JPH10119183A - 積層体及びそれを用いた容器 - Google Patents

積層体及びそれを用いた容器

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JPH10119183A
JPH10119183A JP23469097A JP23469097A JPH10119183A JP H10119183 A JPH10119183 A JP H10119183A JP 23469097 A JP23469097 A JP 23469097A JP 23469097 A JP23469097 A JP 23469097A JP H10119183 A JPH10119183 A JP H10119183A
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知正 毎田
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吉次 丸橋
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浩司 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温での熱履歴を受けた後での耐デント性が
顕著に改善されたポリエステル−金属積層体並びにこの
積層体から形成されたシームレス容器を提供するにあ
る。 【解決手段】 金属基体とポリエステルを主体とする樹
脂層とから成る積層体において、前記樹脂層が、(I)
ポリエチレンテレフタレート・セグメントと(II)ブチ
レングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリ
エステル・セグメントと(III )ブチレングリコールと
脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメ
ントとを、合計量を100重量部として、I:II:III
=10〜70:12〜81:3〜54の重量比で含有す
るポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該
ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当た
り0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イ
オウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することを特
徴とする積層体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属基体とこれに
積層されたポリエステルフィルムとから成る積層体並び
にこの積層体を絞り或いは更にしごき加工により成形し
たシームレス容器に関するものである。より詳細には、
耐熱デント性、高温での熱履歴を受けた後での耐デント
性が顕著に改善された積層体及びこの積層体から形成さ
れたシームレス容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、側面無継目缶(サイド・シームレ
ス缶)としては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティ
ン・フリー・スチール板等の金属素材を、絞りダイスと
ポンチとの間で少なくとも1段の絞り加工に付して、側
面継目のない胴部と該胴部に、継目なしに一体に接続さ
れた底部とから成るカップに形成し、次いで所望により
前記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工
を加えて、容器胴部を薄肉化したものが知られている。
また、しごき加工の代わりに、再絞りダイスの曲率コー
ナ部で曲げ伸ばして側壁部を薄肉化することも既に知ら
れている(特公昭56−50142号公報)。
【0003】また、側面無継目缶の有機被覆法として
は、一般に広く使用されている成形後の缶に有機塗料を
施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィルム
をラミネートする方法が知られており、特公昭59−3
4580号公報には、金属素材にテレフタル酸とテトラ
メチレングリコールとから誘導されたポリエステルフィ
ルムをラミネートしたものを用いることが記載されてい
る。また、曲げ伸ばしによる再絞り缶の製造に際して、
ビニルオルガノゾル、エポキシ、フェノリクス、ポリエ
ステル、アクリル等の被覆金属板を用いることも知られ
ている。
【0004】ポリエステル被覆金属板の製造について
も、多くの提案があり、例えば、特開平51−4229
号公報には、表面に二軸配向が残存しているポリエチレ
ンテレフタレートより成る被膜が記載され、更に特開平
6−172556号公報には、極限粘度[η]が0.7
5以上のポリエステルフィルムを金属ラミネートに用い
ることが提案されている。
【0005】また、特開平3−101930号公報に
は、金属板と、エチレンテレフタレート単位を主体とす
るポリエステルフィルム層と、必要により金属板とポリ
エステルフィルムとの間に介在する接着プライマー層と
の積層体から成り、該ポリエステルフィルム層は、式 Rx =IA /IB 式中、IA はポリエステルフィルム表面に平行な、面間
隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24゜から2
8゜)の回折面によるX線回折強度、IB はポリエステ
ルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(Cu
KαX線回折角が21.5゜から24゜)の回折面によ
るX線回折強度、で定義されるX線回折強度が0.1乃
至15の範囲内にあり且つ結晶の面内配向の異方性指数
が30以下であるフィルム層から成ることを特徴とする
絞り缶用被覆金属板が記載されており、また、上記被覆
金属板を絞り再絞り成形し、且つ再絞り成形に際して缶
胴側壁部を曲げ伸ばしにより薄肉化して成る薄肉化絞り
缶が記載されている。
【0006】ポリエステルの耐熱性や耐衝撃性を改善す
るために、ポリエステルに酸化防止剤を配合することは
よく行われており、また、金属板にラミネートするポリ
エステルフィルムの耐熱性や耐衝撃性を改善するため
に、ポリエステル中に酸化防止剤を配合することも既に
知られており、例えば、特開平7−138387号公報
には、酸化防止剤0.01乃至5重量%を含むポリエス
テル組成物より形成された金属ラミネート用ポリエステ
ル系フィルムが記載されており、特開平7−20703
9号公報には、融点が120乃至260℃、ジエチレン
グリコール成分を0.01乃至1重量%含有し、酸化防
止剤を0.001乃至1重量%含有することを特徴とす
る金属板ラミネート用ポリエステルフィルムが記載され
ている。
【0007】本発明者らは先に、金属基体とポリエステ
ルを主体とする樹脂層とから成る積層体において、前記
樹脂層が、(i)エチレンテレフタレート単位を主体と
するポリエステルと(ii) (a)ブチレングリコールと芳
香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチ
レングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエス
テル単位とを90:10乃至40:60のモル比で含む
共重合ポリエステルとを(i):(ii)=70:30乃
至10:90の重量比で含有する組成物から成ることを
特徴とする積層体及びこの積層体を絞り成形或いは更に
しごき成形して成るシームレス容器を提案した(これに
ついて特許出願中)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】実際の缶詰製品に要求
される実用的な耐衝撃性として、耐デント性と呼ばれる
ものがある。これは、缶詰製品を落下して、或いは缶詰
製品同士が相互に衝突して、缶詰製品に打痕と呼ばれる
凹みが生じた場合にもなお、被覆の密着性やカバレージ
が完全に保たれることが要求されるという特性である。
即ち、デント試験で被覆が剥離し或いは被覆にピンホー
ルやクラックが入る場合には、この部分から金属溶出や
孔食による漏洩等を生じて、内容物の保存性を失うとい
う問題を生じるのである。
【0009】次に、缶詰用缶の場合、被覆への熱処理の
影響を避けることができない。即ち、缶の外面に内容物
等を表示する印刷を施すのが普通であり、印刷インクを
焼き付けるための加熱の影響が、ポリエステルフィルム
に生じる。また、実際の製缶においては、樹脂被覆の歪
み除去安定化等を目的として、缶の加熱が行われる場合
もあり、この加熱によるポリエステルへの影響も無視で
きない。ポリエステルは、加熱により熱劣化、即ち分子
量が低下する傾向があり、これにより耐デント性が低下
し、金属基体との密着性低下或いは被覆性低下やネック
イン加工、巻締加工等の際の加工性が低下する。
【0010】本発明者らが先に提案した、特定組成のポ
リエステル組成物の層を備えた積層体は、加工性、耐デ
ント性、耐腐食性及び耐熱性の組み合わせに優れたもの
であるが、一定限度以上の温度での熱履歴を受けると、
耐デント性が著しく低下することが分かった。
【0011】従って、本発明の目的は、高温での熱履歴
を受けた後での耐デント性が顕著に改善されたポリエス
テル−金属積層体並びにこの積層体から形成されたシー
ムレス容器を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、金属基
体とポリエステルを主体とする樹脂層とから成る積層体
において、前記樹脂層が、(I)ポリエチレンテレフタ
レート・セグメントと(II)ブチレングリコールと芳香
族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメント
と(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから
誘導されたポリエステル・セグメントとを、合計量を1
00重量部として、I:II:III =10〜70:12〜
81:3〜54の重量比で含有するポリエステル乃至ポ
リエステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリ
エステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5
重量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少
なくとも一種類含有することを特徴とする積層体が提供
される。
【0013】本発明によればまた、金属基体とポリエス
テルを主体とする複層樹脂層とから成る積層体におい
て、前記複層樹脂層の表面樹脂層がエチレンテレフタレ
ート単位或いはエチレンテレフタレート/イソフタレー
ト単位を主体とするポリエステルから成り且つ前記複層
樹脂層の下地樹脂層が、(I)ポリエチレンテレフタレ
ート・セグメントと(II)ブチレングリコールと芳香族
二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメントと
(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘
導されたポリエステル・セグメントとを、合計量を10
0重量部として、I:II:III =10〜70:12〜8
1:3〜54の重量比で含有するポリエステル乃至ポリ
エステル組成物から成り且つ該ポリエステル乃至ポリエ
ステル組成物100重量部当たり0.01乃至1.5重
量部の分子量400以上の非イオウ系酸化防止剤を少な
くとも一種類含有することを特徴とする積層体が提供さ
れる。
【0014】本発明によれば更に、上記積層体をしぼり
成形或いは更にしごき成形して成ることを特徴とするシ
ームレス容器が提供される。
【0015】
【作用】本発明では、金属基体に積層されるポリエステ
ルとして、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメ
ントと(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とか
ら誘導されたポリエステル・セグメントと(III )ブチ
レングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリ
エステル・セグメントとを、合計量を100重量部とし
て、I:II:III =10〜70:12〜81:3〜54
の重量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成
物を用いることが第一の特徴であり、これにより、積層
体に優れた加工性、耐衝撃性(耐デント性)、耐腐食性
及び耐熱性を付与することができる。これらの特性は、
金属基体−ポリエステル積層体を絞り−再絞り加工或い
は絞り−しごき加工等に付して、シームレス缶を製造す
るときに極めて重要な特性である。
【0016】本発明に使用するポリエステルにおいて、
上記エチレンテレフタレート・セグメント(I)は、形
成される被覆に機械的強度や剛性及び耐熱性を付与する
成分であり、一方ポリエステル・セグメント(II)及び
(III )は形成されるポリエステル被覆のガラス転移温
度を低下させると同時に結晶化速度を速くし、微細結晶
を生成するとともに、ポリエステル被覆層の加工性を向
上させ、さらに缶の用途に適用した際の耐デント性を向
上させる成分であり、これらを組み合わせて用いること
により、耐熱性を低下させることなく、耐衝撃性の向上
が得られる。
【0017】即ち、ポリエステル・セグメント(II)及
びポリエステル・セグメント(III)を同時に組み込む
ことによって、デント試験後の金属露出による電流値を
約3桁低い値に抑制できる。
【0018】本発明のポリエステル乃至ポリエステル組
成物は、前述した重量比の組成を有することも重要であ
り、ポリエステル・セグメント(I)の量が70重量部
よりも多いときには、ポリエステル組成物の耐衝撃性が
本発明の範囲内にある場合に比して低下する傾向があ
り、一方ポリエステル(I)の量が10重量部よりも少
ないときには、ポリエステル組成物の耐熱性が本発明の
範囲内にある場合に比して低下する傾向があり、更にフ
ィルムが工具に粘着したりする成形上の問題があり、い
ずれも好ましくない。
【0019】また、ブチレングリコールと芳香族二塩基
酸とから誘導されたポリエステル・セグメント(II)の
量が81重量部よりも多いときや、ブチレングリコール
と脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグ
メント(III )の量が54重量部よりも多いときには、
耐衝撃性が本発明の場合に比して低下する傾向があり、
特にシームレス缶にしたとき、衝撃を受けた際の金属露
出(ERV)が大きくなる。また、ポリエステル・セグ
メント(II)の量が12重量部よりも少ないときや、ポ
リエステル・セグメント(III )の量が3重量部よりも
少ないときには、耐衝撃性能がやはり本発明の場合に比
して低下する傾向があり、特にシームレス缶にしたと
き、衝撃を受けた際の金属露出(ERV)が大きくな
り、耐衝撃性に関してポリエステル・セグメント(II)
及び(III )の量には最適範囲がある。
【0020】本発明においては、ポリエステル組成物が
(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体とす
るポリエステルと、ポリエステル・セグメント(II)及
びポリエステル・セグメント(III )を含む共重合ポリ
エステルとのブレンド物であることが、耐熱性の点で、
特に好ましい。たとえば同じ成分比であっても、これら
三者が共重合ポリエステル中に存在する場合には、その
融点が低下する傾向があるが、上記のブレンドの形で用
いることにより、被覆の耐熱性が向上する。
【0021】本発明では、上記のポリエステル乃至ポリ
エステル組成物100重量部当たり分子量400以上の
非イオウ系酸化防止剤を0.01乃至1.5重量部の範
囲で含有させることが第二の特徴であり、これにより、
高温での熱処理を受けた後での耐デント性を著しく向上
させることができる。
【0022】即ち、金属−ポリエステル積層体を絞り成
形して成るシームレス缶では、ポリエステル被覆層に歪
みが残留しており、缶の耐久性や耐熱水性の点では、こ
の歪みを高温での熱処理により除去することが望まし
い。本発明で用いる特定のポリエステル乃至ポリエステ
ル組成物は、それ自体耐デント性に優れたものではある
が、例えば240℃で3分間の熱処理を受けると、デン
ト試験後の電流値(金属露出の尺度)が十数mAという
大きな値に達するのであり(後述する比較例1及び8、
9参照)この原因は、ポリエステルが著しい熱減成を受
けるためである。
【0023】樹脂の熱減成防止のために、酸化防止剤を
配合することは一般的であるが、例えば酸化防止剤とし
て最も一般的な2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル(BHT)を配合したのでは、熱処理時における熱減
成防止も達成されず、デント試験後の電流値も依然とし
て高いレベルである。これはBHTの分子量が小さく、
比較的高温となるポリエステルの溶融押出し条件では、
その多くが揮発してしまい、熱処理時には十分な酸化防
止効果が得られないことに起因する。(後述する比較例
3参照)。
【0024】これに対して、分子量400以上の非イオ
ウ系酸化防止剤を選択し、これを前記ポリエステル乃至
ポリエステル組成物に配合すると、熱処理時における減
成が完全に防止されると共に、デント試験後における電
流値を未添加の場合の値よりも4桁低い値に抑制できる
のであって、これは本発明における予想外の効果であ
る。尚、使用する酸化防止剤を非イオウ系と限定してい
るのは、イオウ系の酸化防止剤では、添加したポリエス
テル組成物に着色や異臭が生じるためである(後述する
比較例2参照)。
【0025】本発明では、上記酸化防止剤を0.01乃
至1.5重量部の限定された量で用いることも重要であ
り、上記範囲を下回ると所定の効果が得られなく、一方
上記範囲を上回ると、ポリエステルのゲル化を生じて被
膜の平滑性が失われてシームレス缶への成形が困難とな
る傾向がある。
【0026】本発明の積層体及びシームレス容器におい
て、上記ポリエステル・セグメント(I)(II)及び
(III )を含有する酸化防止剤配合ポリエステル乃至ポ
リエステル組成物は、少なくとも、耐食性が問題となる
缶内面側に設けるべきであり、これは単層で設けても、
或いは多層で設けてもよい。後者の場合、酸化防止剤配
合ポリエステル層を下地樹脂層として設け、この下地樹
脂層の上に表面樹脂層として、エチレンテレフタレート
単位或いはエチレンテレフタレート/イソフタレート単
位を主体とするエチレンテレフタレート系ポリエステル
を設けるのが、加工性、耐食性、耐衝撃性、フレーバー
保持性等の総合的見地から望ましい。
【0027】本発明において、ポリエステルを主体とす
る層は、押出コートにより金属基体上に設けられていて
も、或いは二軸延伸フィルムの形で金属基体上に熱接着
されていてもよい。前者の場合、ポリエステルを製膜
し、二軸延伸することなしに直接ラミネートすることが
でき、この場合にも十分にシームレス缶に加工でき、こ
の缶においても前述した諸特性が得られるという利点が
ある。このため、前者の態様によれば、諸工程を省略し
て、生産性を高め、設備費を節減して、高性能のシーム
レス缶を安価に提供できるという利点をもたらす。ま
た、後者の場合、フィルムの製膜工程やラミネート工程
での熱減成の程度が少なく、缶底部において、ポリエス
テルの二軸分子配向による耐衝撃性や耐腐食性の向上効
果を享受できるという利点がある。
【0028】
【発明の実施形態】
[ポリエステル組成物] (ポリエステル)本明細書において、セグメントとは、
通常使用されている意味、即ち、鎖状高分子の特性を統
計的に表現する際に使用される高分子鎖中の最小単位で
ある。本発明に用いるポリエステル乃至ポリエステル組
成物は、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメン
トと(II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから
誘導されたポリエステル・セグメントと(III )ブチレ
ングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエ
ステル・セグメントとを、合計量を100重量部とし
て、I:II:III =10〜70:12〜81:3〜54
の重量比、特にI:II:III =10〜55:18〜6
0:15〜54の重量比で含有する。即ち、これらの各
ポリエステル・セグメントは、それぞれ固有の特性を示
すものであることは、既に指摘したところであるが、こ
れらの各ポリエステル・セグメントは、統計的に上記の
組成比でポリエステル乃至ポリエステル組成物に含まれ
ていればよく、その存在状態は特に問わない。例えば、
ポリエステル相互のブレンド物でもよく、また共重合ポ
リエステルでもよい。しかしながら、本発明において
は、(I)エチレンテレフタレート・セグメントを主体
とするポリエステルと、ポリエステル・セグメント(I
I)及びポリエステル・セグメント(III )を含む共重
合ポリエステルとのブレンド物であることが好ましいの
で、以下この例について詳細に説明するが、本発明はこ
の場合に限定されない。
【0029】本発明で一方の成分として用いるエチレン
テレフタレート系結晶性ポリエステルは、エステル反復
単位の大部分、80モル%以上をエチレンテレフタレー
ト単位が占める結晶性ポリエステルが好適である。ホモ
ポリエチレンテレフタレートが耐熱性の点で好適である
が、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の
少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
【0030】テレフタル酸以外の酸成分としては、イソ
フタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安
息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキ
シエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピ
ン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸及びピ
ロメリット酸から成る群より選ばれた多塩基酸の少なく
とも1種が好適である。共重合成分としてイソフタル酸
を含むポリエステルは耐内容物性、内容物の香味保持性
等に優れている。
【0031】ジオール成分は、エチレングリコールのみ
からなることが好適であるが、本発明の本質を損なわな
い範囲で、それ以外のジオール成分、例えば、プロピレ
ングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレング
リコール、1,6−ヘキシレングリコール、ペンタエリ
スリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサン
ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド
付加物等の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
【0032】用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポ
リエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべき
であり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン
混合溶媒を用いて測定した極限粘度〔η〕は0.5乃至
1.5、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのがよい。
また、このポリエステルの融点(Tm)は、200乃至
290℃、特に210乃至280℃の範囲に、またガラ
ス転移点(Tg)は、20乃至90℃、特に30乃至9
0℃の範囲にあるのがよい。
【0033】本発明で他方の成分として用いる共重合ポ
リエステルは、(II)ブチレングリコールと芳香族二塩
基酸とから誘導されたエステル単位と(III )ブチレン
グリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル
単位とを前記量比で含む共重合ポリエステルである。
【0034】エステル単位(II)を構成する芳香族二塩
基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフ
タル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン
2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′
−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、
トリメリット酸、ピロメリット酸、3,4,3’,4’
−ビフェニルテトラカルボン酸等が挙げれるが、テレフ
タル酸が好適である。
【0035】エステル単位(III )を構成する脂肪族二
塩基酸成分としては、コハク酸、アゼライン酸、アジピ
ン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン
二酸、テトラデカン二酸、ダイマー酸等をあげることが
できるが、Tgを低下する効果が大きいことから長鎖の
脂肪族二塩基酸が好ましく、工業的生産の見地から特に
アジピン酸が好ましい。
【0036】ジオール成分は、ブチレングリコールのみ
からなることが好適であるが、本発明の本質を損なわな
い範囲内で、ブチレングリコール以外のジオール成分と
しては、エチレングリコール、プロピレングリコール、
ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAの
エチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上を含有
していてもよい。
【0037】この共重合ポリエステルは、芳香族エステ
ル単位(II)と 脂肪族エステル単位(III )とを前記
量比で含むことも重要であり、脂肪族エステル単位の含
有量が上記範囲よりも少ないときには、耐衝撃性(耐デ
ント性)の改善が不十分であり、一方上記範囲を上回る
と、被覆の耐熱性、加工性、腐食成分に対するバリアー
性等が低下するようになる。
【0038】この共重合ポリエステルも、フィルム形成
範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノ
ール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した極
限粘度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃至1.
5の範囲にあるのがよい。また、共重合ポリエステル
(ii)の融点(Tm)は、120乃至230℃、特に1
30乃至225℃の範囲に、またガラス転移点(Tg)
は、−30乃至30℃、特に−30乃至20℃の範囲に
あるのがよい。
【0039】本発明では、エチレンテレフタレート系ポ
リエステルと上記の特定の共重合ポリエステルとを前述
した量比となるようにブレンドして使用する。混合は乾
式混合で行っても、或いはメルトブレンドによって行っ
てもよい。
【0040】本発明で用いるポリエステル組成物は、エ
チレンテレフタレート系ポリエステルと共重合ポリエス
テルのブレンドであることに関連して、示差熱分析に付
すると、エチレンテレフタレート系ポリエステルに特有
の融点(Tm1 )、共重合ポリエステルに特有の融点
(Tm2 )を示す。勿論、各ピークの高さは両成分の配
合比に依存する。この事実は、均一の組成物であって
も、エチレンテレフタレート系ポリエステルと共重合ポ
リエステルとが主として互いに独立の相として存在して
いることを示している。
【0041】(酸化防止剤)本発明に用いる酸化防止剤
は、分子量400以上の酸化防止剤であり、これに限定
されるものではないが、高分子フェノール系酸化防止
剤、例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−
ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート)メタン(分子量1177.7)、1,1,3−
トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル
フェニル)ブタン(分子量544.8)、1,3,5−
トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブ
チル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量77
5.2)、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ
−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グ
リコールエステル(分子量794.4)、1,3,5−
トリス(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ
ベンジル)−s−トリアジン 2,4,6−(1H,3
H,5H)トリオン(分子量783.0)、トリエチレ
ングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチ
ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子
量586.8)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3
−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート(分子量638.9)等を用いるこ
とができる。中でも特に、テトラキス[メチレン−3
(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート)メタンが好適である。
【0042】分子量400以上の酸化防止剤の他の例と
して、トコフェロール系酸化防止剤、例えばα−型、β
−型、γ−型、δ−型等のトコフェロールを挙げること
ができる。α−トコフェロールが特に好適である。
【0043】これらの酸化防止剤は、前記ポリエステル
乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.01乃
至1.5重量部の量で用いる。
【0044】勿論、このポリエステル組成物には、それ
自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアン
チブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔
料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合
することができる。
【0045】本発明において、積層体の製造に予め製膜
されたポリエステルフィルムを使用する場合、このフィ
ルムは前述したブレンド物単独のフィルムであっても、
このブレンド物層を含む多層フィルムであってもよい。
多層フィルムの場合、下地樹脂層がブレンド物から成
り、表面樹脂層が前述したエチレンテレフタレート系結
晶性ポリエステル或いはエチレンテレフタレート単位を
主体としエチレンイソフタレート単位を20モル%以下
の量で含む共重合ポリエステルから成るのがよい。この
フィルムは、上記ポリエステル組成物をT−ダイ法やイ
ンフレーション製膜法でフィルムに成形し、このフィル
ムを延伸温度で、逐次或いは同時二軸延伸し、延伸後の
フィルムを熱固定することにより製造される。
【0046】本発明に使用するポリエステル系フィルム
の厚みは、全体として、2乃至100μm、特に5乃至
50μmの範囲にあるのが金属の保護効果及び加工性の
点でよい。多層フィルムの場合、ブレンド物層と、エチ
レンテレフタレート系ポリエステル層とは、96:4乃
至4:96の厚み比を有するのがよい。
【0047】ポリエステル系フィルムは一般に二軸延伸
されているべきである。二軸配向の程度は、X線回折
法、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確
認することができる。フィルムの二軸延伸の程度は、
0.04乃至0.18の複屈折を有するものが適当であ
る。フィルムの延伸は一般に80乃至130℃の温度
で、面積延伸倍率が2.5乃至16.0、特に4.0乃
至14.0となる範囲から、ポリエステルの種類や他の
条件との関連で、複屈折が前記範囲となる延伸倍率を選
ぶ。また、フィルムの熱固定は、130乃至240℃、
特に150乃至230℃の範囲から、やはり前記条件が
満足されるような熱固定温度を選ぶ。
【0048】一般に必要でないが、接着用プライマーを
用いる場合には、フィルムへの接着用プライマーとの密
着性を高めるために、二軸延伸ポリエステルフィルムの
表面をコロナ放電処理しておくことが一般に望ましい。
コロナ放電処理の程度は、そのぬれ張力が44dyne
/cm以上となるようなものであることが望ましい。
【0049】この他、フィルムへのプラズマ処理、火炎
処理等のそれ自体公知の接着性向上表面処理やウレタン
樹脂系、変性ポリエステル樹脂系等の接着性向上コーテ
ィング処理を行っておくことも可能である。
【0050】[金属板]本発明では、金属板としては各
種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用され
る。
【0051】表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍
後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメ
ッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の
一種または二種以上行ったものを用いることができる。
好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板で
あり、特に10乃至200mg/m2 の金属クロム層と
1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化
物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐
腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例
は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する
硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算
で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロ
ム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われているこ
とが望ましい。
【0052】更に他の例としては、アルミニウムメッ
キ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板
が用いられる。
【0053】軽金属板としては、所謂アルミニウム板の
他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加
工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.
2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Z
n:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃
至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものであ
る。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量
が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理
或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ま
しい。
【0054】金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB
)は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによって
も相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚み
を有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合に
は、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の
場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのが
よい。
【0055】[ラミネート及びその製造方法]本発明の
積層体の断面構造の一例を示す図1において、この積層
体1は金属基体2と少なくとも内面側に位置する酸化防
止剤含有ポリエステル組成物層3とから成っている。金
属基体2には外面被膜4が形成されているが、この外面
被膜4はポリエステル組成物層3と同様のものであって
もよいし、また通常の缶用塗料や樹脂(ポリエステル)
フィルム被覆であってもよい。
【0056】積層体の断面構造の他の例を示す図2にお
いて、酸化防止剤含有ポリエステル組成物層3と金属基
体2との間に接着用プライマーの層5を設けている以外
は、図1の場合と同様である。
【0057】積層体の断面構造の他の例を示す図3にお
いて、酸化防止剤含有ポリエステル組成物層3を下地樹
脂層とし、このポリエステル組成物層3の上にエチレン
テレフタレート系ポリエステルの表面樹脂層6を設けて
いる以外は図1の場合と同様である。
【0058】本発明に用いるポリエステル−金属ラミネ
ートは、前記ポリエステル組成物を溶融状態で金属基体
上に押出しコートして、熱接着させることにより製造す
ることができる。
【0059】ポリエステル−金属ラミネートの押出コー
ト法による製造方法を説明するための図4において、金
属板11を必要により加熱ロール12により予備加熱
し、チルロール13とニップロール14間に供給する。
一方、ポリエステル組成物は、押出機のダイヘッド15
を通して薄膜16の形に押し出し、チルロール13とニ
ップロール14間に金属板11と重ねられるように供給
される。チルロール13とニップロール14は、強制冷
却されており、金属板11にポリエステル組成物から成
る薄膜16を圧着して両者を熱接着させると共に両側か
ら急冷することにより積層体17を得る。
【0060】金属基体に対するポリエステル組成物の熱
接着は、溶融ポリエステル層が有する熱量と、金属板が
有する熱量とにより行われる。金属板の加熱温度
(T1 )は、一般に90乃至290℃、特に100乃至
280℃の温度が適当である。
【0061】二軸延伸ポリエステルフィルムを用いる製
造法の場合、図4のダイヘッドの代わりに、フィルムの
ロールを設け、巻き戻したフィルムをチルロール13と
ニップロール14間に供給するようにすればよい。この
場合、金属板の加熱ロール12による加熱を、ポリエス
テル組成物の融点以上の温度に加熱することが必要であ
る。
【0062】ポリエステルフィルムと金属素材の間に所
望により設ける接着プライマーは、金属素材とフィルム
との両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐
腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種
々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレ
ゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール
型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料で
あり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:5
0乃至5:95重量比、特に40:60乃至10:90
の重量比で含有する塗料である。
【0063】接着プライマー層は、一般に0.01乃至
10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は
予め金属素材上に設けてよく或いは予めポリエステルフ
ィルム上に設けてもよい。
【0064】[シームレス缶及びその製造方法]本発明
のシームレス缶の一例を示す図5において、このシーム
レス缶21は前述したポリエステル−金属ラミネート1
の絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき
加工により形成され、底部20と側壁部22とから成っ
ている。側壁部22の上端には所望によりネック部23
を介してフランジ部24が形成されている。この缶21
では、底部20に比して側壁部22は曲げ伸ばし或いは
更にしごき加工により積層体元厚の20乃至95%、特
に30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されてい
る。
【0065】本発明のシームレス缶は、上記のポリエス
テル−金属ラミネートをポンチとダイスとの間で、有底
カップに絞り−深絞り成形し、深絞り段階で曲げ伸し或
いは更にしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうこ
とにより製造される。即ち、薄肉化のための変形を、缶
軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と
缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせ
でしかもこの順序に行う。曲げ伸ばしはエチレンテレフ
タレート単位のc軸方向への分子配向を与え、一方しご
きはエチレンテレフタレート単位のベンゼン面のフィル
ム面に平行な分子配向を与える。
【0066】ラミネートの絞り−しごき成形は次の手段
で行われる。即ち、図6に示す通り、被覆金属板から成
形された前絞りカップ30は、このカップ内に挿入され
た環状の保持部材31とその下に位置する再絞り−しご
きダイス32とで保持される。これらの保持部材31及
び再絞り−しごきダイス32と同軸に、且つ保持部材3
1内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ33が設
けられる。再絞り−しごきポンチ33と再絞り−しごき
ダイス32とを互いに噛みあうように相対的に移動させ
る。
【0067】再絞り−しごきダイス32は、上部に平面
部34を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コ
ーナー部35を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下
方に向けて径の減少するテーパー状のアプローチ部36
を有し、このアプローチ部に続いて曲率部37を介して
円筒状のしごき用のランド部(しごき部)38を備えて
いる。ランド部38の下方には、逆テーパ状の逃げ39
が設けられている。
【0068】前絞りカップ30の側壁部は、環状保持部
材31の外周面40から、その曲率コーナ部41を経
て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材31の環状
底面42と再絞りダイス32の平面部34とで規定され
る部分を通り、再絞りダイス32の作用コーナ部35に
より軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ30よ
りも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コ
ーナー部35において、コーナー部35と接する側の反
対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コ
ーナー部35と接する側の部分は、作用コーナー部を離
れた後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ
伸ばしによる薄肉化が行われる。
【0069】曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、
その外面が径の次第に減少する小テーパー角のアプロー
チ部36と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき
部38に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する
行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ば
し後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干
縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直
後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があ
り、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定
な状態にあり、これを直ちにしごき加工に付した場合に
は、円滑なしごき加工を行うことができないが、側壁部
の外面側をアプローチ部36と接触させてその径を縮小
させると共に、内面側をフリーの状態にすることによ
り、振動の影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪み
も緩和させて、かつ曲げ伸ばしにより発生した熱も奪
い、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0070】アプローチ部36を通過した側壁部は、し
ごき用のランド部(しごき部)38と再絞り−しごきポ
ンチ33との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制
される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層
体元厚(t)の20乃至95%、特に30乃至85%の
厚みとなるように定める。尚、しごき部導入側の曲率部
37は、しごき開始点を有効に固定しながら、しごき部
38への積層体の導入を円滑に行うものであり、ランド
部38の下方の逆テーパ状の逃げ39は、加工力の過度
の増大を防ぐものである。
【0071】再絞り−しごきダイス32の曲率コーナー
部35の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上で
は、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべき
であるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネー
トの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の
1倍以上であるべきである。
【0072】テーパー状のアプローチ部36のアプロー
チ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至5゜を有す
るべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも
小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき
前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が
上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し
変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの
割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困
難となる。
【0073】しごき用のランド部38と再絞り−しごき
ポンチ33とクリアランスは前述した範囲にあるが、ラ
ンド長Lは、一般に0.5乃至30mmの長さを有して
いるのがよい。この長さが上記範囲よりも大きいと加工
力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲よりも
小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましくない場
合がある。
【0074】本発明のシームレス缶において、フランジ
部のポリエステル層は、過酷な巻締加工を受けることか
ら、缶側壁部のポリエステル層に比して、マイルドな加
工を受けていることが好ましい。これにより、巻締部の
密封性及び耐腐食性を向上させることができる。この目
的のため、しごき後の缶側壁部の上端に、缶側壁部の厚
みよりも厚いフランジ形成部が形成されるようにする。
即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフランジ部の厚みをt
2 とすると、t2 /t1 の比は、1.0乃至2.0、特
に1.0乃至1.7の範囲に定めるのがよい。
【0075】再絞り−しごき成形後のシームレス缶を示
す図7、図8及び図9において、シームレス缶50は、
素板厚とほぼ同じ厚みを有する底部51と、再絞り−し
ごき加工により薄肉化された側壁部52とから成るが、
側壁部52の上部には、これよりも厚肉のフランジ形成
部53が形成されている。
【0076】フランジ形成部53には、種々の構造があ
り、図8に示した例では、側壁部52の外面とフランジ
形成部53の外面とが同一径の円筒面上にあり、フラン
ジ形成部53の内面は側壁部52の内面よりも小さい径
を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再
絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされて
フランジ形成部53が位置する部分を他の部分に比して
小径にしておくことにより形成される。
【0077】フランジ形成部53の図7に示した例で
は、側壁部52の内面とフランジ形成部53の内面とが
同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の外面は
側壁部52の外面よりも大きい径を有している。このタ
イプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきダイのラ
ンド部と共に、このランド部に続く部分にランド部より
も小径のしごき部分を設けることで、フランジ形成部5
3と側壁部52とが形成される。
【0078】フランジ形成部53の図9に示した例で
は、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面より
も大きい径を有すると共に、フランジ形成部53の内面
は側壁部52の内面よりも小さい径を有している。この
タイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきポンチ
32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53
が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくと共
に、再絞り−しごきダイのランド部と、更に、このラン
ド部に続く部分にランド部よりも小径のしごき部分を設
けることで、フランジ形成部53と側壁部52とが形成
される。
【0079】本発明のシームレス缶を製造するに際し
て、表面のポリエステル層は十分な潤滑性能を付与する
ものであるが、より潤滑性を高めるために、各種油脂類
或いはワックス類等の潤滑剤を少量塗布しておくことが
できる。勿論、潤滑剤を含有する水性クーラント(当然
冷却も兼ねる)を使用することもできるが、操作の簡単
さの点では避けた方がよい。
【0080】また、再絞り−しごき加工時の温度(しご
き終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点
(Tg)よりも50℃高い温度以下で且つ10℃以上の
温度であることが好ましい。このため、工具の加温を行
ったり、或いは逆に冷却を行うことが好ましい。
【0081】本発明によれば、次いで絞り成形後の容器
を、少なくとも一段の熱処理に付することができる。こ
の熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフ
ィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた滑剤を
表面から揮散させること、表面に印刷した印刷インキを
乾燥硬化させること等が主たる目的である。この熱処理
には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ
自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この
熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多
段で行うこともできる。熱処理の温度は、180乃至2
50℃の範囲が適当である。熱処理の時間は、一般的に
いって、1乃至10分のオーダーである。
【0082】熱処理後の容器は急冷してもよく、また放
冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷
操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしか
も金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急
冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしで
も、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られる
のである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散
布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0083】得られた缶は、所望により、一段或いは多
段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻
締用の缶とする。また、ネックイン加工に先立って、ビ
ード加工や、特公平7−5128号公報に記載された周
状多面体壁加工を施すことができる。
【0084】
【実施例】本発明を次の例で説明する。本発明の特性値
は以下の測定法による。
【0085】(1)デントERV試験 缶底部を切り出し、室温、湿潤下で、厚み3mm、硬度
50゜のシリコンゴムに内面側を接触させて、外面側に
直径5/8インチの鋼球を置き、1kgのおもりを40
mm高さから落下させて衝撃張り出し加工を行う。衝撃
加工部の樹脂被膜の割れの程度を電圧6.30Vでの電
流値で測定し、6個の平均を取った。水充填後の缶を3
7℃雰囲気下で1週間貯蔵経時を行った後、上記試験に
供したものを以下の基準で評価した。 評価 平均電流値 ≦ 0.050mA ◎ 0.050mA < 平均電流値 ≦ 0.100mA ○ 0.100mA < 平均電流値 ×
【0086】(2)スポーツ飲料貯蔵試験 スポーツ飲料[アクエリアス(登録商標)]を充填した
缶を5℃にて、ボトムラジアス部に直径10mmの鋼製
の棒を置き、500gのおもりを60mmの高さから落
下させて衝撃を与えた。その後、室温にて貯蔵試験を行
い、1年後の缶の内面及び漏洩状態を調べた。
【0087】(3)融点(Tm)、ガラス転移温度(T
g) 示差熱走査型熱量計DSC7(パーキンエルマー社製)
を用いた。積層フィルムにおいては、各組成で単層フィ
ルムを試作したときの値を測定した。試料約5mgを窒
素気流下にて樹脂の融点より30℃高い温度で3分間溶
融保持し、500℃/分の速度で0℃まで急冷冷却す
る。ついで、10℃/分の昇温速度で測定した。結晶融
解に基づく吸熱ピークの最大高さの温度をTmとし、ガ
ラス転移に基づく比熱変化点をもってTgとした。
【0088】(4)固有粘度(IV) 樹脂をフェノール、テトラクロロエタンの重量比1:1
混合溶媒に120℃で10分間攪拌して溶かし、30℃
にて毛細管法で測定した。樹脂層が複層構成の場合は、
分離せずに全体の粘度を測定した。後述する熱処理前後
で固有粘度を測定し、その変化から樹脂の分解程度の目
安とした。
【0089】実施例1(A3004H39、缶成形) 250℃に加熱した板厚0.260mmのアルミ合金板
(A3004H39材)上に、表1に示される組成の樹
脂を、表1に示す酸化防止剤とドライブレンドしてエク
ストリュージョン・ラミネーション設備を備えた65m
mφ押出し機に供給し、厚さ20μmとなるように溶融
押出しを行いアルミ板片面側にラミネートした。次いで
同じ樹脂成分を、エクストリュージョン・ラミネーショ
ン設備を備えた65mmφ押出し機に供給した後、板温
度を樹脂の融点より30℃低い温度に加熱し、厚さ20
μmとなるように溶融押出しを行い、もう一方の面にラ
ミネートした。被覆アルミ板にペトロレイタムを塗布
し、直径152mmの円板を打ち抜き、常法に従い浅絞
りカップを成形した。この絞り工程における絞り比は
1.65であった。次いでこの絞りカップの第一次、第
二次薄肉化再絞り成形を行った。 第一次再絞り比 1.18 第二次再絞り比 1.18 このようにして得られた深絞りカップの諸特性は以下の
通りであった。 カップ径 66mm カップ高さ 127mm 側壁厚み変化率 −55%(素板厚に対して) この絞りカップを常法に従いドーミング成形を行い、樹
脂の歪み除去の目的で240℃3分間の熱処理を行っ
た。その後、開口端縁部ののトリミング加工、曲面印
刷、フランジング加工を行って350gツーピース缶を
作成した。この缶をデントERV試験、スポーツ飲料貯
蔵試験に供し評価を行った。表1にこの缶の特性及び評
価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せ
ず、熱処理前後で樹脂のIV変化はなかった。耐衝撃性
にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特に異常はなか
った。
【0090】実施例2 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤添加量を増加した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生せず、熱処理前後で樹脂のIV変化はなかった。耐衝
撃性にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特に異常は
なかった。
【0091】実施例3 2台の押出し機と2層ダイを用いて共押出しすることに
より、樹脂層を2層構成とした。表層と下層の層厚み比
は1:1とした。各層は表1に示す構成で、表層側には
酸化防止剤を添加せず下層にのみ添加した。この他は実
施例1と同様にした。表1にこの缶の特性及び評価結果
を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱
処理によりIV低下が見られたがその低下幅は小さく、
耐衝撃性にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特に異
常はなかった。
【0092】実施例4 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用し、Tダイ法により未延伸シートを得た。このシート
を二軸延伸機にて3.0×3.0倍に延伸し、二軸延伸
フィルムを得た。アルミ板を樹脂の融点より30℃高い
温度に加熱し、このフィルムを熱ラミネートして被覆ア
ルミ板を得た。以降、缶成形については実施例1と同様
にした。実施例1の未延伸樹脂被膜を二軸延伸樹脂被膜
にした例である。表1にこの缶の特性及び評価結果を示
した。酸化防止剤の添加による問題は発生せず、熱処理
前後で樹脂のIV変化も非常に小さかった。耐衝撃性に
も優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特に異常はなかっ
た。
【0093】実施例5 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤の種類を変更した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生せず、熱処理後の樹脂のIV低下は見られなかった。
耐衝撃性にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特に異
常はなかった。
【0094】実施例6 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例5の酸化防
止剤の添加量を増加した例である。表1にこの缶の特性
及び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は
発生せず、熱処理後の樹脂のIV低下は見られなかっ
た。耐衝撃性にも優れ、貯蔵テスト後の缶の状態にも特
に異常はなかった。
【0095】実施例7 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例3と同様にした。実施例3の酸化防
止剤の種類を変更した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生せず、熱処理により樹脂のIV低下が見られたが、そ
の低下幅は小さく、耐衝撃性にも優れ、貯蔵テスト後の
缶の状態にも特に異常はなかった。
【0096】実施例8 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例4と同様にした。実施例4の酸化防
止剤の種類を変更した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生せず、熱処理により樹脂のIV低下が見られたが、そ
の低下幅は非常に小さく、耐衝撃性にも優れ、貯蔵テス
ト後の缶の状態にも特に異常はなかった。
【0097】比較例1 表1に示した構成のポリエステル樹脂を使用し、酸化防
止剤は添加しなかった他は実施例1と同様にした。表1
にこの缶の特性及び評価結果を示した。熱処理により樹
脂のIVは大きく低下し、耐衝撃性に劣る。貯蔵テスト
後の缶にはデント部から漏洩が見られた。
【0098】比較例2 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤を変更した例である。表1にこの缶の特性及び評価
結果を示した。酸化防止剤の添加により押出し時に異臭
が発生し、樹脂の変色も著しい。デントERV試験、ア
クエリアス貯蔵試験は行わなかった。
【0099】比較例3 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤を変更した例である。表1にこの缶の特性及び評価
結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発生しな
いが、酸化防止剤の効果が薄く熱処理により樹脂のIV
は大きく低下し、耐衝撃性に劣る。貯蔵テスト後の缶に
はデント部から漏洩が見られた。
【0100】比較例4 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤添加量を減少した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生しないが、酸化防止剤の効果が薄く熱処理により樹脂
のIVは大きく低下し、耐衝撃性に劣る。貯蔵テスト後
の缶にはデント部から漏洩が見られた。
【0101】比較例5 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1の酸化防
止剤添加量を増大した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加により押出し時
にゲルが多発した。熱処理によるIV低下は無く、耐衝
撃にも優れるが、表面の荒れにより破胴が多発し缶成形
が困難であった。必要な缶数が得られないために貯蔵試
験は行わなかった。
【0102】比較例6 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例5の酸化防
止剤添加量を減少した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加による問題は発
生しないが、樹脂のIV低下の抑制が不十分であり、耐
衝撃性に劣る。貯蔵テスト後の缶は漏洩したものは無か
ったが缶内面には腐食が認められた。
【0103】比較例7 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例5の酸化防
止剤添加量を増大した例である。表1にこの缶の特性及
び評価結果を示した。酸化防止剤の添加により押出し時
にゲルが多量に発生した。熱処理による樹脂のIV低下
は無く、耐衝撃性に優れるが、表面の荒れに起因する破
胴が多発し缶成形が困難であった。必要な缶数が得られ
ないため貯蔵テストは行わなかった。
【0104】比較例8 表1に示した構成のポリエステル樹脂を使用し酸化防止
剤を使用しない他は、実施例3と同様にした。実施例3
の酸化防止剤を添加しない例である。表1にこの缶の特
性及び評価結果を示した。熱処理により樹脂のIVは大
きく低下し、耐衝撃性に劣る。貯蔵テスト後の缶にはデ
ント部から漏洩が見られた。
【0105】比較例9 表1に示した構成のポリエステル樹脂を使用し酸化防止
剤を使用しない他は、実施例4と同様にした。実施例4
の酸化防止剤を添加しない例である。表1にこの缶の特
性及び評価結果を示した。熱処理により樹脂のIVは大
きく低下し、耐衝撃性に劣る。貯蔵テスト後の缶にはデ
ント部から漏洩が見られた。
【0106】比較例10 表1に示した構成のポリエステル樹脂と酸化防止剤を使
用した他は、実施例1と同様にした。実施例1と樹脂系
が異なる場合の例である。表1にこの缶の特性及び評価
結果を示した。熱処理により樹脂のIVは大きく低下
し、耐衝撃性に劣る。この樹脂系ではIVを保持しても
十分な耐衝撃性能が得られない。貯蔵テスト後の缶のデ
ント部から漏洩が見られた。
【0107】
【表1】
【0108】但し、表中の樹脂構成で、使用されている
略号は以下の通りである。 PET=ポリエチレンテレフタレート PEI=ポリエチレンイソフタレート PBT=ポリブチレンテレフタレート PBA=ポリブチレンアジペート また、酸化防止剤種類で、使用されている記号は以下の
通りである。 A=IRGANOX1010(商品名)(主成分はテトラキス[メ
チレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート]メタン) B=トコフェロール C=Distearyl3,3'-thiodipropionate D=BHT 更に、表中のIVの単位は、dL/gである。
【0109】
【発明の効果】本発明によれば、(I)ポリエチレンテ
レフタレート・セグメントと(II)ブチレングリコール
と芳香族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグ
メントと(III )ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸
とから誘導されたポリエステル・セグメントとを、合計
量を100重量部として、I:II:III =10〜70:
12〜81:3〜54の重量比で含有するポリエステル
乃至ポリエステル組成物を使用し、しかもこのポリエス
テル乃至ポリエステル組成物100重量部当たり0.0
1乃至1.5重量部の分子量400以上の非イオウ系酸
化防止剤を含有させたポリエステル組成物を、金属基体
へのラミネートに用いたことにより、耐熱デント性が顕
著に改善された金属−ポリエステル積層体、並びにこの
積層体から形成されたシームレス容器を提供することが
できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる積層体の断面構造の一例を示す
拡大断面図である。
【図2】本発明に用いる積層体の断面構造の他の例を示
す拡大断面図である。
【図3】本発明に用いる積層体の断面構造の他の例を示
す拡大断面図である。
【図4】ラミネート板の製造装置の断面図である。
【図5】本発明のシームレス缶の一例を示す断面図であ
る。
【図6】本発明のシームレス缶の絞りしごき成形装置の
要部を示す断面図である。
【図7】本発明のシームレス缶のフランジ部の一例を示
す断面図である。
【図8】本発明のシームレス缶のフランジ部の他の例を
示す断面図である。
【図9】本発明のシームレス缶のフランジ部の別の例を
示す断面図である。
【符号の説明】
1 積層体 2 金属基体 3 ポリエステルブレンド物層 4 外面被膜 5 プライマー層 6 表面樹脂層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C09K 15/08 B65D 1/00 B B29L 7:00 9:00 22:00

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基体とポリエステルを主体とする樹
    脂層とから成る積層体において、前記樹脂層が、(I)
    ポリエチレンテレフタレート・セグメントと(II)ブチ
    レングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたポリ
    エステル・セグメントと(III )ブチレングリコールと
    脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステル・セグメ
    ントとを、合計量を100重量部として、I:II:III
    =10〜70:12〜81:3〜54の重量比で含有す
    るポリエステル乃至ポリエステル組成物から成り且つ該
    ポリエステル乃至ポリエステル組成物100重量部当た
    り0.01乃至1.5重量部の分子量400以上の非イ
    オウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有することを特
    徴とする積層体。
  2. 【請求項2】 金属基体とポリエステルを主体とする複
    層樹脂層とから成る積層体において、前記複層樹脂層の
    表面樹脂層がエチレンテレフタレート単位或いはエチレ
    ンテレフタレート/イソフタレート単位を主体とするポ
    リエステルから成り且つ前記複層樹脂層の下地樹脂層
    が、(I)ポリエチレンテレフタレート・セグメントと
    (II)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導
    されたポリエステル・セグメントと(III )ブチレング
    リコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたポリエステ
    ル・セグメントとを、合計量を100重量部として、
    I:II:III =10〜70:12〜81:3〜54の重
    量比で含有するポリエステル乃至ポリエステル組成物か
    ら成り且つ該ポリエステル乃至ポリエステル組成物10
    0重量部当たり0.01乃至1.5重量部の分子量40
    0以上の非イオウ系酸化防止剤を少なくとも一種類含有
    することを特徴とする積層体。
  3. 【請求項3】 前記ポリエステル組成物が(I)エチレ
    ンテレフタレート・セグメントを主体とするポリエステ
    ルと、ポリエステル・セグメント(II)及びポリエステ
    ル・セグメント(III )を含む共重合ポリエステルとの
    ブレンド物である請求項1または2記載の積層体。
  4. 【請求項4】 酸化防止剤が分子量400以上のフェノ
    ール系酸化防止剤である請求項1乃至3の何れかに記載
    の積層体。
  5. 【請求項5】 酸化防止剤がテトラキス[メチレン−3
    (3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニ
    ル)プロピオネート]メタンである請求項1乃至4の何
    れかに記載の積層体。
  6. 【請求項6】 酸化防止剤がトコフェロールである請求
    項1乃至3の何れかに記載の積層体。
  7. 【請求項7】 ポリエステルを主体とする樹脂層が金属
    基体上に押出しラミネートされている請求項1乃至6の
    何れかに記載の積層体。
  8. 【請求項8】 ポリエステルを主体とする樹脂層が二軸
    延伸されたフィルムであり、金属基体上に熱接着されて
    いる請求項1乃至6の何れかに記載の積層体。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8の何れかに記載の積層体
    をしぼり成形或いは更にしごき成形して成ることを特徴
    とするシームレス容器。
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