JP3290537B2 - 脱穀機の選別装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ストローラック上で処
理室から送出される送塵物が偏寄して山積みされること
なく、２番樋の戻し選別を良好に行うことができるよう
にした脱穀機の選別装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、扱室の後方で穀稈の穂先側機壁に
沿って連設される処理室の下方には、穀粒と排塵物とを
揺動選別する揺動選別体を有する選別装置が設置されて
いる。選別装置には、１番流板の選別点後方で２番流板
の上方にストローラックが配設され、選別網から送出さ
れる屑類と処理室から排出される送塵物とを受けて再選
別するようになっている。

【０００３】然し、上記選別装置のストローラックはラ
ックバーを揺動選別体の２番流板全巾にわたり定間隔に
設置されているため、穀稈を大量に刈取って連続的に脱
穀するような、いわゆる高能率脱穀や濡れ材を脱穀する
場合には、大量な穀稈屑が発生し、特に処理室直下のス
トローラック上には、処理室から送出される送塵物が偏
寄して山積みとなり、２番の戻し選別が不充分なまま機
外に排出される無駄や、この部分の選別風の通風を阻害
し、その結果他方の通路の選別風を徒に強くして均一な
選別を乱すという問題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、スト
ローラック上で処理室から送出される送塵物が偏寄して
山積みされることなく、２番の戻し選別を良好に行うこ
とができると共に、選別風を乱すことなく良好な揺動選
別が可能な脱穀機の選別装置を提供することにある。本
発明の他の目的は、選別風を一層吹き抜け易くしなが
ら、良好な揺動選別が可能な脱穀機の選別装置を提供す
ることにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の脱穀機の選別装置は、扱胴が内装された扱室の後端
に連通する処理胴を有する処理室を後方に延設し、前記
扱室及び処理室の下方に穀粒と排塵物とを揺動選別する
前後方向に揺動可能な揺動選別体を設け、この揺動選別
体の下方に１番流板及び２番流板を介して１番樋及び２
番樋に連通する脱穀機において、前記処理胴と２番流板
との間に配設された前記揺動選別体のストローラック
を、平面視において前記処理胴と重複するラップ部を他
のラック部よりも脱穀物が容易に通過可能に構成したこ
とを特徴とする。

【０００６】また、前記ストローラックは所定の間隔で
配設されたラックバーを有し、前記ラップ部のラックバ
ーの間隔を前記他のラック部のそれよりも大きくしたこ
とを特徴とする。また、前記ストローラックは所定の間
隔で配設されたラックバーを有し、前記ラップ部を該ラ
ックバーが欠如するようにしたことを特徴とする。

【０００７】また更に、前記扱胴と１番流板との間に配
設された前記揺動選別体のチャフシーブを、その前後方
向に配列された複数の選別フィンがその傾斜を選別風の
風圧により可変自在となるように構成したことを特徴と
する。

【０００８】

【作用】本発明は上述したように構成され、選別風を利
用しながら穀粒と排塵物とを揺動選別する揺動選別体の
ストローラックを、平面視において処理胴と重複するそ
のラップ部が、他のラック部よりも脱穀物が容易に通過
可能に構成、即ち、ラップ部のラックバーの間隔を他の
ラック部のそれよりも大きくしたり、ラックバーを欠如
する構成にしたことにより、処理室より漏下又は放出さ
れる脱穀物をラップ部から２番桶に速やかに回収するこ
とができる。そのため、ストローラック上に穀稈を大量
に刈取って連続的に脱穀するような、高能率脱穀や濡れ
材を脱穀する場合に、大量な穀稈屑が発生しても、処理
室直下のストローラック上には、処理室から送出される
送塵物が偏寄して山積みとなることがなく、２番の戻し
選別を不充分なまま機外に排出される無駄をなくすこと
が可能となる。

【０００９】また、ストローラック上に送塵物が偏寄し
て山積みにならないため、選別風の通風が阻害されるこ
とがなくなって、選別風の流れを均一的に分散して常に
均一な風選別を行うことができ、選別風を乱すことなく
良好な揺動選別を行うことができる。また、扱胴とその
下方の１番流板との間に配設されたチャフシーブが、そ
の前後方向に配列された複数の選別フィンの傾斜を選別
風の風圧により可変自在な構成としたので、選別フィン
により主選別風路を通過する選別風の流れ抵抗を最小限
にして、選別風がチャフシーブ内を一層容易に吹き抜け
ることが可能となり、揺動選別体での風選別による吹き
分け効率を高めることができ、精度の高い良好な選別を
行うことができる。

【００１０】

【実施例】以下、添付図に基づいて本発明の実施例を説
明する。図１は、脱穀機に装着された本発明の脱穀機の
選別装置の一例を示す側断面説明図、図２は図１の背面
説明図で、脱穀機Ｍは、機体１の前後方向に延びる回転
可能な扱胴２ａを内装する扱室２を有し、扱胴２ａの側
方から下部にかけては、クリンプ網２ｂが張設されてい
る。

【００１１】扱室２には処理室３が隣接して設けられ、
この処理室３は、扱室２の後端送塵口部位で穀稈穂先側
に連通させて後方に延設された回転可能な処理胴３ａを
有し、この処理胴３ａの側方から下部にかけては、扱室
２側のクリンプ網２ｂに隣接して、クリンプ網３ｂが張
設されている。クリンプ網３ｂ後方の処理室３には、ク
リンプ網３ｂに連接して送塵口３ｃが設けられ、この送
塵口３ｃには、処理室３の上方から斜め下向きに彎曲し
て後述する受戻板３２方向に向けて突出したガイド板３
ｄが対設され、処理室３の送塵口３ｃから勢いよく送出
される送塵物を受戻板３２に誘導するようになってい
る。

【００１２】扱室２及び処理室３の下方には、クリンプ
網２ａ，３ａ等から漏下する脱穀粒及び藁屑等の排塵物
を受け止めて揺動選別を行う揺動選別体４が設けられ、
この揺動選別体４の前方には、後述する主選別風路２８
及び副選別風路２９にそれぞれ選別風を送り出す主送風
口５ａと副送風口５ｂとを有する圧風ファン（唐箕）５
が設置されいる。また、揺動選別体４の後方左側には、
右側から左側に斜設したガイド部Ｓ１を有する排塵路Ｓ
を介して選別風により運ばれた排塵物を吸引排出する吸
引羽根式の排塵ファン６が設置されている。

【００１３】また、揺動選別体４の下方には、螺旋樋か
らなる１番樋７と２番樋８とが前後に設けられ、１番樋
７には揚穀筒９が接続され、揺動選別体４で脱穀選別さ
れた穀粒が１番樋７から揚穀筒９を介して機体１上部の
穀粒タンク１０内に揚穀収納される構成となっている。
２番樋８には、還元筒１１が接続され、２番物を後述す
る揺動選別体４の送流板２１上に還元するようになって
いる。

【００１４】１３は扱室２の扱口に沿って前後に延設さ
れた回転可能なフィードチェンであり、その後端部には
排藁チェン１４を接続させて脱穀済の排稈を機体１の後
部に設けたカッタ１５に搬送する構成となっている。本
発明の脱穀機の選別装置は、上記揺動選別体４を有する
ように構成され、この揺動選別体４は、クリンプ網２ａ
の下方に配設され、後方に向けて低く傾斜する送流板２
１を備えている。この送流板２１の後端には、クリンプ
網２ａ，３ａの下方となる位置でスポーク篩２２Ａ付チ
ャフシーブ２２がスポーク篩２２Ａを後側にして後方が
高くなるように連結固定して設けられている。

【００１５】チャフシーブ２２は、シーブ本体２２ａに
取付けられた複数の選別フィン２２ｂを有し、この選別
フィン２２ｂは板状に形成されると共に、上下方向に上
側を後方に若干傾斜してシーブ本体２２ａの幅方向（機
体１の幅方向）に延びるようにして、所定の間隔でシー
ブ本体２２ａの前後方向に複数配列されている。複数の
選別フィン２２ｂのうち、最前列の選別フィン２２ｂ₁
と最後列の選別フィン２２ｂ₂ とは、シーブ本体２２ａ
に固定され、その中間部の選別フィン２２ｂ₃ が、図３
に示すように、シーブ本体２２ａに取付けられた連結桿
２２ｃにリンク２２ｄを介して、選別フィン２２ｂ₃ の
基端部を中心に前後に揺動自在に構成され、選別フィン
２２ｂ₃ の傾斜を選別風の風圧によりその流れに合わせ
て可変自在になっている。スポーク篩２２Ａは、最後列
の選別フィン２２ｂ₂ から後方に、後述するストローラ
ック２５の上方となる位置まで延設されている。

【００１６】チャフシーブ２２の下方には、前方から後
方に向けて高くなるように傾斜して選別網２３が張設さ
れ、この選別網２３の下方には前方に向けて低く傾斜し
た１番流板２４が配置され、選別網２３を漏下した脱穀
粒が１番流板２４を介して前記１番樋７に連通して導か
れるようになっている。選別網２３及び１番流板２４の
後端には、所定寸法のストロー受け間隔を有する複数の
ラックバー２５ａが装着されたストローラック２５が後
方に向かって高くなるように配設され、平面視において
処理胴３ａと重複するストローラックのラップ部２５ｂ
が他のラック部よりも脱穀物が容易に通過可能に構成さ
れ、処理胴３のクリンプ網３ｂ及び送塵口３ｃより漏下
又は放出される脱穀物を速やかに２番流板２６上に回収
するようになっている。図２では、ラップ部２５ｂがラ
ックバー２５ａを欠如するようになっているが、ラップ
部２５ｂにもラックバーを配設すると共にそのラックバ
ーの間隔を他のラック部のそれよりも大きくするように
してもよい。

【００１７】また、選別網２３及び１番流板２４の後端
とストローラック２５の前端の接続部は、図４に示すよ
うに、１番流板２４の後端に断面略逆く字状で板状部材
からなる接続部材３１を、ストローラック２５のラック
バー部分と重複することなく配して、ストローラック２
５の前端と１番流板２４の後端部とを一体的に連結固定
すると共に、選別網２３の後端を接続部材３１まで延設
するように構成し、１番流板２４とストローラック２５
とを連結固定することにより、ストローラック２５の始
端部２５ｓからも脱穀物を漏下するようにして、ストロ
ーラック２５での脱穀物の回収をより図るようになって
いる。

【００１８】ストローラック２５の下方には、前方に向
けて低く傾斜した２番流板２６が後方に向けて延設さ
れ、この２番流板２６の前側下方には、上記２番樋８が
配設されている。また、２番流板２６にはその後端左側
で排塵ファン６の上方となる排塵路Ｓ内の位置に受戻板
３２が、２番流板２６と共に揺動可能に設けられ、処理
室３の送塵口３ｃから放出される送塵物を受け止めて、
排塵ファン６上への滞積を防止すると共に、揺動して送
塵物を拡散させ、排塵ファン６で良好な吸引排塵を行う
ようにしている。

【００１９】前記送流板２１、チャフシーブ２２、選別
網２３、１番流板２４、ストローラック２５、２番流板
２６は図示せぬ揺動枠により一体的に支持され、揺動手
段２７により前後に揺動する構成になっている。また、
選別網２３からチャフシーブ２２の上側を経てストロー
ラック２５上方にかけて、圧風ファン５から排塵ファン
６に流れる選別風の上昇流が通過する主選別風路２８と
なり、この主選別風路２８の下側には、選別網２３の下
方から上方に向けて上昇してストローラック２５上で主
選別風路２８に合流する副選別風路２９が形成されてい
る。

【００２０】また、扱室２の送塵口下方でチャフシーブ
２２の上方には、送塵物及び処理室３の漏下物を受けて
選別還流させる補助選別棚３０が揺動自在に設けられて
いる。１２は上記ストローラック２５へ向けて下方から
選別風を送風する送風ファンで、１番樋７と２番樋８と
の間に配設されている。扱室２及び処理室３で脱穀され
た脱穀物は、クリンプ網２ａ，３ａから漏下し、揺動選
別体４上で揺動選別及び風選別される。即ち、１番物は
揺動するチャフシーブ２２及び選別網２３で主選別風路
２８及び副選別風路２９を通過する選別風により選別さ
れ、１番流板２４から１番樋７及び揚穀筒９を介して穀
粒タンク１０へ収容される。

【００２１】また、２番物は揺動するチャフシーブ２２
後端のスポーク篩２２Ａ及びクリンプ網３ｂから揺動す
るストローラック２５に集合されたものが、ストローラ
ック２５上で送風ファン１２からの選別風を介して篩風
選別を受けて２番流板２６に至り、２番樋８から還元筒
１１を介して揺動選別体４の送流板２１上に放擲還元さ
れ再選別を受ける。

【００２２】また、選別路で発生する屑類及び処理室３
で送出される送塵物が、ストローラック２５で具合よく
篩風選され、２番流板２６に穀粒等を回収し、また２番
流板２６の上端選別点２６ａを越えた屑類は圧風ファン
５及び排塵ファン６で形成される選別風により排塵路Ｓ
から排塵ファン６に吸われ、その排塵口６１から速やか
に機外に排出される。

【００２３】選別風を利用しながら穀粒と排塵物とを揺
動選別する揺動選別体４のストローラック２５の平面視
において処理胴３ａと重複するラップ部２５ｂが、他の
ラック部よりも脱穀物が容易に通過可能に構成、即ち、
ラップ部２５ｂのラックバー２５ａの間隔を他のラック
部のそれよりも大きくしたり、ラックバー２５ａを欠如
（除去）する構成にしたので、処理胴３のクリンプ網３
ｂ及び送塵口３ｃより漏下又は放出される脱穀物がラッ
プ部２５ｂから２番流板２６に速やかに回収される。そ
の結果、ストローラック２５上に穀稈を大量に刈取って
連続的に脱穀するような、いわゆる高能率脱穀や濡れ材
を脱穀する場合に、大量な穀稈屑が発生しても、処理室
直下のストローラック上には、処理室から送出される送
塵物が偏寄して山積みとなることがなく、２番の戻し選
別を不充分なまま機外に排出される無駄をなくすことが
できる。

【００２４】また、ストローラック２５上に送塵物が偏
寄して山積みにならないので、選別風の通風を阻害する
ことがなく、選別風の流れを均一的に分散して常に均一
な風選別を行うことができる。また、扱胴２とその下方
の１番樋７との間に配設された揺動選別体４のチャフシ
ーブ２２が、その前後方向に配列された複数の選別フィ
ン２２ｂの傾斜を選別風の風圧により可変自在な構成に
なっているので、主選別風路２８を通過する選別風の流
れを遮ることなく、選別風がチャフシーブ２２内を一層
容易に吹き抜けることが可能となり、選別網２３及びチ
ャフシーブ２２上での風選別による吹き分け効率を高め
ることができる。

【００２５】また、１番流板２４とストローラック２５
先端との間に設けた接続部材３１によりストローラック
２５のラックバー２５ａを覆うことなく１番流板２４と
ストローラック２５とを一体的に連結固定しているた
め、ストローラック２５の始端部２５ｓからも脱穀物を
有効に漏下することができ、ストローラック２５での脱
穀物の回収をより良好に行うことができる。

【００２６】また、２番流板２６の後端左側で排塵ファ
ン６の上方となる位置（排塵路Ｓ）に受戻板３２を設
け、この受戻板３２に向けて、処理室３の上方から斜め
下向きに彎曲して処理室３の送塵口３ｃから勢いよく送
出される送塵物を誘導するガイド板３ｄを設けたので、
送塵口３ｃから放出される送塵物を受け止めて、排塵フ
ァン６上への滞積を防止し、送塵物を拡散させることが
可能で、排塵ファン６で良好な吸引排塵を行うことがで
きる。

【００２７】

【発明の効果】上述したように本発明の脱穀機の選別装
置は、平面視において処理胴と重複するストローラック
のラップ部を他のラック部よりも脱穀物が容易に通過可
能に構成したので、ストローラック上で処理室から送出
される送塵物が偏寄して山積みされることなく、２番の
戻し選別を良好に行うことができる。屑類の発生の多い
高能率脱穀や濡れ材等の穀稈を脱穀する場合において
も、揺動選別体のストローラック上における偏寄滞積を
防ぐことができ、屑類がストローラックにより選別され
ないでそのまま２番流板を越えて機外に排出されること
なく、２番の戻し選別を効率よく行うことができる。

【００２８】また、ストローラック上に送塵物が偏寄し
て山積みされないので、選別風が滞積屑類によってその
流れを阻害されることがなく、揺動選別体全巾において
均一な選別風を形成して良好な選別を行うことができ
る。また、扱胴とその下方の１番流板との間に配設され
たチャフシーブの前後方向に配列された複数の選別フィ
ンの傾斜を選別風の風圧により可変自在に構成したの
で、主選別風路を通過する選別風の流れが一層容易に吹
き抜けることができるようになって、揺動選別体での風
選別による吹き分け効率の向上を図ることができるよう
になり、選別風を一層吹き抜け易くしながら、精度の高
い良好な選別を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】脱穀機に装着された本発明の脱穀機の選別装置
の一例を示す側断面説明図である。

【図２】図１の背面説明図である。

【図３】チャフシーブの要部側面説明図である。

【図４】１番流板とストローラックとの接続部を示す要
部断面説明図である。

【符号の説明】

２ 扱室 ２ａ 扱胴 ３ 処理室 ３ａ 処理胴 ４ 揺動選別体 ５ 圧風ファン ６ 排塵ファン ７ １番樋 ８ ２番樋 ２２ チャフシーブ ２２ｂ 選別フィン ２４ １番流板 ２５ ストローラック ２５ａ ラックバー ２５ｂ ラップ部 ２６ ２番流板 Ｍ 脱穀機

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A01F 12/32

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 扱胴が内装された扱室の後端に連通する
   処理胴を有する処理室を後方に延設し、前記扱室及び処
   理室の下方に穀粒と排塵物とを揺動選別する前後方向に
   揺動可能な揺動選別体を設け、この揺動選別体の下方に
   １番流板及び２番流板を介して１番樋及び２番樋に連通
   する脱穀機において、前記処理胴と２番流板との間に配
   設された前記揺動選別体のストローラックを、平面視に
   おいて前記処理胴と重複するラップ部を他のラック部よ
   りも脱穀物が容易に通過可能に構成した脱穀機の選別装
   置。
2. 【請求項２】 前記ストローラックは所定の間隔で配設
   されたラックバーを有し、前記ラップ部のラックバーの
   間隔を前記他のラック部のそれよりも大きくした請求項
   １に記載の脱穀機の選別装置。
3. 【請求項３】 前記ストローラックは所定の間隔で配設
   されたラックバーを有し、前記ラップ部を該ラックバー
   が欠如するようにした請求項１に記載の脱穀機の選別装
   置。
4. 【請求項４】 前記扱胴と１番流板との間に配設された
   前記揺動選別体のチャフシーブを、その前後方向に配列
   された複数の選別フィンがその傾斜を選別風の風圧によ
   り可変自在となるように構成した請求項１乃至３のいず
   れかに記載の脱穀機の選別装置。