JP2548067B2 - 高靭性低合金鋼 - Google Patents
高靭性低合金鋼Info
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- JP2548067B2 JP2548067B2 JP5046115A JP4611593A JP2548067B2 JP 2548067 B2 JP2548067 B2 JP 2548067B2 JP 5046115 A JP5046115 A JP 5046115A JP 4611593 A JP4611593 A JP 4611593A JP 2548067 B2 JP2548067 B2 JP 2548067B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は産業用車両の走行用、駆
動用部品等に用いられる高靭性、高強度を有し、かつ焼
入れ性、被削性に優れた低合金鋼に関するものである。
動用部品等に用いられる高靭性、高強度を有し、かつ焼
入れ性、被削性に優れた低合金鋼に関するものである。
【0002】
【従来技術】産業用車両の走行用、駆動用部品としてト
ラツクリンク、クランクシャフト、ステアリングナツク
ル等がある。例えば図2および図3に示す大型トラツク
リンク1は最小断面が25mm以上の大断面を有するもの
であつて、熱間鍛造によつて成形されたのち、切削加工
により一対のブツシュ孔2が仕上げられ、この一対のブ
ツシュ孔2にワツシャ3を介してブツシュ4を圧入し、
かつブツシュ4にピン5を押入固定してチエン状とな
し、ついでボルト6およびナツト7によつてシュー8に
取付けるもので、トラツクリンクとシューとは一体的に
回転し産業車両を走行させるものである。この車両用部
品には走行時に高い曲げ応力、捩り、引張りおよび圧縮
繰り返し応力などの負荷が加わるものであつて、このよ
うな走行用、駆動用部品に用いる鋼に対して高い靭性と
強度を有し、かつ大断面を有する前記部品の芯部まで焼
入れ組織とするため優れた焼入れ性を有していることが
要求される。また、産業用車両は−50℃以下の寒冷地
においても作業をするものであるから、極低温域におい
ても前記特性があまり低下することがなく、特に低温靭
性に優れていることが要求される。
ラツクリンク、クランクシャフト、ステアリングナツク
ル等がある。例えば図2および図3に示す大型トラツク
リンク1は最小断面が25mm以上の大断面を有するもの
であつて、熱間鍛造によつて成形されたのち、切削加工
により一対のブツシュ孔2が仕上げられ、この一対のブ
ツシュ孔2にワツシャ3を介してブツシュ4を圧入し、
かつブツシュ4にピン5を押入固定してチエン状とな
し、ついでボルト6およびナツト7によつてシュー8に
取付けるもので、トラツクリンクとシューとは一体的に
回転し産業車両を走行させるものである。この車両用部
品には走行時に高い曲げ応力、捩り、引張りおよび圧縮
繰り返し応力などの負荷が加わるものであつて、このよ
うな走行用、駆動用部品に用いる鋼に対して高い靭性と
強度を有し、かつ大断面を有する前記部品の芯部まで焼
入れ組織とするため優れた焼入れ性を有していることが
要求される。また、産業用車両は−50℃以下の寒冷地
においても作業をするものであるから、極低温域におい
ても前記特性があまり低下することがなく、特に低温靭
性に優れていることが要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、前記のような特
性が要求される産業用車両の走行用、駆動用部品に用い
る鋼として、SNCM431などのニツケル・クロム・
モリブデン鋼が使用されているが、SNCM431はN
iを1.8%含有することによつて低温靭性については
優れている反面、1.8%のNiを含有することによつ
て熱間鍛造後の焼きなましに長時間を要し、かつ、被削
性が劣るとともに、多量のNiを含有することによつて
高価な鋼となつていた。また、SNCM431などの従
来鋼は、焼入れに際してマルテンサイトを主体とする組
織となり、焼入れ時に大きな変態応力、熱応力が加わる
ことによつて焼き割れが発生し易いので、従来は水焼入
れを行うことができず、油焼入れを施していた。しか
し、油焼入れにおいては、焼入れ油の管理を十分に行わ
ないと焼入れ硬さがバラツクという欠点があり、例えば
劣化した焼入れ油を使用して焼入れを行うと、被焼入れ
材の各部分において冷却速度が変化することによつて、
焼入れ組織がマルテンサイトとベイナイトとが不均一に
分布した組織となり、焼入れ硬さにバラツキが生じると
ともに、所望の硬さが得られないという問題があつたさ
らに、油焼入れにおいては十分な焼入れ硬さが得られな
いため、従来焼入れに際して高温で焼入れを行い、かつ
焼きもどしにおいては低温もどしを施さなければなら
ず、油焼入れ材は靭性が低いものとなり、従来トラツク
リンクにおいては、使用中にブツシュ孔付近に割れが発
生するという問題があつた。
性が要求される産業用車両の走行用、駆動用部品に用い
る鋼として、SNCM431などのニツケル・クロム・
モリブデン鋼が使用されているが、SNCM431はN
iを1.8%含有することによつて低温靭性については
優れている反面、1.8%のNiを含有することによつ
て熱間鍛造後の焼きなましに長時間を要し、かつ、被削
性が劣るとともに、多量のNiを含有することによつて
高価な鋼となつていた。また、SNCM431などの従
来鋼は、焼入れに際してマルテンサイトを主体とする組
織となり、焼入れ時に大きな変態応力、熱応力が加わる
ことによつて焼き割れが発生し易いので、従来は水焼入
れを行うことができず、油焼入れを施していた。しか
し、油焼入れにおいては、焼入れ油の管理を十分に行わ
ないと焼入れ硬さがバラツクという欠点があり、例えば
劣化した焼入れ油を使用して焼入れを行うと、被焼入れ
材の各部分において冷却速度が変化することによつて、
焼入れ組織がマルテンサイトとベイナイトとが不均一に
分布した組織となり、焼入れ硬さにバラツキが生じると
ともに、所望の硬さが得られないという問題があつたさ
らに、油焼入れにおいては十分な焼入れ硬さが得られな
いため、従来焼入れに際して高温で焼入れを行い、かつ
焼きもどしにおいては低温もどしを施さなければなら
ず、油焼入れ材は靭性が低いものとなり、従来トラツク
リンクにおいては、使用中にブツシュ孔付近に割れが発
生するという問題があつた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来鋼のSN
CM431などのニツケル・クロム・モリブデン鋼に比
して、焼入れ硬さ、焼きもどし硬さは同等もしくはそれ
以上の硬さを有し、引張り強さ、靭性においては従来鋼
より優れ水焼入れを可能とした高靭性低合金鋼を提供す
るものである。即ち、本発明者らの研究によれば、従来
の含Ni鋼においては水焼入れを施した場合に焼き割れ
が発生するのは、該含Ni鋼はオーステナイト領域が広
いため、焼入れ時にほぼマルテンサイト一相の組織とな
ることと、C量が高いことが相俟つて、水焼入れ時に大
きな変態応力、熱応力が被焼入れ材に加わることによつ
て発生することを見出した。そこで本発明においては、
変態応力を緩和するためにマルテンサイトの析出を抑制
し、焼入れ後の組織をマルテンサイトとベイナイトの混
合組織とするため、Niの含有を不純物量程度に止め、
Moを必要量含有させることによつて水焼入れが可能な
鋼としたものである。また本発明においては、水焼入れ
が可能となつたことによつて十分な焼入れ硬さが得ら
れ、従来鋼に比べて低い温度で焼入れができ、かつ高温
で焼きもどしができるため、水焼入れを施した従来鋼に
比して優れた靭性を有する鋼を提供することができる。
さらに本発明によれば、必要に応じて適量のV、Nbを
1種または両方含有せしめることにより強度と靭性をさ
らに向上させ、またS、Pbを1種又は両方含有せしめ
ることにより、鋼の被削性をも向上させることができる
等、高靭性、高強度を有し、かつ優れた焼入れ性、被削
性を有する産業用車両の走行用、駆動用部品に適した高
靭性低合金鋼を提供するものである。
CM431などのニツケル・クロム・モリブデン鋼に比
して、焼入れ硬さ、焼きもどし硬さは同等もしくはそれ
以上の硬さを有し、引張り強さ、靭性においては従来鋼
より優れ水焼入れを可能とした高靭性低合金鋼を提供す
るものである。即ち、本発明者らの研究によれば、従来
の含Ni鋼においては水焼入れを施した場合に焼き割れ
が発生するのは、該含Ni鋼はオーステナイト領域が広
いため、焼入れ時にほぼマルテンサイト一相の組織とな
ることと、C量が高いことが相俟つて、水焼入れ時に大
きな変態応力、熱応力が被焼入れ材に加わることによつ
て発生することを見出した。そこで本発明においては、
変態応力を緩和するためにマルテンサイトの析出を抑制
し、焼入れ後の組織をマルテンサイトとベイナイトの混
合組織とするため、Niの含有を不純物量程度に止め、
Moを必要量含有させることによつて水焼入れが可能な
鋼としたものである。また本発明においては、水焼入れ
が可能となつたことによつて十分な焼入れ硬さが得ら
れ、従来鋼に比べて低い温度で焼入れができ、かつ高温
で焼きもどしができるため、水焼入れを施した従来鋼に
比して優れた靭性を有する鋼を提供することができる。
さらに本発明によれば、必要に応じて適量のV、Nbを
1種または両方含有せしめることにより強度と靭性をさ
らに向上させ、またS、Pbを1種又は両方含有せしめ
ることにより、鋼の被削性をも向上させることができる
等、高靭性、高強度を有し、かつ優れた焼入れ性、被削
性を有する産業用車両の走行用、駆動用部品に適した高
靭性低合金鋼を提供するものである。
【0006】請求項1に記載の第1発明鋼は、重量比に
してC:0.32〜0.40%,Si:0.15〜0.
65%,Mn:0.65〜1.20%, Cr:0.9
0〜2.00%,Mo:0.33〜0.50%を含有
し、残部Feならびに不純物元素からなり組織が焼もど
しマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織から
なるものである。また請求項2に記載の第2発明鋼は第
1発明鋼の化学成分のほかに、V:0.05〜0.30
%、Nb:0.05〜0.30%のうち1種または2種
を含有し結晶粒を微細化することによつて低温靭性をさ
らに向上させたものである。請求項3に記載の第3発明
鋼は、第1発明鋼の化学成分のほかに、S:0.035
%以下、Pb0.15%以下のうち1種ないし2種を含
有させることによつて被削性を改善したものである。本
発明鋼は上記各成分範囲の鋼に焼入れ、焼もどしを施す
ことによつて焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナ
イトの混合組織を得たものであつて、従来鋼のSNCM
431の焼入れ焼もどし組織に比して同等またはそれ以
上の強度を保持しながら、より優れた靭性を有する組織
である。
してC:0.32〜0.40%,Si:0.15〜0.
65%,Mn:0.65〜1.20%, Cr:0.9
0〜2.00%,Mo:0.33〜0.50%を含有
し、残部Feならびに不純物元素からなり組織が焼もど
しマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織から
なるものである。また請求項2に記載の第2発明鋼は第
1発明鋼の化学成分のほかに、V:0.05〜0.30
%、Nb:0.05〜0.30%のうち1種または2種
を含有し結晶粒を微細化することによつて低温靭性をさ
らに向上させたものである。請求項3に記載の第3発明
鋼は、第1発明鋼の化学成分のほかに、S:0.035
%以下、Pb0.15%以下のうち1種ないし2種を含
有させることによつて被削性を改善したものである。本
発明鋼は上記各成分範囲の鋼に焼入れ、焼もどしを施す
ことによつて焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナ
イトの混合組織を得たものであつて、従来鋼のSNCM
431の焼入れ焼もどし組織に比して同等またはそれ以
上の強度を保持しながら、より優れた靭性を有する組織
である。
【0007】
【作用】本発明鋼の成分の作用は次のとおりである。C
は、0.32〜0.40%を含有させることにより、産
業車両の走行用、駆動用部品として鋼に要求される強度
を確保する。Siは、0.15〜0.65%を含有させ
ることにより、製鋼中に、脱酸作用を有するとともに、
鋼の地質に固溶して素地の強度を向上し、さらに焼もど
し軟化抵抗を有する。Mnは、0.65〜1.20%を
含有することにより、製鋼中にSiと同様に脱酸作用を
有し、かつ鋼の焼入れ性を向上させる。Crは、0.9
0〜2.0%を含有させることにより、Mnと同様に鋼
の焼入れ性を高め、かつ炭化物を形成して耐摩耗性を向
上させる。Moは、0.33〜0.50%を含有させる
ことにより、本発明の鋼の変態応力を緩和し、水焼入れ
を可能とする優れた焼入れ性と、靭性および焼もどし軟
化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐摩耗性
を向上させる。VおよびNbは、いずれか一方または両
者をそれぞれ0.05〜0.30%含有させることによ
り、鋼に、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を微細化
し、強度と靭性を向上させる。Sは、0.035%以下
を含有させることにより、鋼中にMnSを生成して被削
性を改善する。Pbは、0.15%以下を含有させるこ
とにより、鋼中において単独あるいは化合物を形成し、
切削時に切欠き効果と、潤滑作用により切削抵抗を減少
させて工具寿命、切屑の破砕性を著しく改善する。
は、0.32〜0.40%を含有させることにより、産
業車両の走行用、駆動用部品として鋼に要求される強度
を確保する。Siは、0.15〜0.65%を含有させ
ることにより、製鋼中に、脱酸作用を有するとともに、
鋼の地質に固溶して素地の強度を向上し、さらに焼もど
し軟化抵抗を有する。Mnは、0.65〜1.20%を
含有することにより、製鋼中にSiと同様に脱酸作用を
有し、かつ鋼の焼入れ性を向上させる。Crは、0.9
0〜2.0%を含有させることにより、Mnと同様に鋼
の焼入れ性を高め、かつ炭化物を形成して耐摩耗性を向
上させる。Moは、0.33〜0.50%を含有させる
ことにより、本発明の鋼の変態応力を緩和し、水焼入れ
を可能とする優れた焼入れ性と、靭性および焼もどし軟
化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐摩耗性
を向上させる。VおよびNbは、いずれか一方または両
者をそれぞれ0.05〜0.30%含有させることによ
り、鋼に、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を微細化
し、強度と靭性を向上させる。Sは、0.035%以下
を含有させることにより、鋼中にMnSを生成して被削
性を改善する。Pbは、0.15%以下を含有させるこ
とにより、鋼中において単独あるいは化合物を形成し、
切削時に切欠き効果と、潤滑作用により切削抵抗を減少
させて工具寿命、切屑の破砕性を著しく改善する。
【0008】
【実施例】本発明鋼は、重量比にしてC:0.32〜
0.40%, Si:0.15〜0.65%,Mn:
0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%,
Mo:0.33〜0.50%を含有し、残部Feなら
びに不純物元素からなり組織が焼もどしマルテンサイト
と焼もどしベイナイトの混合組織からなる高靭性低合金
鋼である。これに V:0.05〜0.30%,Nb:
0.05〜0.30%のうち1種または2種を含有し結
晶粒を微細化することによつて低温靭性をさらに向上さ
せたものであり、あるいはこれに S:0.035%以
下、Pb:0.15%以下を含有させることによつて被
削性を改善したものである。
0.40%, Si:0.15〜0.65%,Mn:
0.65〜1.20%,Cr:0.90〜2.00%,
Mo:0.33〜0.50%を含有し、残部Feなら
びに不純物元素からなり組織が焼もどしマルテンサイト
と焼もどしベイナイトの混合組織からなる高靭性低合金
鋼である。これに V:0.05〜0.30%,Nb:
0.05〜0.30%のうち1種または2種を含有し結
晶粒を微細化することによつて低温靭性をさらに向上さ
せたものであり、あるいはこれに S:0.035%以
下、Pb:0.15%以下を含有させることによつて被
削性を改善したものである。
【0009】本発明鋼の成分限定理由について説明す
る。Cは、産業車両の走行用、駆動用部品として要求さ
れる強度を確保するに必要な元素であつて、所望の硬さ
を得るためには少くとも0.32%以上のCを含有させ
る必要があり、下限を0.32%とした。しかし0.4
0%を超えて含有させると靭性が低下するとともに熱処
理によつて歪が発生し易くなるので上限を0.40%と
した。Siは、脱酸作用を有するとともに地質に固溶し
て素地の強度を向上し、さらに焼きもどし軟化抵抗を有
する元素であつて、これらの効果を得るには0.15%
以上含有させる必要があり下限を0.15%とした。し
かし必要以上にSiを含有させると被削性が損なわれる
ので上限を0.65%とした。MnはSiと同様に脱酸
剤として用いられ、かつ焼入れ性を向上させる元素であ
つて、大型トラツクリンクのような大断面を有する走行
用部品においても芯部まで焼入れ組織とするためには
0.65%以上含有させる必要があり、下限を0.65
%とした。しかし必要以上に含有させると水焼入れにお
いて割れが発生し易くなるので、上限を1.20%とし
た。Crは、Mnと同様に焼入れ性を高め、かつ炭化物
を形成して耐摩耗性を向上させる元素であつて、走行用
部品として必要な焼入れ性と耐摩耗性を得るには、0.
90%以上含有させる必要があり、下限を0.90%と
した。しかし多く含有させると炭化物が粗大化し、かつ
硬い炭化物が生成し、かえつて焼入れ性と耐摩耗性を損
なうので、上限を2.0%とした。
る。Cは、産業車両の走行用、駆動用部品として要求さ
れる強度を確保するに必要な元素であつて、所望の硬さ
を得るためには少くとも0.32%以上のCを含有させ
る必要があり、下限を0.32%とした。しかし0.4
0%を超えて含有させると靭性が低下するとともに熱処
理によつて歪が発生し易くなるので上限を0.40%と
した。Siは、脱酸作用を有するとともに地質に固溶し
て素地の強度を向上し、さらに焼きもどし軟化抵抗を有
する元素であつて、これらの効果を得るには0.15%
以上含有させる必要があり下限を0.15%とした。し
かし必要以上にSiを含有させると被削性が損なわれる
ので上限を0.65%とした。MnはSiと同様に脱酸
剤として用いられ、かつ焼入れ性を向上させる元素であ
つて、大型トラツクリンクのような大断面を有する走行
用部品においても芯部まで焼入れ組織とするためには
0.65%以上含有させる必要があり、下限を0.65
%とした。しかし必要以上に含有させると水焼入れにお
いて割れが発生し易くなるので、上限を1.20%とし
た。Crは、Mnと同様に焼入れ性を高め、かつ炭化物
を形成して耐摩耗性を向上させる元素であつて、走行用
部品として必要な焼入れ性と耐摩耗性を得るには、0.
90%以上含有させる必要があり、下限を0.90%と
した。しかし多く含有させると炭化物が粗大化し、かつ
硬い炭化物が生成し、かえつて焼入れ性と耐摩耗性を損
なうので、上限を2.0%とした。
【0010】Moは、本発明鋼の変態応力を緩和し、水
焼入れを可能とする優れた焼入れ性と、靭性および焼も
どし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐
摩耗性を向上させる、本発明においては最も重要な元素
であつて、これらの効果を得るには少くとも0.33%
以上含有させる必要があり、下限を0.33%としたし
かし必要以上に多く含有させるとベイナイトノ−ズが後
退し、水焼入れ時に焼き割れが発生し易くなり、かつM
oは高価な元素であるので、上限を0.50%とした。
VおよびNbは、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を
微細化し、強度と靭性を向上させる元素であつて、これ
らの効果を得るには0.05%以上含有させる必要があ
り下限を0.05%とした。しかし、VおよびNbはと
もに0.30%を超えて含有させても効果の向上が小さ
いので、上限を0.30%とした。Sは、MnSを生成
して被削性を改善する元素であつて、Pbは、鋼中にお
いて単独あるいは化合物を形成し、切削時に切欠き効果
と、潤滑作用により切削抵抗を減少させて工具寿命、切
屑の破砕性を著しく改善する元素である。しかし、Sお
よびPbは、その含有量が多くなると機械的性質を損な
うものであるから、Sは0.035%、Pb:0.15
%とその上限を規制した。
焼入れを可能とする優れた焼入れ性と、靭性および焼も
どし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して耐
摩耗性を向上させる、本発明においては最も重要な元素
であつて、これらの効果を得るには少くとも0.33%
以上含有させる必要があり、下限を0.33%としたし
かし必要以上に多く含有させるとベイナイトノ−ズが後
退し、水焼入れ時に焼き割れが発生し易くなり、かつM
oは高価な元素であるので、上限を0.50%とした。
VおよびNbは、炭窒化物を生成するとともに結晶粒を
微細化し、強度と靭性を向上させる元素であつて、これ
らの効果を得るには0.05%以上含有させる必要があ
り下限を0.05%とした。しかし、VおよびNbはと
もに0.30%を超えて含有させても効果の向上が小さ
いので、上限を0.30%とした。Sは、MnSを生成
して被削性を改善する元素であつて、Pbは、鋼中にお
いて単独あるいは化合物を形成し、切削時に切欠き効果
と、潤滑作用により切削抵抗を減少させて工具寿命、切
屑の破砕性を著しく改善する元素である。しかし、Sお
よびPbは、その含有量が多くなると機械的性質を損な
うものであるから、Sは0.035%、Pb:0.15
%とその上限を規制した。
【0011】表1は、本発明による高靭性低合金鋼の実
施例の化学成分を、対比した比較鋼の化学成分とともに
記載した表であつて、供試鋼のA〜D鋼は前記第1発明
鋼、E〜G鋼は前記第2発明鋼、H〜J鋼は前記第3発
明鋼であり、比較鋼のうち、W鋼はSNCM431に基
く鋼、Xは本発明鋼に比較し、Moの含有量の低いSC
M430に基く鋼、Y鋼は本発明におけるCおよびMo
含有量の下限以下の量のC、Moを添加した比較鋼、Z
鋼は本発明におけるMn、Mo含有量の下限以下の量の
Mn、Moを添加した比較鋼である。なお、本発明鋼の
A〜J鋼および比較鋼のX〜Z鋼の欄に記載のNi量
は、通常電気炉溶解において不純物として含有されるN
i量を示したものである。また本発明鋼中A〜G鋼およ
びI鋼と比較鋼のW〜Z鋼の欄に記載のS量も同様に電
気炉溶解において不純物として含有されるS量である。
施例の化学成分を、対比した比較鋼の化学成分とともに
記載した表であつて、供試鋼のA〜D鋼は前記第1発明
鋼、E〜G鋼は前記第2発明鋼、H〜J鋼は前記第3発
明鋼であり、比較鋼のうち、W鋼はSNCM431に基
く鋼、Xは本発明鋼に比較し、Moの含有量の低いSC
M430に基く鋼、Y鋼は本発明におけるCおよびMo
含有量の下限以下の量のC、Moを添加した比較鋼、Z
鋼は本発明におけるMn、Mo含有量の下限以下の量の
Mn、Moを添加した比較鋼である。なお、本発明鋼の
A〜J鋼および比較鋼のX〜Z鋼の欄に記載のNi量
は、通常電気炉溶解において不純物として含有されるN
i量を示したものである。また本発明鋼中A〜G鋼およ
びI鋼と比較鋼のW〜Z鋼の欄に記載のS量も同様に電
気炉溶解において不純物として含有されるS量である。
【0012】
【表1】
【0013】上記表1に記載の化学成分を有する鋼を鋳
造後、圧延比50以上で直径50mmに熱間圧延を施して
供試鋼とし、これに焼入れ、焼もどし処理を行い、焼入
れ時焼もどし時の硬さ、引張り強さ、伸び、絞り、シャ
ルピー衝撃値などの機械的性質を測定した。その結果を
表2に示す。なお焼入れ、焼もどし温度は、比較鋼中従
来鋼であるW鋼については、従来技術に基いて880℃
に加熱して油焼入れを行い、次いで480℃で焼もどし
処理を行い、本発明鋼および残りの比較鋼については、
850℃に加熱して水焼入れを行い、次いで560℃で
焼もどし処理を行つた。なお、本発明の焼入れ焼きもど
し後の組織は、全て焼もどしマルテンサイトと焼もどし
ベイナイトの混合組織であつた。ここで本発明鋼および
比較鋼中のX鋼、Y鋼およびZ鋼の焼入れ時の冷却速度
は29℃/min、W鋼の焼入れ時の冷却速度は、5℃/m
inであつた。また引張り強さ、伸び、絞りについては、
JIS4号試験片を用いて測定し、衝撃値はJIS3号
試験片を用いて測定した
造後、圧延比50以上で直径50mmに熱間圧延を施して
供試鋼とし、これに焼入れ、焼もどし処理を行い、焼入
れ時焼もどし時の硬さ、引張り強さ、伸び、絞り、シャ
ルピー衝撃値などの機械的性質を測定した。その結果を
表2に示す。なお焼入れ、焼もどし温度は、比較鋼中従
来鋼であるW鋼については、従来技術に基いて880℃
に加熱して油焼入れを行い、次いで480℃で焼もどし
処理を行い、本発明鋼および残りの比較鋼については、
850℃に加熱して水焼入れを行い、次いで560℃で
焼もどし処理を行つた。なお、本発明の焼入れ焼きもど
し後の組織は、全て焼もどしマルテンサイトと焼もどし
ベイナイトの混合組織であつた。ここで本発明鋼および
比較鋼中のX鋼、Y鋼およびZ鋼の焼入れ時の冷却速度
は29℃/min、W鋼の焼入れ時の冷却速度は、5℃/m
inであつた。また引張り強さ、伸び、絞りについては、
JIS4号試験片を用いて測定し、衝撃値はJIS3号
試験片を用いて測定した
【0014】
【表2】
【0015】表2から明らかなように、本発明鋼は、焼
入れ硬さがHB475〜525、焼もどし硬さが HB
363〜399の範囲内に、引張り強さが115〜13
8kg・f/mm2の範囲内に、伸びが11.3〜15.8
の範囲内に、絞りが40.3〜46.3の範囲内に、シ
ャルピー衝撃値が7.4〜10.1kg・f‐m/cm2の
範囲内にあるのに対し、従来鋼のW鋼(SNCM43
1)は880℃で焼入れ、480℃で焼もどしという高
温焼入れ、低温焼もどしを施した結果、焼入れ硬さはH
B485、焼もどし硬さはHB370であり、引張り強
さは119kg・f/mm2と強度については優れている
が、シャルピー衝撃値については6.9kg・f‐m/cm
2と靭性については低い。また、比較鋼中の従来鋼であ
るX鋼(SCM430)およびその他の比較鋼であるY
鋼およびZ鋼は850℃で水焼入れ、560℃で焼もど
しを施した結果焼入れ硬さはHB385〜446、焼も
どし硬さHB297〜342とW鋼に比べて低く、か
つ、引張り強さについても72〜101kg・f/mm2と
W鋼に比べて低く、前記W鋼や本発明鋼に比べて強度に
ついても劣つている。前記の従来鋼、比較鋼に対して本
発明鋼であるA〜J鋼はいずれも850℃という低い温
度で水焼入れし、かつ560℃という高い温度で焼もど
しを施しても焼入れ硬さはHB475〜525、焼もど
し硬さはHB363〜399と、1.8%ものNiを含
有する従来鋼であるW鋼と同等もしくはそれ以上の硬さ
を有するものであり、かつ引張り強さについても115
〜138kg・f/mm2とW鋼以上の優れた強度を有する
ものである。さらに本発明鋼は高温もどしを施したこと
によりシャルピー衝撃値が7.4〜10.1kg・f‐m
/cm2と靭性についてもW鋼に比べて大幅に優れてお
り、本発明鋼は高強度と高靭性を有するものであるとい
うことができる。
入れ硬さがHB475〜525、焼もどし硬さが HB
363〜399の範囲内に、引張り強さが115〜13
8kg・f/mm2の範囲内に、伸びが11.3〜15.8
の範囲内に、絞りが40.3〜46.3の範囲内に、シ
ャルピー衝撃値が7.4〜10.1kg・f‐m/cm2の
範囲内にあるのに対し、従来鋼のW鋼(SNCM43
1)は880℃で焼入れ、480℃で焼もどしという高
温焼入れ、低温焼もどしを施した結果、焼入れ硬さはH
B485、焼もどし硬さはHB370であり、引張り強
さは119kg・f/mm2と強度については優れている
が、シャルピー衝撃値については6.9kg・f‐m/cm
2と靭性については低い。また、比較鋼中の従来鋼であ
るX鋼(SCM430)およびその他の比較鋼であるY
鋼およびZ鋼は850℃で水焼入れ、560℃で焼もど
しを施した結果焼入れ硬さはHB385〜446、焼も
どし硬さHB297〜342とW鋼に比べて低く、か
つ、引張り強さについても72〜101kg・f/mm2と
W鋼に比べて低く、前記W鋼や本発明鋼に比べて強度に
ついても劣つている。前記の従来鋼、比較鋼に対して本
発明鋼であるA〜J鋼はいずれも850℃という低い温
度で水焼入れし、かつ560℃という高い温度で焼もど
しを施しても焼入れ硬さはHB475〜525、焼もど
し硬さはHB363〜399と、1.8%ものNiを含
有する従来鋼であるW鋼と同等もしくはそれ以上の硬さ
を有するものであり、かつ引張り強さについても115
〜138kg・f/mm2とW鋼以上の優れた強度を有する
ものである。さらに本発明鋼は高温もどしを施したこと
によりシャルピー衝撃値が7.4〜10.1kg・f‐m
/cm2と靭性についてもW鋼に比べて大幅に優れてお
り、本発明鋼は高強度と高靭性を有するものであるとい
うことができる。
【0016】
【表3】
【0017】表3は、表1に示した供試鋼の焼入れ性に
ついて測定をした結果を示す。これらの測定値は前記熱
間圧延片からジョミニー試験片を作製し、焼入れ端から
1.5mm、3mm、5mm、8mm、11mm、13mm、15m
m、25mmの各距離の部分の硬さを測定したものであ
る。表3から明らかなように、従来鋼であるX鋼および
比較鋼であるY鋼、Z鋼が従来鋼Wに比して焼入れ硬さ
が低いのに対して、本発明鋼であるA〜J鋼はW鋼と同
等あるいはそれ以上の硬さを有することが明らかであ
り、本発明鋼は焼入れ性についても優れていることがわ
かる。次に図1に本発明鋼中のB鋼およびF鋼の低温靭
性を、従来鋼のW鋼とともに測定した結果を比較して示
す。低温靭性はJIS4号試験片を作製し、20℃〜−
80℃の低温域での供試鋼のシャルピー衝撃値を測定し
たものである。図1から明らかなように、従来鋼である
W鋼の−40℃におけるシャルピー衝撃値が5.2kg・
f‐m/cm2であるのに対し、本発明鋼であるB鋼、F
鋼は7.3〜7.8kg・f‐m/cm2であつて、W鋼に
比して大幅に高くなつており、本発明鋼は低温靭性につ
いても優れていることがわかる。
ついて測定をした結果を示す。これらの測定値は前記熱
間圧延片からジョミニー試験片を作製し、焼入れ端から
1.5mm、3mm、5mm、8mm、11mm、13mm、15m
m、25mmの各距離の部分の硬さを測定したものであ
る。表3から明らかなように、従来鋼であるX鋼および
比較鋼であるY鋼、Z鋼が従来鋼Wに比して焼入れ硬さ
が低いのに対して、本発明鋼であるA〜J鋼はW鋼と同
等あるいはそれ以上の硬さを有することが明らかであ
り、本発明鋼は焼入れ性についても優れていることがわ
かる。次に図1に本発明鋼中のB鋼およびF鋼の低温靭
性を、従来鋼のW鋼とともに測定した結果を比較して示
す。低温靭性はJIS4号試験片を作製し、20℃〜−
80℃の低温域での供試鋼のシャルピー衝撃値を測定し
たものである。図1から明らかなように、従来鋼である
W鋼の−40℃におけるシャルピー衝撃値が5.2kg・
f‐m/cm2であるのに対し、本発明鋼であるB鋼、F
鋼は7.3〜7.8kg・f‐m/cm2であつて、W鋼に
比して大幅に高くなつており、本発明鋼は低温靭性につ
いても優れていることがわかる。
【0018】次に本発明鋼の被削性を、B鋼、H鋼、I
鋼、J鋼につき、従来鋼であるW鋼の被削性と対比す
る。この対比試験は、前記各供試鋼について焼入れ、焼
もどし処理を施したものから、直径40mm、長さ10mm
の素材を用意し、これに定盤上に固定し、直径5mm、の
SKH9ストレートドリルを用いて、回転数1140r
pm、推力30kg(重錘自由落下法)により、ドリル穿
孔性を測定したものである。なお表4には従来鋼である
W鋼のドリル穿孔性を100とした指数で示した。
鋼、J鋼につき、従来鋼であるW鋼の被削性と対比す
る。この対比試験は、前記各供試鋼について焼入れ、焼
もどし処理を施したものから、直径40mm、長さ10mm
の素材を用意し、これに定盤上に固定し、直径5mm、の
SKH9ストレートドリルを用いて、回転数1140r
pm、推力30kg(重錘自由落下法)により、ドリル穿
孔性を測定したものである。なお表4には従来鋼である
W鋼のドリル穿孔性を100とした指数で示した。
【0019】
【表4】
【0020】表4により明らかなように、本発明鋼はい
ずれも従来鋼であるW鋼に比して優れた被削性を有して
おり、特に快削性元素であるS、Pbを含有せしめたH
鋼、I鋼およびJ鋼は、W鋼に比して大幅に被削性を改
善したものとなつている。
ずれも従来鋼であるW鋼に比して優れた被削性を有して
おり、特に快削性元素であるS、Pbを含有せしめたH
鋼、I鋼およびJ鋼は、W鋼に比して大幅に被削性を改
善したものとなつている。
【0021】
【発明の効果】本発明は産業車両の走行用、駆動用部品
等に用いられる高靭性低合金鋼において、Cを、要求強
度を確保するため、および靭性を低下させずかつ熱処理
による歪の発生を阻止する範囲の0.32〜0.40
%、Siを、素地の強度を向上しかつ焼もどし軟化抵抗
を有せしめるため、および被削性を損なわない範囲の
0.15〜0.65%、Mnを、大断面を有する鍛造部
品の芯部まで焼入れ組織とするため、および焼入れにあ
たり割れの発生を阻止する範囲の0.65〜1.20
%、Crを、大断面を有する鍛造部品の焼入れ性を得る
とともに微細な炭化物を形成して耐摩耗性を得るため、
および前記炭化物を粗大化せしめない範囲の0.90〜
2.0%を含有させるとともに、Moを、変態応力を緩
和し、水焼入れを可能とする焼入れ性と、靭性および焼
もどし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して
耐摩耗性を向上するため、およびベイナイトノーズが後
退して水焼入れ時に焼き割れが発生しない範囲の0.3
3〜0.50%を含有させ、高い量のCの存在下におい
て水焼入れ時に大きな変態応力、熱応力を被焼入れ材に
加えるNiを積極的に添加することなく、不純物量程度
に止めたことにより、焼入れ時の変態応力を緩和させて
水焼入れを可能としたものであつて、従来産業車両の走
行用、駆動用部品に用いられていたSNCM431に比
して低い810〜880℃の温度に加熱し、この温度か
ら水焼入れ等によつて冷却速度25℃/min以上で焼入
れし、次いで540〜580℃という高い温度で焼もど
しを行つても、従来鋼と同等もしくはそれ以上の硬さお
よび機械的性質を有し、靭性については大幅に優れてい
るという効果を有する。
等に用いられる高靭性低合金鋼において、Cを、要求強
度を確保するため、および靭性を低下させずかつ熱処理
による歪の発生を阻止する範囲の0.32〜0.40
%、Siを、素地の強度を向上しかつ焼もどし軟化抵抗
を有せしめるため、および被削性を損なわない範囲の
0.15〜0.65%、Mnを、大断面を有する鍛造部
品の芯部まで焼入れ組織とするため、および焼入れにあ
たり割れの発生を阻止する範囲の0.65〜1.20
%、Crを、大断面を有する鍛造部品の焼入れ性を得る
とともに微細な炭化物を形成して耐摩耗性を得るため、
および前記炭化物を粗大化せしめない範囲の0.90〜
2.0%を含有させるとともに、Moを、変態応力を緩
和し、水焼入れを可能とする焼入れ性と、靭性および焼
もどし軟化抵抗を高め、さらに微細な炭化物を生成して
耐摩耗性を向上するため、およびベイナイトノーズが後
退して水焼入れ時に焼き割れが発生しない範囲の0.3
3〜0.50%を含有させ、高い量のCの存在下におい
て水焼入れ時に大きな変態応力、熱応力を被焼入れ材に
加えるNiを積極的に添加することなく、不純物量程度
に止めたことにより、焼入れ時の変態応力を緩和させて
水焼入れを可能としたものであつて、従来産業車両の走
行用、駆動用部品に用いられていたSNCM431に比
して低い810〜880℃の温度に加熱し、この温度か
ら水焼入れ等によつて冷却速度25℃/min以上で焼入
れし、次いで540〜580℃という高い温度で焼もど
しを行つても、従来鋼と同等もしくはそれ以上の硬さお
よび機械的性質を有し、靭性については大幅に優れてい
るという効果を有する。
【0022】これに対し、比較鋼中のX鋼、およびY,
Z鋼は、Niを不純物量程度しか含有しないが、本発明
鋼に比較してMo含有量が低く、さらにY鋼はC含有
量、Z鋼はMo含有量が低く、その結果、SNCM43
1であるW鋼に比較して、強度、硬さが著しく劣つてい
る 従つて、本発明鋼は、従来鋼であるSNCM431
と同等以上の強度を確保しつつ、より優れた靭性を有す
る鋼であるといえる。また本発明においては、さらに、
V:0.05〜0.30%,Nb:0.05〜0.30
%の1種または2種を含有せしめることにより、炭窒化
物を生成させるとともに結晶粒を微細化させ、これによ
り低温靭性をさらに向上せしめることができ、あるいは
S:0.035%以下、Pb:0.15%以下のうちの
1種又は2種を含有せしめることにより、切削時の切欠
き効果と潤滑作用により切削抵抗を減少させ、被削性を
向上させることができる。さらに本発明鋼の焼もどしマ
ルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織は、C、
Si、Mn、Cr、Moを前記所定の量含有する鋼を溶
製後成形して、例えば電気炉等の熱処理炉により810
〜880℃に加熱し、水焼入れ等の手段により25℃/
min以上の冷却速度で焼入れすることによりマルテンサ
イトとベイナイトの混合組織が得られ、その後540〜
560℃で焼もどしを施すことにより得られる組織であ
つて、従来鋼であるSNCM431の場合のように、焼
入れ焼もどしを施した組織がマルテンサイトの一相組織
ではないので、本発明鋼は優れた靭性を有するととも
に、マルテンサイトの析出が抑制されているため変態応
力が緩和されて焼割れの発生が少くされている鋼であ
る。
Z鋼は、Niを不純物量程度しか含有しないが、本発明
鋼に比較してMo含有量が低く、さらにY鋼はC含有
量、Z鋼はMo含有量が低く、その結果、SNCM43
1であるW鋼に比較して、強度、硬さが著しく劣つてい
る 従つて、本発明鋼は、従来鋼であるSNCM431
と同等以上の強度を確保しつつ、より優れた靭性を有す
る鋼であるといえる。また本発明においては、さらに、
V:0.05〜0.30%,Nb:0.05〜0.30
%の1種または2種を含有せしめることにより、炭窒化
物を生成させるとともに結晶粒を微細化させ、これによ
り低温靭性をさらに向上せしめることができ、あるいは
S:0.035%以下、Pb:0.15%以下のうちの
1種又は2種を含有せしめることにより、切削時の切欠
き効果と潤滑作用により切削抵抗を減少させ、被削性を
向上させることができる。さらに本発明鋼の焼もどしマ
ルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織は、C、
Si、Mn、Cr、Moを前記所定の量含有する鋼を溶
製後成形して、例えば電気炉等の熱処理炉により810
〜880℃に加熱し、水焼入れ等の手段により25℃/
min以上の冷却速度で焼入れすることによりマルテンサ
イトとベイナイトの混合組織が得られ、その後540〜
560℃で焼もどしを施すことにより得られる組織であ
つて、従来鋼であるSNCM431の場合のように、焼
入れ焼もどしを施した組織がマルテンサイトの一相組織
ではないので、本発明鋼は優れた靭性を有するととも
に、マルテンサイトの析出が抑制されているため変態応
力が緩和されて焼割れの発生が少くされている鋼であ
る。
【図1】本発明の実施例の鋼と比較鋼の低温靭性を示す
試験温度とシャルピー衝撃値との 関係の線図
試験温度とシャルピー衝撃値との 関係の線図
【図2】本発明鋼の用途として適したトラツクリンクの
分解図
分解図
【図3】トラツクリンクの組立図
1トラツクリンク 2ブツシュ孔 4ブツシュ 5ピン 8シユー
Claims (3)
- 【請求項1】重量比にして、C:0.32〜0.40
%,Si:0.15〜0.65%,Mn:0.65〜
1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:0.
33〜0.50%を含有し、残部Feならびに不純物元
素からなり、組織が焼もどしマルテンサイトと焼もどし
ベイナイトの混合組織からなることを特徴とする高靭性
低合金鋼。 - 【請求項2】重量比にして、C:0.32〜0.40
%,Si:0.15〜0.65%,Mn:0.65〜
1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:0.
33〜0.50%と、さらにV:0.05〜0.30
%,Nb:0.05〜0.30%のうち1種ないし2種
を含有し、残部Feならびに不純物元素からなり、組織
が焼もどしマルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合
組織からなることを特徴とする高靭性低合金鋼。 - 【請求項3】重量比にして、C:0.32〜0.40
%,Si:0.15〜0.65%,Mn:0.65〜
1.20%,Cr:0.90〜2.00%,Mo:0.
33〜0.50%と、さらにS:0.035%以下、P
b:0.15%以下のうち1種ないし2種を含有し、残
部Feならびに不純物元素からなり、組織が焼もどしマ
ルテンサイトと焼もどしベイナイトの混合組織からなる
ことを特徴とする高靭性低合金鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5046115A JP2548067B2 (ja) | 1993-02-12 | 1993-02-12 | 高靭性低合金鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5046115A JP2548067B2 (ja) | 1993-02-12 | 1993-02-12 | 高靭性低合金鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06184694A JPH06184694A (ja) | 1994-07-05 |
JP2548067B2 true JP2548067B2 (ja) | 1996-10-30 |
Family
ID=12738007
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5046115A Expired - Lifetime JP2548067B2 (ja) | 1993-02-12 | 1993-02-12 | 高靭性低合金鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2548067B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4495106B2 (ja) * | 2006-03-28 | 2010-06-30 | 新日本製鐵株式会社 | 切削性に優れた機械構造用鋼管およびその製造方法 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61104049A (ja) * | 1984-10-26 | 1986-05-22 | Daido Steel Co Ltd | 機械構造用鋼 |
-
1993
- 1993-02-12 JP JP5046115A patent/JP2548067B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06184694A (ja) | 1994-07-05 |
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