JP3168456B2 - 陶磁器製鍋へのフッ素樹脂塗布方法 - Google Patents

陶磁器製鍋へのフッ素樹脂塗布方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は調理素材を揚げたり、ゆ
でたり、煮炊きするための陶磁器製鍋(以下、「陶磁器
製釜」を含む)へのフッ素樹脂塗布方法に関し、さらに
詳しくは陶磁器製鍋の外表面に塗布したフッ素樹脂塗布
層が、長期間剥離しない状態に保持することができる陶
磁器製鍋へのフッ素樹脂塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、調理素材を焦げつかせず、ま
た遠赤外線放射にて調理素材への熱浸透性を高めること
により、調理素材の細胞を破壊しないで美味しく調理す
ることを目指し、金属製鍋の表面にフッ素樹脂塗布層を
塗布形成することが行われている。
【0003】ところが、陶磁器製鍋では、金属製鍋と比
較して調理素材の焦げつきが起きにくいとの理由から、
鍋の表面にフッ素樹脂塗布層を塗布することは、ほとん
ど行われていない。
【0004】まず金属製鍋にあっては、鍋の表面にプラ
イマー樹脂を塗布した後、その上面にフッ素樹脂を塗布
して、目的のフッ素樹脂塗布層を得ていた。この金属製
鍋を実際の調理現場で使用する場合は、鍋が水分を含浸
しないものであるため、鍋の過熱時に素材内部から水蒸
気が発生することはなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、陶磁器製
鍋では、その陶磁器が水分を浸透させ易い素材であるた
め、これに金属製鍋と同様の方法でフッ素樹脂塗布を行
ったのでは、鍋の加熱時に、鍋の素材中に含浸している
水分が水蒸気となって噴出し、その噴出した水蒸気によ
りフッ素樹脂塗布層が鍋から剥離してしまうという問題
点があった。
【0006】本発明は、陶磁器製の鍋でありながら、鍋
の過熱時にフッ素樹脂塗布層が剥離しないことはもちろ
ん、長期間フッ素樹脂塗布層を安定状態に保つことがで
きる陶磁器製鍋へのフッ素樹脂塗布方法であり、これに
より上述の問題点を解消せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
問題点に鑑み、耐熱性粘土類に20〜35重量%の遠赤
外線放射セラミックを混入してなる陶磁器製鍋の全表面
に、防水性を有する釉薬を150〜250ミクロン厚寸
法で塗布し、該釉薬の燒結乾燥が完了した後に、少なく
とも鍋の内表面部分をカバーする範囲にブラスト加工に
より1平方cm当たり70〜100個の凹部を、深さ寸
法3〜7ミクロンで形成し、この凹部形成後に、凹部を
形成した範囲の鍋表面にプライマー樹脂を5〜15ミク
ロン厚寸法で下塗りし、このプライマー樹脂の乾燥後
に、フッ素樹脂を5〜20ミクロン厚寸法で塗布して乾
燥させることを特徴とする陶磁器製鍋へのフッ素樹脂塗
布方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、前記従来技術による問
題点を、上述の技術手段を講じることによって解決した
ものである。
【0009】本発明は、遠赤外線放射セラミックを混入
した陶磁器製鍋であって、これに釉薬を塗布した後にフ
ッ素樹脂を塗布する方法が行われていない現実に鑑み、
フッ素樹脂を陶磁器製鍋の表面に確実に塗布できるよう
に工夫して、フッ素樹脂塗布層を長期間剥離しないよう
に保持することが可能となった。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】本発明の陶磁器製鍋は、一般的な陶磁器素
材を用いるものであるが、ここにペタライトと称される
材料を混合すると一層好適となる。ペタライトとは、耐
熱食器の原料として使用されるリチューム長石からなる
ものである。この材料中に、耐熱性、耐薬品性、機械的
特性、電気的特性に優れ、成形時に高流動性を有する結
晶性樹脂からなるセラミック材料を混練し、この材料を
用いて鍋本体を焼き上げる。
【0012】このセラミック材料は、遠赤外線の放射率
が高いため、これにより調理素材に対し遠赤外線を効果
的に集中させることが可能であるが、セラミック材料の
混入比率が20%未満の場合は遠赤外線の放射効果が充
分に得られず、一方35%を超えると陶磁器の素材強度
が低下する惧れがある。
【0013】まず本発明は陶磁器製鍋の外表面に、防水
性を有する釉薬を150〜250ミクロン厚寸法で塗布
する。釉薬層を150ミクロン未満の厚寸法とした場合
には、陶磁器への防水性が不完全となり、陶磁器素材中
への水分の浸透を防ぐことができず、一方釉薬層が25
0ミクロンを超えると釉薬の燒結焼き付けが困難になる
問題がある。
【0014】ここで釉薬の一例としては、長石、珪石の
粉体を主材として、これに媒熔剤として、灰、タルク、
石灰石、ドロマイトを加え、さらに着色材として酸化チ
タン、鉄マンガン、コバルト等を加え、必要に応じて粘
土質原料を加えて釉薬を沈殿しにくいものとし、かつ釉
薬が陶磁器の素地に良く密着して、焼成の時に素地から
剥がれたり釉薬がちぢれたりすることを防止できる。
【0015】ここで特に重要なことは、釉薬の熱膨張率
(一般的にガラス素材を使用するため小さい)と比較し
て、これと極めて近い熱膨張率の陶磁器を得るため、本
発明では耐熱性粘土類に遠赤外線放射セラミックを混入
することにより、耐熱性粘土類単独の場合と比較して陶
磁器素材の熱膨張率を低下させることができた。
【0016】具体的には、本発明で用いた釉薬の熱膨張
率は、180℃で0.13%、500℃で0.48%、
900℃で0.83%であるのに対し、本発明での陶磁
器製鍋の同対比温度における熱膨張率は、0.14%、
0.51%、0.84%であった。これに対し、遠赤外
線放射セラミックを混入しない陶磁器製素材において
の、同対比温度における熱膨張率は、0.28%、0.
86%、1.22%であり、釉薬と陶磁器素材との熱膨
張率の乖離は、本発明のものと比較して相当大きい。
【0017】このため本発明では、釉薬の剥がれにくさ
は一層向上する。上記のような釉薬を、陶磁器製鍋の全
表面に塗布して燒結乾燥させることにより、陶磁器素材
中への水分の浸透を防止することが可能となる。このた
め、鍋の水洗い時や調理時等に、鍋の素材中に水分が浸
透することはない。
【0018】ついで、釉薬の燒結乾燥が完了した後、少
なくとも鍋の内側部分、すなわち鍋の内表面部分をカバ
ーする範囲に、ブラスト加工により凹部を形成する。こ
の凹部は、1平方cm当たり70〜100個の数を確保
し、その凹部の深さ寸法は3〜7ミクロンである必要が
ある。
【0019】ブラスト加工に用いるブラストの一例とし
ては、アルミナ及びステンレスの鋭角種のモランダム5
0〜80番粒度のものを使用することが好適で、ブラス
ト圧5.5〜6kg/平方cmとするとよい。
【0020】発明者の実験によれば、つぎのとうりであ
った。1平方cm当たりに形成される凹部の個数が70
個未満の場合には、後述するプライマー樹脂の接着性が
極度に低下し、一方100個を超えると陶磁器が割れた
り、形成した釉薬が剥離してしまう危険があった。
【0021】また上記の形成密度範囲内であったとして
も、その凹部の深さ寸法が3ミクロン未満である場合に
は、プライマー樹脂を塗布した際に接着性が極度に低下
し、一方7ミクロンを超えると、陶磁器素材に、又は一
旦形成された釉薬にひびが入ったりして、釉薬が剥離す
る危険があった。
【0022】このようにして釉薬の表面に適正個数の凹
部を、適正寸法で形成した後、凹部を形成している範囲
の鍋表面に、プライマー樹脂を5〜15ミクロン厚寸法
で下塗りする。
【0023】発明者の実験によれば、つぎのとうりであ
った。プライマー樹脂の厚寸法が5ミクロン未満である
と、後述するフッ素樹脂の接着性が極度に低下し、一方
15ミクロンを超えると鍋としての使用感が低下すると
ともに、塗布すべきプライマー樹脂の定着が困難にな
る。
【0024】ここでプライマー樹脂の一例としては、耐
熱温度の高い(380〜435℃)4フッ化エチレン樹
脂(PTFE)等が好適であり、これをエアーガンを用
いて、上記範囲の厚さ寸法に吹きつけ塗装し、その後3
50〜380℃で30〜40分程度乾燥させることによ
り、プライマー樹脂による下塗りの塗布乾燥工程を完了
する。
【0025】ついで、プライマー樹脂の下塗り乾燥完了
後、プライマー樹脂層を形成した部分の上面にフッ素樹
脂を5〜20ミクロン厚寸法で塗布して乾燥させる。
【0026】発明者の実験によれば、つぎのとうりであ
った。フッ素樹脂層の厚寸法が5ミクロン未満である
と、フッ素樹脂の効果である焦げつき防止効果を充分確
保することができないことと、完成したフッ素樹脂層に
厚さが充分に確保されないためピンホールが発生し易
く、一方フッ素樹脂層の厚寸法が20ミクロンを超える
と、鍋としての使用感が低下するとともに、それ以上の
厚みの増加は熱の伝導効果を妨げ、剥離現象が起こり易
くなるということが判明した。
【0027】ここでフッ素樹脂の一例としては、上記プ
ライマー樹脂と同じ4フッ化エチレン樹脂が好適である
が、プライマー樹脂よりも一層粘着性の高いものを用い
ることが剥離防止の見地より好ましい。このフッ素樹脂
をエアーガンを用いて、上記範囲の厚寸法になるよう吹
きつけ塗装し、その後350〜380℃で30〜40分
程度乾燥させることにより、フッ素樹脂による本塗りの
塗布乾燥工程が完了し、目的とするフッ素樹脂塗布層が
得られる。
【0028】
【発明の効果】本発明のフッ素樹脂塗布方法によれば、
陶磁器製鍋では困難とされていたフッ素樹脂塗布層の形
成が簡単に行え、かつ一旦形成されたフッ素樹脂層を鍋
の内部から剥離させようとする蒸気の発生原因となる水
分の浸透が防止でき、さらにフッ素樹脂塗布層の形成が
強固になったため、鍋の内表面に形成されたフッ素樹脂
層が長期間に渉り安定保持できるという優れた効果があ
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐熱性粘土類に20〜35重量%の遠赤
    外線放射セラミックを混入してなる陶磁器製鍋の全表面
    に、防水性を有する釉薬を150〜250ミクロン厚寸
    法で塗布し、該釉薬の燒結乾燥が完了した後に、少なく
    とも鍋の内表面部分をカバーする範囲にブラスト加工に
    より1平方cm当たり70〜100個の凹部を、深さ寸
    法3〜7ミクロンで形成し、この凹部形成後に、凹部を
    形成した範囲の鍋表面にプライマー樹脂を5〜15ミク
    ロン厚寸法で下塗りし、このプライマー樹脂の乾燥後
    に、フッ素樹脂を5〜20ミクロン厚寸法で塗布して乾
    燥させることを特徴とする陶磁器製鍋へのフッ素樹脂塗
    布方法。
  2. 【請求項2】 鍋の過熱時に、鍋と釉薬との熱膨張率の
    差で釉薬層が鍋から剥離することが無い程度の熱膨張率
    からなる釉薬を用いてなる、請求項1記載の
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