JP3291686B2 - ラミネート板及びこれを用いたシームレス缶 - Google Patents

ラミネート板及びこれを用いたシームレス缶

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製缶用ラミネート
板及びこのラミネート板を使用して得られたシームレス
缶に関するもので、より詳細には、絞りしごき加工に際
して、加工具の摩耗を低減させ、加工性に優れていると
共にフィルム層の削れを減少させることができ、しかも
優れた耐食性及び耐衝撃性を有し且つ外面の隠蔽性及び
風合いに優れた被覆シームレス缶を製造できる製缶用ラ
ミネート板及びこのラミネート板を用いて得られたシー
ムレス缶に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、側面無継目缶(サイド・シームレ
ス缶)としては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティ
ン・フリー・スチール板等の金属素材を、絞りダイスと
ポンチとの間で少なくとも1段の絞り加工に付して、側
面継目のない胴部と該胴部に、継目なしに一体に接続さ
れた底部とから成るカップに形成し、次いで所望により
前記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工
を加えて、容器胴部を薄肉化したものが知られている。
また、しごき加工の代わりに、再絞りダイスの曲率コー
ナ部で曲げ伸ばして側壁部を薄肉化することも既に知ら
れている(特公昭56−501442号公報)。
【0003】また、側面無継目缶の有機被覆法として
は、一般に広く使用されている成形後の缶に有機塗料を
施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィルム
をラミネート板する方法が知られており、特公昭59−
34580号公報には、金属素材にテレフタル酸とテト
ラメチレングリコールとから誘導されたポリエステルフ
ィルムをラミネート板したものを用いることが記載され
ている。また、曲げ伸ばしによる再絞り缶の製造に際し
て、ビニルオルガノゾル、エポキシ、フェノリクス、ポ
リエステル、アクリル等の被覆金属板を用いることも知
られている。
【0004】外面被覆樹脂フィルムに予め着色剤を含有
させ着色したシームレス缶を製造することも公知であ
り、出願人の提案にかかる実公平6−16739及び6
−16740号公報には、内側から外側に、クリヤポリ
エステル系分子配向フィルム層/接着剤/表面処理鋼板
/接着剤/二酸化チタン含有ポリエステル系分子配向フ
ィルム層/印刷インキ層/仕上げニス層の積層体から成
るシームレス缶及びクリヤポリエステル系分子配向フィ
ルム層/接着剤/表面処理アルミ合金板/接着剤/二酸
化チタン含有ポリエステル系分子配向フィルム層/印刷
インキ層/仕上げニス層の積層体から成るシームレス缶
が夫々記載されている。
【0005】特開平6−39980号公報には、平均粒
径が2.5μm以下の滑剤を1重量%以下含有する特定
の共重合ポリエステル層と、平均粒径が2.5μm以下
の充填剤を5乃至30重量%含有する特定の共重合ポリ
エステル層とを積層して成る金属板貼り合わせ成形加工
用ポリエステルフィルムが記載されている。
【0006】特開平8−3334号公報には、シクロヘ
キシレンジメチレンテレフタレート単位を20モル%以
上含有して成るポリエステル(I)とエチレンテレフタ
レートを主体として成るポリエステル(II)とが重量比
で100:0〜10:90で混合されて成り、且つ着色
剤を15〜50重量%含有して成る層に、融点が150
〜230℃のエチレンテレフタレートを主体として成る
ポリエステル(III )から成る層が積層されて成り、フ
ィルムのヤング率が50〜350kg/mm2であるこ
とを特徴とする金属板ラミネート白色ポリエステルフィ
ルムが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】シームレス缶の外面に
存在する二酸化チタン含有ポリエステル系分子配向フィ
ルム層は、クロム表面処理層を隠蔽して、印刷インキ層
を浮き立たせ、絞り再絞り加工に際してしわ押さえ力の
伝達を良好にして缶胴のしわの発生を防止し、防錆力を
補助する等の望ましい作用を行うものではあるが、未だ
以下の問題が存在することがわかった。
【0008】即ち、着色剤粒子含有樹脂外層による隠蔽
力を増大させるには、二酸化チタン等の着色剤粒子の含
有量を増大させる必要があるが、着色剤粒子の含有量を
増大させると、絞り成形やしごき成形に際して、外層樹
脂フィルムの削れを生じたり、或いは成形工具の摩耗を
生じたりする欠点があり、この傾向は、素材節約や軽量
化のため、缶胴部の薄肉化の程度を大きくするほど一層
顕著となる。
【0009】一般に、しごきリングは、炭化タングステ
ン等の超硬で形成されているが、このような超硬でも、
多数缶成形後には、数ミクロンのオーダーの欠落を生じ
る場合があり、工具にこのような欠落が生じると、シー
ムレス缶のボトム窪みが発生したり、成形後の缶のポン
チからの抜け不良或いは破胴等を生じることになる。
【0010】また、樹脂ラミネート板を使用する製缶法
では、成形後の缶胴を、洗浄処理を行うことなく、内容
物充填に用いることが一般的であるが、前述したフィル
ムに削れが生じると、これがダストとして内容物中に混
入するという不都合もある。
【0011】本発明者らは、着色剤粒子を含有する延伸
ポリエステル層を備えた製缶用ラミネート板において、
この延伸ポリエステル層を高着色ポリエステル層と未着
色乃至低着色ポリエステル表層の複層構成とすると共
に、この延伸ポリエステル全体のボイド率を一定の範囲
に制御すると、シームレス缶への成形時におけるフィル
ムの削れ、割れ、ダストの発生等が防止され、また加工
具の摩耗が低減されると共に、得られるシームレス缶は
隠蔽性、密着性、耐衝撃性、耐腐食性及び風合いに優れ
ていることを見出した。
【0012】従って、本発明の目的は、製缶に際して、
加工具、特にしごきリングの摩耗を低減させ、シームレ
ス缶への成形時におけるフィルムの削れ、割れ、ダスト
の発生等が防止された製缶用ラミネート板を提供するに
ある。本発明の他の目的は、隠蔽性、密着性、耐衝撃
性、耐腐食性及び風合いに優れた被覆シームレス缶を提
供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、金属板
と金属板の表面に施された延伸熱可塑性ポリエステル系
樹脂層とからなる製缶用ラミネート板において、前記延
伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、(A)10重量%
以上の着色剤粒子を含有する高着色結晶性ポリエステル
系樹脂層と、(B)20重量%以下の着色剤粒子を含有
し且つ着色剤粒子が前記樹脂層(A)より低い濃度で含
有する結晶性ポリエステル系樹脂層との少なくとも2層
を備え、結晶性ポリエステル系樹脂層(B)が最表面に
積層され、且つ延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層は、
全体として、下記(1)式で示されるボイド率が0.1乃
至10体積%であるものであることを特徴とする製缶用
ラミネート板: 式中、 ρp:樹脂の密度(g/cm3) ρt:着色剤の密度(g/cm3) C :着色剤の濃度(wt%) ρ :ラミネート板フィルム層の密度(g/cm3) が提供される。本発明によればまた、金属板と金属板の
表面に施された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層とか
らなり且つ、前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層
が、(A)10重量%以上の着色剤粒子を含有する高着
色結晶性ポリエステル系樹脂層と、(B)20重量%以
下の着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子を前記樹脂層
(A)より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系樹
脂層と、或いは更に(C)着色剤粒子を高着色ポリエス
テル系樹脂層(A)よりも低い濃度で含有する結晶性ポ
リエステル系下地樹脂層とを少なくとも含有する多層フ
ィルムであって、前記結晶性ポリエステル系樹脂層
(B)が最表面に積層されたラミネート板をポンチとダ
イスとの間で、前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層
が少なくとも外面となるように、絞り及びしごき成形、
熱処理工程、及びネックイン、フランジ工程を施こすこ
とにより形成され、且つ外面ポリエステル系樹脂層が、
全体として、下記式(1)で示されるボイド率が1乃至
20体積%であるものであることを特徴とするシームレ
ス缶: 式中、 ρp:樹脂の密度(g/cm3) ρt:着色剤の密度(g/cm3) C :着色剤の濃度(wt%) ρ :缶体フィルムの密度(g/cm3) が提供される。本発明において、 1.前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)の着色剤粒
子含有量が10乃至70重量%であり、かつ前記最表面
ポリエステル系樹脂層(B)の着色剤粒子含有量が0乃
至18重量%であること、 2.前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)と前記最表
面ポリエステル系樹脂層(B)の厚み比が2:1乃至5
0:1の範囲にあること、 3.前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層が上記層
(A)及び(B)に加えて、ポリエステル系樹脂下地層
(C)を有し、該ポリエステル樹脂下地層(C)は高着
色ポリエステル系樹脂層(A)よりも低い濃度で着色剤
粒子を含有すること、 4.前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)の着色剤粒
子含有量が10乃至70重量%であり、かつ前記最表面
ポリエステル系樹脂層(B)及びポリエステル系樹脂下
地層(C)の着色剤粒子含有量が0乃至18重量%であ
ること、 5.前記高着色樹脂層(A)と前記最表面樹脂層(B)
または前記下地層(C)の厚み比が2:1乃至50:1
の範囲にあること、 6.着色剤粒子が酸化チタンであること、 7.前記最表面ポリエステル樹脂層(B)に0.3μm
以上の径の表面滑剤が0.01乃至1重量%含まれてい
ること、 8.前記ポリエステル系樹脂がエチレンテレフタレー
ト、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフタレー
ト、ブチレンイソフタレート及びエチレンナフタレート
からなる群より選択された少なくとも1種のエステル単
位を主体とするポリエステルであること、 9.前記最表面ポリエステル樹脂層(B)が180乃至
270℃の融点を有すること、が好ましい。
【0014】
【発明の実施形態】
[作用]本発明の製缶用ラミネート板の断面構造の一例
を示す図1において、このラミネート板1は、金属板2
と金属板の缶外面となる表面に施された延伸熱可塑性ポ
リエステル系樹脂層3とからなり、この延伸熱可塑性ポ
リエステル系樹脂層3は、金属板側に位置し、10重量
%以上の着色剤粒子を含有する高着色結晶性ポリエステ
ル系樹脂層(A)4と、最表面に位置し、20重量%以
下の着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子を前記樹脂層
(A)より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系樹
脂層(B)5とを備えている。
【0015】本発明の製缶用ラミネート板の断面構造の
他の例を示す図2において、このラミネート板1は、金
属板2と金属板の缶外面となる表面に施された延伸熱可
塑性ポリエステル系樹脂層3とからなり、この延伸熱可
塑性ポリエステル系樹脂層3は、中間に位置し、10重
量%以上の着色剤粒子を含有する高着色結晶性ポリエス
テル系樹脂層(A)4と、最表面に位置し、20重量%
以下の着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子を前記樹脂層
(A)より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系樹
脂層(B)5と、金属板側に位置し、20重量%以下の
着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子を前記樹脂層(A)
より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系樹脂層
(C)6とを備えている。
【0016】これらの図1及び図2の何れの場合にも、
金属板2の缶内面となる側には、クリアーな延伸ポリエ
ステル層7が積層されている。
【0017】樹脂外面被覆による金属板の隠蔽力を増大
させるためには、樹脂中の着色剤粒子の濃度を増大させ
る必要があることは、既に指摘したとおりであるが、本
発明では、缶の外面となるべき延伸ポリエステル系樹脂
被覆層を、下地層乃至中間層(A)と外表面層(B)或
いは更に下地層(C)との積層構造とし、上記下地層乃
至中間層(A)には10重量%以上の多量の着色剤粒子
を配合して隠蔽力を向上させ、一方外表面層(B)には
中間層よりも低い濃度で着色剤粒子を配合することによ
り、絞りしごき加工時における工具の摩耗を防止し、ま
た、加工時におけるフィルムの削れ乃至摩耗を防止する
ことができる。
【0018】また、下地層(C)にも中間層よりも低い
濃度で着色剤を含有させることにより、金属基体との密
着性を向上させ、ラミネート板の加工性を向上させ、成
形後の缶の耐腐食性を向上させることができる。
【0019】添付図面図3を参照されたい。図3は、樹
脂被覆金属板についてモデル動摩耗試験(詳細は後述、
原理は図6参照)を行った場合の結果、即ち表層の二酸
化チタンの含有量と、動摩擦係数及び鋼球摩耗体積との
関係を示している。
【0020】この結果によると、二酸化チタンの含有量
が増大するにつれて、動摩擦係数も摩耗体積も共に増大
するが、摩耗体積は二酸化チタンの含有量が20重量%
を越える付近から急激に大きくなっている。これが、外
表面層(B)の着色剤粒子の含有量を20重量%以下と
し且つその含有量を下地層乃至中間層(A)のそれより
も低くしている一つの理由である。
【0021】後述する例を参照されたい。一定量の二酸
化チタンを単一のポリエステル層に含有させた(含有量
25重量%)フィルムを張り合わせたラミネート板を絞
りしごき成形に付した場合、缶成形後には、ボトム凹
み、抜け不良、破胴等が発生し、実際にしごきリングに
は傷の発生も認められるのに対して、外表面層、下地層
から成る同じ厚みの積層フィルムとし、上記と同じ量の
二酸化チタンを下地層に設け、外表面層には低濃度に配
合したラミネート板を絞りしごき加工に付した場合に
は、上記の成形不良は全く認められず、しごきリングの
摩耗も全く認められないのである。
【0022】本発明においては、中間層(A)に着色剤
粒子を高濃度で含有させ、外表面層(B)及び下地層
(C)に低濃度で含有させることが特に好ましい。即
ち、上記の3層構成のものでは、ポリエステルフィルム
を下層と上層との2層構成としたものに比して、ラミネ
ート板を絞りしごき成形に付し、実缶についてデンティ
ングテストを行ったとき、フィルム層の剥離と、貯蔵中
のフィルム下腐食(UFC)の発生とがより有効に防止
される。これは、着色剤含有量の少ない下地層(C)が
金属基体との接着性に優れていると共に、この下地層
(C)が衝撃緩和層として作用するためと考えられる。
【0023】本発明のこの態様において、中間層(A)
に着色剤を高濃度で含有させ、外表面層(B)及び下地
層(C)に低濃度で含有させることは、積層フィルムの
製膜、金属板へのラミネーション及び絞りしごき加工性
の点でも幾多の利点をもたらす。即ち、この多層フィル
ムは、対称或いは対称に近い構造となっているため、製
膜が容易であり、更に金属へのラミネーションに際して
も歪みを生ずることがなく、良好な作業性をもって積層
及び接着を行うことができる。また、歪みの少ない状態
でフィルムが積層されていること及び着色剤を低濃度で
含有する外表面層(B)及び下地層(C)が加工力が過
度に増大するのを防ぐため、しごき成形性を向上させ、
製缶速度を増大させることができる。
【0024】本発明の製缶用ラミネート板においては更
に、前記式(1)で定義されるボイド率を、ラミネート
板の延伸ポリエステル層全体について、0.1乃至10
体積%の範囲とすること、またシームレス缶について、
1乃至20体積%の範囲とすることが重要である。
【0025】一般に着色剤粒子のような異物粒子を含有
する樹脂フィルムを延伸すると、フィルム中にボイドを
発生する傾向があり、このボイド量は粒子の含有量が多
くなるほど多くなる傾向があり、また延伸の程度が大き
くなるほど多くなる傾向がある。更に、ラミネート板上
の延伸ポリエステル層では、ラミネート条件によって
も、ボイド量は変化する。更にまた、ラミネート板をシ
ームレス缶に成形すると、この成形段階で延伸ポリエス
テル層のボイド率は増大し、成形後の缶体を熱処理する
とボイド率は減少する傾向がある。
【0026】ラミネート板の場合、ポリエステル層のボ
イド率が0.1%を下回ると、ポリエステル層の分子配
向の程度がかなり低下し、腐食成分に対するポリエステ
ル層のバリアー性が不十分となり、またポリエステル層
の耐衝撃性も低下して、耐腐食性や耐衝撃性(耐デント
性)に劣ったシームレス缶が生成するようになる。一
方、ポリエステル層のボイド率が10%を上回ると、前
述した積層構成を採用しても、シームレス缶への成形に
際して、ポリエステルフィルム層の削れや割れを発生し
やすくなる。
【0027】また、シームレス缶の場合、ポリエステル
層のボイド率が1%を下回るものでは、ポリエステル層
の分子配向の程度が不十分で、前述したのと同様に、シ
ームレス缶の耐腐食性や耐衝撃性(耐デント性)が低下
する。一方、ポリエステル層のボイド率が20%を上回
るものでは、ポリエステル層の緻密さが失われ、フィル
ム下腐食(UFC)が発生したり、デント試験におい
て、フィル層が割れたり、剥離したりする傾向が大とな
り、やはり、シームレス缶の耐腐食性や耐衝撃性(耐デ
ント性)が低下する。更に、ポリエステル層のボイド率
が本発明で規定した範囲にあるものでは、缶の白さが増
強され、缶の風合いも向上しているという付加的な利点
もある。
【0028】[金属板]本発明では、金属板としては各
種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用され
る。
【0029】表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍
後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメ
ッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の
一種または二種以上行ったものを用いることができる。
好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板で
あり、特に10乃至200mg/m2 の金属クロム層と
1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化
物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐
腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例
は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する
硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算
で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロ
ム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われているこ
とが望ましい。
【0030】更に他の例としては、アルミニウムメッ
キ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板
が用いられる。
【0031】軽金属板としては、所謂アルミニウム板の
他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加
工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.
2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Z
n:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃
至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものであ
る。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量
が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理
或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ま
しい。更に、ジルコニウムやチタンの酸化物を主成分と
する化成皮膜あるいはポリアクリル酸−ジルコニウム塩
の複合皮膜等により表面処理されていてもよい。皮膜量
としては、固形分として、5〜300mg/m2 程度が
好ましい。
【0032】金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB
)は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによって
も相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚み
を有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合に
は、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の
場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのが
よい。
【0033】[ポリエステル系積層フィルム]本発明に
おいて、金属板のシームレス缶外面となる側に設ける延
伸熱可塑性ポリエステル層は、少なくとも2層以上の積
層フィルム構造であり、10重量%以上の着色剤粒子を
含有する結晶性ポリエステル系樹脂層(A)と、20重
量%以下の着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子が前記樹
脂層(A)より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル
系樹脂層(B)とを備え、ポリエステル樹脂層(B)が
最表面に積層されているという条件を満足する限り、任
意の層構成をとることができる。
【0034】一般に、前記高着色ポリエステル系樹脂層
(A)の着色剤粒子含有量が10乃至70重量%であり
かつ前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)の着色剤粒
子含有量が0乃至18重量%であることが好ましい。樹
脂層(A)の着色剤粒子の含有量が10重量%を下回る
と、着色剤粒子を高濃度で樹脂中に含有させるという本
発明の目的に適さなくなり、一方含有量が70重量%を
上回ると、シームレス缶への成形性が低下するようにな
る。また、樹脂層(B)の着色剤粒子含有量が18重量
%を越えると、シームレス缶への成形時に工具の摩耗が
生じたり、樹脂層の削れ等が発生するようになる。
【0035】前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)と
前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)の厚み比が2:
1乃至50:1の範囲にあることが好ましく、高着色ポ
リエステル樹脂層(A)の厚み比が上記範囲を下回る
と、樹脂層による隠蔽性が上記範囲にある場合に比して
低下する傾向があり、一方上記範囲を上回ると、シーム
レス缶への成形性に問題を生じやすくなる傾向がある。
【0036】前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層が
上記層(A)及び(B)に加えて、ポリエステル系樹脂
下地層(C)を有し、該ポリエステル樹脂下地層(C)
は高着色ポリエステル系樹脂層(A)よりも低い濃度で
着色剤粒子を含有することが、金属板への密着性の点で
好ましい。
【0037】この場合、高着色ポリエステル系樹脂層
(A)の着色剤粒子含有量が10乃至70重量%であ
り、かつ前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)及びポ
リエステル系樹脂下地層(C)の着色剤粒子含有量が0
乃至18重量%であることが、前述したのと同様な理由
で好ましい。
【0038】高着色樹脂層(A)と前記最表面樹脂層
(B)または前記下地層(C)の厚み比が2:1乃至5
0:1の範囲にあることが好ましい。
【0039】着色剤(顔料)の適当な例は次の通りであ
る。 黒色顔料 カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラッ
ク、アニリンブラック。 黄色顔料 黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネ
ラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネー
ブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエロ
ーG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、
ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パ
ーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ。 橙色顔料 赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジ
GTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、イン
ダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレン
ジG、インダスレンブリリアントオレンジGK。 赤色顔料 ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウ
ム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾ
ロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキ
レッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレー
キ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリア
ントカーミン3B。 紫色顔料 マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレ
ットレーキ。 青色顔料 紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクト
リアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタ
ロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化
物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーB
C。 緑色顔料 クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、
マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーン
G。 白色顔料 亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛。 体質顔料 バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイト
カーボン、タルク、アルミナホワイト。
【0040】着色剤の粒径は、一般に0.1乃至2.5
μm、特に0.1乃至2.0μmの範囲にあることが、
好ましい。即ち、粒径があまり大きいと、絞りしごき加
工性が悪くなる傾向があり、一方粒径があまりにも小さ
いと隠蔽力が低下する傾向がある。
【0041】本発明の目的に特に好適な着色剤は、二酸
化チタン特にルチル型或いはアナターゼ型の二酸化チタ
ンであり、このものは白色で大きい隠蔽力を有してい
る。また、二酸化チタンは防錆力にも優れている。
【0042】ポリエステル系樹脂としては、エチレンテ
レフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレ
フタレート、ブチレンイソフタレート及びエチレンナフ
タレートから成る群より選択された少なくとも1種のエ
ステル単位を主体とするポリエステルであることが、絞
りしごき加工性、機械的強度、耐腐食性、耐熱性等の点
で好ましく、このポリエステルは、ホモポリエステルで
も、上記エステル単位の2種以上或いは、上記エステル
単位の1種以上と他のエステル単位の1種以上とから成
る共重合ポリエステルでもよく、更にこれらのポリエス
テルの2種以上のポリエステルブレンド物でもよい。
【0043】また、積層フィルムの中間層(A)、外表
面層(B)及び下地層(C)を構成するポリエステル
は、互いに共通のものでも、或いは互いに異なるもので
もよい。例えば、中間層(A)を構成するポリエステル
は、着色剤の分散が容易に行えるように、比較的低融点
のポリエステルとし、外表面層(B)を構成するポリエ
ステルは、耐熱性を有するように、比較的高融点のポリ
エステルとすることができる。また、下地層(C)を構
成するポリエステルは、比較的低融点の熱接着性のある
ポリエステルとすることができる。
【0044】外表面層(B)のポリエステル系樹脂は1
80乃至270℃、特に200乃至270℃の融点を有
することが、容器の耐熱性と、フィルム層の機械的性質
と加工性の点で好ましい。
【0045】本発明に用いるポリエステル系樹脂は、テ
レフタル酸を主体とする二塩基酸とエチレングリコール
を主体とするジオールとから誘導されたホモポリエステ
ル或いは共重合ポリエステルであることが一般に好まし
い。
【0046】テレフタル酸以外の酸成分としては、イソ
フタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタ
レン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−
4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフ
タル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバ
シン酸等の二塩基酸類や、トリメリット酸、ピロメリッ
ト酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラ
カルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,
3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シ
クロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,
3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸等を挙げる
ことができる。勿論、これらは、単独でも或いは2種以
上の組み合わせでも使用される。
【0047】また、エチレングリコール以外のアルコー
ル成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノ
ールAのエチレンオキサイド付加物等のジオール類や、
ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロール
プロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビト
ール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチ
ル)シクロヘキサン等の多価アルコール等が挙げられ
る。勿論、これらは、単独でも或いは2種以上の組み合
わせでも使用される。
【0048】共重合ポリエステルのジオール成分として
は、エチレングリコールを主体とするものが好ましい。
ジオール成分の95モル%以上、特に98モル%以上が
エチレングリコールからなることが、機械的性質から有
利である。
【0049】これらのホモポリエステル或いは共重合ポ
リエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべき
であり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン
混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至
1.5、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのがよい。
【0050】好適な共重合ポリエステルは、平均で、テ
レフタル酸100乃至80%及びイソフタル酸0乃至2
0%からなる。平均という意味は、このポリエステル系
フィルムは、イソフタル酸の含有量を異にする複数種の
共重合ポリエステルのブレンド物でもよいし、イソフタ
ル酸の含有量を異にする複数種の共重合ポリエステルの
積層フィルムであってもよいことを意味する。後者の場
合、イソフタル酸の含有量の多い共重合ポリエステルが
下地層(C)、即ち金属板に接する側に位置することに
なる。
【0051】本発明に用いる着色剤含有ポリエステルフ
ィルム層においては、積層フィルムの全体の厚みが2乃
至50μm、特に5乃至50μmの範囲にあることが好
ましく、上記範囲よりも薄いときには、耐腐食性が十分
ではなく、一方上記範囲よりも大きいときには、絞りし
ごき性が低下する傾向がある。
【0052】本発明では、ラミネート板の製造に、延伸
された着色剤粒子含有ポリエステルフィルムを使用する
が、このフィルムは、ラミネートされた状態において、
前述した範囲のボイド率を有するものでなければならな
い。
【0053】二軸延伸フィルムは、延伸温度に加熱され
たポリエステルフィルムを長手方向及び横断方向に延伸
することにより製造されるが、着色剤粒子を高濃度で含
有するポリエステルでは、この延伸に際して、内部にボ
イドが発生する。本発明の目的に適した延伸ポリエステ
ルフィルムは、例えば、逐次二軸延伸法では、長手方向
の延伸を多段で延伸し、その後横断方向を延伸する方法
の方が、通常の逐次二軸延伸法よりボイド率の少ないフ
ィルムが得られる。又、延伸を長手方向及び横断方向に
同時に延伸する同時二軸延伸法で行うこともボイド率を
少なくできるので、本発明の目的に適している。
【0054】フィルムの二軸配向の程度は、X線回折法
などで確認することができる。フィルムの二軸配向の程
度は、下記式を満足するX線回折強度比を有することが
よい。 である。X線源はCuKαX線を用いた。
【0055】勿論、このポリエステル系積層フィルムに
は、それ自体公知のフィルム用配合剤、各種帯電防止
剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができ
る。本発明で用いるフィルムでは、前記最表面ポリエス
テル樹脂層(B)に0.3μm以上の径の表面滑剤が
0.01乃至1重量%含まれていることが好ましい。
【0056】一般に必要でないが、接着用プライマーを
用いる場合には、フィルムへの接着用プライマーとの密
着性を高めるために、二軸延伸ポリエステル積層フィル
ムの表面をコロナ放電処理しておくことが一般に望まし
い。コロナ放電処理の程度は、そのぬれ張力が44dy
ne/cm以上となるようなものであることが望まし
い。この他、フィルムへのプラズマ処理、火炎処理等の
それ自体公知の接着性向上表面処理やウレタン樹脂系、
変性ポリエステル樹脂系等の接着性向上コーティング処
理を行っておくことも可能である。
【0057】尚、缶内面側となる側に設ける他の樹脂層
としては、着色剤を配合していない以外は、上記と同様
なポリエステル系フィルムが使用される。このフィルム
は単層フィルムでも、積層フィルムであってもよい。
【0058】[ラミネート板の製造方法]本発明に用い
るポリエステル−金属ラミネート板は、着色剤粒子含有
ポリエステル系積層フィルムを下地層の面で金属に熱接
着させることにより製造することができる。
【0059】ポリエステル−金属ラミネート板の製造方
法を説明するための図4において、金属板2を加熱ロー
ル10により用いるポリエステルの融点(Tm)以上の
温度(T1 )に加熱し、ラミネートロール11、11間
に供給する。一方、缶外面側にあたるポリエステル多層
フィルム3は、供給ロール12から巻きほぐされ、ラミ
ネートロール11、11間に、又、缶内面側にあたるポ
リエステル系フィルム7は供給ロール13から巻きほぐ
されラミネートロール11、11間に、双方が金属板2
をサンドイッチする位置関係で供給される。ラミネート
ロール11、11は、加熱ロール10よりも若干低い温
度(T2 )に保たれており、金属板2の両面にポリエス
テルフィルムを熱接着させる。ラミネートロール11、
11の下方には、形成されるラミネート板14を急冷す
るための冷却水15を収容した水槽が設けられており、
この水槽中にラミネート板を導くガイドローラ16が配
置されている。ラミネートロール11、11と冷却水1
7との間には一定の間隔のギャップ18を形成し、この
ギャップ18に保温機構19を設けて、一定の温度範囲
(T3 )に保持し、接着を促進するようにすることがで
きる。
【0060】着色剤粒子含有ポリエステル層のボイド率
は、ラミネートによって減少する傾向があり、一般に温
度が高くなると減少の度合いも大きくなる傾向がある。
本発明においては、ボイド率が0.1乃至10体積%と
なるようにラミネート条件を設定する。
【0061】金属板の加熱温度(T1 )は、一般に(T
m−50)℃乃至(Tm+100)℃、特に(Tm−5
0)℃乃至(Tm+50)℃の温度が適当であり、一方
ラミネートロール11の温度T2 は、(T1−300)
℃乃至(T1−10)℃、特に(T1−250)℃乃至
(T1−50)℃の範囲が適当である。ラミネートロー
ル通過後のラミネート板を、保温域で保温するのが有効
であり、この保持温度(T3 )は、ラミネートロール1
1の温度T2 を基準にして、(T2−50)℃乃至(T2
+50)℃の範囲が適当である。上記温度T3 への保持
時間は0.1乃至10秒、特に0.1乃至3秒が適当で
ある。
【0062】ポリエステルフィルムと金属素材の間に所
望により設ける接着プライマーは、金属素材とフィルム
との両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐
腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種
々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレ
ゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール
型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料で
あり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:5
0乃至5:95重量比、特に40:60乃至10:90
の重量比で含有する塗料である。
【0063】接着プライマー層は、一般に0.01乃至
10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は
予め金属素材上に設けてよく或いは予めポリエステルフ
ィルム上に設けてもよい。
【0064】[シームレス缶の製造]本発明では、上記
の積層ポリエステル−金属ラミネート板をポンチとダイ
スとの間で、有底カップに絞り−深絞り成形し、少なく
とも最終段階で、ポンチのワンストロークで、同時の曲
げ伸しとしごきとによりカップ側壁部の薄肉化を行なう
ことによりシームレス缶を製造する。既に指摘したとお
り、着色剤粒子含有ポリエステル層を備えたラミネート
の絞り成形では、ポリエステル層のボイド率が増加する
傾向にあるが、本発明では、シームレス缶の側壁部の薄
肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重によ
る変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形
(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行うこと
により、ボイド率の増大を抑制することができる。
【0065】ラミネート板の絞り−しごき成形は次の手
段で行われる。即ち、図5に示す通り、被覆金属板から
成形された前絞りカップ21は、このカップ内に挿入さ
れた環状の保持部材22とその下に位置する再絞り−し
ごきダイス23とで保持される。これらの保持部材22
及び再絞り−しごきダイス23と同軸に、且つ保持部材
22内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ24が
設けられる。再絞り−しごきポンチ24と再絞り−しご
きダイス23とを互いに噛みあうように相対的に移動さ
せる。
【0066】再絞り−しごきダイス23は、上部に平面
部25を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コ
ーナー部26を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下
方に向けて径の増大するテーパー状のアプローチ部27
を有し、このアプローチ部に続いて小曲率部28を介し
て円筒状のしごき用のランド部(しごき部)29を備え
ている。ランド部29の下方には、逆テーパ状の逃げ3
0が設けられている。
【0067】前絞りカップ21の側壁部は、環状保持部
材22の外周面31から、その曲率コーナ部32を経
て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材22の環状
底面33と再絞りダイス23の平面部25とで規定され
る部分を通り、再絞りダイス23の作用コーナ部26に
より軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ21よ
りも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コ
ーナー部26において、コーナー部26と接する側の反
対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コ
ーナー部と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた
後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ば
しによる薄肉化が行われる。
【0068】曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、
その外面が径の次第に増大する小テーパー角のアプロー
チ部27と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき
部29に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する
行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ば
し後のラミネート板を安定化させ、且つ側壁部の径を若
干縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし
直後のラミネート板は、曲げ伸ばしによる振動の影響が
あり、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安
定な状態にあリ、これを直ちにしごき加工に付した場合に
は、円滑なしごき加工を行い得ないが、側壁部の外面側
をアプローチ部27と接触させてその径を縮小させると
共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の
影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させ
て、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0069】アプローチ部27を通過した側壁部は、し
ごき用のランド部(しごき部)29と再絞り−しごきポ
ンチ24との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制
される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層
体元厚(t)の30乃至90%の厚みとなるように定め
る。尚、しごき部導入側の小曲率部28は、しごき開始
点を有効に固定しながら、しごき部29への積層体の導
入を円滑に行うものであり、ランド部29の下方の逆テ
ーパ状の逃げ30は、加工力の過度の増大を防ぐもので
ある。
【0070】再絞り−しごきダイス23の曲率コーナー
部26の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上で
は、ラミネート板の肉厚(t)の2.9倍以下、特に
2.5倍以下であるべきであるが、この曲率半径があま
り小さくなるとラミネート板の破断が生じることから、
ラミネート板の肉厚(t)の1倍以上、特に1.2倍以
上であるべきである。
【0071】テーパー状のアプローチ部27のアプロー
チ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至10゜、特
に1.5乃至8゜を有するべきである。このアプローチ
部角度が上記範囲よりも小さいと、ポリエステルフィル
ム層の配向緩和やしごき前の安定化が不十分なものとな
り、アプローチ部角度が上記範囲よりも大きいと、曲げ
伸ばしが不均一な(戻し変形が不十分な)ものとなり、
何れの場合もフィルムの割れや剥離を生じる。
【0072】小曲率部28の曲率半径Riは、しごき開
始点の固定を有効に行う上では、ラミネート板の肉厚
(t)の1.0倍以下であるべきである。この曲率半径
があまり大きくなるとしごき加工が有効に行われない。
【0073】しごき用のランド部29と再絞り−しごき
ポンチ24ポンチとクリアランスは前述した範囲にある
が、ランド長Lは、一般に0.5乃至3mm、特に0.
7乃至1.5mmの長さを有しているのがよい。この長
さが上記範囲よりも大きいと加工力が過度に大きくなる
傾向があり、一方上記範囲よりも小さいとしごき加工後
の戻りが大きく、好ましくない場合がある。
【0074】シームレス缶を製造するに際して、表面の
ポリエステル層は十分な潤滑性能を付与するものである
が、より潤滑性を高めるために、各種油脂類或いはワッ
クス類等の潤滑剤を少量塗布しておくことができる。勿
論、潤滑剤を含有する水性クーラント(当然冷却も兼ね
る)を使用することもできるが、操作の簡単さの点では
避けた方がよい。
【0075】また、再絞り−しごき加工時の温度(しご
き終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点
(Tg)よりも高い温度で成形するが、具体的には(T
g+10℃)から融点未満で成形するのが好ましい。こ
のため、工具の加温を行ったり、或いは逆に冷却を行う
ことが好ましい。
【0076】次いで絞り成形後の容器を、少なくとも一
段の熱処理に付することができる。この熱処理には、種
々の目的があり、加工により生じるフィルムの残留歪を
除去すること、加工の際用いた滑剤を表面から揮散させ
ること、表面に印刷した印刷インキを乾燥硬化させるこ
と等が主たる目的である。この熱処理には、赤外線加熱
器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ自体公知の加熱装
置を用いることができる。また、この熱処理は一段で行
ってもよく、2段或いはそれ以上の多段で行うこともで
きる。熱処理の温度は、180乃至240℃の範囲が適
当である。熱処理の時間は、一般的にいって、1秒乃至
10分のオーダーである。
【0077】熱処理後の容器は急冷してもよく、また放
冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷
操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしか
も金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急
冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしで
も、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られる
のである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散
布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0078】得られた缶は、所望により、一段或いは多
段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻
締用の缶とする。
【0079】
【実施例】本発明を次の例で説明する。本発明の特性値
は以下の測定法による。
【0080】素板厚に対する缶側壁部の厚み 積層ラミネート板の素板厚をt0、成形後の缶側壁部の
厚みをt1としたとき、素板厚に対する缶側壁部の厚み
(%)は、 t1/t0×100 より求めた。
【0081】モデル動摩擦試験 工具摩耗のモデル評価を行うために、積層ラミネート板
の外表面にあたる側に鋼球を接触させて動摩擦試験を行
った。図6に示すとおり、鋼球はラミネート板上を円と
なるように走査させ、一公転毎に一方方向に約0.45
mmずらして常に新しい外表面上を走査させた。鋼球支
持体に固定された鋼球にかかる荷重Wを506.7g、
鋼球の回転速度を60回公転/分、一公転の直径Lを約
149.5mmとしたとき、摩耗の走査を1分40秒間
行った。このときの動摩擦抵抗Fr(g)を測定した。
動摩擦抵抗の測定結果の一例を図7に示す。モデル動摩
擦試験より、以下に示す動摩擦係数、鋼球摩耗量、フィ
ルム表面削れ評価を行った。測定は常温で行った。
【0082】−a.動摩擦係数の算出方法 動摩擦係数μk は、動摩擦抵抗Fk(g)、鋼球にかか
る荷重をW(g)としたとき、下記式より求めた。 μk = Fk / W −b.鋼球摩耗量の算出方法 モデル動摩擦試験に供した鋼球の摩耗痕の測定から鋼球
摩耗体積を近似した。使用した鋼球の半径をrとし、鋼
球面に現れた円形摩耗痕の直径をLとする。摩耗痕が円
形でない場合は平均化した値をLとした。体積は幾何学
的に、 で求められ、これを鋼球摩耗体積とした。ここで使用し
た鋼球は半径r=2.5mm、ビッカース硬度HV=9
80であった。 −c.フィルム表面の削れ評価 モデル動摩擦試験に供したフィルム表面を顕微鏡観察
し、フィルムの削れ状態を○、△、×で評価した。評価
基準とした削れの程度は、 ○:小〜中程度の削れ、(フィルムに亀裂は無い) △:大きい削れ、叉はフィルムに亀裂を生じる ×:フィルムが破れる で定義し、○を実用範囲とした。
【0083】ボイド率の測定 ラミネート板フィルム層或いは缶体フィルム層のボイド
率(体積%)は下記式より求めた。 式中、 ρp:樹脂の密度(g/cm3) ρt:着色剤の密度(g/cm3) C :着色剤の濃度(wt%) ρ :ラミネート板フィルム層或いは缶体フィルム層の密
度(g/cm3)。
【0084】−a.フィルム層の密度 密度勾配管を用いた浮沈法により、20℃で測定した。
測定は密度勾配管にサンプルを投入して1時間後に行っ
た。サンプリング部位は、ラミネート板では幅方向中央
部を、缶体では2ndカップのショックラインを含む缶
下部(およそ缶高さ10〜40mm)と缶胴の板厚が最
も薄くなっている缶上部(およそ缶高さ90mm)を、
それぞれ30mm角に切り出した。缶体は印刷工程前を
サンプルとした。得られたラミネート板及び缶体のサン
プル片は、水と塩酸が体積比で1:1の割合で混合した
液で金属板を溶解し、板から各フィルム層を単離した。
得られた各フィルム層は少なくとも24時間真空乾燥を
行い、前述の浮沈法により密度を測定した。なお、缶体
の密度は缶上部と缶下部の密度の小さい方(つまり、ボ
イド率が大きい方)をそのサンプルの値とした。
【0085】−b.樹脂の密度 樹脂の密度は、着色剤を含有したフィルムと同組成の着
色剤を含まない樹脂から近似した。着色剤を含まない樹
脂に製造工程中の熱履歴に相当する熱処理を行い、熱処
理した樹脂について−aに記述した浮沈法により密度
を測定し、樹脂の密度とした。例えば、ラミネート板の
場合、(樹脂の融点+20℃)で5分間熱処理した樹脂
の密度を測定し、これを樹脂の密度とした。缶体の場
合、215℃−5分間、205℃−5分間で熱処理した
樹脂の密度を測定し、これを樹脂の密度とした。
【0086】貯蔵試験 相対湿度80%、37℃の温度で貯蔵試験を行い3ケ月
後の缶の状態を調べた。
【0087】実験例1 素板厚0.18mm、調質質DR6のTFS(電解クロ
ム酸処理鋼板)の片面(容器の外面となるべき面)に表
1に示す構成の厚み25μm、融点225℃のイソフタ
ル酸共重合ポリエチレンテレフタレート積層二軸延伸フ
ィルムを、他方の面(容器の内面となるべき面)に厚み
25μm、融点225℃のイソフタル酸共重合ポリエチ
レンテレフタレート二軸延伸フィルムを、板温235
℃、ラミネートロール温度160℃、通板速度20m/
分で熱ラミネートし、直ちに水冷を行ってラミネート金
属板を得た。このラミネート全属板の両面にワックス系
潤滑剤を塗布し、直径166mmの円形ブランクを打ち
抜き、浅絞りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを
再絞りしごきを行い深絞りしごきカップを得た。この深
絞りしごきカップの諸特性は以下の通りであった。 カップ径 60mm カップ高さ 128mm 素板厚に対する缶側壁部の厚み 65% この深絞りカップを常法に従いドーミング成形を行い、
215℃にて熱処理を行った後、カップを放冷後、トリ
ミング加工、曲面印刷及び焼き付け乾燥、ネッキング加
工、フランジング加工を行って350g用シームレス缶
を得た。深絞りしごき成形直後の缶温はサーモビジョン
測定により95℃であった。連続で10万缶製缶した結
果は表1に示したが、製缶状態は安定しており、缶外面
のフィルムの削れなどの外観不良は見られなかった。一
方、用いた積層ラミネート板について、容器の外面とな
る面のモデル動摩擦試験を前述に示した様に行った結
果、削れの程度は小さく、評価結果は良好で実用範囲内
と判断した。
【0088】実験例2 表lの実験例2に示した構成のイソフタル酸共重合ポリ
エチレンテレフタレート積層二軸延伸フィルムを外面と
なるべき面に使用した以外は実験例1と同様に行い、3
50g用シームレス缶を得た。連続で10万缶製缶した
結果を表1に示したが、製缶状態は安定しており、缶外
面のフィルムの削れなどの外観不良は見られなかった。
深絞りしごき成形直後の缶温はサーモビジョン測定によ
り90℃であった。一方、用いた積層ラミネート板につ
いて、容器の外面となる面のモデル動摩擦試験を前述に
示した様に行った結果、小〜中程度の削れが生じたがフ
ィルムに亀裂は生じなかった。評価結果は良好で実用範
囲内と判断した。
【0089】実験例3 表1の実験例3に示した構成のイソフタル酸共重合ポリ
エチレンテレフタレート積層二軸延伸フィルムを外面と
なるべき面に使用した以外は実験例1と同様に行い、3
50g用シームレス缶を得た。連続で10万缶製缶した
結果を表1に示したが、製缶状態は安定しており、缶外
面のフィルムの削れなどの外観不良は見られなかった。
深絞りしごき成形直後の缶温はサーモビジョン測定によ
り90℃であった。一方、用いた積層ラミネート板につ
いて、容器の外面となる面のモデル動摩擦試験を前述に
示した様に行った結果、削れの程度は小さく、評価結果
は良好で実用範囲内と判断した。
【0090】実験例4 素板厚0.280mmに表lの実験例4に示した構成の
融点235℃のポリブチレンテレフタレート30重量%
を合むイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート
積層二軸延伸フィルムを外面となるべき面に使用し、内
面となるべき面に融点235℃のポリブチレンテレフタ
レート30重量%を合むイソフタル酸共重合ポリエチレ
ンテレフタレート二軸延伸フィルムを、板温を245
℃、ラミネートロール温度を120℃とした以外は実験
例1と同様に積層ラミネート板を得て、このラミネート
板を直径158mmの円板に打ち抜き、浅絞りカップを
得た。次いで、このカップを薄肉化再絞り一しごき加工
を行いカップを得た。この深絞りしごきカップの諸特性
は以下の通りであった。 カップ径 52mm カップ高さ 135mm 素板厚に対する缶側壁部の厚み 73% 実験例1と同様に行い、250g用シームレス缶を得
た。連続で10万缶製缶した結果は表lに示したが、製
缶状態は安定しており、缶外面のフィルムの削れなどの
外観不良は見られなかった。深絞りしごき成形直後の缶
温はサーモビジョン測定により110℃であった。一
方、用いた積層ラミネート板について、容器の外面とな
る面のモデル動摩擦試験を前述に示した様に行った結
果、小〜中程度の削れが生じたが、評価結果は良好で実
用範囲内と判断した。
【0091】実験例5 素板厚0.240mmに表1の実験例5に示した構成の
融点250℃ポリエチレンナフタレート・ポリエチレン
テレフタレート共重合積層二軸延伸フィルムを外面とな
るべき面に使用し、内面となるべき面に融点250℃の
ポリエチレンナフタレート・ポリ工チレンテレフタレー
ト共重合二軸延伸フィルムを、板温を280℃、とした
以外は実験例1と同様に積層ラミネート板を得て、この
ラミネート板を直径143mmの円板に打ち抜き、浅絞
りカップを得た。次いで、このカップを薄肉化再絞り−
しごき加工を行いカップを得た。この深絞りしごきカッ
プの諸特性は以下の通りであった。 カップ径 52mm カップ高さ 112mm 素板厚に対する缶側壁部の厚み 73% この深絞りしごきカップを陰圧缶用のドーミング成形に
賦し、更にドーミング成形後の熱処理温度を245℃と
した以外は実施例1と同様に行い、200g用シームレ
ス缶を得た。連続で10万缶製缶した結果は表1に示し
たが、製缶状態は安定しており、缶外面のフィルムの削
れなどの外観不良は見られなかった。深絞りしごき成形
直後の缶温はサーモビジョン測定により110℃であっ
た。一方、用いた積層ラミネート板について、容器の外
面となる面のモデル動摩擦試験を前述に示した様に行っ
た結果、削れの程度は小さく評価結果は良好で実用範囲
内と判断した。
【0092】実験例6 表lの実験例6に示した構成の融点250℃のポリエチ
レンナフタレート・ポリエチレンテレフタレート共重合
積層二軸延伸フィルムを外面となるべき面に使用し、内
面となるべき面に融点250℃のポリエチレンナフタレ
ート・ポリ工チレンテレフタレート共重合二軸延伸フィ
ルムを、板温を280℃とした以外は実験例1と同様に
行い、350g用シームレス缶を得た。連続で10万缶
製缶した結果を表1に示したが、製缶状態は安定してお
り、缶外面のフィルムの削れなどの外観不良は見られな
かった。深絞りしごき成形直後の缶温はサーモビジョン
測定により95℃であった。一方、用いた積層ラミネー
ト板について、容器の外面となる面のモデル動摩擦試験
を前述に示した様に行った結果、削れは小さく、評価結
果は良好で実用範囲内と判断した。
【0093】実験例7 表1の実験例7に示した構成の融点225℃のイソフタ
ル酸共重合ポリエチレンテレフタレート単層二軸延伸フ
ィルムを外面となるべき面に使用し、板温200℃、ラ
ミロール温度を80℃とした以外は実験例1と同様に行
い、350g用シームレス缶を得た。連続で7万缶程度
から缶外面のフィルム削れが多発し、安定した製缶状態
が得られなかった。缶の外観状態は実用性に適さないと
判断した。しごきリング表面に疵が付いていた。深絞り
しごき成形直後の缶温はサーモビジョン測定により95
℃であった。一方、用いたラミネート板について、容器
の外面となる面のモデル動摩擦試験を前述した様に行っ
た結果、フィルムの削れが大きく、更にフィルムに亀裂
や破れを生じていた。このため実用には適さないと判断
した。
【0094】実験例8 表1の実験例8に示した構成の融点226℃のイソフタ
ル酸共重合ポリエチレンテレフタレート単層二軸延伸フ
ィルムを外面となるべき面に使用し、板温度を190
℃、ラミネートロール温度を80℃とした以外は実験例
1と同様に行い、350g用シームレス缶を得た。深絞
りしごき成形直後の缶温はサーモビジョン測定により9
5℃であった。連続製缶直後から缶外面フィルムに亀裂
が生じたり、破胴したため、連続製缶不能であった。一
方、用いたラミネート板について、容器の外面となる面
のモデル動摩擦試験を前述した様に行った結果、フィル
ムの削れが大きく、更にフィルムに亀裂や破れを生じて
いた。このため実用には適さないと判断した。相対湿度
80%、37℃で3ヶ月経時した結果、缶胴部及びネッ
ク部にかけてフィルム下腐食がみられ、実用に適さない
と判断した。
【0095】実験例9 表1の実験例9に示した構成の融点235℃のイソフタ
ル酸共重合積層二軸延伸フィルムを外面となるべき面に
使用し、内面となるべき面に融点235℃のポリブチレ
ンテレフタレート二軸延伸フィルムを、板温度を210
℃、ラミロール温度を80℃とし、成形直後の缶温が5
0℃になる様に工具温度を冷却音調した以外は実験例4
と同様に行い、250g用シームレス缶を得た。連続で
3万缶程度から缶外面のフィルムが多発し、安定した製
缶状態が得られなかった。缶の外観状態は実用に適さな
いと判断した。しごきリング表面に若干疵が付いてい
た。一方、用いたラミネート板について、容器の外面と
なる面のモデル動摩擦試験を前述した様に行った結果、
フィルムの削れが大きく、更にフィルムに亀裂や破れを
生じていた。このため実用には適さないと判断した。製
缶後の缶のフランジ先端部にデラミを生じた。相対湿度
80%、37℃で3ヶ月経時した結果、缶胴全域にわた
りフィルム下腐食がみられ、実用に適さないと判断し
た。
【0096】
【表1】
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、着色剤粒子を含有する
延伸ポリエステル層を備えた製缶用ラミネート板におい
て、この延伸ポリエステル層を高着色ポリエステル層と
未着色乃至低着色ポリエステル表層の複層構成とすると
共に、この延伸ポリエステル全体のボイド率を一定の範
囲に制御することにより、シームレス缶への成形時にお
けるフィルムの削れ、割れ、ダストの発生等が防止さ
れ、また加工具の摩耗が低減されると共に、得られるシ
ームレス缶は隠蔽性、密着性、耐衝撃性、耐腐食性及び
風合いに優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製缶用ラミネート板の断面構造の一例
を示す断面図である。
【図2】本発明の製缶用ラミネート板の断面構造の他の
例を示す断面図である。
【図3】樹脂被覆金属板についてモデル動摩耗試験(詳
細は後述)を行った場合の結果、即ち表層の二酸化チタ
ンの含有量と、動摩擦係数及び鋼球摩耗体積との関係を
示すグラフである。
【図4】ポリエステル−金属ラミネート板の製造方法を
説明するための側面図である。
【図5】ラミネート板の絞り−しごき成形を説明するた
めの側断面図である。
【図6】測定に用いた動摩擦試験の原理を示す説明図で
ある。
【図7】動摩擦抵抗と経過時間との関係を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1 ラミネート板 2 金属板 3 ポリエステル多層フィルム 4 下地層或いは中間層(A) 5 表面層(B) 6 下地層(C) 7 他の樹脂層 10 加熱ロール 11、11 ラミネートロール 12 供給ロール 13 供給ロール 14 ラミネート板 15 冷却水 16 ガイドローラ 17 冷却水 18 一定の間隔のギャップ 19 保温機構 21 前絞りカップ 22 保持部材 23 再絞り−しごきダイス 24 再絞り−しごきポンチ 25 平面部 26 作用コーナー部 27 アプローチ部 28 小曲率部 29 ランド部 30 逆テーパ状の逃げ 31 外周面 32 曲率コーナー部 33 環状底面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今津 勝宏 神奈川県横浜市泉区和泉町6205−1 グ リーンハイムいずみ野27−101 (56)参考文献 特開 平6−39980(JP,A) 特開 平8−3334(JP,A) 実開 平3−8534(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65D 1/00 B32B 15/08 B65D 1/16 B21D 51/26

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板と金属板の表面に施された延伸熱
    可塑性ポリエステル系樹脂層とからなる製缶用ラミネー
    ト板において、前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層
    が、(A)10重量%以上の着色剤粒子を含有する高着
    色結晶性ポリエステル系樹脂層と、(B)20重量%以
    下の着色剤粒子を含有し且つ着色剤粒子が前記樹脂層
    (A)より低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系樹
    脂層との少なくとも2層を備え、結晶性ポリエステル系
    樹脂層(B)が最表面に積層され、且つ延伸熱可塑性ポ
    リエステル系樹脂層は、全体として、下記(1)式で示
    されるボイド率が0.1乃至10体積%であるものであ
    ることを特徴とする製缶用ラミネート板: 式中、 ρp:樹脂の密度(g/cm3) ρt:着色剤の密度(g/cm3) C :着色剤の濃度(wt%) ρ :ラミネート板フィルム層の密度(g/cm3)。
  2. 【請求項2】 前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)
    の着色剤粒子含有量が10乃至70重量%であり、かつ
    前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)の着色剤粒子含
    有量が0乃至18重量%であることを特徴とする請求項
    1記載の製缶用ラミネート板。
  3. 【請求項3】 前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)
    と前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)の厚み比が
    2:1乃至50:1の範囲にあることを特徴とする請求
    項1または2に記載の製缶用ラミネート板。
  4. 【請求項4】 前記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層
    が上記層(A)及び(B)に加えて、ポリエステル系樹
    脂下地層(C)を有し、該ポリエステル樹脂下地層
    (C)は高着色ポリエステル系樹脂層(A)よりも低い
    濃度で着色剤粒子を含有することを特徴とする請求項1
    記載の製缶用ラミネート板。
  5. 【請求項5】 前記高着色ポリエステル系樹脂層(A)
    の着色剤粒子含有量が10乃至70重量%であり、かつ
    前記最表面ポリエステル系樹脂層(B)及びポリエステ
    ル系樹脂下地層(C)の着色剤粒子含有量が0乃至18
    重量%であることを特徴とする請求項4記載の製缶用ラ
    ミネート板。
  6. 【請求項6】 前記高着色樹脂層(A)と前記最表面樹
    脂層(B)または前記下地層(C)の厚み比が2:1乃
    至50:1の範囲にあることを特徴とする請求項4また
    は5に記載の製缶用ラミネート板。
  7. 【請求項7】 着色剤粒子が酸化チタンであることを特
    徴とする請求項1乃至6何れかに記載のラミネート板。
  8. 【請求項8】 前記最表面ポリエステル樹脂層(B)に
    0.05μm以上の径の表面滑剤が0.01乃至1重量
    %含まれていることを特徴とする請求項1乃至7の何れ
    かに記載の製缶用ラミネート板。
  9. 【請求項9】 前記ポリエステル系樹脂がエチレンテレ
    フタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンテレフ
    タレート、ブチレンイソフタレート及びエチレンナフタ
    レートからなる群より選択された少なくとも1種のエス
    テル単位を主体とするポリエステルであることを特徴と
    する請求項1乃至8の何れかに記載の製缶用ラミネート
    板。
  10. 【請求項10】 前記最表面ポリエステル樹脂層(B)
    が180乃至270℃の融点を有することを特徴とする
    請求項1乃至9の何れかに記載の製缶用ラミネート板。
  11. 【請求項11】 金属板と金属板の表面に施された延伸
    熱可塑性ポリエステル系樹脂層とからなり且つ、前記延
    伸熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、(A)10重量%
    以上の着色剤粒子を含有する高着色結晶性ポリエステル
    系樹脂層と、(B)20重量%以下の着色剤粒子を含有
    し且つ着色剤粒子を前記樹脂層(A)より低い濃度で含
    有する結晶性ポリエステル系樹脂層と、或いは更に
    (C)着色剤粒子を高着色ポリエステル系樹脂層(A)
    よりも低い濃度で含有する結晶性ポリエステル系下地樹
    脂層とを少なくとも含有する多層フィルムであって、前
    記結晶性ポリエステル系樹脂層(B)が最表面に積層さ
    れたラミネート板をポンチとダイスとの間で、前記延伸
    熱可塑性ポリエステル系樹脂層が少なくとも外面となる
    ように、絞り及びしごき成形、熱処理工程、及びネック
    イン、フランジ工程を施こすことにより形成され、且つ
    外面ポリエステル系樹脂層が、全体として、下記式
    (1)で示されるのボイド率が1乃至20体積%である
    ものであることを特徴とするシームレス缶: 式中、 ρp:樹脂の密度(g/cm3) ρt:着色剤の密度(g/cm3) C :着色剤の濃度(wt%) ρ :缶体フィルム層の密度(g/cm3)。
  12. 【請求項12】 缶側壁部は積層体元厚の30%乃至9
    0%の厚みとなるように薄肉化することを特徴とする請
    求項11記載のシームレス缶。
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