JP2023143893A - 溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定して、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板並びにその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜と、該めっき皮膜の下地鋼板との界面側に形成された、Fe、Al、Si、Zn及び不可避的不純物を含む界面合金層と、を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、前記めっき皮膜は、主としてAl初晶からなるデンドライト、及び、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有し、前記Al初晶は、α-Al相のマトリックス及びZnの析出物を含み、前記マトリックス中のZn含有量が30質量%以下であり、前記界面合金層の厚さが1μm以下であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
溶融Al-Zn系めっき鋼板は、Znの犠牲防食性とAlの高い耐食性とが両立できているため、溶融亜鉛めっき鋼板の中でも高い耐食性を示すことが知られている。そのため、溶融Al-Zn系めっき鋼板は、長期間屋外に曝される屋根や壁等の建材分野、ガードレール、配線配管、防音壁等の土木建築分野に多く使用されている。特に、大気汚染による酸性雨や、積雪地帯での道路凍結防止用融雪剤の散布、海岸地域開発等の、より厳しい使用環境下での、耐食性に優れる材料や、メンテナンスフリー材料への要求が高まっていることから、近年、溶融Al-Zn系めっき鋼板の需要は増加している。
ここで、溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき皮膜は、主層及び下地鋼板と主層との界面に存在する界面合金層からなり、主層は、主としてZnを過飽和に含有しAlがデンドライト凝固した部分(α-Al相のデンドライト部分)と、残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト)とから構成され、前記α-Al相は、めっき皮膜の膜厚方向に複数積層した構造を有している。このような特徴的な皮膜構造により、表面からの腐食進行経路が複雑になるため、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなり、溶融Al-Zn系めっき鋼板は、めっき皮膜の厚さが同じ溶融亜鉛めっき鋼板に比べて、より優れた耐食性を実現できる。
ただし、溶融Al-Zn系めっき鋼板は、優れた耐食性を有するものの、溶融亜鉛めっき鋼板よりもめっき皮膜が硬く、曲げ加工性に劣るという課題があった。そのため、鋼板に曲げ加工を施した際、曲げ加工部先端のめっき皮膜にクラック(割れ)を生じやすくなる。このクラックは、外観を毀損することは勿論であるが、クラックがめっき皮膜の途中まで達することにより、当該部のめっきかぶり厚が薄くなる、あるいはクラックがめっき皮膜を貫通して下地鋼板が露出する、などの事象を引き起こし、溶融Al-Zn系めっき鋼板が本来有する優れた耐食性が、曲げ加工部において著しく低下する原因となっていた。
このため、従来から溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性の改善を図ろうとする種々の試みがなされている。
例えば、めっき後の溶融Al-Zn系めっき鋼板に、所定の熱履歴を加えることにより、曲げ加工性の改善を図る技術が挙げられる(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
特許第3654521号公報 特開2013-245355公報
特許文献1及び2のような、溶融Al-Zn系めっき鋼板に熱履歴を施す技術では、めっき皮膜を軟質化でき、曲げ加工性について、ある程度の改善が可能となった。
しかしながら、特許文献1及び2の技術で改善された曲げ加工性については、より厳しい曲げ加工を行った際には十分とはいえず、種々の建築部材への適用を考えると、曲げ加工性及び加工部の耐食性のさらなる改善が望まれていた。さらに、曲げ加工性及び加工部の耐食性をより確実に(安定して)向上できる技術の開発も望まれていた。
本発明は、かかる事情に鑑み、安定して、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法、を提供することを目的とする。
本発明者らは、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板について、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、めっき皮膜が、主としてAl初晶からなるデンドライト、及び、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有しており、このうちAl初晶では、α-Al相のマトリックス内に点在するZnの析出物が100nm以下の微細な場合に、デンドライトの硬質化に影響を及ぼすことに着目し、マトリックス中のZn含有量を低く抑えることで、上述したZnの析出物の微細化及び増加を抑制しつつ、デンドライトの軟質化を図り、安定して優れた曲げ加工性及び加工部の耐食性を実現できること、を見出した。
また、上述したAl初晶中のZnの析出物については、めっき皮膜を形成した後の熱履歴の条件と密接に関連することに着目し、めっき皮膜形成後の熱履歴について、最高到達温度、並びに、昇温時間及び冷却時間について適正化を図ることで、前記マトリックス中のZn含有量を低く抑え、優れた曲げ加工性及び加工部の耐食性を有する溶融Al-Zn系めっき鋼板を得ることができること、を見出した。
さらに、Al-Zn共晶では、Al部とZn部が交互に縞状に配置された組織(以下「ストライプ状組織」)を有し、その周期が2μm以下の場合に、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性を低下させることに着目し、ストライプ状組織を消失させることで、優れた曲げ加工性及び加工部の耐食性を実現できること、も見出した。
加えて、硬度が大きい界面合金層の厚さを1μm以下と抑えることで、曲げ加工性をより高めることができること、も見出した。
なお、本発明でいう、優れた曲げ加工性とは、実用的に十分な曲げ加工性であり、「T曲げ」で評価する場合には、最低でも「6Tノークラック」、好ましくは「4Tノークラック」程度が必要である。なお、「T曲げ」とは、鋼板の板厚を挟んだ状態で実施する180°曲げ試験であり、例えば「6T曲げ」であれば対象材の内側に同一板厚の板を6枚挟んで180°曲げを行う。このとき、「ノークラック」とは、例えばルーペにて10倍で曲げ加工部の外側先端を観察したときに、クラックが観察されない状態を示す。なお、曲げ試験については、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験である。
ちなみに、通常の溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性は、めっき皮膜の条件にもよるが、「12T ノークラック」以上であり、「10T曲げ」でも「ノークラック」とならないことが多い。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜と、該めっき皮膜の下地鋼板との界面側に形成された、Fe、Al、Si、Zn及び不可避的不純物を含む界面合金層と、を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、
前記めっき皮膜は、主としてAl初晶からなるデンドライト、及び、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有し、
前記Al初晶は、α-Al相のマトリックス及びZnの析出物を含み、前記マトリックス中のZn含有量が30質量%以下であり、
前記界面合金層の厚さが1μm以下であることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板。
2.前記Al初晶における前記Znの析出物の最大径の平均が100nm以上であることを特徴とする、前記1に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
3.前記デンドライト間隙のAl-Zn共晶が、周期が2μm以下のストライプ状組織を有しないことを特徴とする、前記1又は2に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
4.前記1~3のいずれかに記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法であって、
下地鋼板に、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜を形成する工程と、
前記めっき皮膜の形成後、鋼板に、最高到達温度が150℃以上277℃以下となる熱履歴を付与する工程と、を具え、
前記熱履歴を付与する工程において、前記最高到達温度から150℃までの冷却時間を2時間未満、150℃から常温までの冷却時間を3時間以上、とすることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、安定して、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法、を提供できる。
Al-Zn二元系平衡状態図である。 比較例1及び本発明例14の溶融Al-Zn系めっき鋼板のサンプルについて、それぞれ、α-Al相のマトリックス中のZn含有量、Al初晶におけるZnの析出物の最大径の平均値、及び、Al初晶の断面を観察した写真、を示したものである。 比較例1、本発明例14及び比較例22の溶融Al-Zn系めっき鋼板のサンプルについて、それぞれ、めっき皮膜の断面を観察した写真である。 比較例1及び本発明例14の溶融Al-Zn系めっき鋼板のサンプルについて、それぞれ、曲げ加工部の耐食性の評価結果を示したグラフ、1T曲げ加工部を観察した写真である。
(溶融Al-Zn系めっき鋼板)
本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、鋼板表面にめっき皮膜を有する。
そして、前記めっき皮膜は、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部が実質的にZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する。前記溶融めっき鋼板のめっき皮膜が、上述した組成を有することによって、良好な耐食性を実現できる。
なお、該めっき皮膜は、下地鋼板との界面側に存在する界面合金層と該界面合金層の上に存在する主層とからなる。
前記めっき皮膜中のAl含有量は、耐食性と操業面のバランスから、45~65質量%とし、好ましくは50~60質量%である。
前記めっき皮膜中のAl含有量が、少なくとも45質量%あれば、Al初晶のデンドライト凝固が生じ、デンドライト凝固組織がめっき皮膜の膜厚方向に積層する構造を得ることができる。前記デンドライト凝固組織がめっき皮膜の膜厚方向に積層する構造を取ることで、めっき皮膜の腐食進行経路が複雑になり、耐食性を向上させることができる。また、このデンドライトが多く積層するほど、腐食進行経路が複雑になり、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなって、耐食性が向上する。
一方、前記めっき皮膜中のAl含有量が65質量%を超えると、デンドライトに存在するZnのほとんどがAl初晶に固溶した組織に取り込まれ、腐食進行時におけるAl初晶の溶解反応を抑制できず、耐食性が劣化する。
前記めっき皮膜中のSiは、下地鋼板との界面に生成する界面合金層の成長を抑制するとともに、前記めっき皮膜と下地鋼板との密着性を劣化させない目的で添加される。
本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の場合、Siを含有したAl-Zn系めっき浴に鋼板を浸漬させると、鋼板表面のFeと、めっき浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の金属間化合物が下地鋼板/めっき皮膜界面に層状に生成する(界面合金層が形成される)が、このときFe-Al-Si系合金はFe-Al系合金よりも成長速度が遅いので、Fe-Al-Si系合金の比率が高いほど、合金相全体の成長を抑制できる。そのため、前記めっき皮膜中のSi含有量は1.0質量%以上であることを要する。
一方、前記界面合金層の形成で消費されずに余剰となったSiは、めっき皮膜中にSi相として析出するが、Si相はAl初晶やAl-Zn共晶よりも電気化学的に貴であり、カソードとして作用するため、めっき皮膜の腐食を促進して耐食性を低下させる作用がある。具体的には、前記めっき皮膜中のSi含有量が3.0質量%を超えると、前述した合金相の成長抑制効果が飽和するだけでなく、Si相の量が増加して腐食が促進されるため、Si含有量は3.0質量%以下とする。
同様の観点から、前記めっき皮膜中のSi含有量は、2.5質量%以下であることがより好ましい。
なお、前記めっき皮膜は、Zn、Fe及び不可避的不純物を含有する。
これら成分のうち、Feは、鋼板や浴中機器がめっき浴中に溶出することで不可避的に含まれるものや、前記界面合金層の形成時に下地鋼板からの拡散によって供給されるものがあり、前記めっき皮膜中に不可避的に含まれる成分である。前記めっき皮膜中のFeについては、下地鋼板から取り込まれたものと、前記めっき浴中から溶出したものとを区別して定量することはできない。前記めっき皮膜中のFe含有量は、通常0.3~2.0質量%程度である。
また、前記Fe以外の不可避的不純物としては、Cr、Ni、Cu等が挙げられる。
前記Fe及び前記不可避的不純物の総含有量については、特に限定はされないが、過剰に含有した場合、めっき鋼板の各種特性に影響を及ぼす可能性があるため、合計で5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板では、腐食生成物の安定性を向上させ、腐食の進行を遅延させる効果を奏することができる点から、前記めっき皮膜が、合計で0.01~10質量%の、Mg、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Ca、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、さらに含有することもできる。上述した成分の合計含有量を0.01~10質量%としたのは、十分な腐食遅延効果を得ることができるとともに、効果が飽和することもないためである。
なお、前記めっき皮膜の付着量は、各種特性を満足する観点から、片面あたり45~120 g/m2であることが好ましい。前記めっき皮膜の付着量が45g/m2以上の場合には、建材などの長期間耐食性が必要となる用途に対しても十分な耐食性が得られ、また、前記めっき皮膜の付着量が120g/m2以下の場合には、加工時のめっき割れ等の発生を抑えつつ、優れた耐食性を実現できるためである。
同様の観点から、前記めっき皮膜の付着量は、45~100g/m2であることがより好ましい。
ここで、前記めっき皮膜の付着量については、例えば、JIS H 0401:2013年に示される塩酸とヘキサメチレンテトラミンの混合液で特定面積のめっき皮膜を溶解剥離し、剥離前後の鋼板重量差から算出する方法で導出することができる。この方法で片面あたりのめっき付着量を得るには、非対象面のめっき表面が露出しないようにテープでシーリングしてから前述した溶解を実施することができる。
また、前記めっき皮膜の成分組成は、例えば、めっき皮膜を塩酸等に浸漬して溶解させ、その溶液をICP発光分光分析や原子吸光分析等で確認することができる。この方法はあくまでも一例であり、めっき皮膜の成分組成を正確に定量できる方法であればどのような方法でも良く、特に限定するものではない。
なお、本発明により得られた溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき皮膜は、全体としてはめっき浴の組成とほぼ同等となる。そのため、前記めっき皮膜の組成の制御は、めっき浴組成を制御することにより精度良く行うことができる。
また、前記めっき皮膜中の界面合金層については、前記めっき皮膜のうち、下地鋼板との界面に存在する層であり、Fe、Al、Si、Zn及び不可避的不純物を含む層状の界面合金層である。上述したように、前記界面合金層は、下地鋼板表面のFeと、めっき浴中のAlやSiが合金化反応して必然的に形成される。
この界面合金層は、硬くて脆いため、厚く成長すると加工時のクラック発生の起点となることから、できるだけ薄くする必要がある。そのため、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板では、前記界面合金層の厚さが1μm以下であることを要し、0.8μm以下であることが好ましい。前記界面合金層の厚さが1μmを超えると、曲げ加工性を低下させることになる。
なお、前記界面合金層は、走査電子顕微鏡(SEM)等を用いて前記めっき皮膜の断面を3視野以上観察したときに、各視野内に存在する界面合金層の平均厚さの、測定値の平均をとった値である。
また、前記界面合金層の厚さを抑える方法については、特に限定はされない。例えば、上述したように、めっき皮膜中のSiの含有量を調整する方法や、後述するように、めっき皮膜を形成した後に熱履歴を付与する際の冷却時間を調整する方法等が挙げられる。
ここで、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板では、前記めっき皮膜が、主としてAl初晶からなるデンドライト、及び、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有する。
そして、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板では、前記Al初晶は、α-Al相のマトリックス中にZnの析出物を有し、前記マトリックス中のZn含有量が30質量%以下であることを特徴とする。
前記α-Al相のマトリックス中に、Znが過飽和に(Zn含有量が30質量%を超えた状態で)固溶したまま凝固すると、Znの固溶強化により硬度が大きくなるため、伸びが減少し、曲げ加工性が低下する。そのため、本発明では、前記マトリックス中のZn含有量を30質量%以下に限定することで、前記Al初晶の固溶強化を抑え、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性、ひいては加工部の耐食性を高めている。また、析出強化による曲げ加工性の低下は、Znの析出物が微細なほど顕著になる傾向にあることから、前記α-Al相のマトリックス中のZn含有量を30質量%以下にすることで、Znの析出物の成長を促すこともできる。なお、前記マトリックス中のZn含有量とは、マトリックスに含まれるZnの含有量であり、析出・分離したZn(Znの析出物)の含有量は含まれない。
同様の観点から、前記マトリックス中のZn含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
前記Znの析出物とは、Znを主成分とする粒状の析出物であるが、本発明においては、観察に使用した極低加速電圧走査電子顕微鏡(Ultra Low Accelerating Voltage Scanning Electron Microscope、以下「極低加速SEM」という。)の空間分解能が約30nmで、これよりも小さいZnの析出物は観察できないことから、前記30nm以上の径を有するものをZnの析出物とみなしている。
前記Al初晶については、α-Al相のマトリックス内にZnの析出物が点在する場合、上述したように、析出強化によって曲げ加工性が低下する傾向にあるが、その傾向は、析出物が微細なほど顕著になる。そのため、前記Znの析出物を大きく成長させたほうが曲げ加工性に有利となる。具体的には、前記Al初晶における前記Znの析出物の最大径の平均が100nm以上であることが好ましい。
なお、前記Znの析出物の最大径の平均とは、例えば極低加速SEM(加速電圧3kV、20000倍以上の倍率)でAl初晶を3視野以上観察したときに、各視野内に存在するZnを主とする析出物の長径を、大きい順に10点測定し、それら測定値の平均をとった値である。
また、前記めっき皮膜は、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有する。前記デンドライト間隙は、Al-Zn共晶の他には、単体Si相を含むこともある。
前記デンドライト間隙を構成するAl-Zn共晶は、Al部とZn部からなる。該Al-Zn共晶は、277℃以上に加熱されると、Al部のZn固溶度が増加してZn部がほぼ固溶し、Znをより過飽和に含有するAl部となる。その後、Al-Zn共晶は、冷却されると、277℃以下で再びAl-Zn共晶に変化するが、この際、前記Al-Zn共晶は、Al部とZn部が交互に縞状に配置されたストライプ状組織を有することとなる。
そして、本発明者らが研究した結果、メカニズムは定かではないが、このAl-Zn共晶のストライプ状組織は、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性を低下させること、特に、前記ストライプ状組織のストライプの周期が2μm以下と小さいときに、曲げ加工性の低下が顕著となることを見出した。
そのため、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性及び加工部の耐食性をより高める観点からは、前記デンドライト間隙のAl-Zn共晶に、周期が2μm以下のストライプ状組織が存在しないことが好ましい。なお、前記ストライプ状組織のストライプ周期の下限値については、特に限定はされない。ただし、後述する測定装置の性能から、ストライプ状組織の周期が30nm未満の場合は、その存在を確認するのが困難であることから、本発明においては、前記ストライプ周期が30nm以上のものを、ストライプ状組織とみなしている。
上述したAl-Zn共晶のストライプ状組織については、Al初晶中のZnの析出物と同じく、極低加速SEM(加速電圧3kV)によって測定することができる。加速電圧が高い、例えば加速電圧が15kV以上のSEMでは、ストライプの周期が2μm以下と小さい前記Al-Zn共晶のストライプ状組織については検出することができなかったが、本発明では、極低加速SEMを用いて観察することによって、存在の有無を確認することが可能である。お、前記Znの析出物及び前記Al-Zn共晶のストライプ状組織は、共に熱履歴を加えたときに生成するそれらよりも、微細なものであるため、例えば加速電圧15kVによる観察では、これらの存在の有無について考慮はされていなかった。
なお、上述した、マトリックス中のZn含有量、Znの析出物の最大径及び周期が2μm以下のストライプ状組織の有無を制御する方法については、特に限定はされず、製造条件の適正化等によって、適宜制御することができる。
例えば、後述するように、めっき浴の組成を定めた上で、めっき皮膜形成後の熱履歴の条件を適正化することで、マトリックス中のZn含有量、Znの析出物の最大径及び周期が2μm以下のストライプ状組織の有無を制御することができる。
また、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板は、前記めっき皮膜上に、直接又は中間層を介して、塗膜を形成することができる。
なお、前記塗膜の種類や、塗膜を形成する方法については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等の形成方法が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することが可能である。
また、前記中間層については、溶融めっき鋼板のめっき皮膜と前記塗膜との間に形成される層であれば特に限定はされない。例えば、化成処理皮膜や、接着層等のプライマーが挙げられる。前記化成処理皮膜については、例えば、クロメート処理液又はクロムフリー化成処理液を塗布し、水洗することなく、鋼板温度として80~300℃となる乾燥処理を行うクロメート処理又はクロムフリー化成処理により形成することが可能である。これら化成処理皮膜は単層でも複層でもよく、複層の場合には複数の化成処理を順次行えばよい。
(溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法)
本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法は、下地鋼板にめっき皮膜を形成する工程と、前記めっき皮膜の形成後、鋼板に熱履歴を付与する工程と、を具える。
なお、前記下地鋼板に前記めっき皮膜を形成する形成方法については、特に限定はされない。例えば、連続式溶融めっき設備で、前記下地鋼板を、洗浄、加熱、めっき浴浸漬することによって製造できる。
前記下地鋼板の加熱工程においては、下地鋼板自身の組織制御のために再結晶焼鈍などを施すとともに、鋼板の酸化を防止し且つ表面に存在する微量な酸化膜を還元するため、窒素-水素雰囲気等の還元雰囲気での加熱が有効である。
さらに、前記下地鋼板の種類や鋼中成分についても、特に限定はされず、要求される性能や規格に応じて、冷延鋼板や熱延鋼板等を適宜使用することができ、鋼中成分としては、例えば、C:0.01~0.10質量%のもの等を用いることができる。ただし、C:0.01%未満の鋼板も本発明では除くものではない。また、成分元素としてC、Al、Si、Mn、P以外に微量添加元素としてN、S、O、B、V、Nb、Ti、Cu、Mo、Cr、Co、Ni、Ca、Sr、In、Sn、Sb等を含有する鋼板も本発明の範疇にある。
加えて、前記下地鋼板を得る方法についても、特に限定はされない。例えば、前記熱延鋼板の場合、熱間圧延工程、酸洗工程を経たものを使用することができ、前記冷延鋼板の場合には、さらに冷間圧延工程を加えて製造できる。さらに、鋼板の特性を得るために溶融めっき工程の前に、再結晶焼鈍工程等を経ることも可能である。
前記めっき皮膜を形成する際に用いるめっき浴については、上述したように、前記めっき皮膜の組成が全体としてはめっき浴の組成とほぼ同等となることから、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部が実質的にZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するものを用いる。
また、前記めっき浴の浴温は、特に限定はされないが、(融点+20℃)~650℃の温度範囲とすることが好ましい。
前記めっき浴の浴温の下限を、融点+20℃としたのは、溶融めっき処理を行うためには、前記浴温を凝固点以上にすることが必要であり、融点+20℃とすることで、前記めっき浴の局所的な浴温低下による凝固を防止するためである。一方、前記浴温の上限を650℃としたのは、650℃を超えると、前記めっき皮膜の急速冷却が難しくなり、前記めっき皮膜と前記下地鋼板との界面に形成する界面合金層が厚くなるおそれがあるためである。
さらに、前記めっき浴に浸入する前記下地鋼板の温度(進入板温)についても、特に限定はされない。例えば、連前記続式溶融めっき操業におけるめっき特性の確保や浴温度の変化を防ぐ観点から、前記めっき浴の温度に対して±20℃以内に制御することが好ましい。
さらにまた、前記下地鋼板を前記めっき浴中へ浸漬する時間については、0.5秒以上であることが好ましい。前記浸漬時間が0.5秒未満の場合、前記下地鋼板の表面に十分なめっき皮膜を形成できないおそれがあるためである。なお、前記浸漬時間の上限については特に限定はされないが、浸漬時間を長くするとめっき皮膜と鋼板との間に形成する界面合金層が厚くなるおそれもあることから、8秒以内とすることが好ましい。
そして、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法では、前記熱履歴を付与する工程において、最高到達温度が150℃以上277℃以下であり、前記最高到達温度から150℃までの冷却時間を2時間未満、150℃から常温までの冷却時間を3時間以上、とすることを特徴とする。
このような熱履歴を付与することによって、安定して、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板を得ることができる。
前記熱履歴を付与する際の最高到達温度を150℃以上277℃以下としているのは、前記最高到達温度が150℃未満ではZnの拡散が遅くなり、前記Al初晶における固溶強化及び析出強化の解消が十分に図ることができず、また、前記Al-Zn共晶におけるストライプ状組織も残存したままとなるため、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性を十分に得ることができない。一方、前記最高到達温度が277℃を超えると、前記Al初晶における固溶強化及び析出強化が解消され、またAl-Zn共晶におけるストライプ状組織も分解するが、その後冷却して277℃を通過する際にAl-Zn共晶にストライプ状組織が再度生成し、溶融Al-Zn系めっき鋼板の曲げ加工性の悪化を招く。
同様の観点から、前記熱履歴を付与する際の最高到達温度は、170℃以上250℃以下とすることが好ましく、190℃以上230℃以下とすることがより好ましい。
また、前記熱履歴を付与する工程において、前記最高到達温度から150℃までの冷却時間を2時間未満としているのは、前記界面合金層の成長を抑制することで、曲げ加工性の向上を図るとともに、前記昇温加熱段階で達成した前記めっき皮膜の組織が冷却段階で変化することを極力抑え、上述した固溶強化及び析出強化の解消を維持し、ストライプ状組織の発生を抑制するためである。
同様の観点から、前記最高到達温度から150℃までの冷却時間は、1時間以下であることが好ましい。
さらに、前記熱履歴を付与する工程において、前記150℃から常温までの冷却時間を3時間以上としているのは、前記Al初晶においてZnが拡散する温度と時間を確保し、前記マトリックス内のZn含有量を30質量%以下、前記Znの析出物の最大径平均を100nm以上とし、Al初晶における固溶強化及び析出強化の解消を十分なものにするためである。なお、前記「常温」とは、室温のことを意味し、25℃前後を想定したものである。
なお、前記150℃から常温までの冷却時間は、製造効率の観点から、10時間以内とすることが好ましい。
ここで、図1は、Al-Zn二元系平衡状態図を示したものである。
通常の溶融めっきプロセスでは、めっき後の冷却は急冷であるため、凝固時にデンドライトからのZn排出が間に合わず、前記マトリックスはZnを過飽和(30質量%超え)に固溶したまま凝固する。そのため、Al初晶のα-Al相(マトリックス)中に過飽和固溶したZnによって固溶強化が起こり、硬度が高くなる結果、伸びが減少し、曲げ加工性が低下する。
そして、前記めっき皮膜を形成した後に加熱を施すと、α-Al相の過飽和Znが析出してZn固溶度が下がり、その後の冷却で、α-Al相のマトリックスとZnの析出物に分離したままで凝固する。このとき、前記マトリックス中のZn含有量を30質量%以下となるよう制御することにより、Al初晶の固溶強化が解消されることがわかる。
また、Al-Zn共晶はAl部とZn部からなり、これを277℃以上に加熱すると、Al部のZn固溶度が増加してZn部がほぼ固溶し、Znをより過飽和に含有するAl部となる。そして、加熱後の冷却により、277℃以下で再びAl-Zn共晶に変化するが、このAl-Zn共晶はAl部とZn部が交互に縞状に配置したストライプ状組織となることがわかる。
なお、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法では、上述しためっき皮膜を形成する工程及び熱履歴を付与する工程以外の工程は特に限定はされず、溶融Al-Zn系めっき鋼板に要求される性能に応じて、任意の工程を適宜実施することができる。
また、上述した本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法によって得られた溶融Al-Zn系めっき鋼板の上に、直接又は中間層を介して、塗膜を形成する工程をさらに具えることもできる。
なお、前記塗膜を形成する方法については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装等の形成方法が挙げられる。有機樹脂を含有する塗料を塗装した後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱等の手段により加熱乾燥して塗膜を形成することが可能である。
また、前記中間層については、溶融めっき鋼板のめっき皮膜と前記塗膜との間に形成される層であれば特に限定はされない。前記中間層の種類や形成方法については、本発明の溶融Al-Zn系めっき鋼板の中で説明した内容と同様である。
<サンプル1~30>
(1)溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造
常法で製造した板厚0.35mmの冷延鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっき設備で、焼鈍処理、めっき処理を行うことで、表1に示すめっき皮膜組成及び付着量の溶融Al-Zn系めっき鋼板A~Cを作製した。
なお、溶融めっき鋼板製造に用いためっき浴の組成については、Al:55質量%、Si:1.6質量%、Fe:0.4質量%、残部が実質的にZn及び不可避的不純物である組成(めっきA)を基本として、各成分の含有量を変更した組成を用いた(めっきB、めっきC)。
また、めっき浴の浴温は、いずれも590℃とし、下地鋼板のめっき進入板温がめっき浴温と同温度となるように制御した。さらに、めっき皮膜の付着量は、いずれも片面あたり85±10g/m2となるように制御した。
(2)熱履歴の付与
得られた溶融Al-Zn系めっき鋼板について、表2に示す条件で熱履歴を付与し、各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板を得た。
(3)めっき皮膜の付着量、組成の確認
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板から、100mmφを打ち抜き、非測定面をテープでシーリングした後、JIS H 0401(2013年)に示されるように、塩酸とヘキサメチレンテトラミンの混合液でめっきを溶解剥離し、剥離前後のサンプルの質量差から、めっき皮膜の付着量を算出した。
その後、剥離液をろ過し、ろ液と固形分をそれぞれ分析した。具体的に、ろ液をICP発光分光分析することで、不溶Si以外の成分を定量化した。
なお、固形分は650℃の加熱炉内で乾燥・灰化した後、炭酸ナトリウムと四ホウ酸ナトリウムを添加することで融解させた。また、塩酸で融解物を溶解し、溶解液をICP発光分光分析することで、不溶Siを定量化した。めっき皮膜中のSi濃度は、ろ液分析によって得た可溶Si濃度に、固形分分析によって得た不溶Si濃度を加算したものである。
得られためっき皮膜A~Cの組成及び付着量については、表1に示す。
Figure 2023143893000002
<評価>
上記のように得られた溶融Al-Zn系めっき鋼板の各サンプルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)めっき皮膜の条件
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板について、めっき皮膜の断面を、極低加速SEMによって観察し、エネルギー分散型X線分光法(以下、「EDX」)によって分析を行った。
上記めっき皮膜の観察及び分析の条件は、Zeiss社製ULTRA55(極低加速SEM)とOxford Instruments社製Ultim Extreme(EDX)を使用し、加速電圧3kV、観察倍率3000倍及び20000倍、所定箇所を点分析、とした。
なお、Al初晶中に存在するZnを主とする析出物の最大径平均は、20000倍で3視野観察し、各視野のAl初晶中からZnを主とする析出物を大きな順に10点抽出し、その長径を測定し、平均を算出することで得た。また、ストライプ状組織の最小周期は、20000倍で3視野観察し、存在するストライプ状組織のストライプ周期を測定し、それらのうち最小のものを最小周期とした。
得られためっき皮膜の条件(マトリックス中のZn濃度及びZnの析出物の最大径の平均、Al-Zn共晶のストライプ状組織の有無及び最小周期、並びに、界面合金層の厚さ)を表2に示す。
また、サンプル1及びサンプル14の溶融Al-Zn系めっき鋼板について、Al初晶中に存在するZnを主とする析出物を観察した写真を図2に示す。
さらに、サンプル1、サンプル14及びサンプル22の溶融Al-Zn系めっき鋼板について、Al-Zn共晶のストライプ状組織を観察した写真を図3に示す。
(2)曲げ加工性
各サンプルの溶融Al-Zn系めっき鋼板について、10T~0Tの範囲で、2Tずつ減らしながら、「T曲げ」の曲げ試験(JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験)を実施し、ルーペにて10倍で観察した際、「ノークラック」となる曲げTの限界を確認した。結果を表2に示す。
なお、「T曲げ」とは、鋼板の板厚を挟んだ状態で実施する180°曲げ試験である。また、観察した際の「ノークラック」とは、ルーペにて10倍で曲げ加工部の外側先端を観察したときに、クラックが全く観察されない状態を示す。さらに、「曲げTの限界」とは、ノークラックであったT曲げのうち、最も小さなTのことである。例えば、6T曲げではノークラックで、4T曲げでクラックが観察された場合には、曲げTの限界は「6T」となる。
(3)曲げ加工部の耐食性
サンプル1及びサンプル14の溶融Al-Zn系めっき鋼板について、0T~9Tの範囲でT曲げを行った状態で、千葉市中央区で屋外暴露試験を行った。4年8ヶ月暴露試験を行った後の曲げ加工部を目視観察し、以下の基準で評価を行った。評価結果を図4に示す。
(評価基準)
1点: 明確に赤錆あり
2点: 微かに赤錆あり
3点: 赤錆なし
Figure 2023143893000003
表2及び図4の結果から、本発明例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、曲げ加工性及び加工部の耐食性のいずれについてもバランスよく優れていることがわかる。
本発明によれば、安定して、曲げ加工性及び曲げ加工部の耐食性に優れた溶融Al-Zn系めっき鋼板及びその製造方法、を提供できる。

Claims (4)

  1. Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜と、該めっき皮膜の下地鋼板との界面側に形成された、Fe、Al、Si、Zn及び不可避的不純物を含む界面合金層と、を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板であって、
    前記めっき皮膜は、主としてAl初晶からなるデンドライト、及び、Al-Zn共晶を含むデンドライト間隙を有し、
    前記Al初晶は、α-Al相のマトリックス及びZnの析出物を含み、前記マトリックス中のZn含有量が30質量%以下であり、
    前記界面合金層の厚さが1μm以下であることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  2. 前記Al初晶における前記Znの析出物の最大径の平均が100nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  3. 前記デンドライト間隙のAl-Zn共晶が、周期が2μm以下のストライプ状組織を有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板。
  4. 請求項1又は2に記載の溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法であって、
    下地鋼板に、Al:45~65質量%及びSi:1.0~3.0質量%を含有し、残部がZn、Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するめっき皮膜を形成する工程と、
    前記めっき皮膜の形成後、鋼板に、最高到達温度が150℃以上277℃以下となる熱履歴を付与する工程と、を具え、
    前記熱履歴を付与する工程において、前記最高到達温度から150℃までの冷却時間を2時間未満、150℃から常温までの冷却時間を3時間以上、とすることを特徴とする、溶融Al-Zn系めっき鋼板の製造方法。
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