JP3214829B2 - 強度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents
強度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼Info
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Description
ンプシャフト、バルブステム、配管用シャフト、ボル
ト、ナット、ノズル、水門用シャフト、水門用板、ドラ
イブシャフト、ゴルフヘッドなどの使用に適し、高い強
度、靱性と耐海水性に優れた、特に使用時に衝撃力がか
かるような環境下で使用する場合で高靱性を要求される
場合に適する析出硬化型ステンレス鋼に関するものであ
る。
ト、バルブステム、配管用シャフト、ボルト、ナット、
ノズル、水門用シャフト、水門用板等はたびたび海水な
どの腐食環境で使用され、しかも構造用消耗部品であ
り、衝撃力にしばしば曝される環境下、さらに繰り返し
応力下で使用されるため、耐海水性、高強度、高靱性、
高疲労特性を満たすことにより部品の長寿命化が望まれ
ていた。このような性能の要求される部品には、析出硬
化熱処理により高い強度が得られるSUS630等の析出硬化
型ステンレス鋼が用いられてきた。
のの、衝撃値が45J/cm2程度と靱性が著しく劣り、固溶
化熱処理後の硬さが高く、冷間加工性、被削性が劣るの
に加え、船舶用シャフトのように海水と接触するような
厳しい腐食環境下で使用される場合には、長期間安心し
て使用できるだけの優れた耐食性は有しておらず、靱
性、加工性、耐食性の改善が必要であった。
有するステンレス鋼として、SUS316があるが、靱性に優
れるものの強度についてはSUS630の半分程度と低く、上
記用途に使用するには設計上軸径を太くするなどして対
処するしか方法がなかった。従って、強度、靱性、疲労
特性、耐食性、加工性の全ての特性が優れたステンレス
鋼の開発が強く望まれていた。
んに行われ、既に出願公開されている技術として、例え
ば特開平5-331600号公報、特開平6-17197 号公報、特開
平8-144023号公報に記載の発明がある。特開平5-331600
号公報に記載の発明鋼は、SUS316並の優れた耐海水性と
析出硬化熱処理後の引張強さが1000N/mm2以上で、衝撃
値が120〜150J/cm2の範囲の靱性を有すると共に固溶化
熱処理状態の硬さがHv280程度の優れた冷間加工性、機
械加工性の両立を目的としていた。その解決手段は、従
来鋼 SUS630の耐海水性等の耐食性が悪く、かつ、靱性
が低いという問題点を解消する為、高温でのδフェライ
ト/オーステナイトのバランス、固溶化熱処理後の残留
オーステナイト量の最適化を目指して、主として合金含
有量をC+N ≦0.045%、6.8 ≦Ni+27(C+N)-3.5(Nb+2Ti+
2Ti)≦8.0 と規制することにより、組織をマルテンサイ
トと残留オーステナイトの2相組織とし、残留オーステ
ナイト相の割合を10〜30%に規制し、更に(Nb+2V+2Ti)/
(C+N) ≧5.5に規制したものである。しかし、衝撃力が
かかる使用環境での使用には靱性が不十分であった。
前記特開平5-331600号公報に記載の発明鋼に対し高耐
食、高強度のニーズに応えたものであって、Nを添加す
ることを特徴としている。上記発明鋼は、SUS316以上の
優れた耐海水性と析出硬化熱処理後の引張強さが1300N/
mm2以上で、衝撃値が75〜90J/cm2の靱性を有すると共に
固溶化熱処理状態の硬さがHv331以下の優れた冷間加工
性、機械加工性を有するものである。しかし、本鋼は高
強度化に重点を置いたため、衝撃力がかかる使用環境で
の使用にはより靱性が不十分なものとなった。
前記特開平6-17197号公報に記載の発明鋼に対し高強
度、高靱性及び固溶化熱処理状態での良好な冷間加工
性、被削性を満たすというニーズに応えたものであっ
て、特開平6-17197号公報に記載の発明にくらべ、Nを
多量に添加する必要がなく、組織をマルテンサイトと残
留オーステナイトの2相組織とし、残留オーステナイト
相の割合を10%未満に規制したものである。上記発明鋼
は、SUS316並の優れた耐海水性と析出硬化熱処理後の引
張強さが1200N/mm2以上で、衝撃値で148〜182J/cm2の靱
性を有すると共に固溶化熱処理状態の硬さがHv303程度
の優れた冷間加工性、機械加工性を有するものである。
しかし、本鋼も先の2鋼種に比べ靱性が優れるものの、
まだまだ靱性が不十分であった。また、これら3つの公
報では疲労特性について全く触れられていない。
従来鋼及び前記公報の発明における問題点を改善し、SU
S316並の耐海水性を確保しつつ、靱性が衝撃値で230J/c
m2以上である高靱性と900N/mm2以上の高強度を兼ね備え
るとともに450N/mm2以上の疲労強度、0.5以上の疲労限
度比と優れた疲労特性を有する強度、靱性、疲労特性、
耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼を提供するこ
とを目的とする。
にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.60%以下、
S:0.005%以下、Cu:0.50〜2.50%、Ni:6.50〜8.00%、Cr:1
5.00〜17.00%、Mo:0.50〜2.00%、N:0.030%以下、C+N:0.
040%以下を含有し、残部がFeおよび不可避な不純物から
なり、かつ析出硬化熱処理後にマルテンサイト相と逆変
態オーステナイト相の2相組織とし、かつ逆変態オース
テナイト相の割合が35%以下であることを特徴とする強
度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステ
ンレス鋼にある。本発明において注目すべきことは、上
記特定の組成の析出硬化型ステンレス鋼を用い、かつ、
析出硬化熱処理後の組織がマルテンサイト相と逆変態オ
ーステナイト相の2相組織であり、さらに逆変態オース
テナイト相の占める割合を特定したことにある。最も重
要な点は、析出硬化熱処理により生成する逆変態オース
テナイトが靱性向上、さらにはこの逆変態オーステナイ
ト相は疲労強度、疲労限度比の向上に非常に有効である
ことを見いだしたことにある。
化型ステンレス鋼に現れるオーステナイト相には2種類
ある。一方は固溶化熱処理時に導入される残留オーステ
ナイトであり、他方は析出硬化熱処理時に生成する逆変
態オーステナイトである。発明者等はこの2つは結晶構
造こそ同一なものであるが、その組成や存在状態が異な
ることにより靱性および疲労特性が大きく異なることを
見いだした。一例を示すと、表1の発明鋼4の固溶化熱
処理時に導入される残留オーステナイト相の組成は、概
略 Fe-16.0Cr-7.3Ni-1.2Moであり、発明鋼4の固溶化熱
処理後の580 ℃での析出硬化熱処理時に生成する逆変態
オーステナイト相の組成は概略Fe-13.5Cr-14.0Ni-0.5Mo
となる。このような組成上の差が逆変態オーステナイト
の利用が高靱性化かつ疲労特性の向上につながると思わ
れる。
以下としたが、逆変態オーステナイト相は靱性および疲
労特性の改善に非常に有効な組織であるが、マルテンサ
イト相と比較して強度が低く、その割合が多すぎると強
度が著しく低下してしまうため、35%以下にしておく必
要がある。逆変態オーステナイト相の割合の下限は、好
ましくは5%以上が望ましい。5%以下では安定して高い靱
性や良好な疲労特性が得られない場合があるためであ
る。
成分組成限定理由について、以下に説明する。 C:0.030%以下、N:0.030%以下、C+N:0.040%以下 CおよびNは強力なオーステナイト形成元素であり、高温
でのδフェライト/オーステナイトのバランスを改善す
るとともに、固溶強化に効果的な元素である。しかし、
多量に含有させると固溶化熱処理後の残留オーステナイ
ト量が増加し、十分な析出硬化能を得ることができず、
かつ析出硬化熱処理後に炭化物を析出し、耐食性や靱性
に悪影響を及ぼすため、上限をそれぞれ0.030%とした。
好ましくはC 、Nとも0.025%とするのが良い。なお、上
記C 、Nの限定理由と同一の理由により、C 、Nの合計含
有率を限定する必要があり、上限を0.040%とした。好ま
しくは0.035%とするのが良い。
は強力なフェライト形成元素でもあり、多量に含有させ
ると高温でのδフェライト/オーステナイトのバランス
を損ない熱間加工性が低下するとともに、固溶化熱処理
後の残留オーステナイト量が増加して析出硬化能が低下
するので上限を0.50%とした。好ましくは上限を0.40%、
より好ましくは0.30%とするのが良い。
ともに、オーステナイト形成元素であって、高温でのδ
フェライト/オーステナイトのバランスを改善する元素
である。しかし、多量に含有させると固溶化熱処理後の
残留オーステナイト量が増加し、十分な析出硬化能が得
られないことから、上限を0.60%とした。好ましくは上
限を0.50%、より好ましくは0.40%とするのが良い。
と耐食性、熱間加工性、冷間加工性を損なう元素であ
り、極力低減する必要があるため、上限を0.005%とし
た。
めに不可欠な元素であるため、0.50%以上の含有が必要
である。より優れた析出硬化能と耐食性を得るには、下
限を0.80%、より好ましくは1.20%とするのが良い。しか
し、多量に含有させると、固溶化熱処理後の残留オース
テナイト量が増加して析出硬化能がかえって低下すると
ともに、熱間加工性に悪影響を及ぼすため、上限を2.50
%とした。好ましくは上限を2.30%、より好ましくは2.10
%とするのが良い。
基本元素である。また、Niは強力なオーステナイト形成
元素で、高温でのδフェライト/オーステナイトのバラ
ンスを改善し、熱間加工性を向上させるとともに、固溶
化熱処理後の残留オーステナイト量を制御するため、6.
50%以上の含有が必要である。好ましくは下限を6.70%、
より好ましくは下限を6.80%とするのが良い。しかし、
多量に含有させると固溶化熱処理後の残留オーステナイ
ト量の割合が増加して、析出硬化能が低下するため上限
を8.00%とした。好ましくは上限を7.80%、より好ましく
は7.60%とするのが良い。
この効果を得るには15.00%以上の含有が必要である。し
かし、Crは強力なフェライト形成元素であるため、多量
に含有させると、高温でのδフェライト/オーステナイ
トのバランスを損ない、熱間加工性が劣化するととも
に、固溶化熱処理後のδフェライト量もしくは残留オー
ステナイト量が増加し、析出硬化能が低下するため、上
限を17.00%とした。好ましくは上限を16.70%、より好ま
しくは16.40%とするのがよい。
素であるとともに、析出硬化熱処理後の靱性向上に効果
的な元素でもあり、0.50%以上の含有が必要である。ま
た、優れた耐海水性を得るには下限を0.70%、より好ま
しくは0.90%とするのが良い。しかし、Moは強力なフェ
ライト形成元素でもあり、多量に含有させると高温での
δフェライト/オーステナイトのバランスを損ない熱間
加工性が低下するとともに、固溶化熱処理後の残留オー
ステナイト量が増加して析出硬化能が低下するので、上
限を2.00%とした。好ましくは1.80%、より好ましくは1.
60%とするのがよい。
図1は靱性と強度に及ぼす逆変態オーステナイト相と残
留オーステナイト相の効果の差を示すものである。縦軸
は靱性の指標である衝撃値、横軸は引張強さである。本
発明内に入る組成の鋼を、固溶化熱処理後の残留オース
テナイトが存在する状態で480℃で析出硬化熱処理して
残留オーステナイトがそのままの状態を保ったものの衝
撃値と引張強さの関係を線Aで示す。本発明内に入る組
成の鋼を、固溶化熱処理後の残留オーステナイト量が存
在する状態で540℃で析出硬化熱処理して残留オーステ
ナイトを逆変態オーステナイト化させたものの衝撃値と
引張強さの関係を線Bで示す。線A、B共に、従来から
言われるとおり引張強さが向上すると靱性が減少し、靱
性が向上すると引張強さが減少するという背反関係を示
している。しかし、この図より、析出硬化熱処理温度を
変えることを通じて、析出硬化熱処理後の組織を残留オ
ーステナイトから逆変態オーステナイトに変えることに
より、衝撃値と引張強さ、すなわち、靱性と強度のバラ
ンスが高靱性・高強度側へシフトしていることがわか
る。このことは、従来技術では成しえなかった、強度と
靱性の背反特性の両立を始めて成し得たことを示してい
る。
変態オーステナイト相と残留オーステナイト相の効果の
差を示すものである。縦軸は疲労強度、横軸は引張強さ
である。本発明内に入る組成の鋼を固溶化熱処理後の残
留オーステナイトが存在する状態で480℃で析出硬化熱
処理して残留オーステナイトがそのままの状態を保った
ものの引張強さと疲労強度の関係を線Aで示す。本発明
内に入る組成の鋼を、固溶化熱処理後の残留オーステナ
イトが存在する状態で540℃で析出硬化熱処理して残留
オーステナイトを逆変態オーステナイト化させたものの
引張強さと疲労強度の関係を線Bで示す。線A、Bとも
に、従来から言われるとおり引張強さが向上すると疲労
強度も向上し、両者が比例関係にあることを示してい
る。しかし、この図より析出硬化熱処理温度を変えるこ
とを通じて、析出硬化熱処理後の組織を残留オーステナ
イトから逆変態オーステナイトに変えることにより、引
張強さに対する疲労強度の比率、すなわち疲労限度比
(図2における線A、Bの傾き)が向上し、疲労強度と
引張強さ、すなわち、疲労強度と強度のバランスが高疲
労強度・高強度側へシフトしていることがわかる。
残留オーステナイト相と逆変態オーステナイトの組成の
差と考えられ、特にNi量の濃化が靱性および疲労特性
の向上に寄与していると思われる。
ステンレス鋼は、上記組成に加え、更に、Nb:0.35%以
下、Ti:0.35%以下、V:0.35%以下を1種又は2種以上を
含有していることが望ましい。従来技術においては固溶
化熱処理後の硬さ、耐食性および熱間加工性のみを考慮
して添加量が決定されていたが、本発明者らが研究を重
ねた結果、Nb、Ti、Vなどの炭窒化物形成元素の多量の
添加は靱性に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。こ
の知見により本発明では、従来の耐蝕性の向上の効果を
持たせつつ、靱性を劣化させない量の添加を行った。
処理後の耐食性を改善する元素である。しかし、多量に
添加すると析出硬化熱処理後の靱性劣化につながる。本
願発明ではC 、N量を低く抑えているため、その効果は
それほど大きくないことから、それぞれ上限を0.35%と
した。好ましくは上限を0.25%、より好ましくは0.15%と
するのが良い。
ステンレス鋼は、上記組成に加え、更に、B:0.0005〜0.
0100%、Ca:0.0005〜0.0100%、Mg:0.0005〜0.0100%、RE
M:0.0005〜0.0100%のうち1種又は2種以上を含有して
いることが望ましい。これにより熱間加工性を改善する
ことができる。B 、Ca、Mg、REMはいずれも熱間加工性
を改善する元素であり、その効果を得るには、B 、Ca、
Mg、REMともに0.0005%以上の含有が必要である。しか
し、多量に含有させると、添加量に対する改善効果の程
度が小さくなり、コストも増加するので、上限をそれぞ
れ0.0100%とした。好ましくは4元素ともに上限を0.005
0%、より好ましくは0.0030%とするのがよい。
Nb、Ti、VとB 、Ca、Mg、REMを同時に添加したものであ
る。
いずれか一項の発明において析出硬化熱処理後に900N/m
m2以上の引張強さと230J/cm2以上の衝撃値を有するとも
に450N/mm2以上の疲労強度、0.5以上の疲労限度比を有
することを特徴とする強度、靱性、疲労特性、耐海水性
に優れた析出硬化型ステンレス鋼にある。
下、Si:0.50%以下、Mn:0.60%以下、S:0.005%以下、Cu:
0.50〜2.50%、Ni:6.50〜8.00%、Cr:15.00〜17.00%、Mo:
0.50〜2.00%、N:0.030%以下、C+N:0.040%以下を含有
し、残部がFeおよび不可避な不純物からなる組成の強
度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステ
ンレス鋼を用い、該ステンレス鋼を熱間加工後、固溶化
熱処理を施した後、析出硬化熱処理の温度を500〜580℃
にすることにより析出硬化熱処理後の組織がマルテンサ
イト相と逆変態オーステナイト相の2相組織であり、か
つ逆変態オーステナイト相の割合が35%以下とすること
を特徴とする強度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた
析出硬化型ステンレス鋼の製造方法にある。この方法に
より固溶化熱処理状態でマルテンサイトと残留オーステ
ナイトの2相組織を上記の析出硬化熱処理温度で熱処理
することによりマルテンサイトと逆変態オーステナイト
の2相組織に変え、かつ、オーステナイト量を増加させ
ることにより強度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた
析出硬化型ステンレス鋼を容易に製造することができ
る。
り35%以下の逆変態オーステナイト相を生成せしめるこ
とにより、900N/mm2以上の引張強さと230J/cm2以上の衝
撃値を合わせもつとともに450N/mm2以上の疲労強度、0.
5以上の疲労限度比を有する強度、靭性、疲労特性、耐
海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼を提供できるに
至った。
し、実施例でもって明らかにする。表1に実施例として
用いた供試材の化学成分を示す。
11〜16鋼は一部の成分が本発明の範囲外である比較鋼で
あり、17、18鋼は従来鋼であるSUS630、SUS316である。
を、1150〜1200℃に加熱して直径30mmに鍛伸することに
より準備した。その後、固溶化熱処理については1040℃
×30分の条件で、析出硬化熱処理については表2および
表3に示す温度で4時間空冷の条件で熱処理を行い、後
述する方法により評価した。
部径8mm)を用いて測定したものである。また、衝撃値
はシャルピー衝撃試験機にてJIS3号Uノッチ試験片を用
いて測定したものである。さらに、疲労強度は小野式回
転曲げ疲労試験機にて平滑試験片(平行部径8mm)を用
いて測定したものである。ここで疲労強度は繰り返し数
107回を基準に決定した。試験は全て室温にて実施し
た。耐食性については、JISG0578に基づいて評価した。
すなわち、35℃の6%FeCl3+0.05NHCl水溶液中に24時間
浸せきした場合の腐食減量を示したものである。
後の試料と析出硬化熱処理後の試料の両者について行っ
た。各試料から10×10×5mmの試験片を切り出し、X線
回折を施した後、マルテンサイト相とオーステナイト相
の回折ピークの強度比からオーステナイト量を算出し
た。
および表3より知られるように、試料No30〜39は化学
組成は本発明の範囲に該当するものの、固溶化熱処理後
と析出硬化熱処理後でオーステナイト量に変化がみられ
ず、逆変態オーステナイトが生成していない。そのた
め、強度はあるものの靱性がいずれも230J/cm2以下と低
い。析出硬化熱処理温度が480℃で500℃以下であるもの
は、合金組成が本発明の範囲内のものであっても、230J
/cm2以下と低い値となった。さらに、疲労特性をみる
と、疲労限度比が0.45付近であり、0.5以下と低い値に
なっている。
度が500〜580℃であるため逆変態オーステナイトが生じ
ているものの、合金組成がそれぞれ本発明から外れてい
るため強度、靱性、疲労特性、耐蝕性のすべてを満足す
ることが出来ない。
化熱処理後の逆変態オーステナイト量が著しく多くなる
ため、強度および疲労強度が劣る。試料No53〜55はM
n、Ni含有率が高いため、析出硬化熱処理後の逆変態オ
ーステナイト量が35% を越えるため析出硬化熱処理後の
強度および疲労強度が低くなってしまっている。試料N
o56はSiとMo含有率が高く、析出硬化熱処理後の逆変態
オーステナイト量が35%を越えるため、強度および疲労
強度が劣る結果となっている。試料No57はCr含有率が
低いため、耐食性に劣る。試料No58はNb含有率が高い
ため、靱性に劣る。試料No59はCおよびC+N含有率が高
く、析出硬化熱処理後の逆変態オーステナイト量が非常
に高くなり、強度面で大きく劣っている。
度面は優れているが、靱性および耐食性が大きく劣って
いる。SUS316である試料No72は強度が著しく劣るもの
である。それに対し、本発明に該当する試料No1〜18
においては、逆変態オーステナイトの生成が認められ、
析出硬化熱処理後に900N/mm2以上の引張強さを有し、か
つ230J/cm2以上の優れた衝撃値を示している。そして耐
食性においてもSUS630に比較して大幅に改善され、SUS3
16と同等レベルにあると判断される。さらに、450N/mm2
以上の疲労強度、0.5以上の疲労限度比を有し、優れた
疲労特性を示している。
用することにより、従来の析出硬化型ステンレス鋼では
不可能であった900N/mm2以上の引張強さと230J/cm2以上
の衝撃値を合わせもたせるとともに450N/mm2以上の疲労
強度、0.5以上の疲労限度比を有することを可能とした
ものであり、さらにSUS316並の耐食性を兼ね備えている
ことから、厳しい応力下、衝撃的荷重そして厳しい腐食
環境下さらに繰り返し応力下で使用される部品に長寿命
を与えるものである。
変態オーステナイト相と残留オーステナイト相の影響を
示す模式図
す逆変態オーステナイト相と残留オーステナイト相の影
響を示す模式図
Claims (6)
- 【請求項1】重量比にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以
下、Mn:0.60%以下、S:0.005%以下、Cu:0.50〜2.50%、N
i:6.50〜8.00%、Cr:15.00〜17.00%、Mo:0.50〜2.00%、
N:0.030%以下、C+N:0.040%以下を含有し、残部がFeおよ
び不可避な不純物からなり、かつ析出硬化熱処理後にマ
ルテンサイト相と逆変態オーステナイト相の2相組織と
し、かつ逆変態オーステナイト相の割合が35%以下であ
ることを特徴とする強度、靱性、疲労特性、耐海水性に
優れた析出硬化型ステンレス鋼 - 【請求項2】請求項1において、上記析出硬化型ステン
レス鋼は、上記組成に加え、更に、Nb:0.35%以下、Ti:
0.35%以下、V:0.35%以下のうち1種又は2種以上含有し
ていることを特徴とする強度、靱性、疲労特性、耐海水
性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - 【請求項3】請求項1において、上記析出硬化型ステン
レス鋼は、上記組成に加え、更に、B:0.0005〜0.0100
%、Ca:0.0005〜0.0100%、Mg:0.0005〜0.0100%、REM:0.0
005〜0.0100%のうち1種又は2種以上含有していること
を特徴とする強度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた
析出硬化型ステンレス鋼 - 【請求項4】請求項1において、上記析出硬化型ステン
レス鋼は、上記組成に加え、更に、Nb:0.35%以下、Ti:
0.35%以下、V:0.35%以下のうち1種又は2種以上と、B:
0.0005〜0.0100%、Ca:0.0005〜0.0100%、Mg:0.0005〜0.
0100%、REM:0.0005〜0.0100%のうち1種又は2種以上を
含有していることを特徴とする強度、靱性、疲労特性、
耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - 【請求項5】析出硬化熱処理後に900N/mm2以上の引張強
さと230J/cm2以上の衝撃値を有するとともに450N/mm2以
上の疲労強度、0.5以上の疲労限度比を有することを特
徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強度、靱
性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス
鋼 - 【請求項6】重量比にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以
下、Mn:0.60%以下、S:0.005%以下、Cu:0.50〜2.50%、N
i:6.50〜8.00%、Cr:15.00〜17.00%、Mo:0.50〜2.00%、
N:0.030%以下、C+N:0.040%以下を含有し、残部がFeおよ
び不可避な不純物からなる組成の強度、靱性、疲労特
性、耐海水性に優れた析出硬化型ステンレス鋼を用い、
該ステンレス鋼を熱間加工後、固溶化熱処理を施した
後、析出硬化熱処理の温度を500〜580℃にすることによ
り析出硬化熱処理後の組織がマルテンサイト相と逆変態
オーステナイト相の2相組織であり、かつ逆変態オース
テナイト相の割合が35%以下とすることを特徴とする強
度、靱性、疲労特性、耐海水性に優れた析出硬化型ステ
ンレス鋼の製造方法
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