JP4675364B2 - アンボンド工法に於けるpc鋼棒定着方法、及び該方法の実施に用いる器具 - Google Patents

アンボンド工法に於けるpc鋼棒定着方法、及び該方法の実施に用いる器具 Download PDF

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本発明は、鉄筋コンクリートプレストレスト建築物のアンボンド工法に於ける緊張鋼棒(PC鋼棒)の定着方法、及び該方法の実施に用いる定着具と、PC鋼棒緊張用のコンクリート欠込みを形成するポケットフォーマに関するものであって、建築の技術分野に属するものである。
近年、コンクリート構築物へのプレストレスト技術の採用は普及し、各種PC鋼材の緊張・定着方法が開発実施されている。
また、被覆PC鋼材をコンクリート型枠内に配置してコンクリート打設し、コンクリート躯体構築後に、PC鋼材を緊張定着するアンボンド工法も慣用されており、PC鋼材として、単本のPC鋼棒を採用する工法も慣用されている。
本発明の属する、アンボンド工法に於けるPC鋼棒の典型的定着方法としては、図9に示す従来例がある。
図9は、非特許文献1に示すものであって、図9(A)はPC鋼棒のアンボンド定着状態の縦断面図であり、図9(B)は、アンボンドPC鋼棒の横断面図である。
アンボンドPC鋼棒は、図9(B)に示す如く、表面を防錆材処理してポリプロピレン樹脂で被覆し、ポリエチレンシース内に挿通して準備したものである。
そして、図9(A)に示す如く、26mm径のPC鋼棒を採用する場合は、32mm厚で一辺が165mmの正方形の鋼板のアンカープレートと、4.5mm厚で外径が72mmの座金と、高さが40mmで対角寸法が57.7mmのナットとを採用し、コンクリート欠込み穴底部に樹脂モルタルを塗布して、着座面の不陸を調整し、PC鋼棒がアンカープレート及び座金を貫通する形態に配置してナットを螺入嵌合し、ナットから前方に突出するPC鋼棒にテンションロッドを螺着し、ジャッキを用いてPC鋼棒を所定応力付与まで引張り、浮いたナットを締め付けてPC鋼棒を定着する。
次いで、緊張力によって延びたPC鋼棒を、ナット外端面からPC鋼棒の径(26mm)と同長の突出形態で、PC鋼棒突出部を切断し、欠込み穴に樹脂モルタルを充填して、定着具の防錆を図るものである。
この場合、コンクリート欠込み穴は、深さ137.5mmで、欠込み穴表面は一辺が140mmの正方形の角錐穴が必要となる。
高周波熱錬(株)の「ネツレンPC鋼棒」のカタログ11頁「アンボンドPC鋼棒」の項
従来(図9)のアンボンド工法に於けるPC鋼棒定着手段にあっては、コンクリート欠込み形成型枠からPC鋼棒を突出させてコンクリート打設し、後工程で、PC鋼棒にアンカープレート、座金、及びナットを螺着する必要があるため、PC鋼棒のねじ山の損傷を避けるための、ねじ山にテープ等を張着する等の養生が必要であり、型枠施工及びコンクリート打設等の作業でのPC鋼棒突出部に対する細心の注意が必要である。
また、コンクリート躯体の欠込み穴は、例えば26mm径のPC鋼棒を用いる場合は、深さが、不陸調整樹脂モルタル厚5mm、支圧板32mm、座金4.5mm、ナット高さ40mm、ナットから前方に突出する必要PC鋼棒長、即ち鋼棒径26mm、PC鋼棒のコンクリート被り厚30mm、の総計137.5mmと大であり、アンカープレートの縦横寸法は165mmであるため、コンクリート躯体の断面欠損が大きくなり、大きな欠込み穴は、強度設計面からも補修復元面からも好ましくない。
また、PC鋼棒の緊張は、テンションロッドの螺合引張りとなるが、テンションロッドの螺着長は40.5mm以上でないとPC鋼棒のねじ山が破断する恐れがあり、緊張後のナット前面から突出するPC鋼棒の長さは、26mm+40.5mm+延び量となり、PC鋼棒のナットからの突出長さを、必要コンクリート被り厚30mmに切断する必要があり、PC鋼棒の余長部の切断作業は、煩雑、且つ手間のかかる難作業である。
本発明は、上記従来の、アンボンドPC鋼棒定着工法の問題点を一挙に解決、又は改善するものであり、新規なPC鋼棒定着具を採用し、小さなコンクリート欠込みの下に、且つ、PC鋼棒の、緊張定着後のコンクリート欠込み穴内での切断を不要とするPC鋼棒定着工法を提供するものである。
本発明は、例えば図1に示す如く、前端が垂直形態の支圧板1Aと、支圧板1Aから後方に、水平に引続く縮径形状の円筒部1Tとを備え、且つ、貫通する挿入用孔H1を有する定着体1をコンクリート型枠内に配置し、円筒部1T後端には、前方円錐筒部71Tと、グラウト注入口71Eを備えた中間円筒部71Mと、PC鋼棒嵌合用の後方円筒部71Sとから成るエンドキャップ71を、前方円錐筒部71Tの円筒部1T後端への嵌合により接続し、エンドキャップ71を貫通するアンボンドPC鋼棒6の先端のねじ面S6を、内周及び外周がねじ面であるカプラー3の後半部に螺入固定し、カプラー3をテーパーナット2の内周ねじ面S2に螺合してテーパーナット2を定着体1に嵌着し、定着体1の支圧板前面にはポケットフォーマ14を配置して、コンクリート型枠をセットし、コンクリートの打設硬化後にコンクリート型枠を解体し、次いで、支圧板1Aの前面に形成したコンクリート欠込み11Aを介して、緊張装置の継手部材のねじボルト16Bをカプラー3の前半部に螺入し、PC鋼棒6を、カプラー3及びテーパーナット2と共に引出し、所定緊張値に達した段階で、テーパーナット2を締め込んで定着体1の挿入用孔H1に着座させ、次いで、エンドキャップ71内に、注入口71Eからグラウトモルタル7を充填する、アンボンド工法に於けるPC鋼棒定着方法である。
この場合、PC鋼棒6の固定端Lは、強固に固定把持出来れば良いため、例えば図2(A)に示す如く、緊張端側と同一の、定着体1、テーパーナット2及びカプラー3のみを採用し、PC鋼棒6の固定端のねじ面S6をカプラー3に螺合し、カプラー3をテーパーナット2に螺入してテーパーナット2を定着体1に着座した状態で、定着体1をコンクリート型枠内に配置して定着体1をコンクリート躯体C0と一体化すれば良く、また、必要に応じて、PC鋼棒6の固定端側も、緊張端と同様の手段で把持しても良く、PC鋼棒6の両端を、共に緊張端として定着すれば、プレキャストコンクリート建物の増築時に、増築側のPC鋼棒6の基端側を、既設カプラー3の端部に螺入固定可能となり、PC鋼棒6の両端を、共に、緊張端として処理した場合は、既設プレキャストコンクリート建物に対して、両側で増築可能となる。
そして、エンドキャップ71は、緊張端側Pでの、コンクリート硬化後のPC鋼棒6の、テーパーナット2及びカプラー3を採用した緊張定着作業を可能とするために、打設コンクリートの定着体1内への浸入を阻止するものであるため、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tは、定着体円筒部1Tの後端に嵌合して、打設コンクリートの定着体円筒部1T内への浸入を阻止すれば良く、前方円錐筒部71Tを円筒部1Tに外面から嵌合させるのが良く、典型的には、図1(B)に示す如く、前方円錐筒部71Tを二重筒形態として、円筒部1T後端の環状テーパー突出片1Dを挟着するものである。
勿論、前方円錐筒部71Tを前方へ拡径する外側円錐筒71Aのみで構成し、外側円錐筒71Aを円筒部後端の突出片1Dに対し、傾斜角度差を利用した弾発外側嵌合としても良く、必要に応じて、外側円錐筒71Aと突出片1Dとの接続部に接着テープを巻いても良い。
また、エンドキャップ71の後方円筒部71Sは、貫入したアンボンドPC鋼棒6との隙間からの打設コンクリートの浸入を阻止するものであり、アンボンドPC鋼棒が隙間無く嵌合出来る内径とするのが好ましいが、作業性の観点から、アンボンドPC鋼棒6を後方円筒部71Sに緩嵌合して、生じる隙間を接着テープで捲回被覆しても良い。
また、テーパーナット2は、PC鋼棒6の先端を螺合保持したカプラー3を、PC鋼棒6の所定緊張値まで緊張引出した状態で、定着体1の挿入用孔H1の着座位置まで、カプラー3の外周ねじ面S3上を、着座位置まで締め込むものであるため、テーパーナット2の前端外周は、慣用のラチェットレンチ(ボックスレンチ)での回動作用を受けるナット形態とすれば良く、典型的には、テーパーナット2の先端は6角ナット2Cを付設する。
また、ポケットフォーマは、例えば、図1の如く、支圧板1Aの前面で挿入用孔H1の外周に、円錐筒のスリーブパイプを着脱可能に配置すれば良く、支圧板1Aのポケットフォーマ14の外側域はコンクリート内埋設域となるため、支圧板の保持力増大化が得られ、ポケットフォーマ14の、支圧板1Aに当接する径は、小さい程好ましい。
従って、本発明によれば、定着体1を、垂直形態の支圧板1A及び後方延出の円筒部1Tとし、定着体の円筒部1T後端に、円筒部1T内への打設コンクリート液の浸入を阻止するエンドキャップ71を接続したために、予め伸び量を算出して準備した1本のPC鋼棒6を、カプラー3及びテーパーナット2を介して、支圧板1Aの中央部の挿入用孔H1への嵌入によって、カプラー3及びテーパーナット2が支圧板1Aの前面1Fから突出しない形態で定着出来、支圧板1Aの前面1Fは、挿入用孔H1からの、テーパーナット2、PC鋼棒先端のカプラー3等が突出しない平坦形態と出来、支圧板1Aの前面のコンクリート被り厚Sxが小さく出来る。
そして、支圧板1Aは、コンクリート躯体C0内埋設となるため強力な支持力を発揮し、支圧板1Aと床スラブ表面Sfとの寸法、即ち、床スラブコンクリートC0の被り厚Syも小さく出来、支圧板1A前面のコンクリートC0の被り厚Sx、即ちコンクリート欠込み11Aの深さSxも小さく出来る。
そして、エンドキャップ71内へのグラウトモルタル充填によって、PC鋼棒6の緊張定着部は防錆保護され、高耐久性となる。
即ち、本発明によれば、定着体1がコンクリート内に一体化出来、垂直形態の支圧板1Aの外周の大半が、打設コンクリートC0に埋設された形態となり、支圧板1Aは、前側コンクリート域Zfと後側コンクリート域Zbとで強固に保持されるため、円筒部1Tもコンクリート躯体C0との強固な固着力を発揮することと相俟って、支圧板1Aの上部のコンクリート被り厚Syは薄く出来、従来(図9)のアンカープレート保持用のコンクリート欠込みより、遥かに小スペースのコンクリート欠込み11Aで良くなり、コンクリート欠込み11Aが小さく出来るため、PC鋼棒定着後のコンクリート欠込み11Aの補修復元施工が合理化出来ると共に、小型化した定着体にあっても、十分なコンクリート保持力の付与が可能となる。
従って、本発明のPC鋼棒定着工法は、コンクリート外壁の、水平部にも、垂直部にも適用可能となり、鉄筋量の多い柱及び梁にも作業性良く適用出来る。
更に、PC鋼棒6の緊張作業は、PC鋼棒6と同径の継手ボルト16Bを備えた緊張装置(トルクレンチ)を採用し、継手ボルト16Bをカプラー3に螺入して実施するため、PC鋼棒6を定着体1に定着した状態では、PC鋼棒6の先端はカプラー3の後半部に位置し、従来の如く、PC鋼棒6先端がアンカープレート(支圧板)から突出することがないので、PC鋼棒6の定着作業に於いて、特に困難であった、PC鋼棒6の余長の切断作業が不要となる。
しかも、緊張装置の継手ボルト16Bを螺合係止したカプラー3の前半部は、空洞ねじ部として残存するため、コンクリートプレストレスト建物の増築時には、カプラー3の該空洞ねじ部は、新規増築側のPC鋼棒基端固着用に、再度採用出来るため、プレストレスト建物の合理的な増築施工も可能となる。
また、本発明にあっては、図1に示す如く、定着体1が、挿入用孔H1の後端から、拡径状段部1Gを介して後端へと拡径する小寸の嵌合用孔H1´によって、円筒部1Tの後端にテーパー突出片1Dを備え、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tを定着体のテーパー突出片1Dに嵌合するのが好ましい。
この場合、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tは、図1(B)に示す如く、前方へ拡径形態の外側円錐筒71Aと、前方へ縮径形態の内側円錐筒71Cとの二重筒形態を採用するのが好ましく、且つ、外側円錐筒71Aと内側円錐筒71Cとの挟角は、定着体後端の筒状テーパー突出片1Dを弾力挟着する形状とすれば良い。
従って、定着体1の挿入用孔H1の後端の段部1Gは、図1(B)に示す如く、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tの定着体後端への嵌合時に、内側円錐筒71Cに対するストッパー機能を提供し、且つ、嵌合用孔H1´は、筒状テーパー面を提供するため、前端が二重筒形態の嵌合用円錐筒部71Tであるエンドキャップ71の、定着体1の後端のテーパー突出片1Dへの弾性嵌着が、単純作業で実施出来、コンクリート型枠セット時の狭い作業空間内での、定着体1へのエンドキャップ71の嵌合接続作業が容易となる。
また、本発明にあっては、図1(A)に示す如く、カプラー3が長さ方向中央にボルト挿入用孔H3´を備え、ボルト挿入用孔H3´に仕切りボルト3Bを螺入して、PC鋼棒6の先端位置をボルト3Bで規定するのが好ましい。
カプラー3は、後半部にはPC鋼棒6の先端ねじ面S6を螺合固定し、前半部には緊張装置のボルト軸16Bを螺入固定し、ボルト軸16Bの緊張装置による引張りによって、カプラー3をPC鋼棒6と共に引出す部材であるため、PC鋼棒6の先端ねじ面S6との螺合長さも、ボルト軸16Bとの螺合長さも、共にねじ面を破壊しない「限界はめ合い長さ」が必要である。
従って、仕切りボルト3Bが、PC鋼棒6の先端ねじ面S6のカプラー3内への螺入作業時に、PC鋼棒6に対するストッパーとして作用し、PC鋼棒6のカプラー3の後半部への必要、且つ十分な螺入長さ、及び継手ボルト16Bのカプラー前半部への必要、且つ十分な螺入長さ、を規定するため、カプラー3は、必要最小限の長さと出来、カプラー3の短尺化が出来、PC鋼棒6の緊張定着状態での、カプラー3の支圧板1Aからの突出が抑制出来る。
しかも、仕切りボルト3Bの介在によって、PC鋼棒6定着後のカプラー3は、継手ボルト16Bを抜脱した外側半分が、建物増改築時の新規PC鋼棒6の固定端の定着部に利用出来、プレストレスト建物の増改築の合理的施工を可能とする。
また、本発明にあっては、図1(A)に示す如く、定着体1の支圧板1Aは、方形板形態であって後方へ弯曲し、円筒部1Tの長さ方向中間の外周にリブ状突起1Cを備えているのが好ましい。
この場合、定着体1は、PC鋼棒6の緊張応力をコンクリート躯体に、コンクリート剪断破壊を生ずることなく伝達するものであり、支圧板1Aは、有効表面で一様に応力を負担するものであるため、例えば、PC鋼棒に26mm径を採用する場合は、従来技術では、正方形であれば、28mm厚で一辺135mmの支圧板が要求されるが、本発明にあっては、支圧板1Aの標準は、曲率半径200mmの弯曲形態とするため、一辺が125mmの正方形板と小寸化出来る。
そのため、図4(B)の作用説明図に示す如く、弯曲形態の支圧板1Aに対するPC鋼棒6の引張り応力Fは、支圧板から200mm後方の支点に向かう傾斜応力Fとなり、支圧板1Aに対する、コンクリートC0の保持応力f2と、引張り応力f1との作用する破壊面、即ち、引張り応力Fに対し45°(反対側の反力線から135°)の傾斜面が、引張り応力線Fの後方への収束傾斜に伴って後方に傾斜するため、破壊面の床スラブ表面までの距離が長くなり、打設コンクリートC0の支圧板1Aに対する保持応力が増大し、支圧板1Aに対する上部のコンクリート被り厚Syは小さく出来る。
従って、後方へ弯曲した支圧板1Aは、従来(図9)の平板形態の支圧板よりも、コンクリートC0の保持力が向上し、コンクリートC0の上面の被り厚Syも、従来の支圧板より小さく出来、小規模コンクリート建物へのプレストレスト工法の導入を可能とする。
しかも、定着体円筒部1Tが外周中間部にリブ状突起1Cを備えたことにより、リブ状突起1Cは、定着体1の強度増大と共に、コンクリートC0の保持力の増大も果たし、定着体1の小型化と保持力増大とを達成する。
また、本発明にあっては、図6に示す如く、テーパーナット2は、円錐筒2T部外周に、前端から後端へと貫通する空気溝G2を備え、前端T2を定着体前面1Fより内方に設置し、PC鋼棒6の伸び量を予め計算して、PC鋼棒6の定着状態で、カプラー3の前端T3を定着体前面1Fより内方に定着するのが好ましい。
尚、テーパーナット2は、外周円錐面が定着体1の挿入用孔H1に着座するものであり、カプラー3は、PC鋼棒6の伸長量によってテーパーナット2内の前後位置が決まるものである。
従って、テーパーナット2もカプラー3も、常に定着体1から突出しないように設計出来るため、定着体1は、支圧板1Aの必要コンクリート被り厚Sxのみで配置設計出来、従来(図9)の、座金や突出鋼棒のためのコンクリート被り厚は不要となり、コンクリート欠込み11Aの小サイズ化が達成出来、定着部の割裂防止のためのスパイラル筋8(図3)の径、間隔、長さも小さく出来、スパイラル筋8の配筋の作業性も向上し、コンクリート断面欠損(コンクリート欠込み11A)の小サイズ化は、復元補修面からも有利となる。
そして、PC鋼棒6の定着状態では、テーパーナットの円錐筒2T部は、定着体1の挿入用孔H1の内周面に密着して着座しているが、テーパーナット2の外周面の空気溝G2は、エンドキャップ71内へのグラウトモルタル充填時に、充満モルタルの前面への流出を生ずるため、エンドキャップ71内へのグラウトモルタル7の充填作業停止時が知見出来、モルタル7の完全な充填作業の目視が可能となる。
また、本発明にあっては、PC鋼棒6の定着後、カプラー内周ねじ面S3´を保護した後、無収縮モルタル11Bをコンクリート欠込み11Aに充填するのが好ましい。
この場合、PC鋼棒6の緊張定着時に、図4(A)の如く、カプラー3の前端T3がテーパーナット2内であれば、テーパーナット2の前端T2を布、テープ等の防水性シート材で接着閉止すれば良く、カプラー3の前端T3がテーパーナット2の前端T2より突出する場合は、カプラー3のテーパーナット2からの突出部のねじ孔H3を、布、テープ等で接着閉止すれば良い。
従って、構築したコンクリートプレストレスト建物に増築の必要が生じた際は、コンクリート欠込み11Aの充填モルタルを除去し、PC鋼棒定着部前面の布、接着テープ等の保護材を剥がせば、カプラー3の内周ねじ面S3´は使用可能となるため、増築用の新たなPC鋼棒6の基端のねじ面S6が、カプラー3の前半部へ螺入固定出来、PC鋼棒6の増築用の配置が可能となり、プレストレスト建物の増築の合理化が出来る。
また、本発明にあっては、図1の如く、ポケットフォーマとして、前端と後端に取付用ピース14Bを備えた円錐筒のスリーブパイプ14を採用し、前端の取付用ピース14Bをせき板13Bの内面に仮固定する円形合板13Aに、後端の取付用ピース14Bを支圧板1Aの前面に取付けるのが好ましい。
この場合、スリーブパイプ14は、図1(C)に示す如く、前方へ拡径する円錐筒14Aを用意し、前端適所には、アングル形態で釘孔nhを備えた取付用ピース14Bを円錐筒14Aから外方に突出形態で、後端適所には、アングル形態でボルト孔bhを備えた取付用ピース14Bを円錐筒14Aから内方に突出形態で付設すれば良い。
そして、スリーブパイプ14の、前端の取付用ピース14Bは、側面がテーパー面t13で、円錐筒14Aの前端径h14(標準:130mm)より大径(標準:160mm)の円形合板13Aに、取付用ピース14B側から釘n13で止着しておき、後端の取付用ピース14Bは、支圧板1Aの前面に配置したボルト孔bhにボルトb13で締着すると共に、円形合板13Aをせき板13B側からの釘n13で止着すれば良い。
そして、打設コンクリートの硬化後、せき板13Bを剥がせば円形合板13Aも釘n13からの抜去が出来、ボルトb13も取外せ、スリーブパイプ14は、前方へ拡径形態であるため容易に取外せる。
勿論、必要に応じて、せき板13B及び円形合板13Aのみを取外して、スリーブパイプ14は取外さなくても良い。
従って、定着体1の前面のコンクリート欠込み11Aは、支圧板1Aのコンクリート埋設形態の下に、簡単に形成出来、円形合板13Aで形成出来る拡開拡大域Z13を備えたコンクリート欠込み11Aは、復元補修のモルタル充填を平滑、且つきれいに仕上ることが出来る。
また、方法発明の実施に用いる定着具は、図2(B)に示す如く、定着体1と、テーパーナット2と、カプラー3と、エンドキャップ71とを含む定着具Dであって、定着体1は、図5(D)に示す如く、前端の垂直形態で後方に緩弯曲した支圧板1Aと、支圧板1Aから後方に引続く縮径形態で、後端にテーパー突出片1Dを有する円筒部1Tとを備えると共に、前端から後方へ縮径形態の挿入用孔H1を備え、テーパーナット2は、図6(D)に示す如く、内周面がねじ面S2であるねじ孔H2を備え、外周面が定着体1の挿入用孔H1に嵌着する縮径形態の円錐筒2Tであって、円錐筒2Tの前端に角ナット2Cを備え、カプラー3は、図7(D)に示す如く、外周がテーパーナット2のねじ孔H2と螺合するねじ面S3であり、内周がPC鋼棒6の先端ねじ面S6と螺合するねじ孔H3を備えたねじパイプ3Tであり、エンドキャップ71は、図8(A)に示す如く、定着体1の円筒部後端のテーパー突出片1Dに嵌合するための前方円錐筒部71Tと、注入口71Eを備えた中間円筒部71Mと、貫入PC鋼棒6を支持する小径の後方円筒部71Sとを備えたものである。
この場合、定着体1は、JISG5502球状墨鉛鋳鉄品の規格を満足する鋳鉄製であって、典型的には、支圧板1Aは一辺の長さが125mmの正方形状で後方に弯曲し、肉厚T1が10mmの縮径形態の円筒部1Tが、テーパーナット2着座用の挿入用孔H1を備え、且つ円筒部1T後端を筒状のテーパー突出片1Dとしたものである。
また、テーパーナット2は、JISG5111の構造用高張力炭素鋼、及び低合金鋼鋳鋼品の規定を満足する鋳鋼品であり、円錐筒2Tが、定着体1の挿入用孔H1内に着座し、内周のねじ面S2がカプラー3と螺合するものである。
また、カプラー3は、JISG4051の機械構造用炭素鋼であって、典型的には、肉厚t3が12.5mm、外径d3が52mmのねじ面S3で、内径d3´が27mmのねじ面S3´を備えた円筒体である。
また、エンドキャップ71は一般肉厚2mmのプラスチック製である。
従って、本発明の定着具を採用すれば、定着体1の支圧板1A前面にポケットフォーマを適用するだけで、定着体1はコンクリート躯体内に埋設出来、後方に緩弯曲した支圧板1Aが、図4(B)の如く、引張り応力Fの後方への収束によって、破壊面の長尺化を生じて強力な支持力を発揮するためと、支圧板1Aの周辺部の大半がコンクリートC0内で把持されるためとにより、定着体1のコンクリートC0内保持力が増大し、上部のコンクリート被り厚Syは薄く出来る。
そして、定着体1の後端にエンドキャップ71を接続するため、コンクリート打設時に、打設コンクリート液の定着体1内部への浸入が阻止出来、コンクリート硬化後のPC鋼棒6の緊張延伸、テーパーナット2のカプラー3への螺合再セット、及びテーパーナット2の定着体挿入用孔H1内への再着座が可能となる。
また、定着具1は、支圧板1Aの前部には、テーパーナット2もカプラー3も突出しない形態でPC鋼棒6を定着出来るため、支圧板1Aの前方のコンクリート被り厚Sxは、支圧板1Aのみの被り厚(規定厚30mm+余裕厚10mm)と出来、前方のコンクリート被り厚Sxも小さく出来る。
そのため、従来のコンクリート欠込みより遥かに小さなコンクリート欠込み11Aの下に、従来より遥かに小型、且つ軽量の定着体1によってPC鋼棒6の定着が可能となる。
従って、本願の請求項1の方法の発明が、好適に実施出来る。
しかも、カプラー3は、後半部でPC鋼棒6を螺着保持し、前半部に緊張装置の継手ボルト16Bを螺着してPC鋼棒6の緊張定着が実施出来るため、PC鋼棒6定着後のカプラー3の前半部は、コンクリートプレストレスト建物の増改築時に、再度、PC鋼棒6の固定端の螺合確保に採用出来る。
また、定着具の発明にあっては、定着体1は、支圧板1Aが、正方形状板体であって、後方へ200〜250mmの曲率半径で弯曲し、円筒部1Tの長さ方向中間外周にリブ状突起1Cを備え、且つ、後方へ縮径する挿入用孔H1が、拡開状段部1Gを介して後端へと拡径する短寸の嵌合用孔H1´と連通しているのが好ましい。
この場合、支圧板1Aの曲率半径は、あまり小さくすれば、応力破壊面は水平に近づき、圧縮応力度が大となるが、圧縮域が小さくなって周辺のコンクリートの圧縮力が利用出来なくなる。
そのため、一辺が125mm正方の支圧板1Aにあっては、200〜250mmが現実的であり、典型的には、200mmである。
また、突起1Cは、定着体円筒部1Tの強度増大と、円筒部1Tのコンクリート付着力増大、及び、円筒部1Tの補強を図るものであるため、高さhcが10mm前後(標準:9mm)の断面半円状突起であれば良い。
また、嵌合用孔H1´は、挿入用孔H1の後端の段部1Gから後方へ拡径形態であるため、図1(B)に示す如く、円筒部1Tの縮径形態の末端表面と、拡径形態の嵌合用孔H1´内面とで筒状のテーパー突出片1Dを形成する。
そのため、筒状のテーパー突出片1Dは、エンドキャップ前端の前方円錐筒部71Tに対する圧接嵌合面を提供し、エンドキャップ前端の前方円錐筒部71Tが図1(B)の如く、外側円錐筒71Aと内側円錐筒71Cとを備えておれば、定着体1の後端のテーパー突出片1Dは、段部1Gが内側円錐筒71Cのストッパー機能を奏し、エンドキャップ71の弾性挟着接続を可能とする。
従って、定着体1は、支圧板1Aが、200〜250mmの曲率半径で、後方へ適当に弯曲することにより、PC鋼棒6の緊張に対する支持力が増大すると共に、円筒部1T外周の突起1Cがコンクリート付着強度を増大するため、小型化が可能となる。
そして、円筒部1Tは、後端に、段部1Gを介した拡径状の嵌合用孔H1´を備えているため、前方円錐筒部71Tを備えたエンドキャップ71の嵌合接続を容易とし、エンドキャップ71によってコンクリート打設時の定着体1の内部へのコンクリート浸入が阻止出来るため、アンボンド工法でのPC鋼棒定着に於いて、定着体1内にテーパーナット2及びPC鋼棒螺着カプラー3を内挿した定着装置をコンクリート型枠内に配置することが可能となり、定着体1の小サイズ化及びコンクリート欠込み11Aの小サイズ化の可能な、且つ、プレストレスト建物の増築にも対処可能な、画期的なPC鋼棒緊張定着技術を提供する。
また、定着具の発明にあっては、テーパーナット2は、円錐筒2Tの外周面に、前端から後端へ貫通する空気溝G2を備え、定着体1の挿入用孔H1への着座形態では、円錐筒2Tの最小外径dbの後面B2が定着体1の挿入用孔H1の段部1Gに干渉しない位置を占め、前端T2が支圧板1Aの前面1Fより内方位置を占め、且つ、円錐筒前面2Fから突出した角ナット2Cの対向角隅径dcが円錐筒2Tの前端の最大外径dtより小であるのが好ましい。
この場合、空気溝G2は、テーパーナット2が定着体挿入用孔H1内に密接着座した状態で、テーパーナット2の外周と挿入用孔H1内周との界面に空気導通孔を形成すれば良く、典型的には、断面9mm径の半円形溝である。
テーパーナット2は、定着体1のコンクリート型枠へのセット時には、PC鋼棒6を螺着したカプラー3を螺合保持して定着体1の挿入用孔H1内に着座しており、PC鋼棒6の緊張と共に挿入用孔H1内を前方へ移動し、PC鋼棒6の緊張定着時に、角ナット2Cを介したカプラー3上でのねじ締め付けにより、再度、挿入用孔H1の同一着座位置を占めるものであり、テーパーナット2は、定着体1の挿入用孔H1内を前後に移動するものである。
また、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tは、コンクリート型内でのセット時に定着体円筒部1Tの後端のテーパー突出片1Dに嵌合するものである。
従って、テーパーナット2の最小径の後端が定着体挿入用孔H1の段部1Gに干渉しない位置、即ち段部1Gより前方位置を占める構造であれば、テーパーナット2の挿入用孔H1内での移動は、段部1Gから後方のテーパー突出片1Dに当接したエンドキャップ71の内側円錐筒71Cの先端と干渉することなく、エンドキャップ前端の前方円錐筒部71Tも、段部1Gをストッパーとして、定着体1の後端に正確に嵌合接続出来る。
そして、テーパーナット2の外周面の空気溝G2は、エンドキャップ71内へのグラウトモルタル注入作業時に、グラウトモルタル7の空気溝G2からの流出によって、グラウトモルタルの充填完了を目視可能とする。
また、角ナット2Cの対向角隅径dc(標準:67mm)が円錐筒2Tの前端の外径dt(標準:75.6mm)より小であれば、角ナット2Cの対向辺間径Lc(標準:58mm)は定着体挿入用孔H1との間に締着用の間隔を提供し、角ナット2Cの回動締着具(典型的にはラチェットレンチ)は、定着体1の支圧板1Aの前面1Fより入り込んだ位置でもテーパーナット2の締着作業が可能となり、定着具Dはテーパーナット2が定着体1の前面1Fより入り込んだ位置でのセット金具となるため、テーパーナット2の長さL2(標準:61mm)の短寸化が達成出来、定着体1前面のコンクリート被り厚Sxも短寸化出来る。
また、定着具の発明にあっては、カプラー3は、長さL3が、少なくとも、PC鋼棒6の限界はめ合い長さの2倍であって、PC鋼棒6の定着状態では、前面T3が定着体1の前面1Fより内方位置を占めるものであって、長さ方向中央に、仕切りボルト3B螺入用のボルト挿入用孔H3´を備えているのが好ましい。
従って、カプラー3は、ねじ孔H3内へ、後方からPC鋼棒6を、前方から緊張装置の継手ボルト16Bを螺合して、継手ボルト16Bを緊張装置で引張っても、ねじ面破壊を生ずることなく緊張定着出来、アンボンドPC鋼棒6の長さを、予め伸び量を算定して準備することにより、カプラー3の前端T3が定着体前面1Fより内方位置で定着出来るため、支圧板1Aのみの必要コンクリート被り厚Sxの基準で設計出来、定着具Dは小型化出来る。
しかも、カプラー3の中央にはねじ孔H3を備えているため、ボルト挿入用孔H3´への仕切りボルト3Bの螺入によって、PC鋼棒6の螺入先端の位置規制が出来、カプラー3のねじ孔H3は、ボルト3Bから前方に必要長さの空間が確保出来、緊張装置の継手ボルト16Bの螺入、及び建物増築時の新規PC鋼棒6の螺入固定を保証する。
そして、PC鋼棒6の定着状態で、カプラー前端T3が支圧板前面1Fより内方位置を占めるため、建物増築可能に必要な、カプラー3の内周ねじ面S3´の充填モルタルからの保護も、接着テープ等で簡便に達成出来る。
また、本願方法発明に用いるエンドキャップ71は、図1に示す如く、前方円錐筒部71Tが、前方への拡径形態の外側円錐筒71Aと、前方への縮径形態の内側円錐筒71Cとを立上り辺71Dで接続して、両円錐筒71A,71C間に、前方へ拡開する環状係合溝G71を形成し、後方円筒部71Sは、貫通するアンボンドPC鋼棒6を、コンクリート流入を阻止する形態で貫入保持するのが好ましい。
この場合、「アンボンドPC鋼棒」は、PC鋼棒にプラスチックシースを被覆した慣用品であり、PC鋼棒6自体の径が26mmであれば、アンボンドPC鋼棒6の外径は29.4mmである。
また、エンドキャップ71は、プラスチック成形品で用意すれば良く、典型的には、一般肉厚2mmのプラスチック成形品である。
この場合、エンドキャップ71の後方円筒部71Sは、典型的には、長さLsが20mmで内径が31.4mmであり、アンボンドPC鋼棒の外径が29.4mmであるため、アンボンドPC鋼棒6は、外周に1mmの隙間を保つ嵌合となるが、後方円筒部71Sが20mm長であるため、該隙間はコンクリート流入を実質上阻止する。
また、環状係合溝G71の前方への拡開角は、定着体1の円筒部後端の筒状のテーパー突出片1Dを弾性挟着するように、テーパー突出片1Dの拡開角より若干(1〜2°)狭くしておくと良い。
従って、定着体1の円筒部1Tの挿入用孔H1の後端に、段部1Gを介して、後方へ拡径する嵌合用孔H1´を形成して、円筒部1T後端に、図1(B)に示す如く、筒状のテーパー突出片1Dを形成しておくことにより、エンドキャップ71の前端の、前方円錐筒部71Tの内側円錐筒71Cを、定着体1の後端から、嵌合用孔H1´に、段部1Gに当接するまで嵌入すれば、環状係合溝G71は、テーパー突出片1Dを弾性挟着し、もはや、定着体円筒部1Tとエンドキャップ71との接続部は、打設コンクリートの浸入の危険が無くなる。
また、エンドキャップ71の後方円筒部71Sも、アンボンドPC鋼棒6を、貫入可能な最小限の隙間の下に、実質上当接保持するため、後方円筒部71Sの長さL74(標準:20mm)での面保持と相俟って、例え、後方円筒部71S内面に1mm前後の隙間が生じても、打設コンクリートのエンドキャップ内部への流入は阻止出来る。
また、本願方法発明の実施に用いるポケットフォーマは、図1(B)の如く、裁頭円錐筒14Aの、前端には型板13A,13Bに取付けるための複数の取付用ピース14Bを、後端には定着体1の支圧板1Aに取付けるための複数の取付用ピース14Bを備えたスリーブパイプ14が好ましい。
この場合、前端の取付用ピースはアングル形態で外方に突出して釘孔nhを、後端の取付用ピース14Bは内方に突出してボルト孔bhを配置し、且つ、支圧板1Aの対応位置にもボルト孔bhを配置しておけば良い。
そして、図1(A)の如く、スリーブパイプ14は、前端の取付用ピース14Bを釘n13で円形合板13Aに取付けて、円形合板13Aをせき板13B側から釘n13で止着し、後端の取付用ピース14Bをボルトb13で支圧板1Aに取付けることによって型セットし、打設コンクリートの硬化後に、せき板13Bを引き剥がせば、円形合板13Aも取外し出来、ボルトb13の抜脱によりスリーブパイプ14は取外せる。
従って、スリーブパイプ14の簡単な取付け、及び抜脱により、且つ、周面がテーパーt13を備えた円形合板13Aの併用により、所望のコンクリート欠込み11Aが形成出来、円形合板13Aの併用によって、補修復元がきれいに仕上がる拡大域Z13を備えたコンクリート欠込み11Aが形成出来る。
本願方法発明によれば、定着体1を、垂直形態の支圧板1A及び後方延出の円筒部1Tとし、定着体円筒部1Tの後端に、円筒部1T内への打設コンクリートの流入を阻止するエンドキャップ71を接続したために、予め伸び量を算出して準備した1本のPC鋼棒6を、カプラー3及びテーパーナット2を介して、支圧板1Aの中央部の挿入用孔H1へ嵌入した状態で、定着体1をコンクリート型内にセット出来、コンクリートC0の硬化後に、再度、カプラー3及びテーパーナット2を介してPC鋼棒6を緊張定着することが出来る。
そして、PC鋼棒6は予め伸び量を算出しているため、挿入用孔H1内のテーパーナット2、カプラー3、PC鋼棒6等は、支圧板1Aの前面から突出しない形態で緊張定着出来て、支圧板1Aの前面1Fは平坦形態となる。
そのため、支圧板1Aの前面のコンクリート被り厚Sxが小さく出来る。
そして、支圧板1Aが、円筒部1Tと共にコンクリートC0内に埋設されるため、定着体1に対するコンクリートC0の固着支持力が増大し、支圧板1Aと床スラブ表面Sfとの寸法、即ち、床スラブコンクリートC0の被り厚Syも小さく出来る。
そのため、PC鋼棒6の定着が支圧板1Aの前面1Fから突出しない形態で緊張定着出来て、支圧板1A前面のコンクリートC0の被り厚Sxが小さく出来ることと相俟って、コンクリート欠込み11Aは、定着体1の前方の深さSxも、定着体1の上方からの深さSyも小さく出来、プレストレストコンクリート建物に対するPC鋼棒6の定着位置の自由度が増し、プレストレストコンクリート建物の設計面、及びコンクリート欠込み11Aの補修復元面で有利である。
即ち、定着体1がコンクリート内に一体化出来、垂直形態の支圧板1Aの外周の大半が打設コンクリートC0に埋設された形態となるため、支圧板1Aは、前側のコンクリート域Zfと後側のコンクリート域Zbとで強固に挟着保持され、従来(図9)の支圧板保持用のコンクリート欠込みより、遥かに小スペースのコンクリート欠込み11Aで良くなり、コンクリート欠込み11Aが小さく出来るため、PC鋼棒が小さなスペースの位置でも配置可能となり、PC鋼棒定着後のコンクリート欠込み11Aの補修復元作業も簡単になる。
従って、本発明は、コンクリート外壁の、水平部にも、垂直部にも適用可能となり、鉄筋量の多い柱間にも作業性良く適用出来る。
また、コンクリート型内にセットした定着体1の内部への打設コンクリートの流入阻止手段も、エンドキャップ71の、前方円錐筒部71Tを定着体1の後端に嵌合し、後方円筒部71Sで、貫入したグラウトPC鋼棒6を嵌合支持させるだけであるから施工が簡単であり、テープ捲回などの隙間処理の煩雑な作業は不要となる。
更に、PC鋼棒6の緊張作業は、PC鋼棒6と同径の継手ボルト16Bを備えた緊張装置(トルクレンチ)を採用し、継手ボルト16Bをカプラー3に螺入して実施するため、定着体の支圧板1Aに負担をかけずに実施出来、PC鋼棒6の定着作業に於いて、特に困難な作業であった、PC鋼棒6の余長の切断作業が不要となる。
しかも、緊張装置の継手ボルト16Bを螺合係止したカプラー3の前半部は、コンクリートプレストレスト建物の増築時には、新規増築側のPC鋼棒6の基端固定に採用出来るため、プレストレスト建物の合理的な増築施工が可能になる。
また、請求項1の発明の実施に用いる定着具Dは、定着体1の支圧板1A前面にポケットフォーマを適用するだけで、定着体1はコンクリート躯体C0内に埋設出来、後方に弯曲した支圧板1Aは引張り応力作用線Fの後方への収束によって破壊面の長尺化を生じて支圧板1Aに強力な保持力を発揮させるためと、支圧板1Aの周辺部の大半がコンクリートC0内に埋設されるためとにより、定着体の、上部のコンクリート被り厚Syも、前方のコンクリート被り厚Sxも小さく出来、従来より遥かに小型、且つ軽量の定着体1によってPC鋼棒6の定着が可能となる。
そして、定着体1内部への打設コンクリートの流入は、定着体の後端に嵌合接続したエンドキャップ71によって阻止出来るため、コンクリート硬化後の、PC鋼棒の緊張延伸、テーパーナット2のカプラー3への螺合再セット、及びテーパーナット2の定着体挿入用孔H1内への再着座が、支障無く実施出来、本願請求項1の方法の発明が好適に実施出来る。
しかも、カプラー3は、後半部でPC鋼棒6を螺着保持し、前半部に緊張装置の継手ボルト16Bを螺着して、PC鋼棒6の緊張定着が実施出来るため、PC鋼棒6の定着後のカプラー3の前半部は、ねじ孔H3が空洞状態のままであり、コンクリートプレストレスト建物の耐用中に増築要求が生じた際には、コンクリート欠込み11Aに充填したグラウトモルタルを除去することにより、カプラー3の前半の空洞状態のねじ孔H3に、再度、増築用PC鋼棒6の固定端を螺着することにより、増築施工が合理的に実施出来る。
また、本願方法発明の実施に、図1(B)に示すポケットフォーマ、即ち、スリーブパイプ14を適用すれば、先端の取付用ピース14Bを円形合板13Aを介してせき板13Bに釘付けし、後端の取付用ピース14Bをボルトb13によって支圧板1A前面に取付けることにより、定着体1とせき板(型枠)13Bとの間へのポケットフォーマの配置が簡単に実施出来、打設コンクリート硬化後の型枠解体時のスリーブパイプ14の除去も簡単である。
従って、スリーブパイプ14の簡単な取付け、及び抜脱により、且つ、円形合板13Aの併用により、所望サイズの、且つ、充填モルタルによる補修復元がきれいに仕上がる、拡大域Z13を備えたコンクリート欠込み11Aが形成出来、本願の方法発明が好適に実施出来る。
以下、本発明をJISG3109の径26mmのPC鋼棒6の表面に、慣用の防錆材及びポリプロピレン被膜を形成し、その外周にポリエチレンシースP6を嵌合した、外径29.4mmのアンボンドPC鋼棒を用いて実施する例に基づき説明する。
PC鋼棒6は、固定端及び緊張端にねじ面S6を備えたものであり、固定端側を、定着体1、テーパーナット2及びカプラー3で固定し、緊張端を定着具D内で緊張定着するものであり、定着具Dは、図2(B)に示す如く、定着体1と、定着体内に着座するテーパーナット2と、PC鋼棒6の端部ねじ面S6を螺合係止し、且つテーパーナット2内に螺合するカプラー3と、定着体1の後端に接続するエンドキャップ71とから成るものである。
〔定着体(図5)〕
図5(A)は、定着体1の前方からの全体斜視図であり、図5(B)は定着体1の全体側面図、図5(C)は、定着体1の前面図、図5(D)は、定着体1の図5(A)のD−D線縦断面図である。
定着体1は、前面の垂直形態の支圧板1Aと、支圧板1Aの中央部から後方に延出した縮径形態の円筒部1Tとから成り、支圧板1Aの中央部からは、円筒部1T後部まで貫通するテーパーナット着座用の挿入用孔H1を、挿入用孔H1の後端には、拡径段部1G及び段部に引続く、短寸の嵌合用孔H1´を備えたものであり、図5(D)に示す如く、嵌合用孔H1´は、挿入用孔H1の後端から、急拡径段部1Gを介して緩拡径するものである。
定着体1は、JISG5502の球状墨鉛鋳鉄品の規格を満足する鋳鉄製であって、支圧板1Aは、肉厚12mmで、図5(C)に示す如く、一辺の長さLaが125mmの正方形板であって、図5(A)に示す如く、四隅に、ポケットフォーマ取付用のボルト孔bhを備え、曲率半径200mmで後方に弯曲している円弧面板である。
そして、図5(D)に示す如く、支圧板1Aの後面から後方へ、縮径形態で引続く円錐状の円筒部1Tは、肉厚t1が10mmで、円筒部1Tの長手方向中央部の外周には、高さhcが9mmの環状リブ状の断面半円状突起1Cを備えており、定着体1の全長L1は87.7mmである。
また、定着体1には、図5(D)に示す如く、支圧板1Aの前面1Fの中央から円筒部1Tの後面B1の中央まで、挿入用孔H1と嵌合用孔H1´が段部1Gを介して連通しており、テーパーナット着座用の挿入用孔H1は、支圧板前面1Fから後方の段部1Gまでの長さL2が72.7mmで、前端の径(R1)83mmから後端の段部1G位置の径(R2)58mmへと縮径し、挿入用孔H1の後端には、長さLGが3mmで、急拡径する段部1Gの後端から、円筒部1T後面B1までの距離L1´が12mmで、始端径R3が62mmで後端径R4が65mmと緩拡径する嵌合用孔H1´が連通し、長さL1´の嵌合用孔H1´の内周面と、対応する円筒部1T後端外周面とで、嵌合用の筒状テーパー突出片1Dを形成するものである。
〔テーパーナット(図6)〕
テーパーナット2は、中央の貫通ねじ孔H2にカプラー3を螺着保持し、円錐筒2Tの外周面で定着体1の円錐形態の挿入用孔H1内に着座する部材であり、図6(A)は全体斜視図、図6(B)は正面図、図6(C)は側面図、図6(D)は(A)図のD−D線縦断側面図である。
テーパーナット2は、JISG5111の、構造用高張力炭素鋼、及び低合金鋼鋳鋼品の規格を満足する鋳鋼品であって、テーパーナット全体形状は、図6(C)に示す如く、円錐筒本体としての、前面2Fから後面B2まで縮径する裁頭円錐状の円錐筒2Tが、前面2Fから前方に突出する六角形状のナット2Cを備えたものであり、中央に、ナット2C及び円錐筒2Tを貫通するねじ孔H2を備えたものである。
ナット2Cの厚さLnは10mmで、円錐筒2Tの長さL2´は51mmで、テーパーナット2の全長L2は61mmである。
また、六角ナット2Cは、対角隅距離dcが67mmで、対向辺間径Lcが58mmであり、円錐筒2Tは、前面2Fの径dtが75.6mm、後面B2の径dbが58mmであり、テーパーナット2の中央を、径dsが52mmのねじ孔H2が貫通している。
そして、円錐筒2Tの外周面には、半径9mmの半円形の空気溝G2を1本、前端から後端まで貫通形態で形成している。
〔カプラー(図7)〕
カプラー3は、PC鋼棒6のねじ面S6を備えた端部をねじ孔H3に螺入収容し、且つ、外周のねじ面S3でテーパーナット2のねじ孔H2に螺合する部材であり、図7(A)は全体斜視図、図7(B)は正面図、図7(C)は側面図、図7(D)は、図7(A)のD−D線縦断面図である。
カプラー3の全体形状は、図7(A)に示す如く、外周面も内周面もねじ面のねじパイプ3Tであって、JISG4051の機械構造用炭素鋼のねじパイプであり、長さL3が85mm、外径d3が52mm、肉厚t3が12.5mmで、中心部を内径(d3´)27mmのねじ孔H3が貫通するものである。
そして、長さ方向中央には、図7(B)に示す如く、外周ねじ面S3からねじ孔H3内に、仕切用ボルトを螺入するボルト挿入用孔(仕切孔)H3´を貫通したものである。
〔エンドキャップ(図8)〕
エンドキャップ71は、定着体1の円筒部1T後端に嵌合接続して、コンクリート型内にセットした定着体1の円筒部1T後端からの、及び定着体1内へ貫入したアンボンドPC鋼棒6の外周からの、定着体1内部への打設コンクリートの流入を阻止するものであって、図8(A)は全体斜視図、図8(B)は前面図、図8(C)は側面図、図8(D)は図8(A)のB−B線断面図である。
エンドキャップ71の全体形状は、図8(A)に示す如く、円錐筒を二重に備えた前方円錐筒部71Tと、注入口71Eを突設した中間円筒部71Mと、小径の後方円筒部71Sとから成り、一般肉厚2mmのプラスチック成形品である。
そして、図8(D)に示す如く、前方円錐筒部71Tは、長さLTが22mmで、前方へ拡径して前端F71の外径dtが79.9mmの外側円錐筒71Aと、前方へ緩縮径した長さ22mmの内側円錐筒71Cとを、幅5mmの立上り辺71Dで一体化し、外側円錐筒71Aと内側円錐筒71Cとの間に、最外端寸法dGが10mmの係合溝G71を備えた二重筒形態である。
そして、前方円錐筒部71Tの立上り辺71D位置からは、外径dMが67mmで、長さLMが58mmの中間円筒部71Mが内側円錐筒71Cに接続し、中間外周から、外径15mm、高さ30mmの注入口71Eを突出し、中間円筒部71Mの後面B71の中央からは、外径dsが35.4mm、長さLsが20mmの後方円筒部71Sを突出したものであり、エンドキャップ71は、全長L71が100mmである。
〔スリーブパイプ(図1(B))〕
スリーブパイプ14は、コンクリート型セット時に、定着体1の前面に配置する型材であって、定着体1の前面に、PC鋼棒6の緊張定着作業用のコンクリート欠込み11Aを形成するポケットフォーマである。
図1(C)は、スリーブパイプ14と、スリーブパイプ14の前面に付設する円形合板との分解斜視図である。
スリーブパイプ14は、一般肉厚2.3mmの鋼板成形体であり、図1(C)の如く、円錐筒14Aは、前端径h14が130mm、後端径h14´が120mm、長さL14が28mmである。
そして、前端には、一辺が15mmの正方形状で起立して中央に釘孔nhを備えたアングル形状の取付用ピース14Bを等間隔に4個付設し、後端には、内方に起立して中央にボルト孔bhを備えたアングル形状の取付用ピース14Bを等間隔に4個付設したものである。
また、円形合板13Aは、厚さ12mmで、外面径(d13)が160mm、周側面が、外面側から内面側にテーパー面t13で縮径するもので、内面をスリーブパイプ前端の取付用ピース14Bと釘打ち固定するものである。
〔施工(図1、図2)〕
図1(A)は、PC鋼棒の緊張端側の型セット状態図であり、図2(A)は、PC鋼棒の固定端側の型セット状態図であり、図2(B)は定着具Dの分解斜視図である。
図1(A)に示す如く、定着体1の円筒部後端の筒状テーパー突出片1Dに、エンドキャップ71の前方円錐筒部71Tを嵌合して、定着体1とエンドキャップ71をコンクリート型内に配置する。
また、アンボンドPC鋼棒6は、予め伸び量を計算して慣用のポリエチレンのシースパイプP6を被覆して、エンドキャップ71の後方円筒部71Sを貫通した状態で、先端のねじ面S6部をカプラー3の後半部に螺入固定する。
この場合、エンドキャップ71の後方円筒部71Sの嵌合用孔H71´の内径は31mm強(標準:31.4mm)であって、アンボンドPC鋼棒外径が29.4mmであるため、若干(標準:1mm)の隙間のある嵌合となるが、後方円筒部の長さLsが20mmであるため、PC鋼棒とエンドキャップとの嵌合は、実質上コンクリート流入が阻止出来る。
また、カプラー3の長手方向中央のボルト挿入用孔H3´には、仕切りボルト3Bを螺入してねじ孔H3内に突出させて、PC鋼棒6のカプラー3内への螺入位置を規定する。
そして、図1(A)の如く、カプラー3の外周ねじ面S3にテーパーナット2を螺合して、テーパーナット2を、コンクリート型内の鉄筋を介して仮固定した定着体1の挿入用孔H1内に着座させ、定着体1の前面の支圧板1Aのボルト孔bhには、取付用ピース14Bを整合して、ボルトb13でスリーブパイプ14を止着し、スリーブパイプ14の前端は、取付用ピース14Bの釘孔nhから円形合板13Aを貫通してせき板13Bに釘n13を打付け、コンクリートせき板13Bの外側からも、釘n13で円形合板13Aをせき板13Bに止着する。
また、エンドキャップ71は、注入口71Eを上向きとして、前方円錐筒部71Tを、内側円錐筒71Cの先端が定着体1の後端の嵌合用孔H1´先端の段部1Gに当接して、定着体1の後端の筒状テーパー突出片1Dを弾性挟着した形態で、定着体後端に嵌合接続し、必要に応じて、針金で位置保持する。
そして、注入口71Eにはグラウトホース4Bを接続しておく。
また、PC鋼棒固定側にあっては、図2(A)に示す如く、定着体1を型枠内の鉄筋に仮固定すると共に、慣用のセパレータ17A、Pコン17C、フォームタイ17Bによりせき板(型枠)13Bに保持し、定着体1内には、緊張端側同様に、グラウトPC鋼棒6の基端を、ねじ面S6でカプラー3内の中央の仕切りボルト3Bまで螺入固定し、カプラー3をテーパーナット2に螺入固定してテーパーナット2を定着体1内に着座保持しておく。
この場合、テーパーナット2は、空気溝G2を切削形成した物でも、空気溝G2を切削形成していない物でも良い。
そして、カプラー3の外端面には、ビニールテープ12を添着して、打設コンクリートのカプラー3内への流入を阻止しておく。
そして、コンクリート型枠にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化したら型枠を解体する。
図4(A)はPC鋼棒6の緊張定着説明図である。
PC鋼棒6の緊張定着は、ラチェットレンチを貫通して継手ボルト16Bをカプラー3の前半部の締着用ねじ孔H3に螺入締着し、継手具角孔H16にトルクレンチの回転出力軸15を挿入し、回動すれば、カプラー3及びPC鋼棒6が前方に引出されてPC鋼棒6は緊張され、予め算出した伸び量、又はトルクレンチのゲージの緊張荷重でPC鋼棒の所定緊張値を確認してトルクレンチの作動を停止し、ラチェットレンチでテーパーナット2のナット2Cを回動して、テーパーナット2を締め込んで、定着具1の挿入用孔H1内に着座させる。
次いで、カプラー3のねじ孔H3の前端(外端)面を防水性のシート又はテープで閉止し、グラウトホース4Bから、グラウト注入口71Eを介して、グラウトモルタル7を、エンドキャップ71内に注入し、テーパーナット2の空気溝G2からの流出が目視出来るまで充填する。
次いで、定着体1の前面のコンクリート欠込み11Aに無収縮モルタル11Bを充填する。
図3は、得られたPC鋼棒6のアンボンド定着状態説明図である。
図3に示す如く、定着体1は、それ自体慣用のスパイラル筋8で強化保持され、コンクリート欠込み11Aは無収縮モルタル11Bで補修され、且つ、エンドキャップ71内にはグラウトモルタル7が充填された、アンボンドのPC鋼棒定着構造となった。
そして、PC鋼棒6の、緊張端側Pにあっても、固定端側Lにあっても、定着体1の前面1Fからの突出物が存在しないため、コンクリート被り厚Sxは40mm(設計限界値30mm+余裕10mm)と小さく出来た。
また、緊張端側Pの定着体支圧板1Aは、外周部がコンクリートC0内に埋設されるため、支圧板1Aの、前面のコンクリート域Zfと後面のコンクリート域Zbとで保持力が増大すること、及び支圧板1Aの後方への弯曲形態での、図4(B)に示す如き、破壊面の後方傾斜によるコンクリート保持力増大により、定着体1の上面の、床スラブ表面Sfからのコンクリート被り厚Syは、固定端側Lの被り厚Syと共に、40mm(設計限界値30mm+余裕10mm)と小さく出来た。
また、緊張端側Pでのコンクリート欠込み11Aに対する無収縮モルタル11Bでの復元補修も、スリーブパイプ14に付設採用した円形合板13Aによる拡大域Z13の存在により、固着力の増大の下にきれいに仕上られた。
型セットの説明図であって、(A)は、緊張端側の断面図、(B)は、図1(A)のB部拡大図、(C)は、ポケットフォーマの分解斜視図である。 型セットの説明図であって、(A)は、固定端側の断面図、(B)は、定着具の分解斜視図である。 アンボンドPC鋼棒を緊張定着施工した状態の全体説明図である。 緊張端側の説明図であって、(A)は、緊張施工状態の断面図、(B)は、PC鋼棒の応力作用説明図である。 定着体の説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は(A)のD−D線断面図である。 テーパーナットの説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は(A)のD−D線断面図である。 カプラーの説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は(A)のD−D線断面図である。 エンドキャップの説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は(A)のD−D線断面図である。 従来例の説明図であって、(A)は定着構造の斜視図、(B)はアンボンドPC鋼棒の断面図である。
符号の説明
1 定着体
1A 支圧板
1C リブ状突起(突起)
1D 筒状テーパー突出片(テーパー突出片、突出片)
1F,2F 前面
1G 段部
1T 円筒部
2 テーパーナット
2C ナット(六角ナット)
2T 円錐筒(円筒)
3 カプラー
3B ボルト(仕切りボルト)
3T ねじパイプ
4B グラウトホース
5 スパイラルシース
6 PC鋼棒
7 グラウトモルタル
8 スパイラル筋
11A コンクリート欠込み(欠込み)
11B 無収縮モルタル
12 接着テープ(ビニールテープ)
13A 円形合板(型板)
13B せき板(型板)
14 スリーブパイプ(ポケットフォーマ)
14A 円錐筒
14B 取付用ピース
15 回転出力角軸
16 継手部材
16B 継手ボルト(ねじボルト、ボルト軸)
17A セパレータ
17B フォームタイ
17C Pコン
71 エンドキャップ
71A 外側円錐筒
71C 内側円錐筒
71D 立上り辺
71E 注入口(グラウト注入口)
71M 中間円筒部
71S 後方円筒部
71T 前方円錐筒部(円錐筒部)
B1,B2 後面
b13 ボルト
bh ボルト孔
C0 コンクリート(打設コンクリート、コンクリート躯体)
D 定着具
G2 空気溝
G71 係合溝(環状係合溝)
H1 挿入用孔
H1´,H71´ 嵌合用孔
H2,H3 ねじ孔
H3´ ボルト挿入用孔
n13 釘
nh 釘孔
P6 ポリエチレンシース(シースパイプ)
S2,S3,S3´,S6 ねじ面
Sf 床スラブ表面
Sx,Sy 被り厚(深さ)
T2,T3 前端(前面)
t13 テーパー面
Z13 拡大域
Zb 後側コンクリート域
Zf 前側コンクリート域

Claims (13)

  1. 前端が垂直形態の支圧板(1A)と、支圧板(1A)から後方に、水平に引続く縮径形状の円筒部(1T)とを備え、且つ、貫通する挿入用孔(H1)を有する定着体(1)をコンクリート型枠内に配置し、円筒部(1T)後端には前方円錐筒部(71T)と、グラウト注入口(71E)を備えた中間円筒部(71M)と、PC鋼棒嵌合用の後方円筒部(71S)とから成るエンドキャップ(71)を、前方円錐筒部(71T)の円筒部(1T)後端への嵌合により接続し、エンドキャップ(71)を貫通するアンボンドPC鋼棒(6)の先端のねじ面(S6)を、内周及び外周がねじ面であるカプラー(3)の後半部に螺入固定し、カプラー(3)をテーパーナット(2)の内周ねじ面(S2)に螺合してテーパーナット(2)を定着体(1)に嵌着し、定着体(1)の支圧板(1A)前面にはポケットフォーマ(14)を配置して、コンクリート型枠をセットし、コンクリートの打設硬化後にコンクリート型枠を解体し、次いで、支圧板(1A)の前面に形成したコンクリート欠込み(11A)を介して、緊張装置の継手部材(16)のねじボルト(16B)をカプラー(3)の前半部に螺入し、PC鋼棒(6)を、カプラー(3)及びテーパーナット(2)と共に引出し、所定緊張値に達した段階で、テーパーナット(2)を締め込んで定着体(1)の挿入用孔(H1)に着座させ、次いで、エンドキャップ(71)内に、注入口(71E)からグラウトモルタル(7)を充填する、アンボンド工法に於けるPC鋼棒定着方法。
  2. 定着体(1)が、挿入用孔(H1)の後端から、拡径状段部(1G)を介して後端へと拡径する小寸の嵌合用孔(H1´)によって、円筒部(1T)の後端にテーパー突出片(1D)を備え、エンドキャップ(71)の前方円錐筒部(71T)を定着体のテーパー突出片(1D)に嵌合する、請求項1のPC鋼棒定着方法。
  3. カプラー(3)が長さ方向中央にボルト挿入用孔(H3´)を備え、ボルト挿入用孔(H3´)に仕切りボルト(3B)を螺入して、PC鋼棒(6)の先端位置をボルト(3B)で規定する、請求項1又は2のPC鋼棒定着方法。
  4. 定着体(1)の支圧板(1A)は、方形板形態であって後方へ弯曲し、円筒部(1T)の長さ方向中間の外周にリブ状突起(1C)を備えている、請求項1乃至3のいずれか1項のPC鋼棒定着方法。
  5. テーパーナット(2)は、円錐筒(2T)部外周に、前端から後端へと貫通する空気溝(G2)を備え、前端(T2)を定着体前面(1F)より内方に設置し、PC鋼棒(6)の伸び量を予め計算して、PC鋼棒(6)の定着状態で、カプラー(3)の前端(T3)を定着体前面(1F)より内方に定着する、請求項1乃至4のいずれか1項のPC鋼棒定着方法。
  6. PC鋼棒(6)の定着後、カプラー内周ねじ面(S3´)を保護した後、無収縮モルタル(11B)をコンクリート欠込み(11A)に充填する、請求項1乃至5のいずれか1項のPC鋼棒定着方法。
  7. ポケットフォーマとして、前端と後端に取付用ピース(14B)を備えた円錐筒のスリーブパイプ(14)を採用し、前端の取付用ピース(14B)をせき板(13B)の内面に仮固定する円形合板(13A)に、後端の取付用ピース(14B)を支圧板(1A)の前面に取付ける、請求項1乃至6のいずれか1項のPC鋼棒定着方法。
  8. 請求項1の発明の実施に用いるための、定着体(1)と、テーパーナット(2)と、カプラー(3)と、エンドキャップ(71)とを含む定着具(D)であって、定着体(1)は、前端の垂直形態で後方に緩弯曲した支圧板(1A)と、支圧板(1A)から後方に引続く縮径形態で、後端にテーパー突出片(1D)を有する円筒部(1T)とを備えると共に、前端から後方へ縮径形態の挿入用孔(H1)を備え、テーパーナット(2)は、内周面がねじ面(S2)であるねじ孔(H2)を備え、外周面が定着体(1)の挿入用孔(H1)に嵌着する縮径形態の円錐筒(2T)であって、円錐筒(2T)の前端に角ナット(2C)を備え、カプラー(3)は、外周がテーパーナット(2)のねじ孔(H2)と螺合するねじ面(S3)であり、内周がPC鋼棒(6)の先端ねじ面(S6)と螺合するねじ孔(H3)を備えたねじパイプ(3T)であり、エンドキャップ(71)は、定着体(1)の円筒部後端のテーパー突出片(1D)に嵌合するための前方円錐筒部(71T)と、注入口(71E)を備えた中間円筒部(71M)と、貫入PC鋼棒(6)を支持する小径の後方円筒部(71S)とを備えたものである定着具。
  9. 定着体(1)は、支圧板(1A)が、正方形状板体であって、後方へ200〜250mmの曲率半径で弯曲し、円筒部(1T)の長さ方向中間外周にリブ状突起(1C)を備え、且つ、後方へ縮径する挿入用孔(H1)が、拡開状段部(1G)を介して後端へと拡径する短寸の嵌合用孔(H1´)と連通している、請求項8の定着具。
  10. テーパーナット(2)は、円錐筒(2T)の外周面に、前端から後端へ貫通する空気溝(G2)を備え、定着体(1)の挿入用孔(H1)への着座形態では、円錐筒(2T)の最小外径(db)の後面(B2)が定着体(1)の挿入用孔(H1)の段部(1G)に干渉しない位置を占め、前端(T2)が支圧板(1A)の前面(1F)より内方位置を占め、且つ、円錐筒前面(2F)から突出した角ナット(2C)の対向角隅径(dc)が円錐筒(2T)の前端の最大外径(dt)より小である、請求項8又は9の定着具。
  11. カプラー(3)は、長さ(L3)が、少なくともPC鋼棒(6)の限界はめ合い長さの2倍であって、PC鋼棒(6)の定着状態では、前端(T3)が定着体(1)の前面(1F)より内方位置を占めるものであって、長さ方向中央に、仕切りボルト(3B)螺入用のボルト挿入用孔(H3´)を備えている、請求項8、又は9、又は10の定着具。
  12. エンドキャップ(71)は、前方円錐筒部(71T)が、前方への拡径形態の外側円錐筒(71A)と、前方への縮径形態の内側円錐筒(71C)とを立上り辺(71D)で接続して、両円錐筒(71A,71C)間に、前方へ拡開する環状係合溝(G71)を形成し、後方円筒部(71S)は、貫通するアンボンドPC鋼棒(6)を、コンクリート流入を阻止する形態で貫入保持する、請求項8乃至11のいずれか1項の定着具。
  13. 請求項1の発明の実施に用いるポケットフォーマであって、裁頭円錐筒(14A)の、前端には型板(13A,13B)に取付けるための複数の取付用ピース(14B)を、後端には定着体(1)の支圧板(1A)に取付けるための複数の取付用ピース(14B)を備えたスリーブパイプ(14)。
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