JP3101048B2 - 有機質正特性サーミスタ - Google Patents

有機質正特性サーミスタ

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JP3101048B2
JP3101048B2 JP04007545A JP754592A JP3101048B2 JP 3101048 B2 JP3101048 B2 JP 3101048B2 JP 04007545 A JP04007545 A JP 04007545A JP 754592 A JP754592 A JP 754592A JP 3101048 B2 JP3101048 B2 JP 3101048B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機質正特性サーミス
タに関し、より詳しくは、昇温時特定の温度領域で急激
に抵抗値が増大する特性、すなわち、PTC(Positive
TemperatureCoefficient)特性を有する有機質正特性
サーミスタに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、有機質正特性サーミスタとして、
エポキシ樹脂,ポリイミド,不飽和ポリエステル,シリ
コン,ポリウレタン及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹
脂に、炭素繊維,黒鉛繊維,黒鉛層間化合物繊維,金属
繊維及びセラミック繊維等の繊維状導電物質等を分散さ
せたものが知られている(例えば、米国特許第4966
729号明細書等)。
【0003】このような有機質正特性サーミスタは、例
えば温度検出器又は自己制御型ヒーター等に適用し得る
が、PTC特性の立ち上がりが急峻で大きな抵抗値変化
を呈し、しかも室温での初期抵抗値が小さいことが必要
である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の有機質
正特性サーミスタにおいては、熱硬化性樹脂に分散され
た導電性物質が繊維状であるため、抵抗値のばらつきが
大きく、また、初期抵抗値を下げることが難しいという
問題があった。
【0005】そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなさ
れたものであり、室温での初期抵抗値が小さく、PTC
特性の立ち上がりが急峻で大きな抵抗値変化を呈し、し
かも抵抗値のばらつきが小さい有機質正特性サーミスタ
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項1記載の発明は、熱硬化性樹脂とスパイク状の
突起を有する導電性粒子と導電性短繊維とを混合してな
ることを特徴とする有機質正特性サーミスタである。
【0007】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の発明において、導電性粒子は含有量を5乃至50重
量%とし、導電性短繊維は直径を5乃至20μm,長さ
を500μm以下,含有量を1乃至10重量%とするも
のである。
【0008】
【作用】請求項1記載の発明によれば、熱硬化性樹脂と
混合する導電性粒子としてスパイク状の突起を有する粒
子を用いているので、真球状の導電性粒子を混合した場
合に比べ、スパイク状の突起を有する導電性粒子同士で
は、その形状故にトンネル電流が流れやすくなって、導
電性が良好となるため、室温での初期抵抗値が小さくな
る。また、導電性粒子同士の間隔が球状のものに比べて
大きいので、接触点で容易に切れてPTC特性の立ち上
がりが急峻で大きな抵抗値変化を呈する。また、繊維状
の導電性粒子を混合した場合に比べ、抵抗値のばらつき
が小さくなる。また、導電性物質として導電性粒子と導
電性短繊維とを併用することにより、導電性短繊維が導
電性粒子同士のバイパスの役割を果たし、導電性物質全
体の添加量を低減できる。
【0009】さらに、導電性粒子と混合する樹脂として
熱硬化性樹脂を用いているので、不燃性であり、熱可塑
性樹脂を用いた場合に比べ、架橋処理が不要となり、製
造工程を簡略化できる等の優れた効果が得られる。
【0010】請求項2記載の発明によれば、導電性粒子
の含有量を5乃至50重量%好ましくは15乃至35重
量%、導電性短繊維の直径を5乃至20μm,長さを5
00μm以下,含有量を1乃至10重量%好ましくは2
乃至6重量%とし、導電性粒子としてスパイク状の突起
を有する粒子とし、導電性物質として導電性粒子と導電
性短繊維とを併用したことによる前記特有の効果がより
顕著となる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳述する。
【0012】本発明の一実施例の有機質正特性サーミス
タは、主剤(マトリックス)として熱硬化性樹脂,フィ
ラーとしてスパイク状の突起を有する導電性粒子,同じ
くフィラーとして導電性短繊維及び硬化剤を混合してな
るものである。
【0013】前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹
脂,ポリイミド,不飽和ポリエステル,シリコン,ポリ
ウレタン及びフェノール樹脂等がある。熱硬化性樹脂
は、所望の性能,用途等に応じて適宜選択することがで
き、本実施例では、エポキシ樹脂(チバガイギー製のア
ラルダイトF)を用いる。
【0014】前記スパイク状の突起を有する導電性粒子
としては、平均粒径3乃至7μmのスパイク状の突起を
有するNiパウダーと同等の効果が得られる平均粒径
2.2乃至2.8μm(フィッシャー・サブシーブ法で
測定)のフィラメント状鎖状Niパウダー(インコ社
製)を用いる。
【0015】前記導電性短繊維としては、東邦レーヨン
製の直径5乃至20μm,長さ200μmの炭素繊維を
用いる。
【0016】前記硬化剤としては、チバガイギー製のハ
ードナーを用いる。
【0017】前記有機質正特性サーミスタの一製造方法
としては、所定量の前記各組織を混合(真空撹拌脱泡)
し、これを電極(例えばNi箔)間に流し込んでシート
状にプレス成形し、これを硬化(予備硬化として80
℃,30分、本硬化として140℃,1時間)後、パン
チングにより板状の有機質正特性サーミスタを得る。
【0018】このように構成された有機質正特性サーミ
スタにより得られる効果を、表1及び図1,図2を参照
して説明する。表1は各組織の割合いを変えた有機質正
特性サーミスタの室温での初期抵抗値及び抵抗温度特性
を示すものである。図1は表1における実施例1乃至4
をグラフにしたもの、図2は表1における比較例1乃至
3をグラフにしたものである。
【0019】
【表1】 実施例1乃至4及び比較例1乃至3のサンプルは、表1
に示すように、アラルダイトF,ハードナー,Niパウ
ダー,短繊維の各組織の割合いを変えたものを混合(真
空撹拌脱泡)し、これを電極(Ni箔)間に流し込んで
シート状にプレス成形し、これを硬化(予備硬化として
80℃,30分、本硬化として140℃,1時間)後、
直径10mmの円板状に打ち抜いたものを用いた。な
お、比較例2で用いた短繊維は、東邦レーヨン製の長さ
1mmのものを用いた。
【0020】PTC特性の測定は、実施例1乃至4及び
比較例1乃至3ともに、上記サンプルを恒温槽内に入
れ、温度上昇及び下降を行い、各所定温度における抵抗
値を測定し、温度と抵抗値との関係を求めた。
【0021】(a) 導電性粒子としてスパイク状の突起を
有する粒子を用いているので、真球状の導電性粒子を混
合した場合に比べ、スパイク状の突起を有する導電性粒
子同士では、その形状故にトンネル電流が流れやすくな
って、導電性が良好となるため、室温での初期抵抗値が
小さくなった。実施例1では0.15Ω、実施例2では
やや高い1.8Ω、実施例3では0.02Ω、実施例4
では0.10Ωとなった。比較例1では、過剰なNiパ
ウダーにより0.01Ωと低い値となった。比較例2で
は、導電性物質の全体量が増えることにより導電性が向
上したため0.08Ωと低い値となった。比較例3では
0.16Ωとなった。なお、Niパウダーの添加量が5
重量%未満では、抵抗値が逆に上昇してしまい、サーミ
スタとして使用できない結果となった。
【0022】(b) スパイク状の突起を有する導電性粒子
同士の間隔が球状のものに比べて大きいので、接触点で
容易に切れてPTC特性の立ち上がりが急峻で大きな抵
抗値変化を呈した。実施例1では、転移温度では抵抗値
が急激に上昇して最大抵抗値は4×108 Ωになり、抵
抗変化率は2×107 以上の高い値となった。実施例2
乃至4では、実施例1と同様に抵抗変化率は4×105
乃至1×107 という高い値となった。比較例1では、
過剰なNiパウダーにより導電経路が遮断されないため
抵抗変化率は、3×104 と急激な抵抗上昇は見られな
かった。比較例2では、導電性物質の全体量が増えるこ
とにより導電性が向上するが、高温度時においては逆に
繊維同士の接触が依然として残るため、2×103 とあ
まり変化しなかった。比較例3では、繊維の長さが長い
ことにより、2×104 と抵抗の変化が小さくなった。
【0023】(c) 導電性粒子としてスパイク状の突起を
有する粒子を用いているので、繊維状の導電性粒子を混
合した場合に比べ、抵抗値のばらつきが小さくなる。実
施例1では、最大抵抗値である130℃以上の温度にお
いても抵抗値の低下はなく、サンプルの熱による変形は
生じていない。
【0024】従って、本発明が目的としているサーミス
タを得るには、導電性粒子の含有量を5乃至50重量%
好ましくは15乃至35重量%とし、導電性短繊維の直
径を5乃至20μm,長さを500μm以下,含有量を
1乃至10重量%好ましくは2乃至6重量%が適してい
ると思われる。
【0025】(d) 導電性物質として導電性粒子と導電性
短繊維とを併用することにより、導電性短繊維が導電性
粒子同士のバイパスの役割を果たし、導電性物質全体の
添加量を低減できる。
【0026】(e) 導電性粒子と混合する樹脂として熱硬
化性樹脂を用いているので、不燃性であり、熱可塑性樹
脂の場合ではNTC現象を抑えるために必要不可欠であ
った架橋処理が不要となる。また、サーミスタのシート
化及び電極付けを一体的に行えるので、熱可塑性樹脂の
場合に比べ、製造工程を簡略化できる等の優れた効果が
得られる。
【0027】なお、本発明は上記実施例に限定されず、
その要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施できる。
【0028】
【発明の効果】以上詳述した請求項1記載の発明によれ
ば、導電性粒子としてスパイク状の突起を有する粒子を
用いているので、真球状の導電性粒子を混合した場合に
比べ、スパイク状の突起を有する導電性粒子同士では、
その形状故にトンネル電流が流れやすくなって、導電性
が良好となるため、室温での初期抵抗値が小さくなる。
また、導電性粒子同士の間隔が球状のものに比べて大き
いので、接触点で容易に切れてPTC特性の立ち上がり
が急峻で大きな抵抗値変化を呈する。また、繊維状の導
電性粒子を混合した場合に比べ、抵抗値のばらつきが小
さくなる。また、導電性物質として導電性粒子と導電性
短繊維とを併用することにより、導電性短繊維が導電性
粒子同士のバイパスの役割を果たし、導電性物質全体の
添加量を低減できる。さらに、導電性粒子と混合する樹
脂として熱硬化性樹脂を用いているので、不燃性であ
り、熱可塑性樹脂を用いた場合に比べ、架橋処理が不要
となり、製造工程の簡略化等が図れる。従って、室温で
の初期抵抗値が小さく、PTC特性の立ち上がりが急峻
で大きな抵抗値変化を呈し、しかも抵抗値のばらつきが
小さい等の優れた効果を有する有機質正特性サーミスタ
を提供することができる。
【0029】請求項2記載の発明によれば、導電性粒子
の含有量を5乃至50重量%、導電性短繊維の直径を5
乃至20μm,長さを500μm以下,含有量を1乃至
10重量%としているので、請求項1記載の発明よりも
室温での初期抵抗値が小さく、PTC特性の立ち上がり
が急峻で大きな抵抗値変化を呈し、しかも抵抗値のばら
つきが小さい等の優れた効果を有する有機質正特性サー
ミスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機質正特性サーミスタの実施例1乃
至4の抵抗温度特性を示すグラフである。
【図2】有機質正特性サーミスタの比較例1乃至3の抵
抗温度特性を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01C 7/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱硬化性樹脂とスパイク状の突起を有す
    る導電性粒子と導電性短繊維とを混合してなることを特
    徴とする有機質正特性サーミスタ。
  2. 【請求項2】 前記導電性粒子は含有量を5乃至50重
    量%とし、前記導電性短繊維は直径を5乃至20μm,
    長さを500μm以下,含有量を1乃至10重量%とす
    る請求項1記載の有機質正特性サーミスタ。
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