JP3286677B2 - ペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂の製造法 - Google Patents

ペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペースト加工用ポリ塩
化ビニル樹脂の製造方法に関するものである。更に詳し
くは、ミクロ懸濁重合によりペースト加工用ポリ塩化ビ
ニル樹脂を製造するにおいて重合中の微小粒子の発生を
抑制し、低粘度でかつ粘度の経時変化が少ないペースト
塩ビゾルを与える、ペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にペースト加工用ポリ塩化ビニル
(以下、ペースト塩ビと略記する。)の製造方法は、塩
化ビニル単量体あるいはこれと共重合可能なビニル単量
体と共に、水性媒体中で界面活性剤および重合開始剤の
存在下に所定温度で撹拌しつつ重合させ、得られた重合
体ラテックスを噴霧乾燥することにより行われる。乾燥
後の樹脂はそのままで、もしくは必要に応じて適当な大
きさにまで粉砕され、あるいは更に造粒処理を施される
等して使用に供される。得られたペースト塩ビは、例え
ば可塑剤、安定剤、希釈剤等の配合剤と混練することに
よりペースト塩ビゾルとして加工に用いられる。
【0003】上記のようにして得られたペースト塩ビゾ
ルを、コーティング法、スッラシュ成形、浸漬成形、回
転成形等の方法で加工し成形品が得られる。その際、加
工時のゾル粘度が高いと、例えばコーティング時の加工
スピードが上げられず生産性に影響が生じたり、均一な
成形品が得られなっかたり、又、粘度の経時変化が大き
いため加工が困難になったりするなどの問題があった。
【0004】ペースト塩ビゾルにおけるこれらの問題
は、ペースト塩ビを構成する基本粒子径に起因するもの
と考えらる。
【0005】一般に、ペースト塩ビを製造する際には、
重合時において、アルキル硫酸エステル塩、アルキルス
ルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキル
スルホコハク酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリ
オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタンエス
テル、グリセリンアルキルエステル等のノニオン系界面
活性剤が一般的に用いられる。これら一般的に使用され
ているアニオン系及びノニオン系の界面活性剤を使用し
て行うと、主に重合末期に0.1μm未満の微小な粒子
が多数発生する。これら多数発生した0.1μm未満の
粒子は、重合体ラテックスを乾燥しペースト塩ビを得る
際、0.1μm〜2μmの粒子間の凝集力を強めるため
に、これをペースト塩ビゾルとした場合、可塑剤などの
液状成分への分散性の悪化による粘度の増加と、凝集物
が形成する多孔性部分への液状成分の吸収などからゾル
の経時変化が大きくなる原因と考えられる。
【0006】粘度の低下、粘度の経時変化の少ないゾル
を得るための目的では種々の方法が試みられている。例
としてはポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテ
ル硫酸エステルのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム
塩をミクロ懸濁重合で使用する方法(特公昭63−35
166)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテ
ルスルフォネートのアルカリ金属塩もしくはアンモニウ
ム塩を乳化重合またはミクロ懸濁重合で使用する方法
(特開昭61−44907)などが挙げられるがいずれ
も基本粒子の制御、特に重合中に発生する微小粒子の抑
制による解決は施されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、低粘度
で粘度の経時変化が少ないペースト塩ビの製造方法につ
いて鋭意検討した結果、下記一般式[I]で示される界
面活性剤を使用しミクロ懸濁重合することにより、上記
要請を十分満足するペースト塩ビが得られるとの知見に
至り本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、塩化ビ
ニル単量体を単独、あるいは塩化ビニル単量体と共重合
可能なビニル単量体を、重合開始剤、界面活性剤の存在
下において、水性媒体中で重合しペースト加工用ポリ塩
化ビニル樹脂を製造する際、下記一般式[I]で示され
る界面活性剤を使用しミクロ懸濁重合する事を特徴とす
るペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法に関す
るものである。
【0009】
【化2】
【0010】[式中、R1 は、炭素数6〜18のアルキ
ル基、アルケニル基もしくはアラルキル基、R2 は、水
素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基もし
くはアラルキル基、R3 は、水素又はプロペニル基、A
は炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整
数、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカ
ノールアミン残基である。]以下、本発明を詳細に説明
する。
【0011】本発明に使用される上記一般式[I]で示
される界面活性剤の具体例としては、ノニルプロペニル
フェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステ
ルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレ
ンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム
塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド
10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチル
ジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付
加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニル
フェノールエチレンオキシド20モル,プロピレンオキ
シド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム
塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4
モル,エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エ
ステルナトリウム塩などが挙げられる。
【0012】本発明において、上記界面活性剤は単独で
も、また、本発明の目的を損なわない範囲であれば他の
界面活性剤と併用することも可能である。併用して使用
することが可能な一般的な界面活性剤の具体例として
は、ラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸
エステルの如きアルキル硫酸エステル塩類、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホ
ン酸カリウムの如きアルキルアリールスルホン酸塩類、
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスル
ホコハク酸ナトリウムの如きスルホコハク酸エステル塩
類、ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸カリウムの
如き脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エス
テル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エ
ステル塩類などのアニオン界面活性剤、ソルビタンモノ
オレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレ
ートの如きソルビタンエステル類、ポリオキシエチレン
アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアル
キルエステル類などのノニオン界面活性剤類などの従来
より知られているものを用いることができる。
【0013】本発明において、界面活性剤の使用量は、
単量体100重量部に対し0.1〜5重量部、好ましく
は0.1〜3重量部である。また、乳化補助剤として高
級脂肪酸、高級アルコール等の添加も可能である。
【0014】本発明における、塩化ビニルと共重合し得
るビニル化合物とは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、ミリンスチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香
酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸、メタクリ
ル酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボ
ン酸又はその無水物、アクリル酸のメチル、エチル、ブ
チル、オクチル、ベンジル等のエステル、メタクリル酸
のメチル、エチル、ブチル、オクチル、ベンジル等のエ
ステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮
酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル類、ビニルメ
チルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニル
エーテル等のビニルエーテル類エチレン、プロピレン、
ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類、塩化ビニリデ
ン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタ
クリロニトリル等、塩化ビニルとラジカル共重合しうる
通常のビニル化合物の1種以上のことである。
【0015】本発明で用いられる製造方法は、塩化ビニ
ル単量体あるいは塩化ビニル単量体、界面活性剤、油溶
性重合開始剤等を水中で均質化処理した後、温度30〜
80℃で重合するミクロ懸濁重合法である。
【0016】
【実施例】以下、実施例とともにさらに詳細に説明す
る。
【0017】[実施例1]2.5lステンレス製オート
クレーブ中に、脱イオン水1100g、塩化ビニル単量
体400g、過酸化ラウロイル0.64g、界面活性剤
として5重量%ノニルプロペニルフェノールエチレンオ
キシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩(第
一工業製薬(株)製:アクアロンHS−10)128
g、ラウリルアルコール12g、0.1重量%硫酸銅水
溶液4gを75分間ホモジナイザーを用い均質化処理
後、温度を48℃に上げて重合をすすめた。重合開始か
ら、0.05重量%アスコルビン酸水溶液を全重合時間
を通じて連続的に添加した。
【0018】重合圧が48℃における塩化ビニル飽和蒸
気圧から2Kg/cm2 降下した時に重合を停止し、未
反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラ
テックスを得た。
【0019】そのラテックス物性を表1に示す。
【0020】尚、ラテックス物性は以下の方法で測定し
た。 (1)固形分含有率 ラテックス1gを115±2℃のオーブン中で1時間乾
燥し取りだした後、30分デシケーターで冷却し、固形
分を次式から算出する。 固形分(%)=乾燥後の重量(g)/ラテックス重量
(g)×100 (2)平均粒子径 レーザー回折式粒径分布測定機(堀場(株)製:LA−
700)にて測定した。 (3)微粒子組成 レーザー回折式粒径分布測定機(ハイアック/ロイコ社
製:ナイコンプモデル370)で0.15μm以下の微
粒子の測定を行った。
【0021】[実施例2]界面活性剤として5重量%ノ
ニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付
加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液と5重量%ラウ
リル硫酸ナトリウム水溶液とをノニルプロペニルフェノ
ールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアン
モニウム塩の割合が重合時に使用する全界面活性剤量の
12.5重量%となるように混合したものを使用した以
外は実施例1と同様にして塩化ビニル重合体ラテックス
を得た。
【0022】[比較例1]界面活性剤として5重量%ラ
ウリル硫酸ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例1
と同様にして塩化ビニル重合体ラテックスを得た。
【0023】[比較例2]界面活性剤として5重量%ソ
ジウムトリオキシエチレンドデシルフェノールサルフェ
ート水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして塩化
ビニル重合体ラテックスを得た。
【0024】実施例2、比較例1〜2のラテックス物性
を表1に示す。
【0025】また、実施例1〜2、比較例1〜2で得ら
れた塩化ビニル重合体ラテックスを噴霧乾燥後、粉砕し
てペースト塩ビを得、下記配合を用いペースト塩ビゾル
を調整し、ゾル物性を測定した。そのゾル物性を表1に
示す。
【0026】尚、ペースト塩ビゾルの配合及び測定方法
は次の通りである。 (配合) ペースト塩ビ 100部 ジオクチルフタレート 60部 (1)粘度測定 上記配合のペースト塩ビをB8H型粘度計により測定し
た。 測定条件 ローター:No.4スピンドル 回転数:20rpm 測定温度:25℃ (2)粘度経時変化 次式で表される値で定義する。 粘度経時変化=ゾル調整後、24時間経過後の40℃で
のゾル粘度/ゾル調整後、2時間経過後の40℃でのゾ
ル粘度
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】以上の結果より、上記一般式で示される
界面活性剤を使用することにより、重合中に発生する微
粒子が抑制でき、また得られたペースト塩ビは、低粘度
でかつ粘度安定性に優れていることがわかる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル単量体を単独、あるいは塩化ビ
    ニル単量体と共重合可能なビニル単量体を、重合開始
    剤、界面活性剤の存在下において、水性媒体中で重合し
    ペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂を製造する際、一般
    式[I]で示される界面活性剤を使用し、ミクロ懸濁重
    合する事を特徴とするペースト加工用ポリ塩化ビニル樹
    脂の製造方法。 【化1】 [式中、R1 は、炭素数6〜18のアルキル基、アルケ
    ニル基もしくはアラルキル基、R2 は、水素又は炭素数
    6〜18のアルキル基、アルケニル基もしくはアラルキ
    ル基、R3 は、水素又はプロペニル基、Aは炭素数2〜
    4のアルキレン基、nは1〜200の整数、Mはアルカ
    リ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残
    基である。]
  2. 【請求項2】重合に使用する界面活性剤量が塩化ビニル
    単量体あるいは塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル
    単量体に対し0.1〜5重量部である請求項1に記載の
    方法。
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