JP3216665B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

渦電流式減速装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主として大型車両の摩擦
ブレーキを補助する渦電流式減速装置、特に制動ドラム
の内部に配設した非磁性体からなる断面箱形の案内筒の
外周壁に、周方向等間隔に多数の強磁性板を結合し、案
内筒の内部に配設した磁石支持筒の正逆回動により、制
動と非制動の切換えを行う、渦電流式減速装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】特開平1-298948号公報に開示される渦電
流式減速装置では、制動ドラムの内部に非磁性体からな
る断面箱形の案内筒を配設し、案内筒の外周壁に周方向
等間隔に多数の強磁性板を結合し、案内筒の内空部に回
動可能に支持した磁石支持筒に、各強磁性板に対向する
磁石(ここでは永久磁石をいう)を結合し、磁石支持筒
の位相を強磁性板の半配列ピツチだけ変えることによ
り、制動と非制動の切換えを行う。
【0003】図5に示すように、上述の渦電流式減速装
置では、磁石支持筒14の磁石24Fは、強磁性板15
と同じ配列ピツチpで、強磁性板15に対する極性が周
方向に交互に異なるように並設されている。非制動時、
強磁性板15に対し磁石24Fを半配列ピツチだけずら
すと、強磁性板15は相隣接する異なる極性の磁石24
Fに跨がり、鎖線で示す短絡的磁気回路27を形成す
る。しかし、磁石24Fは相隣接する強磁性板15の相
互の隙間tを経て制動ドラム7へ磁界を及ぼし、破線で
示す磁気回路27aを形成する恐れがある。回転する制
動ドラム7は洩れ磁界を横切る時引きずりトルクを受け
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上述の
問題に鑑み、制動時の制動能力を損わないで、非制動時
磁石から強磁性板の相互の隙間を経て制動ドラムへ洩れ
る磁界を効果的に抑え、引きずりトルクを抑制する、渦
電流式減速装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の構成は回転軸に結合した制動ドラムの内部
に非磁性体からなる断面箱形の案内筒を配設し、案内筒
の外周壁に周方向等間隔に多数の強磁性板を結合し、案
内筒の内空部に回動可能に支持した磁石支持筒に、各強
磁性板に1つずつ対応して強磁性板に対する極性が周方
向に交互に異なるように磁石を結合し、各磁石の外周壁
の周方向中央部に両端側と逆の磁極を備えたものであ
る。
【0006】
【作用】制動時、各強磁性板は磁石支持筒の各磁石に全
面的に重なる。各磁石の磁界は強磁性板を透過して制動
ドラムの内周面に垂直に作用する。回転する制動ドラム
が周方向に交互に逆向きの磁界を横切る時、制動ドラム
に渦電流が流れ、制動ドラムは制動トルクを受ける。
【0007】非制動時、磁石支持筒を強磁性板の半配列
ピツチ分だけ回動すると、強磁性板は相隣接する極性が
異なる2つの磁石に跨がり、強磁性板と磁石支持筒との
間に短絡的磁気回路を形成する。各磁石の中央部は案内
筒の外周壁の強磁性板の間の部分に対向するが、各磁石
の外周面の周方向中央部は両端側と反対の磁極になつて
いるので、各磁石の中央部は両端側とで短絡的磁気回路
を形成する。したがつて、各磁石の周方向中央部が案内
筒の外周壁を経て制動ドラムへ及ぼす洩れ磁界は非常に
弱くなり、制動ドラムは引きずりトルクを受けない。
【0008】
【実施例】図1は本発明による渦電流式減速装置の側面
断面図、図2は同正面断面図である。本発明による渦電
流式減速装置は、例えば車両用変速機の出力回転軸1に
結合される導体からなる制動ドラム7と、制動ドラム7
の内部に配設される非磁性体からなる不動の案内筒10
と、案内筒10の内空部に回動可能に支持した磁石支持
筒14とを備えている。制動ドラム7はボス5のフラン
ジ部5aを、駐車ブレーキの制動ドラム3の端壁部と一
緒に、回転軸1にスプライン嵌合固定した取付フランジ
2に重ね合され、かつ複数のボルト4とナツトにより締
結される。ボス5から放射状に延びる多数のスポーク6
に、冷却フイン8を備えた制動ドラム7の一端が結合さ
れる。
【0009】断面箱形の案内筒10は例えば断面C字形
をなす筒体に環状の蓋板11を結合して構成される。案
内筒10は適当な手段により例えば変速機の歯車箱に固
定される。案内筒10は外周壁10aに周方向等間隔
(図5に示す配列ピツチpを参照)に設けた多数の開口
25に、多数の強磁性板(ポールピース)15を結合さ
れる。好ましくは、強磁性板15は案内筒10の成形時
鋳ぐるまれる。磁石支持筒14は案内筒10の内空部、
詳しくは内周壁10bに軸受12により回動可能に支持
される。
【0010】案内筒10の左端壁に、好ましくは3つの
アクチユエータ20が周方向等間隔に結合される。アク
チユエータ20はシリンダ18にピストン17を嵌装し
てなり、ピストン17から外部へ突出するロツドは、磁
石支持筒14から案内筒10の左端壁の円弧状のスリツ
ト18aを経て突出する腕16に連結される。
【0011】図2に示すように、磁性体からなる磁石支
持筒14は各強磁性板15に1つずつ対向する磁石24
を、強磁性板15に対向する極性が周方向に交互に異な
るように配設される。
【0012】本発明によれば、各磁石24は外周壁の周
方向中央部に、両端側と逆の磁極を備えられる。すなわ
ち、各強磁性板15に対向する磁石24は周方向に3分
割され、中央部の磁石24Aの極性を両端側の磁石24
Bの極性と逆向きに挟んで結合される。しかし、実際に
は、磁石24は磁石材を所定形状に成形した後に、両端
側を磁石24Bに、中央部を磁石24Aにそれぞれ着磁
して構成される。
【0013】磁石24は厚さが均一なほぼ長方形の板で
あり、磁石支持筒14の外周面に密着するように円弧状
に湾曲されている。強力な磁界を得るために、磁石24
はNd-Fe-B 、希土類などの混合粉末を成形して焼結さ
れ、接着剤、ボルトなどにより磁石支持筒14へ結合さ
れる。
【0014】次に、本発明による渦電流式減速装置の作
動について説明する。図3に示すように、制動時、各磁
石24は各強磁性板15に全面的に対向し、強磁性板1
5を経て制動ドラム7に磁界を及ぼす。回転する制動ド
ラム7が磁界を横切る時、制動ドラム7に渦電流が流
れ、制動ドラム7は制動トルクを受ける。この時、磁石
24から強磁性板15、制動ドラム7、隣りの強磁性板
15、隣りの磁石24、磁石支持筒14へと磁気回路2
9が生じる。中央部の磁石24Aは両端側の磁石24B
との間に、常に短絡的磁気回路28を形成しているが、
中央部の磁石24Aは両端側の磁石24Bよりも容量
(磁界の強さ)が小さいので、制動時の制動能力には殆
ど影響しない。
【0015】図2に示すように、非制動時、アクチユエ
ータ20により磁石支持筒14を強磁性板15の半配列
ピツチ分だけ回動すると、隣接する2つの磁石24が共
通の強磁性板15に対向する。各強磁性板15と磁石支
持筒14との間に短絡的磁気回路27が生じ、磁石24
は磁界を制動ドラム7に及ぼさない。
【0016】非制動時、中央部の磁石24Aは案内筒1
0の強磁性板15と強磁性板15の間の部分に対向し、
両端側の磁石24Bとの間に短絡的磁気回路28を形成
しているので、案内筒10の外周壁10aを経て制動ド
ラム7へ洩れる磁界は極めて弱く、制動ドラム7は引き
ずりトルクを殆ど受けない。
【0017】図4に示す実施例では、各磁石24は磁石
材から一体に成形した後、内周壁をS極(またはN極)
に着磁し、同時に、外周壁の両端側をN極(またはS
極)に、外周壁の周方向中央部を両端側と逆の磁極24
Cにそれぞれ着磁する。これにより、各磁石24の構成
は簡単になり、磁石支持筒14への組付も容易になる。
【0018】
【発明の効果】本発明は上述のように、回転軸に結合し
た制動ドラムの内部に非磁性体からなる断面箱形の案内
筒を配設し、案内筒の外周壁に周方向等間隔に多数の強
磁性板を結合し、案内筒の内空部に回動可能に支持した
磁石支持筒に、各強磁性板に1つずつ対応して強磁性板
に対する極性が周方向に交互に異なるように磁石を結合
し、各磁石の外周壁の周方向中央部に両端側と逆の磁極
を備えたものであるから、非制動時、相隣接する1対の
磁石は両端側で共通の強磁性板に対向し、各磁石は磁石
支持筒と強磁性板との間に短絡的磁気回路を形成し、制
動ドラムに磁界を及ぼさない。
【0019】特に、各磁石の周方向中央部は案内筒の外
周壁の相隣接する2つの強磁性板の間の部分に対向する
が、各磁石の周方向中央部は両端側と逆の磁極を備える
から、中央部と両端側との間でも短絡的磁気回路が生
じ、各磁石の周方向中央部から相隣接する強磁性板の間
を経て制動ドラムへ洩れる磁界の強さは極めて弱く、制
動ドラムに及ぼす引きずりトルクは無視できるものとな
り、動力の損失を抑止できる。
【0020】各磁石はほぼ均一な厚さを有するので、成
形が容易であり、磁石自体の強度や磁石支持筒との結合
強度が損われない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る渦電流式減速装置の
側面断面図である。
【図2】同減速装置における非制動時の強磁性板と磁石
支持筒との関係を示す部分的正面断面図である。
【図3】同減速装置における制動時の強磁性板と磁石支
持筒との関係を示す部分的正面断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る渦電流式減速装置の
磁石の正面断面図である。
【図5】従来の渦電流式減速装置の側面断面図である。
【符号の説明】
1:回転軸 7:制動ドラム 10:案内筒 14:磁
石支持筒 15:強磁性板 24,24B:磁石 24
C:磁極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−298948(JP,A) 特開 平3−86063(JP,A) 特開 平4−12660(JP,A) 実開 平5−43786(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02K 49/02 H02K 49/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転軸に結合した制動ドラムの内部に非磁
    性体からなる断面箱形の案内筒を配設し、案内筒の外周
    壁に周方向等間隔に多数の強磁性板を結合し、案内筒の
    内空部に回動可能に支持した磁石支持筒に、各強磁性板
    に1つずつ対応して強磁性板に対する極性が周方向に交
    互に異なるように磁石を結合し、各磁石の外周壁の周方
    向中央部に両端側と逆の磁極を備えたことを特徴とす
    る、渦電流式減速装置。
JP33349492A 1992-11-19 1992-11-19 渦電流式減速装置 Expired - Fee Related JP3216665B2 (ja)

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