JP3656444B2 - 渦電流減速装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は案内筒の加工と案内筒に対する強磁性板の結合が簡単な渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
制動ドラムの内部に配置した案内筒の断面長方形の内空部に、可動の磁石支持筒と不動の磁石支持筒を収容し、可動の磁石支持筒を正逆回動して各磁石支持筒の外周面に結合した軸方向に並ぶ磁石(永久磁石、以下同じ)の極性が異なる非制動位置と、軸方向に並ぶ磁石の極性が同じ制動位置とに切り換える従来の渦電流減速装置では、非制動時に磁石の磁界が制動ドラムに及ばないように、制動ドラムの内周面に対向する案内筒に、かなり厚い強磁性板(普通には10〜16mm)を埋設しなければならない。このため、アルミニウム鋳物からなる案内筒に強磁性板を鋳込むか、非磁性体のステンレス板からプレス成形した案内筒に多数の開口を設け、各開口に強磁性板を嵌合したうえ溶接している。前者の方法は歩留りが低く、後者の方法は加工に手数がかかり、いずれもコスト低減が難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、案内筒の加工が容易であり、軽量化とコスト低減に役立つ渦電流減速装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部にあつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる案内筒を設置し、該案内筒の内外周面の一方に各磁石に対向する強磁性板を結合したことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では軟磁性体の薄板からなる案内筒の磁石と対向する部分に厚めの強磁性板を溶接により結合し、案内筒を磁石の外周側に配置する。案内筒の強磁性板と強磁性板の間(磁石と磁石の間)の部分は、磁界が透過しにくいように板厚を薄くしてもよい。案内筒の剛性強度を確保するために、薄肉の部分にアルミニウム、ステンレスなどの非磁性体からなる補強板を溶接、ろう付けなどにより結合してもよい。
【0006】
また、制動ドラムに渦電流が流れやすくするために、制動ドラムの強磁性板に対向しない部分に銅などの良伝導体からなる環状体を結合する。
【0007】
【実施例】
図1に示すように、本発明による渦電流減速装置は、例えば車両用変速機の出力回転軸2にスプライン嵌合した取付フランジ3に、制動ドラム8のボス部5のフランジ5aと、駐車ブレーキの制動ドラム4の端壁板とを一緒に複数のボルト6とナツトにより締結される。ボス部5から径外方へ突出する多数の支持腕7の先端に、多数の冷却フイン9を外周面に備える制動ドラム8の基端部ないし右端部が溶接などにより結合される。制動ドラム8の開放端部ないし左端部の端壁面には銅などの良伝導体からなる環状板10が結合され、制動ドラム8の内周面の強磁性板41と対向しない左端部に、環状板10と一体の筒ないし環状板11が結合される。制動ドラム8の内周面の強磁性板41と対向しない右端部にも、同様の筒ないし環状板12が結合される。各環状板10〜12は制動ドラム8の内部を流れる渦電流の軸方向の広がりをもたせ、制動トルクを増大させる。
【0008】
制動ドラム8の内部には、断面長方形の内空部を有する案内筒21が配設される。案内筒21は非磁性体からなる側壁24と内側案内筒23とを有する断面L字形の筒部分と、非磁性体の環状板からなる側壁24aとを複数のボルトにより結合し、軟磁性体の薄板から成形した外側案内筒22の両側縁部20を径内方へ折り曲げたうえ側壁24,24aに固定される。外側案内筒22の外周面には、制動ドラム8の内周面に対向して多数のブロツク状の強磁性板(ポールピース)41が周方向等間隔に結合される。
【0009】
案内筒21の内空部には、磁性体からなる可動の磁石支持筒25と不動の磁石支持筒26とが収容される。可動の磁石支持筒25は軸受25aにより内側案内筒23に正逆回動可能に支持され、磁石支持筒26はボルトなどにより内側案内筒23に固定される。各磁石支持筒25,26の外周面には各強磁性板41に対向する多数の磁石15,16が周方向等間隔に、かつ強磁性板41に対向する極性が周方向に交互に異なるように結合される。
【0010】
可動の磁石支持筒25を正逆回動するための流体圧アクチユエータ31は、側壁24と一体に形成したシリンダ32にピストン33を嵌挿して両端室を区画し、ピストン33に結合したロツドの外端を、磁石支持筒25から側壁24のスリツト35を経て外部へ突出する腕34に連結される。
【0011】
上述の渦電流減速装置において、非制動時、軸方向に並ぶ磁石支持筒25の磁石15と磁石支持筒26の磁石16との、強磁性板41に対する極性が互いに逆の状態にあり、磁石支持筒25,26と強磁性板41との間に短絡的磁気回路zが生じる。したがつて、磁石15,16の磁界は制動ドラム8に及ばないので、制動ドラム8に制動トルクは発生しない。制動時、アクチユエータ31により磁石支持筒25を磁石15の配列ピツチだけ回動すると、各磁石支持筒25,26の磁石15,16の強磁性板41に対する極性が同じになる。したがつて、磁石15,16からの磁界を回転する制動ドラム8が横切る時、制動ドラム8に渦電流に基づく制動トルクが発生する。この時、図2に示すように、制動ドラム8と磁石支持筒25,26との間に磁気回路wが生じる。
【0012】
しかし、実際には制動ドラム8の高速回転中は、磁気回路wは制動ドラム8の矢印xで示す回転方向へ引きずられたような格好になるので、後述するように、強磁性板41の側面断面の形状は長方形にするよりも、図9,10に示すような形状が好ましく、また制動ドラム8の中速回転では、図8に示すような形状が好ましい。
【0013】
図2に示すように、各磁石15,16は磁石支持筒25,26の外周面に重ね合され、かつ周方向に隣接する磁石15,16の間に保持具29を挟むように、磁石15,16の前後端壁に形成した肩部15aへ保持具29を重ね合せ、複数のボルト28により支持筒25,26へそれぞれ締結される。
【0014】
図3に示すように、薄い軟磁性板からなる外側案内筒22の内周面の、強磁性板41の相互の間の部分に軸方向の溝を設けて薄肉部42を形成することにより、外側案内筒22と磁石支持筒25との間に洩れ磁界による短絡的磁気回路が生じるのを抑制できる。外側案内筒22の薄肉部42を補強するために、軸方向の溝を覆うように非磁性体からなる補強板43を外側案内筒22に溶接、ろう付けなどにより結合するのが好ましい。図4に示す実施例では、断面溝型の補強板44を結合することにより、外側案内筒22の剛性強度を一層高めることができる。
【0015】
図5に示すように、外側案内筒22の外周面に軸方向の溝を設けて薄肉部42を形成し、軸方向の溝に断面溝型の補強板45を係合し、補強板45の前後端縁を周方向に並ぶ強磁性板41に係合するようにすれば、強磁性板41の周方向の位置決めが容易になる。
【0016】
図6に示す実施例では、図5に示す実施例とは逆に、外側案内筒22の内周面に強磁性板41を溶接により結合し、さらに外側案内筒22の内周面に溝を設けて薄肉部53を強磁性板41と強磁性板41との間に形成し、該溝に断面溝型の補強板45を係合すると同時に、補強板45の前後端縁を強磁性板41の後前端面に係合したものである。
【0017】
図7に示す実施例では、外側案内筒22はそれぞれ薄肉部53,42を有する軟磁性板からなる内外1対の筒体22a,22bからなり、筒体22a,22bの間に強磁性板41を挟むように結合したものであり、外側案内筒22に対する強磁性板41の結合強度を高めることができる。
【0018】
以上説明した各実施例では、強磁性板41はブロツク状のものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図8〜10に示すように円筒面をなす外面46と内面47の一方または両面を外側案内筒22に結合するようにし、図8に示す実施例では、前端面(制動ドラム8の回転方向前方の端面)48の外周側を切除して傾斜面48aを形成し、同様に後端面49の外周側を切除して傾斜面49aを形成することにより、磁石15,16からの磁束を絞つて(磁束密度を高めて)制動ドラム8へ導き、制動トルクを高めることができる。図9に示す実施例では、前端面48と後端面49を制動ドラム8の図2に矢印xで示す回転方向へ傾け、全体として平行四辺形状に構成することにより、制動ドラム8の高速回転での磁石15,16からの磁束を強磁性板41の前端部(制動ドラム8の回転方向)へ絞り込むことができる。図10に示す実施例では、強磁性板41の外面46の後半部分を切除して段部46aを形成したものであり、制動ドラム8の高速回転で磁石15,16からの磁束を強磁性板41の前端部へ一層絞り込んで制動ドラム8へ及ぼすことができる。
【0019】
以上の示す実施例では、案内筒21の内空部に可動の磁石支持筒25と不動の磁石支持筒26とを収容しているが、案内筒21の内空部に可動の磁石支持筒25だけを収容する渦電流減速装置にも適用できる。非制動時、図2に示す制動位置から磁石支持筒25を磁石15の半配列ピツチだけ回動し、周方向に並ぶ極性が異なる2つの磁石が共通の強磁性板41に部分的に対向するようにすれば、2つの磁石15の内外面を挟む磁石支持筒25と強磁性板41との間に短絡的磁気回路が生じ、制動ドラム8には磁界が及ばない。
【0020】
図11に示すように、本発明は磁石支持筒25を流体圧アクチユエータ31により制動ドラム8の内部へ押し込んだ制動位置と、制動ドラム8の内部から引き出した非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置にも適用できる。案内筒21は磁性体からなる外側案内筒19と側壁24と内側案内筒23を有する断面C字形の筒部分と、前述した軟磁性板からなる外側案内筒22と、非磁性体からなる側壁24aとを結合して、断面長方形の内空部21aを形成される。外側案内筒22の内周面に多数の強磁性板41が周方向等間隔に結合される。各強磁性板41に対向する磁石15を支持する磁石支持筒25が内空部21aに収容される。磁石支持筒25は内側案内筒23に沿つて往復動可能に支持される。流体圧アクチユエータ31のピストン33から側壁24を貫通して内空部21aへ延びるロツド34aが、磁石支持筒25に結合される。しかし、外側案内筒22と強磁性板41との結合は、図2,4,5,7に示すように構成することができる。流体圧アクチユエータ31はシリンダ32が制動ドラム8の軸方向に配設され、かつ端壁を側壁24に結合される点で図1に示すものと異なる。制動ドラム8については図1に示すものと同様である。
【0021】
非制動時、図11に示す制動位置から磁石支持筒25を制動ドラム8の外部へ引き出すと、磁石15は外側案内筒19と磁石支持筒25との間に短絡的磁気回路が形成され、制動ドラム8には磁界が及ばない。
【0022】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部にあつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる案内筒を設置し、該案内筒の内外周面の一方に各磁石に対向して強磁性板を結合したから、強磁性板を支持する外側案内筒をプレス成形により構成でき、また、強磁性板を溶接、ろう付けなどにより結合できるので加工が容易であり、かつ強磁性板をアルミニウムなどの外側案内筒へ鋳込む従来例に比べて歩留りが良く、加工経費を節減でき、強磁性板と外側案内筒との高い結合強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図2】同渦電流減速装置の要部を示す側面断面図である。
【図3】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図4】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図5】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【図7】本発明の第3実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【図8】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図9】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図10】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図11】本発明が適用される他の形式の渦電流減速装置を示す正面断面図である。
【符号の説明】
2:回転軸 5:ボス部 7:支持腕 8:制動ドラム 10:良伝導体の環状板 11:良伝導体の環状板 12:良伝導体の環状板 15:磁石 16:磁石 21:案内筒 22:外側案内筒 22a:筒体 22b:筒体 23:内側案内筒 24:側壁 24a:側壁 25:磁石支持筒 26:磁石支持筒 29:保持具 31:流体圧アクチユエータ 35:スリツト 41:強磁性板42:薄肉部 43:補強板 44:補強板 45:補強板 53:薄肉部 54:補強板
【発明の属する技術分野】
本発明は案内筒の加工と案内筒に対する強磁性板の結合が簡単な渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
制動ドラムの内部に配置した案内筒の断面長方形の内空部に、可動の磁石支持筒と不動の磁石支持筒を収容し、可動の磁石支持筒を正逆回動して各磁石支持筒の外周面に結合した軸方向に並ぶ磁石(永久磁石、以下同じ)の極性が異なる非制動位置と、軸方向に並ぶ磁石の極性が同じ制動位置とに切り換える従来の渦電流減速装置では、非制動時に磁石の磁界が制動ドラムに及ばないように、制動ドラムの内周面に対向する案内筒に、かなり厚い強磁性板(普通には10〜16mm)を埋設しなければならない。このため、アルミニウム鋳物からなる案内筒に強磁性板を鋳込むか、非磁性体のステンレス板からプレス成形した案内筒に多数の開口を設け、各開口に強磁性板を嵌合したうえ溶接している。前者の方法は歩留りが低く、後者の方法は加工に手数がかかり、いずれもコスト低減が難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上述の問題に鑑み、案内筒の加工が容易であり、軽量化とコスト低減に役立つ渦電流減速装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の構成は回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部にあつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる案内筒を設置し、該案内筒の内外周面の一方に各磁石に対向する強磁性板を結合したことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では軟磁性体の薄板からなる案内筒の磁石と対向する部分に厚めの強磁性板を溶接により結合し、案内筒を磁石の外周側に配置する。案内筒の強磁性板と強磁性板の間(磁石と磁石の間)の部分は、磁界が透過しにくいように板厚を薄くしてもよい。案内筒の剛性強度を確保するために、薄肉の部分にアルミニウム、ステンレスなどの非磁性体からなる補強板を溶接、ろう付けなどにより結合してもよい。
【0006】
また、制動ドラムに渦電流が流れやすくするために、制動ドラムの強磁性板に対向しない部分に銅などの良伝導体からなる環状体を結合する。
【0007】
【実施例】
図1に示すように、本発明による渦電流減速装置は、例えば車両用変速機の出力回転軸2にスプライン嵌合した取付フランジ3に、制動ドラム8のボス部5のフランジ5aと、駐車ブレーキの制動ドラム4の端壁板とを一緒に複数のボルト6とナツトにより締結される。ボス部5から径外方へ突出する多数の支持腕7の先端に、多数の冷却フイン9を外周面に備える制動ドラム8の基端部ないし右端部が溶接などにより結合される。制動ドラム8の開放端部ないし左端部の端壁面には銅などの良伝導体からなる環状板10が結合され、制動ドラム8の内周面の強磁性板41と対向しない左端部に、環状板10と一体の筒ないし環状板11が結合される。制動ドラム8の内周面の強磁性板41と対向しない右端部にも、同様の筒ないし環状板12が結合される。各環状板10〜12は制動ドラム8の内部を流れる渦電流の軸方向の広がりをもたせ、制動トルクを増大させる。
【0008】
制動ドラム8の内部には、断面長方形の内空部を有する案内筒21が配設される。案内筒21は非磁性体からなる側壁24と内側案内筒23とを有する断面L字形の筒部分と、非磁性体の環状板からなる側壁24aとを複数のボルトにより結合し、軟磁性体の薄板から成形した外側案内筒22の両側縁部20を径内方へ折り曲げたうえ側壁24,24aに固定される。外側案内筒22の外周面には、制動ドラム8の内周面に対向して多数のブロツク状の強磁性板(ポールピース)41が周方向等間隔に結合される。
【0009】
案内筒21の内空部には、磁性体からなる可動の磁石支持筒25と不動の磁石支持筒26とが収容される。可動の磁石支持筒25は軸受25aにより内側案内筒23に正逆回動可能に支持され、磁石支持筒26はボルトなどにより内側案内筒23に固定される。各磁石支持筒25,26の外周面には各強磁性板41に対向する多数の磁石15,16が周方向等間隔に、かつ強磁性板41に対向する極性が周方向に交互に異なるように結合される。
【0010】
可動の磁石支持筒25を正逆回動するための流体圧アクチユエータ31は、側壁24と一体に形成したシリンダ32にピストン33を嵌挿して両端室を区画し、ピストン33に結合したロツドの外端を、磁石支持筒25から側壁24のスリツト35を経て外部へ突出する腕34に連結される。
【0011】
上述の渦電流減速装置において、非制動時、軸方向に並ぶ磁石支持筒25の磁石15と磁石支持筒26の磁石16との、強磁性板41に対する極性が互いに逆の状態にあり、磁石支持筒25,26と強磁性板41との間に短絡的磁気回路zが生じる。したがつて、磁石15,16の磁界は制動ドラム8に及ばないので、制動ドラム8に制動トルクは発生しない。制動時、アクチユエータ31により磁石支持筒25を磁石15の配列ピツチだけ回動すると、各磁石支持筒25,26の磁石15,16の強磁性板41に対する極性が同じになる。したがつて、磁石15,16からの磁界を回転する制動ドラム8が横切る時、制動ドラム8に渦電流に基づく制動トルクが発生する。この時、図2に示すように、制動ドラム8と磁石支持筒25,26との間に磁気回路wが生じる。
【0012】
しかし、実際には制動ドラム8の高速回転中は、磁気回路wは制動ドラム8の矢印xで示す回転方向へ引きずられたような格好になるので、後述するように、強磁性板41の側面断面の形状は長方形にするよりも、図9,10に示すような形状が好ましく、また制動ドラム8の中速回転では、図8に示すような形状が好ましい。
【0013】
図2に示すように、各磁石15,16は磁石支持筒25,26の外周面に重ね合され、かつ周方向に隣接する磁石15,16の間に保持具29を挟むように、磁石15,16の前後端壁に形成した肩部15aへ保持具29を重ね合せ、複数のボルト28により支持筒25,26へそれぞれ締結される。
【0014】
図3に示すように、薄い軟磁性板からなる外側案内筒22の内周面の、強磁性板41の相互の間の部分に軸方向の溝を設けて薄肉部42を形成することにより、外側案内筒22と磁石支持筒25との間に洩れ磁界による短絡的磁気回路が生じるのを抑制できる。外側案内筒22の薄肉部42を補強するために、軸方向の溝を覆うように非磁性体からなる補強板43を外側案内筒22に溶接、ろう付けなどにより結合するのが好ましい。図4に示す実施例では、断面溝型の補強板44を結合することにより、外側案内筒22の剛性強度を一層高めることができる。
【0015】
図5に示すように、外側案内筒22の外周面に軸方向の溝を設けて薄肉部42を形成し、軸方向の溝に断面溝型の補強板45を係合し、補強板45の前後端縁を周方向に並ぶ強磁性板41に係合するようにすれば、強磁性板41の周方向の位置決めが容易になる。
【0016】
図6に示す実施例では、図5に示す実施例とは逆に、外側案内筒22の内周面に強磁性板41を溶接により結合し、さらに外側案内筒22の内周面に溝を設けて薄肉部53を強磁性板41と強磁性板41との間に形成し、該溝に断面溝型の補強板45を係合すると同時に、補強板45の前後端縁を強磁性板41の後前端面に係合したものである。
【0017】
図7に示す実施例では、外側案内筒22はそれぞれ薄肉部53,42を有する軟磁性板からなる内外1対の筒体22a,22bからなり、筒体22a,22bの間に強磁性板41を挟むように結合したものであり、外側案内筒22に対する強磁性板41の結合強度を高めることができる。
【0018】
以上説明した各実施例では、強磁性板41はブロツク状のものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、図8〜10に示すように円筒面をなす外面46と内面47の一方または両面を外側案内筒22に結合するようにし、図8に示す実施例では、前端面(制動ドラム8の回転方向前方の端面)48の外周側を切除して傾斜面48aを形成し、同様に後端面49の外周側を切除して傾斜面49aを形成することにより、磁石15,16からの磁束を絞つて(磁束密度を高めて)制動ドラム8へ導き、制動トルクを高めることができる。図9に示す実施例では、前端面48と後端面49を制動ドラム8の図2に矢印xで示す回転方向へ傾け、全体として平行四辺形状に構成することにより、制動ドラム8の高速回転での磁石15,16からの磁束を強磁性板41の前端部(制動ドラム8の回転方向)へ絞り込むことができる。図10に示す実施例では、強磁性板41の外面46の後半部分を切除して段部46aを形成したものであり、制動ドラム8の高速回転で磁石15,16からの磁束を強磁性板41の前端部へ一層絞り込んで制動ドラム8へ及ぼすことができる。
【0019】
以上の示す実施例では、案内筒21の内空部に可動の磁石支持筒25と不動の磁石支持筒26とを収容しているが、案内筒21の内空部に可動の磁石支持筒25だけを収容する渦電流減速装置にも適用できる。非制動時、図2に示す制動位置から磁石支持筒25を磁石15の半配列ピツチだけ回動し、周方向に並ぶ極性が異なる2つの磁石が共通の強磁性板41に部分的に対向するようにすれば、2つの磁石15の内外面を挟む磁石支持筒25と強磁性板41との間に短絡的磁気回路が生じ、制動ドラム8には磁界が及ばない。
【0020】
図11に示すように、本発明は磁石支持筒25を流体圧アクチユエータ31により制動ドラム8の内部へ押し込んだ制動位置と、制動ドラム8の内部から引き出した非制動位置とに切り換える形式の渦電流減速装置にも適用できる。案内筒21は磁性体からなる外側案内筒19と側壁24と内側案内筒23を有する断面C字形の筒部分と、前述した軟磁性板からなる外側案内筒22と、非磁性体からなる側壁24aとを結合して、断面長方形の内空部21aを形成される。外側案内筒22の内周面に多数の強磁性板41が周方向等間隔に結合される。各強磁性板41に対向する磁石15を支持する磁石支持筒25が内空部21aに収容される。磁石支持筒25は内側案内筒23に沿つて往復動可能に支持される。流体圧アクチユエータ31のピストン33から側壁24を貫通して内空部21aへ延びるロツド34aが、磁石支持筒25に結合される。しかし、外側案内筒22と強磁性板41との結合は、図2,4,5,7に示すように構成することができる。流体圧アクチユエータ31はシリンダ32が制動ドラム8の軸方向に配設され、かつ端壁を側壁24に結合される点で図1に示すものと異なる。制動ドラム8については図1に示すものと同様である。
【0021】
非制動時、図11に示す制動位置から磁石支持筒25を制動ドラム8の外部へ引き出すと、磁石15は外側案内筒19と磁石支持筒25との間に短絡的磁気回路が形成され、制動ドラム8には磁界が及ばない。
【0022】
【発明の効果】
本発明は上述のように、回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部にあつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる案内筒を設置し、該案内筒の内外周面の一方に各磁石に対向して強磁性板を結合したから、強磁性板を支持する外側案内筒をプレス成形により構成でき、また、強磁性板を溶接、ろう付けなどにより結合できるので加工が容易であり、かつ強磁性板をアルミニウムなどの外側案内筒へ鋳込む従来例に比べて歩留りが良く、加工経費を節減でき、強磁性板と外側案内筒との高い結合強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦電流減速装置の正面断面図である。
【図2】同渦電流減速装置の要部を示す側面断面図である。
【図3】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図4】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図5】同渦電流減速装置の部分的変更実施例を示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【図7】本発明の第3実施例に係る渦電流減速装置の側面断面図である。
【図8】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図9】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図10】強磁性体の断面形状を表す側面図である。
【図11】本発明が適用される他の形式の渦電流減速装置を示す正面断面図である。
【符号の説明】
2:回転軸 5:ボス部 7:支持腕 8:制動ドラム 10:良伝導体の環状板 11:良伝導体の環状板 12:良伝導体の環状板 15:磁石 16:磁石 21:案内筒 22:外側案内筒 22a:筒体 22b:筒体 23:内側案内筒 24:側壁 24a:側壁 25:磁石支持筒 26:磁石支持筒 29:保持具 31:流体圧アクチユエータ 35:スリツト 41:強磁性板42:薄肉部 43:補強板 44:補強板 45:補強板 53:薄肉部 54:補強板
Claims (6)
- 回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部にあつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる案内筒を設置し、該案内筒の内外周面の一方に各磁石に対向する強磁性板を結合したことを特徴とする渦電流減速装置。
- 回転軸に結合した制動ドラムと、該制動ドラムの内部あつて少くとも1つの可動の磁石支持筒と、該可動の磁石支持筒の外周面に等間隔に結合した多数の磁石とを有し、該磁石からの磁界に基づく渦電流により制動ドラムに制動力を発生させる渦電流減速装置において、前記磁石の外周側に軟磁性体の薄板からなる内外2つの案内筒を設置し、該内外2つの案内筒の間に各磁石に対向する強磁性板を挟んで結合したことを特徴とする渦電流減速装置。
- 前記案内筒の周方向に隣接する磁石の間に薄肉部分を備えた、請求項1,2のいずれかに記載の渦電流減速装置。
- 前記案内筒の薄肉部分に非磁性体からなる補強板を結合した、請求項3に記載の渦電流減速装置。
- 前記強磁性板の外面の面積を内面の面積よりも狭くした、請求項1,2のいずれかに記載の渦電流減速装置。
- 制動ドラムの内周面の前記強磁性板に対向しない少くとも一方の端部に、銅などの良伝導体からなる環状体を結合した、請求項1,2のいずれかに記載の渦電流減速装置。
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