JP3212977B2 - 加工性に優れる溶融めっき鋼材 - Google Patents

加工性に優れる溶融めっき鋼材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工性、特に摺動
時の耐きず付き性および巻き付け加工性に優れた溶融め
っき鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】加工性の優れる溶融めっき鋼板について
は従来より幾つかの提案がなされており、例えば、本発
明者らも特開平4−147955号公報にて加工部耐食
性が優れるZn−Mg−Alめっき鋼板の製造方法を開
示している。建材、土木分野のガードレール、防音壁あ
るいは河川敷きの護岸用のカゴマット等を中心に寿命延
長の観点から高耐食性めっき鋼板および鋼線が今後多く
使用される可能性が大である。特に、ガードレール支柱
などの用途においては、その加工工程においてロールフ
ォーミングで加工されたり、バイト研削されたりするた
め、通常の溶融Znめっき鋼板の場合、ロールやバイト
の切り子による傷がつきやすい。また、カゴマット用の
Znめっき線材においては、巻き線あるいは網線加工に
おいてもめっき層の傷や亀裂が生じやすく耐食性劣化な
どの原因となりやすいためその改良が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これに対して、発明者
らが特開平4−147955号公報にて開示したZn−
Mg−Alめっき鋼板は、特に加工後の耐赤錆性が通常
の溶融亜鉛めっき鋼板よりも大幅に優れるめっき鋼板で
あるが、なお摺動時の耐きず付き性および巻き付け加工
性において改良の余地を残していた。本発明は、加工性
に優れた溶融Znめっき鋼材、すなわち、摺動や巻き付
け加工を受けた場合の耐きずつき性およびめっき密着性
および加工部の耐食性に優れた溶融Znめっき鋼材を提
供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者らは、各種のめっ
きサンプルをめっき浴組成および冷却条件などを変化さ
せて作製し、めっき層構造と加工時の摺動性、即ち、め
っき鋼板の摺動試験およびめっき線材の巻き付け試験時
のめっき層の耐きずつき性、および加工部の耐食性の関
係を詳細に調査した結果から、めっき層が有するべき組
成および組織を特定することにより、本発明を完成させ
たものであり、その要旨とするところは、 (1)表面に有するめっき層が、重量%で、Al:0.
1〜40%、Mg:0.1〜10%含有し、残部がZn
および不可避不純物からなり、かつ、Zn−Al−Mg
系の母相に、長径が1μm以上30μm以下のMg系金
属間化合物相が、含有率:0.1〜50容積%にて分散
している組織を有することを特徴とする加工性に優れる
溶融めっき鋼材。
【0005】(2)前記めっき層が、Si,Fe,N
i,Co,Ti、Sb,Pb,Sn,Cuの元素のう
ち、1種もしくは2種以上を、合計で3重量%以下、さ
らに含有することを特徴とする前記(1)に記載の加工
性に優れる溶融めっき鋼材。
【0006】(3)前記めっき層が、Zn−Al−Mg
系の母相に、長径が1μm以上30μm以下のMg系金
属間化合物相が、含有率:0.1〜50容積%にて分散
しており、Zn単相とAl単相の一方もしくは両方を、
さらに含有する組織を有することを特徴とする前記
(1)または(2)に記載の加工性に優れた溶融めっき
鋼材。(4) 前記めっき層の下層として、Niめっき層を0.
2〜2g/m2 有することを特徴とする前記(1)〜
(3)のいずれか1項に記載の加工性に優れた溶融めっ
き鋼材、である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。本発明は、めっき層の構造がZn―Mg−
Al合金よりなる母相ととその中に分散した所定の大き
さ以上のMg系金属間化合物相とで構成され、摺動性に
優れることを特徴とする溶融Zn合金めっき鋼材であ
り、この構造により、厳しい加工を受けた場合のめっき
層の耐きずつき性、密着性、加工部の耐食性が非常に良
好となるところに最大の技術上のポイントがある。
【0008】以下に本発明における各条件の限定理由に
ついて述べる。まず、めっき層の構造がZn―Mg−A
l合金Alよりなる母相とその中に特定の大きさ、容積
%の分散したMg系金属間化合物相とで構成されるとし
たのは、この場合にめっき層の耐摺動性、加工部の耐食
性が極めて良好となるためである。まず、めっき層の母
相の組成としてAl0.1〜40%、Mg0.1〜10
%含有するZn−Al―Mg合金としたのは、本範囲に
おいてめっき層の耐摺動性、加工部の耐食性が極めて良
好となるためである。Al0.1%未満では、特にめっ
き層―地鉄界面にFe−Zn合金層が発達しすぎ、加工
性および加工部の耐食性が劣化する。また、Alが40
%を超えるとスパングルの生成にともない、表面凹凸が
大となるためか耐摺動性が劣化する。
【0009】また、Mg0.1〜10%としたのは、本
範囲においてめっき層の耐摺動性、加工部の耐食性が極
めて良好となるためである。Mgが0.1%未満では、
特に加工部の耐食性が劣化し、10%を超えると加工性
が劣化する。母相としてMg0.1〜10%含有するA
l合金よりなる場合も耐摺動性、加工部の耐食性も良好
である。Mgの限定理由はZn−Mg−Alめっきの場
合と同様である。
【0010】また、Mg系金属間化合物相の大きさを長
径で1μm以上、容積率で0.1−50%としたのは、
この場合に加工部の摺動性および加工部の耐食性が優れ
るためである。大きさが1μm未満、容積率で0.1%
未満では、Mg系金属間化合物相の加工性および加工部
の耐食性への効果が認められなくなる。また、容積率が
50%を超えると加工性が劣化するためである。本Mg
系金属間化合物相の大きさ、容積%は、めっき層の断面
をSEM―EPMA(1000倍)で観察することによ
りその面積割合から換算することにより同定した。
【0011】このように本発明の特定のめっき層構成に
より加工性(摺動性)および加工部の耐食性が良好とな
る理由は、未だ明確ではないが、母相のめっき相がバイ
ンダー、分散したMg系金属間化合物相が、耐きずつき
性を発現する硬いバリヤー相として複合的に働くためと
思われる。また、腐蝕環境においてMg化合物中のMg
が溶出し、傷部の地鉄露出部に対して安定な水酸化物皮
膜を構成するといったインヒビター的な効果が働くこと
により加工部の耐食性も向上するものと考えられる。ま
た、めっき層のZn−Mg−Al合金母相の中にZn単
相、あるいはAl単相が混合されている場合を本発明と
したのは、冷却条件などによっては、Zn−Mg−Al
合金母相の中にZn単相、あるいはAl単相が混合され
ることがあるが、これらの相がめっき層中に混合しても
耐傷付き性には影響なく、むしろ、めっき密着性の観点
からは、良好であったためである。
【0012】また、Mg系金属間化合物として、Mg
−Zn系,Mg−Sn系,Mg−Si系,Mg−Fe
系,Mg−Ni系,Mg−Al系,Mg−Ti系Mg
系金属間化合物のなかでも特に耐摺動性、および耐食性
が極めて良好ならしめるため好適である。化合物の形態
は特に限定するところではないが、望ましくはMgZn
2 、Mg2 Sn、Mg2 Siなどが最適である。さら
に、Zn−Mg−Al合金母相の中にSi,Fe,N
i,Co,Ti、Sb,Pb,Sn,Cuの元素を単独
あるいは複合で3%以下含有している場合は、耐摺動性
がさらに良好である。下限は特に限定しないが、3%を
超えると効果が飽和するだけでなく、めっき密着性など
に悪影響を与える。本発明のめっきの付着量については
特に制約は設けないが、耐食性の観点から10g/m2
以上、加工性の観点からすると350g/m2 以下であ
ることが望ましい。
【0013】また、さらに厳しい切断、バイト加工など
を受けた際のめっき密着性をさらに向上させるために下
層としてNiめっき層が0.2〜2g/m2 が有効であ
る。0.2/m2 以上でこの効果が出始め、2g/m2
で飽和する。なお、本発明の下地鋼材としては、鋼板の
みならず、線材、形鋼、条鋼、鋼管など種々の鋼材が使
用できる。鋼板としては、熱延鋼板、冷延鋼板共に使用
でき、鋼種もAlキルド鋼、Ti,Nb等を添加した極
低炭素鋼板、およびこれらにP、Si、Mn等の強化元
素を添加した高強度鋼、ステンレス鋼板 等種々のもの
が適用できる。本発明品の製造方法については、特に限
定することなく鋼板の連続めっき、鋼材や線材のどぶづ
けめっき法など種々の方法が適用できる。めっき層中に
所定のMg金属間化合物相を分散させるために、望まし
い方法としては、めっき層がまだ溶融状態のうちに冷却
速度を5゜C/sec以上程度に制御することなどが最
適である。
【0014】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に
説明する。表1に作成しためっきサンプルと加工時の摺
動性およびめっき密着性との関係を示す。めっき浴中の
各成分を変化させて、前処理還元処理した鋼板および線
材を460〜550℃の範囲で溶融めっきした。一部溶
融めっき後の凝固過程の冷却条件(冷却速度)を変化さ
せて各種構造よりなるZn−Mg−Alめっき鋼板を作
製した。めっき付着量は、135g/m2 とした。ま
た、一部のめっき鋼板には電気めっきでプレNiめっき
したサンプルも用いた。評価として、Mg金属間化合物
相の分布面積の割合をSEM―EPMA(1000倍)
で元素分布を調べることによって調査した。また摺動性
試験として傷付き性をHeidon摺動試験、加工部の
密着性を線材の巻き付け試験、耐食性試験方法として折
り曲げ加工(0T曲げ)したサンプルを35゜C、0.
5%NaClと乾燥工程(50゜C、60%)と湿潤工
程(49゜C、98%)を組み合わせたを腐食サイクル
テストで赤錆性を評価した。
【0015】
【表1】
【0016】評価基準は次の通りである。 1.めっき層中のMg系金属間化合物相の容積率の測定 めっき層の断面EPMAの1000倍視野にて面積率を
測定し容積率に換算。 2.耐きずつき性の評価 (1)Heidon試験機 鋼球をすべらせた場合のめっき鋼板表面の傷の程度を目
視観察
【0017】(2)巻き付け剥離試験 径6mmのめっき線材を同一径の線材に6回巻き付けて
めっきの亀裂および剥離具合を調査。
【0018】3.加工部の耐食性
【0019】本発明のめっき相構造を有するめっき鋼鈑
は、比較材に比べて、摺動加工時の耐きずつき性、線材
の巻き付け加工部のめっき密着性、加工部耐食性共に良
好である。また、本発明のうち、さらに、Zn−Mg−
Alめっき層の下層にNiめっき層を施したものは、めっ
き単層の場合に比較して、線材加工時のめっき密着性が
さらに向上している。
【0020】
【発明の効果】本発明のめっき鋼鈑は、加工性特に摺動
加工時の耐きずつき性、線材の加工性、加工部の耐食性
に優れることから、建材、土木部材等の各種用途に有用
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 和彦 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (72)発明者 田中 暁 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社 君津製鐵所内 (72)発明者 末宗 義広 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社 君津製鐵所内 (72)発明者 真木 純 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1−1 新 日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 新頭 英俊 兵庫県姫路市広畑区富士町1番地 新日 本製鐵株式会社 広畑製鐵所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 Al:0.1〜40%、 Mg:0.1〜10% 含有し、残部がZnおよび不可避不純物からなり、か
    つ、Zn−Al−Mg系の母相に、長径が1μm以上
    0μm以下のMg系金属間化合物相が、含有率:0.1
    〜50容積%にて分散している組織を有するめっき層
    を、表面に有することを特徴とする加工性に優れる溶融
    めっき鋼材。
  2. 【請求項2】 前記めっき層が、Si,Fe,Ni,C
    o,Ti、Sb,Pb,Sn,Cuの元素のうち、1種
    もしくは2種以上を、合計で3重量%以下、さらに含有
    することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れる
    溶融めっき鋼材。
  3. 【請求項3】 前記めっき層が、Zn−Al−Mg系の
    母相に、長径が1μm以上30μm以下のMg系金属間
    化合物相が、含有率:0.1〜50容積%にて分散して
    おり、Zn単相とAl単相の一方もしくは両方を、さら
    に含有する組織を有することを特徴とする請求項1また
    は2に記載の加工性に優れた溶融めっき鋼材。
  4. 【請求項4】 前記めっき層の下層として、Niめっき
    層を0.2〜2g/m 2 有することを特徴とする請求項
    1〜3のいずれか1項に記載の加工性に優れた溶融めっ
    き鋼材。
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