JP3184620B2 - 光学活性なメタクリル酸の重合体 - Google Patents

光学活性なメタクリル酸の重合体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学活性なメタクリル酸
の重合体及び光学分割用分離剤に関し、特に、ラセミ体
の光学分割剤として耐久性に優れ有用な分離剤となる光
学活性なメタクリル酸の重合体、及びこの重合体からな
る光学分割用分離剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】これま
でにメタクリル酸トリフェニルメチル(TrMA) やメタク
リル酸ジフェニル−2−ピリジルメチル(D2PyMA)、メ
タクリル酸シクロブチルジフェニルメチル(CBDPMA) な
どの側鎖にかさ高いエステル基を持つメタクリル酸エス
テルを不斉なアニオン開始剤を用いて重合すると左右ど
ちらか一方向巻のらせん構造を有するポリマーが得ら
れ、このポリマーは高度にイソタクチックになることが
知られている。このラセン構造を有するポリメタクリル
酸トリフェニルメチル等は光学異性体分離用充填剤とし
て用いられるが、溶離液のメタノールにより加溶媒分解
されやすい欠点がある。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な欠点を克服するために鋭意検討した結果、加溶媒分解
に対し安定な光学活性メタクリル酸重合体を見出し本発
明に至った。即ち、本発明は、一般式(1) で表されるジ
ベンゾシクロアルカンをアルコール部分とするメタクリ
ル酸エステル誘導体を重合して得られる光学活性なメタ
クリル酸の重合体、及びこの重合体からなる光学分割用
分離剤を提供するものである。
【0004】
【化2】
【0005】これまでに得られているメタクリル酸トリ
フェニルメチル(TrMA) やメタクリル酸ジフェニル−2
−ピリジルメチル(D2PyMA)は、アルコール部分が加溶
媒分解により安定な3級カチオンを生じやすいために溶
離液のメタノールにより加溶媒分解されやすい。そこ
で、カチオンを不安定化して加溶媒分解性を抑制するた
めに、カチオンになる炭素に立体的、電子的な検討を加
え、耐加溶媒分解に優れた、前記一般式(1) で表される
ジベンゾシクロアルカンをアルコール部分とするメタク
リル酸エステル誘導体を重合させて得られる重合体を見
い出したのである。前記一般式(1) で表されるメタクリ
ル酸誘導体中の
【0006】
【化3】
【0007】は炭素数6〜14から成る2価の芳香族環を
示し、例示するならばフェニレン基やナフチレン基があ
り、好ましくはフェニレン基である。また、シクロアル
カン部の大きさを示すnは2である。一方、一般式(1)
中の
【0008】
【化4】
【0009】はフェニル基または炭素数1〜4のアルキ
ル基で置換されたフェニル基を示すが、好ましくは無置
換のフェニル基である。上記一般式(1) で表されるメタ
クリル酸誘導体は、下記一般式(2) で表される3級アル
コールに、メタクリル酸クロリドを反応させて容易に得
ることができる。
【0010】
【化5】
【0011】また、上記一般式(2) で表される3級アル
コールは、下記反応式に示すように常法に従ってジベン
ゾシクロアルカンに芳香族有機金属を作用させることに
より得ることができる。
【0012】
【化6】
【0013】本発明の光学活性なメタクリル酸の重合体
は、既に知られている光学活性な配位子有機金属との組
み合わせを開始剤として用いる低温でのアニオン不斉重
合によって容易に合成できる。ここで用いられる光学活
性な配位子有機金属との組み合わせからなる開始剤とし
ては、下記式で表されるジフェニルエチレンジアミンの
モノリチウムアミドと、(−)−スパルティン(Sp)、
(+)−2,3 −ジメトキシ−1,4 −ビス(ジメチルアミ
ノ)ブタン(DDB) 、(+)−1−(2−ピロリジニルメ
チル)ピロリジン(PMP) 〕等の不斉配位子との錯体が挙
げられる。
【0014】
【化7】
【0015】このようにして得られる本発明の光学活性
メタクリル酸重合体の重合度は10〜1000の範囲であり、
好ましくは30〜100 の範囲である。尚、重合度はゲル・
パーミエーション・クロマトグラフ法(GPC 法)で測定
するが、不溶性重合体については、該重合体を加水分解
し、ポリメタクリル酸となし、これを更にメチルエステ
ル化して、ポリメタクリル酸メチルに変換して測定す
る。
【0016】本発明の光学活性なメタクリル酸重合体
は、種々のラセミ体を光学分割することができる。光学
分割方法としては、本発明の光学活性なメタクリル酸重
合体を光学異性体分離用充填剤として用い、カラムに充
填し、このカラムを用いていわゆる液体クロマトグラフ
ィー法で光学分割する方法等が挙げられる。具体的に
は、例えば、本発明の光学活性なメタクリル酸重合体を
HPLC用担体(例えば、シリカゲル)などに担持させてカ
ラムに充填する既知の方法がある。
【0017】
【発明の効果】本発明で得られた光学活性なメタクリル
酸重合体は、耐加溶媒分解性に優れ、光学分割用分離剤
として最適である。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳細に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0019】合成例1 1−フェニルジベンゾスベリル
アルコールの合成 フラスコにマグネシウム38.1g(1.57mol) を入れ、窒素
置換後、ブロモベンゼン224.2 g(1.43mol) を蒸留エー
テル325ml で薄めた溶液をゆっくり滴下した。滴下終了
後、2時間攪拌し、ジベンゾスベロン186.8 g(0.898mo
l)を蒸留エーテル480ml に溶かした溶液をゆっくり滴下
した。その後、6時間室温で攪拌し、さらに24時間還流
した。放冷後、塩化アンモニウム飽和水溶液800ml を加
えて反応を停止した。これを抽出し、有機層をさらに水
で抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、
エーテルを減圧留去し、下記式(3) で表される構造を有
する目的化合物を黄色結晶として得た。 収量 153.2 g 収率 59.6% 融点 150.5 〜151.8 ℃
【0020】
【化8】
【0021】合成例2 メタクリル酸 1−フェニルジ
ベンゾスベリルの合成 フラスコに水素化ナトリウム11.1g(0.462mol)を入れ、
n−ペンタンで洗った後、窒素置換し、蒸留テトラヒド
ロフラン(THF)100mlを加えた。1−フェニルジベンゾス
ベリルアルコール52.2g(0.183mol)を蒸留THF 300ml に
溶かした溶液をゆっくり滴下し、滴下終了後12時間還流
した。水素ガスの発生が終わったことを確認した後、0
℃に冷やして、メタクリル酸クロリド20.7g(0.198mol)
を滴下した。2時間後室温にした後 THFを減圧留去し、
これを水−エーテル系、次に水−クロロホルム系で抽出
した。エーテル、クロロホルム層を硫酸マグネシウムで
乾燥した後、エーテル、クロロホルムを減圧留去して黄
色結晶を得た。
【0022】粗収量 61.0g 94.2% 得られた黄色結晶を以下に示す再結晶法により精製し、
下記式(4) で表される構造を有する目的化合物を白色結
晶として得た。 ・1回目 エーテル45mlとベンゼン80mlの混合溶媒 収量 30.3g ・2回目 エーテル30mlとベンゼン55mlの混合溶媒 収量 17.8g ・3回目 ベンゼン17ml 収量 9.86g 収率 15.2% 融点 116.3 〜117.4 ℃ なお、再結晶溶媒は全て蒸留したものを用いた。
【0023】
【化9】
【0024】合成例3 アオニン重合開始剤の調製 窒素置換したアンプルにジフェニルエチレンジアミン(D
PEDA) を入れて真空乾燥し、真空蒸留したトルエンを加
えて溶かした。これにDPEDA と等モルのn−ブチルリチ
ウム/ヘプタン、1.2 当量の不斉配位子〔(−)−スパ
ルティン(Sp)、(+)−2,3 −ジメトキシ−1,4 −ビス
(ジメチルアミノ)ブタン(DDB) 又は(+)−1−(2
−ピロリジニルメチル)ピロリジン(PMP) 〕を加えて溶
かし、ジフェニルエチレンジアミンのモノリチウムアミ
ドと各不斉配位子との錯体を得、開始剤とした。
【0025】アニオン重合 実施例1 窒素置換したガラス管にメタクリル酸 1−フェニルジ
ベンゾスベリル1gを入れて真空乾燥し、これに真空蒸
留したトルエン20mlを加えて溶かし、−78℃に冷却し
た。開始剤((−)−スパルティン−ジフェニルエチレ
ンジアミンのモノリチウムアミド錯体)0.05gを加えて
重合を開始し、24時間反応させた。反応終了後、メタノ
ールを加えて重合を停止し、反応物を過剰メタノール中
に落とした。これを遠心分離し、沈殿部を真空乾燥して
ポリマーを得た。
【0026】実施例2 開始剤として(+)−2,3 −ジメトキシ−1,4 −ビス
(ジメチルアミノ)ブタン−ジフェニルエチレンジアミ
ンのモノリチウムアミド錯体を用い、反応時間を3時間
とした以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0027】実施例3 開始剤として(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)
ピロリジン−ジフェニルエチレンジアミンのモノリチウ
ムアミド錯体を用い、反応時間を3時間とした以外は実
施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0028】ラジカル重合 実施例4 窒素置換したアンプルにメタクリル酸 1−フェニルジ
ベンゾスベリル0.5 gを入れ真空乾燥し、真空蒸留をし
たトルエン7.5 mlを加えて溶かした。これに開始剤とし
て(i-C3H7OCOO)2 を0.01g加えて重合系を40℃まで昇温
して重合を開始した。重合中は重合系を40℃に保った。
24時間後、重合系を−78℃に冷却して重合を停止した。
これを過剰メタノール中に落とし、これを遠心分離し、
沈殿部を真空乾燥してポリマーを得た。
【0029】実施例1〜4で得られたポリマーを、ジア
ゾメタンでポリメタクリル酸メチル(PMMA)へと誘導し、
1H−NMR 、GPC を測定した。得られたPMMAの1H−NMR か
らタクチシチーを、GPC から重合度、分子量分布を得
た。また施光度をテトラヒドロフラン中で測定した。結
果は表1に示した。またメタノールの代わりにベンゼン
/ヘキサン(1/1 v/v)を用いて沈澱させた沈澱部を真空
乾燥して得られたポリマーについても、収率及び施光度
を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】表1から明らかなように不斉配位子を用い
たアニオン重合では、いずれの場合もほぼ100 %イソタ
クチックで、大きな正の施光性を示すポリマーが得られ
た。またメタクリル酸 1−フェニルジベンゾスベリル
はラジカル重合でも非常に高いイソタクチシチーをもつ
ポリマーを与えた。
【0032】応用例1メタクリル酸 1−フェニルジベンゾスベリルの加溶媒
分解速度の決定 CDCl3 中でのCD3OD による35℃でのメタクリル酸 1−
フェニルジベンゾスベリル(PDBSMA)の加溶媒分解反応を
1H−NMR で調べることにより速度定数を求めた。加溶媒
分解反応は下記反応式で示すように起こり、メタクリル
酸とメチル 1−フェニルジベンゾスベリルエーテルが
生成する。この実験ではPDBSMAとメタクリル酸のビニル
プロトンの吸収強度比の時間変化を追跡し、結果を疑一
次速度式(反応速度=速度定数(k)×PDBSMA濃度)に
あてはめてkを決定した。その結果、k=0.466 h
-1(半減期89分)と求まり、メタクリル酸トリフェニル
メチル(TrMA)(k=2.86h-1、半減期14.5分)に比べ
て、加溶媒分解に対して安定であることがわかった。
【0033】
【化10】
【0034】応用例2 光学活性ポリPDBSMAの不斉識別 光学活性ポリPDBSMAの不斉識別能を、ヘキサン−2−プ
ロパノール(9/1v/v)混合溶媒中に分散させたポ
リPDBSMAに下記式(5) で表されるトランス−スチルベン
オキシド、下記式(6) て表されるトレーガー塩基のラセ
ミ体を吸着させる方法で調べた。光学活性ポリPDBSMAは
これらのラセミ体に対して不斉識別能を示した(分離係
数 トランス−スチルベンオキシド:1.05、トレーガー
塩基:1.08)。
【0035】
【化11】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 20/30 C07B 57/00 CA,REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) で表されるジベンゾシクロア
    ルカンをアルコール部分とするメタクリル酸エステル誘
    導体を重合して得られる光学活性なメタクリル酸の重合
    体。 【化1】
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光学活性なメタクリル酸
    の重合体からなる光学分割用分離剤。
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