JP4431986B2 - 建物の耐震補強構造および耐震補強方法 - Google Patents

建物の耐震補強構造および耐震補強方法 Download PDF

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本発明は、建物の耐震性能を向上させるための建物の耐震補強構造および耐震補強方法に関する。
従来より、柱と梁とからなる建物の耐震性能を向上させるために、建物の架構の面内に耐震補強枠を組み入れる耐震補強構造がある。従来の耐震補強構造に使用される耐震補強枠としては、枠部材の内側にブレースが取り付けられた構成からなるものがある。枠部材は、H形鋼等の鋼材を架構の面内形状に沿って組み立てたものであり、アンカーやモルタル等を介して架構の内面に接合される。ブレースは、斜めに延在されたH形鋼等の鋼材からなり、枠部材の内側にK形状或いはX形状に取り付けられる。このような構成からなる耐震補強枠が架構の面内に組み入れられた耐震補強構造は、地震の発生によって建物に層間変位が生じた場合に、一方のブレースが圧縮力を負担するとともに他方のブレースが引張力を負担し、この圧縮力と引張力とが釣り合うことで、架構に大きな力が働かないようになっている。
また、耐震補強構造に使用される耐震補強枠として、枠部材の内側にワイヤーやロッド等からなるテンション系の補強材が取り付けられた構成からなるものがある。この補強材は圧縮力を負担せずに引張力のみを負担する部材であり、上記したブレースと同様に、枠部材の内側にK形状或いはX形状に取り付けられる。この耐震補強枠を用いる場合、地震の初期微動を検知し、地震が発生したときだけ補強材を緊張させて引張力を作用させることで、変形や揺れを抑制することができる(例えば、特許文献1参照。)。
特開平10−292665号公報
しかしながら、上記した前者の耐震補強構造では、圧縮材となるブレースは、座屈耐力の関係から細長比を小さくする必要があるため、ブレースには太い材料、例えばH形鋼等が使用する必要があり、デザイン的に軽快感が出せないという問題がある。
また、上記した後者の耐震補強構造では、地震の初期微動を検知するセンサーと補強材の引張力を可変させる可変機構とがそれぞれ必要になり、コストが高くなるという問題がある。また、地震が発生していない平常時は、補強材に引張力が作用していない状態になるため、温度変化によって補強材が高温下におかれた場合に、補強材の座屈現象が生じる場合があるという問題がある。さらに、耐震補強枠の設置当初から補強材に引張力をかけると、枠部材と架構との接合部に初期導入引張力が作用することになり、地震時に、地震力に加えて初期導入引張力が接合部に働き、接合部は大きな力を負担しなければならなくなるという問題がある。
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、デザイン的に軽快感が出すことができるとともに、高価な機器等が不要で低コスト化を図ることができ、また、温度変化による高温下においても補強材が座屈することなく、さらに、枠部材と架構との接合部にかかる負担を軽減させることができる建物の耐震補強構造および耐震補強方法を提供することを目的としている。
請求項1記載の発明は、隣り合う柱と該柱間に架設されて上下で対向する梁とで形成された架構の面内に、該架構に接合される枠部材と該枠部材の内側に張設される補強材とを備える耐震補強枠が組み入れられた構成からなる建物の耐震補強構造において、前記枠部材には、上枠又は下枠のうち少なくとも一方が外側に膨らんだむくりがあるものが使用され、前記補強材には継続的に初期導入引張力が作用され、該初期導入引張力によって、むくりがある枠部材がフラットな状態に維持されていることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、隣り合う柱と該柱間に架設されて上下で対向する梁とで形成された架構の面内に、該架構に接合される枠部材と該枠部材の内側に張設される補強材とが備えられた耐震補強枠を組み入れる建物の耐震補強方法において、前記枠部材に、上枠又は下枠のうち少なくとも一方が外側に膨らんだむくりがあるものを使用し、前記補強材に初期導入引張力を作用させ、むくりがある枠部材をフラットな状態にした後、前記枠部材を前記架構に接合させることを特徴としている。
このような特徴により、補強材は、初期導入引張力を相殺するまでは圧縮に有効となるが、終局的には引張力だけを負担するものであり、圧縮力を負担する場合に必要な座屈耐力を必要としない。また、補強材には予め引張力が導入されるため、高温下における補強材の座屈を抑止することができ、また、地震時に補強材を緊張させることなく建物の変形や揺れを抑制することができ、地震を検知する必要がない。さらに、むくりがある枠部材が使用され、この枠部材は補強材の初期導入引張力によってフラットな状態にしているため、補強材に作用する初期導入引張力は耐震補強枠内で完結し、枠部材と架構との接合部に初期導入引張力が作用することがない。
本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法によれば、補強材に座屈耐力が必要ないため、補強材を太くする必要はなく、デザイン的に軽快感が出すことができる。また、地震時に補強材を緊張させることなく建物の変形や揺れを抑制することができるため、地震時に補強材の引張力を可変させる可変機構や地震を検知するセンサー等の高価な機器は不要であり、低コスト化を図ることができる。また、補強材には予め引張力が導入されているため、高温下における補強材の座屈現象を抑制することができる。さらに、補強材に作用する初期導入引張力は耐震補強枠内で完結し、枠部材と架構との接合部に初期導入引張力が作用することがないため、枠部材と架構との接合部にかかる負担を軽減させることができる。
以下、本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
図1は建物の耐震補強構造を表す側面図である。図1に示すように、架構1は、既設建物の隣り合う柱2,2と、その柱2,2間に架設されている上下の梁3,3とから構成される鉄筋コンクリート造の躯体である。
架構1の面内には、架構1の耐震性能を向上させるための耐震補強枠4が組み入れられている。耐震補強枠4は、架構1の面内に嵌設される枠部材5と、枠部材5の内側に張設された複数の補強材6…とから構成されている。
図2は枠部材5の側面図であり、図3は枠部材5と架構1との接合部、および枠部材5と補強材6との接合部を表した拡大断面図であり、図4は枠部材5と架構1との接合部、および枠部材5と補強材6との接合部を表した拡大側面図である。
図1,図2,図3,図4に示すように、枠部材5は、H形鋼等の鋼材を、架構1の面内形状に沿って且つフランジ7bを架構1の内面1aに対向させた向きで配設された枠状の部材であり、架構1の矩形の面内空間よりも小さい形状に形成されている。枠部材5は、補強材6…に引張力が働いていない状況下では、上枠5aおよび下枠5bがむくりがある形状、つまり、上枠5aと下枠5bとが外側に膨らむように弓形に反った(曲った)形状になっている。また、枠部材5には、補強材6…の端部を固定するための固定具8…が所定箇所にそれぞれ付設されている。この固定具8…は、雌ネジ孔が形成された長ナット状の部材であり、雌ネジ孔が補強材6…の軸線延長線上に延在するようにフランジ7aに対して傾斜させた状態で配置され、枠部材5の内周面(上枠5aの下側のフランジ7aおよび下枠5bの上側のフランジ7a)に溶接されて取り付けられている。
補強材6…は、圧縮力を負担せずに引張力だけを負担する細長いロッド状の引張抵抗部材であり、例えば鋼棒或いはワイヤーからなる。補強材6…は、枠部材5の内側で斜めに延在されており、2本の補強材6,6同士は交差するように配置されてX形状になっている。補強材6…の上端はむくりがある枠部材5の上枠5aに取り付けられており、補強材6…の下端は同じくむくりがある枠部材5の下枠5bに取り付けられている。補強材6…の両端は、ネジが切られた雄ネジ部6aがそれぞれ形成されており、枠部材5の上枠5a及び下枠5bにそれぞれ付設された固定具8…にそれぞれ螺合されている。
また、補強材6…は、その端部を固定具8…に締め込むことで引張力が導入され、この初期導入引張力により、枠部材5の弓形に曲った上枠5a及び下枠5bがそれぞれ内側に引っ張られて直線的に変形し、枠部材5は、フラットな状態、つまり架構1の内面に沿った矩形の形状に変形される。そして、緊張状態の補強材6…が固定具8…で固定され、補強材6…には継続的に初期導入引張力が作用されており、枠部材5のフラットな状態は維持されている。
フラットな状態になった枠部材5は、その外周面と架構1の内面1aとの間に所定の隙間をあけて配置されており、枠部材5の外側のフランジ7bと架構1の内面1aとは接合部9を介して接合されている。接合部9は、フランジ7bに突設された複数のスタッド10…と、フランジ7bに対向する架構1の内面1aに突設された複数のアンカー11…と、架構1の内面1aとフランジ7bとの間に介在されたモルタル12と、モルタル12内に埋設されたスパイラル鉄筋13とから構成されている。
複数のスタッド10…は、頭付きスタッドが使用されており、枠部材5(フランジ7b)の延在方向に沿って二列所定ピッチに並べられてフランジ7bにスタッド溶接されて取り付けられている。なお、スタッド10…に替えて、ジベルをフランジ7bに付設させてもよく、或いは鉄筋材やアングルなどの突起物をフランジ7bの表面に溶接させてもよく、フランジ7bに孔をあけてフランジ7bから突設するボルトを取り付けても良い。
複数のアンカー11…は、枠部材5(フランジ7b)の延在方向に沿って所定ピッチに一列所定ピッチに並設されており、架構1のコンクリート内に定着されている。アンカー11…は、例えばケミカルアンカー等の後施工アンカーからなり、先端にナット等からなる拡径された頭部が形成されたアンカー部材が使用されている。なお、アンカー11に替えて、架構1のコンクリート打設前に設置されて架構1のコンクリート内に定着されるアンカーや架構1内に埋設された鉄筋材を架構1の内面1aから突出させてもよく、或いは架構1の内面1aを凹凸に成形してもよい。
モルタル12は、枠部材5(フランジ7b)の幅に合わせて形成されており、内部に前記スタッド10…やアンカー11…を埋設させている。なお、モルタル12に替えてコンクリート等のその他のセメント系材料を介在させてもよく、或いは樹脂製の接着剤等を介在させてもよい。 スパイラル鉄筋13は、渦巻状に形成された鉄筋材であり、複数並設されたスタッド10…やアンカー11…の間を通るように枠部材5(フランジ7b)の延在方向に沿って配筋されている。
次に、上記した構成からなる耐震補強構造を施工する耐震補強方法について説明する。
まず、固定具8…が付設された枠部材5に補強材6…を取り付けて耐震補強枠4を形成する工程を行う。具体的には、補強材6…の両端に形成された雄ネジ部6aを、固定具8…にそれぞれ螺合させて補強材6…を枠部材5の上枠5aと下枠5bとの間に張設させる。そして、補強材6…の両端(雄ネジ部6a)を固定具8…に締め込んでいき、補強材6…を緊張させて初期導入引張力を作用させて枠部材5の上枠5a及び下枠5bをそれぞれ内側に引っ張り込み、むくりがある形状の枠部材5をフラットな状態にする。
次に、耐震補強枠4を既存建物の架構1の面内に組み入れて、枠部材5を架構1に接合部9を介して接合させる工程を行う。具体的には、予め、枠部材5のフランジ7bにはスタッド10…を溶接しておくとともに、フランジ7bに対向する架構1の内面1aにはアンカー11…を打ち込み、さらにフランジ7bに対向する架構1の内面1aに沿ってスパイラル鉄筋13を配筋しておく。そして、耐震補強枠4を架構1の面内に組み入れて所定位置に仮保持させた後、枠部材5と架構1との間を塞ぐように図示せぬ型枠を建て込み、枠部材5と架構1との間にモルタル12を充填する。モルタル12の固化した後、上記型枠を脱型して施工完了とする。
上記した構成からなる建物の耐震補強構造および耐震補強方法によれば、補強材6…は圧縮力を負担せずに引張力だけを負担するものであるため、圧縮力を負担する場合に必要な座屈耐力を必要としない。これによって、補強材6…を太くする必要がなく、耐震補強構造が施された建物についてデザイン的に軽快感が出すことができる。
また、補強材6…には予め初期導入引張力が作用されるため、高温下における補強材6…の座屈現象を抑止することができるとともに、地震時に補強材6…を緊張させることなく建物の変形や揺れが抑制される。これによって、地震時に補強材の引張力を可変させる可変機構や地震を検知するセンサー等の高価な機器等が不要となり、低コスト化を図ることができる。
また、むくりがある枠部材5が使用され、この枠部材5は補強材6…の初期導入引張力によってフラットな状態にして架構1の面内に組み入れているため、補強材6…に作用する初期導入引張力は耐震補強枠4内で完結し、枠部材5と架構1との接合部9に初期導入引張力が作用することがなく、枠部材5と架構1との接合部9に力が作用するのは地震時だけとなる。これによって、枠部材5と架構1との接合部9にかかる負担を軽減させることができ、スタッド10…、アンカー11、モルタル12及びスパイラル鉄筋13を介したアンカー接合による接合部9で地震力を処理することができる。
以上、本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、補強材6…をX形にして枠部材5内に張設させているが、本発明は補強材をK形にして枠部材内に張設させてもよく、複数の補強材の張設状態に限定されるものではない。
また、上記した実施の形態では、補強材6…の両端に雄ネジ部6aを形成し、枠部材5に付設された固定具8…に雄ネジ部6aを螺合させ、前記雄ネジ部6aを固定具8…に締め込んでいくことで、補強材6…に初期導入引張力を作用させているが、本発明は、緊張機によって補強材を引張り、所定の初期導入引張力が補強材に作用したところで補強材を枠部材に固定し、その後に緊張機を取り外すようにしてもよく、補強材に初期導入引張力を作用させる方式は適宜変更可能である。
また、上記した実施の形態では、枠部材5の内周面に長ナット状の固定具8を溶接し、この固定具8に補強材6の端部を螺合させて締め込むことで補強材6に初期導入引張力を付与しているが、本発明は、枠部材5の外周面で補強材6の端部を固定する形態であってもよい。
図5は枠部材5の外周面で補強材6の端部を固定する形態を表した図であり、この図5に基いて上記形態を説明する。なお、図5に示す他の実施の形態において、上記した実施の形態と同様の構成については同一の符号を付すことでその説明を省略する。
図5に示すように、他の実施の形態では、枠部材5の内周側のフランジ7aおよび外周側のフランジ7bには、貫通孔がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔には、補強材6が貫通するように挿入されている。また、外周側のフランジ7bの貫通孔に挿設された補強材6の端部は、所定の範囲に亘って雄ネジ状(ボルト状)に形成されており、この補強材6の端部には、ナット8´が螺合されている。このナット8´は、外周側のフランジ7bの外側から締め付けられて外周側のフランジ7bに係止されるものであり、ナット8´を締め付けていくことで補強材6には引張力が導入され、むくりがある枠部材5はフラットな状態になる。このような構成からなる耐震補強構造によれば、上記した実施の形態と同様な作用効果を奏することができるとともに、ナット8´を枠部材5の外周側のフランジ7bに係止させることで、引張力が導入された補強材6を固定しているため、補強材6に大きな引張力が導入されている場合にも、補強材6を確実に固定することができる。
また、上記した実施の形態では、枠部材5の上枠5aおよび下枠5bがそれぞれ外側に膨らんだものが使用されているが、本発明は、上枠だけが外側に膨らんだ枠部材を使用してもよく、また、下枠だけが外側に膨らんだ枠部材を使用してもよい。
また、上記した実施の形態では、既存建物の架構1を耐震補強する場合について説明しているが、本発明は、新築建物の架構に耐震補強枠を組み入れてもよい。
また、上記した実施の形態では、鉄筋コンクリート造の架構1に耐震補強枠4を組み入れているが、本発明は、如何なる構造の架構に耐震補強枠を組み入れてもよく、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造の架構に耐震補強枠を組み入れてもよい。
さらに、上記した実施の形態では、スタッド10…、アンカー11…、モルタル12及びスパイラル鉄筋13からなる接合部9を介して枠部材5と架構1の内面1aとが接合されているが、本発明は、その他の接合方法によって枠部材と架構とを接合させてもよく、例えば接着剤による接合や、架構が鋼構造である場合には、溶接やボルト接合によって枠部材と架構とを接合させてもよい。
本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態を説明するための全体側面図である。 本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態を説明するための枠部材の側面図である。 本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態を説明するための拡大断面図である。 本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の実施の形態を説明するための拡大側面図である。 本発明に係る建物の耐震補強構造および耐震補強方法の他の実施の形態を説明するための拡大断面図である。
符号の説明
1 架構
2 柱
3 梁
4 耐震補強枠
5 枠部材
5a 上枠
5b 下枠
6 補強材

Claims (2)

  1. 隣り合う柱と該柱間に架設されて上下で対向する梁とで形成された架構の面内に、該架構に接合される枠部材と該枠部材の内側に張設される補強材とを備える耐震補強枠が組み入れられた構成からなる建物の耐震補強構造において、
    前記枠部材には、上枠又は下枠のうち少なくとも一方が外側に膨らんだむくりがあるものが使用され、
    前記補強材には継続的に初期導入引張力が作用され、該初期導入引張力によって、前記むくりがある枠部材がフラットな状態に維持されていることを特徴とする建物の耐震補強構造。
  2. 隣り合う柱と該柱間に架設されて上下で対向する梁とで形成された架構の面内に、該架構に接合される枠部材と該枠部材の内側に張設される補強材とが備えられた耐震補強枠を組み入れる建物の耐震補強方法において、
    前記枠部材に、上枠又は下枠のうち少なくとも一方が外側に膨らんだむくりがあるものを使用し、
    前記補強材に初期導入引張力を作用させ、前記むくりがある枠部材をフラットな状態にした後、前記枠部材を前記架構に接合させることを特徴とする建物の耐震補強方法。
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