JP3222039B2 - オーステナイト系析出硬化型非磁性鋼 - Google Patents

オーステナイト系析出硬化型非磁性鋼

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JP3222039B2
JP3222039B2 JP18474295A JP18474295A JP3222039B2 JP 3222039 B2 JP3222039 B2 JP 3222039B2 JP 18474295 A JP18474295 A JP 18474295A JP 18474295 A JP18474295 A JP 18474295A JP 3222039 B2 JP3222039 B2 JP 3222039B2
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英樹 狩野
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非磁性で且つ、固溶化処
理後の良好な被削性と析出硬化後の高いねじり強度を併
せ持つ、例えばトルクセンサーシャフト等に適する鋼材
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高いねじり強度を要する構造部材には、
一般に焼入れ焼戻し鋼材が使用される。しかし、これら
の構造部材が使用中に受けるトルクを常時モニターし
て、各種制御を行いたい場合が往々にしてある。そのた
めには構造部材に、例えば回転力伝達シャフトにトルク
センサーを接合して行うことがある。さらに、トルクセ
ンサーとして磁気を利用するものが使用される場合があ
る。この場合、シャフトの材料は非磁性材でなければな
らず、センサーの種類によってはシャフトに接合後に高
温の熱処理を行わなければならない場合がある。しかも
構造部材としてはできるだけ軽量であることが望まし
く、従って、ねじり強度は当然できるだけ高いことが望
ましい。このような用途として従来材では高Mn非磁性
鋼等が考えられた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来材では高温
処理前の被削性と高温処理後の強度レベルにおいて満足
できるものはなかった。すなわち被削性は従来材と同レ
ベルで、最高900℃の熱処理後でも非磁性であること
が必要であり、ねじり強度としては、ねじり疲労限を1
×107 サイクルとしたときのせん断応力が250MP
a以上、かつ静的せん断降伏応力380MPa以上であ
ることが要望される。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題を解決
するための手段は、請求項1の発明では、重量%で、
C:0.3〜0.8%、Si:0.1〜1.0%、M
n:5.0〜10.0%、S:0.01〜0.4%、N
i:3.0〜10.0%、Cr:5.0〜15.0%、
Cu:0.2〜0.5%、V:0.6〜2.0%、B:
10〜100ppmを含有し、且つV/C:2〜5と
し、残部がFeおよび不可避不純物よりなることを特徴
とする被削性と強度に優れたオーステナイト系析出硬化
型非磁性鋼である。
【0005】請求項2の発明では、重量%で、C:0.
3〜0.8%、Si:0.1〜1.0%、Mn:5.0
〜10.0%、S:0.01〜0.4%、Ni:3.0
〜10.0%、Cr:5.0〜15.0%、Cu:0.
2〜0.5%、V:0.6〜2.0%、B:10〜10
0ppmを含有し、且つV/C:2〜5とし、これにP
b:0.05〜0.30%もしくはSe:0.01〜
0.4%の1種または2種、残部がFeおよび不可避不
純物よりなることを特徴とする被削性と強度に優れたオ
ーステナイト系析出硬化型非磁性鋼である。
【0006】発明者は種々の検討を行った結果、600
〜900℃の熱処理後トルクセンサーシャフト用材料と
して必要なねじり疲労限強度が250MPa以上、ねじ
り強度であるせん断比例限380MPa以上を確保する
ためには、炭化物であるVCの微細析出による析出硬化
を利用することが有効であり、その際にCr量を15%
以下に限定し、そのうえでV/C比が2〜5になるよう
に、C、Vを適量添加することによって最も効果的に析
出硬化することを見いだした。また、熱処理後の透磁率
を1.01以下にするためには、オーステナイト形成元
素であるC、Mn、Niを適量配合し安定なオーステナ
イト組織を確保し、固溶化処理後十分に軟化するように
Ni、Cr、Cuを適量配合することによって良好な被
削性を確保でき、さらにPb、Seを適量添加すること
によって被削性をさらに向上させることを見いだした。
【0007】
【作用】本発明鋼の成分限定の理由を以下に示す。
【0008】C:CはNi、Mnとともにオーステナイ
ト生成元素であり、安定なオーステナイト組織を保とと
もに、時効処理後にVと結合し微細な炭化物を形成し、
析出硬化によって、高い硬さを得るために添加される。
0.3%未満であるとフェライト生成をまねき透磁率を
上昇させたり、十分な時効硬さが得られないので、下限
を0.3%とし、0.8%を超えて添加すると固溶化状
態での硬さが高くなり、また、Vとの粗大な一次炭化物
を多量に形成し被削性が悪化するので、上限を0.8%
とする。望ましくは0.4〜0.6%とする。
【0009】Si:Siは製鋼時の脱酸材として添加さ
れる。0.1%未満であると十分な効果が得られないの
で下限を0.1%とし、1.0%を超えて添加すると有
害な金属間化合物を形成し被削性を悪化させるため上限
を1.0%とする。望ましくは0.1〜0.5%とす
る。
【0010】Mn:Mnは前述のように、オーステナイ
ト生成元素であるため、オーステナイト組織を安定に保
つために、またSとの間にMnSを形成し被削性を向上
させるために添加される。5%未満であるとフェライト
生成をまねき透磁率を上昇させるので下限を5%とし、
10%を超えて添加すると熱間加工性を劣化させるの
で、上限を10%とする。望ましくは6〜8%とする。
【0011】S:Sは快削元素であり、MnSを形成し
被削性を向上させるために添加される。0.01%未満
であると十分な効果が得られないので、下限を0.01
%とし、0.4%を超えて添加すると熱間加工性を劣化
させるので上限を0.4%とする。望ましくは0.08
〜0.20%とする。
【0012】Ni:Niは前述のように、C、Mnと共
にオーステナイト生成元素であり、また、固溶化処理の
状態での硬さを下げ被削性を向上させるために添加され
る。3%未満であると固溶化状態での硬さを高め被削性
が劣化するので下限を3%とし、多量に添加しても前述
の効果にあまり影響がなく、原料コストが上昇するので
上限を10%とする。望ましくは5〜8%とする。
【0013】Cr:Crは耐食性を向上させるために添
加される。5.0%未満であるとその効果が得られない
ので下限を5.0%にし、15%を超えて添加するとフ
ェライト生成をまねき透磁率を上昇させたり、Cとの間
に炭化物を形成して析出硬化の際にVと結びつくC量が
減少し、析出硬化した後に十分な硬さが得られないので
上限を15%とする。望ましくは6〜10%とする。
【0014】Cu:Cuは固溶化状態での硬さを下げ、
被削性を向上させるために添加される。0.2%未満で
はその効果は十分でないので、下限を0.2%とする。
0.5%を超えて添加すると熱間加工性が劣化するの
で、上限を0.5%とする。望ましくは0.2〜0.5
%とする。
【0015】V:Vは本発明鋼において非常に重要な元
素であり、600℃〜900℃における熱処理を施すこ
とによって、微細な炭化物を形成し析出硬化させるため
に添加される。0.6%未満であると析出が少なく十分
な時効硬さが得られないので、下限を0.6%とする。
2.0%を超えて添加するとフェライト生成をまねいた
り、Cとの間に一次炭化物を形成し被削性を劣化させる
ため、上限を2.0%とする。望ましくは1.4〜1.
8%とする。
【0016】B:Bは熱間加工性を向上させるために添
加する。添加量が10ppm未満であるとその効果が得
られないので、下限を10ppmとする。100ppm
を超え過剰に添加するとオーバーヒート温度が下がるの
で、上限を100ppmとする。望ましくは15〜30
ppmとする。
【0017】V/C比:V/C比は本発明において最も
重要な項目であり、図1に示すようにこの比が2より低
すぎると析出硬化による硬化が十分でなく強度不足とな
り、また5より高すぎると疲労強度が低下するので2〜
5にする。望ましくは3〜4とする。
【0018】Pb:Pbは、耐食性を劣化させずに被削
性を向上させる元素である。その効果は0.05%以上
で発揮されはじめ、0.30%より過剰に添加してもそ
の効果は飽和し、熱間加工性が劣化するので、下限を
0.05%とし、上限を0.3%とする。望ましくは
0.1〜0.2%とする。
【0019】Se:Seは快削元素であり、MnSeを
形成し被削性を向上させるために添加される。0.01
%未満であると十分な効果が得られないので、下限を
0.01%とし、0.4%を超えて添加すると熱間加工
性を劣化させるので、上限を0.4%とする。望ましく
は0.08〜0.2%とする。
【0020】
【実施例】表1に本発明鋼の供試鋼No. α−1〜α−1
2及び比較鋼の供試鋼No. β−1〜β−10の化学成分
及びV/C比を示す。
【0021】
【表1】
【0022】表2に、表1の全供試鋼の固溶化処理を施
してから行った被削性試験結果である被削性指数、固溶
化処理後600〜900℃において時効処理を施した後
のねじり強度(せん断比例限)、ねじり疲労限強度(1
×107 サイクルの疲労限のせん断応力)およびそのと
きの透磁率の測定結果を示す。
【0023】
【表2】
【0024】被削性試験はφ8のドリルを使用し一定の
回転数、荷重において10mm穿孔する時間を測定し、S
US304を100として比較して被削性指数とした。
β−10は、Cuを添加していない比較鋼であるが、添
加しているものに比べて固溶化処理後の硬さが硬く、被
削性が悪い。被削性については。他にも快削性元素であ
るSを添加することによって改善されていることが分か
り、さらに、Pb、Se、を含有したものの被削性は向
上していることが分かる。また、Crが低すぎるもの
や、C量の高いものは被削性が劣る。ねじり強度に関し
てはC、Vの添加量が少ないものやCr量の多いもの強
度が不足している。
【0025】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明ではこれま
で加工するのが困難であった高強度非磁性鋼に代わり、
適切な熱処理を施すことによりトルクセンサーシャフト
用材料として必要なねじり強度、ねじり疲労強度を確保
できるトルクセンサーシャフト用材料を提供できる。ま
た、プラスチック製マグネット成形用金型や、その他高
強度かつ非磁性という特性を要求される材料にも適用が
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】V/C比とねじり強度、ねじり疲労強度の関係
を表すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 狩野 英樹 神奈川県厚木市恩名1370番地 株式会社 ユニシアジェックス内 (72)発明者 小林 信章 神奈川県厚木市恩名1370番地 株式会社 ユニシアジェックス内 (56)参考文献 特開 昭54−119320(JP,A) 特開 昭55−85659(JP,A) 特開 昭55−110757(JP,A) 特開 平6−145914(JP,A) 特公 昭36−9155(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.3〜0.8%、S
    i:0.1〜1.0%、Mn:5.0〜10.0%、
    S:0.01〜0.4%、Ni:3.0〜10.0%、
    Cr:5.0〜15.0%、Cu:0.2〜0.5%、
    V:0.6〜2.0%、B:10〜100ppmを含有
    し、且つV/C:2〜5とし、残部がFeおよび不可避
    不純物よりなることを特徴とする被削性と強度に優れた
    オーステナイト系析出硬化型非磁性鋼。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.3〜0.8%、S
    i:0.1〜1.0%、Mn:5.0〜10.0%、
    S:0.01〜0.4%、Ni:3.0〜10.0%、
    Cr:5.0〜15.0%、Cu:0.2〜0.5%、
    V:0.6〜2.0%、B:10〜100ppmを含有
    し、且つV/C:2〜5とし、これにPb:0.05〜
    0.30%もしくはSe:0.01〜0.4%の1種ま
    たは2種、残部がFeおよび不可避不純物よりなること
    を特徴とする被削性と強度に優れたオーステナイト系析
    出硬化型非磁性鋼。
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