JP7436948B1 - めっき鋼板 - Google Patents

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将明 浦中
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Abstract

このめっき鋼板は、鋼板と、前記鋼板の表面に配されためっき層とを備え、前記めっき層の化学組成が、Al:10.0~25.0%、Mg:3.0~10.0%、Fe:0.01~2.00%、Si:0.00%超、2.00%以下を含有し、残部がZn及び不純物を含み、Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、前記めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件で、前記めっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合にMg21Zn25相の(300)面とη-Zn相の(002)面のX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が0.3超である。

Description

本発明は、めっき鋼板に関する。
本願は、2022年8月18日に、日本に出願された特願2022-130521号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
Al及びMgを含有する溶融Znめっき層を有するZn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は、優れた耐食性を有する。そのため、例えば建材などの耐食性を求められる構造部材の材料として、Zn-Al-Mg系溶融めっき鋼板は幅広く用いられている。
例えば特許文献1には、鋼材と、鋼材の表面に配されたZn-Al-Mg合金層を含むめっき層と、を有するめっき鋼材であって、Zn-Al-Mg合金層がZn相を有し、かつZn相中にMg-Sn金属間化合物相を含有し、めっき層が、質量%で、Zn:65.0%超、Al:5.0%超~25.0%未満、Mg:3.0%超~12.5%未満、Sn:0.1%~20.0%及び不純物からなり、かつ下記式1~式5を満たす化学組成を有するめつき鋼材が記載されている。
式1:Bi+In<Sn
式2:Y+La+Ce≦Ca
式3:Si<Sn
式4:O≦Cr+Ti+Ni+Co+V+Nb+Cu+Mn<0.25
式5:O≦Sr+Sb+Pb+B<0.5
特許文献2には、鋼材と、鋼材の表面に配され、Zn-Al-Mg合金層を含むめっき層と、を有するめっき鋼材であって、Zn-Al-Mg合金層の断面において、MgZn相の面積分率が45~75%、MgZn相およびAl相の合計の面積分率が70%以上、かつZn-Al-MgZn三元共晶組織の面積分率が0~5%であり、めっき層が、質量%で、Zn:44.90%超~79.90%未満、Al:15%超~35%未満、Mg:5%超~20%未満、Ca:0.1%~3.0%未満、及び不純物からなり、元素群AをY、La及びCe、元素群BをCr、Ti、Ni、Co、V、Nb、Cu及びMn、元素群CをSr、Sb及びPb、並びに元素群DをSn、Bi及びInとした場合、元素群Aから選ばれる元素の合計の含有量が0%~0.5%であり、Caと前記元素群Aから選ばれる元素との合計の含有量が0.1%~3.0%未満であり、元素群Bから選ばれる元素の合計の含有量が0%~0.25%であり、元素群Cから選ばれる元素の合計の含有量が0%~0.5%であり、元素群Dから選ばれる元素の合計の含有量が0%~20.00%である化学組成を有するめっき鋼材が記載されている。
特許文献3には、鋼板表面にめっき皮膜を有する溶融Al-Zn-Mg-Siめっき鋼板であって、めっき皮膜は、下地鋼板との界面に存在する界面合金層と該合金層の上に存在する主層とからなり、25~80質量%のAl、0.6超え~15質量%のSi及び0.1超え~25質量%のMgを含有し、主層の表面におけるMgSiの面積率が10%以上である溶融Al-Zn-Mg-Siめっき鋼板が記載されている。
近年、屋根や壁材などに使用される建材用途の溶融めっき鋼材には、めっき層そのものの耐食性である平面耐食性と、切断端面部の耐食性である端面耐食性の両方に優れることが求められる。一方で、平面耐食性と端面耐食性の両方を高いレベルで両立する技術は、検討されていなかった。
国際公開第2018/139619号 国際公開第2018/139620号 日本国特開2016-166414号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、平面耐食性と端面耐食性の両方に優れるめっき鋼板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1]鋼板と、前記鋼板の表面に配されためっき層と、を備え、
前記めっき層の化学組成が、質量%で、
Al:10.0~25.0%、
Mg:3.0~10.0%、
Fe:0.01~2.00%、
Si:0.00%超、2.00%以下、並びに
下記A群、B群およびC群からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、
残部がZn及び不純物からなり、
Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、前記めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件で、前記めっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合に、Mg21Zn25相の(300)面とη-Zn相の(002)面のX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が0.3超である、めっき鋼板。
[A群]
Ni:0~1.000%
[B群]
Ca:0~0.05%
[C群]
Sb:0~0.50%、
Pb:0~0.50%、
Cu:0~1.00%、
Sn:0~1.00%、
Ti:0~1.00%、
Cr:0~1.00%、
Nb:0~1.00%、
Zr:0~1.00%、
Mn:0~1.00%、
Mo:0~1.00%、
Ag:0~1.00%、
Li:0~1.00%、
La:0~0.50%、
Ce:0~0.50%、
B:0~0.50%、
Y:0~0.50%、
P:0~0.50%、
Sr:0~0.50%、
Co:0~0.500%、
Bi:0~0.500%、
In:0~0.500%、
V:0~0.500%、および
W:0~0.500%の1種または2種以上を合計で0~5.000%
[2]前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が1.0以上である、[1]に記載のめっき鋼板。
[3]前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が5.0以上である、[1]に記載のめっき鋼板。
[4]前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が10.0以上である、[1]に記載のめっき鋼板。
[5]前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Sn:0.05~0.5%を含有し、
前記めっき層に対するθ-2θ法によるX線回折測定において、前記めっき層中にMgSn相が検出される、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のめっき鋼板。
[6]前記めっき層の前記化学組成が、前記A群を含有する、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のめっき鋼板。
[7]前記めっき層の前記化学組成が、前記B群を含有する、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のめっき鋼板。
[8]前記めっき層の前記化学組成が、前記C群を含有する、[1]乃至[4]の何れか一項に記載のめっき鋼板。
本発明によれば、平面耐食性と端面耐食性の両方に優れるめっき鋼板を提供できる。
本発明の実施形態である溶融めっき鋼材の断面模式図である。
めっき鋼板が切断されることにより、めっき鋼板の切断端面には、鋼板の端面が露出される。この鋼板の端面の耐食性(以下、端面耐食性という)は、一般に、次のようにして達成するものとされる。すなわち、鋼板表面にめっき層として、地鉄よりもイオン化傾向が高い元素(例えばZn、Mg等)を含むめっき層を鋼板表面に形成し、地鉄に対してめっき層を優先的に腐食させることにより腐食生成物を生成させ、当該腐食生成物によって鋼板の端面を防食することにより達成される。このため、めっき層による端面耐食性の向上と、めっき層自体の耐食性である平面耐食性の向上は、両立しない関係にある。
そこで、本発明者らが、Al及びMgを含有するめっき層の平面耐食性および端面耐食性の両方を向上させるために鋭意検討した。Al、Mg、SiおよびZnを含有するめっき層には、Mg及びZnを含む各種のMg-Zn化合物が形成される。このようなMg-Zn化合物のうち、Mg21Zn25は、鋼板端面の耐食性に寄与し得るMgを比較的多く含有する。このMg21Zn25について本発明者らが更に検討したところ、めっき層の製造条件を調整することによって、めっき層の表層にMg21Zn25を多く晶出させることができ、これにより、端面耐食性を向上できることを見出した。めっき層の表面にMg21Zn25相が多く存在することで、めっき層の腐食の初期段階からMg21Zn25相が腐食されるようになる。Mg21Zn25相の腐食に伴い、腐食生成物としてMgイオンが生成し、このMgイオンが鋼板の端面を防食するようになる。
また、Mg21Zn25相がめっき層の表面に多く存在するために腐食の初期段階からMg21Zn25相の腐食生成物による端面耐食性の向上が図れるので、めっき層の平面耐食性を犠牲にすることなく端面耐食性が高められる。これにより、めっき層の平面耐食性と、端面耐食性の両立が図られる。
以下、本発明の実施形態であるめっき鋼板について説明する。
本実施形態のめっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に配されためっき層と、を備え、めっき層の化学組成が、質量%で、Al:10.0~25.0%、Mg:3.0~10.0%、Fe:0.01~2.00%、Si:0.00%超、2.00%以下、を含有し、更に、下記A群、B群およびC群からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、残部がZn及び不純物からなり、Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、前記めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件で前記めっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合に、Mg21Zn25相の(300)面とη-Zn相の(002)面のX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が0.3超である。
[A群]Ni:0~1.000%
[B群]Ca:0~0.05%
[C群]Sb:0~0.50%、Pb:0~0.50%、Cu:0~1.00%、Sn:0~1.00%、Ti:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、Mn:0~1.00%、Mo:0~1.00%、Ag:0~1.00%、Li:0~1.00%、La:0~0.50%、Ce:0~0.50%、B:0~0.50%、Y:0~0.50%、P:0~0.50%、Sr:0~0.50%、Co:0~0.500%、Bi:0~0.500%、In:0~0.500%、V:0~0.500%、および、W:0~0.500%の1種または2種以上を合計で0~5.000%
以下の説明において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。以下に記載する「~」を挟んで記載される数値限定範囲には、下限値および上限値がその範囲に含まれる。「未満」、「超」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。
化学組成の元素の含有量は、元素濃度(例えば、Zn濃度、Mg濃度等)と表記することがある。「平面耐食性」とは、めっき層(具体的にはZn-Al-Mg合金層)自体の腐食し難い性質を示す。「端面耐食性」とは、鋼板むき出し部(例えばめっき鋼板の切断端面)での鋼板の腐食を抑制する性質を示す。「めっき層」とは、いわゆる溶融めっき処理によって製造されためっき皮膜を意味する。
図1に示すように、本実施形態に係るめっき鋼板1は、鋼板11を有する。鋼板11の形状には、特に制限はない。また、鋼板11は例えば、鋼管、土木建築材(柵渠、コルゲートパイプ、排水溝蓋、飛砂防止板、ボルト、金網、ガードレール、止水壁等)、家電部材(エアコンの室外機の筐体等)、自動車部品(足回り部材等)などに成形加工された素地鋼板であってもよい。成形加工は、例えば、プレス加工、ロールフォーミング、曲げ加工などの種々の塑性加工手法である。
鋼板11の材質には、特に制限はない。鋼板11は、例えば、一般鋼、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の強化元素含有鋼等)などの各種の鋼板とすることができる。鋼板11を、JIS G 3302:2010に記載されている熱延鋼板、熱延鋼帯、冷延鋼板、及び冷延鋼帯などとしてもよい。鋼板の製造方法(熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等)、及びその具体的な製造条件等についても、特に制限されない。
後述するように、めっき原板となる鋼板には、表面粗さを調整した鋼板11を用いる。鋼板の表面粗さの調整は、例えば、圧延ロールまたはスキンパス用のロールの表面を所定の表面粗さにしておき、圧延時またはスキンパス時にロールの表面形状を転写する等の方法により行うことが可能である。
本実施形態に係るめっき鋼板1は、鋼板11の表面に配されためっき層12を有する。本実施形態に係るめっき鋼板1のめっき層12は、後述する化学組成に起因して、主にZn-Al-Mg合金層から構成される。また、本実施形態に係るめっき鋼板1のめっき層12は、鋼板11とZn-Al-Mg合金層との間にFeおよびAlを主成分とする界面合金層を含んでもよい。つまり、めっき層12は、Zn-Al-Mg合金層の単層構造であってもよく、Zn-Al-Mg合金層と界面合金層とを含む積層構造であってもよい。
本実施形態に係るめっき層の化学組成は、Znと、その他の合金元素とから構成される。めっき層の化学組成について、以下に詳細に説明する。なお、濃度の下限値が0%であると説明される元素は、本実施形態に係るめっき鋼板の課題を解決するために必須ではないが、特性の向上などを目的としてめっき層に含まれることが許容される任意元素である。
<Al:10.0~25.0%>
Alは、平面耐食性、端面耐食性及び加工性の向上に寄与する。従って、Al濃度は10.0%以上とする。Al濃度を11.0%以上、12.0%以上、又は15.0%以上としてもよい。一方、Alが過剰である場合、Mg濃度およびZn濃度が相対的に低下して、端面耐食性が劣化する。よって、Al濃度は25.0%以下とする。Al濃度を24.0%以下、22.0%以下、又は20.0%以下としてもよい。
<Mg:3.0~10.0%>
Mgは、平面耐食性および端面耐食性を確保するために必須の元素である。従って、Mg濃度は、3.0%以上とする。Mg濃度を4.0%以上、5.0%以上、又は6.0%以上としてもよい。一方、Mg濃度が過剰であると、加工性、特にパウダリング性が劣化し、更に平面耐食性が劣化する場合がある。よって、Mg濃度は10.0%以下とする。Mg濃度を8.0%以下または7.0%以下としてもよい。
<Fe:0.01~2.00%>
Feの濃度は0%でもよいが、Feがめっき層に0.01%以上含有されてもよい。Fe濃度が2.00%以下であれば、めっき層の性能に悪影響がないことが確認されている。Fe濃度を例えば0.05%以上、0.10%以上、0.50%以上、又は1.00%以上としてもよい。Fe濃度は2.00%以下とする。Fe濃度は、1.80%以下または1.50%以下としてもよい。Feは、母材鋼板から混入する場合があるため、Fe濃度は0.05%以上でもよい。
<Si:0.00%超、2.00%以下>
Siは、平面耐食性の向上に寄与する。従って、Si濃度を0.00%超、0.01%以上、0.02%以上または0.06%以上としてもよい。一方、Si濃度が過剰であると、平面耐食性および端面耐食性が劣化する。従って、Si濃度は2.00%以下とする。Si濃度を1.80%以下、1.60%以下、1.20%以下または1.00%以下としてもよい。
更に、本実施形態のめっき層は、下記A群、B群、C群からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
[A群]Ni:0~1.000%
[B群]Ca:0~0.05%
[C群]Sb:0~0.50%、Pb:0~0.50%、Cu:0~1.00%、Sn:0~1.00%、Ti:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、Mn:0~1.00%、Mo:0~1.00%、Ag:0~1.00%、Li:0~1.00%、La:0~0.50%、Ce:0~0.50%、B:0~0.50%、Y:0~0.50%、P:0~0.50%、Sr:0~0.50%、Co:0~0.500%、Bi:0~0.500%、In:0~0.500%、V:0~0.500%、および、W:0~0.500%の1種または2種以上を合計で0~5.000%
<Ni:0~1.000%>
A群としてのNiの濃度は0%でもよい。一方、Niは端面耐食性の向上に寄与する。従って、Ni濃度を0.050%以上、0.080%以上、又は0.100%以上としてもよい。一方、Ni濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、Ni濃度は、1.000%以下とする。Ni濃度を0.800%以下、0.600%以下、又は0.500%以下、0.100%以下、0.010%以下としてもよい。
<Ca:0~0.05%>
B群としてのCa濃度は0%であってもよい。一方、Caは、平面耐食性を付与するのに最適なMg溶出量を調整することができる元素である。従って、Ca濃度は0.005%以上または0.01%以上であってもよい。一方、Ca濃度が過剰であると、平面耐食性及び加工性が劣化する。従って、Ca濃度は0.05%以下とする。Ca濃度を0.04%以下としてもよい。
更に、本実施形態に係るめっき層には、C群として、Sb:0~0.50%、Pb:0~0.50%、Cu:0~1.00%、Sn:0~1.00%、Ti:0~1.00%、Cr:0~1.00%、Nb:0~1.00%、Zr:0~1.00%、Mn:0~1.00%、Mo:0~1.00%、Ag:0~1.00%、Li:0~1.00%、La:0~0.50%、Ce:0~0.50%、B:0~0.50%、Y:0~0.50%、P:0~0.50%、Sr:0~0.50%、Co:0~0.500%、Bi:0~0.500%、In:0~0.500%、V:0~0.500%、および、W:0~0.500%の1種または2種以上の元素が含有されてもよい。これらの元素の合計は0~5.000%とされる。合計が5.000%を超えると、平面耐食性または端面耐食性が低下する場合がある。
<Sb、Pb:それぞれ0~0.50%>
Sb、Pbの濃度は0%でもよい。一方、Sb、Pbは、端面耐食性の向上に寄与する。従って、Sb、Pbそれぞれの濃度を0.05%以上、0.10%以上、又は0.15%以上としてもよい。一方、Sb、Pbの濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、Sb、Pbそれぞれの濃度は0.50%以下とする。Sb、Pbそれぞれの濃度を0.40%以下、0.30%以下、0.25%以下または0.10%以下としてもよい。
<Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLi:それぞれ0~1.00%>
Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLiの濃度はそれぞれ0%でもよい。一方、これらは端面耐食性の向上に寄与する。従って、Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLiそれぞれの濃度を0.05%以上、0.08%以上、又は0.10%以上としてもよい。一方、Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLiの濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLiそれぞれの濃度は、1.00%以下とする。Cu、Ti、Cr、Nb、Zr、Mn、Mo、AgおよびLiそれぞれの濃度を0.80%以下、0.70%以下、0.60%以下、0.10%以下または0.05%以下としてもよい。
<Sn:0~1.00%>
Sn濃度は0%であってもよい。一方、Snは、Mgと金属間化合物を形成し、めっき層の端面耐食性を向上させる元素である。従って、Sn濃度を0.05%以上、0.10%以上または0.20%以上としてもよい。ただし、Sn濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、Sn濃度は1.00%以下とする。Sn濃度を0.80%以下、0.60%以下、0.50%以下または0.10%以下としてもよい。
<La、Ce、B、Y、PおよびSr:それぞれ0~0.50%>
La、Ce、B、Y、PおよびSrそれぞれの濃度は0%でもよい。一方、La、Ce、B、Y、PおよびSrは、端面耐食性の向上に寄与する。従って、La、Ce、B、Y、PおよびSrの濃度それぞれを0.10%以上、0.15%以上、又は0.20%以上としてもよい。一方、La、Ce、B、Y、PおよびSrの濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、La、Ce、B、Y、PおよびSrの濃度それぞれを、0.50%以下とする。La、Ce、B、Y、PおよびSrの濃度それぞれを0.40%以下、0.30%以下、0.10%以下または0.05%以下としてもよい。
<Co、Bi、In、V、W:それぞれ0~0.500%>
Co、Bi、In、V、Wそれぞれの濃度は0%でもよい。一方、Co,Bi、In、V、Wは、端面耐食性の向上に寄与する。従って、Co,Bi、In、V、Wの濃度それぞれを0.100%以上、0.150%以上、又は0.200%以上としてもよい。一方、Co,Bi、In、V、Wの濃度が過剰であると、平面耐食性が劣化する。従って、Co,Bi、In、V、Wの濃度それぞれを、0.5%以下とする。Co,Bi、In、V、Wの濃度それぞれを0.400%以下、0.300%以下、0.100%以下、0.050%以下または0.010%以下としてもよい。
<残部:Zn及び不純物>
本実施形態に係るめっき層の成分の残部は、Zn及び不純物である。Znは、平面耐食性及び端面耐食性をめっき層にもたらす元素である。不純物は、原材料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分、また本実施形態のめっき鋼板に悪影響を与えない成分を指す。例えば、めっき層には、素地鋼板とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。
めっき層の化学組成は、次の方法により測定する。まず、鋼板の腐食を抑制するインヒビターを含有した酸を用いて、めっき層を剥離溶解した酸液を得る。次に、得られた酸液をICP分析する。これにより、めっき層の化学組成を得ることができる。酸種は、めっき層を溶解できる酸であれば、特に制限はない。なお、上述の手段により測定される化学組成は、めっき層全体の平均化学組成である。
次に、めっき層の金属組織について説明する。
本実施形態のめっき層の表層には、Mg21Zn25相が存在する。めっき層の表層とは、厳密には、X線の入射角度を1°とする視斜角入射X線回折測定において、X線が侵入し、かつ、回折線が得られる範囲の深さ領域である。近似的には、めっき層の最表面から深さ3μmまでの領域ということもできる。Mg21Zn25相は、めっき層の表層以外の領域に存在してもよいが、表層には必ず含まれる必要がある。Mg21Zn25相がめっき層の表層にあることで、めっき層の腐食初期においてMg21Zn25相が腐食されて腐食生成物が形成され、この腐食生成物によって鋼板の端面の耐食性が向上する。これにより、めっき層の平面耐食性を損なわずに、端面耐食性を向上できる。
Mg21Zn25相の存在は、Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件でめっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合に、Mg21Zn25相が検出されることによって確認する。Mg21Zn25相の存在の確認は、具体的には、Mg21Zn25相の(300)面の回折ピークの有無を確認することにより行う。Mg21Zn25相の(300)面の回折ピークは、回折角度11.92°±0.4°の範囲で確認される。視斜角入射X線回折(GIXD)は、X線の入射角度を低角度に固定して測定する方法であるため、めっき層の表層に含まれる金属間化合物を高感度で検出することが可能である。
なお、Mg21Zn25相の検出有無の判断は、後述するX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が0.3超の場合に、Mg21Zn25相が存在するということができる。
なお、上述したように、Mg21Zn25相は、めっき層の表層に存在していればよいが、めっき層の表層以外の領域にMg21Zn25相が存在してもよい。すなわち、Mg21Zn25相が視斜角入射X線回折測定で検出されるとともに、通常のθ-2θ法によるX線回折測定によって検出されてもよい。ただし、めっき層の表層以外の領域にMg21Zn25相が多く形成すると、めっき層の表層におけるMg21Zn25相が少なくなる場合があるので、後述するように、めっき層形成時の冷却条件を適切に制御する必要がある。
なお、視斜角入射X線回折による測定法は、微小角入射X線回折、射入射X線回折、薄膜X線回折とも呼ばれる。この方法では、通常のθ-2θ測定法とは異なり、試料に対するX線入射角度を固定したまま、X線検出器を動かすことによってX線回折測定を行う。
めっき層の表面におけるMg21Zn25相の数密度は、めっき層の平均化学組成の影響を受ける場合がある。めっき層の化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有する場合、Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件でめっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合に、Mg21Zn25相の(300)面とη-Zn相の(002)面のX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が1.0以上であってもよく、5.0以上であってもよく、10.0以上であってもよく、15.0以上であってもよく、20.0以上であってもよい。前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))をより高い値とすることで、平面耐食性および端面耐食性をより高いレベルで両立することができる。
なお、I(Mg21Zn25)は、Mg21Zn25相の(300)面の回折ピークのピーク強度であり、より具体的には、回折角度11.92°±0.4°の範囲内での最大の回折強度とする。I(η-Zn)は、η-Zn相の(002)面の回折ピークのピーク強度であり、より具体的には、回折角度36.24°±0.4°の範囲内での最大の回折強度とする。
η-Zn相は、本実施形態のめっき層の化学組成において、めっき層の表層のみならず、めっき層全体にわたって比較的多く存在する金属相であるため、η-Zn相の回折強度を基準とするのが好適である。η-Zn相の回折強度に対するMg21Zn25相の回折強度比が高いほど、めっき層の表層にMg21Zn25相が多く含まれるということができる。めっき層の表層にMg21Zn25相が多く含まれることで、めっき層の腐食初期においてMg21Zn25相の腐食生成物がより多く形成され、これにより鋼板の端面の耐食性が更に向上する。
I(Mg21Zn25)/I(η-Zn)の上限に特に制限はないが、例えば50.0以下、45.0以下、40.0以下、35.0以下、30.0以下としてもよい。
Mg21Zn25相およびη-Zn相の回折強度の測定方法について述べる。X線回折装置(Rigaku社製(型番RINT1500))を用い、X線出力:(加速電圧)50kV、(加速電流)200mA、X線源:銅ターゲット、X線照射角度:1°、アタッチメント:薄膜用回転試料台を利用、フィルタ:なし、モノクロメータ:使用、の条件で2θ=5~90°の範囲で視斜角入射X線回折測定を実施する。そして、Mg21Zn25相の(300)面の回折強度(11.92°±0.4°の範囲における最大強度)およびη-Zn相の(002)面の回折強度(36.24°±0.4°の範囲における最大強度)をそれぞれ計測する。回折強度はバックグラウンド強度を除いた強度とする。得られた回折強度から、I(Mg21Zn25)/I(η-Zn)を求める。なお、測定条件として、加速電圧:50kV、X線源:Cu、X線入射角度:1°を満足していれば、他の測定条件が異なっていたとしても、Mg21Zn25相の検出や、Mg21Zn25相およびη-Zn相の回折強度比には影響が及ばない。
また、めっき層に0.05~0.5%のSnが含有される場合に、めっき層中にMgSn相が含まれることが好ましい。MgSn相は少量であるため、θ-2θ法によるX線回折測定によってその存在が検出・確認される。めっき層中にMgSn相が含有されることにより、めっき層の端面耐食性がより向上する。MgSn相を検出する場合のX線回折測定は、θ-2θ測定法によって行えばよい。また、X線回折測定は、Cu管球のKα線を用い、23.4±0.3°にピークが検出された場合、MgSn相が存在すると判断する。
めっき層の片面当たりの付着量は、例えば20~150g/mの範囲内とすればよい。片面当たりの付着量を20g/m以上とすることにより、めっき鋼板の平面耐食性および端面耐食性を一層高めることができる。一方、片面当たりの付着量を150g/m以下とすることにより、めっき鋼板の加工性を一層高めることができる。
次に、本実施形態のめっき鋼板の製造方法について説明するが、本実施形態に係るめっき鋼板の製造方法は特に限定されない。例えば以下に説明する製造条件によれば、本実施形態に係るめっき鋼板を得ることができる。
本実施形態のめっき鋼板の製造方法は、表面粗さが調整された鋼板を還元雰囲気中で焼鈍し、焼鈍後の鋼板を溶融めっき浴に浸漬してから引き上げることで、鋼板の表面にめっき層を形成する。次いで、めっき層の温度が浴温から300℃以下になるまでの間に冷却ガスを吹き付けて冷却を行う。冷却ガスを吹き付ける際のガス流束は、浴温から制御冷却温度までのガス流束を5000~80000L/min/mの範囲とし、制御冷却温度から300℃以下までのガス流束を0~5000L/min/mの範囲とする。
制御冷却温度は、Mg21Zn25相晶出温度に対して-10℃~-30℃の範囲内の温度とする。
めっき原板となる鋼板表面の粗さは、算出表面粗さRaで0.1~3.5μmとする。この範囲を外れると、めっき層と鋼板との界面近くにMg21Zn25相が多く晶出し、めっき層の表面におけるMg21Zn25相が減少する場合がある。鋼板表面の粗さの調整は、特に制限はないが、例えば、ロール表面を所望の粗さに調整した圧延ロールまたは調質圧延用のロールによって、めっき原板を圧延してロールの表面形状を転写することにより、調整してもよい。また、酸洗によって調整してもよい。
算術平均粗さの測定は、例えば、株式会社キーエンス製の形状測定レーザマイクロスコープ(型番:VK-8700)を用いて測定する。測定条件としては、例えば、測定モード:レーザーコンフォーカル、測定品質:高精度、ピッチ:0.75μm、ダブルスキャン:ON、光学ズーム:1倍、対物レンズ名:Plan、γ係数:0.45、オフセット:0%として、測定を行う。なお、算術平均粗さの測定に用いる測定装置は、上記の例に限定されるものではない。
めっき原板となる鋼板に対する焼鈍は、還元雰囲気中で行う。還元雰囲気および焼鈍条件は特に限定されない。この焼鈍によって、鋼板表面に存在する酸化物をできる限り除去する。
次いで、焼鈍後の鋼板を、溶融めっき浴に浸漬する。溶融めっき浴の化学組成は、上述しためっき層の化学組成が得られるように、適宜調整すればよい。また、溶融めっき浴の温度も特に限定されず、溶融めっきを実施可能な温度を適宜選択することができる。例えば、めっき浴温を、めっき浴の融点より約20℃以上高い値としてもよい。
次に、鋼板を溶融めっき浴から引き上げる。鋼板の引き上げ速度の制御を介して、めっき層の付着量を制御することができる。必要に応じて、めっき層が付着した鋼板にワイピングを行って、めっき層の付着量を制御してもよい。めっき層の付着量は特に制限されず、例えば上述した範囲内とすることができる。
次いで、めっき層を冷却する。冷却は、溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板に対して、冷却ガスを吹き付ける冷却を行う。冷却ガスの吹き付けによる冷却は、鋼板の温度が浴温から300℃になるまでの間を、連続して行う。300℃未満の冷却条件は特に限定されず、引き続き冷却ガスを吹き付ける冷却を行ってもよく、自然放冷してもよい。
冷却ガスを吹き付ける冷却では、鋼板の搬送路に沿って冷却帯を配置することにより行う。冷却帯には、冷却ガス用の吹付ノズルが複数備えられる。冷却ガスが噴き出すガスノズルの形状は、例えば、直径1~50mmの範囲とする。ガスノズル先端と鋼板の成す角度は、例えば、70~110°の範囲、より好ましくは90°(直角)とする。ガスノズル先端と鋼板の距離は30~1000mmの範囲とする。なお、ガスノズルの形状、角度、距離は、単なる一例であって、上記の範囲に限定されるものではない。
吹き付ける冷却ガスは特に制限はなく、窒素などの非酸化性ガス、アルゴン等の不活性ガスまたは空気であってもよく、これらの混合ガスであってもよい。
本実施形態では、冷却ガスを吹き付ける際のガス流束を2段階で制御する。すなわち、鋼板の温度を基準に、めっき浴温から制御冷却温度(Mg21Zn25相晶出温度に対して-10~-30℃の範囲の温度)までのガス流束を5000~80000L/min/mの範囲とし、制御冷却温度から300℃以下までのガス流束を0~5000L/min/mの範囲とする。制御冷却温度は、Mg21Zn25相の晶出開始温度と推測される温度である。
ガス流束は、ガスノズルの形状の変更やコンプレッサの出力制御などにより調整することができる。
ガス流束を5000L/min/m未満の範囲とした場合、冷却中のめっき層の表面を振動させないようにすることができる。一方、ガス流束を5000L/min/m以上の範囲とした場合、冷却中のめっき層の表面に微小の振動を与えることが可能になる。
そして、めっき浴温から制御冷却温度までのガス流束を5000~80000L/min/mの範囲とすることで、めっき層の表面に振動を与えて、めっき層の表面においてMg21Zn25相の核生成を促す。次いで、制御冷却温度から300℃以下までのガス流束を0~5000L/min/mの範囲とすることで、表面に核形成させたMg21Zn25相を更に成長させる。ガス流束の範囲が上記の範囲から外れると、めっき層の表面にMg21Zn25相を晶出させることが困難になる。
なお、めっき浴温から制御冷却温度までのガス流束よりも、制御冷却温度から300℃以下までのガス流束を低い値とすることが好ましい。両温度域におけるガス流束を一定とする場合(めっき浴温から制御冷却温度までのガス流束を5000L/min/mとし、制御冷却温度から300℃以下までのガス流束を5000L/min/mとする場合)には、両温度域における平均冷却速度を異なる値とすることが好ましい。このような条件とすることで、めっき層の表層においてMg21Zn25相を好ましく生成させることができる。
Mg21Zn25相晶出温度は、めっき浴の化学組成により変化することから、計算状態図を利用して算出する。具体的には、Al-Mg-Zn系合金に含まれ得る金属間化合物相や金属相等の熱力学的データを集積した計算状態図データベースを構築し、CALPHAD法(CALculation of PHAseDiagram)の手法により計算を行うことで、めっき浴の化学組成ごとに、Mg21Zn25相晶出温度を求める。より具体的には、熱力学平衡計算ソフトウエアである「Thermo-Calc」((Thermo-Calcは登録商標)Thermo-Calc Software社製)を使用することで、Mg21Zn25相晶出温度を推定できる。なお、計算に利用する熱力学平衡計算ソフトウエアは「Thermo-Calc」(登録商標)に限定されるものではなく、他のソフトウエアを利用してもよい。求められたMg21Zn25相晶出温度に対して、-10~-30℃の範囲内の温度を制御冷却温度とする。
上記の製造方法では、あらかじめ、鋼板表面の表面粗さを調整することで、鋼板とめっき層との界面付近でのMg21Zn25相の核生成が抑制され、これによりめっき層と鋼板との界面付近でのMg21Zn25相の晶出が抑制されるようになる。このような鋼板に対して溶融めっきを行い、更にめっき後の冷却条件を上述のように制御することで、めっき層の表面にMg21Zn25相を多く晶出させる。これにより、めっき層の表面に、Mg21Zn25相を数多く形成できるものと推測される。
なお、本発明に示す要件を満たす限り、めっき鋼板の製造方法は上述の内容に限定されるものではなく、溶融めっき法に代えて、電気めっき法、蒸着めっき法、溶射法、コールドスプレー法などを採用してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例に過ぎない。本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
めっき原板には、板厚2.3mmの冷延鋼板(0.05C-0.1Si-0.2Mn)を用いた。めっき原板の一部は、スキンパスミルなどを用いて表面粗さを制御した。表面粗さを調整した鋼板に対して焼鈍を行った。焼鈍後の鋼板を種々の溶融めっき浴に浸漬してから引き上げることにより、鋼板表面にめっき層を付着させた。次いで、めっき浴の引き上げ直後からめっき層が300℃になるまでの間を、冷却ガスを用いて冷却することにより、種々のめっき鋼板を製造した。
めっき原板となる鋼板表面の算術平均粗さRaは表に記載の通りとした。
算術平均粗さの測定は、株式会社キーエンス製の形状測定レーザマイクロスコープ(型番:VK-8700)を用いて測定した。測定条件としては、測定モード:レーザーコンフォーカル、測定品質:高精度、ピッチ:0.75μm、ダブルスキャン:ON、光学ズーム:1倍、対物レンズ名:Plan、γ係数:0.45、オフセット:0%として、測定を行った。
鋼板に対して還元雰囲気中で焼鈍を行う際の焼鈍条件は、均熱温度を600℃とし、均熱時間は10秒とした。焼鈍雰囲気は5%水素及び残部窒素の混合ガスからなる還元雰囲気とした。そして、焼鈍後の鋼板を、窒素ガスで空冷して浸漬板温度が浴温+20℃に到達した後、溶融めっき浴に浸漬してから引き上げた。引上速度は20~200mm/秒とした。
めっき層の化学組成は、表1の通りであった。製造条件は表2の通りとした。また、めっき層の金属組織を評価し、その結果を表3に示した。さらに、めっき鋼板の平面耐食性及び端面耐食性を評価し、その結果を表3に示した。
めっき層の化学組成及びめっき層の金属組織の評価は、上述した手段により行った。
平面耐食性の評価は、以下の通りとした。得られた溶融めっき鋼材を、100mm×50mmに切断し、平面耐食性評価試験に供した。平面耐食性の評価はJASO-CCT-M609で規定された腐食促進試験で行い、90サイクル後、腐食減量を比較することで行った。評価基準は下記の通りとし、「AAA」「AA」および「A」を合格とした。
AAA:腐食減量 30g/m未満
AA :腐食減量 30g/m以上60g/m未満
A :腐食減量 60g/m以上90g/m未満
B :腐食減量 90g/m以上
端面耐食性は、以下の通りとした。得られた溶融めっき鋼材を、50mm×50mmのサイズに切断して四角形状の試験片とした。そして、試験片の対角線の交点を中心とする直径15mmの領域にあるめっき層を、フライス加工により除去し、鋼板(地鉄)の露出領域を形成した。直径15mmの地鉄の露出領域に対して、JIS Z 2371:2015に定められる中性塩水噴霧試験を行い、地鉄の露出領域の赤錆発生状況を基に評価した。以下、赤錆面積率の評価基準を示す。「AAA」「AA」および「A」を合格とした。
AAA:1300hで赤錆面積率10%以下
AA :800hで赤錆面積率10%以下
A :400hで赤錆面積率20%以下
B :400hで赤錆面積率20%超
表1~表3に示すように、めっき層の化学組成及び金属組織が適切に制御されていた、本発明に係る実施例1~27は、平面耐食性、端面耐食性の両方が優れていた。なお、実施例のめっき層の片面当たりの付着量は、20~150g/mの範囲であった。
比較例28では、めっき層のAl量が不足していた。そのため、比較例28では、平面耐食性が不足した。
比較例29では、めっき層のAl量が過剰であった。そのため、比較例29では、Mg21Zn25相が晶出したものの、端面耐食性が低下した。
比較例30では、めっき層のMg量が不足していた。そのため、比較例30では、Mgが不足してMg21Zn25相が晶出せず、平面耐食性および端面耐食性が低下した。
比較例31では、めっき層のMg量が過剰であった。そのため、比較例31では、電的に卑なMg-Zn相が過剰に生成し、平面耐食性が低下した。
比較例32では、浴温~制御冷却温度までの冷却ガス流束が不足であった。そのため、比較例32では、Mg21Zn25相が晶出できず、端面耐食性が低下した。
比較例33では、制御冷却温度~300℃までの冷却ガス流束が過剰であった。そのため、比較例33では、めっき層の内部においてMg21Zn25相が多く晶出し、めっき層の表層ではMg21Zn25相が晶出せず、端面耐食性が低下した。
比較例34では、めっき原板となる鋼板表面の算術平均粗さRaが好ましい範囲を外れた。そのため、めっき層と鋼板との界面近くにMg21Zn25相が多く晶出し、めっき層の表面におけるMg21Zn25相が減少し、端面耐食性が低下した。
比較例35では、制御冷却温度~300℃までの冷却ガス流束が過剰であった。そのため、比較例35では、めっき層の表層ではMg21Zn25相が晶出せず、端面耐食性が低下した。
比較例36では、めっき層のAl量が過剰であった。そのため、比較例29では、めっき層の表層ではMg21Zn25相が晶出せず、平面耐食性が低下した。
Figure 0007436948000001
Figure 0007436948000002
Figure 0007436948000003
1…めっき鋼板、11…鋼板、12…めっき層。

Claims (8)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に配されためっき層と、を備え、
    前記めっき層の化学組成が、質量%で、
    Al:10.0~25.0%、
    Mg:3.0~10.0%、
    Fe:0.01~2.00%、
    Si:0.00%超、2.00%以下、並びに
    下記A群、B群およびC群からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、
    残部がZn及び不純物からなり、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力である加速電圧を50kVとし、前記めっき層の表面に対するX線入射角度を1°とする条件で、前記めっき層に対して視斜角入射X線回折測定を行った場合に、Mg21Zn25相の(300)面とη-Zn相の(002)面のX線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が0.3超である、めっき鋼板。
    [A群]
    Ni:0~1.000%
    [B群]
    Ca:0~0.05%
    [C群]
    Sb:0~0.50%、
    Pb:0~0.50%、
    Cu:0~1.00%、
    Sn:0~1.00%、
    Ti:0~1.00%、
    Cr:0~1.00%、
    Nb:0~1.00%、
    Zr:0~1.00%、
    Mn:0~1.00%、
    Mo:0~1.00%、
    Ag:0~1.00%、
    Li:0~1.00%、
    La:0~0.50%、
    Ce:0~0.50%、
    B:0~0.50%、
    Y:0~0.50%、
    P:0~0.50%、
    Sr:0~0.50%、
    Co:0~0.500%、
    Bi:0~0.500%、
    In:0~0.500%、
    V:0~0.500%、および
    W:0~0.500%の1種または2種以上を合計で0~5.000%
  2. 前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
    前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が1.0以上である、請求項1に記載のめっき鋼板。
  3. 前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
    前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が5.0以上である、請求項1に記載のめっき鋼板。
  4. 前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Mg:4.5%以上を含有し、
    前記X線回折強度比(I(Mg21Zn25)/I(η-Zn))が10.0以上である、請求項1に記載のめっき鋼板。
  5. 前記めっき層の前記化学組成が、質量%で、Sn:0.05~0.5%を含有し、
    前記めっき層に対するθ-2θ法によるX線回折測定において、前記めっき層中にMgSn相が検出される、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のめっき鋼板。
  6. 前記めっき層の前記化学組成が、前記A群を含有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のめっき鋼板。
  7. 前記めっき層の前記化学組成が、前記B群を含有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のめっき鋼板。
  8. 前記めっき層の前記化学組成が、前記C群を含有する、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のめっき鋼板。
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