JP3282954B2 - 軒先通気・防火構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、軒先通気・防火
構造に関するものである。さらに詳しくは、この発明
は、夏期の防暑と冬期の結露とを防止するのに有効で、
しかも火災に対する防火性能に優れた、住宅等の建物の
新しい軒先通気・防火構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、住宅等の建物の屋根については、
屋根の外観性が良好な波形瓦を用い、たとえば図４に示
したように、野地板（ア）の上に敷設したアスファルト
ルーフィングや下葺材等の防水シート（イ）の上に直接
波形瓦（ウ）を固定した構造や、あるいは図５及び図６
に示したような、野地板（ア）の上に設けた化粧石綿ス
レート（エ）や下葺材（オ）の上部に配置した流し桟
（カ）および桟木（キ）に波形瓦（ウ）を取付固定した
構造が知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】以上の従来の波形瓦の
固定による屋根は、波形瓦の特徴が生かされてはいるも
のの、軒先の通気及び防火構造としては必ずしも充分満
足できるものではなかった。それと言うのも、たとえば
図４に示したように、波形瓦（ウ）を直接防水シート
（イ）の上に固定した構造では、波形瓦（ウ）そのもの
の形状により通気層が形成されるものの、その高さ
（Ｈ）は低く、空気が通りにくいからである。図５及び
図６に示したような構造でも軒先の隙間は小さく、通気
には不充分である。

【０００４】このように、たとえ波形瓦（ウ）を用いて
も、夏期の防暑と冬期の結露防止とを図るために、軒先
の瓦下での吸気と排気を充分に行い、軒先通気を良好と
することへの対応は充分ではなかった。一方、通気層
は、その高さ（厚さ）を大きくすれば効果が得られるこ
とから、図５及び図６に示した構造において桟木（キ）
の高さを高くし、通気量の増大を図ることが考えられ
る。

【０００５】しかしながら、通気量増大のために軒先で
の開口を大きくすると、そこが、火災時の炎や煙を吸い
込む通路となり、防火性に多大な影響を与えることとな
る。このため、これまでは、軒先の瓦下での通気と防火
とを矛盾することなく充分な対策として実現した構造は
実現されていなかった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そこでこの発明は、通気
性及び防火性の二面の課題を解決した軒先通気・防火構
造を提供する。すなわち、この発明は、軒先の瓦と野地
板配設部との間に通気部が設けられ、波板状体が積層さ
れて通気路が形成され、各々の波板状体の膨張方向面が
接している加熱膨張材が前記通気部に配置され、軒先の
瓦下で通気するとともに、火災時に加熱膨張材が膨張し
て通気を遮断することを特徴とする軒先通気・防火構造
（請求項１）を提供する。

【０００７】また、この発明は、上記構造において、加
熱膨張材は、瓦下の桟木と野地板配設部との間に設けら
れた通気部に挿着されていること（請求項２）、加熱膨
張材は、発泡材を膨張材としていること（請求項３）、
加熱膨張材は、不燃処理された繊維体に発泡材が含浸又
は塗布されたものであること（請求項４）をそれぞれ一
態様として提供する。

【０００８】

【発明の実施の形態】以上の通りの構成を有するこの発
明の軒先通気・防火構造は、夏期の防暑と冬期の結露と
を効果的に防止し、しかも、火災時の防火性能に優れた
軒先通気・防火構造である。以下、図面に沿ってこの発
明の軒先通気・防火構造の実施例を示し、詳しくこの発
明の実施の形態について説明する。

【０００９】

【実施例】図１は、この発明の軒先通気・防火構造の一
実施例を示した要部分解斜視図である。たとえばこの図
１に示したように、この発明の軒先通気・防火構造で
は、軒先の瓦（１）と野地板（２）の配設部との間に
（より具体的には、図１に示した実施例では、野地板
（２）の上の防水シート（３）に設けた流し桟（４）と
桟木（５）の上に瓦（１）が設けられ、瓦（１）と防止
シート（３）との間に）通気部（６）が設けられ、この
通気部（６）に、火災時に膨張して通気を遮断する加熱
膨張材（７）が配置される。

【００１０】加熱膨張材（７）では、図２にも示したよ
うに、波板状体（７１）が積層されて通気路（７２）が
形成され、しかも各々の波板状体（７１）の膨張方向面
が接しており、この加熱膨張材（７）は、瓦（１）の下
の桟木（５）と野地板（２）の配設部との間、具体的に
は防水シート（３）とこれに対向する流し桟（４）との
間、に設けられた通気部（６）に挿着されている。

【００１１】以上の図１及び図２に例示されるこの発明
の軒先通気・防火構造では、空気（Ａ）は、加熱膨張材
（７）の通気路（７２）を通じて導かれ、軒先の瓦
（１）の下での吸気と排気が可能となっている。図３
は、加熱膨張材（７）が配置、挿着された軒先を示した
要部断面図である。加熱膨張材（７）には、たとえばグ
ラファイト系発泡材を膨張材とし、この膨張材としての
発泡材をバインダーで不燃化処理した不織布等の繊維体
に含浸又は塗布して波板状体（７１）に成形し、これを
積層して通気路（７２）の全体的な開口率が望ましくは
５０％以上としたものが用いられる。この加熱膨張材
（７）は、たとえば１５０℃以上の温度において発泡を
開始し、３００℃程度の温度において発泡にともなう膨
張により通気路（７２）を完全に塞ぐ性能を持つものと
することができる。実際には、加熱膨張材（７）は、図
１に示した膨張前の寸法として、厚み（ｈ）が１０ｍｍ
以上、奥行き（ｌ）が２０ｍｍ以上とするのが好まし
い。

【００１２】加熱膨張材（７）の寸法は、図１に示した
実施例では、流し桟（４）の厚みによって変更される
が、充分に大きい通気部（６）を確保するためには流し
桟（４）の厚みを、従来の３ｍｍからたとえば１８ｍｍ
以上にすることが考慮され、この場合、加熱膨張材
（７）の厚み（ｈ）はそれに見合ったものにする。ま
た、加熱膨張材（７）は、図１に示した実施例では、防
水シート（３）とこれに対向する流し桟（４）との間に
所定数を挿着する。

【００１３】もちろん、この発明は、以上の例によって
何ら限定されることはない。その細部の態様は様々に可
能であることは言うまでもない。

【００１４】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明の軒
先通気・防火構造によって、従来の構造に比べてはるか
に大きな通気層を設けることができ、通気層は、確実な
防火性能を持つ。したがって、この発明の軒先通気・防
火構造は、夏期の防暑と冬期の結露防止とのための軒先
の瓦下での通気を充実したものとすることができるとと
もに、大きな通気層であるにもかかわらず、火災時には
通気層は確実に遮断され、防火性を確保することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の軒先通気・防火構造の一実施例を示
した要部分解斜視図である。

【図２】この発明の軒先通気・防火構造における加熱膨
張材を示した分解斜視図である。

【図３】この発明の軒先通気・防火構造における、加熱
膨張材が配置、挿着された軒先を示した要部断面図であ
る。

【図４】従来の屋根の構造を示した要部斜視図である。

【図５】他の従来の屋根の構造を示した要部断面図であ
る。

【図６】図５に示した従来例の要部斜視図である。

【符号の説明】

１ 瓦 ２ 野地板 ３ 防水シート ４ 流し桟 ６ 通気部 ７ 加熱膨張材 ７１ 波板状体 ７２ 通気路

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平６−26154（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−235（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−280318（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−101928（ＪＰ，Ｕ) 実開 平１−61309（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E04B 1/70 E04D 13/16 E04B 1/94

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 軒先の瓦と野地板配設部との間に通気部
   が設けられ、波板状体が積層されて通気路が形成され、
   各々の波板状体の膨張方向面が接している加熱膨張材が
   前記通気部に配置され、軒先の瓦下で通気するととも
   に、火災時に加熱膨張材が膨張して通気を遮断すること
   を特徴とする軒先通気・防火構造。
2. 【請求項２】 加熱膨張材は、瓦下の桟木と野地板配設
   部との間に設けられた通気部に挿着されている請求項１
   記載の軒先通気・防火構造。
3. 【請求項３】 加熱膨張材は、発泡材を膨張材としてい
   る請求項１又は２記載の軒先・防火構造。
4. 【請求項４】 加熱膨張材は、不燃処理された繊維体に
   発泡材が含浸又は塗布されたものである請求項３記載の
   軒先通気・防火構造。