JP3161680U - 耐震補強用筋交い - Google Patents
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Abstract
【課題】取付け後の外観が目立たず、工事費を低減し、工事期間を短縮することができ、かつ優れた耐震性能を発揮する筋交いを提供する。【解決手段】木造構造物の柱または横架材の外壁側に固定された少なくとも2つの支持基材10aと、両端近傍が該少なくとも2つの支持基材に接続された炭素繊維強化プラスチックから形成された帯状の筋交い材11aとからなる耐震補強用筋交いであって、前記支持基材が、前記筋交い材の長手方向に平行して伸びる2枚の板状体20a,20bからなる挟持機構を備え、前記筋交い材が該2枚の板状体に直接挟み込まれることによって固定されたことを特徴とする。【選択図】図4
Description
本考案は、耐震補強用筋交いに関する。さらに詳しくは、木造構造物の外壁に取り付けられる耐震補強用筋交いに関する。
従来、木造住宅などの木造構造物の外壁側から耐震補強用筋交いを取り付けるには、取付け範囲の外壁を一旦撤去する必要があった。また、筋交いの取付け後には撤去された外壁を復旧する必要があった。これらの作業工程は、耐震改修工事の費用と期間を増大させる要因となっていた。
特許文献1には、工事費用の低減と工事期間の短縮を図るための耐震補強用筋交いが提案されている。この筋交いは、木造構造物の外壁に、その枠状構造のほぼ対角線をわたるようにX字状に組み付けられるものであり、正面から見て円形の支持部材を木造構造物の外壁側に取り付け、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる帯状体の両端を、支持部材に設けられた2枚の板状体によって接着剤を介して挟み込んで固定するというものである。
しかし、特許文献1の筋交いは、CFRPからなる帯状体を用いているため、高い強度を有するが、伸縮性がほとんどなく、大地震発生時の一定以上の応力に耐え切れず、筋交いが破壊されてしまうおそれがあった。あるいは、CFRPからなる筋交いは破壊されず、強度に劣る木材に応力が集中する結果、木材が破損してしまうおそれがあった。
本考案は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、取付け後の外観が目立たず、工事費を低減し、工事期間を短縮することができ、かつ優れた耐震性能を発揮する筋交いを提供することを目的とする。
本考案の耐震補強用筋交いは、木造構造物の柱または横架材の外壁側に固定された少なくとも2つの支持基材と、両端近傍が該少なくとも2つの支持基材に接続された炭素繊維強化プラスチックから形成された帯状の筋交い材とからなる耐震補強用筋交いであって、前記支持基材が、前記筋交い材の長手方向に平行して伸びる2枚の板状体からなる挟持機構を備え、前記筋交い材が該2枚の板状体に直接挟み込まれることによって固定されたことを特徴としている。
また、前記支持基材が正面から見て矩形状に形成されたものであり、木造構造物を構成する柱と横架材とに固定されてなることが好ましい。
また、前記筋かい材の端部が楔状の形状を有することが好ましい。
また、前記筋交い材の少なくとも一端が、前記板状体から突出し、その突出部分に緊張用部材が固定されてなることが好ましい。
本考案の耐震補強用筋交いは、外壁を部分的に撤去するだけで取り付けることができるため、工事期間を短縮し、工事費を低減することができ、取付け後の外観は目立たない。また、室内での作業がほとんどないため、居住者への負担を軽減できる。さらに、筋交い材は、支持基材の狭持機構に挟み込まれることによって固定されているので、ごく稀に発生する大地震による一定以上の応力に対して、筋交い材が狭持機構内で一定以上の抵抗力を保持しながら移動することができる。そのため、筋交いが破壊されにくくなり、また、軸組みを構成している柱、横架材への応力集中を防ぐことができ、優れた耐震性能を発揮する。
また、筋かい材の端部を楔状の形状とすることで、軸組みが大変形に至っても筋かい材が狭持機構から抜け出ることがない。さらに、筋交い材の末端に緊張用部材を固定することにより、筋交い材を緊張状態で支持基材に固定することができる。
本考案の実施の形態による耐震補強用筋交いについて、添付図面に沿って以下詳細に説明する。
図1は、本考案の実施の形態による耐震補強用筋交いを適用した木造構造物の概略図である。
図1に示されるように、本考案の耐震補強用筋交い(以下、筋交いという)1は、木造構造物Hの外壁5側に固定された支持基材10a〜10dと、後述する狭持機構によって両端近傍が支持基材10a〜10dに固定された炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から形成された帯状の筋交い材11a,11bとから構成されている。支持基材10a〜10dは、外壁5を部分的に撤去することにより露出した木造構造物Hの柱2、横架材3および土台(横架材)4に、それらによって構成される枠状構造の角に位置するように固定されている。
2つの筋交い材11a,11bは、柱2、横架材3および土台4によって構成される枠構造の対角をわたるようにX字状に交差し、支持基材10a,10cと支持基材10b,10dにそれぞれ取り付けられている。これによって、筋交い1は、柱2、横架材3および土台4の引張筋交いとして作用し、水平方向の応力および柱頭や柱脚接合部の引抜き応力に対する抵抗要素として作用する。
図2は、図1の耐震補強用筋交いの拡大正面図であり、図3は、図2の耐震補強用筋交いの概略縦断面図であり、図4は、図2の耐震補強用筋交いの分解斜視図である。
これらの図に示されるように、支持基材10aは、正面から見て矩形状を有するステンレス製の部材であり、ラグスクリュー12a,12b,12c(一部図示せず)によって土台4と柱2に固定されている。支持基材10aは、土台4と柱2とをわたる大きさを有し、その両方に固定されるため、応力に対して柱2が土台4から引き抜かれることを防ぐ。
また、支持基材10aの外面側には、後述する下側板状体20aを螺合するための台座状の雌ネジ部15がナットを溶接することによって形成されている。さらに、支持基材10aの外面には、支持基材10aに強度を付与するための突条17a,17b,17cが形成されている。
支持基材10aは、筋交い材11aの長手方向に平行して伸びる2枚の長方形板状体20a,20bからなる挟持機構を備えており、この板状体20a,20bはステンレス製である。狭持機構を構成する下側板状体20aは、その下側にボルト16が溶接によって固定されており、支持基材10aの雌ネジ部15の雌ネジに螺合することによって支持基材10aに取り付けられる。この螺合の程度を変えることにより、木造構造物Hの外壁5を構成するラス網、モルタル、サイジング材および板材や壁下地6などの厚さに応じて、柱2や土台4の取付け面から下側板状体20aまでの距離を調節することができる。
また、筋交い材11aを、横架材3を外壁5の外側に回転させる応力に対する抵抗要素として効果的に作用させるため、外壁5にできるだけ近接させることが好ましく、その観点からも、前記取付け面から下側板状体20aまでの距離の調節は重要である。前記取付け面から下側板状体20aまでの距離は、50mm以下であることがより好ましい。
下側板状体20aには、その長手方向に平行する両縁に複数個の雌ネジ30が形成されており、下側板状体20aと同一形状を有する上側板状体20bが、下側板状体20aに重なるように、ネジ31と雌ネジ30との螺合によって取り付けられている。この螺合締付けによって、筋交い材11aは、板状体20a,20bに直接挟み込まれ、摩擦接合によって固定される。また、板状体20a,20bが筋かい材11aに接触する面には、絶縁性を持つ防錆材が塗布されている。これによって、導電性を有するCFRPと接触している板状体20a,20bの腐食が防止され、長期にわたり安定した摩擦力が得られる。ここで、摩擦接合とは、一の部材と他の部材との固定が、摩擦力によって接合固定されている状態をいい、2つの部材は所定量を超える応力に対して摩擦し、一定以上の抵抗力を保持しながら移動する。したがって、直接挟み込まれるとは、上記摩擦接合の作用を害さず、補強する範囲内において、上記防錆材などが介在することを排除するものではない。
本実施の形態では、板状体20a,20bに直接挟み込まれた筋交い材11aに一定以上の応力がかかった場合、挟み込まれた筋交い材11aは、板状体20a,20bと摩擦し、一定以上の抵抗力を保持しながら板状体20a,20bから抜け出す。これによって、伸縮性をほとんど有しないCFRPからなる筋交い材11aであっても、筋交い1全体として応力を低減することができ、筋交い材11aの破壊を防ぎ、また、筋交い材11aより強度に劣る柱2、横架材3、土台4などの木材が先に破損することを防止することができる。本考案では、一定以上の応力に対して筋交い11aが移動できるように、筋交い材11aと板状体20a,20bとの固定には接着剤を用いないことが好ましい。
筋交い材11aは、CFRP帯板から形成されるものであれば特に限定されないが、好ましくは、厚さは0.8〜3mmであり、幅は20〜30mmであり、引張強度は1.0〜2kN/mm2であり、ヤング係数は150〜300kN/mm2であり、重量は60〜160g/mのものを使用する。筋交い材11aは帯状体であるため塗装が容易であり、外壁5と同色に塗装することによりその外観は目立たない。
また、図2〜4に示されるように、筋交い材11aの末端は、板状体20a,20bから突出しており、楔状の形状を有することが好ましい。これによって、軸組みが大変形に至っても筋かい材11aは狭持機構から抜け出ない。また、その突出部分には、ステンレス製の緊張用部材35a,35bが固定されている。緊張用部材35a,35bは、筋交い材11aに上下から螺合によって固定される2つの部材35a,35bから構成されている。この緊張用部材35a,35bは、筋交い材11aの緩みを防ぎ、筋交い材11aを緊張状態で支持基材10a,10cに固定するためのものである。この点については後述する。
外壁5を部分的に撤去することによって生じた露出箇所は、筋交い1を取り付けた後、図3に示されるように防水カバー40によって覆われ、雨水の浸入を防止する。支持基材10aとの接触部分についてはシーリング材を充填することが好ましい。
次に、支持基材10aへの筋交い材11aの取付け方法について説明する。まず、木造構造物Hの柱2および土台4に固定された支持基材10aに、下側板状体20aを螺合し、そのうえに筋交い材11aをあてがい、筋交い材11aの末端に緊張用部材35a,35bを固定する。緊張用部材35a,35bを固定した後、上側板状体20bを下側板状体20aに重ね合わせ、筋交い材11aを挟み、ネジ31で板状体20a,20bを仮締めする。そして、緊張用部材35bと上側板状体20bとの間の空隙にマイナスドライバーなどを差し込んで空隙を押し広げ、筋交い材11aの緩みをなくし、筋交い材11aを緊張させる。最後に、ネジ31を強く締めることによって、筋交い材11aを、板状体20a,20bに摩擦接合で固定する。固定された緊張用部材35a,35bは、取付け終了後に取り外し、メンテナンス時の再緊張用として保管することが好ましい。なお、支持基材10b、10c、10dおよび筋交い材11bの構成および作用は、それぞれ支持基材10aおよび筋交い材11aと基本的に同じであるため、説明は繰り返さない。
以上、説明したように、本考案の筋交いは、X字状に交差する2つの筋交い材を対にして支持基材を介して木造構造物に固定することにより、地震により木造構造物が水平力を受けても変形しにくくなり、一対で約600〜1000kgの水平力に耐えることができる。また、木造構造物が変形して支持基材の軸心の回りのモーメントが発生しても、筋交いが支持基材のボルトを介して旋回できるため、筋交い材には捻れが生じず、破壊に至らない。さらに、筋交い材と支持基材とは摩擦接合によって固定されているため、一定以上の応力に対して、筋交い材は板状体から一定以上の抵抗力を保持しながら抜け出し、伸縮性をほとんど有しないCFRPからなる筋交い材であっても破壊されにくい。また、筋交い全体として応力を低減することができるため、筋交い材より強度に劣る柱、横架材、土台などの木材が先に破損することを防ぐ。
なお、本実施の形態では支持基材は、正面から見て矩形状のものであったが、特にこれに限定されるものではなく、正面から見て長方形状や、柱や横架材の形状に合わせてL字形状にすることもできる。また、筋交い材の長さや厚さ、幅は特に限定されるものではない。
H 木造構造物
1 筋交い
2 柱
3 横架材
4 土台(横架材)
5 外壁
6 壁下地
10a,10b,10c,10d 支持基材
11a,11b 筋交い材
12a,12b,12c ラグスクリュー
15 雌ネジ部
16 ボルト
17a,17b,17c 突条
20a 下側板状体
20b 上側板状体
30 雌ネジ
31 ネジ
35a,35b 緊張用部材
40 防水カバー
1 筋交い
2 柱
3 横架材
4 土台(横架材)
5 外壁
6 壁下地
10a,10b,10c,10d 支持基材
11a,11b 筋交い材
12a,12b,12c ラグスクリュー
15 雌ネジ部
16 ボルト
17a,17b,17c 突条
20a 下側板状体
20b 上側板状体
30 雌ネジ
31 ネジ
35a,35b 緊張用部材
40 防水カバー
Claims (4)
- 木造構造物の柱または横架材の外壁側に固定された少なくとも2つの支持基材と、両端近傍が該少なくとも2つの支持基材に接続された炭素繊維強化プラスチックから形成された帯状の筋交い材とからなる耐震補強用筋交いであって、
前記支持基材が、前記筋交い材の長手方向に平行して伸びる2枚の板状体からなる挟持機構を備え、前記筋交い材が該2枚の板状体に直接挟み込まれることによって固定されたことを特徴とする耐震補強用筋交い。 - 前記支持基材が正面から見て矩形状に形成されたものであり、木造構造物を構成する柱と横架材とに固定されてなる請求項1記載の筋交い。
- 前記筋かい材の端部が楔状の形状を有する請求項1または2記載の筋交い。
- 前記筋交い材の少なくとも一端が、前記板状体から突出し、その突出部分に緊張用部材が固定されてなる請求項1、2または3記載の筋交い。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010003534U JP3161680U (ja) | 2010-05-26 | 2010-05-26 | 耐震補強用筋交い |
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JP2010003534U JP3161680U (ja) | 2010-05-26 | 2010-05-26 | 耐震補強用筋交い |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012036701A (ja) * | 2010-08-11 | 2012-02-23 | Kawashima Kensetsu:Kk | 筋交いのアンカー構造及びその構造を備える既存建物の耐震補強構造 |
-
2010
- 2010-05-26 JP JP2010003534U patent/JP3161680U/ja not_active Expired - Fee Related
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