JP7137730B1 - 溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い曲げ加工性を有しつつ、時効後の降伏伸び及び成形性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板を提供する。【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、めっき層が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する、溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験において、試験片を内側間隔nt(但し、t:めっき鋼板の板厚、n:めっき鋼板の枚数)で180°曲げ加工し、曲げ加工部の外側表面を10倍ルーペで観察した際の、クラックが認められない最小のntで示される曲げ加工性が、6t以下であり、且つ、時効促進試験後の降伏伸び(YEL)が10%以下であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、高い曲げ加工性を有しつつ、時効後の降伏伸び及び成形性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
55%Al-Zn系めっき鋼板に代表される、めっき層中にAlを20~95質量%含有する溶融Al-Zn系めっき鋼板(以下、「55%Al-Zn系めっき鋼板」ということがある。)は、優れた耐食性を示すことから、近年、建材分野を中心に需要が増加している。
ただし、55%Al-Zn系めっき鋼板は、めっき層が純亜鉛めっき層等に比較して硬質であることから、めっき鋼板が曲げ加工を受けた際、めっき層の加工部にクラックが入りやすいという問題がある。このような加工時のめっき層のクラックは、加工部の耐食性劣化をひきおこすおそれがあるため、改善することが望まれている。
このような加工性や加工部耐食性の改善を目的として、めっき層形成後の鋼板に熱処理を施すことで、めっき層の軟質化を行う技術(例えば、特許文献1~3を参照。)が知られている。
特開2002-322573号公報 特開2003-213395号公報 特開2006-70326号公報
特許文献1~3に示されるような、めっき層形成後の鋼板に熱処理を施す技術については、溶融Al-Zn系めっき鋼板の加工性をある程度改善することができるものの、素地鋼板として一般的な建材用として多用されている低炭素鋼を用いる場合、熱処理によって鋼板に降伏伸びが発生しやすくなる、という問題があった。
これは、めっき層形成後の鋼板に対して加工性改善のための熱処理を施した際、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)のスキンパス工程等により導入された転位にFe3Cが多量に析出し、析出したFe3Cが、次工程の塗装焼き付け工程で再固溶する結果、転位近傍の鋼中の固溶Cが増えるためであると考えられる。
ここで、図2は、めっき層を形成した鋼板を再加熱した後の、冷却時間と温度との関係、並びに、Fe3Cノーズの状態を示したものであるが、低炭素鋼板のFe3C析出ノーズを見た場合、通常連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)でのめっき後冷却速度は、この析出ノーズを回避するため、Fe3Cはほとんど析出しない。しかしながら、めっきの曲げ加工性を改善するために特許文献1~3に示されるような熱処理を施した場合には、熱処理過程、特に、加熱後の冷却時に、鋼板の熱履歴が析出ノーズにかかることがあり、この場合、CGLのスキンパス工程などで導入された転位にFe3Cが析出することになる。塗装鋼板製造の場合には、析出したFe3Cが、次工程の塗装焼き付け工程で再固溶する結果、転位近傍の鋼中の固溶Cがバルクに比較して増え、この固溶Cが時効により転位に固着し、降伏伸びが生じることが考えられる。
そして、発生した降伏伸びは、加工時にシワ(ストレッチャーストレイン)の原因となるため、抑制できる技術の開発が望まれている。
また、本発明で開示されるめっき鋼板は、建材用として使用される場合、塗装鋼板として用いられることが多い。この場合、上述した降伏伸びを抑制するためには、最終工程である塗装ライン(CCL)で鋼板にスキンパスやテンションレベラーなどで歪みを付与することが知られている。ただし、このような方法では、鋼板の降伏点(YP)を下げるため、鋼板のべこつきが悪化する(耐オイルキャン性を低下させる)要因となる。そのため、耐オイルキャン性を良好に維持しつつ、低炭素鋼板の降伏伸びを抑制するためには、別の手段が必要であった。
さらに、上述した溶融Al-Zn系めっき鋼板の降伏伸びについては、転位近傍の固溶Cが転位まで拡散する時間が必要になるため、特に一定時間経過後に悪化する傾向があり、時効後の降伏伸びを改善できる技術についても望まれていた。
かかる事情を鑑み、本発明は、高い曲げ加工性を有しつつ、時効後の降伏伸び及び成形性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、めっき層が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する、溶融Al-Zn系めっき鋼板について、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、めっきの曲げ加工性改善のために施す熱処理条件の適正化を行いつつ、時効促進試験後の降伏伸び(YEL)を10%以下と低く抑えるよう改善することによって、耐オイルキャン性を良好に維持できつつ、加工時のシワも抑制できるため、優れた成形性を実現できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.めっき層が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する、溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、
JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験において、試験片を内側間隔nt(但し、t:めっき鋼板の板厚、n:めっき鋼板の枚数)で180°曲げ加工し、曲げ加工部の外側表面を10倍ルーペで観察した際の、クラックが認められない最小のntで示される曲げ加工性が、6t以下であり、且つ、時効促進試験後の降伏伸び(YEL)が10%以下であることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板。
2.前記めっき層中のデンドライト相のAl初晶のビッカース硬さが、120HV0.01以下であることを特徴とする、前記1に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
3.前記めっき層は、下地鋼板との界面側に界面合金層を有し、該界面合金層の平均厚さが2μm以下であることを特徴とする、前記1又は2に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
4. Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき浴を用いて、下地鋼板にめっき層を形成し、
前記めっき浴から鋼板が出た後の冷却速度が12℃/s以上であり、
前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際の、鋼板の最高到達温度をT(℃)、T℃から150℃までの冷却時間をx(hr)としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法。
150≦T≦300 ・・・(1)
0.5≦x≦1000/(T+273) ・・・(2)
本発明によれば、高い曲げ加工性を有しつつ、時効後の降伏伸び及び成形性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法を提供できる。
溶融Al-Zn系めっき鋼板に180°曲げ加工を行った状態を模式的に示した図である。 めっき層を形成した鋼板を再加熱した後の、冷却時間と温度との関係、並びに、Fe3Cノーズの状態を示した図である。 デンドライトアーム間距離を説明するための写真である。 実施例の成形性評価のために成形する形状を模式的に示した図である。
<溶融Al-Zn系めっき鋼板>
本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、めっき層が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する、溶融Al-Zn系めっき鋼板である。
(めっき層の組成)
前記めっき層は、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する。前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が、上述した組成を有することによって、めっき層中にデンドライト相及び該デンドライト相を網目状に取り囲んだインターデンドライト相を形成でき、耐食性の向上を図ることができる。
前記めっき層中のAl含有量は、耐食性と操業面のバランスから、40~70質量%とし、好ましくは50~60質量%である。前記めっき層の主層のAl含有量が少なくとも40質量%あれば、Alのデンドライト凝固が十分に起こる。これにより、前記主層は主としてZnを過飽和に含有し、Alがデンドライト凝固した部分(α-Al相のデンドライト相)と残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト相)からなり且つ該デンドライト相がめっき層の膜厚方向に積層した耐食性に優れる構造を実現できる。またこのα-Al相のデンドライト相が、多く積層するほど、腐食進行経路が複雑になり、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるので、耐食性が向上する。一方、前記めっき層中のAl含有量が70質量%を超えると、Feに対して犠牲防食作用を有するZnの含有量が少なくなり、耐食性が劣化する。このため、前記めっき層中のAl含有量は70質量%以下とする。また、前記めっき層中のAl含有量が60質量%以下であれば、めっきの付着量が少なくなり、下地鋼板が露出しやすくなった場合にもFeに対して犠牲防食作用を有し、十分な耐食性が得られる。そのため、めっき主層のAl含有量は70質量%以下とすることが好ましい。
前記めっき層中のSiは、下地鋼板との界面に生成する界面合金層の成長を抑制する目的で、耐食性や加工性の向上を目的にめっき浴中に添加され、必然的に前記めっき層に含有される。本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板で用いる溶融Al-Zn系めっき鋼板の場合、めっき浴中にSiを含有させて溶融めっき処理を行うと、下地鋼板がめっき浴中に浸漬されると同時に、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物からなる合金を生成する。このFe-Al-Si系界面合金層の生成によって、界面合金層の成長を抑制することができる。そして、前記めっき層中のSi含有量が0.5質量%以上の場合には、前記界面合金層の成長を十分に抑制できる。一方、めっき層のSi含有量が、3.0質量%を超えた場合、めっき層において、加工性を低下させ、カソードサイトとなるSi相が析出し易くなる。このため、めっき層中のSi含有量は0.5~3.0質量%とする。
また、前記めっき層は、該めっき層の主成分としてZnを含有する。前記めっき層にZnを含有することで、犠牲防食作用を得ることができ、耐食性の向上を図ることが可能となる。なお、前記Znの含有量が80質量%以下の場合には、Al含有量を確保でき、上述したデンドライト相とインターデンドライト相による耐食性を実現できる点で好ましい。
さらに、前記めっき層は、上述したAl、Si及びZnに加えて、任意添加成分を5質量%以下含有することもできる。
ここで、前記任意添加成分としては、めっき層に要求される性能に応じて適宜選択することが可能である。例えば、CaやMg等のアルカリ土類金属や、Mn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びB等の添加成分が挙げられる。
これらの任意添加成分については、耐食性をより向上できる等の効果が得られるものの、めっき層の加工性が低下し、溶融Al-Zn系めっき鋼板の限界伸び率を悪化させるおそれがあるため、任意添加の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
前記めっき層は、Mg及び/又はCaを含有することができる。前記めっき層が腐食した際、腐食生成物中にMg及び/又はCaが含まれることとなり、腐食生成物の安定性が向上し、腐食の進行が遅延する結果、耐食性が向上するという効果が得られる。前記Ca及び/又はMgの合計含有量は、5質量%以下であれば特に限定はされないが、0.01~5質量%であることが好ましい。含有量を0.01質量%以上とすることで、十分な腐食遅延効果が得られ、一方、含有量を5質量%以下とすることで、効果が飽和することなく、製造コストの上昇を抑え、めっき浴の組成管理を容易に行えるためである。
また、前記めっき層は、前記Mgを少なくとも含有することが好ましい。前記めっき層がMgを含有することで、上述したSiとともにMg2Siを生成できるようになり、腐食遅延効果を得ることができるからである。ここで、前記めっき層中のMgの含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、2~4.9質量%であることがより好ましい。
さらに、前記CaやMgのアルカリ土類金属と同様に、腐食生成物の安定性を向上させ、腐食の進行を遅延させる効果を奏することから、前記めっき層は、さらにMn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、合計で5質量%以下、好ましくは0.01~5質量%含有することもできる。
なお、前記めっき層は、めっき処理中にめっき浴と下地鋼板の反応でめっき中に取り込まれる下地鋼板成分や、めっき浴を建浴する際に使用するインゴット中に含有されている不可避的不純物、浴中機器から若干溶出する不可避的不純物が含まれる。前記めっき中に取り込まれる下地鋼板成分としては、Feが数%程度含まれることがある。めっき浴中の不可避的不純物の種類としては、例えば、下地鋼板成分としては、Fe、Mn、P、S、C、Nb、Ti、B等が挙げられる。また、インゴット中の不純物としては、Fe、Pb、Sb、Cd、As、Ga、V等が挙げられる。さらに、浴中機器からの不純物としては、Cr、Ni、W、Coなどが挙げられる。なお、前記めっき層中のFeについては、下地鋼板から取り込まれるものと、めっき浴中にあるものとを区別して定量することはできない。前記不可避的不純物の総含有量は、特に限定はしないが、めっきの耐食性と均一な溶解性を維持するという観点から、Feを除いた不可避的不純物量は合計で1質量%以下であることが好ましい。
なお、下地鋼板上に前記めっき層を形成する手段としては、特に限定はされず、通常の連続式溶融めっき設備を用いることができる。例えば、下地鋼板は還元性雰囲気に保持された焼鈍炉内で所定温度に加熱され、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に浸漬されたスナウト内を通って所定濃度のAl及びZnを含有した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬される。その後、めっき浴に浸漬された鋼板は、シンクロールを経由してめっき浴の上方に引き上げられた後、めっき浴上に配置されたガスワイピングノズルから鋼板の表面に向けて加圧した気体を噴射することによりめっき付着量が調整され、次いで冷却装置により冷却されることで、めっき層が形成される。
なお、めっき後(鋼板をめっき浴から出した後)の冷却速度に関しては、特に限定されるものではなく、通常の条件(例えば、12℃/s以上)とすることができる。
通常の条件で冷却する理由としては、以下のようなことが考えられる。熱処理によるめっき層の軟質化は、Zn過飽和のAl初晶から熱処理によりZnがA初晶内に晶出することによって起こる。この場合、めっき後の冷却速度が遅いと、A初晶から冷却中にある程度Znが晶出してしまうので、熱処理前のAl初晶の過飽和度が低くなり、その後に施される熱処理による効果が小さくなる。
めっき後の冷却過程でのAl初晶からのZnの晶出でも若干めっき層は軟質化するが、曲げ加工性を格段に改善するまでの効果は得られない。加工性を改善するためには、Al初晶から効率的にZnを晶出させる必要があるため、めっき浴を出てから450℃までの温度域での冷却速度を確保することで、Al初晶中のZnの過飽和度を高めることが重要となる。
また、前記めっき層の組織中には、デンドライト相及びインターデンドライト相を有するが、前記デンドライト相のAl初晶のビッカース硬さが120HV0.01以下であることが好ましい。前記デンドライト相のAl初晶のビッカース硬さを120HV0.01以下と小さくすることで、後述するめっき鋼板の曲げ加工性をより高めることができる。同様の観点から、前記めっき層中のデンドライト相のAl初晶のビッカース硬さは、110HV0.01以下であることがより好ましく、100HV0.01以下であることがより好ましい。一方、前記デンドライト相のAl初晶のビッカース硬さは、前記めっき層表面の耐傷つき性を改善する観点からは、10HV0.01以上とすることが好ましい。
なお、前記ビッカース硬さについては、10gの押し込み荷重(HV0.01)で試験を実施している。
なお、前記めっき層は、主として、Al初晶からなるデンドライト及びAl-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有しており、該Al初晶は、α-Al相のマトリックス及びZnの析出物を含み、前記マトリックス中のZn含有量が、30質量%以下であることが好ましい。
本発明では、めっき層を再加熱することによるめっき層の軟質化による加工性改善を行っているが、この軟質化は先述のようにAl初晶からのZnの晶出によって起こり、この際のAl初晶マトリックスのZn濃度は、Znの晶出のために熱処理前に比べて低下することになり、具体的には30質量%以下となることが好適である。
さらに、前記めっき層の付着量については、特に限定はされないが、耐食性と曲げ加工性との両立の観点から、片面の付着量で、30~90g/m2であることが好ましく、40~80 g/m2であることがより好ましい。
ここで、図3は、デンドライトアーム及びデンドライトアーム間距離を説明するために、めっき層の一部をSEMを用いて200倍で拡大観察した状態を示す写真である。前記めっき層はAl-Zn系めっきであるため、めっきの断面組織において、前記Al初晶の周りをZnリッチ相が取り囲むような組織となるが、このAl初晶の積層数と関連する指標としてデンドライトアーム間距離(デンドライトアームスペーシング)がある。前記デンドライトアーム間距離とは、隣接するデンドライトアーム間の中心距離(デンドライトアームスペーシング)のことであり、図3に示すように、めっき層主層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて拡大することで、観察できる。先に述べたように、このデンドライトアーム間距離は、小さいほど積層数が増え、複雑な腐食経路となり鋼板が腐食するまで長時間を要するため高耐食性となる。
そのため、良好な耐食性を得る観点からは、前記めっき層中のデンドライトアーム間距離が、20μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、16μm以下であることがさらに好ましい。この値は、めっき後の450℃までの冷却速度で決まり、一定の冷却速度(12℃/s以上)であれば、デンドライトアーム間距離 20μm以下を達成できる。
なお、前記デンドライトアーム間距離の測定方法としては、例えば、SEMを用いて200倍で拡大観察し、無作為に選択した視野の中で、スパングルの中心から出ている1次アームから枝分かれしている2次デンドライトアームの間隔を測定することで得られる。具体的には、2次デンドライトアームが3本以上整列している部分を選択し(図3では、A-B間の3本を選択している。)、アームが整列している方向に沿って距離(図3では、距離L)を測定する。その後、測定した距離をデンドライトアームの本数で除して(図3では、L/3)、デンドライトアーム間距離を算出する。当該デンドライトアーム間距離は、1つの視野の中で、3箇所以上測定し、それぞれ得られたデンドライトアーム間距離の平均を算出したものを平均デンドライトアーム間距離とすることができる。
なお、前記めっき層は、該めっき層のうち、下地鋼板との界面に存在する界面合金層を有する。
前記界面合金層は、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応して必然的に生成するFe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物である。この界面合金層は、硬くて脆いため、厚く成長すると加工時のクラック発生の起点となることから、できるだけ薄くすることが好ましい。そのため、前記界面合金層の平均厚さを、2μm以下とすることが好ましく、1μm以下とすることがより好ましい。この界面合金層は、上述したように主にめっき浴中で生成するが、めっき層が形成された後はめっき層が高温状態にある時に鋼板とめっき層中のAlとの反応によってさらに成長するため、めっき後の冷却速度をある程度の範囲(12℃/s以上)とすることで、界面合金層厚み2μm以下を達成できる。
なお、前記界面合金層の平均厚さは、例えば、めっき層のうち、下地鋼板との界面近傍の断面を、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて5000倍で拡大観察し、無作為に選出した5か所の界面合金層の断面を測定し、平均値を算出することで得られる。
(曲げ加工性)
ここで、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板では、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験において、試験片を内側間隔ntで180°曲げ加工し、曲げ加工部の外側表面を10倍ルーペで観察した際の、クラックが認められない最小のntで示される曲げ加工性が、6t以下である。曲げ加工性が6t以下となることで、優れた曲げ加工性、ひいては加工後耐食性を実現することができる。
同様の観点から、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性は、5t以下であることが好ましく、4t以下であることがより好ましい。
なお、前記曲げ加工性を得るための曲げ試験は、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験であり、図1に示すように、内側間隔ntの、tはめっき鋼板の板厚、nはめっき鋼板の枚数であり、例えば、2枚の鋼板を挟んだ場合は2t、3枚の鋼板を挟んだ場合は3tとなる。
前記試験片の曲げ加工部は、10倍ルーペで加工部表面の全体を観察し、クラックの有無を確認する。例えば、曲げ試験において3tまではクラックがなく、2tで実施した際にクラックが確認された場合、鋼板の曲げ加工性は3tとなる。
(時効促進試験後のYEL、YP)
そして、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、上述した曲げ加工性(6t以下)を満たしつつ、時効促進試験後の降伏伸び(YEL)が10%以下であることを特徴とする。
時効促進試験後のYELを10%以下の抑えることで、耐オイルキャン性を良好に維持できつつ、加工時のシワも抑制できるため、優れた成形性を実現できる。また、時効促進後のYELを規定しているため、その後の時効によるYELの悪化を考慮する必要はなく、時効後の降伏伸びにも優れる。同様の観点から、前記時効促進試験後のYELは、9.0%以下であることが好ましく、8.5%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることがさらに好ましい。
ここで、前記YELについては、引張試験によって測定することができる。本発明では、溶融Al-Zn系めっき鋼板から、JIS Z 2201の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して、歪み速度10-3/sの条件で引張試験を行う。
また、本発明では、前記時効促進試験として、100℃で3600s 保持する促進時効処理を行っている。
つまり、前記時効促進試験後のYELは、溶融Al-Zn系めっき鋼板から試験片を採取し、該試験片に対して、100℃で3600s 保持する促進時効処理を施した後、引張試験を実施することで測定できる。
なお、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板について、時効促進試験後のYELを10%以下に抑える方法や、上述した曲げ加工性を6T以下に維持する方法については、特に限定はされない。例えば、めっき層の組成、めっき層の形成時の温度条件、めっき層形成後の再加熱時の温度条件等を制御する方法が挙げられる。
例えば、本発明では、後述するように、めっき層形成後の再加熱時の温度条件を制御することで、時効促進試験後のYEL及び曲げ加工性の制御を行っている。
また、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、降伏点(YP)が、400N/mm2以上であることが好ましく、450N/mm2以上であることがさらに好ましい。前記YPが400N/mm2未満の場合、YELが良好な場合であっても、オイルキャン性が低下し、成形性の悪化を招くおそれがあるためである。
なお、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、要求される性能に応じて、前記めっき層の上に、直接又は中間層を介して、塗膜を形成することもできる。
なお、前記塗膜を形成する方法については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等の形成方法が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することが可能である。
また、前記中間層についても、溶融めっき鋼板のめっき層と前記塗膜との間に形成される層であれば特に限定はされない。
<溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法>
本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ということがある。)は、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき浴を用いて、下地鋼板にめっき層を形成した後、
前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際の、鋼板の最高到達温度をT(℃)、150℃~T℃における滞留時間をx(hr)としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
150≦T≦300 ・・・(1)
0.5≦x≦1000/(T+273) ・・・(2)
従来、溶融Al-Zn系めっき鋼板のYELを抑えるためには、塗装ラインで鋼板にスキンパスやテンションレベラーなどで歪みを付与する手段が知られていたが、これらの手段を用いた場合、鋼板の降伏点(YP)を下げるため、鋼板の耐オイルキャン性が悪化する要因となっている。
そのため、本発明の製造方法では、前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際の温度条件について、鋼板の最高到達温度Tの温度範囲を規定しつつ、鋼板の150℃以上の滞留時間xの範囲を規定すること、つまり、式(1)及び(2)を満足させることで、優れた曲げ加工性を実現できることに加え、耐オイルキャン性を良好に維持しつつ、溶融Al-Zn系めっき鋼板の時効促進試験後のYELを抑えることもできる。
なお、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法では、特に限定はされないが、製造効率や品質の安定性の観点から、連続式溶融めっき設備が通常採用される。
また、本発明の製造方法に用いられる下地鋼板の種類については、特に限定はされない。例えば、酸洗脱スケールした熱延鋼板若しくは鋼帯、又は、それらを冷間圧延して得られた冷延鋼板若しくは鋼帯を用いることができる。ただし、本発明による時効促進試験後のYELを抑制する効果がより顕著に得られる観点からは、コスト的にも望ましい低炭素鋼を用いることが好ましい。
さらに、鋼中成分としても本発明では特にこれを限定するものではないが、例えば、C:0.01~0.10質量%のもの等を用いることができる。ただし、C:0.01%未満の鋼板も本発明では除くものではない。また、成分元素としてC、Al、Si、Mn、P以外に微量添加元素としてN、S、O、B、V、Nb、Ti、Cu、Mo、Cr、Co、Ni、Ca、Sr、In、Sn、Sb等を含有する鋼板も本発明の範疇にある。
また、本発明の製造方法では、前記めっき浴が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する。
これによって、所望の組成の溶融Al-Zn系めっき鋼板を得ることができる。なお、前記めっき浴中に含有される各元素の種類や、含有量、作用については、上述した本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の中で説明されている。
なお、本発明の製造方法により得られた溶融Al-Zn系めっき鋼板は、全体としてはめっき浴の組成とほぼ同等となる。そのため、溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層の組成は、めっき浴組成を調整することにより制御できる。
本発明の製造方法では、前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際、最高到達温度Tが、以下の式(1)を満足する。
150≦T≦300 ・・・(1)
(1)式では、前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際の最高到達温度Tの範囲を規定している。前記最高到達温度Tを150℃以上としたのは、この温度以上でないと前記めっき層の十分な軟質化が起こらないため、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性が低下するためである。同様の観点から、前記最高到達温度Tは160℃以上であることが好ましい。一方、前記最高到達温度Tを300℃以下としたのは、この温度以上では、めっきと鋼板の界面に生じる界面合金層の厚みが厚くなり、曲げ加工性が低下するためである。同様の観点から、前記最高到達温度Tは280℃以下であることが好ましい。
本発明の製造方法では、前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際、T℃から150℃までの冷却時間xが、以下の式(2)を満足する。
0.5≦x≦1000/(T+273) ・・・(2)
前記最高到達温度T℃から150℃までの冷却時間xを(2)式のように規定することにより、Fe3Cの析出ノーズ(Fe3Cが析出しやすい条件)を回避することができるため、固溶C量を低減できる結果、降伏伸び及び時効促進試験後の降伏伸びを抑えることが可能となる。なお、前記滞留時間xが0.5hr未満の場合には、めっき層が十分軟質化できず良好な曲げ加工性が確保できない。一方、前記冷却時間xが1000/(T+273)を超えると、Fe3C析出ノーズを通る可能性が出てくるため、固溶C量を低減できず、降伏伸びを抑えることができない。
また、本発明の製造方法では、前記めっき層が形成された鋼板について、塗装ラインで鋼板にスキンパスやテンションレベラーなどで歪みを付与する必要がないため、YPの低下に起因した耐オイルキャン性等の成形性の悪化を招くこともない。
ここで、図2は、前記めっき層が形成された鋼板を再加熱した際の、冷却時間と温度との関係、並びに、Fe3C析出ノーズの状態を示したものである。上述したように、再加熱後の冷却では、時効による降伏伸びを抑制するため、前記最高到達温度T℃から冷却時にFe3C析出ノーズを極力回避する必要がある。そのため、本発明の製造方法では、前記最高到達温度T℃から150℃までの冷却時間を制御することによって、冷却時におけるFe3C析出ノーズ回避を可能とし、目的を達成している。図2から明らかなように、Fe3C析出ノーズを回避するためには、Tが高い場合には冷却時間を短くする必要があり、この冷却時間の上限は1000/(T+273)で表せられる。また、この下限は先述のとおり、めっきの加工性確保のために決まる。なお、図2中に示した「(2)式を満たす冷却」については、T℃から150℃までの冷却態様の一例を示したものである。なお、図中の冷却曲線はあくまでも一例であり、本発明ではこの冷却速度を規定するものではない。
また、本発明の製造方法では、鋼板の良好な材質確保という観点から、最高到達温度に達した後のヒートパターンは、上述したFe3Cの析出ノーズを回避させるべく、上記(式(1)及び(2)を満足する必要があるが、昇温速度に関しては、加工性改善という観点から、下記のような好適域が存在する。
本発明の製造方法では、特に限定されるものではないが、前記鋼板を再加熱する際の常温から最高到達温度T℃までの平均加熱速度を、3℃/hr以上とすることが好ましく、4℃/hrとすることがより好ましく、5℃/hrとすることがさらに好ましい。加工性改善のための高温域での滞留時間が過度に長くなるのを抑えるためである。さらに、前記鋼板を再加熱する際の常温から最高到達温度T℃までの平均加熱速度を、10℃/hr以下とすることが好ましく、15℃/hr以下とすることがより好ましく、20℃/hr以下とすることがさらに好ましい。加工性改善のための高温域での必要最低の滞留時間を確保するためである。
なお、本発明の製造方法では、上述したように、めっき浴の組成、及び、めっき層が形成された鋼板を再加熱した際の条件を満たせばよく、その他の条件については特に限定はされず、公知の溶融Al-Zn系めっき鋼板と同様とすることができる。
以下、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<溶融Al-Zn系めっき鋼板のサンプル1~13>
以下の通り、表1に示すサンプル1~13を作製した。
常法で製造した板厚0.40mmの冷延鋼板を下地鋼板(C:0.075質量%、Si:0.015質量%、Mn:0.5質量%、Al:0.025質量%、P:0.013質量%、S:0.015質量%、N:0.002質量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼板)として用い、連続式溶融めっき設備で焼鈍処理、めっき処理、スキンパス処理を行った。なお、いずれのサンプルにおいても、めっき浴の浴温は590℃、侵入板温は600℃、スキンパス圧下率は0.5%である。
次に、本コイルをバッチ式の加熱炉にて、表1に示す条件で熱処理を施した。なお、鋼板の温度は、鋼板に付けた熱電対で測定した。さらに、このコイルに連続式塗装ラインで、化成処理を施し、プライマー、トップコートを塗装した。また、一部のサンプルについては、塗装後テンションレベラーで0.1%の伸び率を鋼板に付与した。
なお、各サンプルの界面合金層の厚さについては、めっき層のSEMによる断面観察(X5000)によって測定し、平均値を算出した。
また、各サンプルのめっき層中のデンドライト相のビッカース硬さについては、各サンプルを常温乾燥樹脂で埋め込み、研磨し、断面からめっき層のデントライト相を選択し、微小硬度計(島津製作所製、島津微小硬度計HMV-G21)を用いて、選択したデンドライト相のビッカース硬さを測定した。測定方法はJIS Z 2244に準拠した方法で行い、押し込み荷重は10gfで実施した。
さらに、各サンプルの平均デンドライトアーム間距離は、図3に示すように、めっき層主層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて拡大観察し(実施例では200倍で観察し)、無作為に選択した視野の中で、2次デンドライトアームの間隔を、1つの視野の中で、3箇所以上測定し、それぞれ得られたデンドライトアーム間距離の平均を算出した。
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板については、めっき層の断面を、極低加速SEMによって観察し、エネルギー分散型X線分光法(以下、「EDX」)によって分析を行った。
上記めっき層のAl初晶中のZn濃度は、Zeiss社製ULTRA55(極低加速SEM)とOxford Instruments社製Ultim Extreme(EDX)を使用し、加速電圧3kV、倍率20000倍で観察した際に球状に観察されるZn析出物を除いたマトリックス中の所定箇所を点分析することで求めた。
<評価>
上記のように得られた各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)耐曲げ加工性
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板について、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験を実施した。50mm幅で180度曲げを行い、両端10mmを除く30mm幅内の曲げ加工部の断面5箇所を、10倍ルーペで観察し、クラックが認められない最小のnt(但し、t:めっき鋼板の板厚、n:めっき鋼板の枚数)を測定した。
そして、得られたntについて、以下の基準に沿って評価を行った。
〇:6t以下
×:7t以上
(2)時効促進試験後のYEL
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板から、JIS Z 2201の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して、歪み速度10-3/sの条件で引張試験を行った。なお、各試験片の採取から引張試験までの間に、100℃で3600秒保持する時効促進試験を行った後、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、降伏点伸び量を測定した。
なお、引張試験は、鋼板のL,C方向で、各3回(N=3)実施し、それらの平均値をとった。
(3)成形性(しわの有無、耐オイルキャン性)
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板を、図4に示す形状に成形した後、目視によって、平端部の、しわの有無及びベコツキの発生について確認した。
評価については、しわ及びベコツキがそれぞれ発生しないものは〇、発生したものは×とした。
Figure 0007137730000002
表1の結果から、本発明例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、耐曲げ加工性、促進時効後のYEL及び成形性(しわの有無、耐オイルキャン性)のいずれについても、バランスよく優れていることがわかる。
本発明によれば、高い曲げ加工性を有しつつ、時効後の降伏伸び及び成形性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法を提供を提供できる。

Claims (4)

  1. めっき層が、Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有する、溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、
    JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験において、試験片を内側間隔nt(但し、t:めっき鋼板の板厚、n:めっき鋼板の枚数)で180°曲げ加工し、曲げ加工部の外側表面を10倍ルーペで観察した際の、クラックが認められない最小のntで示される曲げ加工性が、6t以下であり、且つ、時効促進試験後の降伏伸び(YEL)が10%以下であることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  2. 前記めっき層中のデンドライト相のAl初晶のビッカース硬さが、120HV0.01以下であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  3. 前記めっき層は、下地鋼板との界面側に界面合金層を有し、該界面合金層の平均厚さが2μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  4. Al:40~70質量%及びSi:0.5~3.0質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき浴を用いて、下地鋼板にめっき層を形成し、
    前記めっき浴から鋼板が出た後の冷却速度が12℃/s以上であり、
    前記めっき層が形成された鋼板を再加熱する際の、鋼板の最高到達温度をT(℃)、T℃から150℃までの冷却時間をx(hr)としたときに、以下の式(1)及び(2)を満足することを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法。
    150≦T≦300 ・・・(1)
    0.5≦x≦1000/(T+273) ・・・(2)
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