JP3206281B2 - 自動二輪車のバッテリ保持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動二輪車のバッテリ
保持装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に市販されている自動二輪車には、
電源用のバッテリが搭載されている。このバッテリは、
開閉可能に設けられた着座シートの下方に配置される場
合が多い。着座シートの下方には、図７に示すようなバ
ッテリホルダ１００が設けられており、このバッテリホ
ルダ１００にバッテリが上方から挿入され、ゴムバンド
１０１等で固定される。

【０００３】上記バッテリホルダ１００は、鋼板や樹脂
材料で構成され、ボルト１０２等によって自動二輪車の
車体フレームに締着固定される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなバッテリホルダ１００を設けることによって車体の
構成部品点数が増加するとともに、バッテリホルダ１０
０を車体フレームに固定させる作業（ボルト１０２の締
結作業）が別途必要になるため、車体の製造コストが嵩
むという問題があった。

【０００５】また、バッテリホルダ１００とバッテリ間
や、バッテリホルダ１００と他の部品間に隙間を設けな
ければならず、これらの隙間を累積すれば比較的大きな
デッドスペースとなる。このため、自動二輪車の限られ
たスペース配分下では非常に不利となる。

【０００６】さらに、バッテリホルダ１００の形状に合
わせて周辺の部品形態を考慮する必要があるため、周辺
の部品形状の設計自由度が損なわれてしまい、場合によ
っては非機能的な部品形状となる場合があった。

【０００７】本発明は、これらの問題点を解決するため
になされたもので、バッテリホルダを不要にして車体の
構成部品点数を減少させると同時にバッテリホルダを車
体に固定させる作業をなくして車体の製造コストダウン
を図り、併せて自動二輪車の限られたスペースを有効に
利用しつつバッテリ周辺の部品形状の設計自由度を高め
ることのできる自動二輪車のバッテリ保持装置を提供す
ることを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る自動二輪車のバッテリ保持装置は、開
閉可能な着座シートの下方にバッテリを保持する自動二
輪車のバッテリ保持装置において、上記着座シートの下
方かつ前側に液体タンクを配置し、着座シートの下方か
つ上記液体タンクの後側に隣接させてリヤフェンダを配
置し、上記液体タンクとリヤフェンダ前部との間に車体
フレームのブリッジ部材を車幅方向に通し、このブリッ
ジ部材に液体タンクとリヤフェンダ前部をそれぞれ固定
するとともに、液体タンクとリヤフェンダ前部との間に
上記バッテリを後傾させて保持可能なバッテリ保持部を
設け、このバッテリ保持部を、リヤフェンダ前部側に設
けられて後傾したバッテリの後面と下面と左右両側面と
を保持する棚状であって側面視でバッテリの後面と下部
後方の角部のみを支持可能なリヤフェンダ側バッテリ保
持部と、液体タンク側に設けられて後傾したバッテリの
前面および下面を保持して側面視でバッテリの下部前方
の角部のみを支持可能な液体タンク側バッテリ保持部と
を備えて構成し、上記着座シートの下方には上記バッテ
リ保持部に保持されたバッテリの上部に当接する当接部
を設けたことを特徴とする自動二輪車のバッテリ保持装
置。

【０００９】

【作用】自動二輪車のバッテリ保持装置を上記構成とす
ることにより、着座シートと、その下方に配置された液
体タンクおよびリヤフェンダが、そのままバッテリホル
ダとして機能するため、従来用いられていた専用のバッ
テリホルダを省略することができるとともに、バッテリ
ホルダの固定作業が不要になる。このため、車体の大幅
な製造コストダウンを図ることができ、しかもバッテリ
ホルダとなる液体タンクおよびリヤフェンダとバッテリ
とが隙間なく配列されるため、デッドスペースが削減さ
れ、自動二輪車内部の限られたスペース配分上、非常に
有利になる。

【００１０】また、バッテリ保持部が液体タンクとリヤ
フェンダとに分割して設けられるため、液体タンクとリ
ヤフェンダの各々に加えられる形状変更の度合が最小限
になり、バッテリ周辺の部品形状の設計自由度が大きく
向上する。

【００１１】しかも、このようにバッテリ保持部の一方
が、リヤフェンダに比べて形状設定自由度の高い液体タ
ンク側に形成されるため、バッテリ保持部を設けること
による液体タンクの機能性低下が起きにくく、同時にバ
ッテリ保持部の他方を構成するリヤフェンダ側の設計自
由度が向上する。

【００１２】さらに、リヤフェンダ側バッテリ保持部は
側面視でバッテリの後面と下部後方の角部のみを支持可
能に形成され、液体タンク側バッテリ保持部は側面視で
バッテリの下部前方の角部のみを支持可能に形成されて
おり、これによりバッテリがスポット的に支持されるた
め、各バッテリ保持部の形状を一層小形化することがで
き、液体タンクとリヤフェンダの設計自由度がより向上
する。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。図１は、本発明を適用可能な自動二輪車の一例
を示す左側面図である。

【００１４】この自動二輪車１は、例えば鋼管製の車体
フレーム２を備えており、この車体フレーム２の前頭部
に、前輪３を軸支するフロントフォーク４が、ハンドル
バー５やフロントフェンダ６とともに左右回動自在に設
けられている。一方、車体フレーム２の中央部に架設さ
れたピボット軸７には、後方に延びて後輪８を軸支する
スイングアーム９が上下回動自在に枢着されており、上
記スイングアーム９はその基端部に設けられたサスペン
ション装置１１によって緩衝懸架されている。

【００１５】車体フレームの前方下部にはエンジン１２
が搭載されており、このエンジン１２の出力はチェーン
１３によって上記後輪８に伝達される。なお、エンジン
１２の後部にはキャブレタ１４とエアクリーナ１５が順
に連結され、エンジン１２の前部には後方に延びる排気
マフラ１６が接続されている。

【００１６】エンジン１２の前方にはラジエータ１７が
設けられており、このラジエータ１７はエンジン１２の
側部に設けられた冷却水ポンプ１８に冷却水ホース１９
で接続されている。さらに、ラジエータ１７の冷却水を
貯蔵するリザーバタンク２１が前記エアクリーナ１５の
後下方に設けられている。

【００１７】エンジン１２の上部には燃料タンク２２が
設置され、この燃料タンク２２の後部に着座シート２３
とピリオンシート２４が開閉可能に載置されている。上
記着座シート２３とピリオンシート２４の下方には、後
輪８の上部を覆うリヤフェンダ２５が設けられている。

【００１８】着座シート２３の下方には、電源用のバッ
テリ２７が搭載されている。このバッテリ２７は本発明
に係るバッテリ保持装置２８によって保持される。図２
は、図１のＩＩ部を拡大したバッテリ保持装置２８の左
側面図で、本発明の一実施例を示す図であり、図３はバ
ッテリ保持装置２８の斜視図である。

【００１９】本発明に係るバッテリ保持装置２８は、バ
ッテリ２７を上方から収納でき、かつバッテリ２７を後
傾した姿勢で保持可能に設けられたバッテリ保持部と、
このバッテリ保持部に収納されたバッテリ２７の上面に
当接してバッテリ２７を固定するよう、着座シート２３
の下面に設けられた当接部３０とを備えている。

【００２０】上記バッテリ保持部は、着座シートの下方
かつ前側に配置された液体タンクであるリザーバタンク
２１に設けられた液体タンク側バッテリ保持部３１Ｂ
と、リザーバタンク２１の後側に隣接するように配置さ
れたリヤフェンダ２５の前部に設けられたリヤフェンダ
側バッテリ保持部３１Ａとに分割されて設けられてい
る。

【００２１】図２に示すように、リヤフェンダ２５の前
端部とリザーバタンク２１との間には車体フレーム２の
ブリッジ部材３２が車幅方向に通されており、このブリ
ッジ部材３２にリヤフェンダ２５の前端部とリザーバタ
ンク２１の中間部がそれぞれボルト３４，３５によって
固定されている。また、リザーバタンク２１の下部はボ
ルト３６によってリヤフェンダ２５の前端部に直接固定
されている。なお、リザーバタンク２１の上部には冷却
水注入口３７が設けられている。

【００２２】リヤフェンダ２５の前部に設けられている
リヤフェンダ側バッテリ保持部３１Ａは、後傾して配置
されるバッテリ２７の後面と下面後部、ならびに左右両
側面の後部を支持可能な棚状に形成されている。また、
リザーバタンク２１の上部に設けられた液体タンク側バ
ッテリ保持部３１Ｂは、リザーバタンク２１の上部にリ
ヤフェンダ側バッテリ保持部３１Ａの背面３８に平行す
る舌片３９を突設するとともに、この舌片３９に直角な
支持面４０を設け、バッテリ２７の前面下部と下面前部
とを支持可能な棚状に形成したものである。なお、リヤ
フェンダ側バッテリ保持部３１Ａと液体タンク側バッテ
リ保持部３１Ｂの各面には、弾性材料でなる緩衝パッド
４１が固着されている。

【００２３】ここで、リヤフェンダ側バッテリ保持部３
１Ａと液体タンク側バッテリ保持部３１Ｂは、それぞれ
バッテリ２７をスポット的に支持するように形成されて
いる。即ち、図２に示すように、側面視でリヤフェンダ
側バッテリ保持部３１Ａはバッテリ２７の後面とともに
下部後方の角部βのみを支持し、液体タンク側バッテリ
保持部３１Ｂはバッテリ２７の下部前方の角部αのみを
支持している。

【００２４】一方、着座シート２３の下面に設けられた
前記当接部３０は、着座シート２３の底板４２の一部を
バッテリ２７の上面に平行させ、この部分に弾性材料で
なる緩衝ブロック４３を固着したものである。

【００２５】したがって、リヤフェンダ側バッテリ保持
部３１Ａと液体タンク側バッテリ保持部３１Ｂにバッテ
リ２７を上方から収容し、着座シート２３を車体フレー
ム２に取り付けると、各バッテリ保持部３１Ａ，３１Ｂ
と当接部３０とにより、バッテリ２７が上下左右前後へ
の動きを全て規制され、確実に固定される。

【００２６】このようなバッテリ保持装置２８によれ
ば、着座シート２３と、その下方に配置されたリザーバ
タンク２１およびリヤフェンダ２５が、そのままバッテ
リホルダとして機能する。このため、従来用いられてい
た専用のバッテリホルダを省略することができるととも
に、バッテリホルダの固定作業が不要になるため、車体
の大幅な製造コストダウンを図ることができる。しか
も、バッテリホルダとなるリザーバタンク２１およびリ
ヤフェンダ２５と、バッテリ２７とが隙間なく配列され
るため、デッドスペースが削減され、自動二輪車１内部
の限られたスペース配分上、非常に有利になる。

【００２７】また、着座シート２３の下方で前後に隣接
するリザーバタンク２１とリヤフェンダ２５とに、それ
ぞれリヤフェンダ側バッテリ保持部３１Ａと液体タンク
側バッテリ保持部３１Ｂとを分割して設けたので、各バ
ッテリ保持部３１Ａ，３１Ｂの大きさが小形化されると
ともに、形状が簡素化される。このため、リザーバタン
ク２１とリヤフェンダ２５の各々に加えられる形状変更
の度合が最小限になり、バッテリ２７周辺の部品形状の
設計自由度が大きく向上する。

【００２８】さらに、リヤフェンダ側バッテリ保持部３
１Ａは側面視でバッテリ２７の後面と下部後方の角部β
のみを支持可能に形成され、液体タンク側バッテリ保持
部３１Ｂは側面視でバッテリ２７の下部前方の角部αの
みを支持可能に形成されており、各バッテリ保持部３１
Ａ，３１Ｂがバッテリ２７をスポット的に支持するのみ
なので、各バッテリ保持部３１Ａ，３１Ｂの形状を一層
小形化することができ、リザーバタンク２１とリヤフェ
ンダ２５の設計自由度がより向上する。

【００２９】加えて、バッテリ保持部３１Ｂを、他の部
品に比べて形状設定自由度の高い液体タンクであるリザ
ーバタンク２１に設けたため、バッテリ保持部３１Ｂを
設けることによるリザーバタンク２１の機能性低下が起
きにくい。つまり、リザーバタンク２１は一定量の冷却
水を貯蔵できる容量さえあれば、その形状はあまり問わ
れないため、バッテリ保持部３１Ｂを設けることによっ
てリザーバタンク２１の形状が多少変形しても、問題が
起きにくい。同時に、バッテリ保持部３１Ｂと対をなす
リヤフェンダ側バッテリ保持部３１Ａを一層簡素な形状
にすることができるので、リヤフェンダ側バッテリ保持
部３１Ａが設けられるリヤフェンダ２５の設計自由度が
さらに向上する。

【００３０】図４は、本発明の変形例を示すバッテリ保
持装置４５の左側面図であり、図５はバッテリ保持装置
４５の斜視図である。このバッテリ保持装置４５の場
合、バッテリ２７が上方から収納されるポケット状のバ
ッテリ保持部４６が、例えばリザーバタンク４７に一体
に設けられている。

【００３１】リザーバタンク４７は、例えば直方体に形
成されており、その後部に続く形で上記バッテリ保持部
４６が一体形成されている。そして、バッテリ保持部４
６の上部に設けられた締着部４８が車体フレーム２のシ
ートレール４９にボルト止めされ、バッテリ保持部４６
の底部に設けられた締着部５０がボルト５１で車体フレ
ーム２のブリッジ部材３２に固定される。これにより、
リザーバタンク４７とバッテリ保持部４６は一体に車体
フレーム２に固定される。なお、バッテリ保持部４６の
内面には緩衝パッド５２が固着されている。

【００３２】一方、着座シート２３の下面には、バッテ
リ保持部４６に収納されたバッテリ２７の上面に当接し
てバッテリ２７を固定する当接部５７が設けられてい
る。この当接部５７は、第一実施例の場合と同様に、着
座シート２３の底板５８の一部をバッテリ２７の上面に
平行させ、この部分に弾性材料でなる緩衝ブロック５９
を固着したものである。

【００３３】リザーバタンク４７の上面には冷却水注入
口６１が設けられており、ゴム等の弾性材料でなるキャ
ップ６２が圧入される。なお、リザーバタンク４７の上
面４７Ａは、図６（Ａ）に示すようにリザーバタンク４
７の本体に接着、溶着等によって固着されるか、あるい
は図６（Ｂ）に示すようにシール部材６３を介してビス
止め等によって固定される。また、リザーバタンク４７
全体をブロー成型等によって一体成型してもよい。な
お、図４中に示す部品６４はエアクリーナである。

【００３４】このようなバッテリ保持装置４５によれ
ば、ポケット状に構成されたバッテリ保持部４６が着座
シート２３下方のリザーバタンク４７に一体に設けられ
ていることから、バッテリホルダおよびその固定作業が
不要になり、多大なコストダウンに貢献することができ
る。

【００３５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る自動
二輪車のバッテリ保持装置によれば、バッテリホルダを
不要にして車体の構成部品点数を減少させると同時にバ
ッテリホルダを車体に固定させる作業をなくして車体の
製造コストダウンを図り、併せて自動二輪車の限られた
スペースを有効に利用しつつバッテリ周辺の部品形状の
設計自由度を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用可能な自動二輪車の一例を示す左
側面図。

【図２】図１のＩＩ部を拡大したバッテリ保持装置の左
側面図で、本発明の第一実施例を示す図。

【図３】バッテリ保持装置の斜視図。

【図４】本発明の変形例を示すバッテリ保持装置の左側
面図。

【図５】バッテリ保持装置の斜視図。

【図６】（Ａ），（Ｂ）とも、リザーバタンク上面の構
造を示す縦断面図。

【図７】従来の技術を示すバッテリホルダの斜視図。

【符号の説明】

１ 自動二輪車 ２１ 液体タンクであるリザーバタンク ２３ 着座シート ２５ リヤフェンダ ２７ バッテリ ２８ バッテリ保持装置 ３０ 当接部 ３１Ａ リヤフェンダ側バッテリ保持部 ３１Ｂ 液体タンク側バッテリ保持部 ３２ ブリッジ部材 α バッテリの下部前方の角部 β バッテリの下部後方の角部

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 開閉可能な着座シートの下方にバッテリ
   を保持する自動二輪車のバッテリ保持装置において、上
   記着座シートの下方かつ前側に液体タンクを配置し、着
   座シートの下方かつ上記液体タンクの後側に隣接させて
   リヤフェンダを配置し、上記液体タンクとリヤフェンダ
   前部との間に車体フレームのブリッジ部材を車幅方向に
   通し、このブリッジ部材に液体タンクとリヤフェンダ前
   部をそれぞれ固定するとともに、液体タンクとリヤフェ
   ンダ前部との間に上記バッテリを後傾させて保持可能な
   バッテリ保持部を設け、このバッテリ保持部を、リヤフ
   ェンダ前部側に設けられて後傾したバッテリの後面と下
   面と左右両側面とを保持する棚状であって側面視でバッ
   テリの後面と下部後方の角部のみを支持可能なリヤフェ
   ンダ側バッテリ保持部と、液体タンク側に設けられて後
   傾したバッテリの前面および下面を保持して側面視でバ
   ッテリの下部前方の角部のみを支持可能な液体タンク側
   バッテリ保持部とを備えて構成し、上記着座シートの下
   方には上記バッテリ保持部に保持されたバッテリの上部
   に当接する当接部を設けたことを特徴とする自動二輪車
   のバッテリ保持装置。