JP3124427B2 - 光学活性な4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの製造方法 - Google Patents

光学活性な4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの製造方法

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JP3124427B2 JP33687293A JP33687293A JP3124427B2 JP 3124427 B2 JP3124427 B2 JP 3124427B2 JP 33687293 A JP33687293 A JP 33687293A JP 33687293 A JP33687293 A JP 33687293A JP 3124427 B2 JP3124427 B2 JP 3124427B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、式(1)又は式(2)
で示されるような4,4−ジアルコキシ−2−ブタノー
ルの光学活性体の製造方法に関する。
【0002】
【化6】 さらに詳しくは、式(1)又は式(2)で示される4,
4−ジアルコキシ−2−ブタノールのエナンチオマー混
合物に微生物を作用させ、式(1)又は式(2)で示さ
れる4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの光学異性
体の一方を、他方の光学異性体よりも多く残存させるこ
とを特徴とする光学活性な4,4−ジアルコキシ−2−
ブタノールの製造方法に関する。
【0003】なお、本発明で対象にしている式(1)又
は式(2)で示される光学活性な4,4−ジアルコキシ
−2−ブタノールの不斉炭素とは、式(1)又は式
(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノー
ルの2位の炭素を意味する。
【0004】また、式(1)又は式(2)で示される化
合物には、R1 、R2 が異なる場合や、Aが非対称であ
る化合物も含まれ、この場合はアセタール炭素も不斉炭
素になるが、このアセタール炭素の立体は特に問題にし
ない。
【0005】
【従来の技術】式(1)で示される4,4−ジアルコキ
シ−2−ブタノールの光学活性体は抗生物質をはじめと
する種々の医薬品の重要な合成中間体である。従来、式
(1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−
2−ブタノールの光学活性体を製造する方法としては、
4,4−ジメトキシ−2−ブタノンをアルコールデヒド
ロゲナーゼにより選択的に還元して、(S)−4,4−
ジメトキシ−2−ブタノールを得る方法(J.Am.Chem.So
c.,107,4028(1985))、(S)−α−メチル−1,3−ジ
チアン−2−エタノールにPbO2 、BF3 存在下にメ
タノールを反応させて、(S)−4,4−ジメトキシ−
2−ブタノールを得る方法(TetrahedronLett.,24,287
(1983))、(R)−3−(エトキシエトキシ)ブタナー
ルにピリジニウムトシレートの存在下でエチレングリコ
ールを反応させて、(R)−α−メチル−1,3−ジオ
キソラン−2−エタノールを得る方法(Tetrahedron Le
tt.,28,6587(1987) )や、ラセミの酢酸2−(1,3−
ジオキソラン−2−イル)−1−メチルエチルエステル
または酪酸2−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−
1−メチルエチルエステルをリパーゼ存在下で、選択的
に加水分解させて、(S)−α−メチル−1,3−ジオ
キサン−2−エタノールまたは(R)−α−メチル−
1,3−ジオキサン−2−エタノールを得る方法(Tetr
ahedron,45,869(1989)やJ.Org.Chem.,56,2656(1991))等
が知られている。
【0006】しかし、アルコールデヒドロゲナーゼによ
り選択的に還元する方法は、使用するアルコールデヒド
ロゲナーゼなどの酵素が高価であること、(S)−α−
メチル−1,3−ジチアン−2−エタノールにPb
2 、BF3 存在下にメタノールを反応させる方法は、
有害な鉛化合物を使用すること、(R)−3−(エトキ
シエトキシ)ブタナールをアセタール化する方法は、
(R)−3−(エトキシエトキシ)ブタナールの合成が
多工程であること、リパーゼ存在下で選択的に加水分解
させる方法は、選択性が低いことなどの欠点がある。
【0007】また、ラセミの4,4−ジメトキシ−2−
ブタノールにリパーゼ存在下で石油エーテル中、ペンタ
ン酸ビニルを反応させて、カルボン酸エステルである
(R)−2−ペンタノイルオキシ−4,4−ジメトキシ
ブタンを得る際には、式(1)で示される化合物に含ま
れる(S)−4,4−ジメトキシ−2−ブタノールが副
生していると考えられる(J.Am.Chem.Soc.,110,7200(19
88)が、使用するリパーゼが高価であること、ペンタ
ン酸ビニル等のエステル化剤が必要であること、選択性
が低いことなどの欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これらの事情により、
経済的に優れ、かつ簡便な手段により光学純度の高い式
(1)又は式(2)で示される光学活性4,4−ジアル
コキシ−2−ブタノールを得る方法の確立が望まれてい
た。
【0009】本願発明は、経済性に優れ、かつ簡便な手
段により光学純度の高い式(1)又は式(2)で示され
る光学活性4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールを得
る方法に関するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは経済的に優
れ、かつ簡便な方法で、光学純度の高い式(1)又は式
(2)で示される光学活性4,4−ジアルコキシ−2−
ブタノールを得る方法として、式(1)又は式(2)で
示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールのエナ
ンチオマー混合物に微生物を作用させる方法に着目し
た。
【0011】この目的に適した微生物を検索した結果、
ピキア・オプンティア・バライティー・サーモトレラン
ス(Pichia opuntiae var thermotolerans) 、ピキア・
トレタナ(Pichia toletana)、シュードモナス・ディミ
ヌタ(Pseudomonas diminuta)、TRP-13が属するシュー
ドモナス・エスピー(Pseudomonas sp)、トリコスポ
ロン・キャピテータム(Trichosporon capitatum)のい
ずれかの種に属する微生物が、式(1)又は式(2)で
示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールのエナ
ンチオマー混合物に作用して対応する(R)体を残存さ
せること、およびピキア・ファリノサ(Pichia farinos
a )、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putid
a)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cuta
neum )のいずれかの種に属する微生物が、式(1)又
は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタ
ノールのエナンチオマー混合物に作用して対応する
(S)体を残存させることを見出し、本発明を完成した
ものである。
【0012】具体的には、式(1)又は式(2)で示さ
れる4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールのエナンチ
オマー混合物に作用し、対応する(R)体を残存させう
る能力を有する菌株としては、ピキア・オプンティア・
バライティー・サーモトレランス(Pichia opuntiae va
r.thermotolerans)IFO10025 、ピキア・トレタナ(Pich
ia toletana)IFO0950 、シュードモナス・ディミヌタ
(Pseudomonas diminuta)IFO12697 、シュードモナス・
エスピー(Pseudomonas sp.)TRP-13、トリコスポロン・
キャピテータム(Trichosporon capitatum)IFO1197 等
を挙げることができる。
【0013】また、式(1)又は式(2)で示される
4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールのエナンチオマ
ー混合物に作用し、対応する(S)体を残存させうる能
力を有する菌株としては、ピキア・ファリノサ(Pichia
farinosa)IFO1163 、シュードモナス・プチダ(Pseudo
monas putida)TRP-7、トリコスポロン・クタネウム(Tr
ichosporon cutaneum )IFO1198 等を挙げることができ
る。
【0014】これらの微生物は、野生株、変異株、また
は細胞融合もしくは遺伝子操作法などの遺伝的手法によ
り誘導される組みえ株など、いずれの株でも好適に用
いることができる。
【0015】なお、IFO番号の付された微生物は、
(財)発酵研究所(IFO)発行のList of Culture 、
第9版、第1巻(1992)に記載されており、該IFOから
入手することができる。
【0016】またシュードモナス・プチダ(Pseudomona
s putida)TRP-7、シュードモナス・エスピー(Pseudomo
nas sp.)TRP-13は茨城県の土壌より分離された菌株であ
り、それぞれ微工研条寄第3881号(FERM BP
−3881)、微工研条寄第3882号(FERM B
P−3882)として工業技術院生命工学研究所に寄託
されている。以下これらの菌学的性質を示す。
【0017】
【表1】 シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)TRP-7 形態 1)細菌の形および大きさ 桿菌0.5〜
0.6μm×1.5〜18.0μm 2)運動性 + 3)グラム染色性 − 4)胞子の有無 − 5)鞭毛 極鞭毛、>1 生理学的性質 1)オキシダーゼ + 2)カタラーゼ + 3)アミノペプチターゼ + 4)インドールの生成 − 5)VPテスト − 6)硝酸塩の還元 − 7)脱窒反応 − 8)ウレアーゼ + 9)フェニルアラニンデアミナーゼ − 10)シュークロースからレバンの生成 − 11)レシチナーゼ − 12)澱粉の加水分解 − 13)ゼラチンの加水分解 − 14)カゼインの加水分解 − 15)DNAの加水分解 − 16)Tween80の加水分解 + 17)エスクリンの加水分解 − 18)3%KOHによる溶菌 +
【表2】 19)酸素に対する態度 好気的 20)4℃での生育 + 21)37℃での生育 − 22)41℃での生育 − 23)pH5.6での生育 + 24)Mac-Conkey-Agar 培地での生育 + 25)SS-Agar 培地での生育 + 26)Cetrimid-Agar 培地での生育 + 27)色素の生成 蛍光性 + ピロシアニン − 28)OFテスト 0 29)グルコースからガスの生成 − 30)酸の生成 グルコース + フルクトース + キシロース + 31)PNPG(β−ガラクトーシダーゼ) − 32)アルギニンジヒドロラーゼ +
【表3】 33)炭素源の利用 アジピン酸 − ベンゾイルギ酸 + カプロン酸 + ブチルアミン + クエン酸 + m−イノシトール − レブリン酸 + セバシン酸 − リンゴ酸 + ソルビトール − フェニル酢酸 + アセトアミド − L−アラビノース − シュークロース − フルクトース + アゼライン酸 − グルコース + D−ガラクトース + マンノース + ムコン酸 + マルトース − ゲラニオール − マンニトール + グリシン − グルコン酸 + n−ブタノール + N−アセチルグルコサミン − D−アラニン + L−バリン + アントラニル酸 − アドニトール − L−トリプトファン − トレハロース + L−キヌレン酸 − D−グルカル酸 + α−アミルアミン − 以上の菌学的性質をバージーの細菌分類書(Bargey's m
anual of SystematicBacteriology(1986))に基づいて
分類すると、TRP-7 はシュードモナス・プチダ(Pseudo
monas putida)と同定された。
【0018】
【表4】 シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)TRP-13 形態 1)細菌の形および大きさ 桿菌0.5μm
×1.0〜2.5μm 2)運動性 + 3)グラム染色性 − 4)胞子の有無 − 5)鞭毛 極鞭毛、1 生理学的性質 1)オキシダーゼ + 2)カタラーゼ + 3)アミノペプチターゼ + 4)インドールの生成 − 5)VPテスト − 6)硝酸塩の還元 + 7)脱窒反応 + 8)フェニルアラニンデアミナーゼ − 9)シュークロースからレバンの生成 − 10)レシチナーゼ − 11)澱粉の加水分解 − 12)ゼラチンの加水分解 − 13)カゼインの加水分解 − 14)DNAの加水分解 − 15)Tween80の加水分解 − 16)エスクリンの加水分解 + 17)3%KOHによる溶菌 + 18)酸素に対する態度 好気的
【表5】 19)4℃での生育 − 20)37℃での生育 + 21)41℃での生育 − 22)pH5.6での生育 + 23)Mac-Conkey-Agar 培地での生育 + 24)SS-Agar 培地での生育 + 25)Cetrimid-Agar 培地での生育 + 26)色素の生成 蛍光性 − ピロシアニン − 27)OFテスト 0 28)グルコースからガスの生成 − 29)酸の生成 グルコース + フルクトース + キシロース + 30)PNPG(β−ガラクトシダーゼ) − 31)アルギニンジヒドロシダーゼ +
【表6】 32)炭素源の利用 酢酸 + 乳酸 + アジピン酸 + スペリン酸 − カプロン酸 + アドニトール − クエン酸 + 酪酸 + グリコール酸 − トレハロース − マロン酸 − D−グルカル酸 − リンゴ酸 + ベンゾイルギ酸 − フェニル酢酸 + L−マンデル酸 − L−アラビノース − m−イノシトール − グルコース + セバシン酸 + マンノース − ソルビトール − マルトース − アセトアミド − キシロース − シュークロース − マンニトール − アゼライン酸 + グルコン酸 ± D−ガラクトース + N−アセチルグルコサミン ± ムコン酸 + L−セリン − ゲラニオール + エタノール + プロピレングリコール + n−プロパノール + 以上の菌学的性質をバージーの細菌分類書(Bargey's m
anual of SystematicBacteriology(1986))に基づいて
分類すると、TRP-13はシュードモナス・エスピー(Pseu
domonas sp.)と同定された。
【0019】本発明に用いる微生物を培養するための培
地は、その微生物が増殖し得るものであれば特に制限は
ない。例えば、炭素源としては、上記微生物が利用可能
であればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、
フルクトース、シュクロース、デキストリンなどの糖
類、ソルビトール、エタノール、グリセロールなどのア
ルコール類、フマール酸、クエン酸、酢酸、プロピオン
酸などの有機酸類およびその塩類、パラフィンなどの炭
化水素類など、あるいは、これらの混合物を使用するこ
とができる。窒素源としては例えば、塩化アンモニウ
ム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機
酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸
アンモニウムなどの有機酸のアンモニウム塩、肉エキ
ス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加
水分解物、尿素などの無機有機含窒素化合物、あるいは
これらの混合物を使用することができる。他に無機塩、
微量金属塩、ビタミン類など、通常の培養に用いられる
栄養源を適宜、混合して用いることができる。また必要
に応じて微生物の増殖を促進する因子、本発明の目的化
合物の生成能力を高める因子、あるいは培地のpH保持
に有効な物質も添加できる。
【0020】培養方法としては、培地pHは3.0〜
9.5、好ましくは4〜8、培養温度は20〜45℃、
好ましくは25〜37℃で、嫌気的あるいは好気的に、
その微生物の生育に適した条件下5〜120時間、好ま
しくは12〜72時間程度培養する。
【0021】式(1)又は式(2)で示される4,4−
ジアルコキシ−2−ブタノールのエナンチオマー混合物
から光学活性な式(1)又は式(2)で示される4,4
−ジアルコキシ−2−ブタノールを生成させる方法とし
ては、培養液をそのまま用い該培養液に式(1)又は式
(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノー
ルのエナンチオマー混合物を添加する方法、遠心分離な
どにより菌体を分離し、これをそのままあるいは洗浄し
た後、緩衝液、水などに再懸濁したものに式(1)又は
式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノ
ールのエナンチオマー混合物を添加し反応させる方法な
どがある。この反応の際、グルコース、シュクロースな
どの炭素源をエネルギー源として添加したほうが良い場
合もある。また、菌体は生菌体のままでも良いし、菌体
破砕物、アセトン処理、凍結乾燥などの処理をほどこし
たものでも良い。
【0022】また、これらの菌体を、例えば、ポリアク
リルアミドゲル法、含硫多糖ゲル法(カラギーナンゲル
法など)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法などの公知の
方法で固定化して用いることもできる。
【0023】式(1)又は式(2)で示される4,4−
ジアルコキシ−2−ブタノールのエナンチオマー混合物
はそのまま、あるいは水に溶解し、または反応に影響を
与えないような有機溶媒に溶解したり、界面活性剤など
に分散させたりして、反応開始から一括にあるいは分割
して添加しても良い。
【0024】反応はpH2〜10、好ましくはpH3〜
9の範囲で、温度は10〜60℃、好ましくは20〜4
0℃の範囲で1〜120時間程度、攪拌下あるいは静置
下で行う。反応時間を長くすると式(1)又は式(2)
で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの残
存量は減少する場合が多いが、光学純度の高い光学活性
な式(1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキ
シ−2−ブタノールを得ることが可能である。基質の使
用濃度は特に制限されないが、0.1〜20%程度が好
ましい。
【0025】反応によって残存生成した光学活性な式
(1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−
2−ブタノールは、反応液から直接あるいは菌体分離
後、有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロマトなどの
通常の精製方法を用いることにより、容易に単離でき
る。
【0026】また、精製操作の前に、適当な化合物で処
理することも可能である。
【0027】本発明において、微生物あるいはその処理
物を作用させる式(1)又は式(2)で示される4,4
−ジアルコキシ−2−ブタノールは、(R)体、(S)
体の任意の割合の混合物で良い。すなわち、ラセミ体あ
るいは(R)体、(S)体のいずれかが過剰の混合物が
用いられる。
【0028】R1 、R2 は、直鎖又は分岐状のアルキル
基中から任意に選択できるが、アルキル基の炭素数は1
〜7であることが好ましい。アルキル基の好適な例とし
ては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、
n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n
−ヘプチル基などが挙げられる。R1 、R2 は同じ基で
も異なる基でよいが、同じ基である方が合成上は簡便
である。
【0029】Aは、直鎖又は分岐状のアルキレン基の中
から任意に選択できるが、アルキレン基の炭素数は2〜
5であることが好ましい。アルキレン基の好適な例とし
ては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロ
ピレン、エチルエチレン、1−メチルトリメチレン、2
−メチルトリメチレン、1,3−ジメチルトリメチレ
ン、などが挙げられる。
【0030】式(1)又は式(2)で示される2−ブタ
ノールの具体的な例としては、4,4−ジメトキシ−2
−ブタノール、4,4−ジエトキシ−2−ブタノール、
4,4−ジプロポキシ−2−ブタノール、4,4−ジイ
ソプロポキシ−2−ブタノール、4,4−ジブトキシ−
2−ブタノール、4,4−ジイソブトキシ−2−ブタノ
ール、4,4−ジ−t−ブトキシ−2−ブタノール、
4,4−ジペントキシ−2−ブタノール、4,4−ジイ
ソペントキシ−2−ブタノール、4,4−ジヘキシルオ
キシ−2−ブタノール、4,4−ジヘプチルオキシ−2
−ブタノール、α−メチル−1,3−ジオキソラン−2
−エタノール、α−メチル−1,3−ジオキサン−2−
エタノール、α−メチル−1,3−ジオキセパン−2−
エタノール、α,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン
−2−エタノール、α−メチル−4−エチル−1,3−
ジオキソラン−2−エタノール、α,4−ジメチル−
1,3−ジオキサン−2−エタノール、α,5−ジメチ
ル−1,3−ジオキサン−2−エタノール、α,4,5
−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−エタノールな
どが挙げられる。
【0031】式(1)又は式(2)で示される4,4−
ジアルコキシ−2−ブタノールのラセミ体は、既知の方
法により容易に合成できる。例えば、3−ケトブタ
ルの対応するアセタールを還元することにより(例え
ば、J.Org.Chem.,53,4175(1988))、あるいは酸触媒存在
下でアルドールと対応するアルコールとを反応させるこ
とにより(例えば、Chem.Ber.,52,1800(1919))容易に
合成できる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を具体的に実施例にて説明する
が、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものでは
ない。
【0033】なお、実施例における反応液の遠心分離上
澄液中の式(1)又は式(2)で示される4,4−ジア
ルコキシ−2−ブタノールの定量は、ガスクロマトグラ
フィー(カラム:FAL−M(2m)、インジェクショ
ン温度:200℃、カラム温度:140℃)により測定
した。
【0034】なお、残存率(%)とは(残存濃度)/
(仕込み濃度)×100を意味する。また、異性体過剰
率(%ee)はベンゾイル化後、光学分割カラムを用いた
高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工
業製キラルセルOD−H、溶媒:n−ヘキサン:2−プ
ロパノール=250:1、波長:254nm、流速:
1.0ml/min、カラム温度:室温)により測定し
た。
【0035】(実施例1) (菌体調製用培地) グルコース 2 % 酵母エキス 0.3% ヘプトン 0.5% 麦芽エキス 0.3% pH 6.0 上記の菌体調製用培地5mlを21mmφ試験管に入
れ、滅菌後、表7に示した微生物をそれぞれ植菌し、3
0℃で48時間振盪培養を行った。続いて遠心分離で菌
体を分離し、生菌体を得た。
【0036】次に、21mmφ試験管中の4,4−ジメ
トキシ−2−ブタノールのラセミ体0.5%およびCa
CO3 0.1%を含む水溶液2mlに、遠心分離で得た
菌体を添加し、30℃で48時間往復振盪反応させた。
【0037】反応終了後、遠心分離により除菌し、上澄
液を得た。上澄液をガスクロマトグラフィー分析して
4,4−ジメトキシ−2−ブタノールの残存濃度を測定
し、残存率を求めた。
【0038】(カラム:FAL−M(2m)、インジェ
クション温度:200℃、カラム温度:140℃、4,
4−ジメトキシ−2−ブタノールの保持時間:11.1
分) また、この上澄液に塩化ナトリウムを添加後、酢酸エチ
ル2mlを用いて抽出し、酢酸エチル層を無水硫酸ナト
リウムにより乾燥し、減圧下溶媒を留去しシロップを得
た。
【0039】このシロップをヘキサン2mlに溶解さ
せ、ピリジン存在下、塩化ベンゾイルで1昼夜ベンゾイ
ル化した。反応液に水を添加し、重曹水、クエン酸水で
洗浄後、ヘキサン層を高速液体クロマトグラフィーにて
異性体過剰率(%ee)を分析した。(カラム:ダイセル
化学工業製キラルセルOD−H、溶媒:n−ヘキサン:
2−プロパノール=250:1、波長:254nm、流
速:1.0ml/min、カラム温度:室温、ベンゾイ
ル体の保持時間:(S)体 9.5分、(R)体10.
6分)なお、絶対立体配置の決定は(R)−MTPAエ
ステル化し、 H−NMR(500MHz)のケミカル
シフト値の文献(J.Am.Chem.Soc.,107,4028(1985))との
比較により行った。
【0040】得られた結果を表7に示す。
【0041】
【表7】 微生物 絶対 % 残存率 配置 ee (%) ピキア・オプンティア バライティー・サーモトレランス R 24 75 (Pichia opuntiae var.thermotolerans)IFO10025 ピキア・トレタナ R 20 77 (Pichia toletana)IFO0950 シュードモナス・ディミヌタ R 100 38 (Pseudomonas diminuta)IFO12697 シュードモナス・エスピー R 33 42 (Pseudomonas sp.)TRP-13 トリコスポロン・キャピテータム R 11 61 (Trichosporon capitatum)IFO1197 ピキア・ファリノサ S 53 63 (Pichia farinosa)IFO1163 トリコスポロン・クタネウム S 23 48 (Trichosporon cutaneum )IFO1198 (実施例2)実施例1と同様に、4,4−ジエトキシ−
2−ブタノールのラセミ体を用いて実施した。
【0042】残存濃度は、反応液の遠心分離上澄液を以
下のガスクロマトグラフィー条件で測定して求めた。
【0043】(カラム:FAL−M(2m)、インジェ
クション温度:200℃、カラム温度:140℃、4,
4−ジエトキシ−2−ブタノールの保持時間:17.5
分) 異性体過剰率(%ee)は、ベンゾイル体を以下の高速液
体クロマトグラフィー条件で測定して求めた。
【0044】(カラム:ダイセル化学工業製キラルセル
OD−H、溶媒:n−ヘキサン:2−プロパノール=2
50:1、波長:254nm、流速:1.0ml/mi
n、カラム温度:室温、ベンゾイル体の保持時間:
(S)体 6.5分、(R)体 7.1分)) なお、絶対立体配置の決定は、得られた光学活性4,4
−ジエトキシ−2−ブタノールを塩化ベンジルおよびN
aHでベンジル化した、4,4−ジエトキシ−2−ベン
ジルオキシブタンと、(R)−3−ヒドロキシ酪酸メチ
ルエステルから誘導した(R)−4,4−ジエトキシ−
2−ベンジルオキシブタンとの比較により行った。
【0045】ベンジル体は、以下の高速液体クロマトグ
ラフィー条件で測定した。
【0046】(カラム:ダイセル化学工業製キラルセル
OD−H、溶媒:n−ヘキサン:2−プロパノール=2
50:1、波長:254nm、流速:1.0ml/mi
n、カラム温度:室温、ベンル体の保持時間:(R)
体 6.2分、(S)体 7.6分))得られた結果を
表8に示す。
【0047】
【表8】 微生物 絶対 % 残存率 配置 ee (%) シュードモナス・エスピー R 30 16 (Pseudomonas sp.)TRP-13 シュードモナス・プチダ S 98 22 (Pseudomonas putida)TRP-7 (実施例3)実施例1と同様に、α−メチル−1,3−
ジオキソラン−2−エタノールのラセミ体を用いて実施
した。
【0048】残存濃度は、反応液の遠心分離上澄液を以
下のガスクロマトグラフィー条件で測定して求めた。
【0049】(カラム:FAL−M(2m)、インジェ
クション温度:200℃、カラム温度:140℃、α−
メチル−1,3−ジオキソラン−2−エタノールの保持
時間:20.6分)異性体過剰率(%ee)は、ベンゾ
イル体を以下の高速液体クロマトグラフィー条件で測定
して求めた。
【0050】(カラム:ダイセル化学工業製キラルセル
OD−H、溶媒:n−ヘキサン:2−プロパノール=2
50:1、波長:254nm、流速:1.0ml/mi
n、カラム温度:室温、ベンゾイル体の保持時間:
(S)体 16.3分、(R)体18.2分) なお、絶対立体配置の決定は、得られた光学活性α−メ
チル−1,3−ジオキソラン−2−エタノールを塩化ベ
ンジルおよびNaHでベンジル化した、2−(2−ベン
ジルオキシプロピル)−1,3−ジオキソランと、
(R)−3−ヒドロキシ酪酸メチルエステルから誘導し
た(R)−2−(2−ベンジルオキシプロピル)−1,
3−ジオキソランとの比較により行った。
【0051】ベンジル体は、以下の高速液体クロマトグ
ラフィー条件で測定した。
【0052】(カラム:ダイセル化学工業製キラルセル
OD−H、溶媒:n−ヘキサン:2−プロパノール=2
50:1、波長:254nm、流速:1.0ml/mi
n、カラム温度:室温、ベンル体の保持時間:(S)
体 12.9分、(R)体 15.4分)得られた結果
を表9に示す。
【0053】
【表9】 微生物 絶対 % 残存率 配置 ee (%) シュードモナス・エスピー R 64 36 (Pseudomonas sp.)TRP-13
【0054】
【発明の効果】本発明の微生物を用いた光学活性な式
(1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−
2−ブタノールの製造方法は、簡便に光学純度の高い光
学活性な式(1)又は式(2)で示される4,4−ジア
ルコキシ−2−ブタノールを製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI (C12P 41/00 C12R 1:40) (C12P 41/00 C12R 1:645)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピキア・オプンティア バライティー・
    サーモトレランス(Pichia opuntiae var thermotolera
    ns) 、ピキア・トレタナ(Pichia toletana)、シュード
    モナス・ディミヌタ(Pseudomonas diminuta)、TRP-13
    が属するシュードモナス・エスピー(Pseudomonas s
    p)、トリコスポロン・キャピテータム(Trichosporo
    n capitatum)のいずれかの種に属する微生物を、式
    (1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−
    2−ブタノールのエナンチオマー混合物に作用させて、
    式(1)又は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ
    −2−ブタノールの2位の(R)体を、式(1)又は
    (2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノー
    ルの(S)体よりも多く残存させることを特徴とする光
    学活性な4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの製造
    方法。 【化1】
  2. 【請求項2】 ピキア・ファリノサ(Pichia farinosa
    )、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putid
    a)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporoncutan
    eum )のいずれかの種に属する微生物を、式(1)又は
    式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノ
    ールのエナンチオマー混合物に作用させて、式(1)又
    は式(2)で示される4,4−ジアルコキシ−2−ブタ
    ノールの2位の(S)体を、式(1)又は式(2)で示
    される4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの(R)
    体よりも多く残存させることを特徴とする光学活性な
    4,4−ジアルコキシ−2−ブタノールの製造方法。 【化2】
  3. 【請求項3】 4,4−ジアルコキシ−2−ブタノール
    が式(1)で示されるものである請求項1記載の製造方
    法。 【化3】
  4. 【請求項4】 R1 、R2 がメチル基またはエチル基で
    ある請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 4,4−ジアルコキシ−2−ブタノール
    が式(2)で示されるものである請求項1記載の製造方
    法。 【化4】
  6. 【請求項6】 Aがエチレン基である請求項5記載の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 4,4−ジアルコキシ−2−ブタノール
    が式(1)で示されるものである請求項2記載の製造方
    法。 【化5】
  8. 【請求項8】 R1 、R2 がメチル基またはエチル基で
    ある請求項7記載の製造方法。
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