JP3402562B2 - 高周波焼入れ部品 - Google Patents
高周波焼入れ部品Info
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- JP3402562B2 JP3402562B2 JP20762496A JP20762496A JP3402562B2 JP 3402562 B2 JP3402562 B2 JP 3402562B2 JP 20762496 A JP20762496 A JP 20762496A JP 20762496 A JP20762496 A JP 20762496A JP 3402562 B2 JP3402562 B2 JP 3402562B2
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- Japan
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- induction
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- strength
- hardening
- steel
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐衝撃曲げ特性、耐衝
撃ねじり特性などの衝撃特性に優れた高周波焼入れ部品
に関する。
撃ねじり特性などの衝撃特性に優れた高周波焼入れ部品
に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の動力伝達系を構成する部品、例
えばアクスルシャフト、ドライブシャフト、等速ジョイ
ント用アウターレースなどは、高周波焼入れ処理を施し
て使用されているものである。近年、自動車の高出力化
の進行にともなってこれらの動力伝達系の部品の強度を
確保し安全性を保証するために、従来の静的強度に加え
て優れた疲れ特性、耐衝撃曲げ特性、耐衝撃ねじり特性
などの衝撃特性が要求されており、また高強度の材料が
要望されている。
えばアクスルシャフト、ドライブシャフト、等速ジョイ
ント用アウターレースなどは、高周波焼入れ処理を施し
て使用されているものである。近年、自動車の高出力化
の進行にともなってこれらの動力伝達系の部品の強度を
確保し安全性を保証するために、従来の静的強度に加え
て優れた疲れ特性、耐衝撃曲げ特性、耐衝撃ねじり特性
などの衝撃特性が要求されており、また高強度の材料が
要望されている。
【0003】従来、上記の動力伝達系部品の多くは、J
IS S40Cなどの機械構造用炭素鋼が主に使用され
ており、熱間鍛造、冷間鍛造、転造、切削加工などによ
って部品を製造した後、高周波焼入れすることによって
要求される強度を得ていた。また、静的ねじり強度を向
上させるためには、部材の硬さを高くすること、高周波
焼入れ時の焼入れ深さを深くすることなどが有効である
ことが知られており、炭素含有量を増加させ高周波焼入
れ後の硬さを高くするか、焼入れ深さを深くすることで
静的強度の改善が達成されてきた。しかし、従来の炭素
鋼では、炭素量を増加し硬さを上昇させたり、または焼
入れ深さを深くしたりすると、衝撃強度が大幅に低下
し、静的強度と耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり強度を両立さ
せることはできなかった。
IS S40Cなどの機械構造用炭素鋼が主に使用され
ており、熱間鍛造、冷間鍛造、転造、切削加工などによ
って部品を製造した後、高周波焼入れすることによって
要求される強度を得ていた。また、静的ねじり強度を向
上させるためには、部材の硬さを高くすること、高周波
焼入れ時の焼入れ深さを深くすることなどが有効である
ことが知られており、炭素含有量を増加させ高周波焼入
れ後の硬さを高くするか、焼入れ深さを深くすることで
静的強度の改善が達成されてきた。しかし、従来の炭素
鋼では、炭素量を増加し硬さを上昇させたり、または焼
入れ深さを深くしたりすると、衝撃強度が大幅に低下
し、静的強度と耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり強度を両立さ
せることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アクスルシ
ャフト、ドライブシャフト、等速ジョイント用アウター
レースなどの自動車の動力伝達系の部品の静的強度を確
保し、かつ、耐衝撃曲げ特性及び耐衝撃ねじり特性に優
れた高周波焼入れ部品を提供することを目的とするので
ある。
ャフト、ドライブシャフト、等速ジョイント用アウター
レースなどの自動車の動力伝達系の部品の静的強度を確
保し、かつ、耐衝撃曲げ特性及び耐衝撃ねじり特性に優
れた高周波焼入れ部品を提供することを目的とするので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の高周波焼入れ部品においては、C:0.3
0〜0.60%、Si:≦0.50%、Mn:0.20
〜1.50%、Cr:≦1.0%、B:0.0005〜
0.0050%、N:≦0.015%、Ti:≦0.1
0%を含み、必要に応じてCr:≦1.0%、Mo≦
0.5%及びNi:≦1.0%の1種または2種以上を
含み、更に必要に応じてPb:≦0.20%、S:≦
0.10%、Bi:≦0.20%、Te:≦0.10%
及びCa:≦0.01%のうちの1種または2種以上を
含み、Ti/Nが3.42〜8であり、残部Fe及び不
純物からなり、表面硬さが≧50HRCで、硬化深さ比
t(有効硬化深さ)/r(部品半径または部品厚さ)が
0.2〜0.7であり、かつマルテンサイト率が90%
以上の均一なマルテンサイト組織である高周波焼入れ部
を有するものとしたことである。
に、本発明の高周波焼入れ部品においては、C:0.3
0〜0.60%、Si:≦0.50%、Mn:0.20
〜1.50%、Cr:≦1.0%、B:0.0005〜
0.0050%、N:≦0.015%、Ti:≦0.1
0%を含み、必要に応じてCr:≦1.0%、Mo≦
0.5%及びNi:≦1.0%の1種または2種以上を
含み、更に必要に応じてPb:≦0.20%、S:≦
0.10%、Bi:≦0.20%、Te:≦0.10%
及びCa:≦0.01%のうちの1種または2種以上を
含み、Ti/Nが3.42〜8であり、残部Fe及び不
純物からなり、表面硬さが≧50HRCで、硬化深さ比
t(有効硬化深さ)/r(部品半径または部品厚さ)が
0.2〜0.7であり、かつマルテンサイト率が90%
以上の均一なマルテンサイト組織である高周波焼入れ部
を有するものとしたことである。
【0006】
【作用】本発明は、C含有量を増加させて静的強度を高
くした場合においても、B、Tiを添加することによっ
て耐衝撃曲げ特性及び耐衝撃ねじり特性を向上させ、か
つ、Mn、Cr、Bの効果よって焼入性を向上させて高
周波焼入れ深さを十分確保するようにし、さらに、M
o、Niの添加によって静的強度及び衝撃特性を改善し
たものである。
くした場合においても、B、Tiを添加することによっ
て耐衝撃曲げ特性及び耐衝撃ねじり特性を向上させ、か
つ、Mn、Cr、Bの効果よって焼入性を向上させて高
周波焼入れ深さを十分確保するようにし、さらに、M
o、Niの添加によって静的強度及び衝撃特性を改善し
たものである。
【0007】以下に各合金元素の組成範囲、高周波焼入
れ処理後の表面硬さなどの限定理由について説明する。 C:0.30〜0.60% Cは、機械部品の強度を確保するために必須の元素であ
り、高周波焼入れ後の部品表面部の硬さを50HRC以
上とするためには0.30%以上含有させる必要があ
る。しかし、0.60%を超えて含有しても表面硬さは
上昇せず、また高周波焼入れ時に焼き割れを発生するな
どの問題があるために、その上限を0.60%とした。
れ処理後の表面硬さなどの限定理由について説明する。 C:0.30〜0.60% Cは、機械部品の強度を確保するために必須の元素であ
り、高周波焼入れ後の部品表面部の硬さを50HRC以
上とするためには0.30%以上含有させる必要があ
る。しかし、0.60%を超えて含有しても表面硬さは
上昇せず、また高周波焼入れ時に焼き割れを発生するな
どの問題があるために、その上限を0.60%とした。
【0008】Si:≦0.50%
Siは、脱酸剤として、また、焼入性を高くする元素で
あるが、0.50%を超えて添加すると、熱間加工時に
割れが発生しやすくなるので、その上限を0.50%と
した。 Mn:0.20〜1.50% Mnは、Siと同様に脱酸剤として、また、鋼の焼入性
を高くする元素である。鋼の高周波焼入れ性を改善し、
かつ、表面硬さを増加するためには0.20%以上添加
する必要がある。しかし、1.50%を超えて添加して
もその効果は飽和し、また熱間加工性を低下させるの
で、その上限を1.50%とした。
あるが、0.50%を超えて添加すると、熱間加工時に
割れが発生しやすくなるので、その上限を0.50%と
した。 Mn:0.20〜1.50% Mnは、Siと同様に脱酸剤として、また、鋼の焼入性
を高くする元素である。鋼の高周波焼入れ性を改善し、
かつ、表面硬さを増加するためには0.20%以上添加
する必要がある。しかし、1.50%を超えて添加して
もその効果は飽和し、また熱間加工性を低下させるの
で、その上限を1.50%とした。
【0009】B:0.0005〜0.0050%
溶解性のBは、高周波焼入性を向上させるとともに耐衝
撃曲げ、耐衝撃ねじり特性を改善する効果を有する元素
である。これらの効果を得るためには少なくとも0.0
005%を含有する必要があるが、0.0050%を超
えて含有してもその効果は飽和し、圧延や鍛造などの熱
間加工で割れを発生しやすくなるなどの問題が生じるた
め、その上限を0.0050%とした。
撃曲げ、耐衝撃ねじり特性を改善する効果を有する元素
である。これらの効果を得るためには少なくとも0.0
005%を含有する必要があるが、0.0050%を超
えて含有してもその効果は飽和し、圧延や鍛造などの熱
間加工で割れを発生しやすくなるなどの問題が生じるた
め、その上限を0.0050%とした。
【0010】N:≦0.015%
Nは、鋼の溶製段階において入る不可避の元素であり、
鋼中のBと結合してBNを生成し焼入性を低下するが、
0.015%以下であれば、耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり
特性に影響を及ぼさないので、その上限を0.015%
とした。好ましくは0.005%以下である。
鋼中のBと結合してBNを生成し焼入性を低下するが、
0.015%以下であれば、耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり
特性に影響を及ぼさないので、その上限を0.015%
とした。好ましくは0.005%以下である。
【0011】Ti:≦0.10%
Tiは、鋼中のNと結合してTiNを生成することによ
ってNを固定し、鋼中の溶解性のB量を増加させる効果
を有するため、N量に応じて添加する。Ti/N比率が
3.42以上かつ8以下にする必要がある。なお、Ti
を多量に添加しTi/N比が8を超えた場合には、鋼中
への介在物の生成が顕著になり疲れ特性を低下させるた
め、Ti/N比は8以下にする必要があり、またTi含
有量の上限を0.1%とした。 Cr:≦1.0% Crは、Mnと同様に鋼の焼入性を向上する元素であ
り、必要に応じて添加することができる。高周波焼入れ
する部品の直径または厚さが25mm以下の場合にはC
r添加は不要であるが、比較的大型の部品を高周波焼入
れする場合には、焼入れ性を改善するために添加するこ
とが望ましい。しかし、1.0%以上添加すると被削性
や熱間加工性などの製造性を悪化させるため、上限を
1.0%とした。 Ni:≦1.0%、Mo:≦0.5% Ni及びMoは、鋼の靱性を向上するとともに、高周波
焼入れ部、非焼入れ部の衝撃特性を改善し、耐衝撃曲
げ、耐衝撃ねじり特性を向上させるため、必要に応じて
添加することができる。なお、Niは1.0%、Moは
0.5%を超えて含有させると、被削性や熱間加工性の
悪化を助長させることなる。
ってNを固定し、鋼中の溶解性のB量を増加させる効果
を有するため、N量に応じて添加する。Ti/N比率が
3.42以上かつ8以下にする必要がある。なお、Ti
を多量に添加しTi/N比が8を超えた場合には、鋼中
への介在物の生成が顕著になり疲れ特性を低下させるた
め、Ti/N比は8以下にする必要があり、またTi含
有量の上限を0.1%とした。 Cr:≦1.0% Crは、Mnと同様に鋼の焼入性を向上する元素であ
り、必要に応じて添加することができる。高周波焼入れ
する部品の直径または厚さが25mm以下の場合にはC
r添加は不要であるが、比較的大型の部品を高周波焼入
れする場合には、焼入れ性を改善するために添加するこ
とが望ましい。しかし、1.0%以上添加すると被削性
や熱間加工性などの製造性を悪化させるため、上限を
1.0%とした。 Ni:≦1.0%、Mo:≦0.5% Ni及びMoは、鋼の靱性を向上するとともに、高周波
焼入れ部、非焼入れ部の衝撃特性を改善し、耐衝撃曲
げ、耐衝撃ねじり特性を向上させるため、必要に応じて
添加することができる。なお、Niは1.0%、Moは
0.5%を超えて含有させると、被削性や熱間加工性の
悪化を助長させることなる。
【0012】Pb:≦0.20%、S:≦0.10%、
Bi:≦0.20%、Te:≦0.10%及びCa:≦
0.01% Pb、S、Bi、Te及びCaは、被削性を改善する元
素である。しかし、Pbを0.20%、Sを0.10
%、Biを0.20%、Teを0.10%及びCaを
0.01%を超えて添加すると、疲れ特性や転動疲れ特
性を低下させる。また介在物として鋼中に存在するた
め、多量に含有させると耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり特性
を低下させる。
Bi:≦0.20%、Te:≦0.10%及びCa:≦
0.01% Pb、S、Bi、Te及びCaは、被削性を改善する元
素である。しかし、Pbを0.20%、Sを0.10
%、Biを0.20%、Teを0.10%及びCaを
0.01%を超えて添加すると、疲れ特性や転動疲れ特
性を低下させる。また介在物として鋼中に存在するた
め、多量に含有させると耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり特性
を低下させる。
【0013】高周波焼入れ部の表面硬さ:≧50HRC高周波焼入れ部の
部品表面硬さは、静的強度、耐摩耗
性、疲れ特性、耐衝撃曲げ及び耐衝撃ねじり特性を決定
するが、これらの特性を改善するためには少なくとも表
面硬さを50HRC以上必要である。焼入れ硬さが、5
0HRCより低くなると疲れ特性や静的強度が低下し、
耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり特性のバラツキが大きくなる
ため、焼入れ硬さの下限を50HRCとした。
性、疲れ特性、耐衝撃曲げ及び耐衝撃ねじり特性を決定
するが、これらの特性を改善するためには少なくとも表
面硬さを50HRC以上必要である。焼入れ硬さが、5
0HRCより低くなると疲れ特性や静的強度が低下し、
耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり特性のバラツキが大きくなる
ため、焼入れ硬さの下限を50HRCとした。
【0014】高周波焼入れ部組織のマルテンサイト率が
90%以上の均一なマルテンサイト組織 特に、耐衝撃曲げ及び耐衝撃ねじり特性を改善するに
は、高周波焼入れ部の組織を均一なマルテンサイトとす
ることが重要であり、また90%以上をマルテンサイト
組織とすることが必要である。マルテンサイト率が低く
フェライト・パーライト組織を含む場合には、耐衝撃曲
げ、耐衝撃ねじり特性が低下するため、マルテンサイト
率を90%以上とすることが望ましい。
90%以上の均一なマルテンサイト組織 特に、耐衝撃曲げ及び耐衝撃ねじり特性を改善するに
は、高周波焼入れ部の組織を均一なマルテンサイトとす
ることが重要であり、また90%以上をマルテンサイト
組織とすることが必要である。マルテンサイト率が低く
フェライト・パーライト組織を含む場合には、耐衝撃曲
げ、耐衝撃ねじり特性が低下するため、マルテンサイト
率を90%以上とすることが望ましい。
【0015】高周波焼入れ部の硬化深さ比t/r:0.
2〜0.7高周波焼入れ部の 硬化深さは、部品の強度特性に影響を
及ぼすため、焼入れ深さ(t)と部品半径または部品厚
さ(r)との比、すなわち高周波焼入れ部の硬化深さ比
を0.2〜0.7の範囲とした。t/rが0.2より小
さい場合には、転動疲れ特性が低下し、静的強度も不足
する。また、耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり強度も急激に低
下するため、硬化深さ比t/rの下限を0.2とした。
また、t/rを大きくすることによって耐衝撃曲げ、耐
衝撃ねじり特性、静的強度などの強度は向上するが、
0.7を超えて硬化深さを深くしても効果が飽和すると
ともに、高周波焼入れ処理時に焼き割れを生じやすくな
るため、t/rの上限を0.7とした。
2〜0.7高周波焼入れ部の 硬化深さは、部品の強度特性に影響を
及ぼすため、焼入れ深さ(t)と部品半径または部品厚
さ(r)との比、すなわち高周波焼入れ部の硬化深さ比
を0.2〜0.7の範囲とした。t/rが0.2より小
さい場合には、転動疲れ特性が低下し、静的強度も不足
する。また、耐衝撃曲げ、耐衝撃ねじり強度も急激に低
下するため、硬化深さ比t/rの下限を0.2とした。
また、t/rを大きくすることによって耐衝撃曲げ、耐
衝撃ねじり特性、静的強度などの強度は向上するが、
0.7を超えて硬化深さを深くしても効果が飽和すると
ともに、高周波焼入れ処理時に焼き割れを生じやすくな
るため、t/rの上限を0.7とした。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明す
る。下記表1に示した成分組成の鋼を通常の方法で溶製
し、ビレットにした後このビレットを熱間圧延してφ3
0mmの丸棒にした。この成分組成の鋼の高周波焼入性
を評価するため、φ30mmの丸棒からφ25mm、長
さ150mmの丸棒試験片を作製し、高周波焼入れ試験
機によって高周波焼入れした後、表面硬さ及び50HR
C以上の硬さが得られる深さ(硬化深さ)を測定した。
なお、高周波焼入れは、周波数10kHz、出力55k
W、加熱時間4秒とし、加熱後に水冷した。また、硬さ
測定はロックウェル硬さ計を使用した。その結果を下記
表2に示す。
る。下記表1に示した成分組成の鋼を通常の方法で溶製
し、ビレットにした後このビレットを熱間圧延してφ3
0mmの丸棒にした。この成分組成の鋼の高周波焼入性
を評価するため、φ30mmの丸棒からφ25mm、長
さ150mmの丸棒試験片を作製し、高周波焼入れ試験
機によって高周波焼入れした後、表面硬さ及び50HR
C以上の硬さが得られる深さ(硬化深さ)を測定した。
なお、高周波焼入れは、周波数10kHz、出力55k
W、加熱時間4秒とし、加熱後に水冷した。また、硬さ
測定はロックウェル硬さ計を使用した。その結果を下記
表2に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】また、疲れ特性を評価するために、試験部
直径22mmの平滑ねじり試験片を使用し、高周波焼入
れ処理した後に油圧式ねじり試験機によって1500N
・mトルクを負荷し、破断までの繰り返し数を評価し
た。なお、高周波焼入れは、周波数10kHz、出力5
5kW、加熱時間2秒とし、加熱後に水冷した。その結
果を下記表3に示す。
直径22mmの平滑ねじり試験片を使用し、高周波焼入
れ処理した後に油圧式ねじり試験機によって1500N
・mトルクを負荷し、破断までの繰り返し数を評価し
た。なお、高周波焼入れは、周波数10kHz、出力5
5kW、加熱時間2秒とし、加熱後に水冷した。その結
果を下記表3に示す。
【0020】
【表3】
【0021】また、衝撃曲げ特性を評価するため、高周
波焼入れ処理された試験部直径10mmの平滑曲げ試験
片を用い、3点衝撃曲げ試験において支点間隔100m
mの中心点を100mm/sの速度で変位させ、破断ま
でに示した最大荷重によって評価した。なお、高周波焼
入れは、周波数10kHz、出力55kW、加熱時間
1.5秒とし、加熱後に水冷した。その結果を下記表4
に示す。
波焼入れ処理された試験部直径10mmの平滑曲げ試験
片を用い、3点衝撃曲げ試験において支点間隔100m
mの中心点を100mm/sの速度で変位させ、破断ま
でに示した最大荷重によって評価した。なお、高周波焼
入れは、周波数10kHz、出力55kW、加熱時間
1.5秒とし、加熱後に水冷した。その結果を下記表4
に示す。
【0022】さらに、衝撃ねじり特性を評価するため、
衝撃曲げ試験と同一形状の試験片を使用し、30度/s
のねじり速度で衝撃ねじりトルクを負荷した場合の破断
までに示した最大トルクによって評価した。高周波焼入
れは衝撃曲げ試験片と同一条件である。その結果を表4
に示す。
衝撃曲げ試験と同一形状の試験片を使用し、30度/s
のねじり速度で衝撃ねじりトルクを負荷した場合の破断
までに示した最大トルクによって評価した。高周波焼入
れは衝撃曲げ試験片と同一条件である。その結果を表4
に示す。
【0023】
【表4】
【0024】表2に示されるように、出力55kW、加
熱時間4秒として一定条件で高周波焼入れをした場合、
本発明鋼ではいずれの鋼種においても硬化深さ比(t/
r)は0.5以上の値を示しているいるのに対して、比
較例鋼では硬化深さ比が浅めになっていることが分か
る。特に、C、Mn含有量が同一レベルであってもB量
が異なる場合には硬化深さ比の差が顕著であり、Bが高
周波焼入れ性に寄与していることが明確である。またC
量が0.3%未満では表層部の硬さを50HRC以上と
することは困難であることが分かる。
熱時間4秒として一定条件で高周波焼入れをした場合、
本発明鋼ではいずれの鋼種においても硬化深さ比(t/
r)は0.5以上の値を示しているいるのに対して、比
較例鋼では硬化深さ比が浅めになっていることが分か
る。特に、C、Mn含有量が同一レベルであってもB量
が異なる場合には硬化深さ比の差が顕著であり、Bが高
周波焼入れ性に寄与していることが明確である。またC
量が0.3%未満では表層部の硬さを50HRC以上と
することは困難であることが分かる。
【0025】表3に示されるように、静的ねじり強度を
みると、表層硬さが高く、かつ、硬化深さ比の高いもの
ほど最大ねじりトルクが大きくなることが分かる。比較
例鋼では、表面硬さが高くても硬化深さが浅いために、
静的ねじりトルクは低い値を示している。また、疲労試
験における破断寿命をみると、本発明鋼のほうが破断寿
命が長い傾向を示しており、静的にも動的にも、本発明
鋼のほうが優位であることが分かる。
みると、表層硬さが高く、かつ、硬化深さ比の高いもの
ほど最大ねじりトルクが大きくなることが分かる。比較
例鋼では、表面硬さが高くても硬化深さが浅いために、
静的ねじりトルクは低い値を示している。また、疲労試
験における破断寿命をみると、本発明鋼のほうが破断寿
命が長い傾向を示しており、静的にも動的にも、本発明
鋼のほうが優位であることが分かる。
【0026】表4に示されるように、本発明鋼の硬化深
さ比は0.25〜0.7の範囲において特性を確認した
が、比較例鋼に比べて2倍以上の衝撃強度の改善が確認
された。硬化深さ比が小さい場合には、衝撃強度も低下
する傾向にはあるが、いずれも比較例鋼にくらべて高強
度が達成されている。
さ比は0.25〜0.7の範囲において特性を確認した
が、比較例鋼に比べて2倍以上の衝撃強度の改善が確認
された。硬化深さ比が小さい場合には、衝撃強度も低下
する傾向にはあるが、いずれも比較例鋼にくらべて高強
度が達成されている。
【0027】このように、本発明鋼は、比較例鋼に比べ
て高周波焼入性に優れており、静的強度を低下すること
なく、耐衝撃曲げ強度、耐衝撃ねじり強度の大幅な向上
を可能とした。
て高周波焼入性に優れており、静的強度を低下すること
なく、耐衝撃曲げ強度、耐衝撃ねじり強度の大幅な向上
を可能とした。
【0028】
【発明の効果】本発明は、上記構成にしたことにより、
次のような優れた効果を奏する。 (1)本発明鋼の高周波焼入れ部品は、優れた高周波焼
入れ性を有する。 (2)また、高周波焼入れ時の表面硬さと硬化深さ比を
適正な範囲に選定することによって静的ねじり強度やね
じり疲労強度を確保し、さらに、耐衝撃曲げ強度と耐衝
撃ねじり強度の向上を図ることができる。
次のような優れた効果を奏する。 (1)本発明鋼の高周波焼入れ部品は、優れた高周波焼
入れ性を有する。 (2)また、高周波焼入れ時の表面硬さと硬化深さ比を
適正な範囲に選定することによって静的ねじり強度やね
じり疲労強度を確保し、さらに、耐衝撃曲げ強度と耐衝
撃ねじり強度の向上を図ることができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 臼木 秀樹
神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日
産自動車株式会社内
(72)発明者 鎌田 保志
神奈川県厚木市岡津古久560─2 日産
自動車株式会社内
(56)参考文献 特開 平5−320825(JP,A)
特開 平8−53714(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
Claims (3)
- 【請求項1】 重量%で(以下同じ。)、C:0.30
〜0.60%、Si:≦0.50%、Mn:0.20〜
1.50%、B:0.0005〜0.0050%、N:
≦0.015%、Ti:≦0.10%を含み、Ti/N
が3.42〜8であり、残部Fe及び不純物からなり、
表面硬さが≧50HRCで、硬化深さ比t(有効硬化深
さ)/r(部品半径または部品厚さ)が0.2〜0.7
であり、かつマルテンサイト率が90%以上の均一なマ
ルテンサイト組織の高周波焼入れ部を有することを特徴
とする高周波焼入れ部品。 - 【請求項2】 Cr:≦1.0%、Mo:≦0.5%及
びNi:≦1.0%の1種または2種以上を含有するこ
とを特徴とする請求項1記載の高周波焼入れ部品。 - 【請求項3】 Pb:≦0.20%、S:≦0.10
%、Bi:≦0.20%、Te:≦0.10%及びC
a:≦0.01%のうちの1種または2種以上を含有す
ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周
波焼入れ部品。
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ID=16542886
Family Applications (1)
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JP20762496A Ceased JP3402562B2 (ja) | 1996-07-19 | 1996-07-19 | 高周波焼入れ部品 |
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