JP2889020B2 - 被削性の優れた高Mn非磁性鋼 - Google Patents

被削性の優れた高Mn非磁性鋼

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JP2889020B2 JP3196843A JP19684391A JP2889020B2 JP 2889020 B2 JP2889020 B2 JP 2889020B2 JP 3196843 A JP3196843 A JP 3196843A JP 19684391 A JP19684391 A JP 19684391A JP 2889020 B2 JP2889020 B2 JP 2889020B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、核融合炉、リニアモー
タカー軌道、各種発電機などに使用される非磁性鋼に関
し、さらに詳しくは、多くの機械加工を必要とする部材
に好適な、被削性に優れ且つ高強度、高靱性を有する高
Mn非磁性鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、非磁性が要求される構造材料としての用途に種々の
鋼が用いられている。かかる鋼の一つとして、例えば、
SUS 304 鋼(18Cr− 8Ni)等のオーステナイト系ス
テンレス鋼が知られている。
【0003】しかし、この鋼は、高価なNiを多量に含
有して、製造費用が高いので、構造材料として用いるに
は適当でない。さらに、オーステナイトの安定性が良好
でないために、例えば、冷間加工等によって透磁率が上
昇する等、磁気特性が不安定である点からも、非磁性鋼
として用いるには適さない。
【0004】他方、 0.6C−14Mn− 2Ni− 2Cr鋼や
1.0C−13Mn鋼等の高Mn非磁性鋼は、製造費用も低
廉であり、高強度で磁気特性にも優れているが、被削
性、特にドリル加工性が劣るために、その適用が限定さ
れざるを得ない。さらに、かかる高Mn非磁性鋼にS,
Ca,Se,Te等の合金元素を添加して、被削性の改
善を図ることも提案されているが、尚、十分ではない。
【0005】そこで、本発明者等は、上述した従来の高
Mn非磁性鋼における問題、特に被削性を改善すべく鋭
意研究を行って来た。その結果、オーステナイト組織中
に炭窒化物を微細分散させると、被削性が大幅に改善さ
れ、且つ高強度、高靱性を有する高Mn非磁性鋼が得ら
れることが知見され、本発明に至ったものである。
【0006】従って、本発明は、被削性の優れた高Mn
非磁性鋼を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係わる高Mn非磁性鋼は、C:0.15〜0.
35wt%,Si: 2.0wt%以下, Mn:18〜30wt%,P:
0.040wt%以下, S:0.020wt%以下, N:0.0050〜0.1
0wt%を基本成分として含み、且つ、粒子径が10〜 250n
m,粒子数が 1×105 〜 1×109 個/mm2 のCrの炭窒
化物またはVの炭窒化物あるいはそれらの複合物を含有
するものである。
【0008】また、本発明に係わる高Mn非磁性鋼は、
上記成分組成に加えて、Cu: 2.0wt%以下, Ni:
2.0wt%以下,Mo: 2.0wt%以下の中から1種または
2種以上を、Nb: 1.0wt%以下, Ti: 1.0wt%以
下, Al: 1.0wt%以下の中から1種または2種以上
を、Se:0.20wt%以下, Te:0.20wt%以下,Pb:
0.20wt%以下,Ca:0.01wt%以下の中から1種または
2種以上を、それぞれ単独もしくは複合して含有するも
のであってもよい。
【0009】
【作用】以下、本発明における化学成分組成並びにCr
とVの炭窒化物の粒子径,粒子数の限定理由について説
明する。
【0010】Cは、オーステナイトの安定化、強度の向
上に極めて有効な元素であり、また後述するCrとVの
微細な炭窒化物を有効に得るために必要な元素である。
しかし、その含有量が0.15wt%未満では、強度の向上が
期待できないこと、またオーステナイトが不安定とな
り、磁気特性が損なわれる。さらに、後述するCr、V
との炭窒化物の数を確保することが困難となる。一方、
その含有量が0.35wt%を超えると、オーステナイト地の
加工硬化性を増大させ被削性が大幅に低下する。またC
rとVの炭窒化物の量が必要以上に増加し、且つ大きさ
も粗大化するため特に靱性の劣化をまねくことになる。
従って、C含有量は0.15〜0.35wt%の範囲とする。
【0011】Siは、鋼溶製時の脱酸作用を有し、且
つ、強度の向上に有効であるが、 2.0を超えて添加する
と熱間加工性を損なうことになる。従って、Si含有量
は 2.0wt%以下とする。
【0012】Mnは、重要なオーステナイト形成元素で
あり、非磁性を安定化させるためには、18wt%以上の添
加が必要である。しかし、30wt%を超えて含有すると熱
間加工性が著しく劣化する。従って、Mn含有量は18〜
30wt%の範囲とする。
【0013】Pは、熱間加工性および溶接性を損なう不
純物元素であり、極力低減することが望ましいが、経済
性を考慮して 0.040wt%以下とする。
【0014】Sは、被削性改善に有効な元素であるが、
熱間加工性および溶接性を損なう元素である。本発明
は、このS添加が無くとも大幅な被削性の改善が図られ
るものであり、極力低減することが望ましいが、経済性
を考慮して 0.020wt%以下とする。
【0015】Nは、Cと同様にオーステナイトの安定
化、高強度化に有効な元素であり、また後述するCrと
Vの微細な炭窒化物を有効に得るために必要な元素であ
る。しかし、その含有量が0.0050wt%未満では、オース
テナイトの安定化、高強度化に不十分であり、且つ後述
するCr、Vの炭窒化物の数を確保できなくなる。一
方、その含有量が0.10wt%を超えると、オーステナイト
地の加工硬化性を増大させ被削性が大幅に低下する。ま
たCrとVの炭窒化物の量が必要以上に増加すると同時
に、粒子が粗大化するため特に靱性の劣化をまねくこと
になる。従って、N含有量は0.0050〜0.10wt%の範囲と
する。
【0016】一方、本発明では、上記の化学成分の他、
CrとVの炭窒化物の大きさおよび数を限定することに
大きな特徴がある。本発明者等は、この新しい知見を得
るため、以下の実験を行った。
【0017】すなわち、0.25%C−0.30%Si−25%M
n− 0.015%Nを基本成分とし、Crを最大 9wt%,V
を最大 1.2wt%まで単独あるいは両方を添加した7種の
40kgインゴットを溶製し、板厚16mmの鋼板に熱間圧延し
た。それらの鋼板において、引張り試験、シャルピー衝
撃試験および表1に示す条件でドリル加工性試験を実施
すると同時に、抽出レプリカ法による析出物の電子顕微
鏡観察を行った。
【0018】
【表1】
【0019】図1に機械的性質およびドリル穴あけ個数
に及ぼすCr炭窒化物,V炭窒化物およびその複合物の
平均粒径の影響を示す。
【0020】図1に示す結果によれば、平均粒径が10nm
未満においては、vEO は高い値を示すものの 0.2%YSが
低く、またドリル穴あけ個数も少ない。一方、平均粒径
が増大するにつれて、vEO はやや低下するが、 0.2%YS
およびドリル穴あけ個数は増大していることが分かる。
しかし、平均粒径が 250nmを超えると、析出物が増大
し、 0.2%YS、ドリル加工性は高位にあるもののvEO
大幅に劣化していることが分かる。従って、Cr炭窒化
>物,V炭窒化物およびそれらの複合物の大きさは粒子
径で10〜 250nmに制限する。
【0021】図2には、粒子径が10〜 250nmのCr炭窒
化物,V炭窒化物およびその複合物の析出物数(粒子
数)が、機械的性質およびドリル穴あけ個数に及ぼす影
響を示した。この図によれば、析出物の数が105 個/mm
2 未満においては、vEO は高い値を示すものの、 0.2%
YSが低く、且つ、ドリル穴あけ個数も少ない。一方、析
出物の数が109 個/mm2 を超えると、vEO が非常に低い
値となることが分かる。従って、粒子径が10〜 250nmの
Cr炭窒化物,V炭窒化物およびその複合物の粒子数を
1×105 〜 1×109 個/mm2 に制限する。
【0022】なお、CrとVの含有量は、Cr: 1.0〜
9.0wt%、V:0.10〜0.90wt%が望ましい。CrとVの
含有量の下限値は、上述のCr、Vの炭窒化物の数、大
きさを規定値に入れるために必要である。また、Crを
9.0wt%を超えて過多に添加すると、δフェライトを生
成し易くなり、磁性と靱性を損なうことになる。一方、
Vについては0.90wt%を超えて添加すると、延性、靱性
を損なうことになる。
【0023】次に、上記化学成分以外に含有してもよい
化学成分の限定理由を説明する。Cu,NiおよびMo
は、オーステナイトの安定化および靱性の向上に有効で
ある。しかし、いずれの元素も過多に添加すると、オー
ステナイト地の加工硬化を大きくし、鋼の被削性を損な
うばかりでなく、経済性をも損なう。従って、その含有
量はいずれの元素もその上限を 2.0wt%とする。
【0024】Nb,TiおよびAlは、鋼の高強度化に
有効であり、必要に応じて添加される。しかし、いずれ
の元素も過多に添加すると、鋼の靱性を損なうことにな
るため、その含有量の上限を 1.0wt%とする。
【0025】Se, Te,PbおよびCaは、鋼の被削
性向上に有効であり、必要に応じて添加される。しか
し、いずれの元素も過多に添加すると、鋼の靱性を損な
うことになるため、Se, Te,Pbについては、いず
れも0.20wt%以下に、またCaは0.01wt%以下に制限す
る。
【0026】なお、本発明の高Mn非磁性鋼の製造方法
は、特に限定されるものではなく、熱間圧延のままでも
よいし、圧延後の加速冷却、溶体化熱処理、時効処理な
どのいずれを用いてもよい。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。供
試鋼は、表2に示す化学成分を有する鋼を40kg大気溶解
し、板厚16mmまで熱間圧延した。これらの鋼板につい
て、引張り試験、シャルピー衝撃試験および前記表1に
示す条件でドリル加工性試験を実施すると同時に、抽出
レプリカ法による析出物の電子顕微鏡観察を行った。こ
れらの結果を表3に併せて示す。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】表2および表3より明らかなように、 No.
1〜10は、本発明による鋼であり、いずれも、 0.2%YS
が400N/mm2 以上、vEO が100J以上、ドリル穴あけ個数
が 500個以上と優れた特性を有している。
【0031】これに対して、 No.11〜15の比較鋼におい
ては、 No.11は、C量が上限を外れているため、ドリル
穴あけ加工性が極めて悪い。
【0032】No.12は、C量が上限を外れ、また同時に
析出物の径が大きいため、靱性が低く、且つドリル加工
性も悪い。
【0033】No.13は、析出物の粒径および個数とも下
限を外れているため、 0.2%YSが低く、且つ、ドリル加
工性もよくない。
【0034】No.14は、析出物の粒径および個数とも上
限を外れているため、靱性が悪い。
【0035】No.15は、Cr,Vを添加しない鋼であっ
て、このため析出物が観察されず、また 0.2%YSが低
く、且つ、ドリル加工性もよくない。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の高Mn非
磁性鋼は、高強度、高靱性を有すると同時に、特に被削
性に優れており、核融合炉、リニアモータカー軌道、各
種発電機などに好適に使用し得るとともに、多くの機械
加工を必要とする部材に好適に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭窒化物の平均粒径と 0.2%YS,vEO およびド
リル穴あけ個数との関係を示すグラフ図である。
【図2】炭窒化物の析出物数と 0.2%YS,vEO およびド
リル穴あけ個数との関係を示すグラフ図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.15〜0.35wt%,Si: 2.0wt%以
    下, Mn:18〜30wt%,P: 0.040wt%以下, S: 0.0
    20wt%以下, N:0.0050〜0.10wt%を基本成分として含
    み、且つ、粒子径が10〜 250nm,粒子数が 1×105 〜 1
    ×109 個/mm 2 のCrの炭窒化物またはVの炭窒化物あ
    るいはそれらの複合物を含有することを特徴とする被削
    性の優れた高Mn非磁性鋼。
  2. 【請求項2】 Cu: 2.0wt%以下, Ni: 2.0wt%以
    下,Mo: 2.0wt%以下の中から1種または2種以上を
    含有してなる請求項1記載の被削性の優れた高Mn非磁
    性鋼。
  3. 【請求項3】 Nb: 1.0wt%以下, Ti: 1.0wt%以
    下, Al: 1.0wt%以下の中から1種または2種以上を
    含有してなる請求項1または2記載の被削性の優れた高
    Mn非磁性鋼。
  4. 【請求項4】 Se:0.20wt%以下, Te:0.20wt%以
    下,Pb:0.20wt%以下,Ca:0.01wt%以下の中から
    1種または2種以上を含有してなる請求項1または2ま
    たは3記載の被削性の優れた高Mn非磁性鋼。
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