JP3137789B2 - ポリエステルの製造法 - Google Patents

ポリエステルの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱安定性及び耐熱性に
優れたポリブチレンナフタレンジカルボキシレート系重
合体(以下、ポリブチレンナフタレート又はPBNと略
記することがある)を製造する技術に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】従来テトラメチレングリコ
ールを主たるグリコール成分とするポリエステル、例え
ば、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略記
する)PBN系重合体は、エチレングリコールを主たる
グリコール成分とするポリエステル、例えばポリエチレ
ンテレフタレート(以下PETと略記する)やポリエチ
レンナフタレート(以下、PENと略記する)に比べて
結晶化速度が高く、成形リサイクルや成形品外観性に優
れることから、種々の成形品、特にエンジニアリングプ
ラスチックス素材として幅広い分野で使用されている。
ところが、近年コネクターなどの電子・電気部品、自動
車部品を中心に成形品の小型化、薄肉化が進み、その上
使用環境もますます厳しい状況下となり、耐熱性や機械
特性の優れたものが要求される様になってきた。殊にポ
リエステルにおいては、エステル結合を有している事か
ら、一般的に加水分解の影響を受けやすく、耐乾熱性と
共に耐湿熱性の向上が重要な課題である。
【0003】これら耐乾熱性や耐湿熱性の改良方法とし
て、ポリマーの末端カルボキシル基の濃度の低減が有効
である事が既に知られており、本発明は末端カルボキシ
ル基濃度の低いポリエステルの製造法を提供するもので
ある。
【0004】従来技術にあっては、PETの場合にエチ
レンカーボネート、ジフェニルテレフタレート、エポキ
シ化合物、ビスオキサゾリン、ポリオキザレート化合物
等の添加によるカルボキシル基の低濃度化に関する技術
が知られている。またPBTの場合の低カルボキシル基
化においては、アルカリ性金属化合物の添加による技術
が知られている。アルカリ金属性化合物添加は上記目的
達成には充分満足のいく方法であるものの、アルカリ金
属性化合物をPBTの溶融重合に添加した場合、重合反
応速度が著しく低下し、生産能率が悪くなり好ましくな
い。他方、ビスオキサゾリン化合物については、PET
やPBTでは低COOH基濃度効果が非常にすぐれるも
のの、乾熱劣化時に未反応に起因すると思われる剤の分
解によるガスの発生やポリマーの著しい変色が生じ実用
性はない。PETやPBTにポリオキザレート化合物を
添加することとその効果は特公昭48―35953号公
報や特開平4―311720号公報に記載されているも
のの、PBNについては一切記述されていない。
【0005】ところで、PETに関してポリオキザレー
ト化合物を使用するとき、一般式(II)
【0006】
【化2】
【0007】で示されるものであって、文献ではR1
アルキレン基の炭素数は2以上であれば効果の差異が生
じることはないと推認されていた。しかしながら、ポリ
オキザレート化合物では、そのアルキレン基によって、
ポリマーの性質、換言すればポリオキザレート化合物の
添加効果が異ることは全く知られていなかったが、この
点に関し本発明者らは新しい知見を得ている。
【0008】カルボキシル基の低濃度化の機構は、ポリ
エステルの末端カルボキシル基とポリオザレートの反応
によるものであり、R1 のアルキレン基が、ポリエステ
ル主鎖中に取り込まれる為、ポリエステルの主骨格のア
ルキレン基と炭素数が異なる場合、融点の低下、結晶性
の低下をもたらす。
【0009】一方、PBTに関する特開平4―3117
20号においては、R1 のアルキレン基の制約がされ、
融点低下、結晶性の低下もなく末端カルボキシル基濃度
低減効果があり、ある程度耐熱性、耐湿熱性の向上効果
が認められている。もっとも最近では要求特性レベルは
極めて高度であり、耐熱性、耐湿熱性の著しく優れた材
料が求められている。
【0010】
【課題を解決する手段】本発明者らは、鋭意検討を行っ
た結果、ポリエステルとしてPBNを用い、しかもある
重合段階で、特定のシュウ酸の(ポリ)エステル或はシ
ュウ酸のグリコールエステルを添加する事により、重合
反応性、融点及び結晶性の低下もなく、カルボキシル基
濃度の低減化が図れ、従来のPENや上記改良PBTで
は達成出来なかった耐熱性、耐湿熱性の非常に優れたも
のが得られる事を見い出し、本発明に到達した。
【0011】即ち、本発明は、ナフタレンジカルボン酸
を主たる酸成分とし、炭素数4のグリコールを主たるグ
リコール成分とするポリエステルを溶融重合で製造する
に際し、該ポリエステル製造の重合過程でポリエステル
極限粘度数が0.5に達した以降の段階で反応系に式
(I)で表わされるシュウ酸のグリコールエステル及び
/又はシュウ酸を主たる酸成分とする重合度4以下の低
重合度シュウ酸系オリゴマーを0.5〜10モル%量添
加し、引続いて重合反応を行うことからなるPBNの製
造方法である。
【0012】本発明において、PBNとは、ナフタレン
ジカルボン酸を主たる酸成分とし、酸素数4のグリコー
ルを主たるグリコール成分とするポリエステルである。
ここに「主たる」とは、全酸成分又は全グリコール成分
として80モル%以上を占めることを意味し、20モル
%以下の第三成分を共重合したものを含む。第三成分と
しては特に10モル%以下が好ましい。また、共重合可
能な第三成分としてはナフタレンジカルボン酸以外の芳
香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル
酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカ
ルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニ
ルケトンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル
酸、ジブロモテレフタル酸等;脂環族ジカルボン酸、例
えば、キサヒドロテレフタル酸、デカリンジカルボン酸
等;脂肪族ジカルボン酸、例えばマロン酸、コハク酸、
アジピン酸等;ブタンジオール以外の脂肪族ジオール、
例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、
ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等;芳
香族ジヒドロキシ化合物、例えばビスフェノールA
[2,2′―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパ
ン]、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノール
A、ビスヒドロキシエトキシビスフェノールA等;脂肪
族オキシカルボン酸、例えば、アシアチン酸、キノバ酸
等;芳香族オキシカルボン酸、例えばP―ヒドロキシ安
息香酸、P―ヒドロキシエトキシ安息香酸、マンデル
酸、テトロラクチン酸等を挙げることが出来る。これら
の第三成分の使用は、単独でもまた2種以上であっても
よい。また、共重合ポリエステルには、ポリマーが実質
的に線状とみなせる範囲内で、3価以上の多官能化合
物、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペ
ンタエリスリート、トリメリットン酸、トリメシン酸、
ピロメリット酸、トリカルバリン酸等を少量共重合して
もよく、また単官能化合物、例えば、O―ベンゾイル安
息香酸、ナフトエ酸等を結合させてもよく、また単官能
化合物、例えば、O―ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸
等を結合させてもよい。
【0013】PBNは通常の溶融重合法で製造出来る。
例えば、ジメチルナフタレートと1,4―ブタンジオー
ルとの間のエステル交換反応を行わせるか、或いはナフ
タレートジカルボン酸と1,4―ブタンジオールを直接
エステル化させて実質的にビス(β―ヒドロキシブチ
ル)ナフタレンジカルボキシレート又はその低重合体を
形成せしめ、これを260℃以上の減圧下で重縮合し製
造することができる。
【0014】本発明にあっては、上記PBNの重縮合反
応途中で下記式(I)で表わされるシュウ酸のグリコー
ルエステル及び/又はシュウ酸系オリゴマーを添加する
ものである。ここで使用する
【0015】
【化3】
【0016】[但し、式中のRは炭素数の4のブチレン
基を、nは4以下の整数をそれぞれ示す。]シュウ酸の
グリコールエステル及び/又はシュウ酸系ポリエステル
の低重合体は、上述したPBNの融点低下及び結晶性の
低下をさせない為に、グリコール成分として炭素数4の
1,4―ブタンジオールのエステル化合物とすることが
必須である。
【0017】また、シュウ酸のグリコールエステル又は
シュウ酸系エステルオリゴマーの添加時期は、前記PB
Nの固有粘度が少くとも0.5に到達した段階以降であ
る。特に固有粘度が0.7以上になって添加するのが好
ましい。固有粘度が0.5に満たないうちに添加すると
きは、添加した際のPBNの固有粘度が非常に低くなる
ためにその後の重縮合時間が長くなり、しかもPBNの
カルボキシル基濃度が再び増加する結果となり本発明の
目的をを達成できなくなる。グリコールエステルの添加
量については、0.5〜10.0モル%が好ましく、特
に1.0〜7.0モル%が好ましい。
【0018】添加量がこの下限より少ないと充分低いカ
ルボキシル基濃度のPBNが得られず、逆に添加量が多
すぎると添加後の固有粘度の低下が大きい上、著しい発
泡を生じ、反応工程上のトラブルをまねいたり、その後
の重縮合反応が長時間を要し、PBNのカルボキシル基
濃度が際増加する結果となり、耐熱性が悪化してしま
う。
【0019】なお、前記PBNを製造する際、通常の触
媒、安定剤及び種々の添加剤等は必要に応じて添加して
もよい。
【0020】本発明によって得られるPBNは機械構造
材料や自動車用部品として用途展開が可能なものであ
る。
【0021】
【作用効果】本発明は、重合反応が遅延することなく、
むしろ向上するうえに、融点低下や結晶性の低下なしに
低カルボキシル基濃度のPBNの製造が可能となり、従
来のPBNや、改良PBTに比べ、熱安定性、耐湿熱性
が改良されたPBNを得ることができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例により、本発明の詳細を説明す
る。実施例中の「部」は重量部を示し、また特性値は、
以下の方法によって行った。 ・固有粘度:[η] フェノール/テトラクロロエタン=3/2溶媒を用い、
35℃で測定した溶液粘度から算出した。 ・カルボキシル基濃度:COOH(当量/106 g) A・CONIXの方法(Makromol,chem,26 226 (195
8) )によって測定した。 ・乾熱劣化性評価:ポリマーサンプルをギア劣化試験機
を用い180℃において7昼夜大気中で処理し、その際
の[η]低下度を求めた。 ・湿熱劣化性評価:ポリマーサンプルを純水中に漬し、
沸水処理を行い、その際の[η]低下度を求めた。 ・融点及び結晶性:Dupont製1090B型のDS
Cを用い、サンプル10mgを20℃/min で300℃
まで昇温し、そのまま2分間保持した後10℃/min で
降温して、融点ピーク温度(Tm)、高温結晶化ピーク
温度(Tcd)を測定した。
【0023】[合成例1]1,4―ブタンジオール4.
9部にチタニウムテトラオキサイド0.02部を溶か
し、シュウ酸ジエチル4.0部を加え、160℃まで加
熱して、エステル交換反応の結果生成するエチルアルコ
ールを留出させた。その後N2 雰囲気のもとで徐々に減
圧にし、20mmHgのもとで約10分間加熱反応させ
た。この際得られたシュウ酸ブチレンエステル重合体の
平均重合度は、1.6であった。
【0024】[合成例2]エチレングリコール3.4部
に酢酸マンガン0.03部を溶かし、シュウ酸ジエチル
4.0部を加え、160℃まで加熱して、エステル交換
反応の結果生成するエチルアルコールを留出させた。そ
の後、亜リン酸0.02部を添加し、N2雰囲気のもと
で徐々に減圧にし、20mmHgのもとで、約10分間
加熱反応させた。この際得られたシュウ酸エチレンエス
テル重合体の平均重合度は、1.4であった。
【0025】
【実施例1】2.6―ジメチルナフタレート35.0
部、1,4―ブタンジオール20.7部、テトラ―n―
ブチルチタネート0.008部及びイルガノックス10
760.040部を、エステル交換反応槽に仕込み、2
10℃で180分間エステル交換反応(EI反応と略
す)を行い、反応中留出するメタノールを反応系外に留
出せしめた。反応終了時点でのメタノール留出量は、1
0.4部であった。EI反応終了後、反応液を重縮合反
応(PN反応と略す)のため重縮合槽に移し、徐々に真
空度を高めながら35分間を要して、反応温度を210
℃から260℃に到達せしめた。この温度を保持して、
真空度を0.3mmHgに保ち、PN反応を170分間
行った。ここで反応系をN2 を用いて常圧に戻した。得
られた重合体の固有粘度は、0.60であった。ここで
反応系をN2 ガスで常圧にもどし、合成例1のシュウ酸
ブチレンエステル重合体0.56部(PBNを構成する
全酸成分に対し、2.0モル%)を添加したのち徐々に
減圧にもどし、0.3mmHgの減圧下で所望の固有粘
度に到達するまでPN反応を続けた(20分間)。得ら
れたポリマーの固有粘度は0.78で、カルボキシル基
濃度12当量/106gであった。
【0026】
【実施例2〜3、比較例2〜4】シュウ酸ブチルエステ
ル重合体(合成例1)の添加時期及び添加量を表1のよ
うに変更するだけで、それ以外は実施例1と同様に行っ
た。
【0027】
【比較例1】シュウ酸エステル重合体を添加せずに、P
N反応途中、N2 常圧にもどすことなく通常の反応で、
所望の固有粘度まで実施する以外は、実施例1と同様に
行った。
【0028】
【比較例5】シュウ酸ブチルエステル重合体をシュウ酸
エチレンエステル重合体(合成例2)(PBNを構成す
る全酸成分に対し、3.0モル%)0.69部に変える
だけで、それ以外は、実施例1と同様に行った。
【0029】
【比較例6】ジメチルテレフタレート35.0部、1,
4―ブタンジオール22.9部、テトラ―n―ブチルチ
タネート0.026部及びイルガノックス1076
0.040部を、エステル交換反応槽に仕込み、170
℃で180分間エステル交換反応(EI反応と略す)を
行い、反応中留出するメタノールを反応系外に留出せし
めた。反応終了時点でのメタノール留出量は、10.4
部であった。EI反応終了後、反応液を重縮合反応(P
N反応と略す)のため重縮合槽に移し、徐々に真空度を
高めながら35分間を要して、反応温度を170℃から
245℃に到達せしめた。この温度を保持して、真空度
を0.3mmHgに保ち、PN反応を110分間行っ
た。ここで反応系をN2 を用いて常圧に戻した。得られ
た重合体の固有粘度は、0.69であった。ここで反応
系をN2 ガスで常圧にもどし、合成例1のシュウ酸ブチ
レンエステル重合体0.70部(PBNを構成する全酸
成分に対し、2.0モル%)を添加したのち徐々に減圧
にもどし、0.3mmHgの減圧下で所望の固有粘度に
到達するまでPN反応を続けた(20分間)。得られた
ポリマーの固有粘度は0.88で、カルボキシル基濃度
13当量/106 gであった。
【0030】以上得られたPBN及びPBTの品質、融
点、乾熱劣化評価、湿熱劣化評価結果について表1に示
した。
【0031】表1から明らかなように、シュウ酸ブチル
エステル重合体をある固有粘度以上で特定の添加量添加
した場合、溶融重合速度も向上し、かつ得られたDBN
のカルボキシル基濃度が低いことが判る。また比較例5
において、シュウ酸ポリエステル重合体の炭素数4のブ
チレン基以外のものであるときはPBNの融点低下をも
たらし、結晶性の面で劣ることが判った。比較例6より
カルボキシル基濃度を低減したPBTよりも優れている
ことが判った。
【0032】
【表1】
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分
    とし、テトラメチレングリコールを主たるグリコール成
    分とするポリマーを溶融重合するに際し、該ポリマーの
    固有粘度が0.5以上に到達した後において下記式
    (I) 【化1】 [但し、式中のRはブチレン基を、nは4以下の整数を
    それぞれ示す。]で表わされるシュウ酸のグリコールエ
    ステルおよび/又はシュウ酸を酸成分とする低重合度オ
    リゴマーを、該ポリマーを構成する全酸成分に対し0.
    5〜10.0モル%(但し、該シュウ酸エステルがn=
    1以上のものにあっては、その繰返し単位を1モルとみ
    なす)添加し、引続いて重合反応を継続して所定の固有
    粘度に到達せしめることからなるポリエステルの製造
    法。
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