JP3215765B2 - 受像管の製造方法 - Google Patents

受像管の製造方法

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JP3215765B2 JP33538393A JP33538393A JP3215765B2 JP 3215765 B2 JP3215765 B2 JP 3215765B2 JP 33538393 A JP33538393 A JP 33538393A JP 33538393 A JP33538393 A JP 33538393A JP 3215765 B2 JP3215765 B2 JP 3215765B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、テレビジョン受像機あ
るいはコンピュータ等のディスプレイとして使用される
ついて、その一例として角型のスクリーンを有するシャ
ドウマスク式カラーCRT の一部断面平面図を示す図8を
参照して説明する。図8において、参照符号1はCRT を
示しており、基本的には真空ガラスバルブとして形成さ
れている。このCRT 1は、パネルスクリーン2Aとその周
囲を囲繞して後側へ突出している側面部2Bとで形成され
て前部に位置するパネル2と、このパネル2に連なり中
央部に位置する漏斗状のファンネル4と、このファンネ
ル4に連なり電子銃 (図示せず)を内蔵して後部に位置
するネック5とで構成されている。
【0003】上述のパネルスクリーン2Aの内面には蛍光
スクリーン3が設けられており、この蛍光スクリーン3
に対向して多数の孔が設けられたシャドウマスク6が配
置されている。蛍光スクリーン3は複数の蛍光体で構成
する必要があるため、製造工程においてシャドウマスク
6をパネル2に対して複数回着脱する必要がある。この
ため、パネル2とファンネル4とは分離可能に構成され
ており、両者はガラス半田であるフリットガラスで封着
されている。なお、パネル2とファンネル4との封着部
分をフリットシール部7と称する。
【0004】上述したような従来の一般的なCRT 1はそ
の内部が真空にされるため、主材料であるガラスに付い
た傷等が伸展してクラックが生じることにより「爆縮」
と称される破壊に至る可能性がある。この爆縮を防止す
るため、通常はパネル側面部2Bに布テープ8を巻き、更
にその上から金属環10で緊締することにより、パネルス
クリーン2A側に生じたクラックがフリットシール部7側
へ伸展するのを阻止して破壊を防止するための防爆処理
が行なわれる。また、CRT 1を受像機に取付けるための
取付耳 (図示せず)が上述の金属環10を取付ける際に同
時に取付けられる。
【0005】なお、図8において、参照符号11はファン
ネル4にシールされているアノードボタンであり、12は
ファンネル4とネック5との接続部であるネックスプラ
イスラインである。
【0006】図9はCRT 1の模式的正面図である。な
お、図9において、Oは角型のCRT 1の管軸であり、蛍
光スクリーン3の中心Zと一致している。ところで、こ
のようなCRT 1は、通常の設計では真空にすることによ
りパネルスクリーン2Aが角型の蛍光スクリーン3とほぼ
相似形の等高線を画くように変形する。図9に示されて
いる破線はその等高線を示している。このことは角型の
蛍光スクリーン3の各辺の中央付近 (スクリーン2Aでは
X, Y軸に沿った方向) でのバルブ外面の主応力(引
張)が蛍光スクリーン3の対角方向に比べて大きくなる
ことを意味している。
【0007】図10はCRT 1を真空にした場合の前面から
向かって右上の1/4 の部分である第1象限のみを模式的
に示す斜視図であり、外面の主応力(引張)の大きい部
分にハッチングを付して示してある。一方、バルブの内
面については図10と同様に図11にハッチングを付して示
す部分が主応力の大きい部分であり、そのピーク値は図
10の場合とほぼ同じ程度である。
【0008】なお、図10及び図11においては、管軸Oを
含むY軸断面 (短軸断面) をS.A.、同様にX軸断面 (長
軸断面) をL.A.、対角軸断面をD.A.と称する。図10から
明らかなように、パネルスクリーン2AのX, Y軸端部、
エッジ部2C、パネル側面部2B、ファンネルシール部7近
辺等がCRT 1の強度の点で問題の箇所である。
【0009】図12はパネル側面部2BのZ軸断面で見て最
大形状部を示すモールドマッチラインの部分の形状を示
す模式図であり、通常は前述の金属環10で締めつけられ
る部分である。なお、図12は前述の図10及び図11と同様
に、第1象限(CRTのパネルスクリーン2Aの右上部) のみ
を示している。
【0010】図12に示されているように、パネル2の上
部, 下部は比較的大なる曲率半径RLで形成されており、
右, 左の側面部は上部, 下部の曲率半径RLとほぼ同程度
の曲率半径RSで形成されており、コーナー部が曲率半径
RL, RSに比較して小さい曲率半径rで形成されている。
そして、コーナー部の曲率半径rは両側の曲率半径RL,
RSと相互に滑らかに接続しており、曲率半径RSとrとの
接点がD1、RLとrとの接点がD2である。また図12におい
て、パネル側面2Bのx,y軸方向の最大位置をそれぞれ
xM, yMとする。
【0011】図13はパネル側面部2Bを金属環10で緊締し
た場合にパネル側面部2Bが受ける面圧を示す模式図であ
る。面圧は側面部2Bに対して鉛直方向に加わるため、図
13においてはパネル側面部2Bの鉛直方向にその面圧の大
きさPを示してある。yMとD2との間の面圧はPLで一定、
D1とD2との間の面圧はPDで一定、D1とxMとの間の面圧は
PSで一定となっている。換言すれば、yMとD2との間, D1
とD2との間, D1とxMとの間はそれぞれのパネル側面部2B
の曲率半径が一定であるため、金属環10で締めた場合に
はそれぞれで一定の面圧となる。なおこの際のパネル側
面部2Bへの面圧はパネル形状の曲率半径に反比例する。
【0012】以下、面圧の具体例を37インチCRT の例で
示す。 xM=(391.8, 0) 、 yM= (0, 309.0) RL=5521.9mm、 RS=5433.8mm、 r=35.0mm PL=5.060 ×10-3kgf/mm2 、 PD=7.983 ×10-1kgf/mm
2 、 PS=5.142 ×10-3kgf/mm2
【0013】ここで注目すべきは、RL, RS>>rであるた
め、金属環10による影響はパネル2のコーナー部である
D1とD2との間でほとんど支配的であるということであ
る。この傾向に関しては、若干の数値の相違はあるもの
の、 CRTのサイズには拘わらない。
【0014】図14, 図15は図13に示されている金属環10
によりCRT 1に発生する応力を図10に示されている短軸
断面S.A., 長軸断面L.A.及び対角軸断面D.A.方向にパネ
ルスクリーン2Aのセンターからネック5までを横軸に、
主応力を縦軸にとって示したグラフである。図14がCRT
1の外面に、図15がCRT 1の内面に発生する応力をそれ
ぞれ示している。ここで特徴的な事実は、パネル側面部
2Bに巻き付けられた金属環10の緊締力による効果は主と
して金属環10の位置を中心としており、特に対角軸断面
D.A.のパネル側面部2Bで効果があるということと、外面
と内面との効果は裏腹の関係にあるということである。
【0015】ところで、上述のような従来のガラスバル
ブのCRT 1に使用されるパネル2,ファンネル4は一般
に使用されている無歪の状態あるいはそれに近い状態の
ガラスバルブを使用している。しかしながら、近年普及
しつつあるプロジェクション用のCRT においてはパネル
2の内面での高圧×電流の負荷が一般のテレビジョン受
像機用のCRT に比して著しく大きいため、使用状態にお
いてガラスパネル2の外面を冷却する対策が採られてい
る。
【0016】また、信頼性を更に向上させるために、た
とえばパネルのスクリーン面の外表面に所謂イオン交換
により圧縮応力を発生させるような強化策も採られてい
る。図16はそのような対策が採られた場合のガラスの断
面における圧縮応力と引張応力の状態を示す模式図であ
り、破線にて示されているように、ガラスパネル2の外
側の表面側に約20μm 程度の圧縮応力層が形成されてい
る。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
CRT は爆縮を回避するために必要な強度を有する厚みの
ガラスで形成されたガラスバルブを使用していたため、
重いという問題があった。
【0018】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、基本的には、従来量産されていたCRT の最
大の欠点の一つである重いという問題を、爆縮の危険性
を回避しつつ改善することを目的としている。
【0019】また、パネルスクリーン周辺部のウエッジ
量の増加を回避し、スクリーンパネルのコーナー部のパ
ネルの側面においてガラスの外表面と内表面とで予備強
化の量を最適化し、歪が一様でないファンネルのアノー
ドボタン近辺及びネックスプライスライン近辺への悪影
響を回避し得、ガラスバルブが破壊した場合にもその後
のガラス破片の大きさが小さくならない受像管の製造方
法の提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明に係る受像管の製
造方法の第1の発明は、受像管の角形スクリーンを構成
するパネルの側面部のコーナー部における引張り応力の
絶対値と圧縮応力の絶対値とを加算した値が短軸及び長
軸断面方向のそれより小さくなるように予備強化を行な
う。
【0021】本発明の受像管の製造方法の第2の発明
は、パネルの例えば短軸断面S.A.で考えた場合に、スク
リーン中央 (パネルスクリーンの中央) から端部 (パネ
ルスクリーンとパネル側面部とが接しているエッジ部)
に向かってパネル外表面の圧縮応力が徐々に大となるよ
うに予備強化を行なう。
【0022】本発明の受像管の製造方法の第3の発明
は、物理的強化処理に際して、パネル部の隅部の側面部
においてのみ前記ガラスバルブの面側に付与される圧
縮応力を内面側に付与される圧縮応力よりも小さくする
ように予備強化を行なう。
【0023】本発明の受像管の製造方法の第4の発明
は、前述の予備強化の影響をファンネルのアノードボタ
ン近辺に対しては他の部分より小さくなるようにする。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【作用】本発明に係る受像管の製造方法の第1の発明で
は、金属環による防爆処理を行なった場合にはその効果
はパネルスクリーンのセンター部よりもコーナー部でよ
り大きく現れるが、予備強化の量がパネルスクリーンの
センター部よりもコーナー部で小さいガラスバルブが得
られるため、最終的には最適化される。
【0029】本発明の受像管の製造方法の第2の発明で
は、スクリーン中央からエッジ部に向かってパネル外表
面の圧縮応力が徐々に大となるように予備強化が行なわ
れ、それに見合った量のパネルスクリーン周辺部のウエ
ッジ量が削減される。
【0030】本発明の受像管の製造方法の第3の発明で
は、コーナー部のパネルの側面においてガラスの外表面
と内表面とで予備強化の量が最適化される。
【0031】本発明の受像管の製造方法の第4の発明で
歪が一様でないファンネルのアノードボタン近辺では
予備強化の影響が小さくなり、悪影響を及ぼす可能性が
回避される。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【実施例】以下、本発明を図面を参照して詳述するが、
まず本発明の原理について説明する。
【0037】図1は一般のガラスに物理的強化処理の一
例としての風冷強化処理を行なった場合の応力の分布を
示している。本実施例発明の受像管の製造方法ではCRT
に従来応用されて来たイオン交換による強化ではなく、
風冷強化により応力を予め付与したガラスバルブを使用
し、更に完成後のCRT にはパネルの外側面を金属環で締
めつける焼きばめを施す。しかもこの際、角形のスクリ
ーンを有するCRT の真空時の応力分布の特性及び金属環
による焼嵌めの特性を加味してより効果あらしめるよう
に前以ってガラスバルブ (パネル2あるいはファンネル
4) に強化を行ない、最適化を図るようにしている。
【0038】以下の説明では、CRT の製造のための部品
としてのガラスバルブ、ここではパネル2あるいはファ
ンネル4の単体の状態で風冷強化のような物理的強化処
理により図1のような応力を発生させる処理を「予備強
化」と称する。本発明ではこの予備強化を行なうことが
前提となっている。
【0039】本発明の受像管の製造方法の第1の発明
は、 CRTの角形スクリーンを構成するパネル2の側面部
2Bのコーナー部における引張り応力σT の絶対値と圧縮
応力σC の絶対値とを加算した値が短軸断面S.A.及び長
軸断面L.A.のそれより小さくなるようにする。換言すれ
ば、予備強化の量がパネル2のコーナー部で少なくなっ
ている。
【0040】その理由は、金属環10による防爆処理を最
終的に行なった後には、その効果は前述の図14に示され
ているように、パネルの側面部2Bのコーナー部の曲率半
径が他の部分より小さいために金属環10による緊締力が
コーナー部により強く現れるためである。このため、予
備強化の量をパネル2のコーナー部で少なくしても問題
は生じない。
【0041】また、図15から明らかなように、パネル2
の内面に関しては逆に引張り応力が現れるため、実際の
CRT の製造工程においてシャドウマスク6の着脱時にコ
ーナー部にシャドウマスク6がぶつかって傷が付く可能
性が高いという現実をも考慮すれば、コーナー部の予備
強化量は小さい方が好ましい。
【0042】本発明の受像管の製造方法の第2の発明
は、たとえばパネル2の短軸断面S.A.で考えると、スク
リーン中央 (パネルスクリーン2Aの中央) からエッジ部
(パネルスクリーン2Aとパネル側面部2Bとが接するエッ
ジ部分) に向かってパネル外表面に対する予備強化によ
る圧縮応力を徐々に大にする。
【0043】これは、以下の理由による。通常のCRT に
おいてその内部を真空にした場合の引張り応力の高い部
分は前述の如く図10にハッチングにて示されている部分
である。その対策として通常のガラスバルブの設計にお
いては、図2に示されているように、パネル2のスクリ
ーン部センターのガラス肉厚TOに対してエッジ部に近い
周辺部の肉厚TEを下記式に従って若干大きくしている。 TE=TO+α(mm)
【0044】ここで、αはCRT のサイズによって決定さ
れる量であって、通常ウエッジと称される。具体的に
は、このウエッジは0.5(小形管) 〜2.0(大型管)mm 程度
のオーダーである。このように、上述の問題に関しては
パネル2の周辺部の肉厚を若干厚くすることにより対策
が可能になる。
【0045】ところが、上述のウエッジを設けることに
より以下のような弊害が現れる。図3は横軸にパネルガ
ラスの肉厚を、縦軸にパネルガラスの透過率をそれぞれ
とって両者の関係を示したグラフである。なお、図3に
おいて、参照符号aを付した線は「クリア」材と称され
る透過率の高いガラス生地の透過率を、同bは「ダーク
ティント」材と称される比較的透過率が低いガラス生地
の透過率を示している。
【0046】従来のCRT はクリア材を使用していたた
め、スクリーン部センターのガラス肉厚TOにおける透過
率TRaTO とエッジ部に近い周辺部の肉厚TEにおける透過
率TRaTE とでは、両者の差は比較的小さく、問題にはな
らなかった。しかし、近年では画質を向上させるため、
具体的にはコントラストの改良のためにガラス生地とし
てはダークティント材が主流となっている。
【0047】ところで、両者の透過率TRbTO とTRbTE と
の差は約5%程度であり、このことは蛍光スクリーンの
明るさが周辺部は中央に比して約5%低下することを意
味する。このため、第2の発明では、図10に示されてい
るハッチングを付した部分の応力を他の部分より小さく
することにより、スクリーンガラスの肉厚の周辺部での
増加を必要最小限とするために、この予備強化を利用す
る。
【0048】これは、金属環10による緊締力のみでは図
14に示されている短軸断面S.A.及び長軸断面L.A.の軸の
重要な部分で十分な効果が得られないためである。この
ため、実際の予備強化では、圧縮応力をパネル中央部で
は0.1 kgf/mm2 程度に、周辺部では0.5 kgf/mm2 程度に
それぞれしてもよい。但し、パネルスクリーンの中央部
の圧縮応力を小さくすることが困難な場合には0.3 kgf/
mm2 程度のように必要以上に強目であっても特に弊害は
ない。以上のようにして、パネルスクリーン周辺部のウ
エッジ量の増加を回避することが可能になる。
【0049】また、本実施例の受像管の製造方法では、
前述の予備強化によるガラスの表面と内面との圧縮応力
の大きさを異ならせてある。
【0050】その理由は、ガラスに発生する真空時の応
力と、金属環10によりそれを補正する分布と、製造工程
ではガラスバルブのどの部分に傷が付き易いか等を考慮
すると、予備強化を実施するに当たってはガラスの外表
面と内表面とに必ずしも等量の応力を付与する必要はな
く、むしろ具体的な状況に即して最適化を図った方が好
結果が得られるためである。
【0051】本発明の受像管の製造方法の第3の発明
は、上述の予備強化によるガラスの表面と内面との圧縮
応力の大きさを異ならせる手法を角形パネルのコーナー
部外側面部にのみ適用し、しかも外表面の圧縮応力を内
表面の圧縮応力より小としている。
【0052】その理由は、前述の図14, 図15に示されて
いるように、パネルスクリーンの外面の方が金属環10の
効果 (−1.0 と+0.7 との差) が大きいことと、内面の
コーナー部はシャドウマスク6が製造工程においてぶつ
かり易く、従って傷が付き易いこととにより、側面部2B
のコーナー部の外面は内面よりも応力が若干低くても問
題がないためである。
【0053】本発明の受像管の製造方法の第4の発明
は、上述の予備強化の影響がファンネル4のアノードボ
タン近辺には小さくなるようにしてある。
【0054】また、上述の予備強化をファンネル4のス
プライスライン12近辺よりネックネック5側の部分には
行なわないようにしてある。
【0055】その理由は、アノードボタン11近辺はファ
ンネル4に金属アノードボタン11をシールした結果、歪
が一様ではなく、予備強化が悪影響を及ぼす可能性があ
るためである。また、ネックスプライスライン12はファ
ンネル4にネック5を継いだ部分であり、これも同じ理
由である。
【0056】さらに、本実施例の受像管の製造方法で
は、前述の予備強化の短軸断面S.A.及び長軸断面L.A.の
スクリーン端から側面部2Bにかけては圧縮応力σC が引
張り応力のσT より常に大となるようにしてある。換言
すれば、図10に示されているようにハッチング部分に対
する予備強化の少なくとも引張り応力σT と圧縮応力σ
C との関係をσC >σT としている。
【0057】この理由は、CRT の量産時点で予備強化の
量には必ずばらつきが生じるが、その際に少なくとも図
10のハッチングで示されている重要な部分では引張応力
が付与されることがないようにするためである。更に何
らかの理由でバルブが破壊に到る場合があり得るが、そ
の場合にはこのハッチングで示されている部分に起因し
ていることが多いため、破壊した後のガラス破片の大き
さを小さくしないためにもσT を小さくすることが望ま
しいからである。これは、 CRTには各国でそれぞれ安全
規格が定められており、それらはCRT が破壊した場合の
ガラス破片の前方への飛び出し量とガラス片の大小とで
規定されているからである。
【0058】以下、本発明の受像管の製造方法の具体的
な実施例について図面を参照して詳述する。
【0059】〔実施例1〕 図4は上述のような予備強化を施した例えば29インチサ
イズの受像管のパネル2について、パネル側面部2Bを短
軸断面(S.A.)〜対角軸断面(D.A.)〜長軸断面(L.A.)と展
開して、その応力の状態を示す模式的グラフである。
【0060】この例では、予備強化の引張り応力σT の
絶対値と圧縮応力σC の絶対値との加算値(|σC |+
|σT |)が短軸断面S.A.と長軸断面L.A.とでは0.5 kg
f/mm2 に、対角軸断面D.A.では0.15kgf/mm2 になるよう
に予備強化を施している。本発明のCRT はこのように予
備強化されたパネルを用いてその内部を真空とし、更に
図13に示されているような金属環10により防爆処理を行
なう。
【0061】〔実施例2〕 図5は例えば29インチサイズの受像管のパネルについ
て、短軸断面S.A.方向に関してパネルセンターからネッ
ク5の端部まで予備強化を行なった場合の応力の状態を
示す模式的グラフである。
【0062】但し、ファンネル4に関しては、パネル2
に予備強化を施した場合の効果に比してその効果は小さ
いため、パネル2のみに予備強化を行なってもよい。本
実施例では、圧縮応力がパネルスクリーン2Aのセンター
部分では−0.3 kgf/mm2 に、エッジ部では−0.5 kgf/mm
2 に、シール部では−0.4 kgf/mm2 にそれぞれなるよう
に予備強化を施している。
【0063】なお、アノードボタン11の近辺,ネックス
プライスライン12の近辺では圧縮応力がほとんど0とな
るように予備強化を施している。換言すれば、それらの
部分では予備強化は行なっていない。
【0064】〔実施例3〕 図6は更に、角形スクリーンのコーナー部,パネル側面
部2Bにおいて、外表面で−0.2 kgf/mm2 の、内面で−0.
4 kgf/mm2 の圧縮応力を付与するように予備強化を施し
た例を示している。
【0065】〔実施例4〕 図7は、少なくとも図10にハッチングにて示されている
部分に施す予備強化の例を示す模式的グラフであり、σ
T =+0.18kgf/mm2 に、σC =−0.3 kgf/mm2になるよ
うに予備強化を施した例を示している。
【0066】
【発明の効果】以上に詳述したように本発明の受像管の
製造方法によれば、特に大型のCRT あるいはスクリーン
パネルのフラット化に伴って重量化したCRT に対して、
長期のガラスバルブの強度に関する信頼性、あるいはバ
ルブの破壊時のガラス破片の飛散に関する性能を犠牲に
することなしに軽量化を図ることが可能になり、ひいて
は低価格化が図れる。
【0067】また、パネルスクリーン周辺部のウエッジ
量の増加が回避されてスクリーンパネル上の透光率が均
一化され、スクリーンパネルのコーナー部のパネルの側
面においてガラスの外表面と内表面とで予備強化の量が
最適化され、歪が一様でないファンネルのアノードボタ
ン近辺及びネックスプライスライン近辺への悪影響が回
避され、更にバルブが破壊した場合にもガラス破片が小
さくなる可能性が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本原理を示すための、一般のガラ
スに物理的強化処理、具体的には風冷強化処理を施した
場合の応力の分布を示すグラフである。
【図2】 通常のガラスバルブの設計におけるパネルの
スクリーン部センターのガラス肉厚とエッジ部に近い周
辺部の肉厚との状態を示す模式図である。
【図3】 パネルガラスの肉厚とその透過率との関係を
示すグラフである。
【図4】 本発明の受像管の製造方法による予備強化を
施した例えば29インチサイズの受像管のパネルについ
て、パネル側面部を短軸断面(S.A.)〜対角軸断面(D.A.)
〜長軸断面(L.A.)と展開してその応力の状態を示す模式
的グラフである。
【図5】 本発明の受像管の製造方法による予備強化を
施した例えば29インチサイズの受像管のパネルについ
て、短軸断面S.A.方向に関してパネルセンターからネッ
クの端部まで予備強化を行なった場合の応力の状態を示
す模式的グラフである。
【図6】 本発明の受像管の製造方法による予備強化を
施した例えば受像管の角形スクリーンのコーナー部,パ
ネル側面部において、外表面で−0.2 kgf/mm2 の、内面
で−0.4 kgf/mm2 の圧縮応力を付与するように予備強化
を行なった状態を示す模式的グラフである。
【図7】 本発明の受像管の製造方法による予備強化を
施した例えば受像管の図10にハッチングにて示されてい
る部分に施す予備強化の例を示す模式的グラフであり、
σT =+0.18kgf/mm2 に、σC =−0.3 kgf/mm2 になる
ように予備強化を行なった状態を示す模式的グラフであ
る。
【図8】 従来の一般的な CRTの構造の一例として角型
のスクリーンを有するシャドウマスク式カラーCRT の一
部断面平面を示す模式図である。
【図9】 従来の一般的な CRTの模式的正面図である。
【図10】 CRT を真空にした場合の前面から向かって
右上の1/4 の部分である第1象限において外面の主応力
の大きい部分にハッチングを付して示す模式的斜視図で
ある。
【図11】 CRT を真空にした場合の前面から向かって
右上の1/4 の部分である第1象限において内面の主応力
の大きい部分にハッチングを付して示す模式的斜視図で
ある。
【図12】 CRTのパネル側面部のZ軸断面で見て最大
形状部を示すモールドマッチラインの部分の形状を示す
模式図である。
【図13】 CRT のパネル側面部を金属環で緊締した場
合にパネル側面部が受ける面圧を示す模式図である。
【図14】 CRT のパネル側面部を金属環で緊締した場
合にCRT の外面に発生する応力を示すグラフである。
【図15】 CRT のパネル側面部を金属環で緊締した場
合にCRT の内面に発生する応力を示すグラフである。
【図16】 CRT のパネルのスクリーン面の外表面に所
謂イオン交換により圧縮応力を発生させて強化策も採っ
た場合のガラスの断面における圧縮応力と引張応力の状
態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 CRT 2 パネル 2A パネルスクリーン 2B 側面部 4 ファンネル 5 ネック 7 フリットシール部 10 金属環 11 アノードボタン 12 ネックスプライスライン ライスライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 9/24 H01J 29/86

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 角形のパネルスクリーンとその外周部を
    囲繞して一端部へ突出した側面部とを有するパネル部
    と、前記パネル部の側面部に接続し、アノードボタンが
    シールされたファンネル部と、前記ファンネル部に接続
    するネック部とで構成されるガラスバルブをガラス材で
    形成し、前記ガラスバルブの内部を排気処理し、爆縮を
    防止するために前記排気処理の後または前に前記パネル
    部の外側面を金属環で緊締する受像管の製造方法におい
    て、 前記ガラスバルブにその肉厚方向にほぼ肉厚の中心部で
    は引張応力を、表面では圧縮応力をそれぞれ予め付与す
    べく物理的強化処理を施すと共に、前記物理的強化処理
    に際して、前記パネル部単体での側面部における応力分
    布を角型のパネルスクリーンの隅部近辺では引張り応力
    の絶対値と圧縮応力の絶対値とを加算した値が短軸及び
    長軸断面方向のそれより小さくすることを特徴とする受
    像管の製造方法。
  2. 【請求項2】 角形のパネルスクリーンとその外周部を
    囲繞して一端部へ突出した側面部とを有するパネル部
    と、前記パネル部の側面部に接続し、アノードボタンが
    シールされたファンネル部と、前記ファンネル部に接続
    するネック部とで構成されるガラスバルブをガラス材で
    形成し、前記ガラスバルブの内部を排気処理し、爆縮を
    防止するために前記排気処理の後または前に前記パネル
    部の外側面を金属環で緊締する受像管の製造方法におい
    て、 前記ガラスバルブにその肉厚方向にほぼ肉厚の中心部で
    は引張応力を、表面では圧縮応力をそれぞれ予め付与す
    べく物理的強化処理を施すと共に、前記物理的強化処理
    に際して、前記パネルスクリーンの中心から外側へ向か
    って圧縮応力を除々に大とすることを特徴とする受像管
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 角形のパネルスクリーンとその外周部を
    囲繞して一端部へ突出した側面部とを有するパネル部
    と、前記パネル部の側面部に接続し、アノードボタンが
    シールされたファンネル部と、前記ファンネル部に接続
    するネック部とで構成されるガラスバルブをガラス材で
    形成し、前記ガラスバルブの内部を排気処理し、爆縮を
    防止するために前記排気処理の後または前に前記パネル
    部の外側面を金属環で緊締する受像管の製造方法におい
    て、 前記ガラスバルブにその肉厚方向にほぼ肉厚の中心部で
    は引張応力を、表面及び内面では圧縮応力をそれぞれ予
    め付与すべく物理的強化処理を施すと共に、前記物理的
    強化処理に際して、パネル部の隅部の側面部においての
    強化処理に際して、パネル部の隅部の側面部においての
    強化処理に際して、パネル部の隅部の側面部においての
    み前記ガラスバルブの面側に付与される圧縮応力を内
    面側に付与される圧縮応力よりも小さくすることを特徴
    とする受像管の製造方法。
  4. 【請求項4】 角形のパネルスクリーンとその外周部を
    囲繞して一端部へ突出した側面部とを有するパネル部
    と、前記パネル部の側面部に接続し、アノードボタンが
    シールされたファンネル部と、前記ファンネル部に接続
    するネック部とで構成されるガラスバルブをガラスで形
    成し、前記ガラスバブの内部を排気処理し、爆縮を防止
    するために前記排気処理の後または前に前記パネル部の
    外側面を金属環で緊締する受像管の製造方法において、 前記ガラスバルブにその肉厚方向にほぼ肉厚の中心部で
    は引張応力を、表面では圧縮応力をそれぞれ予め付与す
    べく物理的強化処理を施すと共に、前記物理的強化処理
    に際して、少なくとも前記アノードボタン近辺には物理
    的強化処理の影響が他の部分よりも小さくなるようにす
    ることを特徴とする受像管の製造方法。
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