JPH0683571B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は主として大型車両の摩擦ブレーキを補助する渦
電流式減速装置、特に非制動時の磁気漏れによる制動ド
ラムの引きずりを効果的に回避する渦電流式減速装置に
関するものである。

［従来の技術］ 特開平１−298948号公報に開示される渦電流式減速装置
では、回転軸に結合した制動ドラムの内部に、アルミニ
ウムなどからなる非磁性板に永久磁石とほぼ同面積の強
磁性板を周方向等間隔に配設してなる磁気制御筒が回動
可能に配設され、磁気制御筒の内側に、周方向等間隔か
つ制動ドラムに対する極性が交互に異なるよう多数の永
久磁石を結合してなる磁石支持輪が配設される。

制動時、強磁性板が永久磁石と対向する位置に磁気制御
板を保持すると、永久磁石からの磁界が強磁性板を透過
して制動ドラムに垂直に作用し、制動ドラムが磁界を横
切る時制動ドラムに渦電流が流れ、制動ドラムが制動ト
ルクを受ける。

非制動時、強磁性板が永久磁石の配列ピツチ分だけずれ
た回動位置に磁気制御筒を保持すると、強磁性板が周方
向に隣接する２つの永久磁石に跨り、隣接する２つの永
久磁石と強磁性板と磁石支持輪との間に短絡的磁気閉回
路が形成され、制動ドラムに及ぼす磁界が非常に弱くな
り、制動ドラムが受ける制動トルクが非常に小さくな
る。

［発明が解決しようとする問題点］ しかし、強磁性板に覆われない永久磁石の周方向中心部
から洩れ磁束が制動ドラムへ作用するので、制動ドラム
が引きずりトルクを受けるという問題がある。永久磁石
から制動ドラムへの洩れ磁束を少くするために、磁気制
御筒を厚くすると、装置全体が重なり、また永久磁石と
制動ドラムの間隔が広がり、制動時永久磁石から強磁性
板を透過して制動ドラムへ到達する磁界が少くなり、制
動トルクが低下する。

本発明の目的は上述の問題に鑑み、重量増加を来たさな
いで、非制動時の洩れ磁束を効果的に減じる一方、制動
時は大きな制動トルクを発生する渦電流式減速装置を提
供することにある。

［問題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本発明の構成は回転軸に結
合した制動ドラムの内部に、非磁性体からなりかつ断面
長方形の内空部を有する筒形の固定枠を配設し、固定枠
の外筒部に周方向等間隔に多数の強磁性板を配設し、固
定枠の内空部に回動可能に支持した磁石支持輪に、強磁
性板に２つずつ対向しかつ強磁性体に対する極性が２つ
ずつ異なるよう多数の永久磁石を配設したものである。

［作用］ 制動ドラムの内部に、断面長方形の内空部を有する筒形
の固定枠が配設され、固定枠の外筒部に制動ドラムの内
周面に対向する多数の強磁性板が周方向等間隔に配設さ
れる。固定枠の内空部に磁石支持輪が永久磁石の配列ピ
ツチ分（強磁性板の半ピツチ分）だけ相対回動可能に支
持される。

非制動時、非磁性体からなる固定枠の強磁性板は、磁石
支持輪の極性の異なる２つの永久磁石に跨る。周方向に
隣接する２つの永久磁石と強磁性板と磁石支持輪との間
に短絡的磁気閉回路が形成れ、永久磁石は制動ドラムへ
磁界を及ぼさない。磁石支持輪の周方向に隣接する２つ
の永久磁石の全面が強磁性板により覆われるから、洩れ
磁束は殆どない。

制動時、磁石支持輪を永久磁石の配列チツピ分だけ回動
すると、強磁性板が極性が同じ２つの永久磁石に跨る。
両方の永久磁石からの磁界が強磁性板を透過して制動ド
ラムに垂直に作用する。回動する制動ドラムが磁界を横
切る時、制動ドラムに渦電流が流れ、制動ドラムが制動
トルクを受ける。

［発明の実施例］ 第１図は本発明による渦電流式減速装置の側面断面図、
第２図は同正面図である。本発明による渦電流式減速装
置は、例えば車両用変速機の出力回転軸１に結合される
導体からなる制動ドラム７と、制動ドラム７の内部に配
設される非磁性体からなる固定枠10と、固定枠10の内空
部に回動可能に支持した磁石支持輪14とを備えている。
制動ドラム７はボス５のフランジ部5aを、駐車ブレーキ
の制動ドラム３の端壁部と一緒に、回転軸１にスプライ
ン嵌合固定した取付フランジ２に重ね合され、かつボル
ト４により締結される。ボルト５から放射状に延びるス
ポーク６に、冷却フイン８を備えた制動ドラム７が結合
される。

固定枠10は断面長方形の内空部を備える筒形のものであ
り、具体的には断面コ字状をなす筒体に環状の蓋板11を
結合して構成される。固定枠10は適当な手段により例え
ば変速機の歯車箱に固定される。固定枠10の外筒部10a
に多数の強磁性板（ポールピース）15が周方向等間隔に
結合される。好ましくは、強磁性板15は固定枠10の成形
時鋳ぐるまれる。磁石支持輪14は固定枠10の内空部、詳
しくは内筒部10bに軸受12により回動可能に支持され
る。

固定枠10の左端壁に、好ましくは３つの流体圧アクチユ
エータ20が周方向等間隔に結合される。流体圧アクチユ
エータ20はシリンダ18にピストン17を嵌装してなり、ピ
ストン17から外部へ突出するロツドに、磁石支持輪14か
ら固定枠10の左端壁のスリツトを経て突出する腕16が連
結される。

磁石支持輪14は強磁性板15の約半分の面積で倍数の永久
磁石14aが、強磁性板15の間隔の1/2の間隔で周方向等間
隔に配設される。

第２図に示すように、磁石支持輪14はアルミニウムなど
の非磁性体からなり、多数の永久磁石14aが、強磁性板1
5と対向しかつ強磁性板15に対する極性が周方向に２つ
ずつ異なるように配設される。

次に、本発明による渦電流式減速装置の作動について説
明する。制動ドラム７が回転軸１と一緒に回転されるの
に対し、第２図に示すように、非制動時、共通の強磁性
板15に対し、周方向に隣接する２つの永久磁石14aの極
性が互いに異なる状態では、強磁性板15と磁石支持輪14
との間で短絡的磁気閉回路が生じ、制動ドラム７に磁界
を及ぼさない。強磁性板15は２つの永久磁石14aの外周
側を全体的に覆うから、制動ドラム７への洩れ磁束は殆
ど生じない。したがつて、制動ドラム７は引きずりトル
クを受けない。

制動時、液体圧アクチユエータ20により磁石支持輪14を
永久磁石14aの配列ピツチｐ分だけ回動すると、第３図
に示すように、共通の強磁性板15に対し、隣接する２つ
の永久磁石14aの極性が同じになる。したがつて、２つ
の永久磁石14aが等しく強磁性板15を経て制動ドラム７
に磁界を及ぼす。回転する制動ドラム７が磁界を横切る
時、制動ドラム７に渦電流が流れ、制動ドラム７が制動
トルクを受ける。この時、永久磁石14aから強磁性板1
5、制動ドラム７、隣りの強磁性板15、隣りの永久磁石1
4a、磁石支持輪14へと磁気閉回路が生じる。

固定枠10の外筒部10aの強磁性板15は、磁石支持輪14を
永久磁石14aの配列ピッチ分だけ回動することにより、
強磁性板15と磁石支持輪14の間で短絡的磁気閉回路を形
成する非制動状態と、制動ドラム７と磁石支持輪14の間
で磁気閉回路を形成し、制動ドラム７に磁界を及ぼす制
動状態とを形成する。

上述の実施例では、磁石支持輪を流体圧アクチュエータ
により永久磁石の配列ピツチ分だけ正逆回動するように
したが、電動機により回動してもよく、また磁石支持輪
を固定し、代りに固定枠を回動してもよい。

［発明の効果］ 本発明は上述のように、回転軸に結合した制動ドラムの
内部に、非磁性体からなりかつ断面長方形の内空部を有
する筒形の固定枠を配設し、固定枠の外筒部に周方向等
間隔に多数の強磁性板を配設し、固定枠の内空部に回動
可能に支持した磁石支持輪に、強磁性板に２つずつ対向
しかつ強磁性板に対する極性が２つずつ異なるよう多数
の永久磁石を配設したから、非制動時、隣接する２つの
永久磁石の強磁性板に対する極性を互いに逆にすると、
１対の強磁性板の間で短絡的磁気閉回路が生じ、制動ド
ラムは制動トルクを受けない。

磁石支持輪の周方向に隣接する２つの永久磁石の全面が
強磁性板により覆われるから、制動ドラムへの洩れ磁束
は殆どない。したがつて、固定枠は従来例とほぼ同寸法
で、つまり重量増加を来たさないので、制動ドラムへの
洩れ磁束をなくし、非制動時の制動ドラムの引きずりト
ルクを解消できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る渦電流式減速装置の側面断面図、
第２図は非制動時の強磁性板と磁石支持輪との関係を示
す部分的正面断面図、第３図は制動時の強磁性板と磁石
支持輪との関係を示す部分的正面断面図である。 1:回転軸、7:制動ドラム、10:固定枠、14:磁石支持輪、
14a:永久磁石、15:強磁性板

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に結合した制動ドラムの内部に、非
   磁性体からなりかつ断面長方形の内空部を有する筒形の
   固定枠を配設し、固定枠の外筒部に周方向等間隔に多数
   の強磁性板を配設し、固定枠の内空部に回動可能に支持
   した磁石支持輪に、強磁性板に２つずつ対向しかつ強磁
   性板に対する極性が２つずつ異なるよう多数の永久磁石
   を配設したことを特徴とする渦電流式減速装置。