JP3264577B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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貴志 鈴木
吉郎 原田
浩平 山本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、正極と負極との間で
一方が放出したリチウムイオンを他方が吸蔵するという
可逆反応によって充放電を行うリチウム二次電池に関
し、特に、正極活物質としてLiCoO2 を、負極活物
質として天然黒鉛または人造黒鉛またはグラッシーカー
ボンなどの炭素質材料を用いたリチウム二次電池に関す
る。
【0002】
【従来の技術】よく知られているように、リチウム金属
を負極活物質とするリチウム二次電池においては、充放
電サイクルにともなってリチウムの溶解・析出が繰り返
され、やがて負極上に針状にリチウムデンドライトが生
成されて、電池寿命を損うとともに、内部短絡の原因に
なる。そのため最近では、リチウム金属の代わりにリチ
ウムイオンを吸蔵して層間化合物を形成する炭素質を負
極に使用する二次電池が開発されている。前者をリチウ
ム金属二次電池と呼び、後者をリチウムイオン二次電池
と呼んで区別している。
【0003】リチウムイオン二次電池では、充電を行う
と正極からリチウムが放出されて負極に吸蔵され、放電
時には負極からリチウムが放出されて正極に吸蔵され
る。その際に正負極間で可逆に移動可能なリチウム量に
よって電池容量が決まる。この種の電池に使用されるリ
チウムの吸蔵・放出(ドープ・脱ドープ)が可能な電極
活物質についてはカーボン、高分子化合物、無機化合物
などさまざまなものが研究されている。その中でも、正
極活物質としてLiCoO2 を、負極活物質として天然
黒鉛または人造黒鉛またはグラッシーカーボンなどの炭
素質材料を用いたリチウムイオン二次電池が、高電圧、
高容量を実現できるとして実用化に向けてさかんに研究
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のリチウム二次電
池を製作するにあたって、正極活物質(LiCoO2
と負極活物質(炭素質材料)の充填量の比率を適切に設
定することが非常に難しいことが分かった。負極活物質
量に対して正極活物質量が多すぎると、正極からのリチ
ウムを負極に吸蔵できなくなり、過剰なリチウムが負極
の表面に析出し、前述のリチウム金属二次電池と同じ問
題を生じる。
【0005】元来、炭素質系層間化合物のリチウム吸蔵
能力は理論値で372mAH/gと大きい。従来はこの
理論値に基ずいて、対応する量のリチウムを正極から供
給できるように正極活物質の量(負極活物質との比率)
を決定していた。しかし実用電池では使用電流が大きい
ため、電解液の電導度の影響や炭素質材料内へのリチウ
ムイオンの拡散速度の影響による分極が生じ、効率が低
下する。そのため炭素質材料にはその理論値に相当する
量のリチウムイオンは入らず、余分なリチウムが負極表
面に析出してしまう。なお反対に正極活物質量が少なす
ぎると、その分電池容量が低下することになる。
【0006】この発明は前述した従来の問題点に鑑みな
されたもので、その目的は、正極活物質(LiCoO2
)と負極活物質(炭素質材料)の充填量の比率を適切
に設定し、サイクル寿命が長く、かつ安全性に優れたリ
チウムイオン二次電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこでこの発明では、L
iCoOを活物質とする正極と、非水電解液と、炭素
質材料を活物質とする負極とからなり、正極と負極との
間で一方が放出したリリウムイオンを他方が吸蔵すると
いう可逆反応によって充放電を行うリチウム二次電池に
おいて、前記非水電解液中でリチウムを対極として前記
負極に5mA/cm以下の電流密度で0ボルトまでリ
チウムをドープした後、同じ電流密度で1.0ボルトま
で脱ドープした場合に、その脱ドープ時に流れた電気量
を当該負極の前記炭素質材料の重量で除した値がα(A
H/)であるとすると、電池ケ−スに組み込まれた前
記正極活物質と前記負極活物質の重量比を、負極活物質
を1としたときに、5.7α〜6.8αの範囲に設定し
た。
【0008】
【作用】正極活物質の重量比が6.8αを上回ると、正
極活物質量が過剰となり、負極表面にリチウムの析出が
みられる。正極活物質の重量比が5.7αを下回ると電
池容量の目減りが無視できなくなる。
【0009】
【実施例】
[負極活物質として人造黒鉛を用いた比較試験] 負極 人造黒鉛90重量%に対し、導電剤5重量%、結着剤5
重量%を添加混合して得たスラリーを、厚さ10μm、
幅40mmの銅箔の両面に厚さ0.1mmづつ均一に塗
工し、乾燥し、圧延した2.4gのシート状負極を製作
した。
【0010】正極 LiCoO2 85重量%に対し、10重量%の炭素系導
電助材を加え、さらに結着剤5重量%を加えて得たスラ
リーを、厚さ20μm、幅40mmのアルミニウム箔の
両面に塗工し、乾燥し、圧延したMgシート状正極を製
作した。なおMは変数であり、M=6.6 M=6.0
M=5.7 M=5.1 M=4.8 M=4.5
というように重量の異なる6種類のシート状正極を製作
した。
【0011】非水電解液 炭酸プロピレンと炭酸エチレンの体積比1:1の溶液に
LiPF6 を1モル溶解した電解液を使用する。
【0012】前記のシート状負極およびシート状正極に
それぞれリードタブを溶接した後、厚さ25μmのポリ
プロピレン微多孔性シート(セパレータ)を間に介在さ
せて渦巻き状に巻いて、3ccの前記電解液とともに直
径14mmの円筒型電池ケースに封入し、図1に示すよ
うな良く知られたスパイラル電極構造でAAサイズの円
筒型電池を組み立てた。前記のように正極の重量が異な
る6種類の電池をそれぞれ10個製作し、以下に詳述す
るようにその性能を比較試験した。
【0013】一方、前述の負極について、つぎのように
してそのリチウム吸蔵力を実測した。つまり、前記非水
電解液中でリチウムを対極として前記負極に5mA/c
以下の電流密度で0ボルトまでリチウムをドープし
た後、同じ電流密度で1.0ボルトまで脱ドープした場
合に、その脱ドープ時に流れた電気量を当該負極の前記
炭素質材料の重量で除した値α(AH/)をリチウム
吸蔵力と定義し、人造黒鉛を活物質とする前記負極につ
いてこれを測定したところ、α=0.330であった。
【0014】前記各試作電池について、最大250mA
の電流で4.2ボルトの定電圧充電を3時間行い、25
0mA定電流で3.2ボルトまで放電するという充放電
サイクル試験を100回おこなった。そして、5サイク
ル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の
比をサイクル特性と て以下の表に示す。また100サ
イクル後に電池を分解し、負極の表面にリチウムが析出
しているか否かを調査し、その結果も表に記入してい
る。
【0015】
【表1】 正負極の重量比が6.8αを上回ると、負極表面にリチ
ウムの析出がみられるとともにサイクル特性が低下す
る。正負極の重量比が5.7αを下回ると電池容量の低
下が無視できないし、サイクル特性の低下もみられた。
【0016】[負極活物質として天然黒鉛を用いた比較
試験] 負極 天然黒鉛90重量%に対し、導電剤5重量%、結着剤5
重量%を添加混合して得たスラリーを、厚さ10μm、
幅40mmの銅箔の両面に厚さ0.1mmづつ均一に塗
工し、乾燥し、圧延した2.4gのシート状負極を製作
した。これのリチウム吸蔵力αは0.360であった。
【0017】正極 先の試験例と同じシート状正極を用いるが、正極重量M
として、M=7.2M=6.5 M=6.2 M=5.
5 M=5.2 M=4.9の6種類のシート状正極を
製作した。
【0018】非水電解液 先の試験例と同じである。そして前記の試験例とまった
く同様にして、スパイラル電極構造でAAサイズの円筒
型電池を組み立て、正極の重量が異なる6種類の電池を
それぞれ10個製作し、前記とまったく同様にその性能
を比較試験した。結果を次の表に示す。
【0019】
【表2】 前記の試験結果と同様に、正負極の重量比が6.8αを
上回ると、負極表面にリチウムの析出がみられるととも
にサイクル特性が低下する。正負極の重量比が5.7α
を下回ると電池容量の低下が無視できないし、サイクル
特性の低下もみられた。なお、負極活物質としてグラッ
シーカーボンを用いた場合も同様な結果が認められた。
【0020】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明に
よれば、正極活物質(LiCoO2 )と負極活物質(炭
素質材料)の充填量の比率を適切に設定することがで
き、その結果サイクル寿命が長く、かつ安全性に優れた
リチウムイオン二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スパイラル電極構造の円筒型リチウム二次電池
の概略構成図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 浩平 東京都港区新橋5丁目36番11号 富士電 気化学株式会社内 審査官 天野 斉 (56)参考文献 特開 昭64−14881(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/40 H01M 4/02 - 4/04 H01M 4/58

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 LiCoOを活物質とする正極と、非
    水電解液と、炭素質材料を活物質とする負極とからな
    り、正極と負極との間で一方が放出したリチウムイオン
    を他方が吸蔵するという可逆反応によって充放電を行う
    リチウム二次電池において、前記非水電解液中でリチウ
    ムを対として前記負極に5mA/cm以下の電流密
    度で0ボルトまでリチウムをドープした後、同じ電流密
    度で1.0ボルトまで脱ドープした場合に、その脱ドー
    プ時に流れた電気量を当該負極の前記炭素質材料の重量
    で除した値α(AH/)であるとすると、電池ケース
    に組み込まれた前記正極活物質と前記負極活物質の重量
    比が、負極活物質を1としたときに、5.7α〜6.8
    αの範囲に設定されていることを特徴とするリチウム二
    次電池。
  2. 【請求項2】 前記炭素質材料が天然黒鉛または人造黒
    鉛またはグラッシーカーボンであることを特徴とする請
    求項1に記載のリチウム二次電池。
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