JP3516359B2 - 強度、靱性、耐食性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents

強度、靱性、耐食性に優れた析出硬化型ステンレス鋼

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JP3516359B2
JP3516359B2 JP30825994A JP30825994A JP3516359B2 JP 3516359 B2 JP3516359 B2 JP 3516359B2 JP 30825994 A JP30825994 A JP 30825994A JP 30825994 A JP30825994 A JP 30825994A JP 3516359 B2 JP3516359 B2 JP 3516359B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は船舶用シャフト、ポンプ
シャフト、バルブステム、配管用シャフト、ボルト、ナ
ット、ノズル(紡糸用)、水門用シャフト、水門用板等
の使用に適し、優れた耐食性と高い強度、靱性を有し、
かつ固溶化熱処理後の冷間加工性、機械加工性にも優れ
た析出硬化型ステンレス鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】船舶用シャフトやポンプシャフト、ボル
ト、バルブステム、配管用シャフト、ボルト、ナット、
ノズル(紡糸用)、水門用シャフト、水門用板等、高い
強度、靱性が要求される部品には、時効処理により高い
強度が得られるSUS630等の析出硬化型ステンレス鋼が用
いられてきた。
【0003】しかし、SUS630では優れた強度を有するも
のの、固溶化熱処理後の硬さが高く、冷間加工性、被削
性が劣るのに加え、船舶用シャフトのように海水と接触
するような厳しい腐食環境化で使用される場合には、長
期間安心して使用できるだけの優れた耐食性は有してお
らず、加工性、耐食性の改善が必要であった。
【0004】また、優れた耐海水性、耐腐食疲労強度を
有するステンレス鋼として、SUS316があるが、強度につ
いてはSUS630の半分程度と低く、上記用途に使用するに
は設計上軸径を太くするなどして対処するしか方法がな
かった。従って、強度、耐食性、加工性の全ての特性が
優れたステンレス鋼の開発が強く望まれていた。
【0005】最近、前記課題を解決するための研究が盛
んに行われ、既に出願公開されている技術として、例え
ば特開平5-331600号公報、特開平6-17197 号公報に記載
の発明がある。この発明鋼は、組織をマルテンサイトと
オーステナイトの2相組織とし、オーステナイト相の比
率を10〜30%に規制したもので、C 、N 、Nb、V 、Ti量
の関係を、前者の発明ではC+N ≦0.045%、(Nb+2V+2Ti)/
(C+N) ≧5.5 、後者の発明では 2.0≦(Nb+2Ti)/(C+N)<
5.5とすることにより、SUS316に比べ強度を大幅に改善
しつつ、SUS316並の耐海水性を確保し、加工性もSUS630
に比べ改善したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】前記公報に記載の発
明によって、SUS630に比べ加工性を改善するとともに、
SUS316並の耐海水性を確保しつつ、SUS316に比べ強度を
大幅に向上した析出硬化型ステンレス鋼の提供が可能と
なった。しかし、その後のさらなる調査、研究とユーザ
ーからの厳しい要求により、この発明には以下に記載す
る問題点があることが明らかとなった。
【0007】すなわち、特開平5-331600号公報記載の発
明は、前記した改善により析出硬化後に1000N/mm2 以上
の引張強さを確保することができるようになったが、SU
S630の1300N/mm2 程度に比べると依然として低い。
【0008】それに対し、特開平6-17197 号公報記載の
発明では、N を0.05% 以上含有させ、N の固溶強化によ
って強度向上を図っているため、SUS630とほぼ同等の引
張強さを得ることができたが、固溶化熱処理状態におけ
る引張強さが、1000N/mm2 以上、硬さがHv 310以上とな
り、冷間加工性、被削性がSUS630に比べて十分に改善さ
れないことがわかった。
【0009】本発明では、前記公報の発明における問題
点を改善し、SUS316並の耐海水性を確保しつつ、SUS630
並の強度が得られ、さらに優れた冷間加工性、被削性を
有し、靱性にも優れた析出硬化型ステンレス鋼を提供す
ることを目的とする。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明は従来鋼 SUS63
0 の耐海水性等の耐食性が低いという問題を解消するた
め、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果なし得たもので
ある。一般にNi,Cr,Mo等の合金元素を含有させると耐食
性は改善されるが、析出硬化能が低下し高強度が得られ
なかったり、また高温でのδ/γバランスを損ない熱間
加工性を低下させ、さらに固溶化熱処理状態での冷間加
工性をも低下させる。特に、Ni含有量は分塊圧延時や固
溶化熱処理時のδ/γバランス、固溶化熱処理後の残留
オーステナイト量および析出硬化能に強く影響を及ぼ
す。従って、優れた耐食性と高強度を両立するために
は、Ni、Cr、Moの添加量を単純に増加しただけでは解決
できない。
【0011】前記した特開平5-331600号公報の発明で
は、優れた耐食性と高強度を両立させるために、Ni、C
r、Moの含有率だけでなく、ミクロ組織まで検討し、マ
ルテンサイトとオーステナイトの2相組織とし、オース
テナイト相の比率を限定することによって、この問題に
対応したものである。
【0012】しかしながら、この発明完成時においては
靱性に関する検討が十分でなく、靱性低下の程度を抑え
るためにオーステナイト相の比率の下限値を10% とした
ため、SUS630に比べて若干劣る強度にしか改善できなか
った。本発明ではさらに検討を加えた結果、下記に示す
関係式(各成分の単位は全て重量%)を満足するように成
分を規制してオーステナイト相の比率を10% 未満とする
ことにより、細粒化したマルテンサイト組織が得られ、
オーステナイト相の比率を10% 未満としても靱性が大き
く低下しないことを見出したものである。具体的には 4
60〜500 ℃の析出硬化処理後においてHv370 以上の高い
硬さを有しつつ、140J/cm2以上の優れた衝撃値を得るこ
とができる。 0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6Cr+1.1Si+0.9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N
-7.7C ≦15.6
【0013】オーステナイト相の比率を10% 未満とする
ことによって、オーステナイト相の比率を10〜30% とし
た場合に比べ高強度を得ることができ、SUS630に近い強
度を得ることができるので、特開平6-17197 号記載の発
明のようにN を多量に添加する必要がなく、固溶化熱処
理時の強度を低く抑えることが可能となり、加工性につ
いても優れた特性が得られる。
【0014】なお、強度、耐食性、冷間加工性等の性能
改善のためにC 、N 、Nb、V 、Ti量を最適化し、(Nb+2V
+2Ti)/(C+N) ≧5.5 とする点については、本願発明も特
開平5-331600号の発明と同様である。ただし、本願発明
では、熱間加工性の劣化を防止するために、前記式の上
限値も合わせて設定することとした。
【0015】以上説明した知見により得られた本発明の
強度、靱性、耐食性に優れた析出硬化型ステンレス鋼の
第1発明は、重量比にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以
下、Mn:0.60%以下、S:0.010%以下、Cu:0.50 〜2.50% 、
Ni:6.00 〜8.00% 、Cr:15.0〜17.0% 、Mo:0.50 〜2.00%
、N:0.030%以下、C+N:0.045%以下と、Nb:0.02 〜0.5
0、Ti:0.02 〜0.50% 、V:0.02〜0.50% の1種又は2種
以上を含有し、かつ0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6Cr+1.1Si+0.
9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N-7.7C ≦15.6と5.50≦(Nb+2V+2Ti)/
(C+N) ≦20の2式を満足し、析出硬化処理後のオーステ
ナイト相を10% 未満としたことを特徴とし、第2発明は
第1発明の鋼に、B:0.0005〜0.0100% 、Ca:0.0005 〜0.
0100% 、Mg:0.0005 〜0.0100% 、REM:0.0005〜0.0100%
のうち1種又は2種以上を含有させて熱間加工性をさら
に向上させたものである。次に本発明鋼の化学成分及び
組織の限定理由について以下に説明する。
【0016】C:0.030%以下、N:0.030%以下、C+N:0.045%
以下 C 及びN は強力なγ相形成元素で、高温でのδ/γバラ
ンスを改善するとともに、固溶強化に効果のある元素で
ある。従って、多量に含有させると固溶化熱処理後の残
留オーステナイト量が増加し、十分な析出硬化能を得る
ことができず、かつ固溶化熱処理後のマルテンサイト組
織の硬さが増加して、冷間加工性が劣化するため、その
上限をそれぞれ0.030 %とした。好ましくはC 、N とも
に上限を0.025%、より好ましくは0.020%とするのが良
い。なお、上記C 、N の限定理由と同一の理由により、
C 、N の合計含有率を規制する必要があり、上限を0.04
5%とした。好ましくは、上限を0.040%、より好ましくは
0.035%とするのが良い。
【0017】Si:0.50%以下 Siは脱酸剤として効果を有する元素である。しかしSiは
強力なα相形成元素でもあり、多量に含有させると高温
でのδ/γバランスを損ない熱間加工性が低下し、かつ
固溶化熱処理後のマルテンサイト組織の硬さを高め、冷
間加工性が劣化するので、上限を0.50% とした。好まし
くは上限を0.40% 、より好ましくは0.30% とするのが良
い。
【0018】Mn:0.60%以下 MnはSiと同様に脱酸剤として効果を有する元素であると
ともに、γ相形成元素であって、高温のδ/γバランス
を改善する元素である。しかし多量に含有させると固溶
化熱処理後の残留オーステナイト量が増加し、十分な析
出硬化能が得られなくなるとともに、固溶化熱処理後の
マルテンサイト組織の硬さが上昇して冷間加工性が劣化
するので、その上限を0.60%とした。好ましくは上限を
0.50% 、より好ましくは0.40% とするのが良い。
【0019】S:0.010%以下 S は被削性を改善する元素であるが、多量に含有させる
と耐食性、熱間加工性、冷間加工性を損なう元素であ
り、極力低減する必要があるため、上限を0.010%とし
た。好ましくは上限を0.007%、より好ましくは0.005%と
するのが良い。
【0020】Cu:0.50 〜2.50% Cuは本願発明にとって析出硬化能と耐食性を改善するた
めに不可欠な元素であるため、0.50% 以上の含有が必要
である。より優れた析出硬化能と耐食性を得るには、下
限を0.70% 、より好ましくは1.50% とするのが良い。し
かし多量に含有させると、高温でのδ/γバランスを損
ない、固溶化熱処理後の残留オーステナイト量が増加し
て析出硬化能がかえって低下するとともに、Cuによる脆
化により熱間加工性が劣化するので、上限を2.50% とし
た。好ましくは上限を2.30% とするのが良い。
【0021】Ni:6.00 〜8.00% NiはCr、Moとともに耐食性を改善するステンレス鋼の基
本元素である。また、Niは強力なγ相形成元素で、高温
でのδ/γバランスを改善し、熱間加工性を向上させる
とともに、析出硬化後の靱性向上に効果のある元素であ
り、6.00% 以上の含有が必要である。そして、より優れ
た耐食性を得るためには、下限を6.20%、より好ましく
は6.50% とするのが良い。しかし、多量に含有させると
固溶化熱処理後のオーステナイト相の比率が増加して、
析出硬化能が低下するため上限を8.00% とした。好まし
くは上限を7.70%、より好ましくは7.50% とするのが良
い。
【0022】Cr:15.0 〜17.0% Crは本発明鋼の耐食性を確保する基本的な元素であり、
この効果を得るには15.0%以上の含有が必要である。し
かしCrは強力なδ相形成元素であるため、多量に含有さ
せると、高温でのδ/γバランスを損ない、熱間加工性
が劣化するとともに、固溶化熱処理後のオーステナイト
量が増加し、析出硬化能が低下するため、上限を17.0%
とした。好ましくは上限を16.7% 、より好ましくは16.5
% とするのが良い。
【0023】Mo:0.50 〜2.00% Moは耐食性、特に耐海水性を改善するために不可欠な元
素であり、0.50% 以上の含有が必要である。また、より
優れた耐海水性を得るには下限を0.70% 、より好ましく
は1.00% とするのが良い。しかしMoは強力なδ相形成元
素でもあり、多量に含有させると高温でのδ/γバラン
スを損ない熱間加工性が低下するとともに、オーステナ
イト相の比率が増加して析出硬化能が低下するので、上
限を2.00% とした。好ましくは上限を1.80% 、より好ま
しくは1.50% とするのが良い。
【0024】Nb:0.02 〜0.50% 、Ti:0.02 〜0.50% 、V:
0.02〜0.50% の1種又は2種以上 Nb、Ti、V はC 、N を固定して固溶化熱処理後の硬さ上
昇を抑え、冷間加工性を改善するために効果のある元素
であり、それぞれ最低でも0.02% 、より好ましくは0.05
% 以上の含有が必要である。しかし、多量に含有させる
と高温でのδ/γバランスを損ない、熱間加工性が低下
するので、その上限をそれぞれ0.50%とした。好ましく
はNb、Ti、V ともに上限を0.45% 、より好ましくは0.40
% とするのが良い。
【0025】B:0.0005〜0.0100% 、Ca:0.0005 〜0.0100
% 、Mg:0.0005 〜0.0100% 、REM:0.0005〜0.0100% の1
種又は2種以上 B 、Ca、Mg、REM はいずれも熱間加工性を改善する元素
であり、その効果を得るためには、B 、Ca、Mg、REM と
もに0.0005% 以上の含有が必要である。しかし、多量に
含有させると、添加量に対する改善効果の程度が小さく
なり、コストも増加するので、上限をそれぞれ0.0100%
とした。好ましくは4元素ともに上限を0.0050% 、より
好ましくは0.0030% とするのが良い。
【0026】 0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6Cr+1.1Si+0.9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N-7.7C ≦15.6 式は、析出硬化後の残留オーステナイト相の比率を10
% 未満とし、かつ微細なマルテンサイト組織を得て、優
れた靱性を確保するための必要条件である。式の値が
15.6を超えると、残留オーステナイト量10% 未満を確保
することが困難になるとともに、微細なマルテンサイト
組織が得られず、靱性が低下するので、上限を15.6とし
た。
【0027】5.5≦(Nb+2V+2Ti)/(C+N) ≦20 Nb、Ti、V は前記したように鋼中のC 、N を固定し、固
溶化熱処理後の硬さを抑え、耐食性を改善する効果があ
る。従って、十分な効果を得るためには、C 、N を完全
に固定する必要があり、式の値を5.5 以上に規制し
た。しかし、式の値が高くなりすぎると、Nb、Ti、V
の上限値の限定理由として記載したように、高温でのδ
/γのバランスを損ない、熱間加工性が低下するため、
上限を20とした。
【0028】析出硬化処理後のオーステナイト相の比率
が10% 未満 オーステナイトはマルテンサイトに比較して強度が低
く、SUS630に近い高強度を得るためには、オーステナイ
ト相の比率を10% 未満とすることが必要である。また、
析出硬化処理後においてオーステナイト相の比率を10%
未満とするためには、固溶化熱処理後におけるオーステ
ナイト相の比率を10% 未満としておくことが望ましいこ
とは勿論である。同様に、固溶化熱処理後に冷間加工を
行う場合でも冷間加工後のオーステナイト相の比率が10
% 未満であることが望ましい。
【0029】
【作用】本発明では、0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6Cr+1.1Si+
0.9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N-7.7C ≦15.6を満足する成分範囲
に規制することにより、析出硬化後に微細なマルテンサ
イト組織を得ているので、オーステナイト相の比率を10
% 未満としても靱性が劣化することがなく、強度の向上
を図ることができる。その結果N を多量添加しなくても
優れた強度が確保できるので、固溶化熱処理後の硬さを
低く抑えることができる。
【0030】
【実施例】次に本発明の特徴を従来鋼、比較鋼と比べて
実施例により明らかにする。表1に実施例として用いた
供試材の化学成分を示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1において1〜10鋼は本発明鋼であり、
1〜5鋼は第1発明、6〜10鋼は第2発明に相当する鋼
である。11〜17鋼は一部の条件が本発明の範囲外である
比較鋼であり、18、19鋼は、従来鋼であるSUS630、SUS3
16である。なお、比較鋼のうち、16、17鋼は特開平5-33
1600号、特開平6-17197 号公報記載の条件を満足する鋼
であり、本発明の特徴をより明らかにするために記載し
たものである。
【0033】供試材は30kgVIM 溶解炉にて溶解した鋼塊
を、1150〜1200℃に加熱して直径30mmに鍛伸することに
より準備した。その後固溶化熱処理、析出硬化処理の必
要な供試材については、固溶化熱処理については1040℃
×30分の条件で、析出硬化処理については 480℃×1hr
の条件で熱処理を行い、後述する方法により評価した。
【0034】硬さは前記した条件で熱処理を施した供試
材を切り出し、ビッカース硬度計(荷重10kg)で測定し
たものである。衝撃値はシャルピ−衝撃試験機にて JIS
3号Uノッチ試験片を用い、室温にて測定したものであ
る。
【0035】被削性は固溶化熱処理を施したφ30mm×10
mmの素材を5個用意し、切削工具として直径5mm 、材質
SKH51 のストレートドリルを用い、回転数790rpm、送り
0.18mm/rev、潤滑油なしの条件で穿孔できた長さを測定
したものである。
【0036】熱間加工性については、30Kgの鋼塊より切
り出した試験片を、グリ−ブル試験装置を用いて1150℃
で、引張速度50mm/秒という条件で高速高温引張試験を
行い、その絞り値が90% 以上を○、80〜90% を△、80%
未満を×として評価結果を示した。
【0037】耐食性については、JISG0578に基づいて評
価した。すなわち、35℃×6%FeCl3+0.05N HCl 水溶液
中に24時間浸漬した場合の腐食減量を示したものであ
る。以上説明した方法による評価結果を表2に示す。
【0038】残留オーステナイト量は、固溶化熱処理を
施した試料から、4×4×10mmの試験片を切り出し、振
動試料型磁力計(VSM) で飽和磁化値を測定し、標準試料
との比から計算により求めた。なお、標準試料には液体
窒素でサブゼロ処理をし、完全にマルテンサイト変態さ
せたものを用いた。
【0039】
【表2】
【0040】表2から明らかなように、比較鋼である11
鋼はCu含有率が高いため、オーステナイト量が増加して
析出硬化後の強度が劣るものであり、12鋼はSi、Mo含有
率が高いためオーステナイト量が増加して析出硬化後の
強度が著しく劣るとともに熱間加工性が劣るものであ
り、13鋼は、Cr含有率が低いため、耐食性が劣るもので
あり、14鋼はMn、Ni含有率、15鋼はC 含有率がそれぞれ
高いため、オーステナイトが大幅に増加して析出硬化能
が低下したものであり、16鋼は、式の値が範囲外であ
り、残留オーステナイト量が多いため、強度が劣るもの
であり、17鋼は固溶化熱処理状態での硬さが高く、被削
性が若干劣るものである。また、SUS630である18鋼は析
出硬化後の強度と熱間加工性については優れているが、
他の特性が著しく劣るものであり、SUS316である19鋼
は、強度が著しく劣るものである。
【0041】それに対し、本発明鋼である1〜10鋼は、
析出硬化処理後に1200N/mm2 以上の優れた強度を確保し
つつ、固溶化熱処理時の硬さをHv 303以下に抑えること
ができ、衝撃値、耐食性、被削性についてもSUS630に比
べ大幅に改善できることが確認できた。
【0042】
【発明の効果】本発明の析出硬化型ステンレス鋼は、N
の固溶強化に頼ることなく析出硬化後の強度向上を図っ
ているので、析出硬化時にはSUS630に近い強度を確保し
つつ、固溶化熱処理後の硬さを低く抑えることができ、
冷間加工性、被削性を大幅に改善することができた。ま
た、高い強度を確保しつつSUS316並の耐食性が得られる
ので、強度、耐食性の両方について高い要求がされる船
舶用シャフト、水門用シャフト等の厳しい腐食環境化で
使用される部位に使用すると、SUS316に比べ大幅な軽量
化を達成することができる。また、靱性の点でもSUS630
に比べ著しく優れているので、安心して高応力設計をす
ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 中川 英樹 愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地 愛知 製鋼株式会社内 (72)発明者 楓 博 愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地 愛知 製鋼株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−331600(JP,A) 特公 昭54−11245(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 302 C22C 38/50 C22C 38/54

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以
    下、Mn:0.60%以下、S:0.010%以下、Cu:0.50 〜2.50% 、
    Ni:6.00 〜8.00% 、Cr:15.0 〜17.0% 、Mo:0.50 〜2.00
    % 、N:0.030%以下、C+N:0.045%以下と、Nb:0.02 〜0.5
    0、Ti:0.02 〜0.50% 、V:0.02〜0.50% の1種又は2種
    以上を含有し、かつ0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6Cr+1.1Si+0.
    9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N-7.7C ≦15.6と 5.5≦(Nb+2V+2Ti)/
    (C+N) ≦20の2式を満足し、析出硬化処理後のオーステ
    ナイト相を10% 未満としたことを特徴とする強度、靱
    性、耐食性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】重量比にして、C:0.030%以下、Si:0.50%以
    下、Mn:0.60%以下、S:0.010%以下、Cu:0.50 〜2.50% 、
    Ni:6.00 〜8.00% 、Cr:15.0 〜17.0% 、Mo:0.50 〜2.00
    % 、N:0.030%以下、C+N:0.045%以下と、Nb:0.02 〜0.5
    0、Ti:0.02 〜0.50% 、V:0.02〜0.50% の1種又は2種
    以上と、B:0.0005〜0.0100% 、Ca:0.0005 〜0.0100% 、
    Mg:0.0005 〜0.0100% 、REM:0.0005〜0.0100% のうち1
    種又は2種以上を含有し、かつ0.6Ni+0.3Mn+0.2Cu+0.6C
    r+1.1Si+0.9Mo+Nb+2Ti+2V-6.6N-7.7C ≦15.6と 5.5≦(N
    b+2V+2Ti)/(C+N) ≦20の2式を満足し、析出硬化処理後
    のオーステナイト相を10% 未満としたことを特徴とする
    強度、靱性、耐食性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
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