JPH06249285A - 動吸振型制振装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 一つの可動重量部に対して、水平２次元の任
意の方向の振動に追従できるように支持し、容易な配置
設定を可能としながら複数の方向に対して制振効果を有
する動吸振型制振装置を提供することを目的とする。 【構成】 本発明に係る動吸振型制振装置は慣性力を受
ける可動重量部５の周囲に配設される導体板９と、対向
する上下端面に磁石１１ａ，１１ｂを配置し前記導体板
９を上下に間隙１２ａ，１２ｂを有して挟むヨーク１０
と、端部を前記可動重量部５の周囲に接続され他端を格
納容器７内に複数等方に配設される係止構造物３０に接
続されるばね要素６とから構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は構造物の水平２次元振動
に対して制振効果を有する動吸振型制振装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、動吸振型制振装置は振動によっ
て慣性力を受ける付加重量部と、この付加重量部にかか
る慣性力に対抗する反力を発生させる剛性要素と振動エ
ネルギーを吸収する減衰要素を有している。

【０００３】そして、従来の動吸振型制振装置は制振対
象構造物の振動方向を特定し、その方向に対して制振効
果を発揮するように、付加重量部を振動させる構成とな
っており、制振すべき振動方向が複数ある場合にはその
各方向に対応した個数分、動吸振型制振装置を設置して
いた。以下、図４（ａ）及び（ｂ）を参照して動吸振型
制振装置の従来例について説明する。

【０００４】図４（ａ）及び（ｂ）において、床４１に
設置された制振対象構造物１はｘ軸，ｙ軸の２方向の振
動方向を有している。制振対象構造物１にはそれぞれの
振動方向に対応して、２個の動吸振型制振装置４０ａ，
４０ｂが上載されている。これらの動吸振型制振装置４
０ａ，４０ｂは係止構造物４２に係止され、付加重量部
２を剛性要素３と減衰要素４によって支持している。

【０００５】このように構成された動吸振型制振装置４
０ａ，４０ｂは、制振対象構造物１に振動が発生した場
合において、付加重量部２に生じる慣性力に対し剛性要
素３で反力を加えながら減衰要素４で振動のエネルギー
を吸収する。従って、動吸振型制振装置４０ａ，４０ｂ
はそれぞれ図４中ｘ軸，ｙ軸方向の振動に対して制振効
果を発揮する。このように従来の動吸振型制振装置４０
ａ，４０ｂにおいては一方向の振動に対して一個の動吸
振型制振装置が設置されていた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述の従来の動吸振型
制振装置においては、制振対象構造物が建築構造物等の
大型構造物である場合には動吸振型制振装置の設置場所
も十分に確保できるので、動吸振型制振装置を複数個設
置することに問題はなかった。しかしながら、機械構造
物のように動吸振型制振装置の設置スペースが限られ、
しかも複数方向の制振が必要な場合には付加重量部の振
動方向が一定している従来構造のままでは、制振効果を
得るための適切な配置設定を行うことが困難であった。

【０００７】本発明は係る従来の事情に対処してなされ
たものであり、その目的は、一つの可動重量部に対し
て、水平２次元の任意の方向の振動に追従できるように
支持し、容易な配置設定を可能としながら複数の方向に
対して制振効果を有する動吸振型制振装置を提供するこ
とを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の動吸振型制振装置は請求項１記載の発明に
おいては制振対象構造物に設置され慣性力を受ける可動
重量部の周囲に配設される導体板と、対向する上下端面
に磁石を配置し前記導体板を上下に間隙を有して挟むヨ
ークと、端部を前記可動重量部の周囲に接続され他端を
前記可動重量部を収容する収納容器内に複数等方に配設
される係止構造物に接続されるばね要素とを有すること
を特徴とする動吸振型制振装置を提供するものである。

【０００９】また、請求項２記載の発明においては制振
対象構造物に設置され上下面に可動部磁石が埋設された
可動重量部と、この可動重量部を収容し可動重量部の上
下面に埋設された可動部磁石と同極の固定部磁石をそれ
ぞれ対抗する上下内面に有する容器と、前記可動重量部
の周囲に複数らせん状に均等に配設され前記容器の側内
面にローラを介して接触する板ばねとを有することを特
徴とする動吸振型制振装置を提供するものである。

【００１０】

【作用】上記構成の動吸振型制振装置においては、請求
項１記載の発明では可動重量部が制振対象構造物から慣
性力を受け静止位置から移動する場合、可動重量部の周
囲に複数等方に配設されるばね要素にその変位量に応じ
た反力が発生する。このばね要素は可動重量部の周囲に
複数等方に配設されているため、水平２次元の任意の方
向に対し同一の剛性を有し反力を発生させる。それと同
時に、対向する端面に磁石を配置するヨーク間を導体板
が磁場に対し相対運動するため、導体板にはうず電流が
発生しヨーク間の磁場との相互作用によって運動を制止
・減衰させ振動のエネルギーを吸収して制振効果を発揮
する。

【００１１】また、請求項２記載の発明では、可動重量
部が制振対象構造物から慣性力を受け静止位置から移動
する場合、可動重量部の周囲に複数らせん状に均等に配
設され容器の側内面にローラを介して接触する板ばねが
撓むことによって、水平２次元の任意の方向に対し同一
の剛性を有し反力を発生させる。また、可動重量部の上
下面に配設された可動部磁石と容器の上下内面に埋設さ
れた同極の固定部磁石による磁気反発力によって可動重
量部の自重を支えている。

【００１２】

【実施例】以下に本発明に係る動吸振型制振装置の第一
の実施例を図１に基づき説明する。

【００１３】図１（ａ），（ｂ）において、本発明に係
る動吸振型制振装置は収納容器７内に円柱状の可動重量
部５を収容している。この可動重量部５は上部に円柱状
の係止構造物３０ａが突設されており、その外周には複
数のばね要素６が剛性要素として接続されている。この
ばね要素６の他端は収納容器７に突設された係止構造物
３０ｂに連結されている。また、可動重量部５の自重は
可動重量部５の底面に設けられたベアリング８によって
支えられている。更に、前記可動重量部５の外周には複
数の導体板９が設けられ、この導体板９は収納容器７の
内部側面に設置されたヨーク１０に各々挟まれている。
このヨーク１０は導体板９を挟む２面に磁石１１ａ，１
１ｂを配設し、導体板９と上下に間隙１２ａ，１２ｂを
保ちながら接触することなく磁気ダンパを構成しており
減衰要素として機能する。

【００１４】このように構成された動吸振型制振装置に
おいて、制振対象構造物に振動が発生した場合には、可
動重量部５に生じる慣性力に対しばね要素６にその変位
に応じた反力が発生する。それと同時に、対向する端面
に磁石を配置するヨーク１０間を導体板９が磁場に対し
相対運動するため、導体板９にはうず電流が発生しヨー
ク１０間の磁場との相互作用によって運動を制止・減衰
させる。すなわち、導体板９とヨーク１０からなる磁気
ダンパによって、振動のエネルギーを吸収して制振効果
を発揮する。次に、上述の磁気ダンパの減衰機能の調整
方法について図２を用いて説明する。

【００１５】図２は図１（ｂ）のヨーク１０部分の拡大
図である。図２において、先端の上下２面に磁石１１
ａ，１１ｂをそれぞれ配設したヨーク１０はガイド棒１
３を介して固定ブロック１４と結合している。このガイ
ド棒１３は止め座金１５によって固定ブロック１４との
間の相対的な上下動が拘束されている。また、ガイド棒
１３は中央を境に上部側では右ネジ１６が螺刻され、下
方側では左ネジ１７が螺刻されており、それぞれ上下の
ヨーク１０ａ，１０ｂと螺合している。なお、ガイド棒
１３は固定ブロック１４とは螺合していない。従って、
ガイド棒１３の一端を回転させることにより上下のヨー
ク１０ａ，１０ｂを同時にしかも逆方向に同量移動させ
ることができる。すなわち、導体板９と上下の磁石１１
ａ，１１ｂとの間隙１２ａ，１２ｂを同時に同量調節す
ることができる。また、ヨーク１０ａ，１０ｂと固定ブ
ロック１４はスライド面１８を介して常に接触してお
り、磁気回路としての磁路断面積を確保している。次に
本発明に係る動吸振型制振装置の剛性要素と可動重量部
の支持方法に関する第二の実施例について図３を用いて
説明する。

【００１６】図３（ａ），（ｂ）において、可動重量部
５はその周囲に複数の板ばね１９が、らせん状に均等に
配設されており、可動重量部５を収容する容器２０の側
内面にローラ２１を介して接触している。また、この可
動重量部５の上下面には可動部磁石２２が埋設されてお
り、容器２０の上下内面にはこの可動部磁石２２と同極
の固定部磁石２３がそれぞれ対抗するように配設されて
いる。

【００１７】このように構成された動吸振型制振装置に
おいては、可動重量部５はその周囲に複数らせん状に均
等に配設された板ばね１９が撓むことによって、容器２
０との相対運動において水平２次元の任意の方向に一定
の剛性を有している。また、可動部磁石２２とこれに対
向する固定部磁石２３の磁気反発力により非接触状態に
て可動重量部５を支えている。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように本発明の動吸振型制
振装置においては、可動重量部が水平２次元の任意の方
向に対して、同一剛性により支持されており、振動方向
に係わらず制振効果が得られる。また、制振効果を左右
する減衰要素として、導体板とヨークを用いる場合に
は、非接触状態にて運動を制止・減衰させ振動エネルギ
ーを吸収するため、信頼性の高い制振効果を得ることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）は本発明に係る動吸振型制振装置の第一
の実施例を示す縦断面図、（ｂ）は（ａ）のＡーＡ線一
部切り欠き矢視図。

【図２】図１に示すヨーク部の拡大構造図。

【図３】（ａ）は本発明に係る動吸振型制振装置の第二
の実施例を示す縦断面図、（ｂ）は（ａ）のＢーＢ線一
部切り欠き矢視図。

【図４】（ａ）は本発明に係る動吸振型制振装置の従来
例を示す概念図、（ｂ）は（ａ）のＣ−Ｃ線矢視図。

【符号の説明】

５…可動重量部 ６…ばね要素 ７…収納容器 ８…ベアリン
グ ９…導体板 １０，１０
ａ，１０ｂ…ヨーク １１ａ，１１ｂ…磁石 １２ａ，１２
ｂ…間隙 １３…ガイド棒 １４…固定ブ
ロック １５…止め座金 １６…右ネジ １７…左ネジ １８…スライ
ド面 １９…板ばね ２０…容器 ２１…ローラ ２２…可動部
磁石 ２３…固定部磁石 ３０ａ，３０
ｂ…係止構造物

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 服部 靖 神奈川県川崎市幸区小向東芝町１番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 制振対象構造物に設置され慣性力を受け
   る可動重量部の周囲に配設される導体板と、互いに対向
   する上下端面に磁石を配置し前記導体板を上下に間隙を
   有して挟むヨークと、端部を前記可動重量部の周囲に接
   続され他端を前記可動重量部を収容する収納容器内に複
   数等方に配設される係止構造物に接続されるばね要素と
   を有することを特徴とする動吸振型制振装置。
2. 【請求項２】 制振対象構造物に設置され上下面に可動
   部磁石が埋設された可動重量部と、この可動重量部を収
   容し可動重量部の上下面に埋設された可動部磁石と同極
   の固定部磁石をそれぞれ対抗する上下内面に有する容器
   と、前記可動重量部の周囲に複数らせん状に均等に配設
   され前記容器の側内面にローラを介して接触する板ばね
   とを有することを特徴とする動吸振型制振装置。