JPH0544773A - 動吸振装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 摺動案内部材を用いることなしに効果的に構
造物の振動を減衰させることができ、加えて設置場所を
それ程必要としない上に、特に水平方向の振動を効果的
に吸振し得る動吸振装置を提供することにある。 【構成】 重錘２と、重錘２とビル屋上床３との間に配
置されており、床３に対する重錘２の水平面内の相対的
変位エネルギを吸収するするエネルギ吸収装置４と、重
錘２と床３との間に配置されており、床３に対する重錘
２の水平面内の相対的変位を許容して重錘２を床３上で
支持する支持装置５と、重錘２と床３との間に配置され
ており、床３に対する重錘２の水平面内での相対的回転
を阻止すると共に固有振動周期を調整すべく、一端が重
錘２に連結され、他端が床３に連結された板ばね装置６
からなる動吸振装置１。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ビル、集合住宅、橋梁
並びに機械本体及びその基礎等の構造物の何等かの原
因、例えば風や地震による強制的な振動を可及的速やか
に減衰せしめる制振装置、いわゆる動吸振装置（ダイナ
ミックダンパ）に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種動吸振装置は、一般に、コイルば
ね部材と、このコイルばね部材に連結された重錘と、こ
の重錘の振動エネルギを吸収するエネルギ吸収装置と、
振動減衰作動中における重錘の意図しない揺動、特に水
平面内の回転を防止して重錘の本来の振動を案内する摺
動案内部材とを具備している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところでこの従来の動
吸振装置は、上述の通り、重錘に対する摺動案内部材を
具備するため、この摺動案内部材の重錘に対する案内面
が十分に平滑でないと、重錘の振動が摺動案内部材を介
して、摺動案内部材を支持する構造物に伝達される。こ
の構造物は、多くの場合一般に、現に振動を減衰させよ
うとする対象物であり、従って上述の場合この構造物に
二次的振動を生じさせる場合がある。また摺動案内部材
を具備している場合、加速度の小さい振動は重錘と摺動
案内部材との間の摩擦抵抗力に打ち勝つことができず、
その結果このような振動では重錘の振動エネルギがエネ
ルギ吸収装置で吸収されることなしにそのまま摺動案内
部材に伝達され、構造物に生じた加速度の小さい振動は
結局効果的に減衰されないこととなる。

【０００４】本発明は前記諸点に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、摺動案内部材を用いる
ことなしに効果的に構造物の振動を減衰させることがで
き、加えて設置場所をそれ程必要としない上に、特に水
平方向の振動を効果的に吸振し得る動吸振装置を提供す
ることにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明によれば前記目的
は、重錘と、この重錘と構造物との間に配置されてお
り、構造物に対する重錘の水平面内の相対的変位エネル
ギを吸収するエネルギ吸収装置と、重錘と構造物との間
に配置されており、構造物に対する重錘の水平面内の相
対的変位を許容して重錘を構造物上で支持する支持装置
と、重錘と構造物との間に配置されており、構造物に対
する重錘の水平面内での相対的回転を阻止すると共に固
有振動周期を調整すべく、一端が重錘に連結され、他端
が構造物に連結された板ばね装置とからなる動吸振装置
によって達成される。

【０００６】本発明の一つの好ましい例では、エネルギ
吸収装置は、構造物に連結されてシリコンオイル等の粘
性流体を収容する容器と、この容器に対する水平面内の
相対的変位において容器内に収容された粘性流体から粘
性剪断抵抗力を受けるように、容器内に、容器と間隔を
有して配置されており、かつ重錘に連結された抵抗力受
容部材とを具備している。

【０００７】本発明の他の好ましい例では板ばね装置
は、一端が重錘に連結された第一の板ばね部材と、一端
が構造物に連結されており、他端が第一の板ばね部材の
他端に連結された第二の板ばね部材とを具備しており、
第一及び第二の板ばね部材は、その板面が互いに交差す
る方向に存在するように配置されている。このような板
ばね装置では、第一及び第二の板ばね部材の間に板部材
を介在させ、第一及び第二の板ばね部材の夫々の他端を
この板部材に取付けて相互に連結するとよい。

【０００８】本発明における板ばね装置の一つの好まし
い例では、第一及び第二の板ばね部材は複数個配されて
おり、複数個の第一の板ばね部材は複数列をもって水平
面と平行な第一の方向に沿って配列されており、複数個
の第二の板ばね部材は、複数列をもって水平面と平行で
あって第一の方向に交差する第二の方向に沿って配列さ
れている。

【０００９】本発明では第一及び第二の板ばね部材は、
その板面が互いに交差する方向に存在するように配置さ
れるが、特に好ましい例では、その板面が直交するよう
に配置される。

【００１０】

【作用】本発明の動吸振装置は構造物としての例えばビ
ルの屋上に設置される。本発明の動吸振装置が設置され
たビルが風等で撓んで上方階部がほぼ水平方向に関して
振動しようとすると、重錘もこれと共に水平面内でビル
屋上床に対して振動し始める。重錘の振動においてこれ
に連結された板ばね装置並びにエネルギ吸収装置が作用
して重錘は構造物の振動に対して位相をほぼ９０度ずら
して振動し、その結果ビルの振動が減衰される。またビ
ルの振動が減衰された後は、エネルギ吸収装置が作用し
て重錘の振動を可及的速やかに減衰させ、重錘の振動に
より逆にビルを振動させることはない。そして本発明の
動吸振装置では、板ばね装置が、一端で重錘に連結さ
れ、他端で構造物に連結されているため、摺動摩擦抵抗
を伴うことなしにビル屋上床に対する重錘の水平面内で
の相対的回転を阻止し得ると共に、振動による重錘の水
平面内における直線的移動を可能にし得る結果、振動を
効果的に減衰せしめることができる。

【００１１】以下本発明を、図面に示す好ましい具体例
に基づいて説明する。これにより前記発明及び更に他の
発明が明瞭となるであろう。尚、本発明はこれら具体例
に何等限定されないのである。

【００１２】

【具体例】図１及び図２において、動吸振装置１は、コ
ンクリート製の重錘２と、重錘２と構造物、例えばビル
屋上床３との間に配置されており、ビル屋上床３に対す
る重錘２の水平面内の相対的変位において粘性剪断抵抗
力を発生させて重錘２の水平面内の相対的変位エネルギ
を吸収するエネルギ吸収装置４と、重錘２とビル屋上床
３との間に配置されおり、ビル屋上床３に対する重錘２
の水平面内の相対的変位を許容して重錘２をビル屋上床
３上で支持する支持装置５と、重錘２とビル屋上床３と
の間に配置されており、ビル屋上床３に対する重錘２の
水平面内での相対的回転を阻止すると共に固有振動周期
を調整する板ばね装置６とを具備している。

【００１３】重錘２のほぼ下面中央に配置されたエネル
ギ吸収装置４は、図３及び図４に示すように、ビル屋上
床３に連結されて粘性流体７を収容する容器８と、容器
８に対する水平面内の相対的変位において容器８内に収
容された粘性流体７から粘性剪断抵抗力を受けるよう
に、容器８内に、容器８と間隔を有して配置されてお
り、かつ重錘２に連結された抵抗力受容部材９とを具備
している。容器８は筒部１０と筒部１０に一体形成され
た円板部１１とからなり、円板部１１には貫通孔１２が
形成されており、貫通孔１２に挿通されたボルト等によ
り容器８はビル屋上床３に固定されて連結される。抵抗
力受容部材９は、容器８の円板部１１に対して微小隙間
をもって対面して粘性流体７内に配された円板状の抵抗
板部１３と、抵抗板部１３に一体形成されて抵抗板部１
３を補強する交差補強リブ部１４と、交差補強リブ部１
４に一体形成された取付板部１５とからなり、取付板部
１５には、貫通孔１６が形成されており、貫通孔１６に
挿通されたボルト等により抵抗力受容部材９は重錘２に
固定されて連結されている。

【００１４】エネルギ吸収装置４を取り囲んで本例では
８個配置された支持装置５は夫々、図５及び図６に示す
ように、上部及び下部のボール収容部材１７及び１８
と、ボール収容部材１７及び１８間に配置されて多数の
ボール保持用の貫通孔１９が形成された保持板２０と、
夫々の貫通孔１９に回転自在に装着された鋼球２１とか
らなり、ボール収容部材１７及び１８は夫々、筒部２２
及び２３と、筒部２２及び２３内に配置されて鋼球２１
と接触する支圧板部２４及び２５と、筒部２２及び２３
に一体形成された取付板部２７及び２８とからなり、取
付板部２７及び２８の夫々には、貫通孔２９及び３０が
設けられており、貫通孔２９及び３０に夫々挿通された
ボルト等により上部及び下部のボール収容部材１７及び
１８は重錘２及びビル屋上床３に夫々固定されて連結さ
れている。

【００１５】板ばね装置６は、図７に示すように、一端
３１が貫通孔３２に挿通されたボルト等により重錘２に
固定されて連結された複数の第一の板ばね部材３３と、
一端３４が貫通孔３５に挿通されたボルト等によりビル
屋上床３に固定されて連結された複数の第二の板ばね部
材３６と、板ばね部材３３及び３６の間に介在して配置
された剛性のばね支持板部材３７とを具備しており、Ｕ
字形状に曲げられた板ばね部材３３及び３６の夫々の他
端３８及び３９は、夫々に設けられた貫通孔４０（他端
３９側は図示せず）に挿通されたボルト等によりばね支
持板部材３７に固定されて連結されている。このように
して板ばね部材３３及び３６の夫々の他端３８及び３９
は、ばね支持板部材３７に取付けられて相互に連結され
ている。板ばね部材３３及び３６の一端３１及び３４並
びに他端３８及び３９には、夫々補強板４１が一体的に
取付けられている。板ばね部材３３及び３６は、その板
面が互いに交差する方向、本例では互いに直交する方向
に存在するように配置されており、複数個の板ばね部材
３３は複数列をもって水平面内において規則正しくばね
支持板部材３７の上面にＸ方向に沿って配列されて設け
られており、板ばね部材３６は、複数列をもって水平面
内において規則正しくばね支持板部材３７の下面にＹ方
向に沿って配列されて設けられている。即ち、複数個の
板ばね部材３３は、重錘２のばね支持板部材３７に対す
る水平面内におけるＸ方向の相対変位を許容する一方、
重錘２のばね支持板部材３７に対する水平面内における
Ｘ方向に直交するＹ方向の相対変位を阻止するように、
重錘２とばね支持板部材３７とに連結されて重錘２とば
ね支持板部材３７との間に配置されており、複数個の板
ばね部材３６は、ばね支持板部材３７のビル屋上床３に
対する水平面内におけるＹ方向の相対変位を許容する一
方、ばね支持板部材３７のビル屋上床３に対する水平面
内におけるＸ方向の相対変位を阻止するように、ばね支
持板部材３７とビル屋上床３とに連結されてばね支持板
部材３７とビル屋上床３との間に配置されている。尚、
ばね支持板部材３７の中央部には貫通孔４２が形成され
ており、エネルギ吸収装置４は貫通孔４２を通って且つ
貫通孔４２においてばね支持板部材３７に対して最大相
対変位量に対応した隙間をもって配置されている。

【００１６】このように形成された動吸振装置１では、
重錘２は支持装置５の鋼球２１によりビル屋上床３に対
して水平面内で可動にビル屋上床３に支持される。そし
て風等によりビルが揺れてビル屋上床３が例えばＸ方向
に振動すると、これに対応して重錘２もＸ方向に振動す
る。この振動において重錘２とビルとの質量の相違、板
ばね装置６のばね定数、エネルギ吸収装置４の抵抗力に
よりビル屋上床３と重錘２との間でほぼ９０度の位相差
が生じ、それによってビル屋上床３に対して重錘２はビ
ル屋上床３の振動を打ち消す方向へ振動してビル屋上床
３の振動を減衰する。そしてビルの振動が減衰された後
は、エネルギ吸収装置４の抵抗板部１３が容器８に対し
てＸ方向に関して相対変位される結果、容器８に収容さ
れた粘性流体に粘性剪断抵抗が生じ、この粘性剪断抵抗
を受容する抵抗板部１３を介して重錘２の振動エネルギ
が吸収される。従ってビルが風等で揺れたとしても可及
的速やかにその振動が吸収、即ち吸振されることとな
る。尚、Ｘ方向の振動においては、図８に示すように板
ばね部材３３のＵ字形状を保ったままの弾性変形により
重錘２のばね支持板部材３７に対するＸ方向の相対的変
位、換言すれば重錘２のビル屋上床３に対するＸ方向の
相対的変位が許容される。Ｙ方向にビルが振動しても以
上と同様であって本動吸振装置１により可及的速やかに
吸振されることとなり、この場合には、板ばね部材３６
のＵ字形状を保ったままの弾性変形により重錘２のビル
屋上床３に対するＹ方向の相対的変位が許容される。

【００１７】そして動吸振装置１の板ばね部材３３の夫
々は、Ｙ方向の重錘２の相対変位ではそれが変形しにく
いようにその幅広の板面が配置されて設けられてある一
方、板ばね部材３６の夫々は、Ｘ方向の重錘２の相対変
位ではそれが変形しにくいようにその幅広の板面が配置
されて設けられてあるため、例えば振動減衰中において
にエネルギ吸収装置４を中心とするＲ方向の相対的回転
が重錘２に生じようとしても、これら板ばね部材３３及
び３６によりそれが阻止され、結果として重錘２はＲ方
向に揺動し得ない。即ち動吸振装置１は摺動摩擦抵抗等
を用いることなしに吸振しようとする振動方向に関する
重錘２の相対的変位を案内し得るのである。従って摺動
摩擦抵抗が生じることによって惹起される種々の問題を
なくし得る。また板ばね装置６のばね定数の調整は板ば
ね部材３３及び３６の増減によって容易に行い得る。そ
して板ばね部材３３及び３６を重錘２とビル屋上床３と
の間に配してなるため、それ程占有面積を必要とせず、
従ってコンパクトにビル屋上に設置し得るのである。

【００１８】尚、動吸振装置１では、板ばね部材３３と
３６とを用い、その間にばね支持板部材３７を介在せし
めてＸ方向とＹ方向の振動を吸振するようにしたが、本
発明はこれに限定されず、例えば板ばね部材３３のみと
して板ばね部材３３の一端３１を重錘２に、その他端３
８を直接ビル屋上床３に連結してＸ方向のみ又はＹ方向
のみの振動を吸振するようにしても良いのである。一方
具体例では、板ばね部材に関して２層の動吸振装置１で
あるが、これに代えて、板ばね部材を３層以上設けて、
その間にばね支持板部材３７に相当する部材を夫々配し
て、これによりＸ方向及びＹ方向以外の例えばＸ方向及
びＹ方向に対して４５度の角度をもつＺ方向を含む３方
向以上の振動に対してもそれを吸振し得る動吸振装置と
しても良いのである。また板ばね部材３３及び３６に、
ゴム等の粘弾性部材を挟み込んだ多層の弾性板を用いる
と、更に吸振効果が得られ好ましい。

【００１９】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、一端で重
錘に連結され、他端で構造物に連結されて構造物に対す
る重錘の水平面内での相対的回転を阻止する板ばね装置
を具備するため、摺動摩擦抵抗を伴うことなしに構造物
に対する重錘の水平面内での相対的回転を阻止し得ると
共に、振動による重錘の水平面内における直線的移動を
可能にし得る結果、振動を効果的に減衰せしめることが
できる。加えて重錘と構造物との間に案内部材としての
板ばね装置を配置し得るので、それ程占有面積を必要と
せず、従ってコンパクトに構造物に適用し得るのであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の好ましい一具体例の平面図である。

【図２】図１に示す具体例の側面図である。

【図３】図１に示す具体例のエネルギ吸収装置の詳細側
面図である。

【図４】図１に示す具体例のエネルギ吸収装置の詳細平
面図である。

【図５】図１に示す具体例の支持装置の詳細側面図であ
る。

【図６】図１に示す具体例の支持装置の詳細平面図であ
る。

【図７】図１に示す具体例の板ばね装置の詳細斜視図で
ある。

【図８】図７に示す板ばね部材の動作説明図である。

【符号の説明】

１ 動吸振装置 ２ 重錘 ３ ビル屋上床 ４ エネルギ吸収装置 ５ 支持装置 ６ 板ばね装置

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重錘と、この重錘と構造物との間に配置
   されており、構造物に対する重錘の水平面内の相対的変
   位エネルギを吸収するエネルギ吸収装置と、重錘と構造
   物との間に配置されており、構造物に対する重錘の水平
   面内の相対的変位を許容して重錘を構造物上で支持する
   支持装置と、重錘と構造物との間に配置されており、構
   造物に対する重錘の水平面内での相対的回転を阻止する
   と共に固有振動周期を調整すべく、一端が重錘に連結さ
   れ、他端が構造物に連結された板ばね装置とからなる動
   吸振装置。
2. 【請求項２】 エネルギ吸収装置は、構造物に連結され
   て粘性流体を収容する容器と、この容器に対する水平面
   内の相対的変位において容器内に収容された粘性流体か
   ら粘性剪断抵抗力を受けるように、容器内に、容器と間
   隔を有して配置されており、かつ重錘に連結された抵抗
   力受容部材とを具備している請求項１に記載の動吸振装
   置。
3. 【請求項３】 板ばね装置は、一端が重錘に連結された
   第一の板ばね部材と、一端が構造物に連結されており、
   他端が第一の板ばね部材の他端に連結された第二の板ば
   ね部材とを具備しており、第一及び第二の板ばね部材
   は、その板面が互いに交差する方向に存在するように、
   配置されている動吸振装置。
4. 【請求項４】 第一及び第二の板ばね部材の間には、板
   部材が介在しており、第一及び第二の板ばね部材の夫々
   の他端は、この板部材に取付けられて相互に連結されて
   いる請求項３に記載の動吸振装置。
5. 【請求項５】 第一及び第二の板ばね部材は複数個配さ
   れており、複数個の第一の板ばね部材は複数列をもって
   水平面と平行な第一の方向に沿って配列されており、複
   数個の第二の板ばね部材は、複数列をもって水平面と平
   行であって第一の方向に交差する第二の方向に沿って配
   列されている請求項３又は４に記載の動吸振装置。