それぞれの測定結果に混入する低周波ノイズの大き
さが互いに等しくなる方向に作用するから、最終的に得
られるノイズ低減データに基づいたノイズ除去効果を高
め得るようになって、CMOSセンサ回路の検出精度を
向上させ得るようになる。
【0042】請求項36記載の発明のように、測定手段
(9)が複数種類の検出対象信号の信号量をそれぞれ測
定する構成とされる場合に、意図的オフセット測定値を
得るための測定動作タイミングと、上記複数種類の検出
対象信号のうちセンサ精度に最も大きな影響をもたらす
信号の測定動作タイミングとの間隔が最短となるような
順序で各測定動作を行う構成とした場合には、センサ精
度に重要な影響をもたらす特定の検出対象信号を含む信
号測定値に混入する低周波ノイズの大きさと、意図的オ
フセット測定値に混入する低周波ノイズの大きさが互い
に等しくなる方向に作用するから、上記特定の検出対象
信号に対するノイズ除去効果を高め得るようになって、
CMOSセンサ回路の検出精度が向上するようになる。
【0043】請求項37記載の発明によれば、入力回路
(8)が、意図的オフセット値、並びに検出対象信号に
意図的オフセット値を加算した状態の信号をそれぞれの
大きさに応じたレベルの電圧信号に変換するようにな
り、このように変換された各電圧信号は、測定手段
(9)内のリングゲート遅延回路(10)に電源電圧と
して与えられるようになる。この測定手段(9)は、リ
ングゲート遅延回路(10)にパルス信号が入力された
ときのパルス信号周回数に基づいて、当該リングゲート
遅延回路(10)に電源電圧として与えられた各電圧信
号、つまり、前記意図的オフセット値と、前記検出対象
信号に意図的オフセット値を加算した状態の信号とをそ
れぞれデジタルデータより成る意図的オフセット測定値
及び信号測定値に変換するようになる。
【0044】このようなリングゲート遅延回路(10)
を利用したAD変換回路にあっては、小規模な回路によ
り高分解能で尚且つきわめて広いAD変換範囲が得られ
るため、意図的オフセット値を十分に大きな値に設定し
ても全く支障がなくなり、結果的にCMOSセンサ回路
の検出精度を大幅に高める構成を容易に実現可能になる
ものである。さらに、上記リングゲート遅延回路(1
0)を利用した測定手段(9)にあっては、AD変換速
度の大幅な向上を実現できるという利点があるため、測
定対象を切り換える動作を高速で行うことができるよう
になる。この結果、意図的オフセット測定値及び信号測
定値中に混入する低周波ノイズの大きさが、その揺らぎ
に起因して互いに異なる値となる事態を確実に防止可能
となって、前述した低周波ノイズの除去機能を確実に発
揮できるようになる。また、測定手段(9)が複数種類
の検出対象信号の信号量をそれぞれ測定する構成とされ
る場合にも、その測定対象の切り換え動作を高速で行う
ことができるから、このような検出対象信号のマルチ化
にも容易に対処可能となる。
【0045】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、本発
明の第1実施例につき図1ないし図11を参照しながら
説明する。図1は、本発明の基本原理を説明するための
特性図であり、センサ用トランスジューサからの検出対
象信号sigの信号量(例えば電圧レベル)が、0から
最大値max(この最大値をsigmとする)までの範
囲で直線的に変化する例が示されている。この場合、検
出対象信号sigに重畳するノイズを除去するための補
正処理を行うときには、意図的オフセット値(検出対象
信号sigよりも大きな基準値)を予め設定するもので
あり、その意図的オフセット値を、検出対象信号sig
の信号量測定のために設けられた測定手段により測定し
た結果が、意図的オフセット測定値aとして図示されて
いる。また、本来の検出対象である上記検出対象信号s
ig(0〜max)に上記意図的オフセット値を加算し
た状態の信号の大きさを前記測定手段により測定した結
果が、信号測定値bとして示され、その最大値がbm
(=sigm+a)として図示されている。さらに、信
号処理系統でのオフセットノイズがeとして図示されて
いる。
【0046】この場合、上記補正処理を行う際に、意図
的オフセット値の測定動作と、検出対象信号sig及び
意図的オフセット値の加算信号の測定動作とを、十分に
短い間隔で行う構成とすれば(オフセットノイズeが直
流成分(例えば製造工程のばらつきに起因するもの)で
ある場合には、このような構成は不要である)、当該ノ
イズeは、意図的オフセット値a及び信号測定値bのそ
れぞれに対して等しいレベルで混入するものと考えられ
る。
【0047】そこで、ノイズeが混入した意図的オフセ
ット測定値a及び信号測定値bを、それぞれa′(=a
+e)、b′(=b+e)とした場合、これら各測定値
a′及びb′の比(具体的には測定値a′に対するb′
の割合)をノイズ低減データとしての補正用データS′
(=b′/a′)とするものであり、検出対象信号si
gの最大値sigmに対する補正用データS′はb′m
/a′となる。但し、b′mはノイズeが混入した状態
の信号測定値b′の最大値である。尚、ノイズeがない
理想的なデータ比をS(=b/a)とする。
【0048】そして、最終的に得られるデータから意図
的オフセット値に相当した割合を示すデータ(例えば、
a=b(つまり、sig=0)の場合は、「1」)を差
し引くことにより真の信号成分sigが得られるもので
あり、このときのノイズeの影響は、e/aに軽減され
ることになり、以てノイズ除去効果が得られるようにな
る。
【0049】図2は、低周波のノイズeに対する前記意
図的オフセット値、検出対象信号sig及び意図的オフ
セット値の加算信号の各測定動作のタイミングの一例を
示す信号波形図である。ここでは、ノイズe=e1が混
入した意図的オフセット測定値aをa′(=a+e1)
で示し、ノイズe=e2が混入した信号測定値bをb′
(=b+e2)で示している。また、以下の説明では、
ノイズeの最大値をemとする(検出対象信号sig及
び信号測定値bの各最大値は、前述したようにそれぞれ
sigm及びbmである)。
【0050】図2に示すように、ノイズeは低周波で変
化しているため、意図的オフセット値の測定動作と、検
出対象信号sig及び意図的オフセット値の加算信号の
測定動作とを、低周波ノイズであるノイズeの周期より
十分に短い間隔tiで行う構成とすれば、当該ノイズe
を一定値(e=e1=e2)と見なすことができる。こ
のため、前述したように、a′=a+e、b′=b+e
と表現できる。
【0051】以下、上述のような前提を踏まえて、意図
的オフセット値を利用したノイズ低減のための補正処理
について説明する。即ち、ノイズeが混入した意図的オ
フセット測定値a′と、ノイズeが混入した信号測定値
b′の比である補正用データS′は、 S′=b′/a′=(b+e)/(a+e) ……(1) となる。ここで、ノイズeが零のときの比を理想比S
(=b/a)と定義した場合、この定義により得られる
b=S・aの関係を式(1)に代入して整理すると、 S′=S/(1+e/a)+1/(1+a/e) ……(2) となる。
【0052】従って、e/aが零に近づくほど(a/e
は大きくなる)、補正用データS′が理想比Sに近づき
誤差が小さくなった状態、つまりノイズ除去効果が大き
い状態を呈するようになる。或いは、S′−Sの値が零
に近いほど誤差が小さくなるという観点から、誤差εa
をS′−Sと定義してこれを求めると、 εa=S′−S=(1−S)/{1+(a/e)} ……(3) の関係が得られる。従って、理想比Sが「1」に近いほ
ど誤差εaが小さくなるものであり、また、式(2)か
ら得られる結論と同様に、a/eが大きいほど(e/a
が小さいほど)誤差軽減効果が高くなることが分かる。
【0053】また、誤差軽減効果の指標として、誤差率
εrを理想比Sの最大変化率(Sm−S0)に対する誤
差εaと定義すると(Sm=bm/a=(sigm+
a)/a、S0はsig=0のときのb/aであり
「1」)、 εr=εa/(Sm−S0) となり、これに上記式(3)を代入して整理すると(但
し、Sm−S0=sigm/a)、次式(4)が得られ
る。
【0054】 εr=(1−S)・(1/sigm)・ [1/ {( 1/e) + (1/a)}] ……(4) この式(4)において、e《aの関係にあれば、1/a
をほぼ零と見なすことができるから、 εr=(1−S)・e/sigm ……(5) となる。
【0055】式(5)におけるe/sigmは、補正処
理がないときの誤差率と言えるため、意図的オフセット
値を設定する本実施例の補正処理を適用する場合には、
(1−S)の値によって、誤差率εrの大きさ、ひいて
はセンサ回路のSN比の改善率が決まることになる。
【0056】以上要するに、検出対象信号sigに重畳
するノイズの軽減効果を実効性あるものにするために
は、意図的オフセット値の大きさが、その検出対象信号
sigの振幅レベル及びノイズレベルに対して十分に大
きいことが必要なってくる。換言すれば、意図的オフセ
ット値が相対的に小さい状態では、Sが「2」以上の値
になる場合があるが、このような場合には、式(5)か
ら明らかなように、(1−S)の絶対値が「1」以上と
なって、誤差率εrが拡大することになるため、ノイズ
軽減効果を全く期待できない。また、除去対象の低周波
ノイズは、その大きさがゆっくりではあるが変動するた
め、意図的オフセット測定値aのための測定動作と信号
測定値bのための測定動作との間隔が大きくなると、各
測定値a及びbに混入するノイズeの大きさを互いに等
しいと見なせなくなるので、十分なノイズ除去効果を期
待できなくなる。従って、上記各測定動作の間隔を必要
に応じて極力短い時間に設定することが重要になってく
る。
【0057】具体的には、検出対象信号sigをデジタ
ルデータとして測定して処理する回路構成とする場合
に、その検出対象信号sigの最大値sigmが「10
000」のとき(sig=0〜10000)、意図的オ
フセット測定値aが例えばsigmの10倍の「100
000」となるような意図的オフセット値を設定すれ
ば、その意図的オフセット値を含んだ検出対象信号si
gの最大値sigmを測定した信号測定値bm(=b)
は「110000」となる。
【0058】このとき、ノイズeの最大値emを「10
0」と仮定し、且つ上述した各測定動作の間隔が十分に
短い状態とした場合、つまり、 S=b/a=bm/a=1.1 e/a=em/a=0.001 e1=e2=e とした場合には、意図的オフセット値を利用した補正処
理を行わないときの誤差率ε′は、 ε′=e/sigm=100/10000=0.01
(=1%/FS) となる。つまり、検出対象信号sigのフルスケールに
対して、1/100の誤差を生ずることになる。
【0059】これに対して、意図的オフセット値を利用
した補正処理を行う場合には、式(5)にS=1.1を
代入することにより、 εr=(1−1.1)・100/10000 =−0.001(=0.1%/FS) となる。つまり、検出対象信号sigのフルスケールに
対して、1/1000の誤差で済むことになり、当該補
正処理を行わない場合に比べて1/10に減少すること
になる。
【0060】尚、上述の説明では、意図的オフセットa
に対して、検出対象信号sigをそのまま加算する例を
挙げたが、意図的オフセット値に対して、検出対象信号
sigの±1/2の値を加算することにより、全体とし
ての誤差率を低減することも可能であり、意図的オフセ
ット値に対する検出対象信号sigの加算状態を選択す
ることにより、最適な誤差軽減効果を得ることが可能に
なるものである。
【0061】また、図3には、S=1.1、e=100
の条件下で、意図的オフセット測定値aと検出対象信号
sigの最大値sigmを種々変えたときのe/aの
値、補正処理を行ったときの誤差率、補正処理を行わな
かったときの誤差率を示す。この図3からは、補正処理
を行った場合には、誤差率の改善効果が1桁オーダーに
達することが分かるものであり、センサ回路のSN比を
1桁オーダーで向上させ得ることになる。この場合、一
般的には、S(=b/a)の値が「2」未満であれば、
誤差率εrが実用に供し得るレベル以下に減少して、補
正処理の効果が現れるものであり、「1.1」以下(意
図的オフセット値の大きさが検出対象信号sigの最大
値の10倍以上の状態:e《a)であれば、e/aの割
合でセンサ回路のSN比が改善されることになる。従っ
て、誤差レベル(オフセットノイズレベル)が一定であ
れば、意図的オフセット値を大きな値とすることによ
り、より大きなSN比改善効果を期待できる。
【0062】要するに、検出対象信号sigより大きな
値の意図的オフセット値を予め設定しておき、その意図
的オフセット値を利用して得た補正用データS′(=
b′/a′)を利用して上述のような補正処理を行った
場合には、検出対象信号sigに低周波ノイズeが重畳
した場合であっても、意図的オフセット測定値a及び信
号測定値bのそれぞれに対し同じ低周波ノイズ成分が混
入することになり、しかも、その意図的オフセット値
は、上記のように検出対象信号sigのレベルより大き
い値に設定されているから、補正用データS′に占める
低周波ノイズ成分の影響が相対的に小さくなる。
【0063】この結果、CMOS素子のような内部ノイ
ズが大きい素子を利用した回路構成とした場合におい
て、当該内部ノイズのレベルが検出対象信号sigの最
低レベルよりも大きい値となったとしても、低周波ノイ
ズの除去を効果的に行い得るようになる。これにより、
意図的オフセット値が大きな値になるほど、センサ出力
の補正用データS′に占める低周波ノイズ成分の影響を
低減できるものであり、その結果としてセンサ回路の検
出精度の低下を未然に防止できることになる。このと
き、意図的オフセット値の大きさを、検出対象信号si
gの信号量(ここでは電圧値)の2倍を越える値に設定
すれば、最終的に得られる補正用データS′に占める低
周波ノイズ成分の影響を実用レベル以下に抑制すること
が可能になり、また、意図的オフセット値の大きさを、
検出対象信号sigの信号量の最大値の10倍以上に設
定した場合には、上記補正用データS′に占める低周波
ノイズ成分の影響を十分に抑制できるようになり、セン
サ回路の検出精度を大幅に高め得るものである。さら
に、意図的オフセット値の大きさを、除去対象とするノ
イズeの大きさと同等以上の値に設定した場合にも、最
終的に得られる補正用データS′に占める低周波ノイズ
成分の影響を実用レベル以下に抑制することが可能にな
るものである。尚、信号増幅回路内に存在するオフセッ
ト電圧などの経時変化に起因したノイズも一種の低周波
ノイズ(超低周波ノイズ)であるから、このようなノイ
ズを上述のようなノイズ除去方法により取り除き得るこ
とは自明である。
【0064】つまり、検出対象信号sigと除去対象の
ノイズの周波数帯域が同じ場合には、常識的には従来の
一般的なフィルタではSN比の改善は不可能であるが、
上述したような検出対象信号sigより大きな値の意図
的オフセット値を設定して行う補正処理によれば、従来
不可能と考えられてきたノイズ除去を確実に行い得るよ
うになるという画期的な効果を奏するものである。
【0065】一方、前述したように、意図的オフセット
値の測定動作と、検出対象信号sig及び意図的オフセ
ット値の加算信号の測定動作とを、低周波ノイズである
ノイズeの周期より十分に短い間隔tiで行う構成とす
る場合、例えば、各測定動作を連続して行う構成、或い
は各測定動作タイミングの間隔を除去対象とするノイズ
の周期に対して十分に短い間隔となるように構成とすれ
ば、検出対象信号sigに重畳するノイズ(低周波ノイ
ズ)の大きさが周期的に時間変化する状況下であって
も、意図的オフセット測定値a及び信号測定値b中にほ
ぼ等しい大きさの低周波ノイズが混入することになっ
て、意図的オフセット測定値a及び信号測定値bとの比
である前記補正用データS′が低周波ノイズの揺らぎに
起因して変動してしまうことがなくなり、その補正用デ
ータS′に基づいて低周波ノイズを効果的に除去可能に
なる。特に、各測定動作タイミングの間隔を、除去対象
とするノイズの周期の1/10以下の間隔となるように
設定した場合には、意図的オフセット測定値a及び信号
測定値b中に混入する低周波ノイズの大きさを所定レベ
ル以下に確実に抑制できるようになって、低周波ノイズ
を確実に除去できるようになる。
【0066】また、検出対象信号sigに重畳するノイ
ズを除去する方法としては、その検出対象信号sigが
基準値(例えば零、但し、正確に零でなくても確定した
値が設定できれば良い)にあるときのオフセットノイズ
を測定した後に、直ちに検出対象信号sigの値を測定
し、その測定値から上記オフセットノイズ分を減算する
という方法が考えられる。しかしながら、実際のセンサ
回路においては、上記基準値を正確な値として準備する
ことが非常に難しいため、sig=基準値のときのオフ
セットノイズを正しく測定することが困難になり、ノイ
ズ除去効果が不十分になることが避けられない。また、
基準値を準備するためには、その基準値のための信号源
の他に、当該信号源を選択的に有効化するための手段が
必要(検出対象によってはアクチュエータやメカニカル
なスイッチが必要になる場合がある)になるため、コス
トの低減や小型化が不可能になるという重大な問題点も
あり、このようなノイズ除去方法は実現不可能と言え
る。従って、このような問題点が全くない本実施例によ
るノイズ除去方法は、実用上においてきわめて有用とな
るものである。
【0067】特に、CMOS素子を利用したアナログセ
ンサ回路においては、1/fノイズに起因した内部ノイ
ズ(低周波ノイズ)が存在するという事情がある。この
ため、検出対象信号sigに重畳するノイズレベルを小
さくすることを目的として、上記1/fノイズの発生を
抑制するために回路面積(チップ面積)を大きくするこ
とが行われているが、実質的には、そのコスト及びサイ
ズの制約があるためノイズレベルの低減を十分に図るこ
とが困難であった。これに対して、本実施例によるノイ
ズ除去方法によれば、上記のような1/fノイズに起因
した低周波ノイズの除去にも有用であるため、CMOS
センサ回路に適用した場合でも、その検出精度の向上に
寄与できるようになる。これにより、CMOSデジタル
回路との組み合わせ構成も容易に実現できるため、セン
サ回路のスマート化にも大きな可能性をもたらすものと
なる。さらに、このようにCMOSデジタル回路との組
み合わせ構成を採用したセンサ回路においては、プロセ
ス技術の微細化に連動した全体の小型化が容易であるた
め、そのコストダウン及び小型化に大きな優位性をもた
らすものとなる。
【0068】さて、本実施例によるノイズ除去方法は、
概念的にはアナログ信号処理を行う場合及びデジタル信
号処理を行う場合の何れにも適用できる。しかし、実際
には、アナログ信号処理の場合、入力信号レベルの有効
範囲が意図的オフセット値に相当した電圧範囲分だけ失
われる(例えば、5V電源を使用したアナログ信号処理
回路において、意図的オフセット値が検出対象信号si
gの最大値の10倍の値に設定された場合、信号有効範
囲が本来0〜5Vであったものが0〜0.45V程度に
制限される)ため、デジタル信号処理の適用が望ましい
ものとなる。
【0069】そこで、以下においては、デジタル信号処
理を行う場合の具体化例を説明する。まず、前記式
(3)及び(5)から、理想比Sが「1」に近いほど、
つまり意図的オフセット値(意図的オフセット測定値
a)が検出対象信号sigのレベル(最大変化幅)に対
して大きいほどSN比改善効果が大きくなり、また、意
図的オフセット値がノイズeの振幅に対してより大きい
ときにSN比改善効果が大きくなることが分かる。
【0070】従って、意図的オフセット値をでき得る限
り大きくすることが望ましいものであり、そのために必
要な条件としては、測定手段に用いられるAD変換回路
として、『分解能が十分に高く、且つ測定範囲が広い』
ものを使用することが挙げられる。つまり、デジタル信
号処理に必要なAD変換回路の機能として、信号有効範
囲が小さくても必要ビット数でAD変換できること、及
びその信号有効範囲より十分に大きい値に設定された意
図的オフセット値の対応範囲をカバーしてAD変換でき
ることが必要条件となっている。
【0071】例えば、AD変換回路において、その信号
検出分解能が一般的なレベルである10ビット必要な場
合、14ビット以上のダイナミックレンジが要求され
る。このような要求を満たし得るAD変換器としては、
ΔΣ変調型AD変換器(ΣΔ Analog to Digital Conve
rter)があるが、このものでは、過去のデータを順次保
持する必要があるため、意図的オフセット測定値aを得
るための測定動作と、信号測定を得るための測定動作と
の切り換えを高速で行うことが困難になるという問題点
がある。また、この問題点に対処するために、2系統の
ΔΣ変調型AD変換器を用いる構成も考えられるが、こ
の構成では、前段のアンプなどを共有化する必要があっ
て、上記データ保持機能などの制御が複雑なるという新
たな問題点が出てくるものであり、しかも回路規模も約
2倍になって低コスト化が困難になる。
【0072】このような問題点を一掃するためには、特
開平5−259907号公報に記載されたA/D変換回
路(以下、これをセンサ用AD変換回路と呼ぶ)を適用
すれば良い。このセンサ用AD変換回路の変換特性は、
概略的には図4に示す状態となっている。この図4にお
いては、意図的オフセット値に対応した入力電圧を2V
(sig=0のポイント)、検出対象信号sigの変動
範囲(0〜sigm)を100mV(一般的なセンサ
(エレメント)回路(例えばピエゾ抵抗式ブリッジ回
路)の最大出力電圧に相当)としている。上記センサ用
AD変換回路は、その電圧分解能が10μVときわめて
高いため、検出対象信号sigの成分を例えば1000
0分割(分解能14ビット相当)することができ、同時
に、意図的オフセット値の成分を例えば100000分
割(分解能17ビット相当)することができる。また、
このセンサ用AD変換回路は、過去のデータを保持する
必要がないため、複数系統の入力信号がある場合でも、
それら入力信号の測定動作の切り換えに容易且つ迅速に
対処可能であり、しかも、デジタル回路のみで構成でき
ると共に回路規模も小さくて済むため、低コスト化及び
小型化に適するという利点もある。
【0073】図5には、上記センサ用AD変換回路を利
用してノイズ除去を行う信号処理回路の構成が概略的な
機能ブロック図により示されている。尚、図5のデジタ
ル演算回路は、後述する図6におけるスタックメモリ1
2と補正演算回路14(データ演算回路)に相当するも
のである。この図5の構成では、まず、アナログスイッ
チにより、意図的オフセット値に対応した電圧値の入力
信号と、検出対象信号sigに当該意図的オフセット値
を加算した電圧値に対応した入力信号を所定順に選択
し、選択された信号をセンサ用AD変換回路で順次AD
変換する。このようなAD変換動作によって、それぞれ
ノイズe(直流ノイズを含む)が混入した状態の意図的
オフセット測定値a′及び信号測定値b′が得られるも
のであり、上記両測定値a′及びb′は、後段のデジタ
ル演算回路に転送されてレジスタに蓄積される。このデ
ジタル演算回路では、補正用データS′(=b′/
a′)を求めるための補正演算を除算器において行うも
のであり、その補正用データS′に基づいた信号処理に
よりノイズ除去が実行される。尚、上記のようなデジタ
ル演算は、マイクロコンピュータなどの汎用回路を利用
して行うことも可能であり、また、センサ用AD変換回
路と同一チップに形成した専用のデジタル演算回路を設
けることも可能である。
【0074】しかして、以下においては、本発明をCM
OSセンサ回路として構成された半導体圧力センサに適
用した具体例について、図6ないし図8を参照しながら
説明する。
【0075】全体の電気的構成を示す図6において、本
実施例による半導体圧力センサ装置は、圧力検出用のセ
ンサ部1と、このセンサ部1からの出力を処理するため
のCMOSICチップより成る信号処理部2とを備えた
構成となっており、これらセンサ部1及び信号処理部2
は、異なる半導体チップ上に分離した状態で形成されて
いる。尚、センサ部1及び信号処理部2を同一半導体チ
ップ上に形成することによりメリットが出せる場合に
は、必ずしも異なる半導体チップ上に分離した状態で形
成する必要はない。
【0076】センサ部1は、ピエゾ抵抗係数が大きな半
導体チップ(例えばシリコン単結晶基板)を利用して形
成されたもので、圧力検出用ブリッジ回路3と、この圧
力検出用ブリッジ回路3の温度を検出するための温度検
出用ブリッジ回路4とにより構成されている。
【0077】これらのうち、圧力検出用ブリッジ回路3
は、半導体チップに設けたダイヤフラム上に拡散抵抗に
より形成した抵抗素子Rd1、Rd2、Rd3、Rd4を図示の
ようにブリッジ接続して成るもので、印加圧力の増大に
応じて各抵抗素子Rd1、Rd2、Rd3、Rd4の抵抗値が図
6に矢印で示す態様(上向きの矢印は抵抗値が増加する
ことを示し、下向きの矢印は抵抗値が減少することを示
す)で変化する構成となっている。また、圧力検出用ブ
リッジ回路3の入力端子P1及びP2間には、定電圧電
源端子+Vccから一定電圧が印加されるようになってい
る。
【0078】従って、圧力検出用ブリッジ回路3の一方
の出力端子Q1(抵抗素子Rd1及びRd2の共通接続点)
の電位は印加圧力の増大に応じて上昇し、また、他方の
出力端子Q2(抵抗素子Rd3及びRd4の共通接続点)の
電位は印加圧力の増大に応じて低下するものであり、出
力端子Q1及びQ2間からは、印加圧力に応じた電圧レ
ベルの検出信号Sdが出力されることになる。尚、上記
検出信号Sdは、圧力検出用ブリッジ回路3の温度にも
依存して変動するものであり、斯様な温度ドリフト除去
用のデータを得るために前記温度検出用ブリッジ回路4
が設けられている。
【0079】この温度検出用ブリッジ回路4は、拡散抵
抗(温度係数は1500〜1700ppm/℃程度)により
形成された感温抵抗素子Rt1、Rt2と、温度係数が零に
近い材料である例えばCrSiにより形成された抵抗素
子Rc1、Rc2とを図示のようにブリッジ接続することに
より構成されている。また、温度検出用ブリッジ回路4
の入力端子P3及びP4間にも、定電圧電源端子+Vcc
から一定電圧が印加されるようになっている。
【0080】従って、温度検出用ブリッジ回路4の一方
の出力端子Q3(感温抵抗素子Rt1及び抵抗素子Rc1の
共通接続点)の電位は検出温度の上昇に応じて上昇し、
また、他方の出力端子Q4(感温抵抗素子Rt2及び抵抗
素子Rc2の共通接続点)の電位は検出温度の低下に応じ
て低下するものであり、出力端子Q3及びQ4間から
は、圧力検出用ブリッジ回路3の温度に応じた電圧レベ
ルの温度信号Stが出力されることになる。
【0081】一方、前記信号処理部2は、半導体チップ
上に以下に述べるような各回路要素を形成した構成とな
っている。基準電圧発生回路5は、拡散抵抗により形成
した抵抗素子Ra1及びRa2を備えたもので、それら抵抗
素子Ra1及びRa2の直列回路を定電圧電源端子+Vcc及
びグランド端子間に接続した構成となっている。この場
合、抵抗素子Ra1及びRa2の温度係数は厳密に一致する
ものであり、従って、基準電圧発生回路5の出力端子Q
5(抵抗素子Ra1及びRa2の共通接続点)からは、前記
圧力検出用ブリッジ回路3に作用する圧力(被検出圧
力)及び当該ブリッジ回路3の温度と無関係に一定の電
圧レベルとなる基準信号Saが出力されることになる。
尚、この基準電圧発生回路5は、前記センサ部1側の半
導体チップ上に形成することも可能である。
【0082】アナログマルチプレクサ6は、上記圧力検
出用ブリッジ回路3からの検出信号Sd、温度検出用ブ
リッジ回路4からの温度信号St、基準電圧発生回路5
からの基準信号Saを、後述する制御ブロック7から与
えられるセレクト信号に基づいて選択出力するためのも
のである。
【0083】高入力インピーダンス差動増幅回路8(本
発明でいう入力回路に相当)は、MOSFET入力タイ
プのオペアンプ8a、8b及び抵抗8c、8d、8eを
組み合わせて成る周知構成のもので、前記アナログマル
チプレクサ6から順次出力される信号を増幅し、これを
AD変換回路9(本発明でいう測定手段に相当)に与え
るようになっている。この場合、差動増幅回路8には、
その増幅出力電圧に対して前述した意図的オフセット値
を付加するための定電圧電源8f(本発明でいう信号生
成手段に相当)及び抵抗8gが、当該差動増幅回路8と
は独立した回路素子として設けられている。
【0084】尚、検出信号Sd及び温度信号Stを差動
増幅回路8により増幅した信号が、本発明でいう検出対
象信号に相当するものである。また、実際には、基準信
号Saを差動増幅回路8により増幅した一定電圧レベル
の信号に上記意図的オフセット値を付加した信号が、真
の意図的オフセット値に相当するものである。上記意図
的オフセット値の大きさは、前述したように、検出対象
信号に対して2倍以上に設定することで実用レベルのノ
イズ低減効果が得られ、その最大値の10倍に設定する
ことで90%程度のノイズ軽減効果が得られるものであ
る。尚、差動増幅回路8の電源は、定電圧電源端子+V
ccから与えられるようになっている。
【0085】上記AD変換回路9は、基本的には特開平
5−259907号公報に記載されたA/D変換回路と
同様構成のものであり、詳細には図示しないが、反転動
作時間が電源電圧に応じて変化するNANDゲート10
a(本発明でいう反転回路に相当)と、同じく反転動作
時間が電源電圧に応じて変化する偶数個のインバータ1
0b(同じく本発明でいう反転回路に相当)とをリング
状に連結して成るリングゲート遅延回路10(以下の説
明では、リングゲート遅延回路をRGD(RingGate Del
ay )と略称する)、このRGD10内でのパルス信号
の周回数をカウントするための周回数カウンタ11、こ
の周回数カウンタ11の計数値を上位ビットとし、且つ
RGD10内の各インバータ10bの出力を下位ビット
として格納するためのスタックメモリ12などを含んで
構成されている。
【0086】このような構成のAD変換回路9による変
換原理の大略は以下の通りである。即ち、RGD10内
のNANDゲート10aに対し、図7に示すようなパル
ス信号PAを与えると、NANDゲート10a及び各イ
ンバータ10bがその電源電圧に応じた速度で逐次的に
反転動作を開始して、そのパルス信号PAの入力期間中
は信号周回動作が継続して行われるものであり、斯様な
パルス信号周回数を示す二進数のデジタルデータが、ス
タックメモリ12に対しリアルタイムで与えられること
になる。この後、図7に示すように、一定のサンプリン
グ周期Δt(例えば〜100μ秒)を得るためのパルス
信号PBの立上がり毎にスタックメモリ12をラッチす
れば、そのスタックメモリ12内の各ラッチデータの差
に基づいて、インバータ10bに与えられている電源電
圧を二進数のデジタルデータに変換した値が得られるよ
うになる。
【0087】この場合、RGD10内のNANDゲート
10a及びインバータ10bには、前記差動増幅回路8
から電源電圧が与えられる構成となっている。従って、
AD変換回路9にあっては、差動増幅回路8からの出力
信号、つまり、アナログマルチプレクサ6を通じて選択
出力される検出信号Sd、温度信号St及び基準信号S
aをそれぞれ増幅した各電圧信号をデジタルデータに変
換することになる。尚、上記各信号Sd、St、及びS
aを増幅した各信号には、定電圧電源8fによって同じ
大きさの意図的オフセット値が付加されている。
【0088】尚、以下においては、AD変換回路9によ
る変換データのうち、検出信号Sdに対応したデジタル
データを圧力情報D、温度信号Stに対応したデジタル
データを温度情報T、基準信号Saに対応したデジタル
データを基準情報Aと呼ぶことにする。この場合、基準
情報Aは、一定レベルの基準信号Saを増幅した信号に
一定値の意図的オフセット値を付加した信号の電圧レベ
ルを測定した結果に対応したものであり、実質的に前述
した意図的オフセット測定値aに相当するものである。
また、圧力情報D及び温度情報Tは、2種類の検出対象
信号である検出信号Sd及び温度信号Stを増幅した信
号に上記意図的オフセット値を付加した信号の電圧レベ
ルを測定した結果に対応したものであり、前述した信号
測定値bに相当するものである。
【0089】ここで、圧力情報Dと圧力検出用ブリッジ
回路3に対する印加圧力Pとの間には次式のような関
係がある。 D={(ct+d)×P+kt+f}×β(t) …… 但し、t:圧力検出用ブリッジ回路3の温度 c:圧力検出用ブリッジ回路3の感度の温度係数 d:圧力検出用ブリッジ回路3の室温感度 k:圧力検出値のオフセットの温度係数 f:圧力検出値の室温オフセット値 また、β(t)は、差動増幅回路8の温度特性やRGD
10の遅延時間の温度特性などに依存した非線形項であ
り、これが圧力検出値の精度劣化の要因となるものであ
る。
【0090】上記式からPの解を得るためには、tが
必要であり、また、非線形の係数であるβ(t)を除去
する必要がある。このため、温度検出用ブリッジ回路4
を通じて温度情報Tを得ると共に、基準電圧発生回路5
を通じて基準情報Aを得るようにしている。
【0091】この場合、温度情報Tと圧力検出用ブリッ
ジ回路3の温度tとの間には次式のような関係が存在
するものである。 T=(δt+q)×β(t) …… 但し、δ:温度検出値の温度係数 q:温度検出値の室温オフセット値
【0092】また、基準情報Aは、圧力検出用ブリッジ
回路3に作用する圧力及び温度と無関係に一定の電圧レ
ベルとなる基準信号Saを、差動増幅回路8により増幅
し且つAD変換回路9によりデジタル変換したデータで
あるから、次式が成立することになる。 A=β(t) ……
【0093】上記式、を用いてPについて解くと、
非線形項β(t)が削除された状態の次式が得られ
る。 P={(T/A−q)×(−k/δ)+D/A−f} /{(T/A−q)×c/δ+d} …… EPROM13には、式に基づいた圧力Pの演算に必
要な係数δ、q、c、d、k、fが補正係数として予め
記憶されている。
【0094】ここで、前にも述べたように、Aは意図的
オフセット測定値aに相当し、D及びTはそれぞれ信号
測定値bに相当するものであり、式においては、T/
A、D/Aにより意図的オフセット値を含んだもの同士
の比を取っており、従って、前述したような原理によ
り、低周波ノイズ(直流ノイズを含む)の低減が実現さ
れている。尚、参考までに、低周波ノイズとAD変換回
路9の分解能を例示しておくと、低周波ノイズは数〜数
十μV、AD変換回路9の分解能も同様に数〜数十μV
であり、両者ともμVオーダーといえる。また、除去対
象の低周波ノイズは、10Hz以下ではノイズ周波数f
の1/fに比例したものに限らず、(1/f)n (nは
1以上の実数)に比例するノイズも含まれるものであ
る。
【0095】補正演算回路14(本発明でいうデータ演
算回路に相当)は、上記式を利用した圧力Pの演算
を、制御ブロック7からの指令を受けて行うものであ
り、その演算時には、スタックメモリ12から読み出し
た圧力情報D、温度情報T及び基準情報A、並びにEP
ROM13から読み出した補正係数(δ、q、c、d、
k、f)を使用する構成となっている。そして、補正演
算回路14による演算結果は、センサ部1による検出圧
力を示す圧力データとしてI/Oブロック15から出力
される。
【0096】さて、図8には、制御ブロック7による制
御内容が概略的に示されており、以下これについて関連
した作用と共に説明する。即ち、制御ブロック7は、ま
ず、アナログマルチプレクサ6に対して、圧力検出用ブ
リッジ回路3からの検出信号Sdを選択するためのセレ
クト信号を出力する(ステップS1)。すると、差動増
幅回路8から上記検出信号Sdを増幅した電圧信号(こ
れには意図的オフセット値が含まれる)が出力されるよ
うになり、この電圧信号が、AD変換回路9内のRGD
10に対しAD変換対象信号として印加される。
【0097】この後、制御ブロック7は、パルス信号P
A及びPBの出力制御ルーチンS2を実行する。このル
ーチンS2では、図7に示す時刻t1〜t2の期間中に
おいてパルス信号PAを出力すると共に、その時刻t1
後においてパルス信号PBを図7に示すようなタイミン
グ(具体的には、時刻t1〜t2の期間において4回立
ち上がる状態)で出力する。
【0098】これにより、パルス信号PAの出力期間中
において、RGD10内で信号周回動作が継続して行わ
れると共に、パルス信号PBの立上がり毎にスタックメ
モリ12がラッチされるものであり、そのラッチデータ
の差(例えば3回目の立ち上がりと4回目の立ち上がり
における各ラッチデータの差)に基づいて、差動増幅回
路8からの電圧信号(検出信号Sdを増幅した電圧信
号)に応じたデジタルデータが圧力情報Dとして得られ
るようになる。
【0099】制御ブロック7は、上記出力制御ルーチン
S2の実行に応じて圧力情報Dを取り込んだ後には、ア
ナログマルチプレクサ6に対して、基準電圧発生回路5
からの基準信号Saを選択するためのセレクト信号を出
力する(ステップS3)。すると、差動増幅回路8から
上記基準信号Saを増幅した電圧信号(これには意図的
オフセット値が含まれる)が出力されるようになり、こ
の電圧信号が、AD変換回路9内のRGD10に対しA
D変換対象信号として印加される。
【0100】この後、制御ブロック7は、パルス信号P
A及びPBの出力制御ルーチンS4を実行する。このル
ーチンS4では、図7に示す時刻t3〜t4の期間中に
おいてパルス信号PAを出力すると共に、その時刻t3
後においてパルス信号PBを図7に示すようなタイミン
グで出力する。
【0101】これにより、パルス信号PAの出力期間中
において、RGD10内で信号周回動作が継続して行わ
れると共に、パルス信号PBの立上がり毎にスタックメ
モリ12がラッチされるものであり、そのラッチデータ
の差に基づいて、差動増幅回路8からの電圧信号(基準
信号Saを増幅した電圧信号)に応じたデジタルデータ
が基準情報Aとして得られるようになる。
【0102】制御ブロック7は、上記出力制御ルーチン
S4の実行に応じて基準情報Aを取り込んだ後には、ア
ナログマルチプレクサ6に対して、温度検出用ブリッジ
回路4からの温度信号Stを選択するためのセレクト信
号を出力する(ステップS5)。すると、差動増幅回路
8から上記温度信号Stを増幅した電圧信号(これには
意図的オフセット値が含まれる)が出力されるようにな
り、この電圧信号がAD変換回路9内のRGD10に対
しAD変換対象信号として印加される。
【0103】この後、制御ブロック7は、パルス信号P
A及びPBの出力制御ルーチンS6を実行する。このル
ーチンS6では、図7に示す時刻t5〜t6の期間中に
おいてパルス信号PAを出力すると共に、その時刻t5
後においてパルス信号PBを図7に示すようなタイミン
グで出力する。
【0104】これにより、パルス信号PAの出力期間中
において、RGD10内で信号周回動作が継続して行わ
れると共に、パルス信号PBの立上がり毎にスタックメ
モリ12がラッチされるものであり、そのラッチデータ
の差に基づいて、差動増幅回路8からの電圧信号(温度
信号Stを増幅した電圧信号)に応じたデジタルデータ
が温度情報Tとして得られるようになる。
【0105】制御ブロック7は、上記出力制御ルーチン
S6の実行後には、補正演算回路14に対して演算指令
を出力する(ステップS7)。すると、補正演算回路1
4にあっては、スタックメモリ12から読み出した圧力
情報D、温度情報T及び基準情報A、並びにEPROM
13から読み出した補正係数(δ、q、c、d、k、
f)を使用して、前記式の演算を行うものであり、そ
の演算結果を、センサ部1による検出圧力を示す圧力デ
ータとしてI/Oブロック15から出力するようにな
る。
【0106】この後、制御ブロック7は、所定の待機時
間が経過するまで待機し(ステップS8)、当該待機時
間が経過したときにステップS1へ戻るようになる。従
って、一連の圧力検出動作(S1〜S7)は、上記待機
時間が経過する毎に周期的に行われることになる。
【0107】要するに上記した回路構成によれば、検出
信号Sd、温度信号St及び基準信号Saをアナログマ
ルチプレクサ6を通じて時分割処理すると共に、それら
の信号Sd、St及びSaを同一の差動増幅回路8によ
り増幅した各電圧信号に一定レベルの意図的オフセット
値を付加し、斯様な各電圧信号の電圧レベルをAD変換
回路9により測定することにより、各信号の信号量を示
す3種類のデジタルデータ(圧力情報D、温度情報T、
基準情報A)を得るようにしている。
【0108】この場合、基準情報Aは、前記式(1)中
に示した意図的オフセット測定値a(或いはa′)に相
当し、圧力情報D及び温度情報Tは、同じく式(1)中
に示した信号計測値b(或いはb′)に相当するもので
あり、従って、上記意図的オフセット値の大きさを、検
出対象信号(検出信号Sd、温度信号Stを増幅した各
電圧信号)のレベルの2倍を越える値、望ましくはその
最大値の10倍以上に設定すれば、前述したようにノイ
ズ軽減効果により、検出出力のSN比を改善できるもの
である。尚、図9には、上記のような構成を採用した場
合のSN比の改善効果を実際に測定した結果を示した。
【0109】また、式の演算に供するために最終的に
圧力情報D、温度情報T及び基準情報Aに変換される検
出信号Sd、温度信号St及び基準信号Saは、全て同
じアナログ回路(アナログマルチプレクサ6、差動増幅
回路8、AD変換回路9)を通過する構成であるから、
その信号伝送系統での回路定数の変動に起因した各信号
のドリフト成分が互いにキャンセルされることになっ
て、上記式中のT/A及びD/Aが経時変化すること
がなくなる。この結果、耐久変動(半導体チップ表面を
覆う保護膜の応力が経時変化に伴い解放されることなど
に起因して、各差動増幅回路8内のオペアンプ8a、8
bのオフセットが初期値からずれたり、各センサ抵抗の
ペア比が初期値から崩れたりする現象)による影響を除
去できるようになって、圧力検出値の精度を長期間に渡
って良好な状態に維持できるようになる。
【0110】圧力検出値の精度のさらなる向上を実現す
るためには、差動増幅回路8として増幅能力が高い大型
のものを使用することになるが、当該差動増幅回路8
は、検出信号Sd、温度信号St及び基準信号Saの増
幅用に兼用する構成となっているから、多数の差動増幅
回路を設ける必要がなくなるものであり、この面からも
全体の小型化を実現できるようになる。
【0111】本実施例のように、RGD10を利用した
AD変換回路9にあっては、変換速度の大幅な向上(つ
まりサンプリング時間の大幅な短縮)を実現できるとい
う利点があるため、圧力検出値の算出に必要な時間を短
縮できるようになる。
【0112】さらに、上記した実施例では、検出対象信
号が2種類存在する状態となっているが、それら検出対
象信号に対応した信号測定値である圧力情報D及び温度
情報Tを得るための測定動作タイミングの中間に、意図
的オフセット測定値である基準情報Aを得るための測定
動作タイミングが設定された構成、具体的には、D→A
→Tの順序で測定動作を行う構成となっている。
【0113】つまり、基準情報Aの測定動作タイミング
と圧力情報D及び温度情報Tの各測定動作タイミングと
の各間の平均所要時間が最短となるような順序で測定動
作が行われる構成となっている。このため、前記式に
基づいて圧力Pの演算を行う際に必要となるT/A及び
D/Aの各演算をでき得る限り早く行うことができる。
この結果、圧力Pの演算に用いられる測定結果(D、
A、T)に混入する低周波ノイズの大きさが、上記T/
A及びD/Aの各演算に用いられる測定結果間で互いに
等しくなる方向に作用するから、その演算結果から低周
波ノイズ成分(直流ノイズ成分も含む)を除去する効果
を高め得るようになり、圧力Pの検出精度が向上するよ
うになる。
【0114】勿論、T→A→Dの順序で測定動作を行っ
た場合にも、上記同様に圧力Pの検出精度を高め得るも
のである。また、上記実施例の場合は問題ないが、2種
類の信号測定値(これらを説明の便宜上、ΔD、ΔTと
する)を得るための測定動作タイミングの中間に、意図
的オフセット測定値(これを説明の便宜上、ΔAとす
る)を得るための測定動作タイミングが設定できない場
合には、以下のような測定順とすることが考えられる。
【0115】即ち、意図的オフセット測定値ΔAを得る
ための測定動作タイミングと、上記2種類の信号測定値
ΔD、ΔTのうち、センサ精度に最も大きな影響をもた
らす検出対象信号に対応した測定値を得るための測定動
作タイミングとの間隔が最短となるような順序で各測定
動作を行う構成とすれば良い。例えば、ΔDが重要であ
る場合には、ΔA→ΔD→ΔTの順或いΔT→ΔD→Δ
Aの順で測定すれば良い。このように構成した場合に
は、センサ精度に重要な影響をもたらす特定の検出対象
信号を含む信号測定値ΔDに混入する低周波ノイズの大
きさと、意図的オフセット測定値ΔAに混入する低周波
ノイズの大きさが互いに等しくなる方向に作用するか
ら、上記特定の検出対象信号に対するノイズ除去効果を
高め得るようになり、総じてセンサ回路の検出精度を向
上させ得るようになる。
【0116】ところで、上記した実施例の場合、図8に
示した出力制御ルーチンS2、S4、S6の実行時にお
いて、スタックメモリ12からラッチデータの差に基づ
いたデジタルデータを3回取り込むことができるから、
それらを平均化した値をデジタルデータ(圧力情報D、
基準情報A及び温度情報T)として得る構成とすること
もできる。このような構成とした場合には、低周波ノイ
ズの軽減と同時に高周波ノイズも軽減できるものであ
り、以下、その高周波ノイズの軽減原理について、図1
0及び図11を参照して説明する。
【0117】即ち、図10の例では、ノイズeが混入し
た意図的オフセット測定値a′を得るための測定動作を
複数回(3回)連続して実行し、その直後に、ノイズe
が混入した信号測定値b′を得るための測定動作を複数
回(3回)連続的に実行するタイミングが示されている
(各群の測定動作の順序は逆でも良い)。この場合、各
群の測定動作間の間隔tiが比較的長くなるが、低周波
ノイズのレベルはゆっくり変化するため、各回の測定デ
ータには、ほぼ等しい低周波ノイズ成分が混入している
と考えられる。従って、低周波ノイズについては、前述
したようなノイズ低減方法を適用することにより十分な
低減効果を期待できる。
【0118】一方、複数回ずつの測定により得た意図的
オフセット測定値a′及び信号測定値b′をそれぞれ平
均化して、その代表値をノイズ除去のための補正処理に
供することにすれば、それら各測定値a′及びb′を平
均化することに伴う積分効果によって、高周波ノイズの
低減をも同時に図り得るようになる。このような高周波
ノイズの低減効果は、意図的オフセット測定値a′及び
信号測定値b′のサンプル数を増やすこと、つまり、測
定回数を増やすことにより高めることができる。また、
上記のように、複数サンプルの意図的オフセット測定値
a′を得るための複数回の測定動作と、複数サンプルの
信号測定値b′を得るための複数回の測定動作とを、こ
の順または逆の順で連続的に行う構成とした場合には、
測定対象を切り換える動作を1回(圧力情報D、基準情
報A及び温度情報Tを得る場合は2回)行うだけ済ん
で、その切り換え動作が複雑になる恐れがなくなる。
【0119】図11の例では、ノイズeが混入した意図
的オフセット測定値a′を得るための測定動作と、ノイ
ズeが混入した信号測定値b′を得るための測定動作と
を、この順で連続的に行うサイクルを複数回(3回)反
復するタイミングが示されている(各測定動作の順序は
逆でも良い)。この場合にも、複数回ずつの測定により
得た意図的オフセット測定値a′及び信号測定値b′を
それぞれ平均化して、その代表値をノイズ除去のための
補正処理に供することにすれば、それら各測定値a′及
びb′を平均化することに伴う積分効果によって、高周
波ノイズの低減をも同時に図り得るようになる。特に、
この場合には、意図的オフセット測定値a′を得るため
の測定動作と信号測定値b′を得るための測定動作とを
1単位とした測定が行われる結果、各測定値a′及び
b′間の測定間隔tiが短くなる。このため、各測定値
a′及びb′に混入する低周波ノイズの大きさの一致度
が高くなるから、結果的に、低周波ノイズについては、
前述したようなノイズ低減方法を適用することによっ
て、一段と満足できる低減効果を期待できるようにな
る。
【0120】(第2の実施の形態)図12ないし図14
には、上記第1実施例に変更を加えた本発明の第2実施
例が示されており、以下これについて異なる部分のみ説
明する。即ち、第1実施例では、AD変換回路の前段に
位置するアナログ回路において意図的オフセットを設定
する方法を示したが、この第2実施例では、AD変換の
後にデジタル値の意図的オフセットデータにより意図的
オフセットを直接的に設定する方法を示す。
【0121】図12は、本実施例による信号処理回路の
構成が概略的な機能ブロックにより示されている。この
図12の構成では、まず、アナログスイッチにより、ノ
イズeが重畳した状態の検出対象信号sigと、ノイズ
eが重畳した状態の比較対象値rを所定順に選択し、選
択された信号をセンサ用AD変換回路で順次AD変換す
る。このようなAD変換動作によって、デジタルデータ
である検出データDsigと比較対象データDrを得る
ものであり、各データDsig及びDrは、後段のデジ
タル演算回路に転送される。このデジタル演算回路に
は、検出データDsigより大きなデジタル値の意図的
オフセットデータDosが設定されており、加算器にお
いて、その意図的オフセットデータDosを前記比較対
象データDrに加算して意図的オフセット測定値a′と
し、且つ意図的オフセットデータDosを前記検出デー
タDsigに加算して信号測定値b′とするものであ
り、これらの測定値a′及びb′は、それぞれに対応し
たレジスタに蓄積される。デジタル演算回路では、前記
第1実施例と同様に、補正用データS′(=b′/
a′)を求めるための補正演算を除算器において行い、
その補正用データS′に基づいた信号処理によりノイズ
除去が実行される。
【0122】この方法によれば、デジタル回路を一部追
加する必要があるが、AD変換回路の許容変換入力範囲
(ダイナミックレンジ)と、検出対象信号sig及び比
較対象値rの変化範囲とを同レベルにできるため、AD
変換回路に要求される性能を緩和できるようになる。
【0123】尚、上記検出データDsig及び比較対象
データDrは、それぞれ以下のように表すことができ
る。 Dsig=Dtrsig+De Dr=Dtrr+De ここで、Dtrsigは真の検出対象信号sigに対す
るAD変換データ、Dtrrは真の比較対象値rに対す
るAD変換データ、Deはノイズeに対するAD変換デ
ータを示す。
【0124】比較対象値rの設定方法は種々考えられる
が、例えば、前記第1実施例における半導体圧力センサ
装置(図6参照)に適用する場合には、図6中における
基準電圧発生回路5が発生する基準信号Saを比較対象
値rとして利用すれば良く、以下においては、この図6
も参照しながら第2実施例の内容について説明する。こ
のように基準信号Saを比較対象値rとして利用すると
きには、基準電圧発生回路5内の抵抗素子Ra1及びRa2
の抵抗値を予め調整することにより、基準信号Saの電
圧レベル、つまり比較対象値rの大きさを任意の値(但
し、定電圧電源端子+Vccの出力電圧以下)に設定でき
る。
【0125】ここで、例えば、第1実施例のアナログ回
路による意図的オフセット発生手段である図6中の定電
圧源8f(信号生成手段)の出力がほぼ零であると仮定
する(その代わりとして、デジタル値の意図的オフセッ
トデータDosを設定するのが第2実施例の特徴であ
る)。
【0126】検出対象信号sig=0に対応した比較対
象値rを設定する場合(比較対象値rのAD変換値であ
る比較対象データDrを検出対象信号sigが概ね零で
あるときのAD変化値Ddigとほぼ等しい値となるよ
うに設定する場合)について説明する。一般的に、検出
対象信号sig=0のとき、センシングエレメントであ
るフルブリッジ形式の圧力検出用ブリッジ回路3から出
力される検出信号Sdはほぼ0Vとなる。従って、基準
電圧発生回路5から出力される基準信号Saの電圧レベ
ルを接地電圧(=0V)とすれば、AD変換回路9(測
定手段)への入力電圧は、Sa=0V=Sdとなり、検
出信号Sdが零付近のときにノイズ除去効果を一段と高
め得るようになる。つまり、検出信号Sd(検出対象信
号sig)が零付近のときに補正結果(理想データ比)
Sがほぼ1となるため、前記式(5)から分かるように
誤差率εrを最小にできる。具体的には、例えば抵抗素
子Ra1=100kΩ、Ra2=0Ωとすれば良い。
【0127】一方、比較対象値rを検出対象信号sig
の最大値の50%に設定する場合(比較対象値rのAD
変換値である比較対象データDrを検出対象信号sig
がその最大値の概ね50%であるときのAD変化値Dd
igとほぼ等しい値となるように設定する場合)には、
一般的には、定電圧電源端子+Vccの出力電圧の1/2
の電圧に設定することになる。これにより、検出対象信
号sigが最小値或いは最大値付近にあるときにおける
ノイズ除去効果の劣化を最小限に抑えることができる。
つまり、検出信号Sdが最小値と最大値との間で変化し
ても、補正結果Sの変化幅がS=1を中心とした最小の
範囲に収まるため、前記式(5)から分かるように誤差
率εrの劣化を最小限に抑制できる。この場合、具体的
には、例えば抵抗素子Ra1=Ra2=100kΩとすれば
良い。以上のように、抵抗Ra1及びRa2の抵抗値を選択
することにより所望の比較対象値rを設定できるもので
ある。
【0128】本発明による低周波ノイズ除去方法は、そ
の信号処理の原理上、基本的にはアナログ処理、デジタ
ル処理の区別に拘らず有効である。但し、熱雑音や電磁
雑音などの影響を受けないデジタル処理において、より
低コストで効率的なノイズ除去を行い得るといえる。つ
まり、仮にアナログ処理により行う場合には、検出対象
信号に割り当てられる信号範囲(例えが電圧範囲)が狭
くなり、その結果として最低限必要な信号レベルが、熱
雑音や電磁雑音などに埋もれてしまうため、より低ノイ
ズの素子(例えばHBT(ヘテロ接合バイポーラトラン
ジスタ)、HEMT(高電子移動度トランジスタ)など
の高価な化合物半導体素子)を使用した信号処理回路や
高性能なフィルタの他に、高価なシールド対策などが必
要になってしまう。
【0129】これに対してデジタル処理により行う場合
には、信号処理回路を標準的なCMOS回路により安価
に製造でき、且つ信号処理時のSN比の劣化がなく情報
量が十分に保持されるため特に有効となる。その具体例
を図13及び図14を用いて説明する。
【0130】まず、見掛け上の感度であるが、図13に
示すように、意図的オフセット値aが2倍(a×2)に
なると、検出対象信号sigの変化に応じた補正結果
(ノイズeがない場合の理想比)Sの変化は、約1/2
に減少する。このため、いわゆる感度の低下が発生する
ように見える。しかしながら、デジタル処理を行う場合
には、情報量はその信号に対する有効桁数で決まるた
め、必要な桁数(ビット数)を確保すれば感度の低下を
来たすことはない。
【0131】図14には、意図的オフセット値a、検出
対象信号sig、ノイズeのAD変換データの組み合わ
せが複数例示されていると共に、これらの各値となった
ときの補正結果(理想比)S(=b/a=(a+si
g)/a)、補正用データS′(=(b+e)/(a+
e)=(a+sig+e)/(a+e))、誤差率εr
の値(デジタルデータ)について示されている(意図的
オフセット値aに対するノイズeの比e/aも括弧書き
で示す)。尚、図14中において、補正結果S及び補正
用データS′にそれぞれ付したアンダーラインは、デー
タ値の有効桁部分を示す。
【0132】この図14の欄に示すように、意図的オ
フセット値a=1000、検出対象信号sig=10
0、ノイズe=100であった場合、検出対象信号si
gの有効桁数は3桁であるため、補正結果Sの有効情報
も3桁となり、小数第3位までが有効となる。また、
欄に示すように、意図的オフセット値aを欄の10倍
にした場合(a=10000)には、同様に補正結果S
の有効桁数は3桁であり、小数第4位まで有効となる。
このとき、誤差率εrは1/10に低減しており、ノイ
ズ低減効果は10倍に達することになる。勿論、意図的
オフセット値aを大きくすればノイズ低減効果が向上す
ることになるが、当然ながら検出対象信号sigの有効
桁数以上には意味を持たない。尚、図14の欄には有
効情報が4桁のときの誤差率εrを括弧書きで示し、
欄には5桁のときの誤差率εrを括弧書きで示した。
【0133】低周波ノイズを効率良く除去し且つ高精度
化するには、検出対象信号sigの有効桁数(AD変換
ビット数)を増加させれば良い。例えば図14の、
欄に示すように、意図的オフセット値aが同じ値(=1
00000)でも、検出対象信号sigの有効桁数の相
違(欄は3桁、欄は4桁)により補正結果Sの精度
は異なってくる。従って、目標仕様に応じて、検出対象
信号sigの有効桁数を効率が良い桁数に設定すること
で無駄を省き得るようになる。尚、センサ出力(図6の
例では圧力データ)は、上記補正結果Sの有効桁数に対
応することになる。
【0134】(その他の実施の形態)尚、本発明は上記
した実施例に限定されるものではなく、次のような変形
または拡張が可能である。上記した実施例は、検出対象
信号の信号量が電圧レベルで示されるものである関係
上、意図的オフセット値を電圧値として設定する構成と
したが、これは検出対象信号の信号量の性質に応じて適
宜変更することができる。例えば、検出対象信号の信号
量が時間情報(パルス周期或いは周波数)として示され
るセンサ回路に適用する場合には、その時間情報よりも
大きな時間値となる意図的オフセット値を設定する構成
とすれば良い。このようなセンサ回路の例としては、被
検出物理量の大小に応じた容量変化するトランスジュー
サを備え、その容量変化を、CR発振器のCR時定数の
変化、つまり発振周波数の変化として検出する構成のも
のがある。この場合、上記意図的オフセット値(時間
値)を得るためには一定周期のクロック信号を用いるこ
とができる。そして、例えば特開平3−220814号
公報に記載されたようなパルス位相差符号化回路により
上記意図的オフセット時間値を数値化し、この数値化信
号を利用したデジタル処理を前記実施例と同様に行うこ
とによってノイズ軽減効果を得ることができる。
【0135】また、被検出物理量の大小に応じた容量変
化を電圧信号に変換して測定動作を行うセンサ回路にも
本発明の方法を適用することで高精度化が可能になる。
図15は、例えば特開平9−211022号公報に見ら
れるような静電容量型の半導体力学量センサに適用した
例を示すものであり、以下これについて説明する。即
ち、図15において、例えば角速度の大きさにより容量
が変化するコンデンサCsには、電源Eから切換スイッ
チSWを通じて初期バイアス電圧Vbiを印加して一定電
荷を保持させる(切換スイッチSWを一旦電源E側に切
り換えた後に、それぞれ高入力インピーダンスのピーク
ホールド回路PHC及びボトムホールド回路BHC側に
切り換える)。この状態で、コンデンサCsの容量が角
速度の変化に応じて最小値から最大値に変化すると、ピ
ークホールド回路PHC及びボトムホールド回路BMC
間に電圧信号Sxが得られる。この電圧信号Sxを前記
図6における検出信号Sdの代わりに用いることで、当
該図6の圧力センサを角速度センサ(ヨーレートセン
サ)として機能させ得る。勿論、上記コンデンサCsの
容量が圧力や加速度に応じて変化するものであった場合
には、圧力センサや加速度センサを実現できることにな
る。
【0136】上記のような圧力、加速度、角速度という
物理量の他に、トルク、速度、磁束、湿度、流量、濃度
などの他の物理量を検出するためのセンサ回路に広く適
用することができる。また、図6の例では、検出対象信
号の発生源としてピエゾ抵抗効果を利用した圧力検出用
ブリッジ回路3を示したが、ホール素子やMRE(磁電
変換センサ)など他の素子を利用することもできる。さ
らに、AD変換回路9内のRGD10は、基本的な構成
例を示したものであり、これと異なる構成のRGDを設
けることもできる。
【0137】尚、低周波ノイズが問題となるのは、特に
MOSトランジスタを用いた場合であるが、MOSトラ
ンジスタに限らず、バイポーラトランジスタや化合物ト
ランジスタ(HBT、HEMTなど)においても程度の
差はあるが低周波ノイズは存在するものであり、従っ
て、どのようなトランジスタを用いたな回路或いは他の
半導体素子を用いた回路に対しても本発明による低周波
ノイズ除去方法は有効といえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例によるノイズ除去方法の原
理を説明するための特性図
【図2】測定動作のタイミングを説明するための信号波
形図
【図3】所定条件下で、意図的オフセット測定値と検出
対象信号の最大値を種々変えたときの誤差率などの変化
状態を示す図
【図4】センサ用AD変換回路の変換特性図
【図5】ノイズ除去を行う信号処理回路の構成例を示す
概略的な機能ブロック図
【図6】CMOSセンサ回路の全体構成を示す電気的構
成図
【図7】作用説明用のタイミングチャート
【図8】制御ブロックによる制御内容を示すフローチャ
ート
【図9】SN比の改善効果を測定した結果を示す図
【図10】高周波ノイズの軽減原理を説明するための信
号波形図その1
【図11】高周波ノイズの軽減原理を説明するための信
号波形図その2
【図12】本発明の第2実施例を示す図5相当図
【図13】作用・効果を説明するための特性図
【図14】作用・効果を説明するための実際のデータ例
を示す図
【図15】本発明の他の実施例を示す概略的な機能ブロ
ック図
【符号の説明】
1はセンサ部、2は信号処理部、3は圧力検出用ブリッ
ジ回路、4は温度検出用ブリッジ回路、5は基準電圧発
生回路、7は制御ブロック、8は差動増幅回路(入力回
路)、8fは定電圧電源(信号生成手段)、9はAD変
換回路(測定手段)、10はリングゲート遅延回路、1
0aはNANDゲート(反転回路)、10bはインバー
タ(反転回路)、14は補正演算回路(データ演算回
路)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−339673(JP,A) 特開 平5−259907(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01D 3/028 G01L 9/00

Claims (37)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検出対象信号の信号量をAD変換するA
    D変換手段を備えたセンサ回路における低周波ノイズの
    除去方法として、 前記検出対象信号より大きな値の意図的オフセット値を
    予め設定し、 上記意図的オフセット値の大きさを前記AD変換手段に
    よりAD変換した意図的オフセットデータと、前記検出
    対象信号に前記意図的オフセット値を加算した状態の信
    号の大きさを前記AD変換手段によりAD変換した信号
    測定データとの比を取り、その比の有効桁の情報をノイ
    ズ低減された補正済み信号データとして用いることによ
    ってセンサ出力の低周波ノイズを低減させることを特徴
    とする低周波ノイズ除去方法。
  2. 【請求項2】 除去対象の低周波ノイズは、ノイズ周波
    数fの1/f或いは(1/f)n (nは1以上の実数)
    に比例する低周波ノイズであることを特徴とする請求項
    1記載の低周波ノイズ除去方法。
  3. 【請求項3】 検出対象信号の信号量を測定する測定手
    段を備えたセンサ回路のための低周波ノイズ除去方法に
    おいて、 前記検出対象信号より大きな値の意図的オフセット値を
    予め設定し、 上記意図的オフセット値の大きさを前記測定手段により
    測定した意図的オフセット測定値と、前記検出対象信号
    に前記意図的オフセット値を加算した状態の信号の大き
    さを前記測定手段により測定した信号測定値との比を取
    り、その比をノイズ低減データとして利用することによ
    ってセンサ出力のノイズを低減させることを特徴とする
    低周波ノイズ除去方法。
  4. 【請求項4】 前記測定手段により意図的オフセット測
    定値を得るための測定動作と、当該測定手段により信号
    測定値を得るための測定動作とを連続して行うことを特
    徴とする請求項3記載の低周波ノイズ除去方法。
  5. 【請求項5】 前記測定手段により意図的オフセット測
    定値を得るための測定動作タイミングと、当該測定手段
    により信号測定値を得るための測定動作タイミングとの
    間隔を、除去対象とするノイズの周期に対して十分に短
    い間隔となるように設定したことを特徴とする請求項3
    記載の低周波ノイズ除去方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の低周波ノイズ除去方法に
    おいて、 前記測定手段により意図的オフセット測定値を得るため
    の測定動作タイミングと、当該測定手段により信号測定
    値を得るための測定動作タイミングとの間隔を、除去対
    象とするノイズの周期の1/10以下の間隔となるよう
    に設定したことを特徴とする低周波ノイズ除去方法。
  7. 【請求項7】 前記測定手段により意図的オフセット測
    定値を得るための測定動作を複数回行うと共に、当該測
    定手段により信号測定値を得るための測定動作を複数回
    行い、 このようにして得た複数サンプルずつの意図的オフセッ
    ト測定値及び信号測定値の各平均値をそれぞれ演算し、 上記意図的オフセット測定値の平均値及び信号測定値の
    平均値の比を取り、その比を前記ノイズ低減データとし
    て利用することを特徴とする請求項3ないし6の何れか
    に記載の低周波ノイズ除去方法。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の低周波ノイズ除去方法に
    おいて、 前記測定手段により前記複数サンプルの意図的オフセッ
    ト測定値を得るための複数回の測定動作と、当該測定手
    段により前記複数サンプルの信号測定値を得るための複
    数回の測定動作とを、この順または逆の順で連続的に行
    うことを特徴とする低周波ノイズ除去方法。
  9. 【請求項9】 前記測定手段により意図的オフセット測
    定値を得るための測定動作と、当該測定手段により信号
    測定値を得るための測定動作とを、この順または逆の順
    で連続的に行うサイクルを複数回反復し、 このようにして得た複数サンプルずつの意図的オフセッ
    ト測定値及び信号測定値の各平均値をそれぞれ演算し、 上記意図的オフセット測定値の平均値及び信号測定値の
    平均値の比を取り、その比を前記ノイズ低減データとし
    て利用することを特徴とする請求項2ないし5の何れか
    に記載の低周波ノイズ除去方法。
  10. 【請求項10】 前記意図的オフセット値の大きさは、
    前記検出対象信号の信号量の2倍を越える値に設定され
    ることを特徴とする請求項3ないし9の何れかに記載の
    低周波ノイズ除去方法。
  11. 【請求項11】 前記意図的オフセット値の大きさは、
    前記検出対象信号の信号量の最大値の10倍以上に設定
    されることを特徴とする請求項3ないし9の何れかに記
    載の低周波ノイズ除去方法。
  12. 【請求項12】 前記意図的オフセット値の大きさは、
    除去対象とするノイズの大きさと同等以上の値に設定さ
    れることを特徴とする請求項3ないし9の何れかに記載
    の低周波ノイズ除去方法。
  13. 【請求項13】 前記意図的オフセット値は、前記検出
    対象信号のための入力回路とは独立した状態で設けられ
    た信号生成手段により生成されるものであることを特徴
    とする請求項3ないし12の何れかに記載の低周波ノイ
    ズ除去方法。
  14. 【請求項14】 前記測定手段により複数種類の検出対
    象信号の信号量をそれぞれ測定するように構成される場
    合には、意図的オフセット測定値を得るための測定動作
    タイミングと、複数種類の検出対象信号にそれぞれ対応
    した信号測定値を得るための複数の測定動作タイミング
    との各間の平均所要時間が最短となるような順序で各測
    定動作を行うことを特徴とする請求項3ないし13の何
    れかに記載の低周波ノイズ除去方法。
  15. 【請求項15】 前記測定手段により複数種類の検出対
    象信号の信号量をそれぞれ測定するように構成される場
    合には、意図的オフセット測定値を得るための測定動作
    タイミングと、上記複数種類の検出対象信号のうちセン
    サ精度に最も大きな影響をもたらす信号の測定動作タイ
    ミングとの間隔が最短となるような順序で各測定動作を
    行うことを特徴とする請求項3ないし13の何れかに記
    載の低周波ノイズ除去方法。
  16. 【請求項16】 検出対象信号をAD変換した検出デー
    タと、比較対象値をAD変換した比較対象データとに対
    して、前記検出データより大きなデジタル値の意図的オ
    フセットデータを設定し、 その意図的オフセットデータを前記検出データに加算し
    て信号測定値とし、且つ同じ意図的オフセットデータを
    前記比較対象データに加算して意図的オフセット測定値
    とし、 上記意図的オフセット測定値と上記信号測定値との比を
    取り、その比を補正結果とすることにより低周波ノイズ
    を低減することを特徴とする低周波ノイズの除去方法。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の低周波ノイズ除去方
    法において、 前記比較対象値のAD変換値である前記比較対象データ
    は、前記検出対象信号が概ね零であるときのAD変換値
    とほぼ等しい値となるように設定されることを特徴とす
    る低周波ノイズ除去方法。
  18. 【請求項18】 請求項16記載の低周波ノイズ除去方
    法において、 前記比較対象値のAD変換値である前記比較対象データ
    は、前記検出対象信号がその最大値の概ね50%である
    ときのAD変換値とほぼ等しい値となるように設定され
    ることを特徴とする低周波ノイズ除去方法。
  19. 【請求項19】 前記検出データと前記比較対象データ
    とには、それぞれ測定誤差となり得る大きさのノイズデ
    ータが含まれていることを特徴とする請求項16ないし
    18の何れかに記載の低周波ノイズ除去方法。
  20. 【請求項20】 請求項19記載の低周波ノイズ除去方
    法において、 前記ノイズデータのAD変換前の低周波ノイズは、AD
    変換前の前記検出対象信号及び比較対象値にそれぞれ含
    まれているものであり、その大きさが前記AD変換の分
    解能と同等以上であることを特徴とする低周波ノイズ除
    去方法。
  21. 【請求項21】 前記低周波ノイズの大きさ及び前記A
    D変換の分解能がμVオーダーであることを特徴とする
    請求項20記載の低周波ノイズ除去方法。
  22. 【請求項22】 前記低周波ノイズは、10Hz以下の
    周波数fの1/f或いは(1/f)n (nは1以上の実
    数)に比例するものであることを特徴とする請求項20
    または21記載の低周波ノイズ除去方法。
  23. 【請求項23】 請求項19記載の低周波ノイズ除去方
    法において、 前記ノイズデータのAD変換前の低周波ノイズは、AD
    変換前の前記検出対象信号及び比較対象値が増幅回路に
    より増幅される際に、当該検出対象信号及び比較対象値
    にそれぞれ付加されるものであることを特徴とする低周
    波ノイズ除去方法。
  24. 【請求項24】 CMOS素子により構成されたCMO
    Sセンサ回路において、 検出対象信号の信号量を測定するための測定手段(9)
    と、 前記検出対象信号より大きな値の意図的オフセット値を
    発生する信号生成手段(8f)と、 前記意図的オフセット値の大きさを前記測定手段(9)
    により測定した意図的オフセット測定値と、前記検出対
    象信号に前記意図的オフセット値を加算した状態の信号
    の大きさを前記測定手段(9)により測定した信号測定
    値との比を取り、その比をセンサ出力のノイズ低減デー
    タとして利用することによってノイズの低減を図るデー
    タ演算回路(14)とを備えたことを特徴とするCMO
    Sセンサ回路。
  25. 【請求項25】 前記測定手段(9)は、意図的オフセ
    ット測定値を得るための測定動作と信号測定値を得るた
    めの測定動作とを連続して行うように構成されているこ
    とを特徴とする請求項24記載のCMOSセンサ回路。
  26. 【請求項26】 前記測定手段(9)は、意図的オフセ
    ット測定値を得るための測定動作と信号測定値を得るた
    めの測定動作とを、除去対象とするノイズの周期に対し
    十分に短い間隔で実行することを特徴とする請求項24
    記載のCMOSセンサ回路。
  27. 【請求項27】 請求項26記載のCMOSセンサ回路
    において、 前記測定手段(9)は、意図的オフセット測定値を得る
    ための測定動作と信号測定値を得るための測定動作と
    を、除去対象とするノイズの周期の1/10以下の間隔
    で実行することを特徴とするCMOSセンサ回路。
  28. 【請求項28】 前記測定手段(9)は、意図的オフセ
    ット測定値を得るための測定動作を複数回行うと共に、
    信号測定値を得るための測定動作を複数回行うように構
    成され、 前記データ演算回路(14)は、上記のようにして得ら
    れる複数サンプルずつの意図的オフセット測定値及び信
    号測定値の各平均値をそれぞれ演算すると共に、それら
    意図的オフセット測定値の平均値及び信号測定値の平均
    値の比を取り、その比を前記ノイズ低減データとして利
    用することを特徴とする請求項24ないし27の何れか
    に記載のCMOSセンサ回路。
  29. 【請求項29】 請求項28記載のCMOSセンサ回路
    において、 前記測定手段(9)は、前記複数サンプルの意図的オフ
    セット測定値を得るための複数回の測定動作と前記複数
    サンプルの信号測定値を得るための複数回の測定動作と
    を、この順または逆の順で連続的に行うように構成され
    ていることを特徴とするCMOSセンサ回路。
  30. 【請求項30】 前記測定手段(9)は、意図的オフセ
    ット測定値を得るための測定動作と信号測定値を得るた
    めの測定動作とを、この順または逆の順で連続的に行う
    サイクルを複数回反復するように構成され、 前記データ演算回路(14)は、上記のようにして得ら
    れる複数サンプルずつの意図的オフセット測定値及び信
    号測定値の各平均値をそれぞれ演算すると共に、それら
    意図的オフセット測定値の平均値及び信号測定値の平均
    値の比を取り、その比を前記ノイズ低減データとして利
    用することを特徴とする請求項24ないし27の何れか
    に記載のCMOSセンサ回路。
  31. 【請求項31】 前記信号生成手段(8f)は、前記検
    出対象信号の信号量の2倍を越える値に設定された意図
    的オフセット値を発生するように構成されていることを
    特徴とする請求項24ないし30の何れかに記載のCM
    OSセンサ回路。
  32. 【請求項32】 前記信号生成手段(8f)は、前記検
    出対象信号の信号量の最大値の10倍以上に設定された
    意図的オフセット値を発生するように構成されているこ
    とを特徴とする請求項24ないし30の何れかに記載の
    CMOSセンサ回路。
  33. 【請求項33】 前記信号生成手段(8f)は、除去対
    象とするノイズの大きさと同等以上の値に設定された意
    図的オフセット値を発生するように構成されていること
    を特徴とする請求項24ないし30の何れかに記載のC
    MOSセンサ回路。
  34. 【請求項34】 前記検出対象信号を前記測定手段
    (9)の測定動作に適した状態に変換する入力回路
    (8)を備え、 前記信号生成手段(8f)は、前記入力回路(8)とは
    独立した状態で設けられていることを特徴とする請求項
    24ないし33の何れかに記載のCMOSセンサ回路。
  35. 【請求項35】 前記測定手段(9)は、複数種類の検
    出対象信号の信号量をそれぞれ測定するように構成され
    る場合には、前記意図的オフセット測定値を得るための
    測定動作タイミングと、複数種類の検出対象信号にそれ
    ぞれ対応した信号測定値を得るための複数の測定動作タ
    イミングとの各間の平均所要時間が最短となるような順
    序で各測定動作を行う構成とされていることを特徴とす
    る請求項24ないし34の何れかに記載のCMOSセン
    サ回路。
  36. 【請求項36】 前記測定手段(9)は、複数種類の検
    出対象信号の信号量をそれぞれ測定するように構成され
    る場合には、前記意図的オフセット測定値を得るための
    測定動作タイミングと、上記複数種類の検出対象信号の
    うちセンサ精度に最も大きな影響をもたらす信号の測定
    動作タイミングとの間隔が最短となるような順序で各測
    定動作を行う構成とされていることを特徴とする請求項
    24ないし34の何れかに記載のCMOSセンサ回路。
  37. 【請求項37】 前記意図的オフセット値と前記検出対
    象信号に意図的オフセット値を加算した状態の信号とを
    それぞれの信号量に応じたレベルの電圧信号に変換する
    入力回路(8)を備え、 前記測定手段(9)は、 反転動作時間が電源電圧に応じて変化する複数個の反転
    回路(10a、10b)をリング状に連結した状態で有
    すると共に、前記入力回路(8)から出力される前記各
    電圧信号が上記電源電圧として与えられるリングゲート
    遅延回路(10)を備え、このリングゲート遅延回路
    (10)にパルス信号が入力されたときのパルス信号周
    回数に基づいて前記意図的オフセット測定値並びに前記
    検出対象信号に意図的オフセット値を加算した状態の信
    号をそれぞれデジタルデータより成る意図的オフセット
    測定値及び信号測定値に変換するAD変換回路として構
    成されていることを特徴とする請求項24ないし36の
    何れかに記載のCMOSセンサ回路。
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