JP3180481B2 - 薄膜トランジスタ用単結晶シリコン層の形成方法 - Google Patents

薄膜トランジスタ用単結晶シリコン層の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、アクティブマトリク
ス液晶ディスプレイ等の薄膜トランジスタ利用デバイス
を構成する薄膜トランジスタ(TFT)用の単結晶シリ
コン層を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アクティブマトリクス液晶ディスプレイ
を構成する薄膜トランジスタには、アモルファスシリコ
ン膜を能動層に用いたアモルファスシリコンTFTの他
に、多結晶シリコン膜を能動層に用いた多結晶シリコン
TFTがある。特に多結晶シリコンTFTは、電子の電
界効果移動度が大きいという特徴を有しており、高性能
の液晶ディスプレイ用として注目されている。
【0003】このような多結晶シリコンTFTの断面構
造の一例を図3に示す。ガラス基板2の上に多結晶シリ
コン膜4が形成されており、その上に絶縁膜6を介して
この例では二つのゲート電極8が形成されている。ま
た、ゲート電極8の両側の多結晶シリコン膜4上には、
ソース電極10およびドレイン電極12が形成されてい
る。14は絶縁膜である。
【0004】このような多結晶シリコンTFTを作製す
る方法としては、従来は、ガラス基板上の全面にアモル
ファスシリコン膜を形成し、その後加熱処理を施してア
モルファスシリコン膜の全面を結晶化させて多結晶シリ
コン膜を得た上で、それにエッチングを施して上記のよ
うな多結晶シリコン膜4を形成する、という方法が採ら
れている。
【0005】ガラス基板全面のアモルファスシリコン膜
を加熱すると、アモルファスシリコン相から無数の微小
な結晶核が生成し、その結晶核が成長し、非結晶質から
微細な多結晶質に相変化し、多結晶シリコン膜が得られ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
にアモルファスシリコン膜の全面を単に加熱する方法で
は、シリコンの結晶粒子成長はランダムに起こり、粒子
同士間の粒界が薄膜トランジスタにおける電子の移動を
妨げるので、電子の移動度がある程度(例えば50cm
2 /Vs)以上大きい薄膜トランジスタを得ることがで
きないという問題がある。
【0007】多結晶シリコン膜の代わりに、単結晶シリ
コン層を用いれば、このような結晶粒界に起因する電子
の移動度制限の問題は解決することができる。
【0008】そこでこの発明は、アモルファスシリコン
膜の結晶化方法を改善することによって、ガラス基板上
の薄膜トランジスタを形成する部分だけに単結晶シリコ
ン層を形成することができる単結晶シリコン層の形成方
法を提供することを主たる目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の薄膜トランジスタ用単結晶シリコン層の
形成方法は、ガラス基板上に設けられた薄膜トランジス
タ形成用のアモルファスシリコン膜に、中央部に凹部を
有し全体が凸状をした1以上の非球面レンズとこの非球
面レンズ以外の部分にあってレーザ光を遮る遮光部とを
有するマスクを介して、しかもマスクとアモルファスシ
リコン膜との水平方向の相対的な位置関係を変えながら
レーザ光を照射し、それによって薄膜トランジスタを形
成する部分だけアモルファスシリコン膜を単結晶化する
ことを特徴とする。
【0010】
【作用】上記方法によれば、アモルファスシリコン膜に
照射するレーザ光のエネルギー密度を調整することによ
り、非球面レンズを通してレーザ光が照射された部分の
アモルファスシリコン膜は、レーザ光の当たる部分全体
が適度に溶融し、しかもレーザ光の当たる部分の外側領
域の温度が高く中心領域の温度が低い温度分布にするこ
とができる。その結果、レーザ光の当たる部分の中央部
から徐々に結晶化し、ひいてはレーザ光の当たる部分の
全体を単結晶化することができる。
【0011】このようなアモルファスシリコン膜の部分
的な単結晶化処理を、マスクとアモルファスシリコン膜
との水平方向の相対的な位置関係を変えながら行うこと
によって、ガラス基板上のアモルファスシリコン膜を、
薄膜トランジスタを形成する複数の部分だけについて単
結晶化することができる。
【0012】
【実施例】図1は、この発明に係る単結晶シリコン層の
形成方法を実施する装置構成の一例を示す概略断面図で
ある。図中の26は、ステッパ等の移動ステージ26で
あり、これは直交するXY方向に所定ステップずつ移動
する。この移動ステージ26の上方には、マスク34、
レンズ32およびレーザ光源28が設けられている。
【0013】レーザ光源28には、例えばエキシマレー
ザを用いるのが、光強度が大きくしかもビーム面積が大
きいので好ましいが、これの他にダイレーザを使用して
も良い。
【0014】レーザ光源28から出力されたレーザ光3
0は、レンズ32によって、マスク34上の次に述べる
ような複数の非球面レンズ38の部分に向けて絞られ
る。
【0015】マスク34は、透明ガラス36の表面にこ
の例では複数の非球面レンズ38を設け、かつこの非球
面レンズ38以外の部分にレーザ光30を遮る遮光部4
0を設けた構造をしている。各非球面レンズ38は、図
2も参照して、中央部に丸い凹部39を有し全体が凸状
をしている。
【0016】処理に際しては、上記移動ステージ26上
に、表面に薄膜トランジスタ形成用のアモルファスシリ
コン膜24が設けられたガラス基板22を載せる。この
ガラス基板22上のアモルファスシリコン膜24は、薄
膜トランジスタの能動層の大きさに予めエッチングで島
状にパターニングしておいても良いし、以下に述べる単
結晶化処理後にパターニングしても良い。
【0017】そして、このようなガラス基板22上のア
モルファスシリコン膜24に、レーザ光源28から出力
されたレーザ光30を、レンズ32およびマスク34を
介して照射する。その際、薄膜トランジスタを形成する
部分だけにレーザ光30が当たるように、マスク34と
アモルファスシリコン膜24との間の距離を調整してお
く。また、移動ステージ26をXY方向に所定ステップ
ずつ移動させることによって、薄膜トランジスタを形成
する多数の部分にレーザ光30を順次照射する。
【0018】これにより、アモルファスシリコン膜24
にはマスク34の非球面レンズ38を通してのみレーザ
光30が照射される。しかもこの非球面レンズ38は中
央に凹部39を有するので、この非球面レンズ38を通
してレーザ光30が照射された部分のアモルファスシリ
コン膜24は、図2に示すように、中心領域の温度が低
く、その外側の環状領域の温度が高い温度分布になる。
【0019】上記のような処理方法において、レーザ光
源28から出力するレーザ光30のエネルギー密度とレ
ーザ光30が当たった部分のアモルファスシリコン膜2
4の結晶化状態の関係を調べたところ、表1に示すよう
な結果が得られた。
【0020】
【表1】
【0021】即ち、レーザ光30のエネルギー密度が5
0mJ/cm2 の場合は、エネルギーが低過ぎるので、
アモルファスシリコン膜24は熱的に安定であり、結晶
の相変化は起こらなかった。
【0022】レーザ光30のエネルギー密度が100m
J/cm2 の場合は、加熱の効果が働き、アモルファス
シリコン膜24内に結晶核が生じ、結晶成長が起こった
が、マスク34の非球面レンズ38の影響で、レーザ光
30が当たった部分の外側領域のみが環状に多結晶化
し、中心領域は非結晶相のままであった。
【0023】レーザ光30のエネルギー密度が150m
J/cm2 の場合は、レーザ光30が当たった部分は全
体が適度に溶融し、しかも外側領域が環状に温度が高く
中心領域の温度が低い温度分布になる。その結果、レー
ザ光30の当たった部分の中心部から徐々に結晶化し、
ひいてはレーザ光30の当たった部分の全体を単結晶化
することができた。
【0024】レーザ光30のエネルギー密度が200m
J/cm2 の場合は、温度が高過ぎて、冷却中にアモル
ファスシリコン膜24内に結晶核が無数に発生し成長し
て多結晶化した。
【0025】レーザ光30のエネルギー密度が250m
J/cm2 の場合は、エネルギーが強過ぎて、レーザ光
30が当たった部分のアモルファスシリコン膜24は蒸
発してしまった。
【0026】このように、アモルファスシリコン膜24
に照射するレーザ光30のエネルギー密度を適度に調整
することにより、ガラス基板22上のアモルファスシリ
コン膜24を、薄膜トランジスタを形成する部分だけ単
結晶化することができる。しかもこのような単結晶化処
理を、アモルファスシリコン膜24の全面について行う
のではなく、移動ステージ26によってガラス基板22
を移動させることによって、薄膜トランジスタを形成す
る多数の個所についてのみ行うので、効率が非常に良
い。
【0027】上記のようにして、単結晶化された部分を
用いて薄膜トランジスタを形成すれば、その能動層には
電子の移動を妨げる結晶粒界が存在しないので、電子の
移動度の大きい薄膜トランジスタを得ることができる。
従って、電気的特性の良好なアクティブマトリクス液晶
ディスプレイ等の薄膜トランジスタ利用デバイスを作製
することができる。
【0028】なお、マスク34とアモルファスシリコン
膜24との水平方向の相対的な位置関係を変えるには、
上記例のようにガラス基板22側を移動させるのが簡単
で良いが、勿論、レーザ光源28、レンズ32およびマ
スク34側を移動させても良い。
【0029】また、マスク34に設ける非球面レンズ3
8の数は任意であり、上記例のように複数個の方が処理
効率が高いので好ましいが、勿論、1個でも良い。
【0030】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、ガラス
基板上の薄膜トランジスタを形成する部分だけに単結晶
シリコン層を効率良く形成することができる。従って、
このようにして単結晶化された部分を用いて薄膜トラン
ジスタを形成すれば、その能動層には電子の移動を妨げ
る結晶粒界が存在しないので、電子の移動度の大きい薄
膜トランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る単結晶シリコン層の形成方法を
実施する装置構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1中のアモルファスシリコン膜における薄膜
トランジスタを形成する部分の温度分布の一例を示す図
である。
【図3】多結晶シリコンTFTの断面構造の一例を示す
概略断面図である。
【符号の説明】
22 ガラス基板 24 アモルファスシリコン膜 26 移動ステージ 28 レーザ光源 30 レーザ光 32 レンズ 34 マスク 38 非球面レンズ 39 凹部 40 遮光部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 29/786 H01L 21/20 H01L 21/268 H01L 21/324 H01L 21/336

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基板上に設けられた薄膜トランジ
    スタ形成用のアモルファスシリコン膜に、中央部に凹部
    を有し全体が凸状をした1以上の非球面レンズとこの非
    球面レンズ以外の部分にあってレーザ光を遮る遮光部と
    を有するマスクを介して、しかもマスクとアモルファス
    シリコン膜との水平方向の相対的な位置関係を変えなが
    らレーザ光を照射し、それによって薄膜トランジスタを
    形成する部分だけアモルファスシリコン膜を単結晶化す
    ることを特徴とする薄膜トランジスタ用単結晶シリコン
    層の形成方法。
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