JP3120631B2 - ラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組成物の製法 - Google Patents

ラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組成物の製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラクタム類のアニオン
重合法に使用される触媒組成物の製法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】ラクタム類のアニオン
重合法においてアルカリ性金属ラクタメートを触媒とし
て使用することは公知である。このアルカリ性金属ラク
タメートは、単体では安定性が悪く、また、アルカリ性
金属ラクタメート製造の際に起る副反応により、ラクタ
ム類のアニオン重合の際のアルカリ性金属ラクタメート
の触媒活性や合成されるナイロンの機械的性質に悪影響
を与えるオリゴマーが生成し易いことも知られている。
【0003】そこで、この副反応を抑えるため、アルカ
リ性金属ラクタメートが、過剰のラクタム類中でラクタ
ム類とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導
体とを反応させることにより、ラクタム−アルカリ性金
属ラクタメート組成物として製造されることも公知であ
る。
【0004】しかし、この方法でもオリゴマーの生成を
完全に抑えることは難しく、アルカリ性金属ラクタメー
ト濃度が高くなるとオリゴマーの生成量は増加し、特に
アルカリ性金属ラクタメート濃度が5重量%以上ではオ
リゴマーの生成量が急激に増加する。
【0005】アルカリ性金属ラクタメートの製造に関
し、特開昭47−3142号、特開昭49−62598
号、特開昭62−225528号等の提案がある。
【0006】特開昭47−3142号明細書は、アルカ
リ性金属ラクタメートをα−ピロリドンと他のラクタム
との混合物に溶解することによる、取扱いの容易なアル
カリ性金属ラクタメートの製法を開示しているが、この
方法ではオリゴマー生成を抑えることは難しい。
【0007】特開昭49−62598号明細書では、ア
ルカリ性金属ラクタメートのα−ピロリドン、ε−カプ
ロラクタムの溶液中にアルコール、カルボン酸−N−ア
ルキルアミドを添加する製造法が開示されている。この
方法は、実施例からもわかるようにアルカリ性金属ラク
タメートの製造温度が低く設定されており、オリゴマー
の生成の割合は比較的少なくなるが、ラクタム類とアル
カリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体との反応
率が低くなり、未反応のアルカリ金属誘導体等や添加し
たアルコールやカルボン酸−N−アルキルアミドが不純
物としてラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組成物
中に残る欠点がある。
【0008】特開昭62−225528号明細書では、
低沸点のアルコールと高沸点のアルコールの存在下にア
ルカリ性金属ラクタメートを製造する方法が開示されて
いる。この方法でも、オリゴマー生成量を抑えることは
難しく、また、高沸点のアルコールが不純物としてラク
タム−アルカリ性金属ラクタメート組成物中に残る欠点
がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ラクタム類
とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体と
の混合物からの、ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ
土類金属やこれらの誘導体との反応率が高く、かつ、オ
リゴマーの含有量が少ないラクタム−アルカリ性金属ラ
クタメート組成物の製法提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明者らは、ラクタム類
とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体と
の混合物からのラクタム−アルカリ性金属ラクタメート
組成物の製造条件を詳細に検討した結果、製造時の温度
と圧力および原料ラクタム中の含有水分率が反応率やオ
リゴマー生成量に影響することを見出し、本発明に到達
した。
【0011】すなわち、本発明は、ラクタム類とアルカ
リ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体から選ばれ
た1種類以上の化合物とからなる混合物を加熱下に減圧
して、ラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組成物を
製造する方法において、(1)前記混合物を減圧する際
に、圧力が少なくとも50mmHgに達するまでは、前
記混合物を110℃以下の温度に維持し、圧力が少なく
とも50mmHgに達した後は、更に減圧して圧力を1
0mmHg以下とするとともに、その時の前記混合物の
温度を105〜160℃の範囲にすること、(2)原料
ラクタムとして、含有水分率が0.05重量%以下のラ
クタム類を使用することにより達成できる。
【0012】以下に本発明の方法を詳しく説明する。本
発明のアルカリ性金属ラクタメートの製造に使用するラ
クタム類は、α−ピロリドン、δ−バレロラクタム、ε
−カプロラクタム等の少なくとも5個の環員を有し、融
点が110℃以下のラクタム類であり、これらは単独で
も良くまた2種以上を併用しても良い。また、これらラ
クタム類に溶解する範囲の量として、これらラクタム類
に対して20重量%以下の量であればラウロラクタムを
使用することも可能である。
【0013】アルカリ金属、アルカリ土類金属やこれら
の誘導体としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等
のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカ
リ土類金属、水素化ナトリウム、ナトリウムメチラー
ト、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化
カリウム、炭酸ナトリウム、メチルナトリウム、エチル
ナトリウム、ナトリウムナフタレン等のアルカリ金属や
アルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、酸化物、炭酸
塩、炭素数1〜4のアルコキシ化合物、炭素数1〜4の
アルキル化合物、アリール化合物、エチルマグネシウム
ブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマ
グネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムクロライド
等のグリニャール試薬等がある。これらは単独でも良く
2種以上を併用しても良い。これらの中では、アルカリ
金属のアルコキシ化合物や水酸化物、グリニャール試薬
等が好ましく使用できる。さらに好ましくは、ナトリウ
ムメチラート、カリウムメチラート、水酸化カリウム、
エチルマグネシウムブロマイドおよびブチルマグネシウ
ムクロライド等が使用できる。アルカリ金属、アルカリ
土類金属やこれらの誘導体は、ラクタム類1molに対
して0.02〜12.5mol%の範囲、好ましくは
0.2〜10mol%の範囲で使用されるのが望まし
い。
【0014】生成するアルカリ性金属ラクタメートの具
体例としては、カリウムピロリドン、ナトリウムピロリ
ドン、カリウムカプロラクタム、ナトリウムカプロラク
タム、ブロムマグネシウムカプロラクタム、クロルマグ
ネシウムカプロラクタム等がある。
【0015】本発明のラクタム−アルカリ性金属ラクタ
メート組成物は、以下のようにして製造できる。すなわ
ち、本発明の方法では、110℃以下の温度、好ましく
は105℃未満の温度、さらに好ましくはラクタム類の
融点以上、90℃以下の温度に保持され、かつ、水分含
有率が0.05重量%以下、好ましくは0.0005重
量%以上、0.05重量%以下のラクタム類に、前記所
定量のアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導
体から選ばれた1種類以上の化合物を添加した混合物を
減圧して、アルカリ性金属ラクタメートを製造するに際
し、副生する低沸点化合物を除去する。この際、前記混
合物の圧力が少なくとも50mmHg、好ましくは20
mmHg、より好ましくは10mmHgに達するまで反
応混合物の温度を110℃以下、好ましくは105℃未
満、より好ましくはラクタム類の融点以上、90℃以下
の温度範囲に維持して初期反応を行う。その後引き続
き、前記混合物を減圧して、10mmHg以下、好まし
くは5mmHg以下の圧力とし、その時の前記混合物の
温度を105〜160℃、好ましくは110〜130℃
の温度範囲にするのである。
【0016】反応に際しては、前記混合物を攪拌下に減
圧してもよいし、あるいは攪拌の無い状態で減圧しても
よい。しかし、前記アルカリ金属、アルカリ土類金属や
これらの誘導体から選ばれた1種類以上の化合物を前記
ラクタム類に添加した時に均一分散を促進する効果、ま
た、反応時の低沸点副生物除去の効果等を考えれば攪拌
する方がよい。攪拌する場合、攪拌速度は、10〜50
0rpm、好ましくは60〜300rpmがよい。
【0017】なお、ラクタム類とアルカリ金属、アルカ
リ土類金属やこれらの誘導体との反応率を高めるため
に、前記混合物の圧力が10mmHg以下、かつ、温度
が105〜160℃に達した後、窒素ガス等の不活性ガ
スを導入して常圧に戻した後、再度、105〜160℃
の温度で減圧して10mmHg以下とする操作を1回以
上繰返しても良い。
【0018】本発明の方法では、50mmHgに達する
前に温度が110℃より高くなると、オリゴマーの生成
量が多くなるので好ましくない。また、50mmHgに
達した後も、前記混合物の温度を110℃未満にして減
圧を継続した場合や10mmHg以上の圧力で前記混合
物の反応を停止した場合は、アルカリ性金属ラクタメー
トの生成に時間がかかるだけで無く、ラクタム類とアル
カリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体との反応
率が低くなるため好ましくない。前記混合物の温度が1
60℃以上になると、オリゴマーが多量に生成するた
め、好ましくない。また、ラクタム類の含有水分率が
0.05重量%を越えると、アルカリ性金属ラクタメー
ト製造時に、副反応が起り易くなり、アルカリ性金属の
水酸化物やオリゴマーの生成量が多くなったり、アルカ
リ性金属ラクタメートの生成速度が遅くなったりするた
め、好ましくない。
【0019】
【実施例】次に実施例および比較例によって本発明の方
法をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の方法を
何ら限定するものではない。
【0020】以下の実施例および比較例に示したラクタ
ムの含有水分率、ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ
土類金属やこれらの誘導体との反応率およびオリゴマー
量は以下の方法で測定した。 (1)ラクタムの含有水分率の測定 カールフィッシャー水分測定装置(三菱化成工業(株)
製、CA−06型)で測定。 (2)反応率の測定 ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれら
の誘導体との反応終了後の反応混合物20gに精製した
アセトン5μlと蒸留水を加え、100ccとする。こ
の水溶液をサンプルとして、ガスクロマトグラフを用
い、アセトンを基準試薬として、未反応のアルカリ金
属、アルカリ土類金属あるいはその誘導体と蒸留水との
反応により生成した化合物を定量する。この測定値か
ら、アセトンを基準物質として作成した検量線を用い、
未反応のアルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはその
誘導体の量を求め、その値から反応率を数式1により算
出する。
【0021】
【数1】
【0022】(3)オリゴマー量の測定 ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれら
の誘導体との反応終了後の反応混合物約100gに室温
の蒸留水約500gを加え、約10分間攪拌して、析出
した沈澱物を濾別、乾燥して、沈澱物の重量を測定す
る。オリゴマー量は数式2により求めることができる。
【0023】
【数2】
【0024】実施例1 攪拌機、温度計および減圧用ラインを有するスチーム加
熱ジャケット付反応槽に含有水分率が0.01重量%の
ε−カプロラクタム(融点:69℃)25kgを入れ、
加熱して80℃にした後、ナトリウムメチラート(純度
97%の粉末)1.23kgを添加し、100rpmの
攪拌速度で攪拌しながら、反応により副生するメタノー
ルを除去するため、同温度で減圧を開始した。反応槽内
の圧力が50mmHgに達するまでは、スチーム圧力を
調節して反応物の温度を80〜90℃の範囲に維持し
た。同温度範囲に維持したままで、引き続き減圧し、2
3mmHgになった時点でスチーム圧を高くして昇温を
開始し、反応物の圧力が2.3mmHg、温度が114
℃になった時点で減圧を止め、反応を終了した。その
後、反応槽に乾燥窒素ガスを導入して常圧とした後、サ
ンプルを採取し、反応率およびオリゴマー量を測定し
た。反応率は99.9%、オリゴマー量は0.004重
量%であった。
【0025】実施例2〜3、比較例1〜5 ε−カプロラクタムの含有水分率、50mmHgに達す
るまでの温度、昇温開始時の圧力、温度および反応終了
時の圧力、温度を表1に示した値にした以外は、実施例
1と同様の方法で実施した。反応率、オリゴマー量の測
定結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】実施例4 攪拌機、温度計および減圧用ラインを有するスチーム加
熱ジャケット付反応槽に含有水分率が0.01重量%の
ε−カプロラクタム(融点:69℃)18kgとα−ピ
ロリドン(融点:25℃)7kgとを入れ、加熱して8
5℃にした後、カリウムメチラート(純度95%の粉
末)136gを添加して、100rpmの攪拌速度で攪
拌しながら、反応により副生するメタノールを除去する
ため、同温度で減圧を開始した。反応槽内の圧力が50
mmHgになるまでは、スチーム圧力を調節して反応物
の温度を85〜87℃の範囲に維持して初期反応を行っ
た後、減圧を続けながらスチーム圧力を高くして、反応
物を125℃の温度まで加熱し、圧力が4.8mmHg
になった時点で減圧を止め、反応を終了した。その後、
反応槽に乾燥窒素ガスを導入して常圧とした後、サンプ
ルを採取し、反応率およびオリゴマー量を測定した。反
応率は99.9%、オリゴマー量は0.001重量%で
あった。
【0028】実施例5 攪拌機、温度計および減圧用ラインを有する容量5lの
フラスコに含有水分率が0.01重量%のε−カプロラ
クタム(融点:69℃)1.8kgと含有水分率0.0
03重量%のラウロラクタム(融点:153℃)0.2
kgとを入れ、加熱して90℃にした後、ブチルマグネ
シウムクロライド(約2mol/lのテトラヒドロフラ
ン溶液)103gを添加して、100rpmの攪拌速度
で攪拌しながら、ラクタムとの反応により副生するブタ
ンを除去するため、同温度で減圧を開始した。フラスコ
の圧力が50mmHgになるまでは反応物の温度を90
〜95℃の範囲に維持して初期反応を行った後、減圧を
続けながら反応物を134℃の温度まで加熱し、圧力が
6.3mmHgになった時点で減圧を止め、反応を終了
した。その後、反応槽に乾燥窒素ガスを導入して常圧と
した後、サンプルを採取し、反応率およびオリゴマー量
を測定した。反応率は99.8%、オリゴマー量は0.
009重量%であった。
【0029】実施例6 攪拌機、温度計および減圧用ラインを有するスチーム加
熱ジャケット付反応槽に含有水分率が0.006重量%
のε−カプロラクタム(融点:69℃)25kgを入
れ、スチーム圧力を調節することにより加熱して85℃
にした後、ナトリウムメチラート(純度97%の粉末)
0.98kgを添加して、反応により副生するメタノー
ルを除去するため、同温度で減圧を開始した。反応槽内
の圧力が50mmHgになるまでは反応物の温度を85
〜90℃の範囲に維持した後、スチーム圧力を高くして
反応物の温度を昇温しながら、減圧を続け、反応物の圧
力が4.4mmHg、温度が128℃になった時点で減
圧を止め、反応を終了した。そして、反応槽に乾燥窒素
ガスを導入して常圧にした。その後、再度減圧して、反
応物の圧力が4.6mmHg、温度が124℃になった
時点で減圧を止めた。そして、反応槽に乾燥窒素ガスを
導入して再び常圧にした後、サンプルを採取し、反応率
およびオリゴマー量を測定した。反応率は99.9%、
オリゴマー量は0.004重量%であった。
【0030】
【発明の効果】ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ土
類金属やこれらの誘導体から選ばれた1種類以上の化合
物とからなる混合物を加熱下に減圧して、ラクタム−ア
ルカリ性金属ラクタメート組成物を製造する方法におい
て、反応混合物を特定の温度、圧力の範囲に維持するこ
とおよび特定量以下の水分を含有するラクタム類を使用
することにより、ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ
土類金属やこれらの誘導体との反応率が高く、かつ、オ
リゴマー含有量の少ないラクタム−アルカリ性金属ラク
タメート組成物が容易に製造できる。
【0031】また、本発明によれば、アルカリ性金属ラ
クタメートの濃度が5重量%以上であっても、ラクタム
類とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれらの誘導体
との混合物から、従来、困難とされていたオリゴマー含
有量の少ないラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組
成物の製造が可能となる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラクタム類とアルカリ金属、アルカリ土
    類金属やこれらの誘導体から選ばれた1種類以上の化合
    物とからなる混合物を加熱下に減圧して、ラクタム−ア
    ルカリ性金属ラクタメート組成物を製造する方法におい
    て、(1)前記混合物を減圧する際に、圧力が少なくと
    も50mmHg以下になるまでは、前記混合物を110
    ℃以下の温度に維持し、圧力が少なくとも50mmHg
    以下に達した後は、更に減圧して圧力を10mmHg以
    下とするとともに、その時の前記混合物の温度を105
    〜160℃の範囲にすること、(2)含有水分率が0.
    05重量%以下のラクタム類を使用することを特徴とす
    るラクタム類とアルカリ金属、アルカリ土類金属やこれ
    らの誘導体から選ばれた1種類以上の化合物との反応率
    が95%以上で、オリゴマー含有量が0.1重量%以下
    であるラクタム−アルカリ性金属ラクタメート組成物の
    製法。
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JP5729408B2 (ja) * 2013-03-11 2015-06-03 国立研究開発法人産業技術総合研究所 分岐構造を導入したポリアミド4共重合体及びその製造方法
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