JP7355627B2 - 防振構造 - Google Patents
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Description
しかし、固有振動数が1Hzの一般的な浮き床では、タテノリ加振振動数が2Hzであると加振力の1/3以上が浮き床を支持する構造躯体に伝達され、大幅な防振効果は期待できない。
慣性質量装置があるケースおよび無いケースともに、浮き床の質量と支持ばね剛性から決定される固有振動数f0=1.0Hzとする。慣性質量装置があるケースでは、慣性質量比μ=0.17とする。
慣性質量装置が無いケース(一般的な防振構造)と、慣性質量装置があるケース(特許文献1の防振構造)とを比較すると、慣性質量装置があるケースでは、特定の振動数領域(タテノリ振動が問題となる2~3.5Hz)で反力倍率を大きく低下させ防振性能を向上させることがわかる。例えば、タテノリ加振振動数2Hzにおける反力倍率は、慣性質量装置が無いケースでは0.34で、慣性質量装置があるケースでは0.10である。
また、減衰を考慮せず慣性質量装置があるケースの反力倍率が最小となる振動数(遮断振動数)は、慣性質量装置が無いケースの固有振動数の
第2ばね要素は、第2振動体を支持するだけであるため、第1振動体および第2振動体を支持する第1ばね要素よりも支持荷重が小さい。第2ばね要素は、ばね剛性が第1ばね要素のばね剛性よりも大きいとともに、支持荷重が第1ばね要素よりも小さいため、第2ばね要素の撓みを第1ばね要素の撓みよりも小さくすることができる。これにより、第2ばね要素に安価なばね装置を用いることができる。
また、第2ばね要素の変形が僅かとなると、本発明の防振構造の固有振動数は概ね第1振動体の質量、第2振動体の質量および第1ばね要素のばね剛性で決定される。共振振動数(固有振動数)と大きな防振効果が得られる遮断振動数との比が小さくなるため、第1ばね要素のばね剛性を増して第1振動体の揺れを抑制できる。
第2ばね要素の変形が小さいことにより、これと並列する慣性質量装置に生じる変形も小さくなる。このため、慣性質量装置を、ストロークが小さいコンパクトで安価な装置とすることができる。
このような構成とすることにより、共振を抑えることができる。
このような構成とすることにより、慣性質量装置の小型化を図ることができる。
図1に示すように、本実施形態による防振構造1は、構造体2と、構造体2の上方に設置された第1浮き床3(第1振動体)と、第1浮き床3の上方に設置された第2浮き床4(第2振動体)と、構造体2と第1浮き床3との間に介在する第1支持ばね5(第1ばね要素)と、第1浮き床3と第1浮き床3との間に介在する第2支持ばね6(第2ばね要素)と、構造体2と第1浮き床3との間に介在する第1減衰要素7と、第1浮き床3と第2浮き床4との間に介在する慣性質量装置8と、第1浮き床3と第2浮き床4との間に介在する第2減衰要素9と、を有している。
本実施形態による防振構造1は、例えば、大規模な音楽ホールなどの建物に採用され、第2浮き床4の上部に人や物が載るようになっている。防振構造1では、第2浮き床4の上部で多人数客が曲に合わせて屈伸運動するなどして第2浮き床4が加振された際に、第2浮き床4に鉛直振動(いわゆるタテノリ振動)が生じることを想定している。
基礎部22の上面は水平面に形成されている。
第1浮き床3および第2浮き床4は、それぞれ平板状に形成され、板面が水平面となる向きで構造体2の凹部21に配置されている。第1浮き床3は基礎部22の上方に重なって配置され、第2浮き床4は、第1浮き床3の上方に重なって配置されている。
第1浮き床3は、構造体2に対して第1支持ばね5および第1減衰要素7の変形可能範囲において上下方向に変位可能に構成されている。
第2浮き床4は、構造体2に対して上下方向に変位可能に構成されているとともに、第1浮き床3に対して第2支持ばね6および慣性質量装置8の変形可能範囲において上下方向に変位可能に構成されている。
第1支持ばね5のばね剛性k1は、第2支持ばね6のばね剛性k2よりも小さく設定されている(K1<K2)。
第2支持ばね6は、第1支持ばね5よりも変位が小さく、更に第1支持ばね5よりも支持荷重が小さいため、本実施形態では、第1支持ばね5よりも軽微なばねが用いられている。
慣性質量装置8の負担力は、回転錘82の直径D、質量ms、リードLd、装置負担力P、変位X、錘回転角θ、慣性質量ψ2とすると、下式で表される。
慣性質量装置8が設けられていない(慣性質量ψ2が無い)場合の防振構造1の固有振動数をf1とする。反力倍率を大きく低下させたい特定の振動数領域の下限振動数をfminとし、上限振動数をfmaxとする。k2は、第2支持ばね6のばね剛性である。
慣性質量装置8は、下式を満足するように設定される。
第1浮き床3の質量M1=0.75M
第2浮き床4の質量M2=0.25M
第1支持ばね5の剛性k1=k
第2支持ばね6の剛性k2=2k
慣性質量ψ2を除いた防振構造1の固有振動数f1=0.98Hz
基礎部22と第1浮き床3との間の第1減衰要素7の減衰係数c1=1.2c
第1浮き床3と第2浮き床4との間の第2減衰要素9の減衰係数c2=c
慣性質量ψ2=0.48M
なお、減衰c2=0での反力倍率が極小化される遮断振動数は、以下となる。
本実施形態による防振構造の加振振動数fと反力倍率R/Fとの関係(振動数伝達関数)を図3に示す。なお、図3には、図6に示す従来の防振構造の慣性質量装置があるケースおよび無いケースそれぞれの加振振動数fと反力倍率R/Fとの関係(振動数伝達関数)についても表記している。
第1支持ばね5の剛性k1、第2支持ばね6の剛性k2との比を以下の3ケースとした場合を比較する。
k2=k1の場合(図4において一点鎖線で示す)は、防振特性は優れるが、加振対象物が載荷されたときの撓みがk1=2k2の2倍になる。
k2=2k1の場合(図4において実線で示す)は、上述したように、2Hz以上の全振動数領域で反力倍率は概ね0.1以下となり、タテノリ振動が問題となる特定の振動数領域(2~3.5Hz)において慣性質量ψ2が無い一般的な浮き床より大幅に反力低減できるとともに、高振動数領域でも慣性質量ψ2が無いの場合より反力が増大することがない。
k2=3k1の場合(図4において2点鎖線で示す)では、防振効果を発揮したい特定の振動数領域において反力倍率が0.1より大きくなる。
いずれのケースにおいても、慣性質量ψ2が無い一般的な浮き床より大幅に反力低減できるとともに、高振動数領域でも慣性質量ψ2が無い場合より反力が増大することがない。
ψ2=0.3Mの場合(図5において一点鎖線で示す)は、2.5Hz以上の高振動数領域での防振特性は優れるが、2.5Hz以下では上記の実施形態による防振構造1よりも防振特性が劣る。
ψ2=0.48Mの場合(図5において実線で示す)は、上記のk2=2k1の場合と同じである。
ψ2=0.7Mの場合(図5において二点鎖線で示す)は、1.5Hz以上で防振効果を発揮するが、2~3Hzで反力倍率が0.1より大きくなる。
以上より、慣性質量ψ2を調整することで、防振効果を発揮する振動数領域が変化することがわかる。
いずれのケースも高振動数領域では、慣性質量ψ2がない一般的な浮き床より反力が小さくなる。
上記の実施形態による防振構造1では、特定の振動数領域で反力倍率を大きく低下させることができるとともに、ジャンプによる衝撃加振などによって生じる高振動数成分に対しても反力倍率を大きく低下させることができ、優れた防振特性を実現できる。なお、慣性質量ψ2が無い従来の一般的な防振構造1では、共振振動数の2倍の加振振動数での反力を1/3以下にすることはできなかった。
また、第2支持ばね6の変形が僅かとなると、本発明の防振構造1の固有振動数は概ね第1浮き床3の質量M1、第2浮き床4の質量M2および第1支持ばね5のばね剛性k1で決定される。共振振動数(固有振動数)と大きな防振効果が得られる遮断振動数との比が小さくなるため、第1支持ばね5のばね剛性k1を増して第1浮き床3(第1振動体)の揺れを抑制できる。
第2支持ばね6の変形が小さいことにより、これと並列する慣性質量装置8に生じる変形も小さくなる。このため、慣性質量装置8を、ストロークが小さいコンパクトで安価な装置とすることができる。なお、慣性質量ψ2は小さくならないが、これは装置内にある回転錘82の径の4乗に比例するので、慣性質量ψ2を大幅に増しても重量増加はわずかで済む。
第2支持ばね6に並列する減衰c2が小さいほど遮断振動数近傍の反力応答倍率を低下させることができるが、第1支持ばね5、第2支持ばね6や慣性質量装置8の摩擦等を考慮し、無理なく実現できるやや大きめの減衰c2を設定した。
例えば、上記の実施形態では、上記の実施形態による防振構造1では、構造体2と第1浮き床3との間に第1減衰要素7が第1支持ばね5と並列に設けられているが、第1減衰要素7は設けられていなくてもよい。第1浮き床3と第2浮き床3との間に第2減衰要素9が第2支持ばね6および慣性質量装置8と並列に設けられているが、第2減衰要素9は設けられていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、慣性質量装置8は、回転慣性質量ダンパであるが、回転慣性質量ダンパ以外の慣性質量装置8であってもよい。
2 構造体
3 第1浮き床(第1振動体)
4 第2浮き床(第2振動体)
5 第1支持ばね(第1ばね要素)
6 第2支持ばね(第2ばね要素)
7 第1減衰要素
8 慣性質量装置
9 第2減衰要素(減衰要素)
Claims (3)
- 前記第1振動体と前記第2振動体との間に前記第2ばね要素と並列に設けられた減衰要素を有することを特徴とする請求項1に記載の防振構造。
- 前記慣性質量装置は、回転慣性質量ダンパであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防振構造。
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