JP3104619B2 - アルミニウム板とステンレス鋼板からなるクラッド板の製造方法 - Google Patents

アルミニウム板とステンレス鋼板からなるクラッド板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム板と
ステンレス鋼板からなるクラッド板を温間でのロール圧
延によって製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アルミニウム板とステンレス鋼板
からなるクラッド板は、冷間圧延により製造されてい
た。例えば、特開平1−95884号公報には、ステン
レス鋼板側のワークロールは高速回転をさせ、アルミニ
ウム板側のワークロールは低速回転をさせる異周速圧延
接合によるクラッド板の製造方法が開示されている。こ
の技術は、高速回転を行わせるロールの表面粗度をRa
0.1μm以下、低速回転を行わせるロールの表面粗度
をRa0.2μm以上とし、両ロールに0.2cst以下
の粘度の潤滑剤を供給することにより、アルミニウムの
ロールコーティングを防止しつつ、ステンレス鋼板の表
面光沢が良好なクラッド板を製造するものである。
【0003】しかし、冷間圧延法によって十分な接合強
度を得るためには、圧下率60%以上の圧延を施す必要
がある。このような過大な圧延荷重を得るためには、大
型設備が必要となってしまう。
【0004】そこで、最近は冷間圧延に代わり、素材の
再結晶温度の1/2程度の温度で圧延を行う温間での圧
延方法が用いられるようになった。温間での圧延によっ
てクラッド板を製造する際の通常の圧下率は20〜40
%程度なので大型設備を使用する必要はない。
【0005】アルミニウム板とステンレス鋼板からなる
クラッド板を、温間での圧延によって製造する場合に
は、通常、圧延機の上下のワークロールに駆動力を与え
て圧延する方法が採用されている。
【0006】ところが、上下のワークロールに駆動力を
付与して、温間でのロール圧延法によってステンレス鋼
板とアルミニウム板とのクラッド板を製造すると、ステ
ンレス鋼板の表面にヒートスクラッチ疵と呼ばれる凹状
の擦り疵が発生してしまう。この方法でヒートスクラッ
チ疵が発生するのは、ステンレス鋼板表面とステンレス
鋼板側のワークロール間のすき間で圧延油の油膜破断が
生じることが原因とされている。油膜破断とは、圧延油
が、冷間圧延に比べ高温下で、ワークロールとステンレ
ス鋼板の間で加圧されて、圧延油が存在しない部分が生
じることである。油膜破断が生じた部分では、潤滑作用
が失われる。したがって、油膜破断が生じると、ワーク
ロールとステンレス鋼板が直接接触するので、両者の摩
擦によりステンレス鋼板の表面に大きな凹状の疵が発生
し、この疵が製品のヒートスクラッチ疵となる。
【0007】アルミニウム板の表面にも微小なヒートス
クラッチ疵は発生するが、コーティング等の表面処理を
行うので問題にならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、圧延
機のワークロールとステンレス鋼板との摩擦に起因する
ヒートスクラッチ疵の発生を抑制することができる、ア
ルミニウム板とステンレス鋼板からなるクラッド板の温
間でのロール圧延による製造方法を提供することであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、圧延温
度、圧延ロールの駆動状態を規定することにより、上
記問題点を解決できることを知得した。本発明はこの知
見を基になされたものであってその要旨は次の通りであ
る。
【0010】「加熱したアルミニウム板とステンレス鋼
板を重ね合わせて1対のワークロール間で温間圧延を行
うことによりクラッド板を製造する方法であって、アル
ミニウム板とステンレス鋼板を重ね合わせて、アルミニ
ウム板とステンレス鋼板の温度が200〜500℃の状
態で、アルミニウム板側のワークロールは駆動回転をさ
せ、ステンレス鋼板側のワークロールはアイドリングさ
せて圧延することを特徴とするアルミニウム板とステン
レス鋼板からなるクラッド板の製造方法。」 ここでいうアルミニウムとはJIS H4000で規定
されているA1000番台〜A5000番台等の一般的
に使用されている純アルミニウム及びアルミニウム合金
を意味している。
【0011】ステンレス鋼とは、JISで規定されてい
るオーステナイト系、フェライト系、オーステナイトフ
ェライト系等の一般的に使用されているステンレス鋼を
意味している。
【0012】クラッド板とは1枚のアルミニウム(また
はアルミニウム合金)板と1枚のステンレス鋼板とを重
ね合わせてクラッド化した板を意味している。
【0013】本発明でいう温間でのロール圧延とは、ス
テンレス鋼板とアルミニウ板を重ね合わせて、両素材の
温度が200〜500℃の状態で、ステンレス鋼板とア
ルミニウム板を圧延によってクラッド接合を行う際に通
常用いられるロール圧延機によって圧延することを意味
している。本発明方法においては、温間でのロール圧延
の際のアルミニウム板側のワークロールには駆動力を与
えて回転させるが、ステンレス鋼板側のワークロールに
は、駆動力は与えずに、ステンレス鋼板の動きにしたが
って自由回転(以下、アイドリングと記す)ができる状
態にしておく。
【0014】
【発明の実施の形態】図1を用いて本発明の概要を説明
する。
【0015】素材としてのステンレス鋼板5は、例えば
コイル状のものが用いられ、ステンレスアンコイラー8
によって供給され、例えば電磁誘導加熱装置4によっ
て、200〜500℃に加熱される。一方、素材として
のアルミニウム板6も同様に、アルミニウムアンコイラ
ー9によって供給され、電磁誘導加熱装置4によって、
200〜500℃に加熱される。その後、圧延機1で圧
延される前に、ステンレス鋼板5とアルミニウム板6は
重ね合わされ、素材温度200〜500℃を保ったまま
圧延される。この時、アルミニウム板6側のワークロー
ル3には駆動力を与えて回転させるが、ステンレス鋼板
5側のワークロール2には、駆動力は与えずに、ステン
レス鋼板5の動きにしたがってアイドリングできる状態
にしておく。圧延油は、通常用いられるエマルジョン系
等が用いられる。圧延油は、通常のロール潤滑設備11
等によって、ロールギャップへ圧延油が幅方向で均一に
なるように供給される。
【0016】この圧延によって、小さなヒートスクラッ
チ疵しかない、ステンレス鋼板とアルミニウム板とから
なるクラッド板を製造することができる。
【0017】以下、本発明の方法を詳細に説明する。
【0018】ワークロールの回転について 圧延の際のステンレス鋼板の表面に大きなヒートスクラ
ッチ疵を発生させないためには、ステンレス鋼板表面と
ワークロール間の油膜破断を防ぎ、常にステンレス鋼板
表面とワークロール間が油膜で覆われている状態にして
おく必要がある。油膜で覆われている状態にしておくた
めには、アルミニウム板側のワークロールは駆動回転さ
せ、ステンレス鋼板側のワークロールはアイドリングさ
せた状態で圧延する。
【0019】アイドリングしているワークロールは、駆
動しているワークロールと関係なくステンレス鋼板の動
きにしたがって回転する。したがって、アイドリングし
ているワークロールとステンレス鋼板の速度には差がな
い。速度差がなければ、油膜に作用するせん断応力が減
少するので油膜破断が生じない。油膜破断が生じなけれ
ば、ワークロールとステンレス鋼板が直接接して摩擦を
起こすことがない。したがって、ステンレス鋼板の表面
にヒートスクラッチ疵が発生しにくい。
【0020】一方、アルミニウム板側のワークロール
は、アルミニウム板とステンレス鋼板を圧延機に送り込
むために駆動回転を行わせる必要がある。
【0021】本発明方法で使用できる圧延機は、通常の
クラッド板を製造する際に使用されているロール圧延機
でよく、ワークロールの素材も通常の鍛鋼の焼き入れ材
のものを使用できる。
【0022】圧延油は、通常の圧延に使用されているエ
マルジョン系圧延油等でよい。
【0023】圧下率は、クラッド板を製造する際の通常
の圧下率でよく、20〜40%程度とするのが好まし
い。
【0024】圧延の際の素材の温度について 本発明方法では、ステンレス鋼板とアルミニウム板が2
00〜500℃の状態で圧延を施す。200℃未満で
は、多大な圧延荷重を要し、広幅な材料の製造が困難で
ある。また、500℃を超えると接合界面に金属間化合
物を生成し、接合強度が逆に低下する。また、ステンレ
ス鋼板とアルミニウム板の温度は、同温度にしておく必
要はなく、圧延の際にそれぞれの素材の温度が200〜
500℃の範囲内にあればよい。素材を加熱するために
は、電磁誘導加熱装置や大気雰囲気中で行う通常の加熱
炉等を用いる。
【0025】
【実施例】本発明方法を用いてクラッド板を製造した。
なお、比較のために従来の方法によってもクラッド板を
製造した。
【0026】素材としては、板厚1.6mm、板幅86
5mmのコイル状のJISのA1100で規定されてい
る純アルミニウム板と板厚0.6mm、板幅890mm
のコイル状のJISのSUS430で規定されているフ
ェライト系ステンレス鋼板を用いた。
【0027】図1は、本発明方法によってステンレス鋼
板とアルミニウム板とのクラッド板を製造する際の工程
の1例を示す図である。
【0028】ワークロール2および3としては、焼き入
れ処理された鍛鋼のロールを用いた。圧延油は市販のエ
マルジョン系圧延油を使用した。圧下率は25%とし
た。
【0029】ステンレス鋼板5とアルミニウム板6をア
ルミニウム板側のワークロール3の駆動力により、ステ
ンレスアンコイラー8とアルミニウムアンコイラー9か
ら供給した。
【0030】ステンレス鋼板5とアルミニウム板6を各
々の電磁誘導加熱装置4により加熱し、ステンレス鋼板
の温度を350℃、アルミニウム板の温度を450℃と
した。
【0031】その後、ステンレス鋼板5とアルミニウム
板6を重ね合わせて圧延機1で圧延した。アルミニウム
板6側のワークロール3は、ワークロール圧延面の速度
が15m/minとなる速度で駆動回転させ、ステンレ
ス鋼板5側のワークロール2は、アイドリング状態とし
た。
【0032】圧延の際のステンレス鋼板の温度は320
℃、アルミニウム板の温度は430℃であった。
【0033】上記のように本発明方法を用いることによ
り、板厚1.65mmのクラッド板7を製造した。
【0034】なお、比較例として、ステンレス鋼板側の
ワークロール2も15m/minで駆動回転させ、他の
条件は上記と同じとした、従来の方法を用いて板厚1.
65mmのクラッド板を製造した。
【0035】本発明方法と従来の方法により製造したク
ラッド板についてステンレス鋼板側の表面に発生したヒ
ートスクラッチ疵の幅と深さを比較した。
【0036】上記のヒートスクラッチ疵の調査には、ク
ラッド板の幅方向の中心部から採取した幅50mm、長
さ50mmの試験片を供した。
【0037】ヒートスクラッチ疵は、光学顕微鏡による
表面観察を行い、疵を任意に10点選び、それらの疵の
幅、深さを測定し、平均値を算出する方法で測定した。
【0038】ヒートスクラッチ疵の幅の平均が20μm
以下でかつ疵の深さの平均が2μm以下であるクラッド
板を良好な表面性状を有するクラッド板とした。ヒート
スクラッチ疵の幅の平均が20μmを超えるものや疵の
深さの平均が2μmを超えるものは、表面疵取り装置に
1回かけるだけでは、表面を良好に研磨することができ
ず、2回以上かけなけれなならないので多大のコストと
工数がかかってしまうためである。
【0039】表1は、本発明方法と従来の方法により製
造したクラッド板のヒートスクラッチ疵の測定結果をま
とめたものである。
【0040】
【表1】
【0041】表1より明らかなように、本発明方法で製
造したクラッド板は、従来の方法で製造したそれと較べ
て、ヒートスクラッチ疵が軽微で良好な表面性状を有す
ることが確認された。
【0042】
【発明の効果】本発明の方法によれば、従来の方法より
もヒートスクラッチ疵の軽微なクラッド板を製造でき
る。したがって、その後の疵取り工程を従来よりも少な
くすることができるとともに、良好な表面性状を有する
クラッド板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる製造装置構成を示す
概略図である。
【符号の説明】
1・・・圧延機 2・・・ステンレス鋼板側のワークロール 3・・・アルミニウム板側のワークロール 4・・・電磁誘導加熱装置 5・・・ステンレス鋼板 6・・・アルミニウム板 7・・・クラッド板 8・・・ステンレス鋼板アンコイラー 9・・・アルミニウム板アンコイラー 10・・・クラッド板コイラー 11・・・ロール潤滑設備
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−273279(JP,A) 特開 昭50−73868(JP,A) 特開 平2−200383(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/04 B21B 1/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加熱したアルミニウム板とステンレス鋼板
    を重ね合わせて1対のワークロール間で温間圧延を行う
    ことによりクラッド板を製造する方法であって、重ね合
    わされたアルミニウム板とステンレス鋼板を、アルミニ
    ウム板側のワークロールは駆動回転をさせ、ステンレス
    鋼板側のワークロールはアイドリング状態とし、圧延温
    度200〜500℃で温間圧延することを特徴とするア
    ルミニウム板とステンレス鋼板からなるクラッド板の製
    造方法。
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