JP3250795B2 - 小ストローク免震装置 - Google Patents
小ストローク免震装置Info
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Description
建物躯体を免震対象とする小ストローク免震装置に関す
るものである。
震構造としては、従来、主として積層ゴム支承を用いた
免震装置が用いられている。
免震対象物の場合には、転がり支承や滑り支承に原点復
帰機構としてのダンパやコイルバネなどを組み合わせた
免震装置が実用化されている。
置は、床あるいは建物躯体等の免震対象物と支持構造体
との相対変位が大きく、かなり大きなクリアランスが建
築計画上必要であり、極めて大きな地震の場合は、免震
対象物が構造物の壁あるいは支持構造体の立上り部等に
激突することも考えられる。
を制限するためには、ダンパのような減衰装置を付設す
る。しかし減衰装置を付設すると(特に減衰係数が大き
い場合)、高周波数域の振動を低減する効果が落ちてし
まう。その結果、効果的な免震効果が得られない。
る理由は、免震対象物とそれが設置される支持構造体の
振動に位相差があったためである。
動させることができれば、同じ相対変位でもより有効な
免震効果が得られる。
ら調整しても、免震効果を保持しつつ同位相で振動する
ような系は実現できない。
のような課題の解決を図ったものであり、免震対象物と
支持構造体との間にボールネジのような回転慣性系を加
えることで、免震対象物と支持構造体の振動がほぼ同位
相となるようにし、相対変位を抑制しつつ、効率のよい
免震が可能な小ストローク免震装置を提供することを目
的としている。
ストローク免震装置は、支持構造体との間に転がり支承
または滑り支承を介して免震対象物を支持し、前記支持
構造体と免震対象物との間に地震入力による前記免震対
象物の変位を抑制し原点復帰機能を与えるバネ要素を設
けてなる免震装置において、前記支持構造体と免震対象
物を、該支持構造体と免震対象物の特定方向の相対変位
を該特定方向を軸方向とする螺旋回転運動に変換する回
転慣性機構で連結し、前記回転慣性機構の諸元を免震対
象物が支持構造体とほぼ同位相で振動するように設定し
たことを特徴とするものである。
や免震構造物の基礎部と切り離した上部構造(建物躯
体)などである。支持構造体は、免震床の場合には建物
のスラブ、免震構造物の場合は下部基礎スラブなどであ
る。
い支承機構であり、上述のように従来の免震装置におい
ても採用されているものがある。
従来と同様に考えることができ、通常、水平方向に作用
するバネとともにダンパが設置される。なお、バネ要素
は、コイルバネやゴムなどに限らず、電磁気を用いたも
のや滑動面を曲面として位置エネルギーを利用したもの
などでもよい。また、ダンパも弾塑性ダンパ、粘性ダン
パ等の他、摩擦力を利用したもの等でもよい。
対象物との間に、さらに回転慣性機構を介在させること
で、免震対象物が支持構造体とほぼ同位相で振動するよ
うにしたもので、ほぼ同位相で振動させることができる
理由、またそれによって小さいストロークで効率の良い
免震が可能となる理由については、後に詳述する。
ストローク免震装置において、前記回転慣性機構と免震
対象物との間に前記特定方向に作用するバネ要素とダン
パ要素を介在させて、回転慣性機構からの回転慣性力を
免震対象物に伝達するようにしたものである。
に周波数とはほとんど無関係に地震動等の振動外力を一
定の低減率で低減することができる。しかし、その反
面、従来の免震装置で高い応答低減率を得られる高周波
数域の振動に対しても、低周波数域と同程度の低減率し
か得られない。
性機構が効率的に働くのは変位が大きくでる低周波数域
であり、変位が小さく加速度が大きい高周波数域ではス
トロークの低減は小さく、免震性能が劣化することにな
る。
にかかる力が低周波数域でしか伝達しないようにすれ
ば、より効率の良い免震が行なえることになる。
実現するために、回転慣性機構と免震対象物の間に、さ
らにバネ要素とダンパ要素を介在させたものである。
トローク免震装置において、回転慣性機構が、支持構造
体と免震対象物とを連結するボールネジである場合を限
定したものである。
は、摩擦が小さい状態で水平方向の運動を回転方向の運
動に置き換えられるボールネジが適しており、ボールネ
ジについては既存の構造のものを用いることができる。
一方向のみの免震を行うことも考えられ、その場合はそ
の一方向のみにボールネジ等からなる回転慣性機構の軸
方向を一致させればよいが、通常はあらゆる方向の地震
動に対処させる必要があり、その場合には例えば直交す
るX、Y2方向を特定方向として、その2方向について
ボールネジや付随する原点復帰機構としてのバネ要素、
ダンパ要素、請求項2に係る発明の場合はさらに回転慣
性機構と免震対象物との間に、バネ要素、ダンパ要素等
を配置する。
対象物と支持構造体がほぼ同位相で振動する原理は以下
の通りである。
のモデル図を示したものである。ただし、ここでは、バ
ネ要素、ダンパ要素(支持構造体と免震対象物をつなぐ
バネ要素、ダンパ要素)、および回転慣性機構としてボ
ールネジを加えた免震装置の1方向のみの理論式につい
て示す。
(N) M=ボールネジに加わるモーメント(N・m) まず、免震対象物およびボールネジに対して次の運動方
程式が成り立つ。
とFi が分かれば解くことができる。
の関係式 d2 θ/dt2 =(2π/Le )・(d2 xr /dt2 ) …(4) と、Fi とボールネジにかかるモーメントMとの関係式 M=−Fi ・( sinφ/ cosφ)・r=−Fi ・(Le /2π) …(5) の2つの式を(2) 式に代入すると Fi =−mr (d2 xr /dt2 ) =mr {(d2 y/dt2 )−(d2 x/dt2 )} …(6) と求まる。ただし、mr =I・(2π/Le )2 であ
る。
(1) 式に代入すると、 d2 x/dt2 =(1/m)・[k(y−x)+c{(dy/dt)−(d x/dt)}+mr {(d2 y/dt2 )−(d2 x/dt2 )}] …(7) となる。これをラプラス変換してyからxへの伝達関数
を求めると、 X(s) /Y(s) =(mr s2 +cs+k)/{(m+mr )s2 +cs+k ) …(8) となる。k=0、c=0の場合には X(s) /Y(s) =mr /(m+mr ) …(9) となり、周波数と無関係に一定値となる。
ば、目標とする周波数以上で振動伝達率mr /(m+m
r )で、位相遅れがほとんどない系を実現することがで
きることが分かる。
関するグラフであり、横軸が周波数(Hz)、縦軸が位
相差(度)とゲイン(dB)を示す。
秒)の近傍で位相のずれが生じ、ゲインも大きくなる
が、それ以外の部分では位相のずれがほとんどなく、ゲ
インも安定していることが分かる。
係る免震装置を比較した図であり、(a) は従来の免震装
置を設置した場合の入力変位と応答変位の関係を示し、
(b)は本願の請求項1に係る小ストローク免震装置を設
置した場合の入力変位と応答変位の関係を示している。
っており、支持構造体(設置基礎)と免震対象物の相対
変位は(a) 、(b) とも変わらないが、(b) では変位量の
絶対値が小さくなっていることが分かる。つまり、より
効果的な制震が行われることになる。
振動系のモデル図を示したものである。すなわち、請求
項1に係る発明において、さらに回転慣性機構(ボール
ネジ)と免震対象物との間に、回転慣性力を伝達するバ
ネ要素とダンパ要素を加えた構造となっており、以下に
この場合の理論式を示す。なお、請求項1に係る発明に
ついての上記説明と重複する部分は一部省略する。
(kg) x1 =免震対象物の絶対変位(m) x2 =ボールネジ側の絶対変位(m) y=支持構造体の絶対変位(m) θ=ボールネジの回転角(rad ) xr =免震対象物の支持構造体に対する相対変位(m) k1 =原点復帰機構としてのバネ要素のバネ係数(N/
m) c1 =原点復帰機構としてのダンパ要素の減衰係数(N
・s/m) k2 =回転慣性力伝達機構としてのバネ要素のバネ係数
(N/m) c2 =回転慣性力伝達機構としてのダンパ要素の減衰係
数(N・s/m) Fi =回転慣性力伝達機構(k2 ,c2 )が免震対象物
に加える力(N) Fo =原点復帰機構(k1 ,c1 )免震対象物に加える
力(N) まず、免震対象物およびボールネジに対して次の運動方
程式が成り立つ。
ラス変換すると、 X1 {ms2 +(c1 +c2 )s+k1 +k2 }−X2 (c2 s+k2 )− Y(c1 s+k1 )=0 …(5a) また、(2a)式に、(4a)式を代入してラプラス変換する
と、 X2 (mr s2 +c2 s+k2 )−X1 (c2 s+k2 )−Ymr s2 =0 …(6a) となる。
ると、 X1 /Y={c1 s+k1 +mr s2 (c2 s+k2 )/(mr s2 +c2 s+k2 )}/{ms2 +(c1 +c2 )s+k1 +k2 −(c2 s+k2 )2 /(mr s2 +c2 s+k2 )} …(8a) となる。
として示した装置1(請求項2に係る免震装置)、装置
2(従来の免震装置)、および装置3(請求項1に係る
免震装置)の3種類の免震装置について、支持構造体で
ある設置基礎から免震対象物までの振動伝達率の一例を
求めた。
=1.0、mr =1.0、k1 =2.0、k2 =8.
0、c1 =1.5、c2 =3.0として計算した。
して示したものであり、横軸が周波数(Hz)、縦軸が
振動伝達率を示している。なお、この図における振動伝
達率として、上側のグラフでは設置基礎の絶対変位に対
する免震対象物の絶対変位を、下側のグラフでは設置基
礎の絶対変位に対する免震対象物の相対変位を表してい
る。
1から領域4の4つの領域を考える。
3つの装置はほぼ同じ性能を示している。
置1のストローク(設置基礎との相対変位)が最も小さ
く、免震性能(絶対変位)に関しては、装置1は請求項
1に対応する装置3より多少劣るが、従来の免震装置に
対応する装置2と比較すると良好である。
置2、3と比較して劣るが、ある程度の低減率は確保し
ている。ストロークに関しては装置2と装置3の中間ぐ
らいの大きさとなっている。
較して劣るが、装置3と比較すると極めて良好である。
また、ストロークは装置3と同様に大きい。以上より、
請求項2に係る免震装置は、低い周波数領域ではストロ
ークを小さくし、かつ免震性能もある程度確保できてお
り、請求項1に係る免震装置に近い性能を有しているこ
と、および高い周波数ではストロークの低減はほとんど
ないが高い免震性能を保っており、従来の免震装置に近
い性能を有していることが分かる。
ク免震装置を概念的に示したものであり、(a) は平面
図、(b) は立面図である。
は転がり支承3(ボール支承)で、基礎スラブ等の支持
構造体2上に支持されている。さらに、免震対象物1
は、支持構造体2に水平方向のバネ4によって連結さ
れ、水平方向の振動が抑制されるようになっている。こ
れらの構成は、従来の転がり支承3を用いた免震装置と
同じであり、また図示しないが、必要に応じダンパを併
用する。
るX方向およびY方向のボールネジからなる回転慣性機
構であり、この回転慣性機構5を介して支持構造体2と
免震対象物1を連結し、支持構造体2と免震対象物1の
X方向およびY方向の相対変位を、回転慣性機構5を構
成するボールネジの軸回りの回転に変換し、免震対象物
1が支持構造体2とほぼ同位相で振動するようにするこ
とで、小ストロークを実現している(前述の図3参
照)。
たものであり、(a) は平面図、(b)は立面図である。
ルネジ6を2本配置し、支持構造体2に固定されたベア
リング7で支持する。これらのボールネジ6には、それ
ぞれネジに螺合するステージ8を設け、ステージ8にY
方向のボールネジ9を支持するベアリング10を配設す
る。
11を螺合し、ステージ11に免震対象物1を固定す
る。X方向に移動するステージ8、Y方向に移動するス
テージ11にはそれぞれリニアガイドレール12、13
が設けられており、ボールネジ6、9に沿って移動可能
になっている。
変位する際、ステージ8、11が移動してボールネジ
6、9が回転することにより、回転慣性が得られる。こ
の場合のボールネジの諸元を、上述した理論式に基づい
て適切に設定することで、免震対象物1と支持構造体2
がほぼ同位相で振動し、従来の免震装置と比べた場合、
同じ相対変位ではより大きな免震効果が得られ、逆に同
じ免震効果を与える相対変位が小さくなり小ストローク
化が可能となる。
置を概念的に示したものであり、(a) は平面図、(b) は
立面図である。
ブ等の支持構造体2上に支持し、さらに、支持構造体2
に水平方向のバネ4およびダンパ14によって連結して
いる点は従来の免震装置あるいは請求項1に係る免震装
置と同様である。
あるX方向およびY方向のボールネジ6、9からなる回
転慣性機構5を別個に設け、それぞれボールネジ6、9
と免震対象物1との間に反力板15、16を介してバネ
17およびダンパ18を設けている。
側の反力板16は、レール19に沿って移動するように
なっている。
させることで、回転慣性機構としてのボールネジ6、9
から免震対象物1にかかる力が高周波数域では伝達され
にくくなり、より効率の良い免震が行なえることにな
る。
震対象物の振動をほぼ同位相とすることができるため、
従来の免震装置と比べ、同じ相対変位量でより大きな免
震効果が得られ、逆に同じ免震効果を得るためのストロ
ークが小さくて済む。 本願の請求項2に係る免震装置では、請求項1の免震
装置における変位が小さく加速度が大きい高周波数域で
はストロークの低減は小さく、免震性能が劣化するとい
った欠点が解消され、高周波数域に関しより効率の良い
免震が可能となる。
た振動系のモデル図である。
ラフである。
性能を比較したものであり、(a) は従来の免震装置を設
置した場合の入力と応答の関係を示すグラフ、(b) は請
求項1に係る小ストローク免震装置を設置した場合の入
力変位と応答変位の関係を示すグラフである。
図であり、(a) は平面図、(b) は立面図である。
て、回転慣性機構としてボールネジ部分の概要図であ
り、(a) は平面図であり、(b) は立面図である。
た振動系のモデル図である。
免震装置の性能を比較のためのそれぞれの振動系のモデ
ルを並べて示した図である。
の振動伝達率(上側)および相対応答の振動伝達率(下
側)を比較したグラフである。
図であり、(a) は平面図、(b) は立面図である。
…バネ、5…回転慣性機構、6…ボールネジ(X方
向)、7…ベアリング(X方向)、8…ステージ(X方
向)、9…ボールネジ(Y方向)、10…ベアリング
(Y方向)、11…ステージ(Y方向)、12…リニア
ガイド(X方向)、13…リニアガイド(Y方向)、1
4…ダンパ、15…反力板(ボールネジ側)、16…反
力板(免震対象物側)、17…バネ、18…ダンパ、1
9…レール
Claims (3)
- 【請求項1】 支持構造体との間に転がり支承または滑
り支承を介して免震対象物を支持し、前記支持構造体と
免震対象物との間に地震入力による前記免震対象物の変
位を抑制し原点復帰機能を与えるバネ要素を設けてなる
免震装置において、前記支持構造体と免震対象物を、該
支持構造体と免震対象物の特定方向の相対変位を該特定
方向を軸方向とする螺旋回転運動に変換する回転慣性機
構で連結し、前記回転慣性機構の諸元を免震対象物が支
持構造体とほぼ同位相で振動するように設定したことを
特徴とする小ストローク免震装置。 - 【請求項2】 前記回転慣性機構と免震対象物との間に
前記特定方向に作用するバネ要素とダンパ要素を介在さ
せて、回転慣性機構からの回転慣性力を免震対象物に伝
達するようにした請求項1記載の小ストローク免震装
置。 - 【請求項3】 前記回転慣性機構が、支持構造体と免震
対象物とを連結するボールネジである請求項1または2
記載の小ストローク免震装置。
Priority Applications (1)
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JP10094598A JP3250795B2 (ja) | 1997-05-29 | 1998-04-13 | 小ストローク免震装置 |
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JP14029697 | 1997-05-29 | ||
JP10094598A JP3250795B2 (ja) | 1997-05-29 | 1998-04-13 | 小ストローク免震装置 |
Publications (2)
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JPH1144338A JPH1144338A (ja) | 1999-02-16 |
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1998
- 1998-04-13 JP JP10094598A patent/JP3250795B2/ja not_active Expired - Fee Related
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